消防無線等で使用される無線通信システムは、基地局と、消防車、救急車等の緊急車両からなる移動局と、また、これら間の無線通信を中継する中継局などを備え、基地局と移動局の間、あるいは移動局同士間で無線通信ができるようにしているものがある。このような無線通信システムでは、例えば、図10に示すように、基地局21からの送信電波には周波数f1が用いられ、移動局22や23からの送信電波には周波数f2が用いられる。すなわち、移動局22や23には周波数f1の電波を受信する無線受信装置と、周波数f2の電波を受信する無線受信装置とが設けられている。
また、移動局から基地局21に送信される音声データは、基地局21で中継され、周波数f 1の電波で他の移動局全てに再送信される。従って、各移動局は他の移動局と基地局21との交信を傍受することができる。さらに、各移動局間の通信はこの中継機能を利用して行なわれるため、交信する移動局間の距離が長い場合でも、比較的強力な基地局の電波を用いて、確実な交信を行なうようになっている。
このため、従来、各移動局には、例えば、図9に示すように、基地局電波受信用と他の移動局電波受信用の二系統の受信装置が設けられている。これらの受信装置を用いて二系統の受信を行なう場合、移動局(例えば、22)は高速で移動中の場合や低速で移動中、もしくは停車中の場合もある。高速で移動中の場合、移動局22と基地局21あるいは移動局23との距離が刻々変わるため、受信電波にフェージング(受信レベルの変動)が生じる。このフェージングの影響を避けるため、各系統の受信装置で二組のアンテナと二組の受信部とを使用して、ダイバーシティ受信を行なうように構成されている。
緊急車両に備えられたアンテナは、例えば、図8に示すように、対基地局用のアンテナA1aとA1bを受信周波数帯の波長の1/2λ(波長)の間隔で設置し、対移動局用のアンテナA2aとA2bを受信周波数帯の波長の1/2λの間隔で設置する。これにより、例えばアンテナA1aとA1bとで同一の周波数の電波を受信した時、一方のアンテナの受信信号レベルが低い場合でも、他方のアンテナの受信信号レベルが高くなるため、通信対象との間隔(距離)が変わっても、受信信号レベルが高い方のアンテナに切り換えて受信することにより、常に明瞭な音声を受信できるようになっている。アンテナA2aとA2bに関しても同様である。
図9の基地局電波受信用の受信装置では、基地局21からの周波数f1の電波を、アンテナA1aと受信部R1a、およびアンテナA1bと受信部R1bの二系統で受信・復調する。同時に、受信レベル判定部31で受信部R1aと受信部R1bの受信レベルの強弱を、例えば、各受信部からのAGC(自動利得制御)信号を基に判定し、スイッチ32を受信レベルの高い側の受信部に切替え、f1受信出力端33から復調した音声を出力する。
他の移動局電波受信用の受信装置でも、移動局23からの周波数f2の電波をアンテナA2aと受信部R2a、およびアンテナA2bと受信部R2bの二系統で受信・復調する。同時に、受信レベル判定部34で受信部R2aと受信部R2bの受信レベルの強弱を、例えば、各受信部からのAGC信号を基に判定し、スイッチ35を受信レベルの高い側の受信部に切替え、f2受信出力端36から復調した音声を出力する。
送信部38では、周波数f2の搬送波信号を送信入力端39からの信号で変調し、アンテナ37を介して送信する。すなわち、基地局21と移動局22や23との間では、基地局21からの下りには周波数f1の電波を用い、基地局21への上りには周波数f2の電波を用いた両方向通信が行われ、移動局同士間の通信には周波数f2の電波を用いて相互一方向通信が行われる。
このように、移動通信端末装置の受信性能をあげるために、例えば二つのアンテナを設置し、第1アンテナおよび第2アンテナで受信された信号を切り換えて用いるスペースダイバーシティ方式が広く用いられている。なお、デジタル無線受信装置で用いられる別の方式としては、2つのアンテナで受信した信号を単純に切り換えるのでなく、2つの信号を合成する最大比合成ダイバーシティがあり、高いダイバーシティ利得が得られることで知られている。
この方式は、各アンテナから受信した信号に対し、受信電力の大きさに比例した重み付けを行った後に、加算合成を行う方式であり、合成信号の搬送波対雑音電力比が各系の搬送波対雑音電力比の和として与えられる。
なお、この背景技術での説明や実施例での説明において、『2つのアンテナで受信した信号を切り換える』とは、ダイバーシティ受信の概念を単純に説明するためのものであり、最大比合成ダイバーシティや選択合成ダイバーシティなどのような方式を含むものとして説明している。
このシステムでは、図11に示すように、基地局との自移動局との通信時にはアンテナA1a〜受信部R1aとアンテナA1b〜受信部R1bが使われ、この間の交信では、アンテナA2a〜受信部R2aとアンテナA2b〜受信部R2bは他の移動局からの割り込み通信受信のみに使われるだけである。一方、他の移動局と自移動局との通信時には、アンテナA2a〜受信部R2aとアンテナA2b〜受信部R2bが使われ、この交信中では、アンテナA1a〜受信部R1aとアンテナA1b〜受信部R1bは基地局からの割り込み通信受信のみに使われている。(例えば、特許文献1参照。)
また、このような割り込み通信の受信だけでなく、基地局から繰り返して送信される交通規制の情報や他の事件や事故の情報も参考情報として受信する場合がある。この場合、あくまでも参考情報であり、確実に受信すべき必要があるものでない。
しかしながら、このような無線通信システムでは移動局は基地局との通信と他の移動局との通信を同時に行うことがなく、一方の局と交信中は、他の局の割り込みによる送信電波の存在を確認するだけであり、このために比較的高価なダイバーシティ受信装置を2組分備えることはコストアップの要因となる。又、同様に、繰り返して送信される参考情報を明瞭に受信するため、ダイバーシティ受信装置を2組分備える必要性も少ない。
さらに、近年は無線通信においても、従来のアナログ音声通信に代わって、デジタル音声データや各種データを通信する方式に切り替わりつつある。このようなデジタル方式の通信の場合は、同一周波数において連続的な送信でなく、例えばTDMA(Time Division Multiple Access )方式のようにタイムスロットごとに送受信が切り換えられるものもある。従って、1つの周波数にダイバーシティ受信装置を専用で1組分備えても、実際にはダイバーシティ受信機能を使用しないタイミングもあり、このタイミングではダイバーシティ受信機能が有効に活用されていなかった。
また、前述したように基地局には移動局からの送信を他の移動局へ中継する中継機能を備えている。従って、移動局は他の移動局と交信する場合、他の移動局と直接交信するか、又は、基地局を介して交信するかを、移動局での操作により選択することができる。
しかしながら、一旦、どちらかを選択すると、次の選択までは固定されたままであるため、この選択を行なった時に受信レベルの高い基地局を選択していたとしても、移動局が移動することにより、他の移動局と直接交信した方が受信レベルが高い場合がある。このため、中継交信か直接交信かを選択して最適な受信を行なうために、人の操作により、常に選択を切り換えながら監視する必要があり、操作性が悪かった。
特開平8−275245号公報(第3−5頁、図1−図3)
図1は本発明によるデジタル無線受信装置の実施例を示す要部ブロック図である。
この無線受信装置は、受信アンテナA1、A2、A3と、これにそれぞれ接続された受信部R1、R2、R3と、この受信部R1、R2、R3で受信された信号を入力し、入力した信号を選択してそのまま、もしくは合成して復調する選択・復調手段11と、受信部R1、R2、R3で受信された信号の受信レベルをそれぞれ測定する受信品質測定手段14と、受信部R1、R2、R3で受信する周波数の指示と受信品質測定手段14からの受信レベルの入力と選択・復調手段11への選択指示とを行なう受信制御手段15と、SCPC(Single Channel Per Carrier)やTDMAなどの通信方式の切り換えを指定する通信種別指定手段8とで構成されている。
この受信部R1、R2、R3は、受信制御手段15からの制御信号により、受信周波数をf1(基地局用)、または、f2(移動局用)に設定され、この周波数に従って受信アンテナA1、A2、A3から入力した電波を受信し、選択・復調手段11へ出力する。
受信品質測定手段14は、受信部R1と受信部R2と受信部R3とから出力されるAGC(自動利得制御)信号のレベルを測定し、受信部R1と受信部R2と受信部R3とで受信する電波のそれぞれの受信レベルを受信制御手段15へ出力している。なお、受信品質測定手段14は、各受信部で受信した電波の品質を測定できればよい。
従って、ここでは必ずしも受信信号の電界強度と対応するAGC信号を用いなくても、受信信号の受信電力、受信データの誤り率により、各受信部で受信した信号の受信品質を比較できればよいため、受信信号強度RSSI(Received Signal Strength Indicator)値や受信信号のビットエラーレートなどを用いてもよい。また、これらの測定値を適宜組み合わせて受信レベルを決定してもよい。
選択・復調手段11は、受信制御手段15の指示により受信周波数が決定された受信部R1、R2、R3の受信信号が入力される。そして、入力された3つの信号、つまり、基地局用又は移動局用の周波数f1,f2の信号を受信制御手段15の指示により、いずれか一方の周波数の2つの受信信号(2つの受信部の出力信号)を選択して最大比合成ダイバーシティ受信方式で合成してから復調して出力する。そして、他方の周波数の信号(1つの受信部の出力信号)をそのまま復調して出力する。なお、ダイバーシティ受信方式は、最大比合成方式でなくても、選択合成方式や受信レベルの大きい方の受信信号へ切り換える単純な切換方式であってもよい。
受信部R1、R2、R3のいずれか2つの受信部で受信された同一周波数の信号をダイバーシティ受信する場合、受信制御手段15はその2つの受信部から出力される信号を最大比合成方式で合成して復調、出力するように、選択・復調手段11へ指示し、また、受信部R1、R2、R3のいずれか2つの受信部で受信された同一周波数でない受信信号、つまり、シングル受信(1つの受信機で1つの周波数を受信)する場合、受信制御手段15は、その1つの受信部から出力される信号を独立して復調、出力するように、選択・復調手段11へ指示する。
受信制御手段15は、受信品質測定手段14と通信種別指定手段8とから、それぞれ信号データを受け取り、これらのデータを割当条件として受信制御手段15内に備えられた周波数設定条件テーブル内の周波数データ抽出し、受信部R1、R2、R3に受信周波数を設定する。また、これらの割当条件と対応する受信モード、つまり、ダイバーシティ受信か、1つの周波数のシングル受信かを判定し、それぞれのモードに対応して選択・復調手段11へ指示を出力する。
なお、割当条件と周波数設定条件テーブルとの関係については後で詳細に説明する。
なお、通信種別指定手段8はSCPC方式とTDMA方式の通信方式を切り換えるための手段であり、移動局に搭乗している隊員によって、例えば県外の消防車と交信する場合に、共通通信方式であるSCPC方式に切り換え、所轄内の消防車と交信する場合はデータ効率の良いTDMA方式に切り換えられる。
図2はSCPC方式とTDMA方式との違いを説明する電波の帯域の模式図であり、左右方向が周波数を示し、奥行方向が時間を、また、上方向が電波の強さを示している。
図2(A)はSCPC方式であり、周波数順に6.25KHzの帯域幅を持つチャネルが複数設けられ、例えば、基地局用や移動局用の電波は、1つのチャネルを1つの周波数で時間的に連続させて構成されている。
一方、図2(B)はTDMA方式であり、25KHzの帯域幅を持つタイムスロットが時間軸方向に区切られて構成されている。例えば、基地局用の電波は、スロット0〜スロット3まで区切られた1つのフレームが連続しており、スロット3が基地局で送信される音声データの送信スロットである。なお、スロット0はフレームの開始のタイミングを表すものであり、このスロット内に以降のスロット1〜3を制御するための情報が含まれている。また、図示しないが移動局は基地局と同一形式のスロット1〜3を使用しており、スロット3が移動局から送信される音声データの送信スロットである。なお、このようなスロット構成は一例であり、この構成に限るものではない。
このようなTDMA方式を用いたシステム、例えば消防無線システムでは、ある移動局(特定の移動局)が基地局から遠く離れて基地局と直接通信できない時、他の移動局を介して特定の移動局と基地局とが通信を行なう場合がある。この場合、特定の移動局は周波数f2で他の移動局へ、例えば基地局への伝言を送信する。そして、この伝言を受信した他の移動局は、周波数f2で基地局へこの伝言を送信する。
この場合、特定の移動局は基地局の電波を受信できないので、基地局の周波数f1の電波による送信フレームと無関係なタイミングで周波数f2の電波を他の移動局へ送信することになる。
図3はこの移動局と基地局とがそれぞれ送信するTDMA方式の送信フレームと、この送信フレームを受信した受信部R1〜R3の動作とを示す説明図である。なお、図3の左から右方向が時間の経過を示している。
図3(a)は基地局の送信フレームを示しており、スロット0〜スロット3に区切られたタイムスロットが時間軸方向に連続して配置されており、スロット3が基地局の音声送信データである。
図3(b)は移動局の送信フレームを示しており、スロット0〜スロット3に区切られたタイムスロットが時間軸方向に連続して配置されており、スロット3が移動局の音声送信データである。
図3(c)、図3(d)、図3(e)は受信部R1、受信部R2、受信部R3、のそれぞれの周波数割当と受信動作とを示す説明図である。
この図3の例の場合、ある移動局と基地局とがそれぞれ送信する送信フレームのタイミングは、基地局の送信フレームに対して、ある移動局側の送信フレームのタイミングが約1.5スロット分ずれて遅くなっている。
このような場合、このある移動局と基地局とから送信された異なる周波数の電波を同時に受信すべき他の移動局の受信制御手段15は、3つの受信部R1〜R3に対して、受信周波数の設定と各受信部に対する受信動作を指示する。
受信動作とは、移動局が送信する周波数f2の電波と基地局が送信する周波数f1の電波とを両方共、2つの受信部を用いたダイバーシティ受信する、又は、それができない場合に、どちらか一方の局に対してダイバーシティ受信を、他方に対して1つの受信部でシングル受信することを示す。
当然のことながら、移動局と基地局とが同じタイミングでスロット3の音声データを送信した場合には、2つの局に対してダイバーシティ受信を割り当てることができない。しかしながら、移動局と基地局とが異なるタイミングでスロット3の音声データを送信した場合には、この2つの局から送信される音声データに対しては、ダイバーシティ受信を割り当てることができる。
もちろん、移動局と基地局とが送信する全てのタイムスロットのデータを同時にダイバーシティ受信することはできないが、スロット3の音声データは比較的データ量が多く、受信品質が低下してデータを取りこぼすと音声の途切れとなってしまい、重要な情報が伝達されない場合が発生する。従って、このスロット3の音声データやタイムスロットの制御データなどの特定タイムスロットのデータ、つまり、重要なスロットのデータに関してはダイバーシティ受信を行なうことで受信特性の改善を行なう。
このため、他の移動局の受信制御手段15は各受信部の受信周波数と動作とを設定する。具体的には、受信部R1に対して周波数f1(基地局)の電波の受信、受信部R3に対して周波数f2(移動局)の電波の受信をそれぞれ指示する。そして、受信制御手段15は選択・復調手段11に対して、受信部R1と受信部R3とから入力した受信信号をそれぞれシングル受信し、復調して出力するように指示する。
受信部R2については、まだ、受信周波数が決定されていない。この受信部R2の受信周波数をf1、または、f2に設定し、受信部R2の受信周波数がf1の時に、受信部R1と組み合わせて基地局からの電波をダイバーシティ受信し、受信部R2の受信周波数がf2の時に、受信部R3と組み合わせて移動局からの電波をダイバーシティ受信する。この受信部R2の周波数設定と他の受信部との組合せ選択のタイミングについては後で説明する。なお、選択のタイミングになるまで、受信部R2の受信周波数をf1または、f2に設定し、基地局、又は移動局をダイバーシティ受信するようにしてもよい。
そして、受信制御手段15は、ある移動局と基地局とからの送信電波を監視する。もし、どちらか一方の局からのスロット0のデータ受信を確認した場合、続けてスロット1、スロット2と受信する一方、他方の局のスロット0の受信データの有無を確認する。
つまり、ある移動局と基地局とがそれぞれ送信する送信フレームのタイミングのずれを確認する。これはそれぞれの送信スロット、逆に考えると他の移動局における受信タイミングが重なっているかどうかの確認である。
ある移動局と基地局とから送信されるタイムスロット幅は同じなので、それぞれのスロット0のタイミングを検出することで、受信タイミングが重なっているかどうかの確認ができる。
受信タイミングが重なっている場合は、2つの周波数の電波に対して同時にダイバーシティ受信することができない。このため、基地局、もしくは、ある移動局のいずれか一方の送信電波を受信部R1と受信部R2とを用いてダイバーシティ受信し、他方を受信部R3を用いてシングル受信する。なお、各受信部の割当は任意でもよいし、各受信部で同じ周波数の電波を受信し、一番受信品質の良い受信部をシングル受信に、残りの2つの受信部をダイバーシティ受信に割当てもよい。この場合、ダイバーシティ受信より劣るシングル受信による受信品質の低下を最小限にすることができる。
一方、受信タイミングが重なっていない場合は図3に示すように、受信部R1と受信部R2とに周波数f1を設定して基地局の電波をダイバーシティ受信し、次に、受信部R2と受信部R3とに周波数f2を設定して、ある移動局の電波をダイバーシティ受信する。これはタイムスロットの概念を用いるTDMA方式特有の効果である。なお、ある移動局が基地局と他の移動局との電波を両方受信できる場合は、ある移動局が他の移動局に向けて送信する時に、意図的に基地局の送信タイミングとずらすようにフレームを送信すれば、必ず各フレームのスロット3の重なりを無くすことができる。
図4は図1の無線受信装置の受信部と受信周波数の割当条件、及び基地局と移動局との受信スロット重なり状態を示した周波数設定条件テーブルであり、受信制御手段15内に記憶されている。このテーブルは2つの条件、すなわち、受信対象局、基地局と移動局との受信スロット重なり状態と対応して、各受信部へ設定すべき周波数値が格納されている。なお、同じ周波数が設定される2つの受信部は、その受信部を用いてダイバーシティ受信を行なうことを意味する。
図4の周波数設定条件テーブルは、横方向に基地局と移動局との受信スロット重なり状態、受信対象局、R1受信周波数、R2受信周波数、R3受信周波数、備考、の各項目が記載されている。なお、備考の欄は説明の都合上記載したものであり、実際のテーブルには存在しない。
『基地局と移動局との受信スロット重なり状態』の項目は、前述したように『なし』の場合には、基地局と移動局との両方でダイバーシティ受信が可能である。また、『あり』の場合には、どちらか一方の局のみダイバーシティ受信が可能であり、他方の局はシングル受信にすべきことを示している。また、『受信対象局』の項目はスロット3を受信した場合に、基地局か移動局かを特定するものである。
R1受信周波数、R2受信周波数、R3受信周波数の項目は、それぞれ、受信部R1、受信部R2、受信部R3に設定される受信周波数が記載されており、f1は基地局周波数を、f2は移動局の周波数をそれぞれ示している。また、これらの項目欄が矩形の点線で覆われている場合は、対応する2つの受信部でダイバーシティ受信を行なうことを示している。この欄が矩形の点線で覆われていない場合は、1つの受信部でシングル受信を行なうことを意味している。
受信制御手段15は、この周波数設定条件テーブルに一致する条件が揃った時、このテーブルで示された周波数に各受信部を設定し、ダイバーシティ受信、または、シングル受信を設定する。
次に、図1の無線受信装置の動作を、図6に示す受信制御手段15の動作フローチャートを用いて説明する。図6に記載のSTはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を、また、YはYesを、NはNoをそれぞれ表している。なお、この例は通信種別指定手段8によりTDMA方式が選択されたため、周波数設定条件テーブルは図4に示すものを使用している。また、後述するフラグは受信制御手段15内の記憶エリアに記憶されており、必要に応じて書き換えられる。
処理が開始されると、まず、受信制御手段15は、受信部R1とR2とに受信周波数f1(基地局用)を設定し、基地局の電波をダイバーシティ受信する(ST1)。そして、受信部R3に受信周波数f2(移動局用)を設定し、移動局の電波をシングル受信する(ST2)。
次に、基地局と移動局とのタイムスロットが重なっているかを確認し(ST3)、重なりがある場合(ST3−Y)、スロット重なりフラグに『あり』をセットし(ST4)、重なりがない場合(ST3−N)、スロット重なりフラグに『なし』をセットし(ST5)、いずれの場合も、次のST6を実行する。
次に受信対象スロット、つまり、この実施例では基地局、または、移動局から送信されるデータのうち、いずれか一方のデータがスロット3の先頭タイミングか確認し(ST6)、受信対象スロットでない場合(ST6−N)、ST1へジャンプする。また、受信対象スロットの場合(ST6−Y)、受信対象は基地局か確認する(ST7)。
そして、受信対象が基地局の時(ST7−Y)、受信対象フラグに『基地局』をセットする(ST8)。また、受信対象が基地局でない時、つまり、移動局の時(ST7−N)、受信対象フラグに『移動局』をセットする(ST9)。そして、いずれの場合も、次のST10を実行する。
そして、受信対象フラグとスロット重なりフラグとの状態を条件として、周波数設定条件テーブルを検索する(ST10)。そして、検索結果の周波数を各受信部に設定する。また、同じ周波数が設定された2つの受信部はダイバーシティ受信、また、それ以外の受信部はシングル受信で動作するように選択・復調手段へ指示する。従って、3つの受信部は、それぞれ、指示された内容で受信対象のタイムスロットを受信する。
次に、受信対象スロットタイミングが終了したか、つまり、スロット3のデータを全て受信完了したかを確認し(ST12)、受信対象スロットのタイミングが終了していない場合はST12へジャンプし、受信対象スロットのタイミングが終了したら(ST12−Y)ST1へジャンプする。
以上説明したように、従来必要であった4つのアンテナと4つの受信部を、それぞれ3つに削減し、コストと消費電力を低減することができる。また、TDMA通信方式の時に、2つの異なる周波数の電波のうち、重要なデータ、例えば音声データのスロットを各周波数の受信タイミングでダイバーシティ受信することができ、4つの受信部を備えた従来の受信装置とほぼ同じ性能を得ることができる。
なお、この実施例では特定タイムスロットをスロット3の音声データとして説明しているが、これに限るものでなく、他のスロットでもよいし、また、複数のスロットでもよい。また、2つの周波数で送信されるフレームが時間的に重ならないのであれば、タイムスロットを全て含むフレーム単位で各周波数にダイバーシティ受信してもよい。
次に本発明による別の実施例を説明する。なお、実施例1と比べて実施例2はハードウェア構成が同じで、処理内容が異なるだけであるため、図1を兼用して用いる。従ってすでに説明している構成については同じ番号を付与し、詳細な説明を省略する。
図5はSCPC方式で用いられる周波数設定条件テーブルであり、図1の受信制御手段15は、3つの受信部R1〜R3に対して効率のよい受信動作を指示する。このテーブルは、2つの条件、すなわち、基地局と移動局とのデータ内容、および、後述する基地局波(中継波)と直接波との受信品質比較結果に対応して、各受信部へ設定すべき周波数値が格納されている。なお、同じ周波数が設定される2つの受信部は、その受信部を用いてダイバーシティ受信を行なうことを意味する。
図5の周波数設定条件テーブルは、横方向に基地局と移動局とのデータ内容、基地局波(中継波)と直接波との受信品質比較結果、R1受信周波数、R2受信周波数、R3受信周波数、備考、の各項目が記載されている。なお、備考の欄は説明の都合上記載したものであり、実際のテーブルにはないものである。
SCPC方式は前述のように基地局のチャネル、移動局のチャネルとが異なる周波数で設定されており、それぞれのチャネルが時間的に連続している。従って、TDMA方式のように、基地局と移動局とのどちらに対してもダイバーシティ受信を行なうことはできない。従って、例えば基地局受信を優先としてダイバーシティ受信し、移動局にはシングル受信を割り当てている。
背景技術で説明したように、基地局は、基地局からの音声やデータを電波で送信するだけでなく、ある移動局から送信された周波数f2電波を中継し、周波数f1の電波で他の移動局へ再送信する機能を有している。従って、SCPC方式によるデジタル消防無線における移動局の受信装置は、基地局からのデータを電波で受信するだけでなく、移動局からのデータを電波として中継する基地局の電波(中継波)を優先的に受信するようになっている。
しかしながら、ある移動局と他の移動局とが基地局から遠く離れており、かつ、移動局どうしが近接して交信しようとしている場合、基地局の電波を優先的に受信するよりも、移動局の電波の受信を優先させた方が、より高い受信品質で受信できる。このため、他の移動局では、ある移動局が送信した電波である直接波と、ある移動局が送信した電波が基地局で中継された基地局波(中継波)との受信品質を比較し、より受信品質の高い方の電波を受信するようにしている。
なお、基地局からの電波には基地局そのものから指示として送信されるデータと、前述した中継データとが混在して送信される。しかしながら、各データには、送信先やデータの種別を表す識別データが付加されている。また、移動局から送信されるデータにもこの識別データが付加されているため、基地局からのデータと移動局からのデータの各識別データを比較すれば、基地局と移動局とのデータが同じか、又は異なるものか判別することができる。
このため、他の移動局の受信制御手段15は、基地局と移動局とのデータが同じか、又は異なるものか判別し、基地局と移動局とのデータが同じ場合に、それぞれ受信している基地局からの基地局波と移動局からの直接波との受信品質を比較する。そして、直接波よりも基地局波が高品質の場合は、受信部R1とR2とにそれぞれ周波数f1(基地局)を設定してダイバーシティ受信し、基地局波よりも直接波が高品質の場合は、受信部R2とR3とにそれぞれ周波数f2(移動局)を設定してダイバーシティ受信する。
次に、図1の無線受信装置の動作を、図7に示す受信制御手段15の動作フローチャートを用いて説明する。図7に記載のSTはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を、また、YはYesを、NはNoをそれぞれ表している。なお、この例は通信種別指定手段8によりSCPC方式が選択されたため、周波数設定条件テーブルは図5に示すものを使用している。また、後述するフラグは受信制御手段15内の記憶エリアに記憶されており、必要に応じて書き換えられる。
処理が開始されると、まず、受信制御手段15は、受信部R1とR2とに受信周波数f1(基地局用)を設定し、基地局の電波をダイバーシティ受信(ST21)。そして、受信部R3に受信周波数f2(移動局用)を設定し、移動局の電波をシングル受信する(ST22)。
次に、基地局と移動局とのデータ内容が同一か確認し(ST23)、データ内容が同一の場合(ST23−Y)、データ内容フラグに『同一』をセットし(ST24)、データ内容が同一でない場合(ST23−N)、データ内容フラグに『異なる』をセットし(ST25)、いずれの場合も、次のST26を実行する。
次に受信品質測定手段14から現在受信中の電波の各受信品質を入力し、移動局よりも基地局の受信品質が高いか確認する(ST26)。移動局よりも基地局の受信品質が高い場合(ST26−Y)、受信品質フラグに『基地局』をセットし(ST27)、移動局よりも基地局の受信品質が高くない場合、つまり、基地局よりも移動局の受信品質が高い場合(ST26−N)、受信品質フラグに『移動局』をセットし(ST28)、いずれの場合も、次のST29を実行する。
そして、データ内容フラグと、受信品質フラグとの状態を条件として、周波数設定条件テーブルを検索する(ST29)。そして、検索結果の周波数を各受信部に設定する。また、同じ周波数が設定された2つの受信部はダイバーシティ受信、また、それ以外の受信部はシングル受信で動作するように選択・復調手段へ指示する(ST30)。従って、3つの受信部は、それぞれ、指示された内容で受信する。
そして、受信が終了したか確認し(ST31)、受信が終了していなければ(ST31−N)ST31へジャンプし、受信が終了したら(ST31−Y)、ST1へジャンプする。なお、受信の終了とは、受信している電波の送信が停止した場合や、送信される電波は継続しているが、これに含まれる送信データが終了した場合、つまり、論理的な送信が終了した場合を示す。
以上説明したように、SCPC通信方式の時に、移動局が送信した電波を直接受信した時(直接波)のデータ内容と、基地局で中継送信された電波を受信した時(中継波)のデータ内容とが同じ場合、それぞれの電波の受信品質を比較し、受信品質が良い方の電波を選択・復調することができ、受信品質を向上させることが出来る。
以上説明した2つの実施例における周波数設定条件テーブルは、一般的に使用される場合を想定して規定している。例えば、このテーブルは、基地局受信を優先的に行なうように設定したものである。従って、例えば移動局を優先的に行なうように設定するのであれば、図4の『基地局と移動局との受信スロット重なり』がない場合、受信部R2,R3に周波数f2を設定するように、また、受信部R1に周波数f1を設定するようにテーブル内容を規定する。このようにテーブル内容自体は、それぞれの受信装置の仕様で決定されるものであり、本発明を特定するものではない。
また、以上説明した2つの実施例を説明するフローチャートは、本発明のポイントを解り易く説明するものであり、ある特定仕様に基づく受信処理の一例を示している。実際にはこのフローチャートを実現するプログラムと、受信機全体や図示しない送信機などを制御するプログラムとを、例えばマルチタスク制御を用いて同期させ、無線通信機全体の制御を行なうように構成されている。