JP4712621B2 - 光学素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は、投影スクリーンや液晶表示装置等に使用される、偏光選択反射層を備えた光学素子に関し、さらに詳細には、選択反射層の成膜性が良好で、かつバリア性、密着性に優れる光学素子に関する。
近年において、重合性液晶材料を重合させることにより得られる光学素子が提案されている(例えば、特開2001−100045号公報(特許文献1)、特表平10−508882号公報(特許文献2)等)。このような光学素子は、液晶が有する特性を重合により固定化してフィルムとして用いることができるといった利点を有するものであるので、種々の用途への展開が期待されている。
このような液晶材料を用いた光学素子は、通常、基材上に液晶材料組成物を塗工液として塗布し、液晶配向形成を行った後に硬化させて液晶を固定することにより得られる。この場合、液晶材料と基材との密着性を改善したり、また基材表面の平滑性を向上させる目的で中間層としてプライマー層を設ける場合がある。
例えば、特開平11−248943号公報(特許文献3)には、酸素バリア層を有する偏光板において、中間層としてアクリレート系のバインダーを設けることが開示されている。また、特開2005−70769号公報(特許文献4)には、基材と液晶材料との間、または液晶層間に、中間層としてのバリア層を設けることが開示されており、バリア層として変性アクリレート等を使用できることが開示されている。
特開2001−100045号公報 特表平10−508882号公報 特開平11−248943号公報 特開2005−70769号公報
本発明者らは、今般、基材とコレステリック液晶構造を有する選択反射層との間に、特定の樹脂からなる中間層を設けることにより、選択反射層の成膜性が向上するともに、バリア性、密着性に優れる光学素子を実現できる、との知見を得た。本発明は係る知見によるものである。
従って、本発明の目的は、選択反射層の成膜性が向上するともに、色再現性および密着性に優れる光学素子を提供することにある。
本発明による光学素子は、基材と、その基材上に中間層を介して、特定の偏光成分の光を選択的に反射するコレステリック液晶構造を有する選択反射層が少なくとも1層設けられてなる光学素子であって、
前記中間層が、エチレン性官能基を1分子中に少なくとも2以上有するアクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂を含んでなることを特徴とするものである。
本発明の好ましい態様として、前記樹脂は、前記アクリル系モノマーを反応率30〜90%で重合させたものである。
また、前記アクリル系モノマーは、エチレン性官能基を1分子中に3つまたは4つ有するものであることが好ましい。
さらに、樹脂の表面自由エネルギーは40dyne/cm以上であることが好ましい。
また、本発明の好ましい態様として、前記アクリル系モノマーが、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、またはこれらの混合物を含んでなるものである。
さらに、アクリル系モノマーは、ペンタエリスリトールアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとを、2:1以上の比率で含んでなることが好ましい。
また、アクリル系モノマーは、ペンタエリスリトールアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートを、モノマー組成物に対して20重量%以上含んでなることが好ましい。
本発明による光学素子の好ましい態様としては、基材の、前記選択反射層を設けた側と反対側に、粘着層がさらに設けられてなるものである。
また、粘着層上には、さらに離型層が設けられてなることが好ましい。
さらに、選択反射層の表面に保護層が設けられてなることが好ましい。
本発明の好ましい態様として、前記粘着層および/または前記保護層が、紫外線吸収剤を含んでなるものである。
また、前記保護層の表面に凹凸の形状を有してなることが好ましい。
本発明の別の態様としての光学素子の製造方法は、基材と、その基材上に中間層を介して、特定の偏光成分の光を選択的に反射するコレステリック液晶構造を有する選択反射層が少なくとも1層設けられてなる光学素子を製造する方法であって、
前記基材上に、エチレン性官能基を1分子中に少なくとも2以上有するアクリル系モノマーを含んでなる中間層形成用組成物を適用する工程、
前記中間層形成用組成物を重合させて中間層を形成する工程、および
前記中間層上に、コレステリック液晶構造を有する選択反射層を形成する工程、
を含んでなることを特徴とするものである。
本発明による方法の好ましい態様として、中間層を形成する前に、基材に表面処理を施す工程をさらに含んでなるものである。
前記処理は、コロナ処理であることが好ましい。
また、前記中間層形成用組成物の重合は、酸素存在下で行われることが好ましい。
さらに、アクリル系モノマーの重合を、反応率30〜90%で行うことが好ましい。
また、本発明による光学素子の製造方法においては、アクリル系モノマーが、エチレン性官能基を1分子中に3つまたは4つ有するものであることが好ましい。
また、本発明においては、樹脂の表面自由エネルギーが40dyne/cm以上であることが好ましい。
また、本発明の好ましい態様として、アクリル系モノマーは、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、またはこれらの混合物を含んでなるものである。
前記アクリル系モノマーは、ペンタエリスリトールアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとを、2:1以上の比率で含んでなることが好ましい。
また、アクリル系モノマーは、ペンタエリスリトールアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートを、モノマー組成物に対して20重量%以上含んでなることが好ましい。
さらに本発明の好ましい態様として、基材上に中間層形成用組成物を適用した後、一旦、前記基材をロール上に巻き取る工程をさらに含んでなり、その巻き取り工程において、基材と基材との間に合紙を挟入させるものである。
前記合紙の巻き幅は、基材の巻き幅よりも大きいことが好ましい。
また、前記合紙はポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
さらに、本発明の別の態様として、本発明による光学素子の投影スクリーンとしての使用を提供する。
本発明によれば、選択反射層の成膜性が向上するともに、色再現性および密着性に優れる光学素子を実現できる。
<光学素子>
本発明による光学素子は、図1に示すように、基材1と、その基材1上に中間層2を介して、特定の偏光成分の光を選択的に反射するコレステリック液晶構造を有する選択反射層3が少なくとも1層設けられた構造を有する。この液晶反射層3を構成する液晶分子は、物理的な分子配列として、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造をとっている。
選択反射層3は、このような液晶分子の物理的な分子配列に基づいて、一方向の円偏光成分と、これと逆回りの円偏光成分とを分離する偏光分離特性を有している。すなわち、選択反射層3において、螺旋軸に沿って入射した無偏光状態の光は、2つの偏光状態の光(右円偏光及び左円偏光)に分離され、一方は透過され、残りは反射される。この現象は、円偏光二色性として知られ、液晶分子の螺旋構造における螺旋巻き方向を適宜選択すると、この螺旋巻き方向と同一の旋光方向を有する円偏光成分が選択的に反射される。
本発明による光学素子は、選択反射層3が設けられているため、入射した光のうち、上記のように特定の偏光成分の光を選択的に反射し、投影スクリーンや液晶表示素子の光学部材として、好適に使用できる。
本発明による光学素子は、基材1と選択反射層3との間に、エチレン性官能基を1分子中に少なくとも2以上有するアクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂からなる中間層2を設けたことに特徴を有する。一般的に中間層を設けることにより、基材と液晶層(選択反射層)との密着性が良好となる。また、本発明においては、図3に示されるように、複数の選択反射層3a,3b,3cを積層した場合、中間層2a,2b,2cとして、上記したような特定のアクリル系モノマーを架橋させた樹脂を用いることにより、選択反射層3a,3b,3cの反射波長が変化することを抑制すること、即ち、色再現性を高めることができる。さらに、基材1と選択反射層3との間に、中間層を設ける事により、選択反射層を形成する際の成膜性が格段に向上する。
特定のアクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂からなる中間層2a,2b,2cを設けることにより、選択反射層3a,3b,3cの色再現性が向上する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
図5に示されるように、複数の選択反射層3a,3b,3cを隣接させて積層した場合、各層が単独で存在する場合(単層の場合)と比較して、選択反射層において反射する光の波長が変化する。これは隣接する各選択反射層に含まれる材料成分が層間を移動することにより発生するものと考えられる。
材料の移動を防ぐ為には、選択反射層間に物質の移動を防止するためのバリア層を設けることが望ましく、このような目的の為にはバリア層に硬化性樹脂を用いることが一般的に行われている。
しかしながら、バリア層(中間層)用の硬化性樹脂として例えば硬化性エポキシ樹脂を用いると、隣接する選択反射層に含まれる液晶性材料の配向に影響を与え、液晶性材料の選択反射特性が損なわれてしまう。さらに、硬化度の高い樹脂からなる中間層を設けると、硬化性樹脂の表面エネルギーが高いため、液晶材料を中間層上に塗布して選択反射層を形成する際に、液晶材料が均一に中間層上に濡れ広がらない。すなわち、液晶材料の塗布によって選択反射層を形成する場合、選択反射層の均一性が損なわれたり、あるいは材料の塗工抜け等の欠陥を発生させることになる。
本発明においては、上記のような特定のアクリル系モノマーの重合反応を制御し硬化させた樹脂を用いることにより、バリア性と選択反射層の成膜性との両立を図ることができる。以下、本発明に使用するアクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂について説明する。
<中間層>
本発明による光学素子を構成する中間層は、上記したようにエチレン性官能基を1分子中に少なくとも2以上有するアクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂からなる。エチレン性官能基を1分子中に2以上有することにより、アクリルモノマーが重合した際に架橋構造を発現できる。このような架橋構造とすることにより、バリア性が向上する。重合度(反応時間)を挙げることにより所望の重合度を達成できるため、本発明においては、エチレン性官能基は2以上あれば架橋構造を有する樹脂とすることがでるが、反応時間(すなわち生産性)の観点から、アクリル系モノマーはエチレン性官能基を1分子中に3つまたは4つ有することがより好ましい。なお、エチレン性官能基を3または4つ有するアクリル系モノマーを使用した場合、2官能アクリル系モノマーを使用した場合と比較して2〜10倍程度反応速度を高めることができる。
アクリル系モノマーとしては、下記式(I)で表されるペンタエリスリトールアクリレート(以下、PETAと略すこともある)、下記式(II)で表されるペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、PETTAと略ことがある)、またはこれらの混合物を使用することが好ましい。
Figure 0004712621
ペンタエリスリトールアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとを、2:1以上の比率で含んでなることが好ましい。PETTAの混合比率が高まると重合反応速度は向上するものの、反応速度が過剰に高くなるため、後述の反応率の制御が困難になる。さらに、PETTAの混合比率が高まる事により、硬化した樹脂が剛直になり、光学素子が曲げ応力に対し脆くなる。
また、このアルキル系モノマーからなる樹脂(重合体)は、モノマーの反応率が30〜90%であることが好ましく、40〜80%がより好ましく、50〜75%がさらに好ましい。なお、本明細書中において「反応率」とは、以下のように定義されるものである。
PETAやPETTAなどのアクリルモノマーについては、カルボニル基(C=O)の伸縮振動は1730cm−1付近に、そして末端ビニル基のC−H面外変角振動は810cm−1付近に赤外吸収ピークを示す。カルボニル基は重合しても消失されないため1730cm−1付近のピークは重合前後でピーク強度は変化しないが、末端ビニル基は重合反応により消失される(二重結合から単結合になる)ため、810cm−1付近のピーク強度は減少する。よって、減少した末端ビニル基、つまり810cm−1のピーク強度が重合反応前と比べてどの程度減少したかにより、重合反応が進行度合い、すなわち反応率を求めることができる。反応前後での810cm−1のピーク強度の減少率を『反応率』として定義する。
すなわち、中間層の赤外スペクトル(IR)を測定し、カルボニル基のC=O伸縮振動に由来するピークについては、2100〜1900cm−1間の吸光度が最小値を示す点と1570〜1540cm−1間の吸光度が最小値を示す点を結んだベースラインから、1740〜1710cm−1の範囲内にて極大値を示すピークトップとの高さより求め、また、末端ビニル基のC−H面外変角振動に由来するピークについては830±10cm−1間の最小値と790±10cm−1間の最小値を結ぶ点をベースラインとし、810±5cm−1の範囲内にて極大値を示す波数のピークトップのベースラインからの高さにより求め、それぞれの大きさをIC=O、IC−Hとして、末端ビニル基の面外変角振動に由来するピークのC=O伸縮振動由来のピークに対するピーク強度の比(IC−H/IC=O)を重合前後で求める。
重合前のピーク強度比をA、重合後のピーク強度比をAとして、下記式:
反応率[%] =(A−A)/A×100
によって反応率を定義する。
なお、IR測定においては、KBr錠剤法によって、資料濃度をKBr量の1〜2wt%にし、例えばFT/IR-610(日本分光製)によって測定することができる。
中間層を構成する樹脂の反応率(硬化度)が低いと、中間層が流動性を持ったり粘着性を有したりするため、中間層の上に選択反射層を形成し難くなる。また、バリア性の観点からは反応率をい高くした方が好ましいが、上記の範囲を超えると、中間層を構成する樹脂の表面自由エネルギーが低くなりすぎて樹脂表面の濡れ性が低下し、コレステリック液晶からなる液晶材料を中間層上に設けて選択反射層を形成する際に、均一な膜を形成することができなくなる。また、反応率を90%以下にすることで、未反応官能基が樹脂ポリマー中に残存するため、中間層上にコレステリック液晶材料を塗布、硬化させて形成すると、コレステリック液晶材料と樹脂とが架橋して、層間の密着性を高めることができる。なお、本発明による光学素子を投影スクリーン等に使用する場合は、選択反射された光を適度に散乱させた方が好ましいが、アクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂を中間層として設けることにより、コレステリック液晶構造の構造的な不均一性を形成することができるため、反射光を効果的に散乱させることができる。
アクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂の表面自由エネルギーが40dyne/cm以上であることが好ましい。この範囲の表面自由エネルギーとすることにより中間層と選択反射層を構成する液晶材料との親和性が向上するため、均一な選択反射層を形成することができる。
本発明に使用するアクリル系モノマーは、ペンタエリスリトールアクリレートおよびペンタエリスリトールテトラアクリレートを、モノマー組成物に対して20重量%以上含んでなることが好ましい。20重量%以上含有することにより、より一層中間層と選択反射層との密着性が向上するとともに、バリア性も維持でき、さらに、均一な選択反射層を形成することができる。
<選択反射層>
選択反射層のコレステリック液晶構造は、図2(a)に示すように、螺旋軸Lの方向が異なる複数の螺旋構造領域30を含んでいる。そして、このようなコレステリック液晶構造の構造的な不均一性により、選択的に反射される光(反射光33)を拡散させるようになっている。ここで、コレステリック液晶構造が構造的な不均一性を有する状態とは、コレステリック液晶構造に含まれる螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向がばらついた状態の他、ネマチックレイヤー面(液晶分子のダイレクターがXY方向で同一である面)の少なくとも一部が選択反射層の面に対して平行でないような状態(染色処理したコレステリック液晶構造膜の断面TEM写真を撮ったときに濃淡パターンで現われる層の1つながりの曲線が基板面と平行でない状態)や、コレステリック液晶からなる微粒子を顔料として分散させた状態などをいう。また、このようなコレステリック液晶構造の構造的な不均一性に起因して生じる「拡散」とは、投影スクリーンで反射された反射光(映像光)を観察者が映像として認識することができる程度に拡げたり散乱させたりすることをいう。
これに対し、一般的なコレステリック液晶構造は、プラーナー配向状態となっており、図2(b)に示すように、選択反射層において、コレステリック液晶構造に含まれる各螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向は全て層の厚さ方向に一様に平行に延びており、選択的に反射される光(反射光36)は鏡面反射される。
なお、本実施の形態において、選択反射層のコレステリック液晶構造に含まれる螺旋構造領域30は、広範囲の波長域をカバーするように、連続的に変化した螺旋ピッチ長又は不連続的に異なる少なくとも2種類以上の螺旋ピッチ長を有しており、その螺旋ピッチ長は、コレステリック液晶構造を有する選択反射層に光が斜めに入射した場合に生じる位相差の影響を最小限に抑えるため、偏光選択反射層のうち映像光が投射される側に比べてそれから遠い方の側で長くなっている。
ここで、選択反射層のコレステリック液晶構造に含まれる螺旋構造領域は、可視光域(例えば400〜700nmの波長域)の一部のみをカバーする特定の波長域の光を選択的に反射するように、特定の螺旋ピッチ長を有していることが好ましい。より具体的には、選択反射層のコレステリック液晶構造は、液晶プロジェクターなどの投影機により投射される映像光の波長域に対応する波長域の光のみを選択的に反射するように、不連続的に異なる少なくとも2種類以上の螺旋ピッチ長を有していることが好ましい。なお、投影機は一般に、光の三原色である赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域の光によりカラー表示を実現しているので、例えば、選択反射層に対して光が垂直に入射する場合を基準にして、選択反射中心波長が430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmの範囲に存在する光を選択的に反射するように、コレステリック液晶構造の螺旋ピッチ長を決定するようにするとよい。
なお、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域として用いられる、430〜460nm、540〜570nm及び580〜620nmは、光の三原色によって白色を表現するディスプレイに用いられるカラーフィルターや光源などの波長域として一般的なものである。ここで、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色は特定の波長(例えば緑色(G)は代表的なものでは550nm)にピークを持つ輝線として表される。
しかしながら、このような輝線にはある程度の幅があり、また、装置の設計や光源の種類などによって波長に差があることから、各色について、30〜40nmの波長バンド幅を持つことが好ましい。なお、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色の波長域を上述した範囲以外に設定した場合には、白色を表現することができず、白色が、黄味がかった白色や赤味がかった白色などになってしまう。
ここで、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の波長域が互いに独立した選択反射波長域として表される場合には、選択反射層のコレステリック液晶構造は、不連続的に異なる3種類の螺旋ピッチ長を有することが好ましい。なお、赤色(R)及び緑色(G)の波長域は一つの螺旋ピッチ長での選択反射波長域の波長バンド幅に含まれる場合があるが、この場合には、コレステリック液晶構造は、不連続的に異なる2種類の螺旋ピッチ長を有することが好ましい。
なお、上述したようなコレステリック液晶構造を有する選択反射層の厚さは、選択的に反射される特定の偏光状態の光を略100%反射する程度の大きさ(反射率が飽和する程度の大きさ)とすることが好ましい。これは、選択的に反射される特定の偏光成分の光(例えば右円偏光)に対して100%未満の反射率であれば、映像光を効率的に反射することができないからである。なお、選択反射層の反射率は直接的には螺旋ピッチ数に依存しているが、螺旋ピッチ長が固定であるとすれば間接的には選択反射層の厚さに依存している。
さらに本発明においては、図3に示されるように部分選択反射層2a,2b,2cのそれぞれの間に、部分中間層3a,3b,3cが設けられている。コレステリック液晶は、螺旋ピッチを下記に説明するようなカイラル剤の添加量によっても調整できる。部分選択反射層を単に積層した場合、各部分選択反射層中に含まれるカイラル剤が他の部分選択反射層中に移動するため、各部分選択反射層の反射波長バンドが近接してしまう現象が生じる場合がある。例えば、コレステリック液晶材料中に添加するカイラル剤の量を増やすことにより、選択反射波長は、赤から緑、青へと変化する。従ってカイラル剤の添加量の多い部分選択反射層2c(青色)からカイラル剤の添加量の少ない部分選択反射層2b(緑)へカイラル剤が移動するため、部分選択反射層2cの反射波長は青緑となってしまう。赤色反射できる部分選択反射層(2a)と緑色反射できる部分選択反射層(2b)との間でも同様の現象が生じる。本発明によれば、各部分選択反射層間に中間層を設けることにより、カイラル剤の移動を抑制できるため、反射波長バンドが変動することがなくなる。
また、部分選択反射層の反射波長が変動しないだけでなく、部分選択反射層どうしの密着性が高まるため、剥離するようなこともない。
<基材>
基材1は、選択反射層2を支持するためのものであり、プラスチックフィルムや金属、紙材、布材、ガラスなどの材料を用いて形成することができる。
基材は、本発明の一態様として、可視光域の光を吸収する光吸収層を含むことが好ましい。具体的には例えば、黒い顔料を練りこんだアクリル板やプラスチックフィルム(例えばカーボンを練りこんだ黒色PETフィルム)などを用いて基材を形成したり(この場合には、基材の全体が光吸収層(光吸収基材)となる)、プラスチックフィルムなどの透明な支持フィルムのいずれかの側の表面上に、黒い顔料などからなる光吸収層を形成したりするとよい。これにより、投影スクリーンの観察者側から入射する無偏光状態の光のうち反射光として本来反射されるべきでない光(選択反射波長域内の左円偏光、選択反射波長域外の右円偏光及び左円偏光)や、投影スクリーンの背面側から入射する光を吸収して、外光や照明光などの環境光に起因した反射光や、映像光に起因した迷光などの発生を効果的に防止することができる。
また、別の態様として、基材には透明または半透明の材料を用いてもよい。この場合、形成されるスクリーンは、前面から投影された画像を表示しつつ、スクリーン後方の物体もスクリーン越しに視認することができる、意匠性の高い透明スクリーンとなる。
特に基材が光吸収性の場合は、入射光側の最表面(例えば、後述する保護層)上に凹凸を設けることが好ましい。光学素子を投影スクリーンとして用いた場合、画像を投影するプロジェクタの光源ランプが、スクリーンの一部に高輝度で映り込み、視聴を損ねることがある。このように最表面を凹凸形状とすることにより、入射光を散乱させて映り込み像の輝度が低下するため、視聴性が改善される。
基材が光透過性の場合でも、同様に最表面を凹凸形状にすることで、光源の映り込みを防止することはできるが、スクリーンの透明性も下がるため、意匠性と光源の映り込み防止性との両方を考慮する必要がある。
また、基材の材料として用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリカーボネート系高分子、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系高分子、ポリイミド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、酢酸セルロース系高分子、ポリ塩化ビニル系高分子、ポリアクリレート系高分子、ポリメチルメタクリレート系高分子などの熱可塑性ポリマーなどからなるフィルムを用いることができる。なお、基材の材料はこれに限定されるものではなく、金属や紙材、布材、ガラスなどの材料を用いることもできる。
<粘着層、およびその他の層>
本発明においては、図4に示すように、基材1の、選択反射層(3a〜3c)を設けた反対の側に粘着層4を設けてもよい。粘着層を基材に設けることにより光学素子をガラス板、スクリーン等に貼着できる。
粘着層は、例えばアクリル材料などの樹脂により形成できるが、これらに限定されるものではなく、通常使用される接着剤を使用してもよい。
粘着層は、光学素子をガラス等に貼着した際に、一方面の最表面を構成するため、外光に曝されることになる。よって、これら外光からの耐光性を向上させる目的で、粘着層中に紫外線吸収剤を添加してもよい。
紫外線吸収剤としては、通常用いられているものを使用できるが、透明性や材料の溶解性の観点から、例えばベンゾトリアゾール系の材料が好ましく使用できる。
また、粘着層4上には、さらに離型層5を設けてもよい。離型層を設けることにより、粘着層を設けた光学素子の取り扱いが容易になる。すなわち、貼着する際に、離型層を粘着層から剥離することができる。
このような剥離層としては、フッ素系樹脂やシリコーンを塗工した基材等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明による光学素子においては、選択反射層3c上に保護層6を設けてもよい。このような保護層を、選択反射層の最表面に設けることにより、選択反射層の表面を保護できるため、外傷等による光学機能の劣化を抑制することができる。
保護層としては、アクリル硬化樹脂等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、保護層には、上記と同様の理由で紫外線吸収剤を含んでいても良い。
<光学素子の製造方法>
本発明による光学素子の製造方法は、基材上に、エチレン性官能基を1分子中に少なくとも2以上有するアクリル系モノマーを含んでなる中間層形成用組成物を塗布する工程と、中間層形成用組成物を重合させて中間層を形成する工程と、中間層上に、コレステリック液晶構造を有する選択反射層を形成する工程とから構成される。
1.塗布工程
塗布工程においては、支持基材1上に、中間層形成用材料およびコレステリック規則性を示す液晶性組成物を塗布することにより、光学素子を形成する。このとき、中間層形成材料および液晶性組成物を塗布する方法としては、既存の任意の方法を用いることができる。具体的には、ロールコート法やグラビアコート法、バーコート法、スライドコート法、ダイコート法、スリットコート法、浸漬法などを用いることができる。また、支持基材12としてプラスチックフィルムを用いる場合には、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)システムによるフィルムコーティングなどを用いることができる。
なお、中間層2上に塗布される液晶性組成物としては、コレステリック規則性を示すカイラルネマチック液晶やコレステリック液晶を用いることができる。このような材料としては、コレステリック液晶構造を形成し得る液晶材料であれば特に限定されるものではないが、特に、分子の両末端に重合性の官能基があるような重合性の液晶材料が、硬化後に光学的に安定した偏光選択反射層3を得る上で好ましい。
以下、液晶性組成物としてカイラルネマチック液晶を用いる場合を例に挙げて説明する。なお、カイラルネマチック液晶は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料とカイラル剤とを混合したものである。ここで、カイラル剤は、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の螺旋ピッチ長を制御し、液晶性組成物が全体としてコレステリック規則性を呈するようにするためのものである。なお、カイラル剤の種類を変えてカイラルパワーを変えるか、あるいは、カイラル剤の濃度を変化させることにより、重合性の液晶材料の分子構造に起因する選択反射中心波長を制御することができる。また、このような液晶性組成物には、重合開始剤や適当な添加剤が添加される。
ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の一例としては、例えば、下記の一般式(1)で表わされる化合物や、下記の式(2−i)〜(2−xi)で表される化合物を挙げることができる。また、これらの化合物を単独で、もしくは混合して用いることができる。
Figure 0004712621
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上記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR及びRはともに水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素又はメチル基であることが好ましい。また、上記一般式(1)において、分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すa及びbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、a及びbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶相を示す温度範囲が狭く好ましくない。
なお、以上においては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料として重合性液晶モノマーの例を挙げて説明したが、これに限らず、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーなどを用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子、液晶ポリマーとしては、従来から提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
一方、カイラル剤は、光学活性な部位を有する低分子化合物であり、主として分子量1500以下の化合物である。カイラル剤は主として、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が発現する正の一軸ネマチック規則性に螺旋構造を誘起させる目的で用いられる。この目的が達成される限り、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間で溶液状態あるいは溶融状態において相溶し、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料の液晶性を損なうことなく、これに所望の螺旋構造を誘起できるものであれば、カイラル剤としての低分子化合物の種類は特に限定されない。
なお、このようにして液晶に螺旋構造を誘起させるために用いられるカイラル剤は、少なくとも分子中に何らかのキラリティーを有していることが必要である。従って、ここで用いられるカイラル剤としては、例えば1つあるいは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミンやキラルなスルフォキシドなどのようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、あるいはクムレンやビナフトールなどの軸不斉を持つ光学活性な部位を有する化合物が挙げられる。さらに具体的には、市販のカイラルネマチック液晶(例えばキラルドーパント液晶S−811(Merck社製))が挙げられる。
しかしながら、選択されたカイラル剤の性質によっては、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料が形成するネマチック規則性の破壊、配向性の低下、あるいはカイラル剤が非重合性の場合には、液晶性組成物の硬化性の低下や、硬化後のフィルムの信頼性の低下を招くおそれがある。さらに、光学活性な部位を有するカイラル剤の多量な使用は、液晶性組成物のコストアップを招く。従って、短い螺旋ピッチ長のコレステリック規則性を有する選択反射層を形成する場合には、液晶性組成物に含有させる光学活性な部位を有するカイラル剤としては、螺旋構造を誘起させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、具体的には下記の一般式(3)、(4)又は(5)で表されるような、分子内に軸不斉を有する低分子化合物を用いることが好ましい。
Figure 0004712621
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上記一般式(3)又は(4)において、Rは水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、中でも、式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)のいずれか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すc及びdは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。c又はdの値が0又は1である上記一般式(3)又は(4)の化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、c又はdの値が13以上である化合物は融点(Tm)が低い。これらの化合物では、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料との間の相溶性が低下し、濃度によっては相分離などが起きるおそれがある。
なお、このようなカイラル剤は、特に重合性を有する必要はない。しかしながら、カイラル剤が重合性を有している場合には、ネマチック規則性を示す重合性の液晶材料と重合され、コレステリック規則性が安定的に固定化されるので、熱安定性などの面では非常に好ましい。特に、分子の両末端に重合性の官能基があることが、耐熱性の良好な選択反射層を得る上で好ましい。
なお、液晶性組成物に含有されるカイラル剤の量は、螺旋構造の誘起能力や最終的に得られる選択反射層のコレステリック液晶構造などを考慮して最適値が決められる。具体的には、用いられる液晶性組成物の材料により大きく異なるものではあるが、液晶性組成物の合計量100重量部当り、0.01〜60重量部、好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部、最も好ましくは1〜20重量部の範囲で選ばれる。カイラル剤の含有量が上述した範囲よりも少ない場合は、液晶性組成物に充分なコレステリック規則性を付与することができない場合があり、上述した範囲を越える場合は、液晶分子の配向が阻害され、活性放射線などによって硬化させる際に悪影響を及ぼす危惧がある。
なお、液晶性組成物は中間層2上にそのまま塗布することも可能であるが、粘性を塗布装置に合わせたり、良好な配向状態を得る目的で、有機溶媒などの適当な溶媒に溶解させてインキ化するようにしてもよい。
このような溶媒としては、上述したような重合性の液晶材料を溶解することが可能なものであれば特に限定されるものではないが、支持基材1や中間層2を浸食しないものであることが好ましい。具体的には、アセトンや、酢酸−3−メトキシブチル、ジグライム、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。重合性の液晶材料の希釈の程度は特に限定されるものではないが、液晶自体が溶解性の低い材料であり、また粘性が高いことなどを考慮して、5〜50%、さらに好ましくは10〜30%程度に希釈することが好ましい。
中間層材料についても、上記と同様にインキ化して塗工することが望ましく、その溶媒としては前述のように支持基材1や選択反射層3を浸食しないものが好ましい。
2.配向処理工程
上述した塗布工程において、中間層2上に液晶性組成物を塗布し、コレステリック液晶層を形成した後、配向処理工程において、コレステリック液晶層をコレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持し、コレステリック液晶層中の液晶分子を配向させる。
なお、最終的に得られるべき選択反射層のコレステリック液晶構造は、プラーナー配向状態ではなく、図2(a)に示すように、複数の螺旋構造領域30の螺旋軸Lの方向が層内でばらついた配向状態となっているが、この場合でも、配向処理は必要となる。すなわち、コレステリック液晶構造の液晶分子のダイレクターを中間層2上で一定方向に揃えるような配向処理は必要とされないが、コレステリック液晶構造中に複数の螺旋構造領域30を形成させるような配向処理は必要となるからである。
ここで、中間層2上に形成されたコレステリック液晶層を、コレステリック液晶構造が発現する所定の温度に保持すると、コレステリック液晶層は液晶相を呈し、液晶分子自体の自己集積作用により、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造が形成される。そして、このような液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造は、後述するような手法でコレステリック液晶層を硬化させることにより、固定化することができる。
なお、このような配向処理工程は、中間層2上に塗布された液晶性組成物に溶媒が含有されている場合には、通常、溶媒を除去するための乾燥処理とともに行われる。なお、溶媒を除去するためには、40〜120℃、好ましくは60〜100℃の乾燥温度が適しており、乾燥時間(加熱時間)はコレステリック液晶構造が発現し、実質上溶媒が除去されればよく、例えば、15〜600秒が好ましく、さらに好ましくは30〜180秒である。なお、乾燥後に配向状態が不十分であることが分かった場合には、適宜加熱時間を延長するようにするとよい。なお、このような乾燥処理において減圧乾燥の手法を用いる場合には、配向処理のために別途加熱処理を行うことが好ましい。
3.硬化処理工程
上述した配向処理工程において、コレステリック液晶層中の液晶分子を配向させた後、硬化処理工程において、コレステリック液晶層を硬化させ、液晶相の状態で発現したコレステリック液晶構造を固定化する。
ここで、この硬化処理工程においては、放射線の照射により液晶性組成物中の液晶分子を光重合させてコレステリック液晶層を硬化させる方法を用いることが好ましい。特に、本実施の形態においては、コレステリック液晶層内における螺旋ピッチ長を層の厚さ方向に関して変化させる必要があるので、コレステリック液晶層内における螺旋ピッチ長を適宜制御しながらコレステリック液晶層を硬化させることが好ましい。具体的には例えば、特開平14−286935号公報に記載されているような方法を用い、中間層2に塗布された液晶性組成物中の溶媒を蒸発させて半硬化状態のコレステリック液晶層を形成した後、空気雰囲気中で当該コレステリック液晶層に放射線を照射して、コレステリック液晶層を時間をかけて硬化させることが好ましい。なお、液晶性組成物として、重合性の液晶材料中に非架橋性の液晶分子を混合したものを用いる場合には、米国特許第5691789号明細書に記載されている方法を用いることにより、コレステリック液晶層内における螺旋ピッチ長を層の厚さ方向に関して変化させることも可能である。
以上のような一連の工程(塗布工程、配向処理工程及び硬化処理工程)を行うことにより、映像光が投射される側に比べてそれから遠い方の側で螺旋ピッチが長い選択反射層を備えた光学素子を製造することができる。
なお、上述した製造方法に限らず、上述した一連の工程を複数のコレステリック液晶層について繰り返すことにより、すなわち、塗布されるコレステリック規則性を示す液晶性組成物の選択反射中心波長を制御しながら、中間層2上に螺旋ピッチ長が互いに異なる複数のコレステリック液晶層を順次積層することにより、映像光が投射される側の部分選択反射層に比べてそれから遠い方の側の部分選択反射でその螺旋ピッチ長が長くなるように各部分選択反射層3a,3b,3cが順に積層された選択反射層を備えた投影スクリーンを製造するようにしてもよい。
実施例1
1.中間層形成用塗工液の調製
PETAおよびPETTAモノマーを、PETA:PETTA=2:1の比率で混合し、これを20%の固形分濃度になるようメチルエチルケトン中に溶解し、さらに光重合開始剤Irg−907(Ciba Specialty Chemicals社製)を固形分の5重量%となるように添加して、中間層形成用塗工液を調製した。
2.選択反射層形成用塗工液の調製
紫外線硬化型のネマチック液晶ZLi2293 (Merck社製)からなる主剤に、カイラル剤MLC6247(Merck社製)を3.5%添加したモノマー混合液晶1をシクロヘキサノンに溶解することにより、450nmに選択反射中心波長を有する選択反射層形成用塗工液1を調製した。
また、上記と同様にして、カイラル剤をそれぞれ4.5%および5.5%添加した530nmおよび600nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶溶液2および3を調製した。
なお、得られた選択反射層形成用塗工液1〜3には、光重合開始剤Irg−907(Ciba Specialty Chemicals社製)を5重量%添加した。
3.光学素子の作製
調製した中間層インキを黒色PETフィルム上に易接着層を成膜した基材(ルミラー/AC−X、パナック社製)上に対し、ダイコート法にて塗布した。
次いで、基材を75℃に加温したオーブン内で60秒乾燥し、溶剤を揮発させた。さらに中間層形成用塗工液に対し紫外線を75mJ/cmの強度で照射し、中間層を形成した。なお、中間層塗工済み基材をロール状に巻き取る際、中間層上に延伸ポリプロピレンフィルムを重ねて巻き取り、PET基材の裏面と中間層とが接触しないようにした。
この際、形成された中間層の表面自由エネルギーを接触角計で解析したところ、約50dyne/cmであった。また、中間層の形成前後においてIR測定を行い、反応率を測定したところ、60〜65%であった。なお、IR測定は、FT/IR-610(日本分光製)を用い、資料濃度をKBr量の1〜2wt%として行った。
次に、選択反射層形成用塗工液を中間層上にバーコート法により塗布した。基材を80℃のオーブンで90秒加熱し、配向処理(乾燥処理)を行い、更に300mJ/cmの紫外線を照射し、選択反射層を形成した。
続いて、上記と同様の操作を3回繰り返して、中間層および選択反射層を積層した。2層目および3層目の中間層形成用塗工液を塗工する際は、被塗工面となる下地の選択反射層に対してコロナ処理を施した上で中間層インキを塗工した。
上記のようにして、黒色基材上に3波長域の光を選択的に反射できる光学素子を得た。
比較例1
中間層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、透過率の極小値が480nmおよび560nmの2つとなり、さらに選択反射層に斑様のムラが発生した。
参考例2
中間層形成時にポリプロピレンフィルムを挿入せずに行った以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、中間層の一部が基材の裏面に移行し、塗面の一部に塗工抜けが発生した。
比較例3
中間層の紫外線照射量を40mJ/cmにした以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、中間層の一部が基材の裏面に移行し、塗面の一部に塗工抜けが発生した。また、この中間層の反応率を測定したところ、35〜40%であった。
比較例4
中間層の紫外線照射量を200mJ/cmにした以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、選択反射層の塗工時に塗工液が中間層上に均一に濡れ広がらず、塗工抜けが発生した。
この中間層の反応率を算出し、さらに接触角計CA−X(協和界面科学社製)にて表面自由エネルギーを測定したところ、反応率は90〜95%、表面自由エネルギーは35〜40dyne/cmであった。
比較例5
中間層形成用塗工液として、硬化性エポキシ材料からなる市販の硬化性インキ(オプトマーKR−400,JSR社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、選択反射層の塗工時にコレステリック液晶が配向しなかった。
比較例6
中間層インキとして、硬化性ウレタン材料からなる市販の硬化性インキ(ユニディックRC19−941,大日本インキ化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、選択反射層の塗工時にコレステリック液晶イは配向したものの、塗面が白濁した。
比較例7
中間層形成用塗工液として、PETA:PETTA=3:2に変更した以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、光学素子に微細なひびが発生した。さらにPETTAの含有比率を高めたところ、ひびの発生数が増加した。
比較例8
中間層形成用塗工液として、1,9−ノナンジオールジアクリレート(1,9-NDA):PETA:PETTA=8:1:1に変更した以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、中間層の一部が基材の裏面に移行し、塗面の一部に塗工抜けが発生した。この中間層の反応率を測定したところ、10〜15%であった。
実施例2
中間層形成用塗工液として、1,9−ノナンジオールジアクリレート(1,9-NDA):PETA:PETTA=8:1:1に変更し、さらに中間層形成時の紫外線照射量を500mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製したところ、正常な光学素子が形成された。
さらに中間層形成用塗工液の1,9-NDA添加比率を下げたところ、正常な光学素子の形成に必要とされる、中間層硬化時の紫外線照射量を低減出来ることが分かった。
本発明による光学素子の断面を模式的に示したものである。 選択反射層の反射状態を示したものである。 本発明の他の実施態様の光学素子の断面を模式的に示したものである。 本発明の他の実施態様の光学素子の断面を模式的に示したものである。 従来の中間層を設けない態様の光学素子の断面を模式的に示したものである。
符号の説明
1 基材
2,2a,2b,2c 中間層
3,3a,3b,3c 選択反射層
4 粘着層
5 離型層
6 保護層
11 選択反射層の表面
30 螺旋構造領域
31R 入射光
33,36 反射光

Claims (13)

  1. 基材と、その基材上に中間層を介して、特定の偏光成分の光を選択的に反射するコレステリック液晶構造を有する選択反射層が少なくとも1層設けられてなる光学素子であって、
    前記中間層が、エチレン性官能基を1分子中に少なくとも2以上有するアクリル系モノマーを重合架橋させた樹脂を含んでなり、
    前記アクリル系モノマーが、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートを、モノマー組成物に対して20重量%以上含んでなり、
    重量基準で、ペンタエリスリトールテトラアクリレート1に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレートが2以上の割合で含まれてなり、
    前記樹脂が、アクリル系モノマーを反応率50〜75%で重合させたものであることを特徴とする、光学素子。
  2. 基材の、前記選択反射層を設けた側と反対側に、粘着層がさらに設けられてなる、請求項に記載の光学素子。
  3. 前記粘着層上に、さらに離型層が設けられてなる、請求項に記載の光学素子。
  4. 前記選択反射層の表面に保護層が設けられてなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学素子。
  5. 前記粘着層および/または前記保護層が、紫外線吸収剤を含んでなる、請求項のいずれか一項に記載の光学素子。
  6. 前記保護層の表面に凹凸の形状を有してなる、請求項またはに記載の光学素子。
  7. 基材と、その基材上に中間層を介して、特定の偏光成分の光を選択的に反射するコレステリック液晶構造を有する選択反射層が少なくとも1層設けられてなる光学素子を製造する方法であって、
    前記基材上に、エチレン性官能基を1分子中に少なくとも2以上有するアクリル系モノマーを含んでなる中間層形成用組成物を塗布する工程、
    前記中間層形成用組成物を重合させて中間層を形成する工程、および
    前記中間層上に、コレステリック液晶構造を有する選択反射層を形成する工程、
    を含んでなり、
    前記アクリル系モノマーが、ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートを、モノマー組成物に対して20重量%以上含んでなり、
    重量基準で、ペンタエリスリトールテトラアクリレート1に対して、ペンタエリスリトールトリアクリレートが2以上の割合で含まれてなり、
    前記アクリル系モノマーの重合を、反応率50〜75%で行う、ことを特徴とする、光学素子の製造方法。
  8. 前記中間層を形成する前に、基材に表面処理を施す工程をさらに含んでなる、請求項に記載の方法。
  9. 前記処理が、コロナ処理である、請求項に記載の方法。
  10. 基材上に中間層形成用組成物を塗布し、乾燥および紫外線照射により前記中間層形成用組成物を硬化させて中間層を形成した後、一旦、前記基材をロール上に巻き取る工程をさらに含んでなり、その巻き取り工程において、基材と基材との間に合紙を挟入させる、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記合紙の巻き幅が、基材の巻き幅よりも大きい、請求項10に記載の方法。
  12. 前記合紙が、ポリプロピレンフィルムである、請求項10または11に記載の方法。
  13. 請求項1〜のいずれか一項に記載の光学素子の、投影スクリーンとしての使用。
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