JP4711846B2 - 甚急性乳房炎の判定方法 - Google Patents

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本発明はウシ乳房炎が甚急性乳房炎であるか否かを簡便かつ迅速に判定する方法及びそのための用具に関する。
乳房炎は乳牛の疾傷件数のうちで上位を占めており、乳房炎による経済的損失額は甚大である。乳房炎は乳腺組織の炎症による疾患であり、微生物感染やそれらの毒素、物理的な外傷などさまざまな刺激により起こるが、主たる原因は微生物感染であり、そのなかでも病原性細菌による感染が大部分である。症状発現のある臨床型乳房炎は、一般的に、甚急性乳房炎、急性乳房炎、及び慢性乳房炎などに分類されているが、これらのうち、甚急性乳房炎はわずか数時間から1日程度の間に急速な症状の悪化を伴い、死廃事故につながる症例が多いことから最も危険かつ深刻な乳房炎である。
甚急性乳房炎の原因菌は主として腸内細菌であり、なかでも大腸菌(Escherichia coli)やクレブシェラ(Klebsiella)属に属する微生物による感染が多い。これらの微生物による感染はエンドドキシンショックを引き起こすことから、乳房炎を発症したウシが甚急性乳房炎に罹患しているか否かを早期に診断する必要があり、甚急性乳房炎の疑いが強い場合には、迅速にエンドドキシンの排泄処置及び抗菌剤の投与などの適切な治療を行うことが必要である(ウシ乳房炎に関しては、総説として「家畜共済の診療指針II」、全国農業共済協会、昭和60年改訂版発行、5.乳房炎の診療指針(pp.178-313)を参照のこと)。
従来、乳腺炎の原因菌を特定するためには、乳汁などの試料を採取して寒天培地などでの培養を行い、コロニーの生化学的性状状やグラム染色などによって菌の種類を特定する方法が採用されている。しかしながら、この方法では通常は37℃で1〜3日の培養が必要であり、甚急性乳房炎の治療が手遅れになる場合が多い。また、乳汁の直接塗抹標本を行い、グラム染色を行なうことによって甚急性乳房炎の早期診断が可能になる場合があるが、菌の形状から菌を最終的に特定することは困難であり、また染色及び顕微鏡下での観察が必要であることから、酪農現場における迅速な診断方法としては採用できないという問題がある。さらに、細菌学的検査のために種々の培地や同定キットが提供されているが、いずれも迅速性及び簡便性の観点から満足すべきものとは言えない。このような状況から、酪農家や獣医師が現場で迅速に乳房炎の原因菌を特定できる方法の開発が望まれており、特に、甚急性乳房炎における主たる原因菌である大腸菌及びクレブシェラを迅速かつ簡便に特定できる方法及び簡易な用具の開発が切望されている。
一方、微生物の識別方法の一つとして汎用されるインドール試験は、トリプトファンの分解により生じるインドールの存在を発色試薬の添加により調べる方法であり、大腸菌ではインドール試験で陽性となることが知られている。また、VP試験(Voges-Proskauer試験)は、ブドウ糖の分解により生じるピルビン酸2分子から酸性条件下で産生したアセチルメチルカルビノールを検出する方法である。アセチルメチルカルビノールの産生は菌種により極めて特徴的であることから、クレブシェラなどの腸内細菌を鑑別するための方法として汎用されている(「腸管系病原菌の検査法」、善養寺浩ら著、株式会社医学書院、1985年第4版発行、pp.24-33及びpp.73-76)。
家畜共済の診療指針II、全国農業共済協会、昭和60年改訂版発行、pp.178-313 腸管系病原菌の検査法、善養寺浩ら著、株式会社医学書院、1985年第4版発行、pp.24-33及びpp.73-76
本発明の課題は、ウシ乳房炎が甚急性乳房炎であるか否かを迅速かつ簡便に判定する方法及びそのための簡易な用具を提供することにある。
本発明者は、甚急性乳房炎の大部分が大腸菌とクレブシェラ属に属する微生物により惹起されており、感染試料中に上記微生物が存在する場合には高い確率で甚急性乳房炎を発症している事実を基にして、感染試料中の上記微生物の存在を迅速かつ簡便に確認する方法を提供すべく鋭意研究を行なった。その結果、ウシ乳汁にはトリプトファン及び乳糖が含まれているため、乳房炎の原因菌が大腸菌である場合には、ウシから採取した乳汁中又は乳房炎試料中にインドールが含まれており、乳房炎の原因菌がクレブシェラ属に属する微生物である場合には、乳汁中又は乳房炎試料中にアセチルメチルカルビノールが含まれていることを見出した。また、乳汁中又は乳房炎試料中にインドール及び/又はアセチルメチルカルビノールが含まれているか否かを確認することにより、培養などの微生物同定操作を行うことなく、そのウシ個体が甚急性乳房炎を発症しているか否かを高い精度で簡便に判定できること、及びその手段として、キャピラリーカラムを用いた方法が簡便性及び迅速性の観点から適していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成された。
すなわち、本発明により、乳房炎を発症したウシ個体の乳房炎が甚急性乳房炎であるか否かを判定する方法であって、該ウシ個体から採取した乳汁中又は乳房炎試料中にインドール及び/又はアセチルメチルカルビノールが含まれている場合には、そのウシ個体が甚急性乳房炎を発症している可能性が高いと判定する方法が提供される。
上記の方法は、乳汁試料を用いて微生物学的な培養操作を行うことなく、乳汁中又は乳房炎試料中に含まれるインドール及び/又はアセチルメチルカルビノールの存在を直接証明することにより、そのウシ個体が甚急性乳房炎を発症している可能性が高いと判定する方法である。
また、本発明により、ウシ個体の甚急性乳房炎の診断方法であって、該ウシ個体から採取した乳汁中又は乳房炎試料中に含まれるインドール及び/又はアセチルメチルカルビノールを測定する工程を含む方法が提供される。
別の観点からは、乳房炎を発症したウシ個体が甚急性乳房炎であるか否かを判定するための用具であって、クロマトグラフィー用担体をキャピラリー管内に含み、該ウシ個体から採取した乳汁又は乳房炎試料を該キャピラリーの一端部からキャピラリー管内に吸引し、その後にインドール及び/又はアセチルメチルカルビノールに対する発色試薬溶液を同端部から吸引し、該発色試薬による発色が認められた場合には、該乳房炎が甚急性乳房炎である可能性が高いと判定するための用具が提供される。
本発明の方法及び用具により、ウシ個体が発症した乳房炎が甚急性乳房炎であるか否かを極めて簡便かつ迅速に判定することができ、煩雑かつ長時間の培養操作を行う必要がなく、乳汁又は乳房炎試料をそのまま用いて極めて短時間に判定を行うことができる。甚急性乳房炎であると判定された場合には、獣医師による適切な処置が直ちに行なうことが可能になる。
本発明の方法は、乳房炎を発症したウシ個体の乳房炎が甚急性乳房炎であるか否かを判定する方法であって、該ウシ個体から採取した乳汁中又は乳房炎試料中にインドール及び/又はアセチルメチルカルビノールが含まれている場合には、そのウシ個体が甚急性乳房炎を発症している可能性が高いと判定する工程を含むことを特徴としている。ウシ個体から採取する乳汁は、通常の搾乳により得たものであってもよいが、好ましくは、誤判定を避けるためにできる限り無菌的に、かつ衛生的に(例えば糞尿などの混入を避けて)採乳した試料を用いることが望ましい。本発明の方法には、乳汁試料のほか、乳房炎の乳房から出た組織液や膿状試料、凝固物などの乳房炎試料を用いることもできる。試料は採取後に保存することなく直ちに用いることが望ましいが、冷蔵保存又は凍結保存した試料を用いてもよい。適宜の水性媒体、例えば、水、緩衝液、生理食塩水などで適宜希釈して試料として用いてもよい。泥状の乳汁を用いる場合には、上記の水性媒体で希釈した後に遠心分離を行い、必要に応じて静置して上澄を試料として用いてもよい。また、試料として乳汁を冷所で静置して固形分を除去したホエイ(乳清)を用いることも好ましい。
インドール試験及びアセチルメチルカルビノールを検出するVP試験は当業者に汎用されており、これらの反応のために、一般的にはインドール及びアセチルメチルカルビノール(アセトインとも呼ばれる)と反応して発色する試薬を用いることができる。インドール試薬としては、例えば、p-ジメチルアミノベンズアルデヒドなどを用いることができる。VP試験では、例えば、塩基性条件下においてα-ナフトールを作用させた後にグアニジン源(例えばクレアチンなど)と反応させることができる。α-ナフトールとグアニジン源とを含む溶液を試薬として用いてもよい。もっとも、反応試薬はこれらに限定されず、発色によりインドール及びアセチルメチルカルビノールを検出できるものであればいかなるものを用いてもよい。インドール試験及びVP試験の詳細については、例えば、非特許文献2に具体的かつ詳細に説明されているので、当業者はこの説明を基にしてこれらの試験を容易に実施することができる。
クレブシェラ属に属する微生物のうちVP試験により検出可能な微生物としては、例えば、クレブシェラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシェラ・プランチコラ(Klebsiella planticola)、クレブシェラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、クレブシェラ・テリゲナ(Klebsiella terrigena)、クレブシェラ・トレヴィサニイ(Klebsiella trevisanii)などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
ウシ個体が乳房炎を発症していることは、通常の場合、体温、脈拍、呼吸などの全身症状、乳房及び乳頭の望診及び触診などにより酪農家又は獣医師に容易に診断可能である。しかしながら、その乳房炎が甚急性乳房炎であるのか、あるいは急性乳房炎又は慢性乳房炎であるのかは、一般的には細菌学的な試験を行なうまでは判断がつかないことが多い。特に甚急性乳房炎と急性乳房炎とを区別して診断することは細菌学的な試験を経なければ通常は極めて困難である。
本発明の方法は、甚急性乳房炎の原因菌がほとんどの場合に大腸菌又はクレブシェラに属する微生物であることに着目し、さらにこれらの微生物が感染試料中に存在する場合には試料がインドール試験及びVP試験において陽性の結果を与えるとの知見に基づいて完成されたものであり、これらの試験で陽性の結果が得られた場合には、大腸菌又はクレブシェラに属する微生物による感染の疑いが強いと判断し、甚急性乳房炎の可能性が高いと判定することができることを特徴としている。そして、可能性が高いと判定された後には、直ちにエンドトキシンに対する解毒処置及び感染に対する抗菌剤の投与などの適切な治療を開始することが可能になる。インドールを産生する大腸菌をトリプトファンを含む培地(例えばLIM培地など)で培養する際、牛乳(市販されている成分調整牛乳など)を用いて培地を調製して大腸菌を終夜培養すると通常はインドールはほとんど産生されず検出不可能である。一方、本発明の方法に従って乳汁試料や乳房炎試料から直接インドールの存在を証明できる理由は、乳腺の出口付近で大腸菌感染が生じ、濃厚なトリプトファンを含む分泌乳汁に大量の大腸菌が接触して高濃度のインドールが生成し、それが乳汁試料又は乳房炎試料中に混入するためであると考えられる。VP試験を行う場合には、乳汁又は乳腺炎試料にかえてホエイを用いることが特に好ましい。
本発明の方法は、本発明により提供される用具を用いることにより、さらに迅速かつ簡便に実施することが可能である。本発明の用具は、乳房炎を発症したウシ個体が甚急性乳房炎であるか否かを判定するための用具であって、クロマトグラフィー用担体をキャピラリー管内に含み、該ウシ個体から採取した乳汁又は乳房炎試料を該キャピラリーの一端部からキャピラリー管内に吸引し、その後にインドール及び/又はアセチルメチルカルビノールに対する発色試薬溶液を同端部から吸引し、該発色試薬による発色が認められた場合には、該乳房炎が甚急性乳房炎である可能性が高いと判定するための用具である。
キャピラリーとしては、例えば、外径が2〜5 mm程度、好ましくは3〜4 mm程度であり、内径が1〜3 mm、好ましくは2 mm程度のキャピラリーを用いることができる。キャピラリーの両端部分の内径が狭められていることが好ましく、先端部は1〜2 mm程度、好ましくは1 mm程度の内径であることが特に好ましいが、吸入部については試料を濾過する効果も備えることが望ましいので、キャピラリーの外径よりも大口径にすることも好ましい。吸入部の形状は特に限定されず、目的や所望の性能に応じて適宜選択可能である。キャピラリーの長さは特に限定されないが、例えば、50〜200 mm程度、好ましくは100〜150 mm程度である。キャピラリーの材質は、例えば、ガラスやアクリルなどの透明な部材であれば特に限定されず、一般的にはガラスが好ましい。クロマトグラフィー用担体としては、例えば、カラムクロマトグラフィー用のシリカゲル、ポリアミド、又はアルミナなどを用いることができるが、ポリアミドが好ましい。該担体の粒径は特に限定されないが、通常は100〜500μm程度の範囲である。例えば、本発明の用具のために好適なポリアミドが和光純薬工業株式会社からポリアミドC-100(粒径150〜425μm)として販売されている。
本発明の用具として全長120 mm程度、外径3.4 mm、内径2 mm程度のガラスキャピラリーを用いる場合には、例えば、両端の内径を火炎で1 mm程度に狭めておき、クロマトグラフィー用担体のストッパーとして、例えば脱脂綿を2〜10 mm程度、好ましくは3〜5 mm程度充填し、その後、クロマトグラフィー用担体(例えばポリアミド)を10〜30 mm程度、好ましくは20 mm程度充填することができる。ストッパーとしてガラズビーズを1ないし数個用いてもよいが、脱脂綿やガラスビーズに限定されることはなく、充填したクロマトグラフィー用担体が漏出しないようなストッパーを適宜選択すればよい。クロマトグラフィー用担体の充填量は特に限定されないが、例えば20〜50μl程度、好ましくは30〜40μl程度である。該担体の充填後、さらに脱脂綿を2〜10 mm程度、好ましくは3〜5 mm程度充填して担体のストッパーとすることができる。
上記の用具の一端を注射器などに接続し、他端から試料の乳汁又は乳房炎試料を吸引する。試料の吸引量は特に限定されないが、通常は数十μml〜数ml程度であり、この量の試料を数秒から数分かけてキャピラリー管内に吸引することが好ましい。試料を吸引した後、必要に応じて少量の空気を吸引し、続いてインドール試薬(例えばp-ジメチルベンズアルデヒド 5 g、リン酸 10 ml、及びメチルアルコール 50 mlを含む溶液、あるいはp-ジメチルベンズアルデヒド 5 g、濃塩酸 25 ml、及びノルマル(又はイソ)アミルアルコール 75 mlを含む溶液)又はVP試験用試薬(例えばA液:6% α-ナフトールのエタノール溶液、及びB液:クレアチン 0.3 g、水酸化カリウム 40.0 g、及び精製水 100 mlを含む溶液を調製し、A液とB液とを事前に、あるいは用時に混合した溶液)、あるいはそれらの試薬混合物をキャピラリー管内に吸引する。
試薬の吸引量は特に限定されないが、インドール試薬を吸引する場合にはクロマトグラフィー用担体の全体が浸漬する量を吸引することが好ましい。ポリアミドをクロマトグラフィー用担体として用いる場合には、インドールはポリアミドに強く吸着されるので、該担体上で試薬と反応して発色する。VP試験用試薬を吸引する場合は、クロマトグラフィー用担体の全体が浸漬する量を吸引した後、さらに少量の空気を吸引して吸引した試薬をクロマトグラフィー用担体から押し出し、5-10 mm程度の空気層をはさんで該担体から離れた位置に静置させることが好ましい。アセチルメチルカルビノールはポリアミドに弱く吸着されており、VP試験用試薬の吸引によりポリアミドから溶出され、少量の空気を吸引することにより、ポリアミドと空気層をはさんで隔絶された試薬溶液中に移動する。この試薬溶液部分において、濃縮されたアセチルメチルカルビノールと試薬とが十分に混合され、効率的に発色反応が進行して高感度な測定が可能になる。膿状の乳房炎試料を用いるとアセチルメチルカルビノールがポリアミドに吸着され、該担体上で試薬と反応して発色する場合もある。VP試験用試薬の吸引量は特に限定されないが、クロマトグラフィー用担体の全体が浸漬する量を吸引することが好ましい。
試料中のインドール又はアセチルメチルカルビノールの濃度が高い場合には、上記の吸引後にただちに目視により判定を行なうことができるが、必要に応じて、室温又は30℃程度の加温下でインドール反応については10分〜15分ほど放置した後に目視により判定を行ない、VP試験については15分ないし1時間ほど放置した語に目視により判定を行なう。インドール反応については微紅色から紅色を呈した場合、VP試験については微紅色から紅色を呈した場合に陽性と判定でき、この発色が認められた場合には該乳房炎が甚急性乳房炎である可能性が高いと判定する。
さらに、本発明の方法を行なうにあたり、試料(例えば約1 ml程度)を小試験管に採取しておき、ここにポリアミドなどのクロマトグラフィー用担体を加えて攪拌し、一定量が吸引できるように例えば一端から2 cmの位置に綿花で軽く栓をしたキャピラリー管内に得られた混和物を例えば20〜50μl程度、好ましくは30〜40μl程度吸引し(キャピラリー内に充填された混和物部の長さは、例えば10〜30 mm程度)、その後に必要に応じて空気を少量吸引し、さらにインドール試薬又はVP試験用試薬、あるいはそれらの混合物を吸引することもできる。この場合、キャピラリー内に吸引された試薬部の長さは、例えば4-5 mm程度である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
ガラス製キャピラリーカラム(外径:3.40 mm、内径:1.90 mm、長さ:120 mm)を以下のように用意した。キャピラリーの両端を火炎で加熱して内径を1 mm程度にした。このようにしておくことにより、ストッパーの綿花やガラスビーズなどがずり落ちず、試料吸引・注入のため注射器と繋げる場合に角がないので操作性がよい。キャピラリーの一端から脱脂綿をストッパーとして3〜5 mm程度軽く詰め、ポリアミド(和光純薬工業株式会社製、ポリアミドC-100、粒径150〜425μm、33μl)を20 mm程度隙間がないように充填した。その後、ポリアミドがこぼれおちないように、脱脂綿をストッパーとして3〜5 mm程度軽く詰めた。
乳房炎を発症したウシ個体から採取した乳汁を約1 ml/分の吸引速度で1 ml吸引した。その後、インドール試薬(p-ジメチルベンズアルデヒド 5 g、濃塩酸 25 ml、及びイソアミルアルコール 75 mlより調製したもの)を吸引してポリアミド部分を浸した。吸引直後及び15分後に発色を目視により確認し、微紅色から紅色の場合を陽性とした。この結果、甚急性乳房炎の発症が疑われるウシ個体から採取した乳汁では、強いインドール陽性が認められた。このウシ個体から採取した乳汁からは、その後に行なった常法による微生物学的試験及び染色試験により大腸菌が同定され、このウシ個体は甚急性乳房炎を発症していたことが確定診断された。一方、健常ウシから採取した乳汁を用いた場合には、15分後にもインドール陽性は認められなかった。
また、インドールを市販牛乳に添加して発色に要する時間を検討したところ、1〜5μgのインドールを含む1〜4 mlの試料を上記の吸引することにより、いずれの試料についても4〜12分で発色することが確認できた。反応は10分程度でピークに達し、色調は2時間後から徐々に退色した。また、20μg/mlのインドールを含む試料は30秒で微紅色発色を与え、10分程度で発色がピークに達した。
例2
例1の方法で得たキャピラリーカラムに乳房炎を発症したウシ個体から採取した乳汁(無菌検査後に冷凍保存してあった乳汁試料)を約1 ml/分の吸引速度で0.5 ml吸引した。VP試験試薬(A液:6% α-ナフトールのエタノール溶液、及びB液:クレアチン 0.3 g、水酸化カリウム 40.0 g、及び精製水 100 mlを含む溶液を調製し、A液とB液とを事前に混合した溶液)を吸引してポリアミド部分を浸し、その後に少量の空気を吸引してポリアミド部分からVP試験試薬を追い出して、ポリアミド部分から5 mm程度離れた位置にVP試験試薬を静置させた。5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、及び3時間後に発色を目視により確認し、赤色の場合を陽性とした。この結果、甚急性乳房炎の発症が疑われるウシ個体から採取した乳汁では、15分後にVP陽性が認められた。このウシ個体から採取した乳汁からは、常法による微生物学的試験及び染色試験によりクレブシェラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)が同定され、このウシ個体は甚急性乳房炎を発症していたことが確定診断された。一方、健常ウシから採取した乳汁を用いた場合には、1時間後にもVP陽性は認められなかった。
例3
別法として、上記例2の乳汁試料0.5 mlを外径12 mm、内径9 mm、長さ105 mmの小試験管に採り、VP試薬のA液及びB液を順に加えた。5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、及び3時間後に発色を目視により確認し、赤色の場合を陽性とした。この結果、120分で弱く反応が認められ、180分で陽性と認められた。この方法では、カラムを使う例2の方法よりも反応に時間がかかり、感度は低かったものの、甚急性乳房炎の発症が疑われるウシ個体から採取した乳汁を用いて培養を行うことなしにVP陽性と判定できた。
例4
ポリアミド 50μlを入れた小試験管に例1の乳汁試料1 mlを入れて混和した後、静置してポリアミドを沈殿させた。上澄みを取り去り、試験管内のポリアミドにインドール試薬を滴下した。室温で15分放置した後にポリアミドに赤色の発色が観察された。
例5
ポリアミドを100μl入れた小試験管に例2の乳汁試料5 mlを入れて混和した後、遠心によりポリアミドを沈殿させた。上澄みを取り去り、試験管内のポリアミドにVP試験試薬を滴下した。室温で1時間放置後にポリアミドに赤色の発色が観察された。

Claims (4)

  1. 乳房炎を発症したウシ個体の乳房炎が大腸菌又はクレブシェラ・ニューモニエの感染による甚急性乳房炎の可能性があるか否かを判定する方法であって、該ウシ個体から採取した乳汁中にインドールが含まれている場合には、そのウシ個体が大腸菌の感染による甚急性乳房炎を発症している可能性が高いと判定し、該ウシ個体から採取した乳汁中にアセチルメチルカルビノールが含まれている場合には、そのウシ個体がクレブシェラ・ニューモニエの感染による甚急性乳房炎を発症している可能性が高いと判定する方法。
  2. 乳房炎を発症したウシ個体の乳房炎が大腸菌又はクレブシェラ・ニューモニエの感染による甚急性乳房炎である可能性があるか否かを判定するための用具であって、クロマトグラフィー用担体をキャピラリー管内に含み、該ウシ個体から採取した乳汁を該キャピラリーの一端部からキャピラリー管内に吸引し、その後にインドール又はアセチルメチルカルビノールに対する発色試薬溶液を同端部から吸引し、インドールに対する該発色試薬による発色が認められた場合には、該乳房炎が大腸菌の感染による甚急性乳房炎である可能性が高いと判定し、アセチルメチルカルビノールに対する該発色試薬による発色が認められた場合には、該乳房炎がクレブシェラ・ニューモニエの感染による甚急性乳房炎である可能性が高いと判定するための用具。
  3. クロマトグラフィー用担体がポリアミドである請求項2に記載の用具。
  4. キャピラリーがガラス製キャピラリーである請求項2又は3に記載の用具。
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