JP4719080B2 - ビニル重合体製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ビニル重合体製造方法に関する。
従来のビニル重合体およびその製造方法として、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)を重合開始剤として空気雰囲気下、60℃でアクリル系モノマーをリビングラジカル重合させて成るものが本発明者により開発されている(特許文献1参照)。
また、芳香族溶媒にジオキサン・テトラヒドロフラン・ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)やアミン系の添加剤を共存させたものを用いて、9−BBNを開始剤として空気雰囲気下でスチレンをリビングラジカル重合させて成るものもまた、本発明者により開発されている(特許文献2参照)。
特開2002−194014号公報 特開2004−83727号公報
しかしながら、空気中の酸素分子バイラジカルが重合反応に対してインヒビター的な働きをする場合など重合反応に悪影響を与える場合が多く、したがって空気雰囲気下でラジカル重合を可能とする重合開始剤は一般的には使用されていない。このような意味で、空気雰囲気下で定量的に進行するラジカル重合は本発明者により確認されたもの以外、知られていない。さらに、そのような重合開始剤を用いてビニルモノマーを重合させて成るビニル重合体、ラジカル重合体は、知られていない。
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、空気雰囲気下で製造可能な新規なビニル重合体製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は以下の特徴を有する。
基本的に、本発明に係るビニル重合体製造方法は、イオン性液体を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とする。イオン性液体とは、カチオン成分とアニオン成分からなる塩であって、常態で液体である溶融塩であり、通常、融点が100℃以下、好ましくは100℃乃至マイナス90℃の化合物である。これらイオン性液体の中で、特に、酸素存在下での重合特性に適する化合物の代表例は下記の第1乃至第6の化合物である。
第1の本発明に係るビニル重合体製造方法は、アルキルホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とし、特に、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Trihexyl(tetradecyl)phosphonium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることが好ましい。
第2の本発明に係るビニル重合体製造方法は、アルキルピリジニウム テトラフルオロボレートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とし、特に、N−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレート(N-Hexylpyridinium tetrafluoroborate)を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることが好ましい。
第3の本発明に係るビニル重合体製造方法は、アルキルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロアルキル)トリフルオロホスフェートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とし、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphate)を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることが好ましい。
第4の本発明に係るビニル重合体製造方法は、アルキルピロリジニウム トリフルオロアルキルスルホン酸を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とし、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネート(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium trifluoromethylsulfonate)を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることが好ましい。
第5の本発明に係るビニル重合体製造方法は、アルキルイミダゾリウム テトラフルオロボレートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とし、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(1-Butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることが好ましい。
第6の本発明に係るビニル重合体製造方法は、アルキルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とし、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(1-Butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate)を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることが好ましい。
重合させるビニルモノマーは、一置換エチレン(ビニル化合物)、1,1-ニ置換エチレン(ビニリデン化合物)、1,2-ニ置換エチレン(ビニレン化合物)、1,1,2-三置換エチレン、1,1,2,2-四置換エチレン、環状オレフィンのいずれであってもよい。これらビニルモノマーの具体的な例としては、一置換エチレン(ビニル化合物)では、スチレン・アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸ブチル・酢酸ビニル・メチルビニルケトン・N-ビニルカルバゾール・N-ビニルピロリドン・アクリルアミド・アクリロニトリルなど、1,1-二置換エチレン(ビニリデン化合物)では、メタクリル酸メチル・メタクリル酸アリル・シアン化ビニリデンなどの化合物がある。この中で、イオン性液体を開始剤として重合させるのに好ましいビニルモノマーは、ビニル化合物・ビニリデン化合物・環状オレフィンである。さらに好ましいビニルモノマーは、ビニル化合物・ビニリデン化合物である。特に、好ましいビニルモノマーとしては、スチレン、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、メチルビニルケトン、その他のビニルモノマーが挙げられる。
各重合開始剤の濃度は、限定されないが、重合させるビニルモノマーに対して0.1モル%乃至10モル%の範囲が好ましく、0.5モル%乃至1モル%前後が特に好ましい。
反応条件は、空気雰囲気下であっても、不活性ガス雰囲気下であってもよい。但し、種々のビニルモノマーのうち酢酸ビニルは、不活性ガス雰囲気下では、重合するが、空気雰囲気下では重合しない。また、第3乃至第6の本発明に係るビニル重合体製造方法では、スチレンは、80℃以上の温度条件下では重合すると考えられるが、低い温度条件下では重合しにくい。
このため、第1および第2の本発明に係るビニル重合体製造方法では、例えば、重合させるビニルモノマーはスチレンである。第1乃至第6の本発明に係るビニル重合体製造方法では、例えば、重合させるビニルモノマーはメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステルである。また、第1乃至第6の本発明に係るビニル重合体製造方法では、例えば、重合させるビニルモノマーはアクリル酸メチル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステルである。
アクリル酸エステル、特に、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸ブチルを重合させる場合、1-ドデカンチオールの存在下で重合させてもよい。このときの溶媒には、エーテル酸素を有する化合物、特に、ジグリムまたはテトラヒドロフランが好ましい。1-ドデカンチオールの添加量は、重合させるビニルモノマーに対し1乃至10モル%の範囲が好ましく、特に3モル%前後が好ましい。空気雰囲気下においても不活性ガス雰囲気下においても、1-ドデカンチオールの存在下で生成ポリマー分子量が著しく小さくなるほか、転化率が著しく大きくなる。このように、テロメリゼーションが促進されるので、テロマーを高収率で合成することが可能になる。
製造されるビニル重合体は、重合末端を除き、材料となるビニルモノマーを用いた通常の重合体と同様の繰返し単位を有する。ビニルモノマーの重合は、ラジカル重合であり、製造されるビニル重合体はラジカル重合体となる。
本発明に係るビニル重合体製造方法は、空気雰囲気下で重合させることが可能である。従って、実際の重合に当っては、重合系内の不活性ガスによる置換が不十分であっても、本発明の場合には良好な重合を行うことができる。重合の際に使用する溶媒は、エーテル酸素を有する化合物、特に、ジオキサン、ジグリムまたはテトラヒドロフランが好ましい。重合は、0℃乃至100℃の範囲、好ましくは40℃乃至80℃の範囲で行うことが好ましい。0℃乃至100℃の範囲で重合させるのは、0℃未満では反応速度が実用的でなく、100℃を超える温度では熱重合を起こすためである。本発明において、「空気雰囲気下」とは、20容量%±5容量%の酸素を含む雰囲気を意味し、地球上で酸素量を調整しない雰囲気下であっても、20容量%±5容量%の範囲で酸素量を調整した雰囲気下であってもよい。
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートは、イオン性液体である。従来、イオン性液体(イオン液体)を重合開始剤として用いた例はない。
重合開始剤として使用可能なイオン性液体としては、次に示すカチオン成分とアニオン成分の組合せからなる塩が挙げられる。カチオン成分としては、ホスホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、スルホニウム等である。アニオン成分としては、ハロゲンイオン、硝酸、硫酸、燐酸、過塩素酸、チオシアン酸、チオ硫酸、亜硫酸、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート等の無機アニオン、蟻酸、蓚酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、アルキルスルホン酸、テトラフルオロボレートのアルキル(またはハロゲン化アルキル)置換体、ヘキサフルオロホスフェートのアルキル(またはハロゲン化アルキル)置換体、スルホニルイミド、トリフルオロメタンスルホニルイミド、ジシアンアミド等の有機アニオンを用いることができる。
それらのイオン性液体の例を挙げれば、
ホスホニウム塩では、
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、
トリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロライド(Trihexyl(tetradecyl)phosphonium chloride)、
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス[オキサレート(2−)]ボレート(Trihexyl(tetradecyl)phosphonium bis[oxalato(2-)]borate)、
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(Trihexyl(tetradecyl)phosphonium tris(pentafluoroethyl)trifluorophosphate)、
イミダゾリウム塩では、
1−エチルー3−メチルイミダゾリウム塩(1-Ethyl-3-methylimidazolium salts)、
1−ブチルー3−メチルイミダゾリウム塩(1-Butyl-3-metylimidazolium salts)、
1−ヘキシルー3−メチルイミダゾリウム塩(1-Hexyl-3-methylimidazolium salts)、
1−メチルー3−オクチルイミダゾリウム塩(1-Methyl-3-octylimidazolium salts)があり、
1−エチルー3−メチルイミダゾリウム塩では、たとえば、
1−エチルー3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-Ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)、
1−エチルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(1-Ethyl-3-methylimidazolium trifluoromethanesulfonate)、
1−エチルー3−メチルイミダゾリウムブロミド(1-Ethyl-3-methylimidazolium bromide)、
1−エチルー3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(1-Ethyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate)、
1−エチルー3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-Ethyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、
1−ブチルー3−メチルイミダゾリウム塩では、たとえば、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(1-Butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate)、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(1-Butyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate)、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート(1-Butyl-3-methylimidazolium trifluoroacetate)、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート(1-Butyl-3-methylimidazolium trifluoromethanesulfonate)、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム塩では、たとえば、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
(1-Hexyl-3-methylimidazolium bis (trifluoromethylsulfonyl)imide)、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート( 1-Hexyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate)、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(1-Hexyl-3-methylimidazolium bromide)、
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム塩では、たとえば、
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(1-Methyl-3-octylimidazolium hexafluorophosphate)、
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド( 1-Methyl-3-octylimidazolium bromide)、
1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-Methyl-3-octylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、
その他のイミダゾリウム塩イオン性液体では、
1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート(1,3-Dimethylimidazolium trifluoromethanesulfonate )、
1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-Octyl-3-methylimidazolium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、
1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロミド(1-Ethyl-2,3-dimethylimidazolium bromide)、
1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-Octadecyl-3-methylimidazolium bis (trifluoromethylsulfonyl)imide)、
ピリジニウム塩では、
N-エチルピリジニウムクロライド(Ethylpyridinium chloride)、
N-エチルピリジニウムブロマイド(N-Ethylpyridinium bromide)、
ピロリジニウム塩では、
1-ブチル-1-メチルピロリジニウムクロライド(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium chloride)、
1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(1-Butyl-1-methylpyrrolidinium trifluoromethanesulfonate)、
グアニジニウム塩では、
グアニジウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(Guanidinium tris(pentafluoroethyl) trifluorophosphate)、
アンモニウム塩では、
メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロアセテート(Methyltrioctylammonium trifluoroacetate)、
N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(N,N-Diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、
N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(N,N-Diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium tetrafluoroborate)、
イソウロニウム塩では、
O-エチル- N,N,N’,N’-テトラメチルイソウロニウムトリフルオロメタンスルホネート(O-Ethyl- N,N,N’,N’-tetramethylisouroniumtrifluoromethanesulfonate)、
O-エチル-N,N,N',N'-テトラメチルイソウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(O-Ethyl-N,N,N',N'-tetramethylisouronium tris (pentafluoroethyl)trifluorophosphate)、
チオウロニウム塩では、
S-エチル- N,N,N’,N’-テトラメチルイソチオウロニウムトリフルオロメタンスルホネート(S-Ethyl-N,N,N',N' -tetramethylisothiouronium trifluoromethanesulfonate)
S-エチル-N,N,N',N'-テトラメチルイソチオウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(S-Ethyl-N,N,N',N'-tetramethylisothiouronium tris (pentafluoroethyl)trifluorophosphate)、
ピペリジニウム(Piperidinium)塩では、
N-メチル-N-プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(N-Methyl-N-propylpiperidinium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、
ピラゾリウム(Pyrazolium)塩では、
1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Butyl-2,3,5-trimethylpyrazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、
1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Ethyl-2,3,5-trimethylpyrazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、
1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(1-Propyl-2,3,5-trimethylpyrazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、
1,2,4-トリメチルピラゾリウム メチルスルフェート(1,2,4-Trimethylpyrazolium methylsulfate)、
スルホニウム(Sulfonium)塩では、
トリエチルスルホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Triethylsulfonium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、
などである。
なお、これらのイオン性液体は例示であり、その他のイオン性液体も、同様に、ビニルモノマーの重合開始剤として利用可能である。
本発明において、製造されるビニル重合体またはラジカル重合体の数平均分子量(Mn)は、千以上百万程度まで一般的には数万から数十万以下の範囲である。但し、製造されるビニル重合体またはラジカル重合体がアクリル酸エステルの場合には、千以上数百万程度まで一般的には数万から数十万以下の範囲である。製造されるビニル重合体またはラジカル重合体は、ポリマーのほか、オリゴマーであってもよい。低い分子量で製造することにより、生分解性を高めることができる。
本発明に係るビニル重合体は、本発明に係るビニル重合体製造方法により製造することができる。
基本的に、本発明に係るビニル重合体は、イオン性液体を重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させて成ることを特徴とする。
また、基本的に、本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、イオン性液体から成ることを特徴とする。
第1の本発明に係るビニル重合体は、アルキルホスホニウム ビス(トリフルオロアルキルスルホニル)イミド、特に、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させて成ることを特徴とする。
第1の本発明に係るビニルラジカル重合体は、アルキルホスホニウム ビス(トリフルオロアルキルスルホニル)イミド、特に、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを重合開始剤として、ビニルモノマーをラジカル重合させて成ることを特徴とする。
第1の本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、アルキルホスホニウム ビス(トリフルオロアルキルスルホニル)イミド、特に、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドから成ることを特徴とする。
第2の本発明に係るビニル重合体は、アルキルピリジニウム テトラフルオロボレート、特に、N−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させて成ることを特徴とする。
第2の本発明に係るビニルラジカル重合体は、アルキルピリジニウム テトラフルオロボレート、特に、N−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレートを重合開始剤として、ビニルモノマーをラジカル重合させて成ることを特徴とする。
第2の本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、アルキルピリジニウム テトラフルオロボレート、特に、N−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレートから成ることを特徴とする。
第3の本発明に係るビニル重合体は、アルキルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロアルキル)トリフルオロホスフェート、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させて成ることを特徴とする。
第3の本発明に係るビニルラジカル重合体は、アルキルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロアルキル)トリフルオロホスフェート、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートを重合開始剤として、ビニルモノマーをラジカル重合させて成ることを特徴とする。
第3の本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、アルキルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロアルキル)トリフルオロホスフェート、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートから成ることを特徴とする。
第4の本発明に係るビニル重合体は、アルキルピロリジニウム トリフルオロアルキルスルホン酸、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させて成ることを特徴とする。
第4の本発明に係るビニルラジカル重合体は、アルキルピロリジニウム トリフルオロアルキルスルホン酸、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネートを重合開始剤として、ビニルモノマーをラジカル重合させて成ることを特徴とする。
第4の本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、アルキルピロリジニウム トリフルオロアルキルスルホン酸、特に、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネートから成ることを特徴とする。
第5の本発明に係るビニル重合体は、アルキルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させて成ることを特徴とする。
第5の本発明に係るビニルラジカル重合体は、アルキルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレートを重合開始剤として、ビニルモノマーをラジカル重合させて成ることを特徴とする。
第5の本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、アルキルイミダゾリウム テトラフルオロボレート、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレートから成ることを特徴とする。
第6の本発明に係るビニル重合体は、アルキルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させて成ることを特徴とする。
第6の本発明に係るビニルラジカル重合体は、アルキルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートを重合開始剤として、ビニルモノマーをラジカル重合させて成ることを特徴とする。
第6の本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、アルキルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、特に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートから成ることを特徴とする。
なお、上記第1〜第6の化合物におけるアルキル基の炭素数は通常、1〜20、好ましくは2〜16である。
本発明に係るビニル重合体の重合開始剤は、前述の本発明に係るビニル重合体製造方法に用いられて、前述の本発明に係るビニル重合体を製造可能にする。
本発明に係るビニル重合体またはビニルラジカル重合体は、例えば、樹脂成形用の充填材として利用可能である。本発明に係るビニル重合体またはビニルラジカル重合体は、生分解性樹脂に充填されて成形されてもよい。生分解性樹脂としては、ポリ乳酸その他の脂肪族ポリエステル樹脂を用いることができる。生分解性樹脂には、シリコーン系化合物、金属塩、金属水酸化塩、りん系化合物その他の難燃化合物が含まれていてもよい。また、生分解性樹脂には、ガラス繊維またはカーボン繊維が含まれていてもよい。本発明に係るビニル重合体またはラジカル重合体は、生分解性樹脂に充填されて成形された場合、廃棄後、生分解性樹脂が微生物の作用で自然に分解し、分散可能である。また、本発明に係るビニル重合体またはビニルラジカル重合体は、塗料、接着剤などに利用可能である。
イオン性液体の物理的化学的性質はまだまだ解明されていないことが多いが、本発明によりイオン性液体の新たな用途を提供できる。
本発明によれば、空気雰囲気下で製造可能な新規なビニル重合体製造方法を提供することができる。なお、後述の実験データは酸素雰囲気の重合によるものであるが、この重合によって転換率が低いものであっても、不活性雰囲気又は重合条件を選択すれば、相当の重合収率は得られるものである。
第1の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(以下、[P(h3)t]TFSIという)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
図1および図2は、本発明の実施の形態を示している。
1−1.[P(h3)t]TFSIを開始剤とするスチレン(St)の重合
[P(h3)t]TFSIの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
表1・表2に、[P(h3)t]TFSIを開始剤とした70℃における、アルゴン雰囲気下および空気雰囲気下におけるStのジオキサン溶液重合の結果を示す。表1・表2の結果から、これらの重合は空気雰囲気下でもアルゴン雰囲気下でも進むことがわかった。また、これらの重合はラジカル重合禁止剤あるいは、ラジカル重合遅延剤として知られるヒドロキノン(HQ)や2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)の添加で完全に禁止された。さらに、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-ドデカンチオール(1-DT)を添加したところ、生成物はオリゴマーしか得られなかった。得られた結果から、[P(h3)t]TFSIがStのラジカル重合開始剤になることが初めてわかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
アルゴン雰囲気下では表3に示すように80℃に温度を上げると重合速度は増加した。80℃では熱重合も起こるが、[P(h3)t]TFSIを添加した場合と比較して転化率は小さく、得られたポリマー分子量及び分子量分布は大きい。
Figure 0004719080
空気雰囲気下では、あまり温度を上げると熱重合が活発になるので、表4に示すように60℃に温度を下げると、重合速度は著しく小さくなった。
Figure 0004719080
表5に示すように、アルゴン雰囲気下70℃におけるこの重合の重合速度はモノマーであるStの濃度に依存しない。通常のラジカル重合では、重合速度はモノマー濃度の一次に比例する。この点で、この重合は通常のラジカル重合と異なる。ここで注目すべきは、モノマー濃度が2.90M・3.48Mでは認められないが、4.35Mそして5.80Mと濃くなるにしたがい、重合時間とともに転化率が増加するのはもちろん生成ポリマーの分子量が明らかに増大するリビング的傾向が認められたことである。一例としてモノマー濃度5.80Mの場合のGPC溶出曲線を図1に示す。
Figure 0004719080
ただし、表6に示すように空気雰囲気下のこの重合では、モノマー濃度が濃くなるにしたがい、重合速度が遅くなりリビング的傾向は確認出来なかった。
Figure 0004719080
1−2.[P(h3)t]TFSIを開始剤とするメタクリル酸メチル(MMA)の重合
表7に、[P(h3)t]TFSIを開始剤とした空気雰囲気下60℃におけるMMAの溶液重合の結果を示す。この重合は、著しい溶媒依存性がありテトラヒドロフラン(THF)中で最も進行しやすいことがわかった。
Figure 0004719080
このTHF溶液重合は表8に示すように、ラジカル重合禁止剤あるいは、ラジカル重合遅延剤として知られるHQやBHTの添加で完全に禁止された。さらに、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTの添加で生成ポリマー分子量が著しく小さくなった。得られた結果から、[P(h3)t]TFSIを開始剤とする空気雰囲気下におけるMMAのTHF溶液重合は、ラジカル機構で進むことがわかった。
Figure 0004719080
一方、図2にそのGPC溶出曲線を示すように、このTHF溶液重合は重合時間とともに転化率が増加するのはもちろん、生成ポリマーの分子量が明らかに減少する傾向が認められることである。これは、ラジカル連鎖移動反応が関与していると推定されるが、低分子量ポリマーを高収率で得る新技術となりうる。
また表9に示すように、この[P(h3)t]TFSIを開始剤とする空気雰囲気下でのMMAの溶液重合は、70℃においても著しい溶媒依存性があり、ジオキサン中でのみ進行することがわかった。
Figure 0004719080
表10に示すように、このジオキサン溶液重合は重合時間とともに転化率が増加するのはもちろん、生成ポリマーの分子量が明らかに減少する傾向が認められたのは、前述のTHF溶液重合と同様であり、低分子量ポリマーを高収率で得る新技術となりうる。
Figure 0004719080
表11に示すように、[P(h3)t]TFSIを開始剤とするMMAの溶液重合はアルゴン雰囲気下でも著しい溶媒依存性があり、ジオキサン中で最も進行しやすいことがわかった。
Figure 0004719080
1−3.[P(h3)t]TFSIを開始剤とする アクリル酸メチル(MA)・アクリル酸エチル(EA)・アクリル酸ブチル(BA)の重合
表12・表13に、[P(h3)t]TFSIを開始剤とした60℃における、アルゴン雰囲気下および空気雰囲気下におけるMAの溶液重合の結果を示す。バルク重合は進まないものの、これらの表を比較するとアルゴン雰囲気下で重合が進む場合が多く、空気雰囲気下では重合が抑制されることがわかった。また、この重合反応には著しい溶媒依存性があり、THF・ジオキサン・ジグリム中で反応が進行しやすいことがわかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
この60℃におけるMAのTHF溶液重合は表14に示すように、ラジカル重合禁止剤あるいはラジカル重合遅延剤として知られるHQやBHTの添加で著しく抑制される傾向が、特にアルゴン雰囲気下で認められたことから、ラジカル重合であると推定した。ここで注目すべきは空気雰囲気下においてもアルゴン雰囲気下においても、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTの添加で生成ポリマー分子量が著しく小さくなるのはもちろん、転化率が著しく大きくなることである。つまり、THF溶媒中[P(h3)t]TFSIと1-DTの共存下でテロメリゼーションが促進されることを見いだした。このことは、MAのテロマーを高収率で合成する新技術となりうる。
Figure 0004719080
表15・表16には[P(h3)t]TFSIを開始剤とした60℃における、アルゴン雰囲気下および空気雰囲気下におけるEAの溶液重合の結果を示す。前述のMAの溶液重合の場合と同様、バルク重合は進まないものの、これらの表を比較するとアルゴン雰囲気下で重合が進む場合が多く、空気雰囲気下で重合が抑制されることがわかった。また、この重合反応には著しい溶媒依存性があり、THF・ジオキサン・ジグリム中で反応が進行しやすいことがわかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
この60℃におけるEAのTHF溶液重合は表17に示すように、空気雰囲気下においてもアルゴン雰囲気下においても、HQやBHTの添加で著しく抑制されることから、ラジカル重合であると推定した。さらに、MAのTHF溶液重合の場合と同様、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTの添加で生成ポリマー分子量が著しく小さくなるのはもちろん、転化率が著しく大きくなることがわかった。つまり、THF溶媒中[P(h3)t]TFSIと1-DTの共存下でテロメリゼーションが促進されることを見いだした。このことは、EAのテロマーを高収率で合成する新技術となりうる。
Figure 0004719080
表18・表19には[P(h3)t]TFSIを開始剤とした60℃における、アルゴン雰囲気下および空気雰囲気下におけるBAの溶液重合の結果を示す。前述のMAやEAの溶液重合の場合と同様、バルク重合は進まない。また、この重合反応には著しい溶媒依存性があり、THF・ジオキサン・ジグリム中で反応が進行しやすいことがわかった。THF・ジオキサンを溶媒に用いた場合はアルゴン雰囲気下ですみやかに重合が進み、ジグリムを溶媒に用いた場合には空気雰囲気下ですみやかに重合が進んだ。
ものの、これらの表を比較するとアルゴン雰囲気下で重合が進む場合が多く、空気雰囲気下で重合が抑制されることがわかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
この60℃におけるBAのTHF溶液重合は表20に示すように、EAのTHF溶液重合の場合と同様、空気雰囲気下においてもアルゴン雰囲気下においても、HQやBHTの添加で著しく抑制されることから、ラジカル重合であると推定した。さらに、MAやEAのTHF溶液重合の場合と同様、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTの添加で生成ポリマー分子量が著しく小さくなるのはもちろん、転化率が著しく大きくなることがわかった。つまり、THF溶媒中[P(h3)t]TFSIと1-DTの共存下でテロメリゼーションが促進されることを見いだした。このことは、BAのテロマーを高収率で合成する新技術となりうる。
Figure 0004719080
第2の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、N−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレート(以下、[hpyr]BF4という)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
図3および図4は、本発明の実施の形態を示している。
2−1.[hpyr]BF4を開始剤とするStの重合
[hpyr]BF4の構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
表21に、[hpyr]BF4を開始剤とした60℃における空気雰囲気下でのStの溶液重合の結果を示す。バルク重合は全く進行しないのに加え、ベンゼン・トルエン・ジグリム・ジオキサン・THF・四塩化炭素・ジメチルホルムアミド(DMF)・ジメチルスルホキシド(DMSO)などの溶媒中でほとんど重合開始能を示さなかった。
Figure 0004719080
2−2.[hpyr]BF4 を開始剤とするMMAの重合
表22には、[hpyr]BF4を開始剤とした60℃における空気雰囲気下でのMMAの溶液重合の結果を示す。バルク重合が全く進行しないのはStの重合と同様であったが、ジグリム・ジオキサン・THFの溶媒中で重合が進んだ。[hpyr]BF4のビニル重合開始能はここで初めて明らかになった。
Figure 0004719080
表23・表24にはMMAのジグリム及びTHF溶液重合の結果をそれぞれ示す。THF溶液重合はアルゴン雰囲気下でも進むが、ジグリム溶液重合はアルゴン雰囲気下では進まない。また、これらの空気雰囲気下での重合は、HQやBHTの添加で完全に禁止された。さらに、ラジカル連鎖移動剤である1-DTを添加したところ、生成ポリマーの分子量は著しく小さくなった。得られた結果から、[hpyr]BF4を開始剤とする空気雰囲気下でのMMAの溶液重合はラジカル機構で進むことがわかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
2−3.[hpyr]BF4を開始剤とするMA・EA・BAの重合
図3に空気雰囲気下60℃におけるMA・EA・BAのTHF溶液重合のタイムコンバージョンを示す。これらのモノマーは空気雰囲気下で速やかに重合し、それらの重合速度はほぼ等しかった。
表25・表26・表27には図3で得られたポリマーの分子量に関するデータに加え、様々な条件下での60℃におけるMA・EA・BAのTHF溶液重合の結果をそれぞれ示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
Figure 0004719080
先に述べたようにこれらの重合は空気雰囲気下で速やかに進むのに加えて、アルゴン雰囲気下でもある程度進むことがわかった。前述のMMAに引き続き、[hpyr]BF4のMA・EA・BAに対するビニル重合開始能はここで初めて明らかになった。さらに、空気雰囲気下での重合は、HQやBHTの添加で完全に禁止されることから、ラジカル機構であることがわかった。また、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTの添加で生成ポリマー分子量が著しく小さくなるのはもちろん、転化率が著しく大きくなることがわかった。つまり、THF溶媒中[hpyr]BF4と1-DTの共存下でテロメリゼーションが促進されることを見いだした。このことは、MA・EA・BAのテロマーを高収率で合成する新技術となりうる。一方、これら空気雰囲気下でのTHF溶液重合は、図4にその一例としてのポリ(MA)のGPC溶出曲線を示すように、重合時間とともに転化率が増加するのはもちろん、生成ポリマーの分子量が明らかに減少する傾向が認められた。これは、ラジカル連鎖移動反応が関与していると思われるが、MA・EA・BAの低分子量ポリマーを高収率で得る新技術となりうる。
表28・表29・表30に示すように、これら[hpyr]BF4を開始剤とする空気雰囲気下でのMA・EA・BAの溶液重合は、著しい溶媒依存性があり、上述のTHF以外ではジグリム中でのみ進行することがわかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
Figure 0004719080
第3の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(以下、([bmpl]e3fapという)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
3−1.[bmpl]e3fapを開始剤とするStの重合
[bmpl]e3fapの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
表31・表32には、[bmpl]e3fapを開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのStのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。バルク重合はほとんど進行しないのに加え、ベンゼン・トルエン・ジグリム・ジオキサン・THF・四塩化炭素・DMFなどの溶媒中でもほとんど重合開始能を示さなかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
3−2.[bmpl]e3fapを開始剤とするMMAの重合
表33・表34には、[bmpl]e3fapを開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMMAのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。バルク重合はほとんど進行しないが、ジグリムやジオキサンを溶媒に用いた場合、ある程度重合することがわかった。特に空気雰囲気下のジグリム溶液重合が最も反応速度が速かった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表35に空気雰囲気下60℃におけるMMAのジグリム溶液重合の結果を示す。HQやBHTの添加でこの重合は完全に禁止された。さらに、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTを添加したところ、生成ポリマーの分子量が激減したことから、[bmpl]e3fapがMMAのラジカル重合開始剤になることが初めてわかった。
Figure 0004719080
3−3.[bmpl]e3fapを開始剤とするMA・EA・BAの重合
表36には、[bmpl]e3fapを開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMA・EA・BAのバルク重合の結果をそれぞれ示す。アルゴン雰囲気下BAのみが[bmpl]e3fapによって重合されることがわかった。
Figure 0004719080
表37には、[bmpl]e3fapを開始剤としたアルゴン雰囲気下70℃におけるBAの溶液重合の結果を示す。THF・ジグリム・ジオキサン中では重合が進むものの、ベンゼン・トルエン・DMF・DMSO中では重合が全く進まないという著しい溶媒依存性を見いだした。
Figure 0004719080
また、表38に示すように、この重合は空気雰囲気下ではバルク重合同様、THF・ジグリム・ジオキサン・ベンゼン・トルエン・DMF・DMSOなどの溶媒中でも全く進まなかった。
Figure 0004719080
第4の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネート(以下、([bmpl]SO3CF3という)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
4−1.[bmpl]SO3CF3を開始剤とするStの重合
.[bmpl]SO3CF3の構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
表39・表40には、[bmpl]SO3CF3を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのStのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。バルク重合はほとんど進行しないのに加え、ベンゼン・トルエン・ジグリム・ジオキサン・THF・四塩化炭素・DMFなどの溶媒中でもほとんど重合開始能を示さなかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
4−2.[bmpl]SO3CF3を開始剤とするMMAの重合
表41・表42には、[bmpl]SO3CF3を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMMAのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。アルゴン雰囲気下のバルク重合及び、ジグリム・ジオキサン・THFを溶媒に用いた場合、ある程度重合することがわかった。さらに、アルゴン雰囲気下のバルク重合とジグリムおよびジオキサン溶液重合で得られたポリマーは超高分子量ポリマーであった。重合速度は遅いものの、[bmpl]SO3CF3にビニル重合開始能のあることはここで初めて明らかになった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表43に[bmpl]SO3CF3を開始剤とした60℃におけるMMAのジグリム溶液重合の結果を示す。この重合はアルゴン雰囲気下では抑制される傾向が認められた。また、空気雰囲気下の重合は、HQやBHTの添加で完全に禁止された。さらに、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTを添加したところ、生成ポリマーの分子量が激減したことから、この重合がラジカル機構で進むことがわかった。
Figure 0004719080
4−3.[bmpl]SO3CF3を開始剤とするMA・EA・BAの重合
表44には、[bmpl]SO3CF3を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMA・EA・BAのバルク重合の結果をそれぞれ示す。アルゴン雰囲気下BAのみが[bmpl]SO3CF3によって、わずかながら重合されることがわかった。
Figure 0004719080
表45には、[bmpl]SO3CF3を開始剤としたアルゴン雰囲気下70℃におけるBAの溶液重合の結果を示す。THF・ジグリム・ジオキサン中では重合が進むものの、ベンゼン・トルエン・DMF・DMSO中では重合がほとんど進まないという著しい溶媒依存性を見いだした。
Figure 0004719080
また、表46に示すように、この重合は空気雰囲気下ではバルク重合同様、THF・ジグリム・ジオキサン・ベンゼン・トルエン・DMF・DMSOなどの溶媒中でも全く進まなかった。
Figure 0004719080
第5の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(以下、([bmim]BF4という)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
5−1.[bmim]BF4を開始剤とするStの重合
[bmim]BF4の構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
表47・表48には、[bmim]BF4を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのStのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。バルク重合はほとんど進行しないのに加え、ベンゼン・トルエン・ジグリム・ジオキサン・THF・四塩化炭素・DMF・DMSOなどの溶媒中でもさほど重合は進まなかったが、このなかではTHF中で最も重合が進む傾向が認められた。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
5−2.[bmim]BF4を開始剤とするMMAの重合
表49・表50には、[bmim]BF4を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMMAのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。バルク重合は全く進行しなかった。アルゴン雰囲気下ではジオキサン・トルエン・THF(ただしTHFを用いた重合は60℃)を用いた場合に重合する傾向が認められた。空気雰囲気下ではジオキサン・ジグリムを用いた場合に重合する傾向が認められた。このように、重合速度は遅いものの、[bmim]BF4にビニル重合開始能のあることはここで初めて明らかになった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
5−3.[bmim]BF4を開始剤とするMA・EA・BAの重合
表51には、[bmim]BF4を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMA・EA・BAのバルク重合の結果をそれぞれ示す。アルゴン雰囲気下BAのみが[bmim]BF4によって、わずかながら重合されることがわかった。
Figure 0004719080
表52には、[bmim]BF4を開始剤としたアルゴン雰囲気下70℃におけるBAの溶液重合の結果を示す。THF(ただしTHFを用いた重合は60℃)・ジグリム・ジオキサン中では重合が進むものの、ベンゼン・トルエン・DMF・DMSO中では重合が全く進まないという著しい溶媒依存性を見いだした。
Figure 0004719080
また、表53に示すように、この重合は空気雰囲気下ではバルク重合同様、THFを溶媒とした場合を除き(ただしTHFを用いた重合は60℃)、ジグリム・ジオキサン・ベンゼン・トルエン・DMF・DMSOなどの溶媒中でも全く進まなかった。
Figure 0004719080
第6の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(以下、[bmim]PF6という)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
6−1.[bmim]PF6を開始剤とするStの重合
[bmim]PF6の構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
表54・表55には、[bmim]PF6を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのStのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。バルク重合はほとんど進行しないのに加え、ベンゼン・トルエン・ジグリム・ジオキサン・THF・四塩化炭素・DMF・DMSOなどの溶媒中でもさほど重合は進まなかった(ただしTHFを用いた重合は60℃)。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
6−2.[bmim]PF6を開始剤とするMMAの重合
表56・表57には、[bmim]PF6を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMMAのバルク重合と各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。バルク重合は全く進行しなかった。アルゴン雰囲気下ではジオキサン・ジグリムを用いた場合に重合する傾向が認められた。空気雰囲気下ではアルゴン雰囲気下と比較すると、かなり重合速度はおそくなるものの、ジオキサン・ジグリム・THFを用いた場合に多少重合する傾向が認められた。このように、重合速度は遅いものの、[bmim]PF6にビニル重合開始能のあることはここで初めて明らかになった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
6−3.[bmim]PF6を開始剤とするMA・EA・BAの重合
表58には、[bmim]PF6を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下及び空気雰囲気下でのMA・EA・BAのバルク重合の結果をそれぞれ示す。アルゴン雰囲気下BAのみが[bmim]PF6によって、わずかながら重合されることがわかった。
Figure 0004719080
表59には、[bmim]PF6を開始剤とした空気雰囲気下60℃におけるMAのTHF溶液重合の結果を示す。この重合速度は極めて遅いものの、HQやBHTの添加で完全に禁止されたことから、ラジカル機構で反応が進むことが示唆された。また、ラジカル連鎖移動剤として知られる1-DTの添加で生成ポリマー分子量が著しく小さくなるのはもちろん、転化率が著しく大きくなる(重合速度が著しく早くなる)ことがわかった。つまり、THF溶媒中[bmim]PF6と1-DTの共存下でテロメリゼーションが促進されることを見いだした。このことは、MAのテロマーを高収率で合成する新技術となりうる。
Figure 0004719080
表60・表61には、[bmim]PF6を開始剤とした空気雰囲気下60℃におけるEA・BAのTHF溶液重合の結果をそれぞれ示す。重合挙動は上述のMAのTHF溶液重合の場合と酷似している。特にBAのTHF溶液重合の場合、THF溶媒中[bmim]PF6と1-DTの共存下でテロメリゼーションが促進されることがわかった。このことは、BAのテロマーを高収率で合成する新技術となりうる。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表62・表63には、[bmim]PF6を開始剤とした70℃におけるアルゴン雰囲気下および空気雰囲気下でのBAの各種溶液重合の結果をそれぞれ示す。アルゴン雰囲気下の重合ではジオキサン・ジグリム・THFを用いた場合に明らかに重合する傾向が認められた。このような条件の下[bmim]PF6にBAのビニル重合開始能のあることはここで初めて明らかになった。それに対して、空気雰囲気下の重合ではバルク重合同様、どの溶媒を用いても[bmim]PF6はBAを全く重合しなかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
第7の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレート(以下、[P(h3)t]BF4という)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
図5乃至図11は、本発明の実施の形態を示している。
P(h3)t]BF4の構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
7−1.P(h3)t]BF4を開始剤とするSt・MAの重合
表64に、P(h3)t]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるStの各種溶液重合の結果を示す。また、表2に、P(h3)t]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるMAの各種溶液重合の結果を示す。表1・表2の結果から、空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下における70℃での[P(h3)t]BF4を開始剤とするStのバルク重合及び各種溶液重合は殆ど進行しないのに対して、MAの重合は限られた溶媒中で容易に進行することがわかった。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
7−2.P(h3)t]BF4を開始剤とするEA・BAの重合
表66に、P(h3)t]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるEAの各種溶液重合の結果を示す。また、表67に、P(h3)t]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるBAの各種溶液重合の結果を示す。表66・表67の結果から、空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下における70℃での[P(h3)t]BF4を開始剤とするEA・BAの重合も限られた溶媒中でのみ進行することがわかった。具体的にはエーテル酸素を有する化合物であるジグリム・ジオキサン・THFを溶媒として用いた場合に容易に重合の進む傾向が認められた。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
7−3.P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAの重合
表68に、P(h3)t]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。また、表6に、P(h3)t]BF4を開始剤とした60℃・70℃におけるアルゴン雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。表5・表6の結果から、空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下における70℃での[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAの重合はEA・BAの重合同様、限られた溶媒中で容易に進行する傾向が認められた。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
7−4.P(h3)t]BF4開始MMA重合における添加剤の効果
図5に、アルゴン雰囲気下70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のBHT、1-DTの添加によるタイムコンバージョンを示す。また、表70に、アルゴン雰囲気下70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合の1-DTの効果を示す。図6に、空気雰囲気下70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のタイムコンバージョンを示す。また、表71に、空気雰囲気下70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合の1-DTの効果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
図5に示すように、そのMMAのジオキサン溶液重合は、ラジカル重合禁止剤として知られるBHTの添加で完全に禁止された。また、ラジカル連鎖移動剤である1-DTの添加で重合反応が著しく抑制された。
また、表70に示すように、1-DTの添加で生成ポリマーの分子量が減少した。さらに、ここで注目すべきは反応時間に伴い転化率が大きくなるのはもちろん、生成ポリマー分子量の増大する傾向が認められた。
図6、表71に示すように、空気雰囲気下の重合においてもアルゴン雰囲気下と同様の傾向が認められたが、反応時間に伴い生成ポリマー分子量の増大する傾向は認められなかった。
7−5.[P(h3)t]BF4開始MMAジオキサン溶液重合における重合温度の影響
図7に、空気雰囲気下50℃、60℃、70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のタイムコンバージョンを示す。
図7に示すように、この[P(h3)t]BF4を開始剤とする空気雰囲気下でのMMAのジオキサン溶液重合における重合速度は、著しい反応温度依存性のあることがわかった。つまり、この重合は60℃・70℃においては速やかに進行したが、50℃においては完全に禁止された。
7−6.[P(h3)t]BF4開始MMAのTHF溶液重合における添加剤の影響
図8に、空気雰囲気下60℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのTHF溶液重合のHQ、BHTの添加のタイムコンバージョンを示す。また、表72に、空気雰囲気下60℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのTHF溶液重合の1-DTの効果を示す。図9に、ポリ(MMA)の転化率の増加に伴うGPCパターンの遷移を示す。
図9、表72に示すように、空気雰囲気下60℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのTHF溶液重合はHQやBHTの添加で完全に禁止されるとともに、1-DTの添加で生成ポリマー分子量が減少した。
また、図9に示すように、ここで注目すべきは反応時間に伴い生成ポリマー分子量の減少する傾向が認められたことである。
Figure 0004719080
7−7.[P(h3)t]BF4開始MMAのTHF溶液重合における開始剤濃度の影響
.[P(h3)t]BF4開始MMAのTHF溶液重合における開始剤濃度の影響を表73に示す。図10に、ポリ(MMA)の転化率の増加に伴うGPCパターンの遷移を示す。
Figure 0004719080
表73に示すとおり、P(h3)t]BF4を開始剤とする空気雰囲気下60℃におけるMMAのTHF溶液重合における重合速度の開始剤濃度依存性は、明確には観察されなかった。しかし、開始剤濃度によらず、反応時間に伴い生成ポリマー分子量の減少する傾向が認められた。
以上の結果から、ホスホニウム塩系イオン性液体である[P(h3)t]BF4のビニル重合開始能について検討した。空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下における70℃での[P(h3)t]BF4を開始剤とするStのバルク重合及び各種溶液重合は殆ど進行しないのに対して、MA・EA・BAなどのアクリル酸エステルやMMAなどのメタクリル酸エステルの重合は限られた溶媒中で容易に進行した。アルゴン雰囲気下70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合はラジカル重合禁止剤として知られるBHTの添加で完全に禁止された。また、ラジカル連鎖移動剤である1-DTの添加で重合反応が著しく抑制された。ここで注目すべきは反応時間に伴い転化率が大きくなるのはもちろん、生成ポリマー分子量の増大する傾向が認められたことである。得られた結果は、この重合がラジカル機構で進行しリビング性を有することを示唆した。一方、空気雰囲気下60℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのTHF溶液重合はHQやBHTの添加で完全に禁止されるとともに、1-DTの添加で生成ポリマー分子量が減少するというラジカル重合挙動を示し、さらに反応時間に伴い生成ポリマー分子量の減少する傾向が認められたことは、破壊的ラジカル連鎖移動反応が併発していることを示唆した。
第8の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロアセテート(Methyltrioctylammonium trifluoroacetate)(以下、[Nmo3]atfという)・N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(N,N-Diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)(以下、[DEME]TFSIという)・N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(N,N-Diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium tetrafluoroborate)(以下、[DEME]BF4という)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
[Nmo3]atfの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
[DEME]TFSIの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
[DEME]BF4の構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
8−1.[Nmo3]atf を開始剤とするStの重合
表74に、[Nmo3]atfを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるStの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
表74の結果から、[Nmo3]atfを開始剤とする70℃におけるStの重合は、空気雰囲気下であれアルゴン雰囲気下であれ、バルク重合はもちろんさまざまな溶媒を用いた溶液重合も全く進行しないかほとんど進行しなかった。
8−2.[Nmo3]atfを開始剤とするMMAの重合
表75に、[Nmo3]atfを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。表76に、[Nmo3]atfを開始剤とした60℃・70℃における、アルゴン雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表75、表76の結果から、空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下における[Nmo3]atfを開始剤とする70℃でのMMAの重合は、特定の溶媒中で進行しやすい傾向が認められた。特に70℃におけるMMAの熱重合は、空気雰囲気下でTHF溶媒を用いた場合やアルゴン雰囲気下でトルエン溶媒を用いた場合はまったく進まないことを考慮すると、[Nmo3]atfがMMAの重合を開始していると思われる。一方、これらの重合においては、アルゴン雰囲気下で得られたポリマーの方が空気雰囲気下で得られたポリマーの分子量よりも大きかった。
8−3.空気雰囲気下[Nmo3]atfを開始剤とするMMAのTHF溶媒重合における添加剤の効果
表77に、[Nmo3]atfを開始剤とした60℃における、空気雰囲気下におけるMMAのTHF溶媒重合における添加剤の効果を示す。
Figure 0004719080
表77に示すように、空気雰囲気下70℃における[Nmo3]atfを開始剤とするMMAのTHF溶液重合には誘導期が観察された。また、重合反応がレベルオフする傾向が認められたが、このことは重合初期に開始剤が消費され尽くしたことを示唆している。一方、この重合はラジカル重合禁止剤として知られるヒドロキノン(HQ)や2,6-ジ-第三-ブチル-p-クレゾール(BHT)の添加で完全に禁止されると同時に、ラジカル連鎖移動剤である1-ドデカンチオール(1-DT)の添加で著しく抑制され生成ポリマーの分子量が小さくなった。得られた結果から、この重合が特殊なラジカル機構で進行していると推定した。
8−4.[Nmo3]atfを開始剤とするEAの重合
表78に、[Nmo3]atfを開始剤とする60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるEAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
表78に示すように、[Nmo3]atfを開始剤とする70℃におけるEAの重合は空気雰囲気下では完全に禁止されたが、アルゴン雰囲気下においては特定の溶媒を用いた溶液重合の進行しやすい傾向が認められた。特に、同一条件下でのバルク重合・トルエン溶液重合・四塩化炭素溶液重合の熱重合は全く進行しないことを確認しているので、[Nmo3]atf がEAの重合を開始していることが示唆された。
8−5.[DEME]TFSIを開始剤とするStの重合
表79に、[DEME]TFSIを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるStの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
表79に示すように、空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下における[DEME]TFSIを開始剤とする70℃でのStの重合は、[Nmo3]atfを開始剤として用いた場合と同様、バルク重合はもちろんさまざまな溶媒を用いた溶液重合もまったく進行しないかほとんど進行しなかった。
8−6.[DEME]TFSIを開始剤とするMMAおよびMAの重合
表80に、[DEME]TFSIを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。また、表8に、[DEME]TFSIを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるMAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表80、表81に示すように、[DEME]TFSI を開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、空気雰囲気下のジグリム溶液重合及びアルゴン雰囲気下のTHF溶液重合が比較的進行しやすい傾向が認められたが、同一条件下での熱重合もある程度進行することを考えると、[DEME]TFSIのMMAに対する重合開始能はかんばしくない。それに対して、[DEME]TFSI を開始剤とする70℃ におけるMAの重合は、空気雰囲気下では完全に禁止されたが、アルゴン雰囲気下においては特定の溶媒を用いた溶液重合が進行しやすい傾向が認められた。特に、トルエンを溶媒に用いた場合の、同一条件下での熱重合は全く進行しないことを確認しているので、[DEME]TFSIがMAの重合を開始していることを示唆した。
8−7.[DEME]TFSIを開始剤とするEAおよびBAの重合
表82に、[DEME]TFSIを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるEAの各種溶液重合の結果を示す。また、表83に、[DEME]TFSIを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるBAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表82、表83に示すように、[DEME]TFSI を開始剤とする70℃におけるEAの重合は、空気雰囲気下では完全に禁止されたが、アルゴン雰囲気下一部の溶液重合が進行した。特に、バルク重合やベンゼン・トルエン・四塩化炭素溶液重合における熱重合は全く進行しないことを確認しているので、[DEME]TFSI がEAの重合を開始していることが示唆された。一方、[DEME] TFSIを開始剤とする70℃におけるBAの重合は限られた条件下で進行しやすい傾向が認められた。空気雰囲気下でのTHF溶液重合やアルゴン雰囲気下でのバルク重合及びベンゼン・トルエン溶液重合における熱重合は全く進行しないことから、[DEME]TFSIがBAの重合を開始していることが示唆された。
8−8.[DEME]BF4を開始剤とするStの重合
表84に、[DEME]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるStの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
表84に示すように、[DEME]BF4を開始剤とする70℃におけるStの重合は、[Nmo3]atfや[DEME]TFSIを開始剤として用いた場合と同様、空気雰囲気下においてもアルゴン雰囲気下においても、バルク重合はもちろんさまざまな溶媒を用いた溶液重合も全く進行しないかほとんど進行しなかった。
8−9.[DEME]BF4を開始剤とするMMAおよびMAの重合
表85に、[DEME]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。また、表86に、[DEME]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるMAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表86、87に示すように、[DEME]BF4を開始剤とする70℃におけるMMAの空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下の重合はほとんどの場合が全く進行しないかほとんど進行しない中、空気雰囲気下におけるジグリム溶液重合が比較的進行したが、同一条件下での熱重合もある程度進行することを考えると、[DEME]BF 4のMMAに対する重合開始能は低いと思われる。一方、[DEME]BF4を開始剤とする70℃におけるMAの重合については、特定の溶媒を用いた溶液重合が進行する傾向を確認したが、この中で空気雰囲気下でのTHF溶液重合について熱重合が起こらないことから、その意味で[DEME]BF4のMAに対する重合開始能が示唆された。
8−10.[DEME]BF4を開始剤とするEAおよびBAの重合
表88に、[DEME]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるEAの各種溶液重合の結果を示す。また、表89に、[DEME]BF4を開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下におけるBAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表88、表89に示すように、空気雰囲気下及びアルゴン雰囲気下における[DEME]BF4を開始剤とする70℃におけるEAの重合は、大部分の場合が全く進行しなかったが、限られた溶媒中で重合が進行した。中でも、空気雰囲気下のTHF溶液重合については熱重合が起こらないことから、[DEME]BF4がEAの重合を開始していると思われる。一方、[DEME]BF4を開始剤とする7 0℃におけるBAの重合については、空気雰囲気下におけるTHF溶液重合やアルゴン雰囲気下におけるバルク重合が進行することは、これらの熱重合が全く起こらないことから、[DEME]BF4のBAに対する重合開始能を示唆している。
以上の結果から、アンモニウム塩系イオン性液体である[Nmo3]atf・[DEME]TFSI・[DEME]BF4を開始剤とする空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下における70℃でのStの重合を試みたが、バルク重合はもちろん種々の溶媒を用いた溶液重合も全く進行しないかほとんど進行しなかった。同様にMMAの重合も試みたが、[DEME]TFSI・[DEME]BF4のMMAに対する重合開始能はかんばしくなかった。しかし、[Nmo3]atf は70℃において、空気雰囲気下でTHF溶媒を用いた場合やアルゴン雰囲気下でトルエン溶媒を用いた場合、MMAの重合を開始した。この空気雰囲気下70℃における[Nmo3]atfを開始剤とするMMAのTHF溶液重合は誘導期が観察されると同時に、HQやBHTの添加で完全に禁止された。さらにこの重合は、1-DTの添加で著しく抑制され生成ポリマーの分子量が小さくなった。得られた結果は、この重合が特殊なラジカル機構で進行していることを示唆した。一方、これらのアンモニウム塩系イオン性液体は、以下に記載するとおり、限られた条件下でアクリル酸エステル類に対する重合開始能のあることがわかった。
(1)[Nmo3]atf はEAに対して、アルゴン雰囲気下70℃で、バルク重合・トルエン溶液重合・四塩化炭素溶液重合を開始した。(2)[DEME]TFSIはMAに対して、アルゴン雰囲気下70℃で、トルエン溶液重合を開始した。(3)[DEME]TFSIはEAに対して、アルゴン雰囲気下70℃で、バルク重合・ベンゼン溶液重合・トルエン溶液重合・四塩化炭素溶液重合を開始した。(4)[DEME]TFSIはBAに対して、空気雰囲気下60℃でTHF溶液重合を開始すると同時に、アルゴン雰囲気下70℃でバルク重合・ベンゼン溶液重合・トルエン溶液重合を開始した。(5)[DEME]BF4はMAに対して、空気雰囲気下60℃でTHF溶液重合を開始した。(6)[DEME]BF 4はEAに対して、空気雰囲気下60℃でTHF溶液重合を開始した。(7)[DEME]BF4はBAに対して、空気雰囲気下60℃でTHF溶液重合を開始すると同時に、アルゴン雰囲気下70℃でバルク重合を開始した。
第9の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、O-エチル-N,N, N',N'-テトラメチルイソウロニウム トリフルオロメタンスルホネート(O-Ethyl-N,N, N',N'-tetramethylisouronium trifluoromethanesulfonate)(以下、[etmi]otfという)・O-エチル-N,N,N',N'-テトラメチルイソウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(O-Ethyl-N,N,N',N'-tetramethylisouronium tris (pentafluoroethyl)trifluorophosphate)(以下、[etmi]e3fapという)を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
図11乃至図16は、本発明の実施の形態を示している。
[etmi]otfの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
[etmi]e3fapの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
9−1.[etmi]otfを開始剤とするStの重合
表90に、[etmi]otfを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下におけるStの各種溶液重合の結果を示す。また、表91に、[etmi]otfを開始剤とした60℃・70℃における、アルゴン雰囲気下におけるBAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
表90、表91に示すように、[etmi]otfを開始剤とする70℃におけるStの重合は、限られた条件下で進むことがわかった。具体的には空気雰囲気下であれアルゴン雰囲気下であれ、溶媒にジグリムを用いた場合に重合が最も速やかに進行し、分子量数万程度のポリマーが得られた。
9−2.[etmi]otfを開始剤とするMMAの重合
表92に、[etmi]otfを開始剤とした60℃・70℃における、空気雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。また、表93に、[etmi]otfを開始剤とした60℃・70℃における、アルゴン雰囲気下におけるMMAの各種溶液重合の結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
[etmi]otfを開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、特定の溶媒を用いた溶液重合の進行しやすい傾向が認められた。特に、70℃におけるMMAの熱重合は、空気雰囲気下でジオキサン溶媒を用いた場合や、アルゴン雰囲気下でベンゼン・トルエン・ジオキサン・DMF・DMSO溶媒を用いた場合はほとんど進行しないことを考慮すると、[etmi]otfがMMAの重合を開始していることが示唆された。
9−3.アルゴン雰囲気下[etmi]otf開始MMAジオキサン溶媒重合の添加剤の効果
図11に、アルゴン雰囲気下70℃における[etmi]otfを開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のHQ、BHT、1-DTの添加によるタイムコンバージョンを示す。また、表94に、アルゴン雰囲気下70℃における[etmi]otfを開始剤とするMMAの重合の結果を示す。
Figure 0004719080
その結果、アルゴン雰囲気下70℃における[etmi]otf を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合は速やかに進行し、重合時間8時間で転化率は45%を超えた。この重合は、ラジカル重合禁止剤として知られるヒドロキノン(HQ)や2,6-ジ-第三-ブチル-p-クレゾール(BHT)、あるいはラジカル連鎖移動剤である1-ドデカンチオール(1-DT)添加で著しく抑制されるか、完全に禁止された。また、同一条件下におけMMAの熱重合は極めて進みにくいことを確認しており、[etmi]otf が重合開始反応に関与していることはあきらかである。
9−4.アルゴン雰囲気下[etmi]otf開始MMAジオキサン溶液重合の反応温度の影響
図12に、アルゴン雰囲気下50℃、60℃、70℃における[etmi]otfを開始剤とするStのMMAジオキサン溶液重合のタイムコンバージョンを示す。また、表95に、アルゴン雰囲気下における[etmi]otfを開始剤とするMMAの重合の温度による影響の結果を示す。
Figure 0004719080
その結果、さらに、この重合は前述のように70℃では速やかに進行するものの、60℃では著しく抑制され、50℃ では完全に禁止された。得られた結果は、この[etmi]otfを開始剤とするMMAの重合が熱解離から発生するラジカルによって開始されるラジカル機構で進むことを示唆した。
9−5.[etmi]otfを開始剤とするMAの重合
表96、表97に実験条件と結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
[etmi]otf を開始剤とする70℃におけるMAの重合は、限られた条件下で進行しやすい傾向が認められた。特に、70℃におけるMAの熱重合は、バルク重合では完全に禁止されるのはもちろん、空気雰囲気下でジグリム溶媒を用いた場合以外は進行しないことや、アルゴン雰囲気下でジグリム・ジオキサン・THF溶媒を用いた場合以外進行しないことを考慮すると、[etmi]otfのMAに対する重合開始能が強く示唆された。
9−6.[etmi]e3fapを開始剤とするStの重合
表98、表99に実験条件と結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
[etmi]e3fapを開始剤とする70℃におけるSt重合は、限られた条件下で進むことがわかった。特に空気雰囲気下のバルク重合が最も進みやすく、反応時間4時間で転化率が25%をこえた。しかし、生成ポリマー分子量は8000程度であった。
9−7.[etmi]e3fap開始重合の添加剤効果
図13に、空気雰囲気下70℃における[etmi]e3fapを開始剤とするStの重合のBHT、1-DTの添加によるタイムコンバージョンを示す。また、表100に、その添加による効果を示す。
Figure 0004719080
その結果から、この空気雰囲気下70℃におけるStのバルク重合は、BHTの添加で重合反応が抑制される傾向が認められた。さらに、1-DTの添加でも重合反応が著しく抑制された。得られた結果は、この重合がラジカル機構で進行していることを示唆した。
9−8.[etmi]e3fap開始St重合の速度論的検討
図14に、空気雰囲気下70℃における[etmi]e3fapを開始剤とするStの重合のタイムコンバージョンを示す。また、表101に、その濃度による効果を示す。
Figure 0004719080
この空気雰囲気下70℃におけるStのバルク重合は、[etmi]e3fap濃度が濃くなるにしたがい、重合速度の大きくなる傾向が認められた。
[etmi]e3fapを開始剤とする空気雰囲気下70℃におけるStのバルク重合の初期重合速度は開始剤濃度の1.16次となり、通常のラジカル重合とは異なることがわかった。この反応次数は一分子停止を示唆するが、詳しい停止機構については不明である。一方、この空気雰囲気下でのStのバルク重合は70℃では速やかに進行したが、60℃・50℃では著しく重合の抑制される傾向が認められた。
関係式を以下に示す。また、図15に、空気雰囲気下70℃における[etmi]e3fapを開始剤とするStのバルク重合の速度依存を示す。また、図16に、空気雰囲気下、[etmi]e3fapを開始剤とするStのバルク重合の温度による影響を示す。
Figure 0004719080
9−9.[etmi]e3fapを開始剤とするMMAの重合
表102、表103に実験条件と結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
その結果、[etmi]e3fapを開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、特定の溶媒を用いた溶液重合の進行しやすい傾向が認められた。特に、70℃におけるMMAの熱重合は、空気雰囲気下でジオキサン・DMF溶媒を用いた場合やアルゴン雰囲気下でトルエン・ジオキサン・DMF・DMSO溶媒を用いた場合はほとんど進行しないことを考慮すると、[etmi]e3fapのMMAに対する重合開始能が示唆されたが、先に述べた同一条件下でのStの重合と比較してバルク重合が完全に禁止されたことで、[etmi]e3fapの重合開始能はモノマーによって大きく異なることがわかった。
以上のとおり、[etmi]otf を開始剤とする70℃におけるStのジグリム溶液重合は、空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下で速やかに進行し、分子量数万程度のポリマーが得られた。さらに、[etmi]otfを開始剤とする70℃におけるMMAのジオキサン溶液重合も空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下で速やかに進行した。このアルゴン雰囲気下の重合は、ラジカル重合禁止剤として知られるHQやBHT、あるいはラジカル連鎖移動剤である1-DT の添加で著しく抑制されるか、完全に禁止された。ここでは、同一条件下におけMMAの熱重合は極めて進みにくいことを確認しており、[etmi]otfが重合開始反応に関与していることがあきらかになった。さらに、この重合は60℃で著しく抑制され、50℃では完全に禁止された。得られた結果から、この[etmi]otfを開始剤とするMMAの重合が、熱解離から発生するラジカルによって開始されるラジカル機構で進行することが示唆された。また、空気雰囲気下70℃において[etmi]otfはMAのバルク重合を促進させることもわかった。一方、[etmi]e3fapを開始剤とする70℃におけるSt重合については、空気雰囲気下のバルク重合が最も進みやすく、BHTや1-DTの添加で重合反応が抑制されたことから、ラジカル機構で重合が進行していることが示唆された。このStのバルク重合における初期重合速度は開始剤濃度の1.16次となり、通常のラジカル重合とは異なることがわかった。この反応次数は一分子停止を示唆するが、詳しい停止機構については不明である。さらにこのStのバルク重合が60℃・50℃で著しく抑制されたことは、熱解離から発生するラジカルが重合を開始していることを示唆している。ところが、[etmi]e3fapを開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、上に述べた同一条件下でのStの重合と比較して、限られた溶媒中で若干進行する場合のあるものの、バルク重合は完全に禁止された。このように[etmi]e3fapの重合開始能はモノマーによって大きく異なることもわかった。
第10の本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細を説明する。
本実施の最良の形態は、チオウロニウム塩系イオン性液体であるS-エチル-N,N,N',N' -テトラメチルイソチオウロニウムトリフルオロメタンスルフォネート(S-Ethyl-N,N,N',N' -tetramethylisothiouronium trifluoromethanesulfonate)(以下、[etmt]otfという)およびS-エチル-N,N,N',N'-テトラメチルイソチオウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(S-Ethyl-N,N,N',N'-tetramethylisothiouronium tris (pentafluoroethyl)trifluorophosphate)(以下、[etmt]e3fapという) を開始剤とするビニルモノマーのラジカル重合に関する。
図17乃至図26は、本発明の実施の形態を示している。
[etmt]otfの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
[etmt]e3fapの構造式を以下に示す。
Figure 0004719080
10−1.[etmt]otfを開始剤とするMMAの重合
実験条件と結果を表104、表105に示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
[etmt]otfを開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、限られた条件下で進行しやすい傾向が認められた。特に、70℃におけるMMAの熱重合は、空気雰囲気下でDMF溶媒を用いた場合及び、アルゴン雰囲気下でのバルク重合やベンゼン・トルエン・ジオキサン・DMF・DMSO溶媒を用いた場合はほとんど進行しないことを考慮すると、[etmt]otfがMMAの重合を開始していることが示唆された。ここで注目すべきは、空気雰囲気下で得られたポリマーよりも、アルゴン雰囲気下で得られたポリマーの分子量の方が大きい傾向が認めらることである。
10−2.[etmt]otfを開始剤とするMMA重合の添加剤効果
図17は[etmt]otfを開始剤とするDMF溶媒におけるMMA重合の添加剤による効果を示す。図18は、[etmt]otfを開始剤とするジオキサン溶媒におけるMMA重合の添加剤による効果を示す。表106は、その結果を示す。
Figure 0004719080
これらの結果から、これら空気雰囲気下およびアルゴン雰囲気下の重合は、ラジカル重合禁止剤やラジカル連鎖移動剤の影響を顕著に受けることから、ラジカル機構で重合が進行することが示唆された。
10−3.[etmt]otfを開始剤とするMMA重合の動力学的検討
空気雰囲気下での[etmt]otf を開始剤とするMMAのDMF溶媒重合の動力学的な検討結果は、通常のラジカル重合とは異なるものであった。
関係式を以下に示す。
Figure 0004719080
図19は、[etmt]otfを開始剤とするMMA重合のモノマー濃度の影響を示す。図20は、[etmt]otfを開始剤とするMMA重合の開始剤濃度の影響を示す。図21は、DMF中のMMA濃度の重合速度依存を示す。図22は、DMF中の[etmt]otf濃度の重合速度依存を示す。
10−4.[etmt]otfを開始剤とするMMA重合の反応温度の影響
図23は、[etmt]otfを開始剤とするMMA重合の反応温度の影響を示す。表107は、その結果を示す。
Figure 0004719080
その結果、この[etmt]otfを開始剤とする空気雰囲気下でのMMAのDMF溶液重合は、50℃ではかなり重合速度が遅くなり、40℃では著しく抑制された。得られた結果は、この重合が熱解離から発生するラジカルによって開始されるラジカル機構で進むことを示唆した。
10−5.[etmt]e3fapを開始剤とするMMAの重合
表108、表109に実験条件と結果を示す。
Figure 0004719080
Figure 0004719080
その結果、[etmt]e3fap を開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、限られた条件下で進行しやすい傾向が認められた。空気雰囲気下でDMFを溶媒として用いた場合の重合が最も進行しやすいのは、前述の[etmt]otfを開始剤とした場合と同様であった。アルゴン雰囲気下においてはTHFを溶媒として用いた重合が最も速やかに進行したが、この場合はある程度、熱重合のファクターも考慮しなければならないことを確認している。
10−6.空気雰囲気下、[etmt]e3fap開始MMA重合の添加剤・反応温度の影響
図24は、[etmt]e3fapを開始剤とし、添加剤を加えたMMAのDMF溶液重合を示す。表110は、[etmt]e3fapを開始剤とするMMA重合の温度による影響を示す。
Figure 0004719080
その結果、[etmt]e3fapを開始剤とする空気雰囲気下でのMMAのDMF溶液重合は、重合温度が50℃以下になると著しく抑制される傾向が認められた。また、この70℃における重合は、ラジカル重合禁止剤であるヒドロキノン(HQ)や2,6-ジ-第三-ブチル-p-クレゾール(BHT)、あるいはラジカル連鎖移動剤である1-ドデカンチオール(1-DT)の添加で完全に禁止されることから、ラジカル機構で反応が進行していることが示唆された。
10−7.アルゴン雰囲気下、[etmt]e3fap開始MMA重合の添加剤効果
図25は、[etmt]e3fapを開始剤とし、添加剤を加えたMMAのTHF溶液重合を示す。表111は、[etmt]e3fapを開始剤とするMMA重合の添加剤による影響を示す。
Figure 0004719080
その結果、[etmt]e3fapを開始剤とするアルゴン雰囲気下60℃におけるMMAのTHF溶液重合は、HQやBHTの添加で著しく抑制されるか、誘導期が観察された。さらに、1-DTの添加で生成ポリマー分子量が小さくなる傾向が認められた。得られた結果から、このアルゴン雰囲気下での重合も前述の空気雰囲気下の重合と同様、ラジカル機構で反応の進行することが示唆された。
10−8.アルゴン雰囲気下、[etmt]e3fap開始MMA重合の反応温度の影響
図26は、[etmt]e3fapを開始剤とするMMAのTHF溶液重合の温度による影響を示す。表112は、[etmt]e3fapを開始剤とするMMA重合の温度による影響を示す。
Figure 0004719080
その結果、前述の[etmt]e3fapを開始剤とするMMAのアルゴン雰囲気下でのTHF溶液重合は、60℃では速やかに進むものの、50℃以下では著しく抑制される傾向が認められた。得られた結果は、このラジカル重合が熱解離から発生するラジカルの関与する機構であることを示唆した。
以上のとおり、[etmt]otfを開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、空気雰囲気下ではDMF、アルゴン雰囲気下ではジオキサンをそれぞれ溶媒に用いた場合に最も速やかに進行した。また、空気雰囲気下で得られたポリマーよりも、アルゴン雰囲気下で得られたポリマー分子量の大きい傾向が認められた。これらの重合は、ラジカル重合禁止剤やラジカル連鎖移動剤の影響を顕著に受けることから、ラジカル機構で進行することが示唆された。しかし、空気雰囲気下[etmt]otfを開始剤とするMMAのDMF溶媒重合の動力学的な検討結果は、通常のラジカル重合とは異なるものであった。また、この[etmt]otfを開始剤とする空気雰囲気下でのMMAのDMF溶液重合は、50℃ではかなり重合速度が遅くなり40℃では著しく抑制されたことから、熱解離で発生したラジカルが重合を開始していると推定した。一方、[etmt]e3fap を開始剤とする70℃におけるMMAの重合は、空気雰囲気下の場合はDMF を溶媒として用いた重合、アルゴン雰囲気以下の場合にはTHFを溶媒として用いた重合が最も速やかに進行した。これらの重合も、ラジカル重合禁止剤やラジカル連鎖移動剤の影響を顕著に受けることから、ラジカル機構で進行することが示唆された。さらに、[etmt]e3fapを開始剤とする空気雰囲気下でのMMAのDMF溶液重合は、重合温度が50℃以下になると著しく抑制される傾向が認められたことは、上述の[etmt]otfを開始剤とするMMAの重合同様、熱解離で発生するラジカルが重合開始反応に関与していると推定した。以上のように、チオウロニウム塩系イオン性液体である[etmt]otfおよび、[etmt]e3fapのラジカル重合開始能について初めて明らかにした。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、種々の実施が可能である。
なお、実施例で用いた各重合開始剤の濃度は、重合させるビニルモノマーに対して0.5モル%あるいは1モル%である。
[実施例1]
アルゴンガス雰囲気下、70℃で[P(h3)t]TFSIを重合開始剤として、ジオキサンを溶媒に用いてStを重合させ、St重合体を製造した。より具体的には、モノマーと溶媒の入った重合管内にマイクロピペットを用い[P(h3)t]TFSIを常温で注入し、セプタムキャップで蓋をした。この重合管のセプタムキャップをとおしてアルゴンを吹き込むことによりアルゴン雰囲気とした後、重合管をウォーターバスまたはオイルバスに移し替えて、所定時間経過後、貧溶媒のメタノールを入れたビーカーに重合溶液を投ずることで重合を停止した。転化率は、沈殿したポリマーを分別し40℃乃至50℃で一昼夜減圧乾燥後、重量法で求めた。数平均分子量は、溶離液としてTHFを用いたGPC測定で決定した。分子量は、標準ポリスチレンの校正曲線より計算した。添加剤として、HQ、BHT、1−DTを用いた試料も準備した。添加剤の濃度は、Stに対して3モル%である。その条件と結果を表1に示す。
また、アルゴンガス雰囲気下の代わりに空気雰囲気下である点を除き、同一の条件でStを重合させた。その条件と結果を表2に示す。
さらに、表3乃至表20に示す条件で、重合を行った。その結果を各表に示す。
[実施例2]
空気雰囲気下、60℃で[hpyr]BF4を重合開始剤として、表21に示す各種溶媒を用いてStを重合させ、St重合体を製造した。より具体的には、モノマーと溶媒の入った重合管内にマイクロピペットを用い[hpyr]BF4を常温で注入し、セプタムキャップで蓋をした。この重合管をウォーターバスまたはオイルバスに移し替えて、所定時間経過後、貧溶媒のメタノールを入れたビーカーに重合溶液を投ずることで重合を停止した。転化率は、沈殿したポリマーを分別し40℃乃至50℃で一昼夜減圧乾燥後、重量法で求めた。数平均分子量は、溶離液としてTHFを用いたGPC測定で決定した。分子量は、標準ポリスチレンの校正曲線より計算した。表21に示す添加剤を用いた試料も準備した。添加剤の濃度は、Stに対して3モル%である。その条件と結果を表21に示す。
また、同一の条件でMMAを重合させた。その条件と結果を表22に示す。
さらに、表23乃至表30に示す条件で、重合を行った(アルゴン雰囲気下の重合の場合、重合管のセプタムキャップをとおしてアルゴンを吹き込むことによりアルゴン雰囲気とした後、重合管をウォーターバスまたはオイルバスに移し替えて重合反応を行った。)。その結果を各表に示す。
[実施例3]
アルゴンガス雰囲気下、70℃で[bmpl]e3fapを重合開始剤として、表31に示す各種溶媒を用いてStを重合させ、St重合体を製造した。より具体的には、モノマーと溶媒の入った重合管内にマイクロピペットを用い[bmpl]e3fapを常温で注入し、セプタムキャップで蓋をした。この重合管のセプタムキャップをとおしてアルゴンを吹き込むことによりアルゴン雰囲気とした後、重合管をウォーターバスまたはオイルバスに移し替えて、所定時間経過後、貧溶媒のメタノールを入れたビーカーに重合溶液を投ずることで重合を停止した。転化率は、沈殿したポリマーを分別し40℃乃至50℃で一昼夜減圧乾燥後、重量法で求めた。数平均分子量は、溶離液としてTHFを用いたGPC測定で決定した。分子量は、標準ポリスチレンの校正曲線より計算した。その条件と結果を表31に示す。
また、アルゴンガス雰囲気下の代わりに空気雰囲気下である点を除き、同一の条件でStを重合させた。その条件と結果を表32に示す。
さらに、表33乃至表38に示す条件で、重合を行った。その結果を各表に示す。
[実施例4]
アルゴンガス雰囲気下、70℃で[bmpl]SO3CF3を重合開始剤として、表39に示す各種溶媒を用いてStを重合させ、St重合体を製造した。より具体的には、モノマーと溶媒の入った重合管内にマイクロピペットを用い[bmpl]SO3CF3を常温で注入し、セプタムキャップで蓋をした。この重合管のセプタムキャップをとおしてアルゴンを吹き込むことによりアルゴン雰囲気とした後、重合管をウォーターバスまたはオイルバスに移し替えて、所定時間経過後、貧溶媒のメタノールを入れたビーカーに重合溶液を投ずることで重合を停止した。転化率は、沈殿したポリマーを分別し40℃乃至50℃で一昼夜減圧乾燥後、重量法で求めた。数平均分子量は、溶離液としてTHFを用いたGPC測定で決定した。分子量は、標準ポリスチレンの校正曲線より計算した。その条件と結果を表39に示す。
また、アルゴンガス雰囲気下の代わりに空気雰囲気下である点を除き、同一の条件でStを重合させた。その条件と結果を表40に示す。
さらに、表41乃至表46に示す条件で、重合を行った。その結果を各表に示す。
[実施例5]
アルゴンガス雰囲気下、70℃で[bmim]BF4を重合開始剤として、表47に示す各種溶媒を用いてStを重合させ、St重合体を製造した。より具体的には、モノマーと溶媒の入った重合管内にマイクロピペットを用い[bmim]BF4を常温で注入し、セプタムキャップで蓋をした。より具体的には、マイクロピペットを用い[bmim]BF4を常温で重合管内に注入しセプタムキャップで蓋をした。この重合管のセプタムキャップをとおしてアルゴンを吹き込むことによりアルゴン雰囲気とした後、重合管をウォーターバスまたはオイルバスに移し替えて、所定時間経過後、貧溶媒のメタノールを入れたビーカーに重合溶液を投ずることで重合を停止した。転化率は、沈殿したポリマーを分別し40℃乃至50℃で一昼夜減圧乾燥後、重量法で求めた。数平均分子量は、溶離液としてTHFを用いたGPC測定で決定した。分子量は、標準ポリスチレンの校正曲線より計算した。その条件と結果を表47に示す。
また、アルゴンガス雰囲気下の代わりに空気雰囲気下である点を除き、同一の条件でStを重合させた。その条件と結果を表48に示す。
さらに、表49乃至表53に示す条件で、重合を行った。その結果を各表に示す。
[実施例6]
アルゴンガス雰囲気下、70℃で[bmim]PF6を重合開始剤として、表54に示す各種溶媒を用いてStを重合させ、St重合体を製造した。より具体的には、モノマーと溶媒の入った重合管内にマイクロピペットを用い[bmim]PF6を常温で注入し、セプタムキャップで蓋をした。この重合管のセプタムキャップをとおしてアルゴンを吹き込むことによりアルゴン雰囲気とした後、重合管をウォーターバスまたはオイルバスに移し替えて、所定時間経過後、貧溶媒のメタノールを入れたビーカーに重合溶液を投ずることで重合を停止した。転化率は、沈殿したポリマーを分別し40℃乃至50℃で一昼夜減圧乾燥後、重量法で求めた。数平均分子量は、溶離液としてTHFを用いたGPC測定で決定した。分子量は、標準ポリスチレンの校正曲線より計算した。その条件と結果を表54に示す。
また、アルゴンガス雰囲気下の代わりに空気雰囲気下である点を除き、同一の条件でStを重合させた。その条件と結果を表55に示す。
さらに、表56乃至表63に示す条件で、重合を行った。その結果を各表に示す。
第1の本発明を実施するための最良の形態において、生成ポリ(St)の転化率増加に伴うGPC溶出曲線の変化を示すグラフである。 第1の本発明を実施するための最良の形態において、生成ポリ(MMA)の転化率増加に伴うGPC溶出曲線の変化を示すグラフである。 第2の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下60℃におけるMA・EA・BAのTHF溶液重合のタイムコンバージョンを示すグラフである。 第2の本発明を実施するための最良の形態において、生成ポリ(MA)の転化率増加に伴うGPC溶出曲線の変化を示すグラフである。 第7の本発明を実施するための最良の形態において、アルゴン雰囲気下70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のBHT、1-DTの添加によるタイムコンバージョンを示すグラフである。 第7の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のタイムコンバージョンを示すグラフである。 第7の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下50℃、60℃、70℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のタイムコンバージョンを示すグラフである。 第7の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下60℃における[P(h3)t]BF4を開始剤とするMMAのTHF溶液重合のHQ、BHTの添加のタイムコンバージョンを示すグラフである。 第7の本発明を実施するための最良の形態において、ポリ(MMA)の転化率の増加に伴うGPCパターンの遷移を示すグラフである。 第7の本発明を実施するための最良の形態において、ポリ(MMA)の転化率の増加に伴うGPCパターンの遷移を示すグラフである。 第9の本発明を実施するための最良の形態において、アルゴン雰囲気下70℃における[etmi]otfを開始剤とするMMAのジオキサン溶液重合のHQ、BHT、1-DTの添加によるタイムコンバージョンを示すグラフである。 第9の本発明を実施するための最良の形態において、アルゴン雰囲気下50℃、60℃、70℃における[etmi]otfを開始剤とするStのMMAジオキサン溶液重合のタイムコンバージョンを示すグラフである。 第9の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下70℃における[etmi]e3fapを開始剤とするStの重合のBHT、1-DTの添加によるタイムコンバージョンを示すグラフである。 第9の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下70℃における[etmi]e3fapを開始剤とするStの重合のタイムコンバージョンを示すグラフである。 第9の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下70℃における[etmi]e3fapを開始剤とするStのバルク重合の速度依存を示すグラフである。 第9の本発明を実施するための最良の形態において、空気雰囲気下、[etmi]e3fapを開始剤とするStのバルク重合の温度による影響を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、 [etmt]otfを開始剤とするDMF溶媒におけるMMA重合の添加剤による効果を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、[etmt]otfを開始剤とするジオキサン溶媒におけるMMA重合の添加剤による効果を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、 [etmt]otfを開始剤とするMMA重合のモノマー濃度の影響を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、[etmt]otfを開始剤とするMMA重合の開始剤濃度の影響を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、DMF中のMMA濃度の重合速度依存を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、DMF中の[etmt]otf濃度の重合速度依存を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、[etmt]otfを開始剤とするMMA重合の反応温度の影響を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、[etmt]e3fapを開始剤とし、添加剤を加えたMMAのDMF溶液重合を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、[etmt]e3fapを開始剤とし、添加剤を加えたMMAのTHF溶液重合を示すグラフである。 第10の本発明を実施するための最良の形態において、[etmt]e3fapを開始剤とするMMAのTHF溶液重合の温度による影響を示すグラフである。

Claims (1)

  1. トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−ヘキシルピリジニウム テトラフルオロボレート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレートまたは1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェートを重合開始剤として、ビニルモノマーを重合させることを特徴とするビニル重合体製造方法。
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