JP4715542B2 - 反射防止膜及び露光方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体装置の製造工程においてレジスト層を露光する際に用いられる反射防止膜、及び、係る反射防止膜を用いた露光方法に関する。
半導体装置の分野においては、半導体装置の高集積化に伴い、例えば65nm以下の極微細パターンの加工を可能とする新たなプロセス技術の確立が急務となっている。そして、微細パターンの加工には、所謂フォトリソグラフィ技術が不可欠であり、露光光(照明光)の波長の短波長化によって光学的な解像度を向上させ、極微細加工に対応するために、現在、波長193nmのアルゴン−フッ素(ArF)エキシマレーザを露光光源として用いている。
シリコン半導体基板のパターニングは、窒化膜で覆われたシリコン半導体基板の表面に塗布、形成された光感光性のレジスト層を用いて行うが、レジスト層とその下地であるシリコン窒化膜との界面での露光光(照明光)の反射率が大きい場合、レジスト層内で定在波が顕著に誘起される。その結果、現像によってパターニングされたレジスト層の側面が、定在波の形状に従って凹凸となり、良好な矩形状のパターンをレジスト層に形成できないという問題がある。尚、レジスト層に形成されたパターンをレジストパターンと呼ぶ場合がある。例えば、波長193nmの露光光において、屈折率1.70を有するレジスト層を、シリコン半導体基板の表面に形成された厚さ100nmのシリコン窒化膜の上に設けた場合の反射率は、露光光を垂直入射としたとき、約10%と非常に大きい値である。
このような問題を解決するために、従来の波長193nmの露光光を用いるフォトリソグラフィ技術では、シリコン半導体基板とレジスト層との間に単層の反射防止膜を形成している。例えば、シリコン半導体基板の表面に形成された厚さ100nmのシリコン窒化膜の上に、複素屈折率をN0(但し、N0=n0−k0i)としたとき、n0=1.75、k0=0.30といった値を有する厚さ100nmの反射防止膜を形成し、更にその上に、屈折率1.70を有するレジスト層を形成した場合、露光光が垂直入射する場合、レジスト層と反射防止膜との界面での反射率は約0.3%と大きく低減される。
特開2001−242630 ブンタリカ、小澤、染矢、第65回応用物理学会学術講演会 講演予稿集、2p−R−9
ところで、フォトリソグラフィ技術における限界解像度は、露光光の波長に0.3を乗じた程度である。従って、波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源としたフォトリソグラフィ技術にあっては、限界解像度は約60nmとなる。
そして、60nm程度よりも微細なパターンをシリコン半導体基板に形成する技術として、露光系(照明系)とレジスト層との間を、空気よりも屈折率の高い媒体(例えば、水から成る液浸液)によって満たすことにより、更なる高解像度を実現する、液浸リソグラフィ技術の開発が進められている。
液浸液を介して露光を行うことにより、露光光の実効波長は、真空中の露光光の波長を液浸液の屈折率で除したものとなり、より高い解像性能を達成することが可能となる。例えば、波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源とし、液浸液として水(193nmでの屈折率は1.44である)を用いた場合、実効波長は約134nmとなり、限界解像度は、これに0.3を乗じて、約40nmとなる。即ち、水を用いた液浸リソグラフィ技術により、60nm程度よりも微細なパターンをシリコン半導体基板に形成することが可能となる。
また、露光時の焦点裕度(DOF)は、以下の式で与えられる。ここで、nLiqは液浸液の屈折率、K2はプロセスに依存する定数、λは真空中での露光光(照明光)の波長、NAは露光系(照明系)の開口数である。
DOF=nLiq・K2・λ/NA2
従って、開口数NAが一定の場合、焦点裕度DOFは、液浸リソグラフィ技術の場合、空気中での露光による従来のフォトリソグラフィ技術の場合と比べて、nLiq倍となる。即ち、水を液浸液として用いた液浸リソグラフィ技術の場合、焦点裕度DOFは、1.44倍となり、より余裕をもった量産プロセスの構築が可能となる。
しかしながら、このような液浸リソグラフィ技術にあっては、従来の単層の反射防止膜が有効に機能しないという問題がある。
露光光は、入射媒体を伝わり、レジスト層に入射し、更に、反射防止膜に入射する。ここで、露光光が入射媒体からレジスト層へ入射するときの入射角をθin、入射媒体の屈折率をnin、露光光がレジスト層からシリコン半導体基板あるいは反射防止膜へ入射するときの入射角をθIF、レジスト層を構成するレジスト材料の屈折率をnResとすると、以下の式を満たす。尚、従来のフォトリソグラフィ技術では、入射媒体は空気であるので、nin=1、液浸リソグラフィ技術では、例えば、水を液浸液とした場合、入射媒体は水であるので、nin=1.44である。
NA=nin・sin(θin)=nRes・sin(θIF
上式から、θinが一定の場合、従来のフォトリソグラフィ技術(nin=1.0)に対して、液浸リソグラフィ技術では、開口数NAがnLiq倍になることが判る。即ち、レジスト層を構成するレジスト材料の屈折率nResを一定とすると、sin(θIF)がより大きくなることになり、これは、液浸リソグラフィ技術では、θIFが増大することを意味する。つまり、液浸リソグラフィ技術では、従来のフォトリソグラフィ技術に比べて、一層、斜めの方向から露光光が入射すると云える。
一方、単層の反射防止膜を用いた場合、露光光が垂直に入射するときの反射率は、充分低くすることができるが、斜め入射の時の反射率を充分に低減することができないという問題がある。
シリコン半導体基板の表面に形成された厚さ100nmのシリコン窒化膜の上に、n0=1.75、k0=0.30といった値の複素屈折率N0を有する厚さ100nmの反射防止膜を形成し、更にその上に、屈折率1.70を有するレジスト層を形成した場合、レジスト層と反射防止膜との界面での反射率は、露光光が垂直入射する場合(即ち、入射角θIF=0度)、約0.3%と大きく低減される。しかしながら、入射角θIFが60度程度になると、s波の反射率は、約4%と大きく増大する。
一方、微細化の進展により、シリコン半導体基板の表面に形成されたシリコン窒化膜とレジスト層との界面における反射率の許容最大値は、年々、小さくなってきており、特に、液浸リソグラフィ技術が適用されるような微細な世代での反射率の許容最大値は、ライン・アンド・スペース・パターンにおいては、0.4%(ブンタリカ、小澤、染矢、第65回応用物理学会学術講演会 講演予稿集、2p−R−9)と非常に小さい。
また、液浸リソグラフィが適用されるであろう45nm世代において、形成されるコンタクトホールのサイズは、おおよそ90nm(ピッチ140nm)と想定される。この条件において、開口数NAを液浸リソグラフィに該当する1.05として、KLA−Tencor社製の光学プロファイル計算ソフトウェアProlith ver.8.1にて、定在波形状より、コンタクトホールの直径バラツキの反射率依存性を計算した結果を、図1に示す。
90nmのコンタクトホール径に対して、その直径のバラツキを5nm以下に抑える必要がある。図1から、そのためには、反射率を約0.4%以下とする必要があることが分かる。
即ち、ライン・アンド・スペース・パターンの場合でも、コンタクトホール・パターンの場合でも、反射率を0.4%以下に抑える必要がある。
然るに、従来のフォトリソグラフィ技術で用いられてきた単層の反射防止膜は、液浸リソグラフィ技術において、露光光が一層斜めに入射することもあり、充分に反射率を低減することができない。そして、反射率を充分に下げられないが故に、レジスト層中に定在波が顕著に現れる結果、良好な矩形状のパターンをレジスト層に形成できないという問題を解決することができない。
従って、本発明の目的は、露光系(照明系)の開口数を大きくすることで、大きな焦点裕度を達成するためのフォトリソグラフィ技術、例えば液浸リソグラフィ技術において、露光光(照明光)がレジスト層に一層斜めに入射する場合であっても、シリコン半導体基板の表面に形成されたシリコン窒化膜とレジスト層との界面における反射率を充分に低減することができる反射防止膜、及び、係る反射防止膜を用いた露光方法を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の反射防止膜は、半導体装置の製造工程において使用され、190nm乃至195nmの波長を有し、開口数NAが 1.1<NA≦1.2 である露光系にてレジスト層を露光する際に用いられる、レジスト層と、シリコン半導体基板の表面に形成された以下の値の膜厚T(単位:nm)を有するシリコン窒化膜との間に設けられた2層構造を有する反射防止膜である。また、上記の目的を達成するための本発明の露光方法は、半導体装置の製造工程において使用され、190nm乃至195nmの波長を有し、開口数NAが 1.1<NA≦1.2 である露光系にて、レジスト層と、シリコン半導体基板の表面に形成された以下の値の膜厚T(単位:nm)を有するシリコン窒化膜との間に2層構造を有する反射防止膜を設けた状態で、該レジスト層を露光する露光方法である。
そして、本発明の反射防止膜あるいは本発明の露光方法は、
反射防止膜を構成する上層の複素屈折率N1、下層の複素屈折率N2を、それぞれ、
1=n1−k1
2=n2−k2
とし、上層の膜厚をd1(単位:nm)、下層の膜厚をd2(単位:nm)とし、
[n10,k10,d10,n20,k20,d20]の値の組合せとして、シリコン窒化膜の膜厚Tに依存して以下のいずれかを選択したとき、
1,k1,d1,n2,k2,d2が、以下の関係式を満足することを特徴とし、あるいは、係る反射防止膜を用いることを特徴とする。
{(n1−n10)/(n1m−n10)}2+{(k1−k10)/(k1m−k10)}2+{(d1−d10)/(d1m−d10)}2+{(n2−n20)/(n2m−n20)}2+{(k2−k20)/(k2m−k20)}2+{(d2−d20)/(d2m−d20)}2≦1
但し、n1とn10の大小関係に基づき当該ケースにおけるn1mの値を採用し、k1とk10の大小関係に基づき当該ケースにおけるk1mの値を採用し、d1とd10の大小関係に基づき当該ケースにおけるd1mの値を採用し、n2とn20の大小関係に基づき当該ケースにおけるn2mの値を採用し、k2とk20の大小関係に基づき当該ケースにおけるk2mの値を採用し、d2とd20の大小関係に基づき当該ケースにおけるd2mの値を採用する。
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本発明の露光方法は、例えば、半導体装置における極微細パターンの加工に適用され、具体的には、シリコン半導体基板の表面に形成されたシリコン窒化膜上に本発明の反射防止膜を成膜、形成する工程と、感光作用を有するレジスト層を反射防止膜上に塗布、形成する工程と、レジスト層を露光光(紫外線)で選択的に露光して感光させる工程と、レジスト層を現像することによって所定のレジストパターンを得る工程とを備える。
本発明の反射防止膜あるいは本発明の露光方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、露光光(紫外線)は、190nm乃至195nmの波長を有するが、好ましくは、192nm乃至194nmの波長を有することが望ましく、より具体的には、波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源として用いることが一層望ましい。
また、d1≦250を満足し、且つ、d2≦250を満足すること、云い換えれば、反射防止膜の上層の膜厚は250nmを超えず、しかも、下層の膜厚も250nmを超えないことが好ましい。上層の膜厚が250nmを超え、あるいは又、下層の膜厚が250nmを超えると、レジスト層を露光光によって露光し、現像した後、係るレジスト層をエッチング用マスクとしてシリコン半導体基板をエッチング加工する工程において、レジスト層のレジストパターン寸法と実際のシリコン半導体基板におけるエッチング加工寸法の差である所謂加工変換差(寸法変換量あるいは寸法シフトとも呼ばれる)が大きくなり過ぎ、シリコン半導体基板において所望の形状若しくはサイズを有するパターンが得られなくなる虞がある。
更には、レジスト層の屈折率は、1.60乃至1.80であることが望ましい。この範囲にないレジスト材料から成るレジスト層を用いる場合、上述した(n1,k1,d1,n2,k2,d2)の条件の種々の組のいずれかをたとえ満たす反射防止膜であっても、該当する開口数に対応する露光光の入射角(最大入射角θin-max)から垂直入射(最小入射角θin-min、具体的には0度)までの全領域に亙って、シリコン半導体基板の表面に形成されたシリコン窒化膜とレジスト層との界面における反射率を0.4%以下とすることが困難となり、良好なレジストパターン形状が得られない虞がある。
更には、屈折率が1.44±0.02の媒体でレジスト層と露光系との間が満たされていることが、云い換えれば、液浸液として屈折率が1.44±0.02の媒体を用いることが望ましく、媒体として水を用いることが一層望ましい。屈折率が、この値から大きくはずれると、上述した(n1,k1,d1,n2,k2,d2)の条件の種々の組のいずれかをたとえ満たす反射防止膜であっても、該当する開口数に対応する露光光の入射角(最大入射角θin-max)から垂直入射(最小入射角θin-min、具体的には0度)までの全領域に亙って、シリコン半導体基板の表面に形成されたシリコン窒化膜とレジスト層との界面における反射率を0.4%以下とすることが困難となり、良好なレジストパターン形状が得られない虞がある。
また、本発明の露光方法において、レジスト層の上(具体的には上層の上)にトップコート層を形成することが望ましい。トップコート層が存在しないと、液浸液とレジスト層の相互作用(例えば、レジスト層が液浸液と接触することによってレジスト層に欠陥が発生するといった現象等)の発生を抑制することができず、良好なレジストパターン形状が得られない虞がある。ここで、トップコート層を構成する材料として、有機物や無機物、具体的には、例えば、ポリビニルアルコールやアモルファスフルオロポリマー、NaClを例示することができる。
尚、以下の説明において、該当する開口数に対応する露光光の入射角(最大入射角θin-max)から垂直入射(最小入射角θin-min)までの全領域を、「該当する露光系の開口数NAに対応する入射角全領域」、あるいは、単に、「入射角全領域」と呼ぶ場合がある。
また、レジスト層の膜厚は、形成しようとする最小のレジストパターンサイズの2倍乃至5倍程度であることが好ましい。レジスト層の膜厚が、最小のレジストパターンサイズの2倍未満の場合、レジスト層を所定のパターンにパターニングすることは可能であるが、レジスト層のパターニング後にシリコン半導体基板をエッチングをする際、良好なエッチングができなくなる虞がある。加えて、レジスト層中の膜欠陥数が増大する虞もある。一方、レジスト層の膜厚が、最小のレジストパターンサイズの5倍を超える場合、パターニングされたレジスト層が倒れてしまい、シリコン半導体基板の良好なパターニングができなくなる虞がある。
反射防止膜の上層及び下層を構成する材料は、上述した(n1,k1,d1,n2,k2,d2)の条件の種々の組を満たすものであれば、どのような材料であってもよい。例えば、上層、下層を構成する材料として、高分子材料、無機酸化物材料、金属材料、及び、これらのハイブリッド材料を挙げることができ、具体的には、例えば、ポリイミド、SiCH膜、SiCHN膜、SiCOH膜、エポキシ系熱硬化樹脂、アクリル系熱硬化樹脂、エポキシ系紫外線硬化樹脂、アクリル系紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
また、反射防止膜の上に形成されるレジスト層と、反射防止膜との間の密着性等の改善のために、反射防止膜を構成する上層の表面に対して、シランカップリング処理等による、表面改質処理を行ってもよい。
通常、単層の反射防止膜では、その膜厚及び複素屈折率をどのように変化させても、該当する露光系の開口数NAに対応する入射角全領域に亙って、反射率を0.4%以下にすることはできない。また、反射防止膜の膜厚が厚すぎると、レジスト層を露光光によって露光し、現像した後、シリコン半導体基板をエッチング加工する工程において、加工変換差の問題が生じてしまう。
一方、本発明にあっては、シリコン半導体基板の表面に形成されたシリコン窒化膜とレジスト層との間に、膜厚及び複素屈折率が所定の範囲にある2層構成の反射防止膜を形成することで、該当する露光系の開口数NAに対応する入射角全領域に亙って、反射率を0.4%以下にすることが可能となり、より優れた形状を有するレジストパターンを得ることができ、これまで以上の極微細加工が可能となる。云い換えれば、露光系の開口数NAが1.1<NA≦1.2の場合において、2層構成の反射防止膜における膜厚及び複素屈折率が上記の条件を満たすことで、該当する開口数NAに対応する露光光の入射角から垂直入射までの全領域に亙って反射率を0.4%以下とすることができる結果、良好なレジストパターン形状を得ることができる。また、加工変換差を小さく抑えることができる。
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、先ず、本発明を適用した場合に、該当する露光系の開口数NAに対応する入射角全領域(露光系の開口数NAに対応する露光光の入射角から垂直入射まで全領域)に亙って、反射率が0.4%以下となる理由を説明する。
反射防止膜の上層の膜厚d1を10nmから200nmまで、10nm刻みで、また、下層の膜厚d2についても、10nmから200nmまで、10nm刻みで、各組合せにおいて、露光系の開口数NAを1.1<NA≦1.2(具体的には1.2)としたとき、対応する最も斜めからの入射角(最大入射角θin-max)から垂直入射(最小入射角θin-min=0度)までの、即ち、入射角全領域における反射率を最小にするような、上層と下層の複素屈折率N1,N2の最適化シミュレーションを、シリコン窒化膜の膜厚が2nm以上でしかも205nm以下の場合について行った。
この計算において、2層反射防止膜の反射率の計算は、各層におけるフレネル係数を計算する計算手法(参考:光学薄膜の基礎理論、小檜山光信著、平成15年、オプトロニクス社発行)を採用した。また、上層と下層の複素屈折率の最適化には、Fletcher−Reevesの最適化法(参考:非線形最適化問題、J.コワリック、M.R.オズボーン著、山本善之、小山健夫訳、昭和45年、培風館発行)を採用した。
最適化にあたっては、入射角全領域を24等分した。そして、各入射角における反射率を計算し、各入射角における反射率の自乗和を最小化する形で行った。
このようにして、露光系の開口数NAを1.2とし、上層の膜厚d1を10nmから250nmまで、10nm刻みとし、更には、下層の膜厚d2についても、10nmから250nmまで、10nm刻みとして変化させた場合の、それぞれの場合について、上記の方法により、上層と下層の複素屈折率の最適化を行うことによって、上層と下層の最適な複素屈折率N1,N2を得ることができた。
尚、250nmよりも厚い膜厚の場合の計算を行わなかったのは、これ以上の膜厚になると、エッチング工程における加工変換差が大きくなり、良好なシリコン半導体基板の加工ができなくなるためである。
ついで、上記の計算結果から、露光系の開口数NAを1.2、上層の膜厚d1を10nmから250nmまで、10nm刻みとし、下層の膜厚d2についても、10nmから250nmまで、10nm刻みとして変化させた場合の、それぞれの場合について、上層と下層の複素屈折率の最適化後の、最適化のための評価関数である反射率の自乗和を極小とするような膜厚条件を求めた。
そして、この膜厚条件を元に、更に、上層の膜厚d1及び下層の膜厚d2を一層細かく刻み、膜厚条件の対応する上層と下層の複素屈折率が、最も好適な複素屈折率の詳細を求めた。
その結果、以下の最も好適な複素屈折率と膜厚の組合せが得られた。即ち、2層の反射防止膜における上層(シリコン窒化膜を表面に有するシリコン半導体基板表面から遠いところに位置する層)の複素屈折率をN1、下層(シリコン窒化膜を表面に有するシリコン半導体基板表面の近いところに位置する層)の複素屈折率をN2としたとした、n10、n20、k10、及び、k20を、それぞれ、
1=n10−k10
2=n20−k20
で定義される量とし、d10を上層の膜厚(単位:nm)、d20を下層の膜厚(単位:nm)としたとき、以下の表1−A〜表1−T(開口数NA:1.1<NA≦1.2)に示す[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の値の組合せが、最も好適な組合せ、即ち、反射率の極小値が得られる組合せである。
尚、表1−Aあるいは後述する表2−Aにおける[ケースA−01]〜[ケースA−23]はシリコン窒化膜の膜厚が2nm以上であって15nm以下における値であり、
表1−Bあるいは後述する表2−Bにおける[ケースB−01]〜[ケースB−16]はシリコン窒化膜の膜厚が15nmより大きく25nm以下における値であり、
表1−Cあるいは後述する表2−Cにおける[ケースC−01]〜[ケースC−15]はシリコン窒化膜の膜厚が25nmより大きく35nm以下における値であり、
表1−Dあるいは後述する表2−Dにおける[ケースD−01]〜[ケースD−18]はシリコン窒化膜の膜厚が35nmより大きく45nm以下における値であり、
表1−Eあるいは後述する表2−Eにおける[ケースE−01]〜[ケースE−22]はシリコン窒化膜の膜厚が45nmより大きく55nm以下における値であり、
表1−Fあるいは後述する表2−Fにおける[ケースF−01]〜[ケースF−16]はシリコン窒化膜の膜厚が55nmより大きく65nm以下における値であり、
表1−Gあるいは後述する表2−Gにおける[ケースG−01]〜[ケースG−17]はシリコン窒化膜の膜厚が65nmより大きく75nm以下における値であり、
表1−Hあるいは後述する表2−Hにおける[ケースH−01]〜[ケースH−20]はシリコン窒化膜の膜厚が75nmより大きく85nm以下における値であり、
表1−Iあるいは後述する表2−Iにおける[ケースI−01]〜[ケースI−19]はシリコン窒化膜の膜厚が85nmより大きく95nm以下における値であり、
表1−Jあるいは後述する表2−Jにおける[ケースJ−01]〜[ケースJ−19]はシリコン窒化膜の膜厚が95nmより大きく105nm以下における値であり、
表1−Kあるいは後述する表2−Kにおける[ケースK−01]〜[ケースK−19]はシリコン窒化膜の膜厚が105nmより大きく115nm以下における値であり、
表1−Lあるいは後述する表2−Lにおける[ケースL−01]〜[ケースL−18]はシリコン窒化膜の膜厚が115nmより大きく125nm以下における値であり、
表1−Mあるいは後述する表2−Mにおける[ケースM−01]〜[ケースM−20]はシリコン窒化膜の膜厚が125nmより大きく135nm以下における値であり、
表1−Nあるいは後述する表2−Nにおける[ケースN−01]〜[ケースN−20]はシリコン窒化膜の膜厚が135nmより大きく145nm以下における値であり、
表1−Oあるいは後述する表2−Oにおける[ケースO−01]〜[ケースO−20]はシリコン窒化膜の膜厚が145nmより大きく155nm以下における値であり、
表1−Pあるいは後述する表2−Pにおける[ケースP−01]〜[ケースP−18]はシリコン窒化膜の膜厚が155nmより大きく165nm以下における値であり、
表1−Qあるいは後述する表2−Qにおける[ケースQ−01]〜[ケースQ−18]はシリコン窒化膜の膜厚が165nmより大きく175nm以下における値であり、
表1−Rあるいは後述する表2−Rにおける[ケースR−01]〜[ケースR−20]はシリコン窒化膜の膜厚が175nmより大きく185nm以下における値であり、
表1−Sあるいは後述する表2−Sにおける[ケースS−01]〜[ケースS−20]はシリコン窒化膜の膜厚が185nmより大きく195nm以下における値であり、
表1−Tあるいは後述する表2−Tにおける[ケースT−01]〜[ケースT−20]はシリコン窒化膜の膜厚が195nmより大きく205nm以下における値である。
即ち、以上に説明した条件にあっては、開口数NAが1.1<NA≦1.2の場合、
シリコン窒化膜の膜厚が2nm以上であって15nm以下においては23点(23箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が15nmより大きく25nm以下においては16点(16箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が25nmより大きく35nm以下においては15点(15箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が35nmより大きく45nm以下においては18点(18箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が45nmより大きく55nm以下においては22点(22箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が55nmより大きく65nm以下においては16点(16箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が65nmより大きく75nm以下においては17点(17箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が75nmより大きく85nm以下においては20点(20箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が85nmより大きく95nm以下においては19点(19箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が95nmより大きく105nm以下においては19点(19箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が105nmより大きく115nm以下においては19点(19箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が115nmより大きく125nm以下においては18点(18箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が125nmより大きく135nm以下においては20点(20箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が135nmより大きく145nm以下においては20点(20箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が145nmより大きく155nm以下においては20点(20箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が155nmより大きく165nm以下においては18点(18箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が165nmより大きく175nm以下においては18点(18箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が175nmより大きく185nm以下においては20点(20箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が185nmより大きく195nm以下においては20点(20箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができ、
シリコン窒化膜の膜厚が195nmより大きく205nm以下においては20点(20箇の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の組合せ)で反射率の極小値を得ることができた。
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反射率の極小値を得ることができる上記の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の値の組合せを用いれば、所定の開口数NAであって、それぞれのシリコン膜厚において、該当する露光系の開口数NAに対応する入射角全領域に亙って反射率を0.4%以下とすることができる。即ち、上記の組合せは、対応する開口数NAよりも小さい開口数NAの場合でも、反射率を0.4%以下にできるという観点から、有効な組合せである。
上記の[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の値の組合せの各場合において、これら6つの変数のうち、5つの変数を固定したときに、残りの1つの変数が、どこまで変動すると、反射率が0.4%を超えるかに関して、シミュレーションを行った。その結果、以下の表2−A〜表2−T(開口数NA:1.1<NA≦1.2)に示す変動許容範囲が得られた。
尚、以下において、
1-min:反射率が0.4%を超えないときのn10の最小値
1-max:反射率が0.4%を超えないときのn10の最大値
1-min:反射率が0.4%を超えないときのk10の最小値
1-max:反射率が0.4%を超えないときのk10の最大値
1-min:反射率が0.4%を超えないときのd10の最小値
1-max:反射率が0.4%を超えないときのd10の最大値
2-min:反射率が0.4%を超えないときのn20の最小値
2-max:反射率が0.4%を超えないときのn20の最大値
2-min:反射率が0.4%を超えないときのk20の最小値
2-max:反射率が0.4%を超えないときのk20の最大値
2-min:反射率が0.4%を超えないときのd20の最小値
2-max:反射率が0.4%を超えないときのd20の最大値
とする。
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[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の値の組合せは、該当する露光系の開口数NAに対応する入射角全領域における反射率を極小(最小)にする組合せである。即ち、この極小化(最小化)のための評価関数をfとしたとき、評価関数fはn10、n20、k10、k20、d10、及び、d20の関数であり、f(n10,n20,k10,k20,d10,d20)を極小化(最小化)する組合せが、上に挙げたような[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の値の組合せである。即ち、評価関数fは、上に挙げたような[n10,n20,k10,k20,d10,d20]の値の組合せで、極小化されている。
一般に、多変数関数f(xi)(i=0,1,2,・・・n)が、
i=xi-min
で極小となるとき、この極小値の近傍では、f(xi)を以下の式(1)で表すことができる。即ち、2次関数で近似することができる。但し、記号「Σ」は、i=0,1,2,・・・nにおける総和を意味する。式(2)においても同様である。
f(xi)=Σai(xi−xi-min2+b (1)
そして、この場合、f(xi)が、bよりも大きい、或る一定の数c以下となるための条件は、以下の式(2)の楕円関数型で表すことができる。ここで、xi-cは、他の変数の全て固定してxiのみを変動させたときに、f(xi)=cとなるxiの値である。
Σ(xi−x1-min2/(xi-c−xi-min2≦1 (2)
よって、1つの変数のみを変化させて、他の変数を固定し、反射率が0.4%となる各変数の値であるn1-max、n1-min、k1-max、k1-min、d1-max、d1-min、n2-max、n2-min、k2-max、k2-min、d2-max、d2-minの値を用いることにより、以下の式(3)を満たすn10、n20、k10、n20、k20、及び、d20を採用すれば、反射率は0.4%を超えないことになる。
{(n1−n10)/(n1m−n10)}2+{(k1−k10)/(k1m−k10)}2+{(d1−d10)/(d1m−d10)}2+{(n2−n20)/(n2m−n20)}2+{(k2−k20)/(k2m−k20)}2+{(d2−d20)/(d2m−d20)}2≦1 (3)
但し、n1m、k1m、d1m、n2m、k2m、d2mは、以下の値をとる。
1m:n1≧n10のときn1-max,n1<n10のときn1-min
1m:k1≧k10のときk1-max,k1<k10のときk1-min
1m:d1≧d10のときd1-max,d1<d10のときd1-min
2m:n2≧n20のときn2-max,n2<n20のときn2-min
2m:k2≧k20のときk2-max,k2<k20のときk2-min
2m:d2≧d20のときd2-max,d2<d20のときd2-min
尚、n1m、k1m、d1m、n2m、k2m、d2mの値を、n1、n2、k1、n2、k2、及び、d2が、それぞれ、n10、n20、k10、n20、k20、及び、d20と比べたときの大小で分けた理由は、
1-max−n10=n10−n1-min
1-max−k10=k10−k1-min
1-max−d10=d10−d1-min
2-max−n20=n20−n2-min
2-max−k20=k20−k2-min
2-max−d20=d20−d2-min
では、必ずしもないため、式(2)で規定される楕円体の径の定義を、n1、n2、k1、n2、k2、及び、d2が、それぞれ、n10、n20、k10、n20、k20、及び、d20と比べたときの大小の場合で分けた。云い換えれば、楕円体の曲率が、例えば、n1≧n10のときと、n1<n10のときでは異なるからであり、k10,d10,n20,k20,d20についても同様のことが云えるからである。
こうして、[n10,k10,d10,n20,k20,d20]の値の組合せとして、開口数NAが1.1<NA≦1.2の場合であって、
2(nm)≦T≦15(nm)場合、ケース[A−01]〜ケース[A−23]のいずれか、
15(nm)<T≦25(nm)場合、ケース[B−01]〜ケース[B−16]のいずれか、
25(nm)<T≦35(nm)場合、ケース[C−01]〜ケース[C−15]のいずれか、
35(nm)<T≦45(nm)場合、ケース[D−01]〜ケース[D−18]のいずれか、
45(nm)<T≦55(nm)場合、ケース[E−01]〜ケース[E−22]のいずれか、
55(nm)<T≦65(nm)場合、ケース[F−01]〜ケース[F−16]のいずれか、
65(nm)<T≦75(nm)場合、ケース[G−01]〜ケース[G−17]のいずれか、
75(nm)<T≦85(nm)場合、ケース[H−01]〜ケース[H−20]のいずれか、
85(nm)<T≦95(nm)場合、ケース[I−01]〜ケース[I−19]のいずれか、
95(nm)<T≦105(nm)場合、ケース[J−01]〜ケース[J−19]のいずれか、
105(nm)<T≦115(nm)場合、ケース[K−01]〜ケース[K−19]のいずれか、
115(nm)<T≦125(nm)場合、ケース[L−01]〜ケース[L−18]のいずれか、
125(nm)<T≦135(nm)場合、ケース[M−01]〜ケース[M−20]のいずれか、
135(nm)<T≦145(nm)場合、ケース[N−01]〜ケース[N−20]のいずれか、
145(nm)<T≦155(nm)場合、ケース[O−01]〜ケース[O−20]のいずれか、
155(nm)<T≦165(nm)場合、ケース[P−01]〜ケース[P−18]のいずれか、
165(nm)<T≦175(nm)場合、ケース[Q−01]〜ケース[Q−18]のいずれか、
175(nm)<T≦185(nm)場合、ケース[R−01]〜ケース[R−20]のいずれか、
185(nm)<T≦195(nm)場合、ケース[S−01]〜ケース[S−20]のいずれか、
195(nm)<T≦205(nm)場合、ケース[T−01]〜ケース[T−20]のいずれか、
を選択することで、反射率が0.4%を超えないことが保証され、しかも、
1とn10の大小関係に基づき当該ケースにおけるn1mの値を採用し、
1とk10の大小関係に基づき当該ケースにおけるk1mの値を採用し、
1とd10の大小関係に基づき当該ケースにおけるd1mの値を採用し、
2とn20の大小関係に基づき当該ケースにおけるn2mの値を採用し、
2とk20の大小関係に基づき当該ケースにおけるk2mの値を採用し、
2とd20の大小関係に基づき当該ケースにおけるd2mの値を採用することで、
当該ケースにおけるn1mの最大値(n1-max)と最小値(n1-min)の範囲内にn1があり、
当該ケースにおけるk1mの最大値(k1-max)と最小値(k1-min)の範囲内にk1があり、
当該ケースにおけるd1mの最大値(d1-max)と最小値(d1-min)の範囲内にd1があり、
当該ケースにおけるn2mの最大値(n2-max)と最小値(n2-min)の範囲内にn2があり、
当該ケースにおけるk2mの最大値(k2-max)と最小値(k2-min)の範囲内にk2があり、
当該ケースにおけるd2mの最大値(d2-max)と最小値(d2-min)の範囲内にd2がある場合には、反射防止膜は、シリコン半導体基板からの反射率が0.4%を超えないことが保証される結果、良好なレジストパターンを得ることができる。
即ち、中心が(n10,n20,k10,k20,d10,d20)であり、径が(n1m−n10)、(k1m−k10)、(d1m−d10)、(n2m−n20)、(k2m−k20)、(d2m−d20)の絶対値である、(n1,k1,d1,n2,k2,d2)の6つを変数とした6次元の楕円を想定したとき、この楕円の内部に入る範囲における(n1,k1,d1,n2,k2,d2)の任意の値の組合せを選択すれば、反射防止膜の反射率を0.4%以下とすることができる。
特開2001−242630、及び、Proceedings of SPIE 2003,5039,152(K.Babich他)等に記載のプラズマエンハンスCVD法により、後述する表3に示す屈折率及び膜厚を有する2層の反射防止膜をシリコン窒化膜が成膜されたシリコン半導体基板の表面に形成した。尚、シリコン窒化膜のシリコン基板上への成膜は、熱CVD法で行った。具体的には、CVD法におけるソースガスとしてSiH4+NH3を用い、反応温度を400゜Cに設定して行った。
プラズマエンハンスCVD法は、上記の参考文献に詳述されているように、平行電極反応器中で行われる成膜方法であり、シリコン半導体基板を一方の電極に載置する。シリコン半導体基板には、この電極によって負のバイアスが印加され、反応器内の圧力、反応器に導入する反応前駆物質の種類(テトラメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルテトラシロキサン、テトラメチルゲルマン、酸素等)及び流量、基板温度を制御することにより、種々の値の複素屈折率を有する層を成膜、形成することができる。
尚、表3中、実施例は本発明の条件を満たす反射防止膜であり、一方、比較例は本発明の条件を満たさない比較対象用の反射防止膜である。
Figure 0004715542
より詳細には、1.1<NA≦1.2における評価結果を示す表3において、実施例1−1は、シリコン窒化膜の膜厚(T)が 55(nm)<T≦65(nm) の場合の本発明の条件を満たす反射防止膜であり、実施例1−2は、115(nm)<T≦125(nm) の場合の本発明の条件を満たす反射防止膜であり、実施例1−3は、135(nm)<T≦145(nm) の場合の本発明の条件を満たす反射防止膜である。一方、比較例1−1は、55(nm)<T≦65(nm) の場合の本発明の条件を満たさない反射防止膜であり、比較例1−2は、115(nm)<T≦125(nm) の場合の本発明の条件を満たさない反射防止膜であり、比較例1−3は、135(nm)<T≦145(nm) の場合の本発明の条件を満たさない反射防止膜である。
ここで、表3の実施例及び比較例における反射防止膜の上層及び下層を構成する材料はSiCOHである。また、各膜の複素屈折率は、SOPRA社製のエリプソメータにより測定を行った。
これらの2層の反射防止膜上に、レジスト層として、JSR株式会社製のフォトレジストARX2014Jを膜厚が100nmになるようにスピンコートした後、105゜C、60秒間、ベーキング処理を行い、次いで、トップコート層として同社製のトップコート材TCX001を膜厚が30nmになるようにスピンコートした。その後、膜全体を100゜Cで30秒間、ベーキング処理を行った。
このようにして作製したサンプルに対して、二光束干渉露光装置により露光を行った。この二光束干渉露光装置にあっては、光源としてArFエキシマレーザを用い、レーザの光路上に、三角形若しくは五角形の断面を有するプリズムが設置されている。プリズムの下面に、サンプルとプリズム下面の距離が1mmとなるように、サンプルを配置した。例えば、三角形断面のプリズムを用いる場合、プリズムの頂点をレーザの光路の中央部に配置し、この頂点に対向する面をプリズムの下面とする。プリズムの上方からプリズムの下面方向に向けてプリズムにレーザ光を照射すると、プリズムの2つの側面に入射したレーザ光は、各側面と入射レーザ光との角度に依存して屈折し、その光路の向きが変わる。2つの側面からのそれぞれの、進行方向の異なるレーザ光がプリズム下面において干渉することにより、サンプル上に周期的な光学強度分布を得ることができ、これにより、レジスト層を感光することができる。尚、1.1<NA≦1.2における評価において用いたプリズムの換算開口数NAは、1.15である。
サンプルとプリズム下面の間隙、1mmの部分に毛細管現象を用いて水を導入することにより、水を液浸液とする液浸露光を実行した。
露光を行ったサンプルに、120゜Cで90秒間、ベーキング処理を施し、その後、2.38%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)から成る標準現像液で、現像し、レジストパターン観察用サンプルとした。レジスト層の形状観察は、シリコン半導体基板を割った後、その断面を走査電子顕微鏡で観察すると共に、オプティカルスキャテッドメトリー(KLA−Tencor社製SCD−100)を用いて40μm×40μmの範囲の散乱光の分布による加工形状の精度を測定した。
観察結果として、良好な矩形の断面を有するレジストパターンが得られたものを丸印「○」、そうではなく、良好な矩形断面の得られなかったものをバツ印「×」として、表3に纏めた。
表3からも明らかなように、本発明を適用した2層構成の反射防止膜は、本発明を適用していない2層構成の反射防止膜に比べて、良好なレジストの断面形状を得ることできることが判る。
以上のように、本発明を適用して、複素屈折率、膜厚が特定の範囲にある2層構成の反射防止膜をレジスト層と、シリコン窒化膜が形成されたシリコン半導体基板の表面との間に形成することにより、一定の範囲の露光系の開口数NAに対応する反射防止膜において、シリコン半導体基板からの反射率を低減させ、良好なレジストパターンを得ることができる。
尚、上記の実施例においては、プラズマエンハンスCVD法にて形成した2層構成の反射防止膜を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、スピンコート法等、その他の方法で形成した2層構成の反射防止膜を用いることもできる。
本発明の2層構成の反射防止膜を用いて半導体装置を製造した。尚、露光用マスクとして位相シフトマスクを使用し、露光光の光源としてArFエキシマレーザ(波長λ:193nm)を使用し、輪帯照明法を採用した。また、レジスト層の表面を水層で覆った。そして、所望のパターンが、線幅や形状の変動無しで、レジスト層に形成できるかを検証した。その結果、いずれの場合においても、所望のパターンが、線幅や形状の変動無しで、レジスト層に形成できることが判った。しかも、いずれの場合においても、反射率が0.4%以下であった。
具体的には、トレンチ構造を有する素子分離領域の形成を行った。即ち、シリコン窒化膜が表面に形成されたシリコン半導体基板の上に2層構造を有する反射防止膜を形成し、その上にレジスト層を形成し、レジスト層を露光・現像して、パターニングされたレジスト層を得た。次いで、このパターニングされたレジスト層をエッチング用マスクとして、RIE法にてシリコン窒化膜が表面に形成されたシリコン半導体基板を所定の深さまでエッチングし、シリコン半導体基板にトレンチを形成した。その後、トレンチを含むシリコン半導体基板の全面に絶縁膜を形成し、シリコン半導体基板表面上の絶縁膜を除去することで、シリコン半導体基板に形成されたトレンチに絶縁膜が埋め込まれたトレンチ構造を有する素子分離領域を得ることができた。
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における反射防止膜の構成、反射防止膜を構成する各層の膜厚や複素屈折率は例示であり、適宜、変更することができる。
図1は、コンタクトホールの直径バラツキの反射率依存性を計算した結果を示すグラフである。

Claims (9)

  1. 半導体装置の製造工程において使用され、190nm乃至195nmの波長を有し、開口数NAが 1.1<NA≦1.2 である露光系にてレジスト層を露光する際に用いられる、レジスト層と、シリコン半導体基板の表面に形成された以下の値の膜厚T(単位:nm)を有するシリコン窒化膜との間に設けられた2層構造を有する反射防止膜であって、
    反射防止膜を構成する上層の複素屈折率N1、下層の複素屈折率N2を、それぞれ、
    1=n1−k1
    2=n2−k2
    とし、上層の膜厚をd1(単位:nm)、下層の膜厚をd2(単位:nm)とし、
    [n10,k10,d10,n20,k20,d20]の値の組合せとして、シリコン窒化膜の膜厚Tに依存して以下のいずれかを選択したとき、
    1,k1,d1,n2,k2,d2が、以下の関係式を満足することを特徴とする反射防止膜。
    {(n1−n10)/(n1m−n10)}2+{(k1−k10)/(k1m−k10)}2+{(d1−d10)/(d1m−d10)}2+{(n2−n20)/(n2m−n20)}2+{(k2−k20)/(k2m−k20)}2+{(d2−d20)/(d2m−d20)}2≦1
    但し、n1とn10の大小関係に基づき当該ケースにおけるn1mの値を採用し、k1とk10の大小関係に基づき当該ケースにおけるk1mの値を採用し、d1とd10の大小関係に基づき当該ケースにおけるd1mの値を採用し、n2とn20の大小関係に基づき当該ケースにおけるn2mの値を採用し、k2とk20の大小関係に基づき当該ケースにおけるk2mの値を採用し、d2とd20の大小関係に基づき当該ケースにおけるd2mの値を採用する。
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  2. 1≦250を満足し、且つ、d2≦250を満足することを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
  3. レジスト層の屈折率は、1.60乃至1.80であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
  4. 半導体装置の製造工程において使用され、190nm乃至195nmの波長を有し、開口数NAが 1.1<NA≦1.2 である露光系にて、レジスト層と、シリコン半導体基板の表面に形成された以下の値の膜厚T(単位:nm)を有するシリコン窒化膜との間に2層構造を有する反射防止膜を設けた状態で、該レジスト層を露光する露光方法であって、
    反射防止膜を構成する上層の複素屈折率N1、下層の複素屈折率N2を、それぞれ、
    1=n1−k1
    2=n2−k2
    とし、上層の膜厚をd1(単位:nm)、下層の膜厚をd2(単位:nm)とし、
    [n10,k10,d10,n20,k20,d20]の値の組合せとして、シリコン窒化膜の膜厚Tに依存して以下のいずれかを選択したとき、
    1,k1,d1,n2,k2,d2が、以下の関係式を満足する反射防止膜を用いることを特徴とする露光方法。
    {(n1−n10)/(n1m−n10)}2+{(k1−k10)/(k1m−k10)}2+{(d1−d10)/(d1m−d10)}2+{(n2−n20)/(n2m−n20)}2+{(k2−k20)/(k2m−k20)}2+{(d2−d20)/(d2m−d20)}2≦1
    但し、n1とn10の大小関係に基づき当該ケースにおけるn1mの値を採用し、k1とk10の大小関係に基づき当該ケースにおけるk1mの値を採用し、d1とd10の大小関係に基づき当該ケースにおけるd1mの値を採用し、n2とn20の大小関係に基づき当該ケースにおけるn2mの値を採用し、k2とk20の大小関係に基づき当該ケースにおけるk2mの値を採用し、d2とd20の大小関係に基づき当該ケースにおけるd2mの値を採用する。
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  5. 1≦250を満足し、且つ、d2≦250を満足することを特徴とする請求項4に記載の露光方法。
  6. レジスト層の屈折率は、1.60乃至1.80であることを特徴とする請求項4に記載の露光方法。
  7. レジスト層の上にトップコート層が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の露光方法。
  8. 屈折率が1.44±0.02の媒体でレジスト層と露光系との間が満たされていることを特徴とする請求項4に記載の露光方法。
  9. 媒体は水であることを特徴とする請求項8に記載の露光方法。
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