JP4711509B2 - 生物学的流体中のバンコマイシンの検出および定量化 - Google Patents

生物学的流体中のバンコマイシンの検出および定量化 Download PDF

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Description

【0001】
発明の分野
本発明は、試験試料中のバンコマイシンの定量化に関する。特に、本発明は、試験試料中のバンコマイシンの特異的定量化のための免疫原、そのような免疫原から調製した抗体、および蛍光偏光イムノアッセイに使用されることが好ましい標識試薬に関する。
【0002】
発明の背景
過去30年間、バンコマイシンはメチシリン耐性Staphylococcus aureusによって引き起こされるグラム陽性菌感染の治療のための薬物として選択されてきた。β−ラクタム抗生物質に対してアレルギーをもつ患者の細菌感染の治療にも使用されてきた。バンコマイシンはAmycolatopsis orientalis(以前はNocardia orientalisおよびStreptomyces orientalisと呼ばれた)によって産生される。バンコマイシンはグラム陰性菌に対して耐性である。他の抗生物質との交差耐性は未知であり、長期間使用されてきたにもかかわらず、治療中の耐性生物の出現に関する報告はわずかである。バンコマイシンは胃腸管からは吸収されないため、この抗生物質はClostridium difficileによって腸で発症する全腸炎の治療に使用される。ナガラジャン(Nagarajan),R.,J.Antibiotics,46:1181(1993)。バンコマイシンは、細菌細胞壁のペプチドグリカンの生合成に含まれるペプチド中間体と優先的に結合することによってその抗菌作用を発揮する。
【0003】
バンコマイシンは腎を通って排泄される。この薬物の半減期は通常患者では5〜11時間であり、腎不全患者では2〜5日まで伸び、透析患者ではさらに伸びる。バンコマイシンは比較的安全な薬物であるが、これまで観察された副作用としては腎毒性と自己中毒が挙げられる。
【0004】
バンコマイシンを安全に投与するために、患者の血液中のバンコマイシン量の測定が慣例的に行われている。腎に障害のある患者の体内では薬物がより長期間存在するため、体内温度により長くさらされることになり、それによって結晶分解生成物(Crystalline Degradation Product)IおよびII(CDP−IおよびCDP−II)として知られる分解生成物の蓄積が起こることが示唆されている。CDP−IとCDP−IIは回転異性体であり、別々に単離することが可能である。バンコマイシンとこれら2つの主分解生成物CDP−IおよびCDP−IIをそれぞれ図1〜3に示す。
【0005】
バンコマイシンは水性環境では使用できないことが知られている。ハリス(Harris)らに付与された米国特許第4,670,258号では、バンコマイシンと水溶液で薬物を安定化させると言われるトリペプチドとの組成物が開示されている。しかし、このようなトリペプチドはイムノアッセイ技術を妨害することがある。例えば、このような妨害は、分析物の同じ結合部位において抗体と安定化ペプチドが競合する場合に起こりうる。
【0006】
歴史的に見て、生物学的流体中のバンコマイシン濃度は、蛍光イムノアッセイ(FIA)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素増幅イムノアッセイ(EMIT)、または微生物学的方法によって測定されている。HPLCはバンコマイシンのすべての定量法の中で最も正確であると当業者は考えているが高度に訓練された人と、すべての臨床的状況でいつも使用されるわけではない専門的な装置とを必要とする緩慢で労働集約的な方法である。
【0007】
より最近では、蛍光偏光法がバンコマイシンの分析に使用されている。蛍光偏光法は、競合結合イムノアッセイの原理に基づいている。蛍光偏光における原理は、直線偏光によって励起された場合に、蛍光標識化合物がその回転速度に反比例する偏光度を有する蛍光を放出するということである。従って、蛍光標識トレーサー−抗体複合体は直線偏光によって励起され、光が吸収され発光する時間の間に蛍光体の回転が制約されるため、放出される光は偏光度が高いまま維持される。「遊離」トレーサー化合物(すなわち、抗体と結合していない)が直線偏光によって励起される場合は、競合結合イムノアッセイで生成する対応するトレーサー−抗体結合体よりも回転がはるかに速い。
【0008】
蛍光偏光法および蛍光標識としての使用に適した化合物は、従来技術で開示されている。例えば、Kirkemoらに付与された米国特許第4,510,251号および第4,614,823号のそれぞれでは、アミノメチルフルオレセイン誘導体を使用するリガンドの蛍光偏光アッセイが開示されている。フィノ(Fino)らに開示された米国特許第4,476,229号には、蛍光偏光イムノアッセイに使用するための、バンコマイシン類似体を含む置換カルボキシフルオレセインなどの置換カルボキシフルオレセイン類が開示されている。ワング(Wang)らに付与された米国特許第4,420,568号および第5,097,097号には、置換トリアジニルアミノフルオレセインをトレーサーとして使用する蛍光偏光イムノアッセイが開示されている。ワング(Wang)に付与された米国特許第4,420,558号には、バンコマイシンとジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)の反応が開示されれている。しかし、この特許にはこのような反応の生成物の構造や、この反応の不均一系への適用については記載されていない。グリフィン(Griffin)ら(JACS 115,6482(1993))は、C末端にアルキル基、イミダゾール基、およびアミン基が結合したバンコマイシンの選択的合成方法を記載しており、別の官能基を有する誘導体の調製にもこの方法が有用であることを示している。しかしながら、免疫原性物質または免疫成分の合成、ならびにそれらのバンコマイシンの定量化への使用については記載されていない。
【0009】
市販のバンコマイシン用蛍光偏光アッセイ(FPIA)を利用することができる。例えば、市販のアッセイ(アボット(Abbott)TDX(登録商標)アッセイ、TDXFLX(登録商標)アッセイ、(以降、「市販のアボットバンコマイシンアッセイ」と呼ぶ))は、血清試料または血漿試料中のバンコマイシンの定量測定のための試薬を含む。これらのアッセイでは、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)で標識したバンコマイシン誘導体(以降、「市販のトレーサー」と呼ぶ)、およびバンコマイシンに対するヒツジポリクローナル抗体(以降、「市販の抗体」と呼ぶ)を使用する。
【0010】
廃棄する放射性物質がなく、容易かつ迅速に実施可能な均一アッセイであるという点において、FPIAはラジオイムノアッセイ(RIA)よりもすぐれている。しかし、市販のバンコマイシンアッセイではバンコマイシン測定値が場合により増加し、HPLC測定値と一致しないことがあるという報告がある。これらの増加は、CDP−IおよびCDP−IIとの交差反応性の増加によるものである。前述のように、異性体CDP−IおよびCDP−IIは別々に単離可能である。予想されるように、CDP−Iから得られる任意の溶液は常に両異性体の平衡混合物を含む。従って、ここで報告されるCDP−I交差反応性の測定値は、平衡混合物の交差反応性の測定値である。
【0011】
このように、生物学的流体中で、交差反応性分解生成物の存在下におけるバンコマイシン濃度を迅速かつ正確に測定可能である改善されたアッセイがなお必要とされている。従って本発明は、試験試料中のバンコマイシンの定量化のための特別な抗体試薬および標識試薬を提供する。本発明は、これらの特別な試薬を使用するイムノアッセイ法も提供する。このような抗体試薬の生成に使用される免疫原の調製のための合成手順、ならびにこのような標識試薬の調製手順も提供する。
【0012】
バンコマイシン濃度測定のためのアッセイに使用可能である安定なバンコマイシンキャリブレータおよび対照試料を得るために使用可能であり、重要となる場合が多い抗体試料も提供する。
【0013】
本発明によると、標識試薬および抗体試薬は、試験試料中のバンコマイシンの定量化のためのイムノアッセイに使用する場合、当技術分野において従来の公知の手順よりも優れている。特に、本発明の抗体試薬は代謝物CDP−IおよびCDP−IIとの交差反応性が実質的にないことを発見した。さらに、本発明の抗体試薬は、バンコマイシンの定量化のためバンコマイシン分子を安定化するポリペプチドの存在下で使用することができる。本発明ではこのようなポリペプチドの存在は、試料中のバンコマイシンの定量化を妨害しない。
【0014】
発明の要約
本発明は、試験試料中のバンコマイシンの定量方法を提供し、本方法では、
(a)試験試料を、バンコマイシンと特異的に結合可能であり図6の免疫原(式中、Pは免疫原性担体物質であり、Xは0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が連続して直接結合することができ、この配列は−O−O結合を含むことはできず、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる)を使用して生成される抗体を有する抗体試料、および図8の標識試薬(式中、Qは検出可能部分であり、Xは0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が連続して直接結合することができ、この配列は−O−O結合を含むことはできず、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる)と接触させて、反応溶液を調製し、
(b)試験試料中のバンコマイシン量の関数として、抗体と結合するあるいは結合しない反応溶液中の標識試薬量を測定する。
【0015】
本発明は、蛍光偏光が使用される上記方法をさらに提供する。
【0016】
本発明の好ましい方法では、抗体は図6の免疫原を用いて生成され、標識試薬は図8に示されるものである。
【0017】
さらに本発明は、バンコマイシンと特異的に結合する抗体を精製するために有用である図6の新規免疫原を提供する。
【0018】
さらに本発明は、バンコマイシンに対して特異的であり、CDP IおよびCDP IIとの交差反応性が実質的に存在せず、バンコマイシン上の任意の非ペプチド性部位と結合することができる抗体を提供する。特に、本発明の抗体は、バンコマイシンの安定化に使用される安定化ペプチド、特にポリペプチドと、バンコマイシンのペプチド結合部位に対する結合で競合しない。
【0019】
本発明は、HB 11834と命名されるハイブリドーマ細胞株、およびその産生するモノクローナル抗体も提供する。このようなモノクローナル抗体は、バンコマイシンの定量のために最も好ましく、最も好ましくは蛍光偏光法によって行われる。
【0020】
本発明は、バンコマイシンの定量に使用するための安定なキャリブレータも提供する。本発明のキャリブレータは水溶液の形態であり、ポリペプチドで安定化したバンコマイシン分子を含む。このポリペプチドは、抗体とバンコマイシン分子の結合を妨害しない。
【0021】
抗体試薬と標識試薬とを有する、試験試料中のバンコマイシンの定量に有用なキットも提供する。好ましいキットは図6の免疫原から生成される抗体を有し、最も好ましくは図5の免疫原から生成されるモノクローナルIgG抗体である。
【0022】
本発明は、このような抗体試薬の生成に使用される免疫原を調製するための合成手順、およびこのような標識試薬を調製するための合成手順も提供する。
【0023】
図面の簡単な説明
本特許のファイルは、カラーで描かれた図面を少なくとも1つ含んでいる。カラーの図面を含む本特許の複写は、特許商標局に請求し必要な費用を支払えば入手できる。
【0024】
図1は、バンコマイシンの構造を示している。
【0025】
図2はバンコマイシンの主代謝物の1つであるCDP−Iの構造を示している。
【0026】
図3は、バンコマイシンのもう1つの主代謝物であるCDP−IIの構造を示している。
【0027】
図4aから4cはバンコマイシンと担体タンパク質のカップリングのための代表的合成経路を示している。
【0028】
図5aから5dは本発明の方法によるバンコマイシンとチログロブリンのカップリングのための合成経路を示している。
【0029】
図6は、本発明の免疫原の構造を示している。
【0030】
図7は、本発明の最も好ましい免疫原の構造を示している。
【0031】
図8は、本発明の標識試薬の構造を示している。
【0032】
図9は、本発明の最も好ましい標識試薬の一般構造を示している。
【0033】
図10aおよび10bは、本発明の方法によるバンコマイシンとフルオレセインのカップリングのための合成経路を示している。
【0034】
図11は、現行の市販用アッセイと、本発明の最も好ましい抗体を使用する本発明のアッセイとの相関結果を示している。
【0035】
図12は、本発明のアッセイとHPLCの相関を示している。
【0036】
図13は、本発明の蛍光偏光イムノアッセイの結果を示している。
【0037】
図14aから14cは、N−バンコサミニル、N−メチルロイシル、カルボキシル−HDAから誘導されるトレーサーの合成の化学的手法を示している。
【0038】
図15は、ビオチン活性エステル(2)、6−カルボキシフルオレセイン活性エステル(3)、およびアクリジニウム化学ルミネセンス標識(4)を示している。これらの化合物は、図14に示されるN−バンコサミニルから誘導されるトレーサー、およびカルボキシル−HDAから誘導されるトレーサーの合成のための種々の化学的手法に使用される。
【0039】
図16aおよび16bは、バンコマイシン類似体およびトレーサーの構造を示している。
【0040】
図17は、環−2デクロロバンコマイシン(●で示される)およびビオチン標識カルボキシル−HDAバンコマイシントレーサー(○で示される)の平衡解離定数を求めるための溶液競合曲線を示している。
【0041】
図18は、バンコマイシンと細胞壁ペプチド類似体(Nαε−ジアセチル)KAAの間の結合相互作用のモデルを示している。点線は水素結合を表す。
【0042】
図19は、バンコマイシン、抗バンコマイシンFabフラグメント、およびバンコマイシン/抗バンコマイシンFabフラグメント複合体の、アミノカプロエート誘導(Nε−アセチル)KAAトリペプチドバイオセンサー表面への結合を示している。
【0043】
図20は、本発明の抗体が結合するバンコマイシンの部位を示している。特に、本発明の抗体は、黒、赤、および緑で示される領域と結合する。しかし、本発明の抗体は青で示されるペプチド結合領域とは結合しない。
【0044】
図21は、化学ルミネセンストレーサーであるバンコマイシニル−N−メチルロイシルアクリジニウムを示している。
【0045】
発明の詳細な説明
本明細書および添付の請求の範囲で使用される場合、以下の用語はそれぞれこのような意味を有する:
「ヘテロ原子」は窒素、酸素、硫黄、およびリンを意味する。
【0046】
「CHCl」はクロロホルムを意味し、「CDCl」はジューテロクロロホルムを意味し、「MeOH」はメタノールを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し、「CHCl」は塩化メチレンを意味し、「EtO」はジエチルエーテルを意味し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを意味する。
【0047】
「連結部分」、「つなぎ」、「スペ−サー」、「スペーサーアーム」、および「リンカー」は交換可能に使用され、ある定義された物質(ハプテンなど)を第2の定義された物質(免疫原性担体または検出可能部分など)と分離する任意の共有結合を規定する化合物部分を意味する。
【0048】
「安定」は、水性環境におけるバンコマイシンの、その分解生成物CDP−IおよびCDP−IIへの時間の関数としての変化を意味する。本明細書で記載されるように、本発明のキャリブレータは少なくとも2か月間安定である。
【0049】
「CDP−IおよびCDP−IIとの交差反応性が実質的にない」とは、本発明の抗体と代謝物CDP−IおよびCDP−IIの交差反応性が、本明細書の表3に示されるようにバンコマイシンの分析の感度を下回ることを意味する。
【0050】
「非ペプチド性部位」は、バンコマイシン分子上のペプチド結合部位以外の任意の部位を意味する。
【0051】
本発明は、バンコマイシンの定量への使用に好適である免疫原、そのような免疫原から調製される抗体、および標識試薬を提供する。バンコマイシンの特異的定量は、最初に試験試料を、本発明の標識試薬(本明細書ではトレーサーともよぶ)および本発明の抗体試薬と、同時またはどちらかの順序で連続的に接触させ、次に、抗体試薬との結合反応に関与したまたはしなかった標識試薬量を試験試料中のバンコマイシン量の関数として測定することによって行われる。本発明の抗体および標識試薬は、バンコマイシンの特異的定量のための蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)において特に有用である。
【0052】
本発明の好ましい実施態様によると、標識試薬および抗体試薬は蛍光偏光イムノアッセイで使用され、特異性に迅速性および均一法の利便性が加わって、試験試料のバンコマイシンの信頼性の高い定量が行え、さらにバンコマイシンの主代謝物であるCDP−IおよびCDP−IIによる妨害が避けられる。
【0053】
試験試料は、天然の体液、あるいはその抽出物または希釈物であってよく、限定するものではないが、全血、血清、血漿、尿、便、唾液、脳脊髄液、脳組織などが挙げられる。
【0054】
当業者には公知であるが、特異的抗体と相補的な標識ハプテンとを調製する場合、抗体反応を誘発するために使用される免疫原と標識ハプテンの両方の化学構造を考慮する必要がある。従来、選択的抗体を得るために重要であるハプテン特有の部分から離れたハプテン上の部位で、ハプテンと担体タンパク質を結合させている。同様に、このような抗体と結合可能な標識ハプテンを調製する場合、慣例的に、担体タンパク質をハプテンと結合させるために使用される部位と同じハプテンの部位に標識を結合させている。このようなことを行う理由の1つは、担体タンパク質によって、ハプテンの一部への免疫系の関与が立体的に妨害される可能性があるからである。相補的な標識ハプテンは、免疫原として担体タンパク質を結合させる部位と同じハプテンの部位に標識を結合させることによって合成され、そのためハプテンの重要な部分と抗体との結合が妨害されない。
【0055】
従って、バンコマイシンの別の部位に結合することによって誘導される本発明のバンコマイシン免疫原によって、バンコマイシンに特異的な抗体と、バンコマイシンの主代謝物に対して優れた交差反応特性を有する分析法が開発されることは驚くべき予想外の発見であった。最も驚くべき発見は、この分析の感度の限界に関するものであり、HB 11834から産生されるモノクローナル抗体が、CDP、特にCDP−IおよびCDP−IIに対して実質的に交差反応性を示さないことである。さらに、このモノクローナル抗体がペプチド結合部位とは結合しないということも驚くべき発見であった。これによって、バンコマイシンの定量のための改善された分析法が開発でき、安定なキャリブレータおよび対照物質を使用することができる。
【0056】
免疫原の合成
ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方の本発明の抗体は、図6の一般式で示されるようにバンコマイシンのカルボン酸を介して担体タンパク質と結合するバンコマイシン分子から調製される免疫原を使用して生成され、式中Pは免疫原性担体物質であり、Xは連結部分である。
【0057】
本発明の免疫原において、好ましくはXは、0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が直接結合することができ、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる。
【0058】
当業者であれば理解できるように、免疫原性担体物質Pは従来公知である任意のものから選択することができる。ほとんどの場合では、Pはタンパク質またはポリペプチドであるが、十分な大きさおよび免疫原性を有する炭化水素、多糖類、リポ多糖類、ポリ(アミノ)酸、核酸などの他の物質を使用することもできる。好ましくは、免疫原性担体物質は、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリンなどのタンパク質である。
【0059】
好ましい免疫原では、Pはチログロブリンであり、Xは−NH(CHC(=O)−である。最も好ましい免疫原は図7に示される。しかし、式7の化合物が、バンコマイシンおよび免疫原性担体の1種類の複合体のみに限定されるものではないことは当業者であれば理解できよう。すなわち、バンコマイシン誘導体と免疫原性担体の比は、免疫原性担体P上で化学的に利用可能な官能基数によって定まり、これらの2種類の物質の比は合成において制御することができる。Pのバンコマイシン誘導体による置換度は、免疫原性担体上の利用可能な官能基の1〜100%の間で変動させることができる。この置換度は、10%〜95%の間が好ましく、より好ましくは15%〜85%の間である。
【0060】
前述のように、本発明の免疫原性複合体は、バンコマイシンのカルボン酸末端を介してバンコマイシンと担体物質とをカップリングさせることによって調製される。図4a〜4cに示されるように、当業者には公知である方法によって、バンコマイシンをV−X−Yで表される二官能性化合物とカップリングされ、式中Xは連結部分であって、V−および−Yは官能基であり、これらの官能基の1つはバンコマイシン(I)のカルボン酸と反応することができ、もう一方はPの化学的に利用可能な官能基と反応することができる。多くの二官能性リンカーが当技術分野において公知である。例えば、ヘテロ二官能性リンカーは、例えばビエニアルツ(Bieniarz)らに付与された米国特許第5,003,883号に記載されている。ヘテロ二官能性リンカーは、官能基の一方に関する末端が特異的となるため好ましくなる場合がある。同様に、免疫原合成を好都合に行うために、当業者には公知であるか容易に習得できる技術によって、希望するときに官能基V−および−Yを保護し、脱保護することができる(例えば、T.W.グリーン(Greene)およびP.G.M.ワッツ(Wutts),「Protective Groups in Organic Synthesis,2nd Ed.(有機合成における保護基第2版)」1991,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)を参照されたい)。
【0061】
一般に、本発明の免疫原の調製において、Vは−OH、−ハロ(−Cl、−Br、−I)、−SH、または−NHR’−からなる群より選択され、式中R’はH、アルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリールから選択される。Yは、カルボキシ(−C(=O)OH)、アミノ(−NH)、アルデヒド(−CH(=O))、またはアジド(−N)からなる群より選択することができる。前述したように、Xは、0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が直接結合することができ、V−X−Yの並びはO−O結合を含むことはできず、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる。
【0062】
図4a〜4cに示される代表的な合成図式を参照すると、バンコマイシン(図4a)とV−X−Yの反応によって、官能基Yの結合した連結部分Xを有する連結中間化合物(図4b)が生成する。当業者には公知である数種類の方法の任意のものによって、官能基−Yを免疫原性担体の官能基と反応させることができる。アミド結合を形成することが好ましく、通常この結合は安定である。アミド結合は、最初にN−ヒドロキシスクシンイミドなどの添加剤を加えて1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの活性化試薬と反応させることによって、スペーサーアームのカルボン酸部分[Y=(−C(=O)OH)]を活性化させることで形成される。次に活性化形態(図4b参照)を、免疫原性担体物質を含む緩衝液と反応させる。あるいは、カルボン酸基を、反応性の高い無水物、ハロゲン化アシル、アシルイミダゾリド混合物、またはカーボネート混合物に転化させて、単離を行うかまたは行わないで、免疫原性担体物質と結合させることもできる。当業者には容易に明らかとなるように、上述のもの以外にアミド結合を形成するために使用できる試薬は多数存在し、このような試薬については特に挙げる必要はないであろう。
【0063】
あるいは、末端アミン官能基(Y=−NH)を有するスペーサーアームは、アセトニトリルまたはジメチルホルムアミドなどの好適な溶媒中でN,N’−ジスクシンイミジルカーボネートと反応させることによって、反応性の高いN−ヒドロキシスクシンイミドウレタンを生成することができる。次に、得られたウレタンを緩衝水溶液中の免疫原性担体と反応させると免疫原が得られる。
【0064】
さらに、末端アルデヒド官能基[Y=−CH(=O)]を有するスペーサーアームは、当業者に公知の方法による還元的アミノ化によって、水素化シアノホウ素ナトリウムの存在下で緩衝水溶液中において免疫原性担体とカップリングさせることができる
あるいは、アルコール基[Y=−OH]を含むスペーサーアームは、ホスゲン、あるいはジホスゲン、トリホスゲン、またはカルボニルジイミダゾールなどのホスゲン同等物とまず反応させ、反応性の高いクロロギ酸エステルまたはイミダゾロギ酸エステル誘導体(通常は単離しない)を生成することによって、免疫原性担体物質とカップリングさせることができる。得られた活性ギ酸エステルを、次に緩衝水溶液中で免疫原性担体と反応させる。
【0065】
あるいは、Y=−Nの場合は、連結中間体は、緩衝水溶液中の光分解によって免疫原性担体とカップリングさせることができる。
【0066】
図6の好ましい免疫原は、図5a〜5dの図式に従って調製される。バンコマイシンのカルボキシル基(図5a参照)は、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)を用いて活性化される。さらにリンカーの4−アミノ酪酸メチルエステル[V=−NH、X=−(CH−、Y=−COH]と反応させた後で加水分解を行って、連結中間体[X=−(CH−、Y=−COH]を得る。次にYを1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDAC)で活性化させ、Pとカップリングさせる。当業者であれば、ペプチド結合形成の他の方法も同様に首尾よく使用することができることが分かるであろう。
【0067】
このように、今述べた方法では、バンコマイシンは、従来技術で公知の種々の方法によって、この部位およびアミンまたはアルコールなどの分子の他の反応性部位で、免疫原性担体物質とカップリングさせることができ、ここでPは前述と同様の免疫原性担体物質である。
【0068】
さらに、ハプテンを担体物質と結合させるための類似の方法では、スペーサーアームの反応性基と相補的な意味で反応性であるアミノ基、水酸基、またはカルボキシル基などの官能基を有する固体支持体とスペーサーアームを結合させることができる。この方法によって、ハプテンに対する抗体の分離または生成に使用することができる固体相が得られる。このようなカップリング技術も当技術分野において公知である。
【0069】
本発明の抗体
a.抗体の生成
本発明の免疫原は、当技術分野において公知である方法に従って、ポリクローナルとモノクローナルの両方の抗体の調製に使用することができる。一般に、ウサギ、ヤギ、マウス、モルモット、またはウマなどのホスト動物に、免疫原の種々の部位の1種類以上が通常アジュバントとの混合物として注入される。その後、血液を採取して抗体力価の測定を行いながら、最適な力価に到達するまで、規則的または不規則な間隔で同じ部位または異なる部位をさらに注入する。ホスト動物の血液を採取して抗血清を得るか、あるいは体細胞交雑技術または他の当技術分野で公知の技術によってモノクローナル抗体を得るかのいずれかによって抗体が得られ、例えば−20℃でこれを貯蔵することができる。無傷の免疫グロブリン以外に、本明細書で使用される抗体という用語は、公知の方法によって生成することができる免疫グロブリンの抗原結合フラグメント、例えばFab、F(ab’)、およびFvも含んでいる。
【0070】
市販の抗体を本発明の好ましい抗体に置き換えるだけで、バンコマイシンアッセイの性能が向上することの注目されたい。
【0071】
本発明の好ましい方法は、検出を意図していない代謝物との結合が分析の精度に影響を与える程度には結合しない抗体を使用し、特に代謝物はCDP−IおよびCDP−IIであるということも注目されたい。
【0072】
b.本発明の抗体の特異性および結合親和性
本発明の免疫原によって生成する抗体はバンコマイシンに対して特異的であり、代謝物のCDP−IおよびCDP−IIに対しては実質的に交差反応性を示さない。
【0073】
さらに、本発明の抗体はバンコマイシン分子の任意の非ペプチド性部位と結合する。本発明の抗体は結合しないバンコマイシンのペプチド結合部位は、図20に青色で示している。本発明の抗体が結合するバンコマイシン分子の非ペプチド性部位は、図20に黒、赤、および緑で示している。好ましくは本発明の抗体は、図20の2つの糖部分(赤で示される)、および図20の塩素化フェニル(緑で示される)と結合する。
【0074】
本発明の抗体はバンコマイシンのペプチド結合部位とは結合しないので、バンコマイシンのペプチド結合部位は安定化ペプチドの結合のために残される。ペプチド結合部位にペプチドが結合することによって、水溶液中のバンコマイシンを安定化することができる。バンコマイシンの安定化に使用することができるペプチドは、バンコマイシンとの結合親和性を有することが知られているポリペプチドである。好ましいポリペプチドは、少なくとも3つのアミノ酸残基を含み、その構造中にα,ε−ジAc・L−lys・D−ala・D−alaのフラグメントを含むポリペプチドである。
【0075】
バンコマイシン分子のペプチド結合部位以外の部位に対して結合親和性であるため、バンコマイシン濃度測定用アッセイに使用可能なバンコマイシンのキャリブレータおよび対照試料を作製するために、本発明の抗体を使用することができる。本発明のキャリブレータおよび対照試料は水溶液であり、ポリペプチドで安定化したバンコマイシン分子を含む。上述の1種類以上のポリペプチドを、バンコマイシン分子の安定化に使用することができる。バンコマイシン分子の安定化に使用されるポリペプチドは、抗体とバンコマイシン分子の結合を妨害しない。本発明のキャリブレータは、少なくとも2か月間安定であり、好ましくは6か月間、最も好ましくは1年を超える期間安定である。
【0076】
標識試薬の調製
前述したように、本発明の標識バンコマイシン試薬は、バンコマイシンの二級アミノ末端、すなわち担体タンパク質が結合する位置とは異なる位置で標識と結合させることによって調製される。
【0077】
バンコマイシン用の本発明の標識試薬は、図8で示される一般式を有し、式中Qは化学ルミネセンス部分または蛍光性部分などの検出可能部分であり、Xは連結部分である。好ましい標識試薬では、Qは、4’−アミノメチルフルオレセイン、5−アミノメチルフルオレセイン、6−アミノメチルフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、5および6−アミノフルオレセイン、チオ尿素フルオレセイン、およびメトキシトリアジニルアミノフルオレセインからなる群より選択されるフルオレセイン誘導体、あるいはバンコマイシン−N−メチルロイシルアクリジニウムなどの化学ルミネセンス部分であり;Xは好ましくは、0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が直接結合することができ、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる。より好ましい標識試薬では、QはクロロトリアジニルアミノフルオレセインでありX=0である、すなわちバンコマイシン誘導体が直接フルオレセイン誘導体と結合する。本発明好ましい標識試薬は図9に示される構造を有する。
【0078】
免疫原性複合体の合成と類似の方法において、まず1級アミノ基を他と異なるように保護し(T.W.Greene and P.G.M.Wutts,「Protective Groups in Organic Synthesis,2nd Ed」、1991,John Wiley and Sons参照)、続いて2級アミノ基を検出可能部分と選択的に反応させることによって、本発明の標識試薬はバンコマイシンから合成される。
【0079】
より具体的には、好ましい標識試薬は、図10aおよび10bに示されるように合成することができ、(i)バンコマイシン基剤と希HClをpH6.0で反応させて1級アミノ基を4級化窒素として保護し、続いて(ii)これをジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)と反応させることによって標識試薬を得ることができる。
【0080】
最も好ましい態様では、上記合成方法が図9の標識試薬の生成に使用される。
【0081】
蛍光偏光イムノアッセイを使用するバンコマイシンアッセイ
本発明の試薬を使用する蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)方式に従って、試験試料のバンコマイシンの濃度または量を正確に定量することができる。バンコマイシンの特異的定量のためのFPIAを実施するために、バンコマイシン濃度が既知であるキャリブレータから検量線が作成される。
【0082】
一般に、蛍光偏光法は、ある特性波長の直線偏光によって励起された場合に、入射励起光に対して偏光度が保持される別の特性波長の光(すなわち蛍光)発し、この偏光度が所与の媒体中のトレーサーの回転速度と反比例の関係にあるという原理に基づいている。この性質によって、粘稠溶液相中に存在する、または回転速度が比較的より遅い他の溶液成分と結合するなどによって回転の制限されたトレーサー物質は、放射光の偏光度が、自由な溶液中にある場合よりも比較的大きな値に保持される。従って、リガンドとトレーサーが抗体との結合で競合する時間範囲内で、トレーサーとリガンドの結合速度から、遊離トレーサーと結合トレーサーの適切な比が得られ、選択性、感度、および精度などの重要な性能パラメータは維持される。
【0083】
本発明によるバンコマイシンの特異的定量のための蛍光偏光イムノアッセイを行う場合、バンコマイシンを含むと思われる試験試料を、本発明の標識試薬の存在下で本発明による免疫原を用いて調製した抗血清またはモノクローナル抗体と接触させる。次に直線偏光を溶液に通過させて蛍光偏光応答を得て、この応答を試験試料中に存在するバンコマイシン量の測定値として検出する。
【0084】
蛍光偏光アッセイは、市販の自動化装置(例えば、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)のAxSYM(登録商標)、TDX(登録商標)、およびTDXFLX(登録商標))で行うことができる。
【0085】
本発明によると、図6に示す免疫原から誘導される抗体と図8の蛍光標識試薬を使用した場合に、バンコマイシンの定量に関して優れた蛍光偏光イムノアッセイ結果が得られるという予想外で驚くべきことが分かった。
【0086】
特に、図9の標識試薬を図7の免疫原に対する応答で生成するモノクローナル抗体と組み合わせて使用することでバンコマイシンの主代謝物のCDP−IおよびCDP−IIに対する交差反応性が非常に低く、実質的に0である(すなわちこのアッセイの感度限界より低い)アッセイが行えるという予想外で驚くべきことが分かった。名称ATCC HB 11834のハイブリドーマから産生されるモノクローナルIgG抗体を使用する蛍光偏光法が最も好ましい。
【0087】
抗体と結合するトレーサーの量は、試験試料に存在するバンコマイシン量と反比例して変動する。従って、バンコマイシンおよびトレーサーの抗体結合部位に対する相対的な結合親和性がこのアッセイ系の重要な要素である。
【0088】
他のアッセイ方式
蛍光偏光イムノアッセイ以外に、本発明によるバンコマイシン定量方法に従って、種々の他のイムノアッセイ方式を実施することができる。一般に、このようなイムノアッセイ系は、免疫グロブリンの能力、すなわち全抗体またはそのフラグメントの試験試料の特定の分析物に結合する能力に依存し、この場合標識試薬または検出可能試薬は結合量を求めるために使用される。このような検出可能標識としては、限定することを意図するものではないが、酵素、放射性標識、ビオチン、毒素、薬物、ハプテン、DNA、RNA、リポソーム、発色団、限定するものではないが図21に記載されるものなどの化学ルミネセンス、着色粒子および着色微粒子、および前述のような蛍光性化合物が挙げられる。
【0089】
通常、このようなイムノアッセイ系方式における結合量は、標識試薬中に存在する、分析物との結合反応によって沈殿したまたはしなかった検出可能部分の量によって求められ、検出され測定された検出可能部分量を、試験試料中に存在する分析物の量と相関させることが必要である。例えば、競合イムノアッセイ系では、測定される物質(リガンドと呼ばれることが多い)は、リガンドと構造が非常によく似ており検出可能部分がカップリングした物質(トレーサーと呼ばれることが多い)と、リガンドおよび構造が類似しているトレーサーの1つ以上の部分に対して特異的である抗体の限られた数の結合部位に関して競合する。
【0090】
試験キット
本発明による試験キットは、試験試料中のバンコマイシンの定量のための所望のイムノアッセイを行うために必要な試薬を含む。試験キットは、必要な試薬を含む1つ以上の容器の組み合わせ、および/または試薬が相溶性となる組成物または混合物としての製品包装形態にすることができる。好ましくは試験キットは、アッセイを行うために必要なすべての試薬、標準物質、緩衝液、希釈剤などを含む。
【0091】
バンコマイシンの定量に関して前述した蛍光トレーサー化合物および抗体を含む、試験試料中のバンコマイシンの定量のための蛍光偏光イムノアッセイ用試験キットが特に好ましい。当然ながら試験キットは、当技術分野において公知であり使用者の観点から望ましいと思われる他の物質を含むことができることは理解できるであろうし、このような物質としては試料予備処理溶液、緩衝液、希釈剤、標準物質などが挙げられる。
【0092】
限定することを意図するものではない以下の実施例によって本発明を説明する。
【0093】
実施例1.バンコマイシン免疫原の合成
a)4−アミノ酪酸メチルの合成
4−アミノ酪酸(5.00g、48.5mmol)を200ml丸底フラスコに入れる。ジメトキシプロパン(80ml、65mmol)を撹拌しながらフラスコに加える。濃塩酸(15ml)を反応混合物に加え、室温で終夜撹拌する。加熱せずにロータリーエバポレーターを使用して減圧下で溶媒を除去する。得られた固形分を最小限の量のMeOHに溶解し、エーテルで再沈殿させる。沈殿した固形分を吸引ろ過し、EtO(2×50ml)で洗浄する。得られた固形分(収量:6.9g(96%))を次に減圧乾燥する。
【0094】
遊離アミンのHNMR(CDCl):2.1(5重項、2H)、2.5(3重項、2H)、3.2(ブロードな3重項、2H)、3.7(1重項、3H)、8.1(1重項、2H)。
【0095】
b)バンコマイシン−アミノ酪酸誘導体の合成
バンコマイシン(500mg、0.34mmol)基剤を25ml丸底フラスコに入れる。DMSO(4ml)を加えて、必要であれば温めながら透明な溶液が得られるまで撹拌する。実施例1(a)の4−アミノ酪酸メチル(506mg、3.4mmol)を反応混合物に加え、さらにヒドロキシベンゾトリアゾール(105mg、0.69mmol)とトリエチルアミン(0.0976ml、0.69mmol)を加える。反応混合物をN雰囲気下で室温において3〜7日間撹拌する。反応はHPLCで追跡する。出発物質が消費されてから、沈殿した固体をろ過して除去し、ろ液を後述のC−18カラムを使用する逆相HPLCによって精製する。採取した分画を凍結乾燥する(収量:310mg)。
【0096】
分析用HPLC条件は以下のとおりである:カラムは7.8mm×300mmのC−18(Bondapak C−18、ウォーターズ(Waters)、マールボロ(Marlborough)、マサチューセッツ州)であり、アセトニトリル:酢酸アンモニウム(50mM)の連続的グラジエント移動相(15分間で10%アセトニトリルから50%アセトニトリル)を使用し、流速は3.0ml/分である。検出は254nmで行う。
【0097】
分取HPLC条件は以下の通りである:カラムは19mm×250mmのC−18(Dynamax 60A C−18、レイニン(Rainin)、ウォーバーン(Woburn)、マサチューセッツ州)であり、アセトニトリル:酢酸アンモニウム(50mM)の連続的グラジエント移動相(15分間で10%アセトニトリルから50%アセトニトリル)を使用し、流速は8.0ml/分である。検出は254nmで行う。
【0098】
質量分析(MS):電子スプレーイオン化法(ESI)MH1547、(MH2+774。
【0099】
c)バンコマイシンハプテンの合成
実施例1(b)のバンコマイシン−アミノ酪酸エステル誘導体(165mg、0.1mmol)を25ml丸底フラスコ中でDMF/水(2ml:3ml)に溶解する。このフラスコを0℃に冷却し、LiOHを加えて2時間撹拌し、室温まで温めて、HPLCで反応を追跡する。出発物質が消費されてから、逆相カラムを使用する分取HPLCで直接反応物質を精製する。溶媒を凍結乾燥して生成物(収量:160mg)を得る。分析用HPLCおよび分取HPLCの両方は前述の通りである。
【0100】
質量分析(MS):ESI MSより(MH)が1533で得られ、これはバンコマイシンに結合した加水分解リンカーの正確な分子量を示している。
【0101】
d)免疫原の合成
チログロブリン(100mg、0.0002mmol)をリン酸二水素ナトリウム緩衝液(5ml、希薄NaOHでpHを6.7に調整)に溶解する。実施例1(c)のバンコマイシンハプテン(50mg、0.0321mmol)を加え、続いてEDAC(9.2mg、0.0482mmol)を加える。得られた反応混合物を室温で2日間撹拌する。内容物を膜に移して、0.1MのNaHPO緩衝液(一塩基性、NaOHでpH7.8に調整)を用いて溶媒を4時間ごとに交換しながら2日間透析する。透析袋の内容物を凍結乾燥して、所望の免疫原130mgを得る。
【0102】
実施例2.抗バンコマイシン抗体15−109−592の生成
メス、6〜8週齢のRBF/DnJマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ(Jackson Laboratories)、バーハーバー(Bar Harbor)、メイン州)を、フロイントのアジュバント(ディフコ(Difco)、デトロイト(Detroit)、ミシガン州)で乳化した実施例1のバンコマイシン免疫原で免疫する。一次免疫ではフロイントの完全アジュバントを用いて投与し、続く追加免疫ではフロイントの不完全アジュバントを用いて投与する。この長期免疫化動物の追加免疫間隔は1週間、3週間、5週間、12週間、17週間、および24週間であり、それぞれの投与量は1匹当り25、12.5、12.5、10、10、および10μgであり、最初の3回の追加免疫では1つの皮下部位および1つの腹膜内部位に行い、最後の3回の追加免疫では毎回2つの皮下部位で行う。定期的に、採血を行い、抗体応答の進行を確認する。7週間の停止期間の後、動物の脾臓に10μgの追加免疫を行い、細胞融合を行った。
【0103】
細胞融合を行う日に、迅速な頚椎脱臼によってマウスを安楽死させ、脾臓を摘出する。脾細胞をイスコブ(Iscove)変法ダルベッコ(Dulbecco)培地(IMDM)(ギブコ(Gibco)、グランドアイランド(Grand Island)、ニューヨーク州)で1回洗浄し、1000RPMで10分間遠心分離する。ペレット状になった脾細胞をSP2/0ミエローマ細胞(Dr.ミルステイン(Milstein)、ケンブリッジ(Cambridge)、UK)と1:1の比で混合し、IMDMで洗浄して、遠心分離する。上澄液を除去し、1mlの50%ポリエチレングリコール(PEG;アメリカン・タイプ・ティシュー・カルチャー・コレクション(American Type Tissue Culture Collection)、ロックビル(Rockville)、メリーランド州)を1分間ペレットに加え、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン(HAT Gibco)、および15%ウシ胎仔血清(FBS;ハイクローン・ラボ(Hyclone Labs)、ローガン(Logan)、ユタ州)を含むIMDMに再懸濁させる。細胞融合頻度を向上させるために、0.5%v/vのSalmonella typhimuriumマイトジェン(STM;RIBI免疫化学研究所(RIBI immunochem Research,Inc.)、ハミルトン(Hamilton)モンタナ州)と1%v/vのORIGEN(イゲン(Igen)、ロックビル(Rockville)、メリーランド州)とを融合細胞浮遊液に加え、24ウェル組織培養プレートに配置する。
【0104】
細胞融合の最初のスクリーニングを、集密的培養の10日目に行った。市販のアッセイ(TDX(登録商標)、アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories))を使用して、上澄試料の抗バンコマイシン反応性を検出する。組織培養の上澄を試料ウェル2つずつに入れ、市販のキャリブレータキットのAキャリブレータ(バンコマイシン0μg/ml)またはFキャリブレータ(バンコマイシン100μg/ml)のいずれか10μlを希釈前のウェルに加える。希釈緩衝液を試薬パックのSポットとPポットに入れ、市販のトレーサーはTポットに入れて使用する。ハイブリドーマ培養上澄液は非常に希薄であるため、試料体積を90μlに増加させる。試料の偏光を測定し、Fキャリブレータの存在下での偏光の減少を基準にして、ただ1つのハイブリッド15−109が、バンコマイシンに特異的であると同定される(表1参照)。遊離のバンコマイシンが抗体と結合し、トレーサーの結合が阻害されるためであり、それによって信号の減少が起こる。
【0105】
【表1】
Figure 0004711509
【0106】
ハイブリッド15−109は、1−100から1−100,000までで限界希釈法を行うことによりクローニングを行う。クローニング培地は、10%v/vFBSと1%v/vHTサプリメント(Supplement)(ギブコ(Gibco))を含むIMDAである。200μlの細胞浮遊液を、96ウェル組織培養プレートの各ウェルに加える。
【0107】
新しく15−109−133と命名されたハイブリットは、集密的培養の上澄のクローンニングのさらなるスクリーニングに基づいてさらに評価するために選択される。
【0108】
アミコン(Amicon)ろ過システムを使用して、モノクローナル抗体ハイブリッド15−109−133をまず10倍に濃縮する。次に、飽和硫酸アンモニウム(50%)を使用して未処理抗体(抗体はなおウシ胎児血清中にある)を分画する。次にこの溶液を4000RPM(回転/分)で遠心分離して、上澄を廃棄する。得られたペレットを濃縮後の元の体積の1/10の体積のPBS(pH7.4)に差懸濁する。この抗体溶液をPBS(pH7.4)中で透析し、透析後に市販の緩衝液(リン酸塩、アジド、およびウシγグロブリンの緩衝液)を使用して以下のように希釈する:希釈せず、1:2、1:4、1:8、1:16、および1:32。前述の同じモード1のバンコマイシンアッセイの2(20μl)ではなく、10(100μl)の試料体積で試料ウェル2ずつに試料を注入する。前述のようにして装置によってmP(ミリ偏光値)を計算し、最も高いmPが得られる抗体の希釈率を、試薬キットのSポット(抗体ポット)に使用する抗体の希釈率として選択する。抗体を、10%グリセロールと5%BSAを含むリン酸緩衝液で希釈する。トレーサーポットはHPLCで再度精製した既存の市販のトレーサーを含み、トリス(Tris)緩衝液(+0.7%SDSおよび0.5%LDS)で希釈される。この精製したトレーサーをトレーサーポット中で1.7μg/mlまで希釈する。ポッパーは20mMの硫酸銅と2.5%の5−SSAで構成される。バンコマイシン(分析物)と共にこの試薬パックをキャリブレータとして0、5、10、25、50、および100μl/mlで装入し、7、35、および75μg/mlの対照試料とともに2回ずつ測定を行う。モード1によるアッセイ16ピペット操作をこの装置で使用し、検量線を較正して保存する。CDP−Iの交差反応性が存在しないことを確認するため、種々の濃度のCDP−I試料で測定を行う。
【0109】
さらなるスクリーニングに基づき、新しく15−109−592と命名したクローンを委託用に選択する。
【0110】
15−109−592として同定された細胞株から分泌されるモノクローナル抗体のアイソタイプを抗体アイソタイピングキット(マウス・モノクローナル(Mouse Monoclonal)、サザン・バイオテック(Southern Biotech)、#5080−05、バーミンガム(Birmingham)、アラバマ州)で求めた。このアッセイは供給元の推奨に従って行われ、その結果はIgG1κ軽鎖のアイソタイプであることを示している。
【0111】
細胞株の委託
ブダペスト条約に従って、名称がハイブリッド15−109−592であるハイブリドーマ細胞株を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)(12301 Parklawn Drive,Rockville,Maryland,20852、米国)に委託する。委託した日付は1995年2月16日であり、この細胞株に付与されたATCC番号はHB 11834である。この委託物はATCC貯蔵所で保管され、これは公的な保管所であり、最も新しい要求から30年間または5年間、あるいは、特許の効力のある期間の長い方の期間保管され、この期間中に生育不能となれば交換される。さらに、本出願人らは、試料の生育能力の提示を含む37C.F.R.§1.801−1.809のすべての要求基準を満たしている。
【0112】
実施例3.バンコマイシンクロロトリアジニルアミノフルオレセイントレーサーの合成
バンコマイシン塩基(576mg、0.4mmol、1.5当量)を広口の50ml丸底フラスコに入れたDMF(8ml)に溶解する(必要であれば40℃まで加温する)。小型pH電極を挿入して、反応混合物のpHを監視する。ジクロロトリアジニルアミノフルオレセインHCl(DTAF;132mg、0.26mmol、1当量)のDMF(2ml)溶液をフラスコに加える。反応混合物はオレンジ色〜黄色に変化し、pHは6.0±0.5まで低下し、このpHを維持しながら終夜撹拌する。反応生成物は、分析用HPLCで監視する。すべてのDTAFが消費されてから、約2〜3mlになるまで減圧下でDMFを除去する。残留物をHPLCで精製する。適切な分画を採取し、溶媒を凍結乾燥して、オレンジイレローの粉末(収量350mg)を得る。
【0113】
分析用HPLCの条件は以下の通りである。カラムは3.9mm×300mmのC−18(DYNAMAX C−18,Rainin)であり、連続グラジエント移動相(A=酢酸アンモニウム;B=アセトニトリル(50mM);B=10%からB=50%で15分間で展開)を使用し、流速1.5ml/分である。検出は254nmまたは486nmのいずれかで行う。
【0114】
分取HPLCは上記と同様の条件を使用し、19mm×250mmのC−18カラム(DYNAMAX C−18,Rainin)を使用する。
【0115】
MS:ESMSよりMHが1908で得られ、(MH2+が953で得られる。
【0116】
実施例4.バンコマイシンの蛍光偏光イムノアッセイ
バンコマイシンの存在下でCDP−I交差反応性がないという利点を有しながらTDX(登録商標)/TDXFLX(登録商標)アボットバンコマイシンアッセイと同等以上に行えるように、トレーサー(実施例3)およびモノクローナル抗体#15−109−592(実施例2)を最適化する。前述したように、一定濃度の抗体とトレーサーを試験試料に加えることによって、生成するバンコマイシン−抗体複合体とトレーサー−抗体複合体の比は、試料中のバンコマイシン量に正比例する。混合物が直線偏光で励起されると、未結合トレーサーとトレーサー−抗体複合体とによって放出される蛍光の偏光が測定され、試験試料中のバンコマイシンの定量または定性が可能となる。結果は正味のミリ偏光単位(mP)およびスパンによって定量化することができる。正味のミリ偏光は、最大量のトレーサーが抗体と結合する(すなわち、バンコマイシンが存在しない)場合に検出される偏光を意味する。正味のmP単位が大きいほど、トレーサーの抗体に対する結合が良好である。アッセイのスパンは、バンコマイシンが全く存在しない状態で 最大量のトレーサーが結合する場合に得られる正味のミリ偏光値と、特定の量のバンコマイシンが試験試料中に存在する場合に得られる正味のミリ偏光との差である。ミリ偏光単位は、保存された検量線から自動的に補間され、試料1ml当りのバンコマイシン量(mg)として表される。
【0117】
精製した(硫酸アンモニウム分画)バンコマイシン抗体15−109−133を2.5%ウシ血清アルブミンと10%グリセロールを含むリン酸緩衝液で濃度20μg/mlまで希釈し、これがSポットを構成する。トレーサーポット(Tポット)は0.7%ラウリル硫酸ナトリウムおよび0.5%ラウリル硫酸リチウムを含むトリス緩衝液で濃度0.275μg/mlまで希釈したバンコマイシン−DTAFトレーサーである。これら2つの成分を予備処理ポット(Pポット)に加えことによって、3500〜4500単位の範囲の強度値を有する96.94mPのスパンが得られる(強度値は抗体とトレーサーが互いに反応する影響の測定値である。このアッセイで抗体またはトレーサーの濃度のいずれかが増加すると、強度値も増大する)。
【0118】
本発明のバンコマイシンアッセイの精度は、市販のバンコマイシンアッセイと、56の患者試料を使用して比較することによって示される。両方のアッセイの相関性はR=0.996およびy=0.92x−0.008(図11)であった。さらに、本発明のアッセイをHPLC定量と比較した。この新規アッセイのHPLCに対する相関は、R=0.998およびy=1.007+1.053(図12)であり、一方市販のバンコマイシンアッセイのHPLCに対する相関はR=0.996およびy=1.088x+1.252(データは示していない)であった。本発明のアッセイと、市販のバンコマイシンアッセイの両方は、感度が2.00μg/ml未満であり、試料中の0〜100μg/mlのバンコマイシンを検出可能である。100μg/mlを超えるバンコマイシンを含む試料は、アッセイのマニュアルに記載されるように、試料体積を1.0または0.5まで減少させることによって2倍または4倍に自動的に希釈することができる。本発明のアッセイと市販のバンコマイシンアッセイの精度は同等である。すべての試験の間、試験内、および変動の全係数(CV)は6%未満である(表2参照)。
【0119】
交差反応性に関しては、0、40、および80μg/mlの量のバンコマイシンについて、0、1、10、50、および100μg/mlの量で存在する種々の交差反応物質と共に試験を行う。驚くべきことに、CDP−Iを含むすべての交差反応物質は、バンコマイシンとの交差反応性が2%未満であり、これはすべての測定値がアッセイの感度(2μg/ml)を下回っていることを意味する。対照的に、市販のバンコマイシンアッセイでは、バンコマイシンが存在するかしないかでCDP−Iの交差反応性が39.58%〜65%まで上昇する。驚くべきことに、本発明の抗体は、試験が行われる最も高濃度でもCDP−Iに対して検出可能な交差反応性がない。これらの結果は既存の市販アッセイよりも有意に改良されている(CDP−Iの交差反応性データについては表3を参照)。
【0120】
図13は、実施例4の方法を使用したバンコマイシン0〜100μg/mlにおけるmPを示す代表的データである。
【0121】
本発明のバンコマイシン抗体(Sポット)15−109−592は45℃で14日間保存可能であり、凍結/融解サイクルによる変化に対してこのモノクローナル抗体の抵抗性が高いという予期せぬ発見をした。このモノクローナル抗体は3回の凍結/融解サイクルで、スパンおよび強度値の変化を最小限にすることができる。さらに、この抗体はモノクローナル抗体であるので、スパン、交差反応性、および安定性などの分析パラメータはロット間で実質的に同じである。さらに、ハイブリドーマは中空線維細胞培養システムを使用して培養することができるので製造性が向上する。抗体は臨床分析器内の2つのエアセットフラクチュエーション(約1.5℃)にも耐えることができるので、アッセイの動力学は分析装置環境(約34±0.5℃)においても安定である。最後に、予備処理溶液(10%の5−スルホサリシシレート、0.1Mのトリス、20mMの硫酸銅)を使用することによって、ビリルビン妨害(上限30mg/dl)を5%未満にすることができ、キャリーオーバー(バンコマイシン試料250μg/mlの場合)がアッセイの感度の2%より低くなる。アッセイのためのバンコマイシンを遊離するために、予備処理溶液はバンコマイシンと結合する任意のタンパク質からタンパク質を除去する。
【0122】
【表2】
Figure 0004711509
【0123】
【表3】
Figure 0004711509
【0124】
【表4】
Figure 0004711509
【0125】
【表5】
Figure 0004711509
【0126】
実施例5.バンコマイシンモノクローナル抗体Fabフラグメントとバンコマイシン類似体とトレーサーの間の構造的結合の関係の分析
a)材料と方法
プロテインAアフィニティ−パック(Affinity−Pak)カラムとImmunoPure Fab調製キット、DupHリン酸緩衝食塩水パック、Slide−A−Lyzer 10K MWCO透析カセット、Micro BCAタンパク質アッセイキット、およびImmunopure Mouse IgG F(ab’)フラグメントをピアス(Pierce)(ロックフォード(Rockford)、イリノイ州)より入手した。マイクロ濃縮装置をミリポア(Millipore Corp.)(ベッドフォード(Bedford)、マサチューセッツ州)より入手した。バンコマイシンをアボットラボラトリーズ(Abbott Laboratories)のケミカル・アンド・アグリカルチュラル・プロダクツ・ディビジョン(Chemical and Agricultural Products Division)(アボット・パーク(Abbott Park)、イリノイ州)より入手した。抗バンコマイシンmAbをアボット細胞培養施設(アボットパーク、イリノイ州)より入手した(Adamczyk,M.ら、Therapeutic Drug Monitoring,20:191−201(1998)参照)。(Nα,Nε−ジアセチル)KAトリペプチドをペニンシュラ・ラボラトリーズ(Peninsula Laboratories)(ベルモント(Belmont)、カリフォルニア州)より入手した。アミノカプロエート誘導(Nε−セチル)KAトリペプチドをリサーチ・ジェネティクス(Research Genetics)(ハンツビル(Huntsville)、アラバマ州)より入手した。図15に示される化合物(2)であるビオチン活性エステル(以降「化合物2」と呼ぶ)をウィルチェック(Wilchek),M.ら、「Biotin−containing reagents(ビオチン含有試薬)」に記載されるウィルチェックの方法によって調製した。Avidin−Biotin Technology(アビジン−ビオチン法)(M.ウィルチェック編著)123〜138ページ、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク、に記載されるものであり、この記載内容を本明細書に引用する。図15に示される化合物(3)である6−カルボキシフルオレセイン活性エステル(以降「化合物3」と呼ぶ)を、Adamczyk,M.ら,Bioconjugate Chem.,8:253−255(1997)に記載されるAdamczykらの方法によって調製した(この文献の記載内容を本明細書に引用する。図15に示される化合物(4)であるアクリジニウム化学ルミネセンス標識(以降「化合物4」と呼ぶ)を、マティングリ(Mattingly),P.G.,J.Biolumin.Chemilumin.6:107−114(1991)および米国特許第5,468,646号(両文献の記載内容を本明細書に引用する)に記載の一般手順に従って調製した。図16に示される化合物(5)であるデスバンコサミニルバンコマイシン(以降「化合物5」と呼ぶ)、図16に示される化合物(6)であるアグルコバンコマイシン(以降「化合物6」と呼ぶ)、および図16に示される化合物(7)であるN−アセチルバンコサミニルバンコマイシン(以降「化合物7」と呼ぶ)は、カナン(Kannan),R.ら,J.Am.Chem.Soc.,110:2946−2953(1988)(この記載内容を本明細書に引用する)に記載の方法に従って調製した。図16に示される化合物(8)である環−2デクロロバンコマイシン(以降「化合物8」と呼ぶ)をハリス(Harris),C.M.ら,J.Am.Chem.Soc.,107:6652−6658(1985)(この記載内容を本明細書に引用する)に記載の方法によって調製した。図16に示される化合物(10)である結晶分解生成物(CDP)(以降「化合物10」と呼ぶ)を、マーシャル(Marshall),F.J,J.Med.Chem.8:18−22(1965)(この記載内容を本明細書に引用する)に記載の方法に従って調製した。図16に示される化合物(12)である環−2デクロロCDP(以降「化合物12」と呼ぶ)を、ハリス(Harris),C.M.ら,J.Am.Chem.Soc.,107:6652−6658(1985)(この記載内容を本明細書に引用する)に記載の方法に従って調製した。合成に使用した他のすべての試薬は、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Co.)(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)より入手し、さらなる精製は行わずに使用した。合成した化合物は、HPLC(ウォーターズ(Waters)(ミルフォード(Millford)、マサチューセッツ州)Delta Prep 3000 Preparative Chromatography(分取クロマトグラフィー)システムに、Lambda−Max 281 UV検出器、モデル740データモジュール、および40×100mm μBondapak C18カラムを取付けた)で精製した。分析用HPLCは、同じシステムに8×100mm μBondapak C18カラムを使用して行った。HPLCカラムは、前述したように50mMギ酸アンモニウム中5〜50%CHCNの直線グラジエント(以降「溶媒A」と呼ぶ)で溶離させるか、あるいはトリフルオロ酢酸を含むCHCNの定組成水溶液(v:v:v、CHCN/HO/TFA;以降「溶媒B」と呼ぶ)で溶離させた。溶離特性は254nmで記録した。電子スプレーイオン化質量分析(ESI/MS)は、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)(ノーウォーク(Norwalk)、コネチカット州)Sciex API 100 Benchtopシステムにターボ・イオンスプレー(Turbo lonSpray)(商標)イオン源を使用して行った。タンパク質は、バイオラド・ミニゲル・システム(BioRad Minigel system)(ハーキュリーズ(Hercules)、カリフォルニア州)に12.5%ポリアクリルアミドゲル(7cm×10cm×1mm)を使用してSDS−PAGEを行い、クーマシーブルー(Coomassie Blue)で染色して分析した。表面プラズモン共鳴測定BIAcore 100(BIAcore,Inc.、ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)自動システムにCM−5 4チャネルセンサーチップを使用して行った。BIAcore装置の試薬は、HBS緩衝液(10mMのヘペス(Hepes)(pH7.4)、150mMのNaCl、3.4mMのEDTA、および0.05%の界面活性剤P−20)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を含むカップリングキット、N−エチル−N−(3−ジエチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)、および1Mのエタノールアミン塩酸塩(pH8.5)で構成され、すべてBIAcore,Inc.製である。
【0127】
b)アグルコCDPの調製
CDPである化合物10(マーシャル(Marshall),F.J.,J.Med.Chem.8:18−22(1965)を参照)(100mg、0.069mmol)を1NのHCl(3ml)中で水浴上において1時間加熱した。この混合物を周囲温度まで冷却し、固形分をろ取した。この粗生成物を飽和NaHCOに溶解し、分取HPLC(溶媒Aで20分間、流速45ml/分)で精製し、凍結乾燥(45mg、57%)した。分析用HPLC(溶媒Aで20分間、流速2ml/分):保持時間9.4分、99%。ESI MSm/z:1145(MH)。
【0128】
c)N−バンコサミニルから誘導されるバンコマイシントレーサーの調製手順
バンコマイシン(482mg、0.33mmol)の乾燥DMF(6ml)溶液に、化合物2、3または4(0.36mmol)およびトリエチルアミン(0.91ml、6.6mmol)を加えた。N雰囲気下で周囲温度において24時間撹拌した後、未精製反応混合物を分取HPLCで精製して凍結乾燥した。
【0129】
図16に示される化合物(13)(以降「化合物13」と呼ぶ)は、バンコマイシンとビオチン活性エステルとから得た(405mg、81%)。分取HPLC(溶媒Aで20分間、流速45ml/分)。分析用HPLC(溶媒Aで15分間、流速2ml/分):保持時間9.4分、99%。ESI/MS m/z:1674(MH)、1305(MH−バンコサミニルビオチン)、1143(MH−二糖−ビオチン)、554(二糖+ビオチン+Na)。
【0130】
図16に示される化合物(14)(以降「化合物14」と呼ぶ)は、バンコマイシンと6−カルボキシフルオレセイン活性エステルとから得た(20mg、11%)。分取HPLC(溶媒B、30:70:0.1;流速45ml/分)。分析用HPLC(溶媒B、30:70:0.1;流速2ml/分):保持時間4.0分、99%。ESI/MS m/z:1809(MH)、904(MH 2+)、1305(MH−バンコサミニルフルオレセイン)、1143(MH−二糖−フルオレセイン)、665(二糖+フルオレセイン)。
【0131】
図16に示される化合物(15)(以降「化合物15」と呼ぶ)は、バンコマイシンとアクリジニウム活性エステルとから得た(409mg、70%)。分取HPLC(溶媒Aで20分間、流速45ml/分)。分析用HPLC(溶媒Aで20分間、流速2ml/分): 保持時間10.4分、99%。ESI/MS m/z:2016(MH)、1305(MH−バンコサミニルアクリジニウム)、1143(MH−二糖−アクリジニウム)、710(二糖+アクリジニウム)。
【0132】
d)N−メチルロイシルから誘導されるバンコマイシントレーサーの調製手順
バンコマイシン(296mg、0.20mmol)のDMSO(10ml)溶液に、ビオチンまたは10−(3−スルホプロピル)−N−トシル−N−(3−カルボキシプロピル)アクリジニウム−9−カルボキサミド(0.20mmol)とN−ヒドロキシベンズトリアゾール(33mg、0.24mmol)とを加えた。ジシクロヘキシルカルボジイミド(206mg、1.0mmol)を加え、その混合物をNで周囲温度において72時間撹拌した。得られた未精製反応混合物を分取HPLCで精製し、凍結乾燥した。
【0133】
図16に示される化合物(16)(以降「化合物16」と呼ぶ)は、バンコマイシンとビオチンから得た(136mg、40%)。分取HPLC(溶媒Aで20分間、流速45ml/分)。分析用HPLC(溶媒Aで20分間、流速2ml/分):保持時間9.4分、99%。ESI/MS m/z:1675(MH)、1531(MH−バンコサミン)、1372(MH−二糖)、838(MH 2+)。
【0134】
図16に示される化合物(17)(以降「化合物17」と呼ぶ)は、バンコマイシンと10−(3−スルホプロピル)−N−トシル−N−(3−カルボキシプロピル)アクリジニウム−9−カルボキサミド(190mg、35%)とから得た。分取HPLC(溶媒を20分間、流速45ml/分)。分析用HPLC(溶媒Aを15分間、流速2ml/分):保持時間12.1分、99%。ESI/MS m/z:2016(MH)、1874(MH−バンコサミン)、1711(MH−二糖)、694(N−メチルロイシルアクリジニウム)。
【0135】
e)カルボキシルから誘導されるバンコマイシントレーサーの調製手順
(i)化合物9を、サンドラム(Sundram),U.N.ら,J.Org.Chem.60:1102−1103(1995)(この記載内容を本明細書に引用する)に記載の方法に従って調製した。0℃のバンコマイシン(500mg、0.35mmol)およびヘキサンジアミン塩酸塩(196mg、1.04mmol)の無水DMSO/DMF(v:v、1:1、8ml)溶液にHBTU(262mg、0.69mmol)とジイソプロピルエチルアミン(480μl、2.76mmol)を加えた。周囲温度で72時間撹拌した後、得られた未精製反応混合物を分取HPLC(溶媒B、17:83:0.0;流速40ml/分)で精製し、凍結乾燥した(228mg、43%)。分析用HPLC(溶媒B、17:83:0.0;流速2ml/分):保持時間7.9分、99%、ESI/MS m/z:1548(MH)。
【0136】
(ii)化合物9(19mg、12μmol)の乾燥DMF(0.5ml)溶液に、化合物2、3、または4(12μmol)、およびトリエチルアミン(2μl、12μmol)を加えた。N雰囲気下で周囲温度において24時間撹拌した後、得られた未精製反応混合物を分取HPLCで精製し、凍結乾燥した。
【0137】
図16に示される化合物(18)(以降「化合物18」と呼ぶ)は、化合物9とビオチン活性エステルとから得た(9mg、31%、回収した出発物質から計算)。分取HPLC(溶媒B、20:80:0.05;流速40ml/分)。分析用HPLC(溶媒B、20:80:0.05;流速2ml/分):保持時間6.1分、99%。ESI/MS m/z:1797(M+Na、1775MH)、1632(MH−バンコサミン)、1469(MH−二糖)。
【0138】
図16に示される化合物(19)(以降「化合物19」と呼ぶ)は、化合物9と6−カルボキシフルオレセイン活性エステル(4mg、26%、回収した出発物質から計算)。分取HPLC(溶媒B、27:73:0.05;流速40ml/分)。分析用HPLC(溶媒B、27:73:0.05;流速2ml/分):保持時間7.5分、99%。ESI/MS m/z:1929(M+Na)、1907(MH)、1764(MH−バンコサミン)、1600(MH−二糖)。
【0139】
図16に示される化合物(20)(以降「化合物20」と呼ぶ)は、化合物9とアクリジニウム活性エステルとから得た(3mg、35%、回収した出発物質から計算)。分取HPLC(溶媒B、27:73:0.05;流速40ml/分)。分析用HPLC(溶媒B、27:73.0.05;流速2ml/分):保持時間5.8分、99%。ESI/MS m/z:2137(M+NA)、2115(MH)、1972(MH−バンコサミン)、1810(MH−二糖)。
【0140】
f)抗バンコマイシンモノクローナル抗体の調製
カルボキシ末端アミノ酪酸リンカーを介してチログロブリンとカップリングしたバンコマイシンに対する抗バンコマイシンmAbを、製造元による手順に従ってアフィニティ−パック(Affinity−Pak)プロテインAカラムで精製した。簡潔に述べると、mAbを含む細胞培養液(25.4mg)を遠心分離(3500G、30分間)で不純物を除き、0.2μmフィルターでろ過し、その上澄をアフィニティ−パックプロテインカラムに注入し、12mlのIgG結合緩衝液で平衡化させた。IgG結合緩衝液で洗浄した後、抗体を6mlのIgG溶離緩衝液で溶離させ、1.0mlの1.5Mのトリス緩衝液(pH9.0)を含むびんに採取した。精製したIgGをPBS緩衝液(20mMのリン酸塩、30mMのNaCl、pH7.2)で4℃において12時間透析し、次にアミコン・ミクロコン(Amicon Microcon)−50マイクロ濃縮装置で約10mg/mlまで濃縮した。スミス(Smith),P.K.ら,Anal.Biochem.150:76−85(1985)に記載のマイクロBCAタンパク質アッセイによって求めたmAb濃度は12.4mg/mlであった。精製したmAbの全回収量は18.6mgであった。
【0141】
g)抗バンコマイシンFabフラグメントの調製
製造元の手順に従ってイムノピュア(ImmunoPure)Fab調製キットを使用して、抗バンコマイシンmAbの消化を行った。精製した抗バンコマイシンmAb(約12mg)を消化緩衝液(0.5ml;20mMのリン酸ナトリウム、10mMのEDTA、および30mMのシステイン、pH7.0)に加えたものに、固定化パパイン含有消化緩衝液(0.5ml)を加えて37℃のインキュベーター−シェーカーで5時間インキュベートした。パパインで消化した抗バンコマイシンmAbを次に、キットに付属の予備平衡化した固定化プロテインAカラム(2ml)に通して、未消化mAbおよびFcフラグメントを除去した。プロテインAカラムをさらなるイムノピュア結合緩衝液13mlで洗浄した。Fabフラグメントを含むカラム通過液およびカラム洗浄液を集め、PBS緩衝液で4℃において12時間透析し、セントリプレップ(Centriprep)−10濃縮装置で濃縮した。マウスIgG(Fab’)を標準物質として使用したミクロBCA法によって測定すると、抗バンコマイシンFabフラグメントの濃度は2.0mg/mlであった。精製した抗バンコマイシンFabフラグメントの特定決定をSDS−PAGEおよびLC/ESI質量分析によって行った。Fabフラグメントの重鎖および軽鎖の分子量はそれぞれ、23,986Daと24,033Daであった。すべての試験は抗バンコマイシンmAbのFabフラグメントで行い、モノクローナル抗体の二価性に関連する複雑性を解消した。
【0142】
h)バイオセンサー表面の作製
アミンカップリングにより、化合物9またはアミノカプロエート誘導(Nε−アセチル)KAトリペプチドのCM−5センサーチップへの固定化を、Adamczyk,M.ら,Bioconjugate Chem.,9:23−32(1998)(この記載内容を本明細書に引用する)に記載の方法に従って行った。簡潔に述べると、バイオセンサー表面上にHBS緩衝液を10μl/分で連続的に流し始める。0.05MのHNSと0.2MのEDACの溶液を3.5分間注入することによって、センサー表面上のカルボキシメチル化デキストランマトリックスを活性化した。化合物9またはアミノカプロエート誘導(Nε−アセチル)KAトリペプチド(10μM)とエタノールアミン(990μM;HBS緩衝液中の全アミンは1mM)の溶液を注入し(7分間)、続いて1.0Mのエタノールアミン塩酸塩を7分間注入して、残留する未反応の活性エステル基をブロックした。リガンド固定化段階を省略した以外は同一条件でブランク面を形成した。
【0143】
i)バンコマイシン類似体/抗バンコマイシンFabフラグメント結合相互作用の溶液競合分析
Adamczyk,M.ら,Bioconjugate Chem.,9:23−32(1998)(この記載内容を本明細書に引用する)に記載の手順に従って、BIAcore 2000で溶液競合試験を行った。塩酸グアニジン6M、6M、および1.5Mの各1分間のパルスを連続して注入してバイオセンサー面を再生した。抗バンコマイシンFabフラグメントのバイオセンサー面への結合の初期比率を、注入20秒後から開始して15秒間で測定した。BIAevaluation 3.0ソフトウェア(BIAcore,Inc)に組み込まれた溶液アフィニティ−モデルを使用した非線形回帰分析によってデータを評価した。
【0144】
j)バンコマイシン類似体およびトレーサーの調製
糖または環−2塩素を欠いたバンコマイシン類似体を、カナン(Kannan),R.ら,J.Am.Chem.Soc.,110:2946−2953(1988)およびハリス(Harris),C.M.ら,J.Am.Chem.Soc.,107:6652−6658(1985)に記載されるようにして調製した。ビオチンのNHS活性エステル(化合物2)、6−カルボキシフルオレセインのNHS活性エステル(化合物3)、または10−(3−スルホプロピル)−N−トシル−N−(3−カルボキシプロピル)アクリジニウム−9−カルボキサミドのNHS活性エステル(化合物4)とバンコマイシンをカップリングさせることによって、誘導N−バンコサミニル炭水化物部分を含むトレーサー化合物13〜15を収率11〜81%で調製し、分取HPLCで精製した(図14の図式1参照)。N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびN−ヒドロキシベンズトリアゾールの存在下で、遊離ビオチンまたはアクリジニウム酸をバンコマイシンとカップリングさせることによって、誘導N−メチルロイシル部分を有するバンコマイシントレーサー化合物16および17をそれぞれ収率40%と35%で調製した(図14の図式1参照)。バンコマイシンの遊離カルボキシル基のアミノアルキルリンカーを含む化合物9は、サンドラム(Sundram),U.N.ら,J.Org.Chem.,60:1102−1103(1995)に記載の方法によって調製した。前述のビオチンのNHS活性エステル(化合物2)、6−カルボキシフルオレセインのNHS活性エステル(化合物3)、または10−(3−スルホプロピル)−N−トシル−N−(3−カルボキシプロピル)アクリジニウム−9−カルボジイミドのNHS活性エステル(化合物4)の化合物9とのカップリングによって、カルボキシルおよびN−バンコサミニル炭水化物誘導バンコマイシントレーサーの混合物を得た。分取HPLCで繰返し精製を行うことによって、純粋なカルボキシル修飾トレーサー化合物18〜20を収率26〜35%で得た(図14の図式1参照)。結晶分解生成物の類似体は、バンコマイシン類似体の調製で説明した文献の手順または一般方法に従って調製した(マーシャル(Marshall)F.J. Structure Studies on Vancomycin(バンコマイシンの構造研究),J.Med.Chem.,8:18(1965)参照、この記載内容を本明細書に引用する)。バンコマイシンHCl(100mg)を水(2ml)に溶解し、1NのNaOHでpHを4.2に調整した。油浴中でこの溶液を内部温度60〜70℃まで40時間加熱した。CDP−Iをろ過によって回収し、冷水で洗浄し、乾燥させた。収率は約60%であった。
【0145】
k)固定化バンコマイシンバイオセンサー表面の作製
バイオセンサー表面の形成の最初の試みは、CM−5センサーチップの活性化カルボキシメチルデキストラン表面にバンコマイシンをバンコサミン糖部分の1級アミンによって固定化することであった。後の抗バンコマイシンFabフラグメントの飽和量の試験から、抗体フラグメントの結合能力が最小限であることが分かった。対照的に、遊離カルボキシル官能基からアミノアルキルリンカーを含む化合物9の固定化では、同一条件において、抗バンコマイシンFabフラグメントに対して比較的高い結合能力(RUmax=4000)と高い親和性を有するバイオセンサーが得られた。抗バンコマイシンFabフラグメントの固定化アミノアルキル修飾バンコマイシン表面に対するさらなる結合試験から、物質によって結合が制限され、後述の溶液結合試験での使用に好適であることが分かった。
【0146】
l)抗バンコマイシンFabフラグメントに対するバンコマイシン類似体およびトレーサーの結合親和性の測定
抗バンコマイシンFabフラグメントに対する数種類のバンコマイシン類似体およびトレーサーの結合親和性を、BIAcore 2000による溶液競合実験によって求めた。まず、既知の濃度の抗バンコマイシンFabフラグメント(0〜22nM)をアミノアルキルバンコマイシンバイオセンサー表面に注入した。各抗バンコマイシンFabフラグメント濃度における結合の初期比率を、注入20秒後に開始して145秒間で観測される結合比率を平均することによって求めた。各センサーの最初の20秒間のデータは、注入開始時の試料の分散の影響のため省いた。初期結合比率対抗バンコマイシンFabフラグメント濃度のプロットを4−パラメータロジスティック(BIAevaluation 3.0の一般モデル)を使用してフィッティングにより、検量線を得た。これらの測定の過程で数種類の検量線が得られ、すべては実験誤差範囲内で同一であった。次に、固定濃度の抗バンコマイシンFabフラグメント(20nM)を12種類の濃度の各バンコマイシン類似体またはトレーサーと混合し、平衡に到達させた。これらの平衡混合物をアミノアルキルバンコマイシンバイオセンサー表面にそれぞれ注入して、残留する遊離の抗バンコマイシンFabフラグメント濃度を、前述のバイオセンサー表面への初期結合比率の測定によって定量した。遊離の抗バンコマイシンFabフラグメント対添加した類似体またはトレーサーの全濃度のプロットから競合曲線が得られる。図17は、この実施例に従って得られる代表的な競合曲線を示している。データ点は、可溶性類似体またはトレーサーの所要の濃度における平衡溶液中の遊離の抗バンコマイシンFabフラグメントの実験的に求めた濃度を表している。この曲線は下記の式1(BIAevaluationソフトフェアの溶液アフィニティ−モデル):
【0147】
【数1】
Figure 0004711509
を使用した非線形最適データを表しており、式中Fabは平衡溶液中の遊離のバンコマイシンFabフラグメント濃度であり、Fabτは溶液中の抗バンコマイシンFabフラグメントの全濃度(20nM)であり、Aは加えたバンコマイシン類似体またはトレーサーの全濃度であり、Kは溶液中のバンコマイシン類似体またはトレーサーの抗バンコマイシンFabフラグメントとの結合における平衡解離定数である。
【0148】
平衡解離定数(K)の変化によって求めたバンコマイシン類似体と抗バンコマイシン Fabフラグメントの間の相互作用における構造と結合の関係を以下の表4に示す。
【0149】
【表6】
Figure 0004711509
【0150】
表4、バンコマイシンとN−アセチルバンコサミニル誘導類似体(化合物7)が、BIAcore装置で溶液競合試験で正確な値が得られる範囲を超えたK値を有し、非常に強く結合することを示している。バンコマイシンの遊離カルボキシル官能基上にアミノアルキルリンカーを導入することで得られる化合物9は、固定化バンコマイシンバイオセンサー表面の作製に使用したが、溶液中での抗バンコマイシンFabフラグメントの認識への影響が最小限である。環−2の塩素原子をバンコマイシンから除去すると、抗体フラグメントによる結合認識が有意に低下する(上記表4の化合物8の結果を参照)。バンコマイシンの炭水化物環の一方または両方が酸加水分解によって開裂すると、それぞれ化合物5および6が得られ、各単糖が失われることで抗体フラグメントによる結合認識がさらに連続して低下する結果が得られる。抗バンコマイシンFabフラグメントとバンコマイシン分解生成物の結合相互作用は天然の抗生物質の結合相互作用と比べると非常に弱かった。結晶分解生成物(化合物10)はKが488±34nMで結合する。2−位の塩素原子を除去することによって、抗バンコマイシンFabフラグメントによる結合認識が有意に低下し、炭化水素環を完全に分解して化合物11を得ると、抗バンコマイシンFabフラグメントとの結合相互作用が弱すぎるため溶液競合試験で求めることができない。
【0151】
平衡解離定数(K)の変化で測定した、バンコマイシントレーサーと抗バンコマイシンFabフラグメントの間の結合相互作用における構造と結合の関係を表5にまとめる。
【0152】
【表7】
Figure 0004711509
【0153】
表5は、結合相互作用がトレーサー上のラベルによって変動していることが分かる。しかし、同じ標識を含むN−メチルロイシル−(化合物16および17)ならびにカルボキシル−HDAから誘導されるトレーサー(化合物18〜20)は同様の親和性で抗体フラグメントと結合する。対照的に、同等の量の標識を含むN−バンコサミニルから誘導されるトレーサー(化合物13〜15)は抗体フラグメントとの結合が実質的に弱くなる。
【0154】
m)抗バンコマイシンFabフラグメント認識におけるバンコマイシン/KAトリペプチド結合相互作用の評価
抗バンコマイシンFabフラグメント認識に関して重要であるバンコマイシンのトポロジーをさらに評価するため、抗生物質のペプチド結合ポケットに配置する残基の役割を調べた(図18参照)。これらの研究では、アミンカップリングによって、アミノ末端からアミノカプロエートリンカーを含む(Nε−アセチル)KAトリペプチドをCM−5センサーチップの活性化カルボキシメチルデキストラン表面に固定化した。バンコマイシン(0.5μM)がこの表面に結合する(図19参照)。しかし、抗生物質の質量が小さいため、装置の応答が比較的小さい(平衡時で約50Ru)。対照的に、99%以上のバンコマイシンが抗体フラグメントによって結合しているバンコマイシン(0.5μM)/抗バンコマイシンFabフラグメント(1μM)複合体を注入すると、複合体となって質量が増加したために応答が約10倍に増加する(図19参照)。抗バンコマイシンFabフラグメント単独では、固定化トリペプチド表面に対して親和性を示さない(図19)。バンコマイシンのポケットと結合するペプチドと抗体が互いに排他的であることをさらに確認するために、バンコマイシン/抗バンコマイシンFabフラグメント溶液の結合相互作用を、(Nα,Nε−ジアセチル)KAトリペプチド(500μM)の存在下で上記条件において再度調べた。(Nα,Nε−ジアセチル)KAトリペプチドの存在下、溶液中のバンコマイシン/抗バンコマイシンFabフラグメント結合相互作用について得られたK値は、トリペプチドの非存在下(0.2nM以下)で得られた値と同一であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 バンコマイシンの構造を示している。
【図2】 バンコマイシンの主代謝物の1つであるCDP−Iの構造を示している。
【図3】 バンコマイシンのもう1つの主代謝物であるCDP−IIの構造を示している。
【図4a】 バンコマイシンと担体タンパク質のカップリングのための代表的合成経路を示している。
【図4b】 バンコマイシンと担体タンパク質のカップリングのための代表的合成経路を示している。
【図4c】 バンコマイシンと担体タンパク質のカップリングのための代表的合成経路を示している。
【図5a】 本発明の方法によるバンコマイシンとチログロブリンのカップリングのための合成経路を示している。
【図5b】 本発明の方法によるバンコマイシンとチログロブリンのカップリングのための合成経路を示している。
【図5c】 本発明の方法によるバンコマイシンとチログロブリンのカップリングのための合成経路を示している。
【図5d】 本発明の方法によるバンコマイシンとチログロブリンのカップリングのための合成経路を示している。
【図6】 本発明の免疫原の構造を示している。
【図7】 本発明の最も好ましい免疫原の構造を示している。
【図8】 本発明の標識試薬の構造を示している。
【図9】 本発明の最も好ましい標識試薬の一般構造を示している。
【図10a】 本発明の方法によるバンコマイシンとフルオレセインのカップリングのための合成経路を示している。
【図10b】 本発明の方法によるバンコマイシンとフルオレセインのカップリングのための合成経路を示している。
【図11】 現行の市販用アッセイと、本発明の最も好ましい抗体を使用する本発明のアッセイとの相関結果を示している。
【図12】 本発明のアッセイとHPLCの相関を示している。
【図13】 本発明の蛍光偏光イムノアッセイの結果を示している。
【図14a】 N−バンコサミニルから誘導されるトレーサーの合成の化学的スキームを示している。
【図14b】 N−メチルロイシルから誘導されるトレーサーの合成の化学的スキームを示している。
【図14c】 カルボキシル−HDAから誘導されるトレーサーの合成の化学的スキームを示している。
【図15】 ビオチン活性エステル(2)、6−カルボキシフルオレセイン活性エステル(3)、およびアクリジニウム化学ルミネセンス標識(4)を示している。
【図16a】 バンコマイシン類似体およびトレーサーの構造を示している。
【図16b】 バンコマイシン類似体およびトレーサーの構造を示している。
【図17】 環−2デクロロバンコマイシン(●で示される)およびビオチン標識カルボキシル−HDAバンコマイシントレーサー(○で示される)の平衡解離定数を求めるための溶液競合曲線を示している。
【図18】 バンコマイシンと細胞壁ペプチド類似体(Nαε−ジアセチル)KAAの間の結合相互作用のモデルを示している。点線は水素結合を表す。
【図19】 バンコマイシン、抗バンコマイシンFabフラグメント、およびバンコマイシン/抗バンコマイシンFabフラグメント複合体の、アミノカプロエート誘導(Nε−アセチル)KAAトリペプチドバイオセンサー表面への結合を示している。
【図20】 本発明の抗体が結合するバンコマイシンの部位を示している。特に、本発明の抗体は、黒、赤、および緑で示される領域と結合する。しかし、本発明の抗体は青で示されるペプチド結合領域とは結合しない。
【図21】 化学ルミネセンストレーサーであるバンコマイシニル−N−メチルロイシルアクリジニウムを示している。

Claims (13)

  1. 試験試料中のバンコマイシンの定量方法であって、該方法が、
    (a)該試験試料を、
    (i)バンコマイシンに対して特異的に結合することができ、式:
    Figure 0004711509
    (式中、Pは免疫原性担体物質であり、Xは0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が連続して直接結合することができ、該配列は−O−O結合を含むことはできず、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる)の免疫原を使用して生成される抗体を含む抗体試薬、
    および(ii)式:
    Figure 0004711509
    (式中、Qは検出可能部分であり、Xは0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が連続して直接結合することができ、該配列は−O−O結合を含むことはできず、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる)の標識試薬
    と接触させて反応溶液を形成するステップと、
    (b)該試験試料中のバンコマイシン量の関数として、該抗体と結合するか結合していないかのいずれかの該反応溶液中の該標識試薬の量を測定するステップを含み、
    抗体のバンコマイシンへの結合を妨害しないポリペプチドで安定化したバンコマイシンを含有する水溶液である安定性キャリブレータを使用することを特徴とする方法。
  2. 前記検出可能部分が、酵素、発色団、蛍光分子、化学ルミネセンス分子、りん光分子、および発光分子からなる群より選択される請求項1に記載の方法。
  3. 前記免疫原性担体物質が、ウシ血清アルブミン(BSA)、キーホールリンペットヘモシアニン、およびチログロブリンからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
  4. 記標識試薬の前記検出可能部分が蛍光分子であって、試験試料中のバンコマイシンの定量が蛍光偏光イムノアッセイにより行われる請求項1に記載の方法。
  5. ステップ(b)の測定が、(a)蛍光偏光応答を得るために前記反応溶液に偏光面を通過させ、(b)前記試験試料中のバンコマイシン量の関数として前記反応溶液の該蛍光偏光応答を検出することによって行われる請求項4に記載の方法。
  6. 前記蛍光分子が、アミノメチルフルオレセイン、アミノフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、チオ尿素フルオレセイン、およびジクロロトリアジニルアミノフルオレセインからなる群より選択される請求項5に記載の方法。
  7. 前記標識試薬が
    Figure 0004711509
    であり、前記抗体が、式
    Figure 0004711509
    の免疫原を用いて生成される請求項6に記載の方法。
  8. 前記抗体がA.T.C.C.HB 11834と命名されたハイブリドーマ細胞株によって分泌される請求項7に記載の方法。
  9. 試験試料中のバンコマイシンを定量するための試験キットであって、該試験キットが、
    (a)試験試料中のバンコマイシンに対して特異的に結合することができる抗体を含む抗体試薬であって、該抗体が、式:
    Figure 0004711509
    (式中、Pは免疫原性担体物質であり、Xは0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が連続して直接結合することができ、該配列は−O−O結合を含むことはできず、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる)を使用して生成される抗体試薬と、
    (b)該抗体の該バンコマイシンに対する結合を置換することができる標識試薬と、
    (c)ポリペプチドで安定化したバンコマイシン分子を含有する水溶液を含み、該ポリペプチドは抗体の該バンコマイシン分子に対する結合を妨害しない安定性キャリブレータと、
    を含む試験キット。
  10. 前記標識試薬が式:
    Figure 0004711509
    (式中、Qは検出可能部分であり、Xは0〜50個の炭素原子およびヘテロ原子を含み、10個以下のヘテロ原子を含む連結部分であって、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖、あるいは環状部分として配列し、但し、2つ以下のヘテロ原子が連続して直接結合することができ、該配列は−O−O結合を含むことはできず、環状部分は6個以下の環原子を含み、分岐は炭素原子上でのみ起こりうる)である請求項に記載のキット。
  11. 前記免疫原性担体物質が、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびチログロブリンからなる群より選択される請求項に記載の試験キット。
  12. 前記免疫原性担体がチログロブリンである請求項に記載の試験キット。
  13. 前記抗体がA.T.C.C.HB 11834と命名されたハイブリドーマ細胞株から分泌される請求項に記載の試験キット。
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