発明の属する技術分野
この発明は、状態量表示装置および状態量表示方法等に関し、特に、生体など観測対象の状態に対応したデータを処理して表示する技術に関する。
従来の技術
病体の監視や、薬物の投与効果の評価に心電図が用いられる。たとえば、循環器系の病状や、実験動物に評価薬物を投与したときに循環器系に与える影響を、心電図を用いて監視することができる。この場合、心電図波形等が心電図モニタ(図示せず)に表示されており、観察者は心電図モニタを見ることで、心機能の変化や、薬物投与による心機能の変化を知ることができる。
しかしながら、上記のような従来の心電図モニタには、次のような問題点があった。たとえば、病体の監視中に被監視体が動くと心電図の変化としてあらわれるが、このような変化は心機能の異常を調べる上ではノイズである。しかしながら、心電図の変化がノイズによるものか否かの判断は容易ではないことから、従来の心電図モニタにおいては、ノイズによる異常であるにもかかわらず心機能の異常と判断して警告を発するようなことも多かった。これでは、心機能の異常や変化をリアルタイムで正確に知ることができない。
また、心機能を評価するために、心電図から抽出した認識値(たとえば、心筋の収縮周期)を表示することが行なわれていたが、従来は、現時点の認識値を表示するに留まっていた。しかし、心機能の異常や変化を判断するには、現時点の認識値だけでなく、認識値が時間の経過と共にどのように変化してきたかを把握しなければならない。このため、従来は、心機能の異常や変化をリアルタイムで正確に知ることができなかった。
また、たとえば、心電図モニタを用いて薬物投与の効果などを評価する実験を行なう場合、評価対象となる薬物とともに当該評価薬物の効果を知るための反応性薬物を併せて投与することがある。しかし、これらの薬物の投与タイミングの管理や、投与の記録、投与の効果の記録などは、ストップウォッチや実験ノートを用いて行なわれていた。このため、複数の実験動物に対し同時に実験を行なうような場合や、手順の複雑な実験を行なうような場合には、人為ミスが発生しがちであった。すなわち、実験動物の状態を含め実験の状況をリアルタイムで把握することが困難であった。
この発明は、このような従来の心電図モニタ等の問題点を解消し、観察対象の状態等をリアルタイムで容易に把握することのできる状態量表示装置および状態量表示方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段、発明の作用および効果
請求項1の状態量表示装置、請求項4のプログラムを記録したプログラム記録媒体および請求項21の状態量表示方法においては、実質的にリアルタイムで、状態量データのうち所定の着目部分を判別するとともに時間軸を有するグラフを用いて当該着目部分に対応する表示を他の部分に対応する表示と異なる態様で行なうよう制御することを特徴とする。
したがって、生体など観察対象の状態の異常や変化に関係するまたは関係しない所定の着目部分を、リアルタイムで容易に視覚的に確認することができる。このため、観察対象の状態の異常や変化等をリアルタイムで容易に把握することができる。
請求項5のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、着目部分が突発的異常部分であることを特徴とする。したがって、状態量データのうち突発的異常部分を、リアルタイムで容易に視覚的に確認することができる。
請求項6のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、生体の状態に関連した表示を行なうよう制御する処理は、状態量データに基づいて当該状態量データの特徴を表わす特徴量データを抽出するとともに抽出した特徴量データに基づいてノイズによる突発的異常部分とノイズによらない突発的異常部分と正常部分とを判別するとともに当該各部分に対応する表示を相互に異なる態様で行なうよう制御すること、を特徴とする。したがって、ノイズによる突発的異常部分とノイズによらない突発的異常部分と正常部分とを、リアルタイムで容易に視覚的に識別することができる。
請求項2の状態量表示装置、請求項7のプログラムを記録したプログラム記録媒体および請求項22の状態量表示方法においては、実質的にリアルタイムで、状態量データに基づいて当該状態量データの特徴を表わす特徴量データを抽出するとともに時間軸を有するグラフを用いて当該特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御することを特徴とする。
したがって、リアルタイムで状態量データの特徴を容易に視覚的に確認することができる。このため、生体など観察対象の状態の異常や変化等をリアルタイムで容易に把握することができる。
請求項8のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御する処理は、特徴量データのうち突発的異常部分を判別して除去するとともに当該突発的異常部分の除去された特徴量データを表示するよう制御することを特徴とする。
したがって、突発的異常部分の除去された特徴量データのみを表示することで、リアルタイムで状態量データの特徴をさらに正確に視覚的に確認することができる。
請求項9のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御する処理は、異なったスケールの時間軸を有する複数のグラフを、同一表示画面に実質的に同時に表示するよう制御することを特徴とする。
したがって、特徴量データの種類や目的に応じて、それぞれ最も適した時間軸のスケールを用いてグラフ表示することができる。このため、状態量データの特徴をリアルタイムでさらに正確に視覚的に確認することができる。
請求項10のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、生体の状態に関連した表示を行なうよう制御する処理は、生体に評価の対象となる評価薬物とともに評価薬物の効果を確認するための反応性薬物を投与した場合の反応を状態量データの変化としてとらえて表示する処理であって、特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御する処理は、評価薬物を投与した時点を含むグラフと、反応性薬物を投与した時点を含むグラフであって評価薬物を投与した時点を含むグラフの時間軸より拡大された時間軸を有するグラフとを、同一表示画面に実質的に同時に表示するよう制御する処理であることを特徴とする。
したがって、比較的長い時間にわたって反応が持続する評価薬物の生体におよぼす影響と、比較的短い時間で反応がなくなる反応性薬物による影響とを、それぞれ最も適した時間軸のスケールを用いてグラフ表示することができる。このため、たとえば、反応性薬物を次に投与するタイミング等をリアルタイムで容易に決定することができる。
請求項3の状態量表示装置、請求項11のプログラムを記録したプログラム記録媒体および請求項23の状態量表示方法においては、実質的にリアルタイムで、状態量データに関連する量または当該状態量データに関連する量を得るための条件に関する表示を行なうよう制御することを特徴とする。
したがって、リアルタイムで状態量データに関連する量や当該関連する量を得るための条件を容易に確認することができる。このため、たとえば、実験動物の状態を含め実験の状況をリアルタイムで容易に把握することができる。
請求項12のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、状態量データに関連する量に関する表示を行なうよう制御する処理は、状態量データに基づいて当該状態量データの特徴を表わす特徴量データを抽出するとともに所定期間内における特徴量データの統計量を算出し、当該統計量に関連した表示を行なうよう制御することを特徴とする。
したがって、特徴量データのみならず当該特徴量データの統計量に関連した表示をもリアルタイムで行なうことで、状態量データの特徴を統計的観点から容易に確認することができる。このため、生体など観察対象の状態の異常や変化等をリアルタイムでさらに容易に把握することができる。
請求項13のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、統計量は、所定期間内における特徴量データの最大値および最小値のうちいずれか一方または双方であることを特徴とする。
したがって、所定期間内における特徴量データの変化の特徴をリアルタイムで容易に確認することができる。
請求項14のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、統計量に関連した表示を行なうよう制御する処理は、統計量を過去の履歴を含めて表示するよう制御することを特徴とする。
したがって、統計量を過去の履歴を含めて知ることで、生体など観察対象の状態の異常や変化等をリアルタイムでさらに正確に把握することができる。
請求項15のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、所定期間の始期を、生体に対する外部からの働きかけを行なった時に設定したことを特徴とする。
したがって、生体に対する外部からの働きかけを行なった時を起点とする統計処理を行なうことで、当該働きかけの影響を統計的観点から容易に確認することができる。このため、生体など観察対象に対する当該働きかけの影響をリアルタイムで容易に把握することができる。
請求項16のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、生体に対する外部からの働きかけは、評価の対象となる評価薬物を生体に投与する行為であることを特徴とする。
したがって、生体に対する評価薬物の投与時を起点とする統計処理を行なうことで、評価薬物投与の影響を統計的観点から容易に確認することができる。このため、生体など観察対象に対する評価薬物投与の影響をリアルタイムで容易に把握することができる。
請求項17のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、生体に対する外部からの働きかけは、評価の対象となる評価薬物の効果を確認するための反応性薬物を生体に投与する行為であることを特徴とする。
したがって、生体に対する反応性薬物の投与時を起点とする統計処理を行なうことで、反応性薬物の投与により顕在化した評価薬物の効果を統計的観点からさらに容易に確認することができる。このため、評価薬物の効果をリアルタイムでさらに容易に把握することができる。
請求項18のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、所定期間の終期を、予め定められた時点に設定したことを特徴とする。
したがって、反応性薬物を投与してから予め定められた時点までの期間を単位として統計処理を行なうことで、反応性薬物を投与するごとに自動的に統計処理を行なうことができる。このため、次々と実施される反応性薬物投与に合わせて評価薬物の効果をリアルタイムで容易に把握することができる。
請求項19のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、所定期間を決定する際、当該所定期間の始期および終期のうちいずれか一方または双方を実質的にリアルタイムで任意に設定し得るようにしたことを特徴とする。
したがって、特徴量データの統計量を算出する期間をリアルタイムで任意に設定することができる。たとえば、特徴量データの推移を見ながら適当と思われる時点でリアルタイムで統計処理を開始させたり終了させたりすることができる。このため、生体の反応に応じて有為な統計処理をリアルタイムで行なうことができる。
請求項20のプログラムを記録したプログラム記録媒体においては、生体の状態に対応した状態量データが、生体の心臓の状態に対応した心電図データであることを特徴とする。
したがって、速やかな処理を要求される循環器系の症状判定や、実験動物に評価薬物を投与したときに循環器系に与える影響の確認を、リアルタイムで容易かつ正確に行なうことができる。
発明の実施の形態
[1.装置の構成]
図1に、この発明の一実施形態による状態量表示装置70の構成を示す。状態量表示装置70は、状態量データ獲得手段2、制御手段4および表示手段6を備えている。状態量データ獲得手段2は、状態量データを獲得する。状態量データは、観測対象である生体10の状態に対応しており、時間の関数として表わされる。
制御手段4は、状態量データ獲得手段2により獲得された状態量データに基づいて、表示手段6に生体10の状態に関連した表示を行なうよう制御する。制御手段4について、さらに詳しく説明する。
制御手段4は、実質的にリアルタイムで、状態量データのうち所定の着目部分を判別するとともに時間軸を有するグラフを用いて当該着目部分に対応する表示を他の部分に対応する表示と異なる態様で行なうよう制御する。この実施形態においては、上記着目部分は、突発的異常部分である。
さらに、詳しく言えば、生体10の状態に関連した表示を行なうよう制御する処理は、状態量データに基づいて当該状態量データの特徴を表わす特徴量データを抽出するとともに抽出した特徴量データに基づいてノイズによる突発的異常部分とノイズによらない突発的異常部分と正常部分とを判別するとともに当該各部分に対応する表示を相互に異なる態様で行なうよう制御する処理である。
また、制御手段4は、実質的にリアルタイムで、状態量データに基づいて当該状態量データの特徴を表わす特徴量データを抽出するとともに時間軸を有するグラフを用いて当該特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御する。
さらに、詳しく言えば、特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御する処理は、特徴量データのうち突発的異常部分を判別して除去するとともに当該突発的異常部分の除去された特徴量データを表示するよう制御する処理である。
さらに、詳しく言えば、特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御する処理は、異なったスケールの時間軸を有する複数のグラフを、同一表示画面に実質的に同時に表示するよう制御する処理である。
なお、この実施形態においては、生体10の状態に関連した表示を行なうよう制御する処理は、生体10に評価の対象となる評価薬物(図示せず)とともに評価薬物の効果を確認するための反応性薬物(図示せず)を投与した場合の反応を状態量データの変化としてとらえて表示する処理であり、特徴量データを過去の履歴を含めて表示するよう制御する処理は、評価薬物を投与した時点を含むグラフと、反応性薬物を投与した時点を含むグラフであって評価薬物を投与した時点を含むグラフの時間軸より拡大された時間軸を有するグラフとを、同一表示画面に実質的に同時に表示するよう制御する処理である。
また、制御手段4は、実質的にリアルタイムで、状態量データに関連する量または当該状態量データに関連する量を得るための条件に関する表示を行なうよう制御する。
さらに、詳しく言えば、状態量データに関連する量に関する表示を行なうよう制御する処理は、状態量データに基づいて当該状態量データの特徴を表わす特徴量データを抽出するとともに所定期間内における特徴量データの統計量を算出し、当該統計量に関連した表示を行なうよう制御する処理である。
この実施形態においては、統計量は、所定期間内における特徴量データの最大値および最小値のうちいずれか一方または双方である。また、統計量に関連した表示を行なうよう制御する処理は、統計量を過去の履歴を含めて表示するよう制御する処理である。
また、この実施形態においては、所定期間の始期を、生体10に対する外部からの働きかけを行なった時点に設定するようにしている。さらに詳しく言えば、生体10に対する外部からの働きかけは、評価の対象となる評価薬物を生体10に投与する行為、または、評価の対象となる評価薬物の効果を確認するための反応性薬物を生体10に投与する行為である。なお、所定期間の始期を、実質的にリアルタイムで任意に設定することもできる。
また、この実施形態においては、所定期間の終期を、予め定められた時点に設定するようにしている。なお、所定期間の終期を、実質的にリアルタイムで任意に設定することもできる。
なお、この実施形態においては、生体10の状態に対応した状態量データは、生体の心臓の状態に対応した心電図データである。
[2.ハードウェア構成]
図2は、図1に示す状態量表示装置70の各機能をCPU74を用いて実現した場合のハードウェア構成の一例を示す図面である。状態量表示装置70は、バス72により結合された制御部であるCPU74、一時記憶装置であるRAM(ランダムアクセスメモリ)76、記録媒体駆動装置であるハードディスクドライブ78、フレキシブルディスクドライブ80およびCD−ROMドライブ88、表示手段6であるディスプレイ82、入力装置であるキーボード84、マウス86およびフットスイッチ104、心電図センサ102を備えたコンピュータである。
上述の表示制御のためのプログラムは、たとえばCD−ROMドライブ88に挿入された記録媒体であるCD−ROM94やフレキシブルディスクドライブ80に挿入された記録媒体であるフレキシブルディスク92から、ハードディスクドライブ78に内蔵された記録媒体であるハードディスク90にインストールされ、さらにRAM76にロードされる。
また、処理過程におけるデータや処理後のデータは、いったんRAM76に書込まれた後、フレキシブルディスク92および/またはハードディスク90に記録される。CD−ROM94が書込み可能な場合には、該データがCD−ROM94に記録されることもある。
すなわち、RAM76、CD−ROM94、フレキシブルディスク92および/またはハードディスク90が、上記表示制御のためのプログラムを記録したコンピュータ可読のプログラム記録媒体および/またはデータを記録したコンピュータ可読のデータ記録媒体に該当する。
ハードディスク90にインストールされたプログラムは、RAM76にロードされ、CPU74がこれを実行する。ディスプレイ82には、プログラムにしたがって、処理結果などが表示される。
キーボード84やマウス86を用いて、各種命令等を入力する。フットスイッチ104を用いて、評価薬物を生体10である実験動物106に投与した時点や反応性薬物を実験動物106に投与した時点を入力することができる。
実験動物106には心電図センサ102が取付けられており、入力インタフェース100を介して、状態量データである心電図の原波形データが取込まれる。入力インタフェース100は、心電計アンプ、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ、ドライバ等を備えている。心電図センサ102および入力インタフェース100が、図1の状態量データ獲得手段2に該当する。
記録媒体に記録されたプログラム等をコンピュータを用いて実行する手順は、とくに限定されるものではない。たとえば、上述のように、記録媒体であるCD−ROM94やフレキシブルディスク92から、別の記録媒体であるハードディスク90にプログラム等をインストールしたのち実行するようにしてもよいし、CD−ROM94やフレキシブルディスク92に記録されたプログラム等を、CD−ROMドライブ88やフレキシブルディスクドライブ80から直接実行するようにしてもよい。
なお、コンピュータによって実行可能なプログラムやデータとしては、そのままインストールするだけで直接実行できるものはもちろん、一旦他の形態等に変換して実行するもの(たとえば、データ圧縮されているものを解凍して実行するもの)、さらには、他のモジュール部分と組合わせて実行するものも含む。
また、上述の実施形態においては、プログラムを記録したコンピュータ可読のプログラム記録媒体またはデータを記録したコンピュータ可読のデータ記録媒体として、RAM76、CD−ROM94、フレキシブルディスク92および/またはハードディスク90を用いたが、該記録媒体はこれらに限定されるものではない。
上記以外に、たとえば、DVD(デジタルビデオディスク)、MOディスク(光磁気記録ディスク)、MT(磁気記録テープ)などの他、有線または無線の通信手段を介して上記プログラムやデータの受信および/または送信を行なう場合には、搬送波や通信ケーブルなども該記録媒体に該当する。
[3.ソフトウェア構成]
図3は、図1に示す状態量表示装置70の各機能をCPU74を用いて実現した場合(図2参照)のソフトウェア構成の一例を示す図面である。この実施形態においては、プログラム(ソフトウェア)を複数のモジュールにより構成し、各モジュールをマルチタスク制御するようにしている。
また、各モジュールは測定パラメータ(たとえば、心電図、血圧、血流、左心室内圧、呼吸量など)ごとにオブジェクト化され、かつ、各測定パラメータは複数種の実験動物(たとえば、犬、猿、ラットなど)に対応し得るよう構成されている。
したがって、CPU74は、各測定パラメータごとの測定条件等の情報を記憶している測定パラメータデータベース(図示せず)と、各動物ごとの測定条件等の情報を記憶している動物データベース(図示せず)とを参照することで、複数種の実験動物について複数種の測定パラメータを同時に測定できる。ただし、説明の便宜のため、この実施形態においては1体の実験動物106について一つの測定パラメータ(心電図)を測定する場合を例に説明する。
上記モジュールとして、認識モジュール10、原波形保存モジュール12、原波形表示モジュール14、投与実験用認識データ管理・表示モジュール16、反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18、ディジタルデータ表示モジュール20、認識データ保存モジュール22がある。これら各モジュールが、図1の制御手段4に対応する。
認識モジュール10は、心電図の原波形データから特徴量データである認識値データを抽出するとともに、抽出した認識値データに基づいて、ノイズによる突発的異常部分とノイズによらない突発的異常部分と正常部分とを判別して異常判定データを得る。
原波形保存モジュール12は、原波形データ、ならびに、認識モジュール10から得られた認識値データおよび異常判定データに基づいて、ハードディスク90に原波形を保存する。
原波形表示モジュール14は、原波形データ、認識値データおよび異常判定データに基づいて、ディスプレイ82に原波形をグラフ表示する(図11、原波形表示用ウィンドウ32参照)。
投与実験用認識データ管理・表示モジュール16は、認識値データおよび異常判定データに基づいて、ディスプレイ82に投与実験用認識データをグラフ表示する(図11、投与実験用認識値表示ウィンドウ28参照)。
反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18は、認識値データおよび異常判定データに基づいて、ディスプレイ82に反応性実験用認識データをグラフ表示する(図11、反応性実験用認識値表示ウィンドウ30参照)。
ディジタルデータ表示モジュール20は、認識値データおよび異常判定データに基づいて、ディスプレイ82にディジタルデータを表示する(図11、ディジタルデータ表示ウィンドウ34参照)。
認識データ保存モジュール22は、認識値データおよび異常判定データに基づいて、ハードディスク90に認識値データを保存する。
図4ないし図10は、上述の認識モジュール10、原波形保存モジュール12、原波形表示モジュール14、投与実験用認識データ管理・表示モジュール16、反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18、ディジタルデータ表示モジュール20、認識データ保存モジュール22の処理内容を、それぞれ表わすフローチャートである。
図11は、ディスプレイ82の表示画面24を示す図面である。表示画面24は、原波形表示用ウィンドウ32、投与実験用認識値表示ウィンドウ28、反応性実験用認識値表示ウィンドウ30、ディジタルデータ表示ウィンドウ34を備えている。
図12は、原波形表示用ウィンドウ32の一部を拡大して表わした図面である。図13は、図12に示す原波形表示用ウィンドウ32の一部を、さらに拡大して表わした図面である。図14は、ディジタルデータ表示ウィンドウ34を拡大して表わした図面である。図15は、投与実験用認識値表示ウィンドウ28の一部を拡大して表わした図面である。図16は、反応性実験用認識値表示ウィンドウ30の一部を拡大して表わした図面である。
まず、図4に基づいて、認識モジュール10における処理を説明する。CPU74は、心電図センサ102からの信号を、入力インターフェース100を介して取込む(ステップS1)。CPU74は、1波形分のデータがすべて入力されるまで信号の取込みを行なう(ステップS2)。なお、ここで1波形分のデータとは、図13に示すように、P波始点Pbから、次のP波始点Pbまでのデータをいう。
1波形分のデータが入力されると、CPU74は、取込んだ1波形分のデータに関する波形認識を行なう(ステップS3)。ステップS3において、図13に示すように、P波始点Pb、P波頂点Pa、Q波始点Q、R波頂点R、S波頂点S、T波頂点Ta、T波終点Teが認識される。これら各点の値(電圧値)および各点の観測時刻(実験開始からの経過時間)が、各認識値データに該当する。
この実施形態においては、CPU74は、Q波始点QとT波終点Teとの時間間隔QT、P波始点PbとR波頂点Rとの時間間隔PR、2つの連続する波形のR波頂点Rの時間間隔RRを、それぞれ算出するが、これら時間間隔も認識値データに該当する。
つぎに、CPU74は、得られた各認識値データについて、異常性判定を行なう(ステップS4)。
異常性判定の方法は特に限定されるものではないが、1波形分についてノイズ異常(たとえば体動に基づく波形の崩れ等、ノイズによる突発的異常、)であるか、波形異常(たとえば心筋の期外収縮等、ノイズによらない突発的異常)であるか、正常であるかを判断するようにすればよい。異常性判定の結果データを、異常判定データという。
CPU74は、前2ステップで得られた1波形分の各認識値データおよび異常判定データを出力し(ステップS5)、ステップS1に戻って、同様の処理を繰り返す。
つぎに、図5に基づいて、原波形保存モジュール12における処理を説明する。CPU74は、原波形保存命令イベントを待っており(ステップS11)、原波形保存命令イベントが発生すると、心電図の原波形データを1波形分取込む(ステップS12)。この実施形態においては、表示画面24(図11参照)の保存ボタン26がクリックされると原波形保存命令イベントが発生するよう構成されている。
CPU74は、取込まれた1波形分の原波形データを、ハードディスク90に設定された現在測定中の測定チャンネル保存領域(この実施形態においては、心電図保存領域)内の原波形保存領域の今回の命令回数(今回の波形分)に対応する保存部分(図示せず)に保存する。
つぎに、CPU74は、前述の認識モジュール10の出力(図4、ステップS5参照)である認識値データおよび異常判定データ(ステップS12で取込んだ1波形分の原波形データに対応する認識値データおよび異常判定データ)を取込み(ステップS14)、ハードディスク90に設定された心電図保存領域内の原波形用認識値保存領域の今回の波形分に対応する保存部分(図示せず)に保存する。したがって、ステップS13において保存された原波形データと、当該原波形データに対応する認識値データおよび異常判定データとが、対応づけて保存される。
CPU74は、設定された原波形保存時間が経過したか否かを監視しており(ステップS16)、まだ経過していない場合は、ステップS12に戻って次の1波形分の原波形データの保存処理を行なう。一方、設定された原波形保存時間が経過すると、ステップS11に戻って、次の原波形保存命令イベントの発生を待つ。
なお、この実施形態においては、原波形保存時間を予め設定するよう構成したが、原波形保存時間の設定方法は特に限定されるものではないが、たとえば、原波形保存命令の実行中に再度保存ボタンをクリックすることで原波形保存命令を終了させるよう構成することもできる。
このように、原波形保存命令イベントを待って原波形データを保存するよう構成することで、必要な原波形データのみを選択的に保存することが可能となる。したがって、記憶容量に余裕がないような場合には、好都合である。なお、記憶容量に余裕があるような場合には、実験中の原波形データすべてを保存するようにしてもよい。
つぎに、図6A、図6Bに基づいて、原波形表示モジュール14における処理を説明する。図6Aに示すように、CPU74は、まず、原波形表示用ウィンドウ32(図11参照)を作成する(ステップS21)。
原波形表示用ウィンドウ32の縦軸は測定パラメータ(この実施形態においては、心電図)に対応した最適なスケールに設定される。原波形表示用ウィンドウ32の横軸も、測定パラメータ(この実施形態においては、心電図)に対応した最適な時間スケールに設定される。
CPU74は、心電図の1波形分の原波形データを取込み(ステップS22)、取込んだ原波形データに基づいて、原波形を原波形表示用ウィンドウ32にグラフ表示する(ステップS23)。CPU74は、ステップS22〜ステップS23の動作を繰り返す。
一方、図6Bに示すように、CPU74は、認識モジュール10の出力(図4、ステップS5参照)である認識値データおよび異常判定データを1波形分取込み(ステップS32)、異常判定データの種類を識別する(ステップS32)。
異常判定データが「正常」を示している場合には、各認識値データに対応する原波形の部分を、それぞれ異なった正常色で表示する。図13に拡大して示すように、原波形表示用ウィンドウ32において、たとえば、P波始点Pbは暗い赤色、P波頂点Paは黄土色、Q波始点Qは白色、R波頂点Rは赤色、S波頂点Sは黄色、T波頂点Taは明るい紫色、T波終点Teは紫色、という具合に表示される。
異常判定データが「波形異常」を示している場合には、当該異常である原波形の一部または全体を波形異常色を用いて表示する。この実施形態においては、原波形が波形異常である場合には、図12に示すように、異常である原波形のR波頂点36を黄色(波形異常色)で表示している。
なお、異常である原波形のうち、異常に関係する認識値データに対応する部分(たとえば、Q波始点Q)を正常色と異なる波形異常色で表示するようにしてもよい。また、当該異常である原波形の1波形全体を波形異常色で表示するようにしてもよい。
異常判定データが「ノイズ異常」を示している場合には、当該異常である原波形の一部または全体をノイズ異常色を用いて表示する。この実施形態においては、原波形がノイズ異常である場合には、図12に示すように、異常である原波形のR波頂点38を白色(ノイズ異常色)で表示している。
なお、異常である原波形のうち、異常に関係する認識値データに対応する部分(たとえば、Q波始点Q)を正常色と異なるノイズ異常色で表示するようにしてもよい。また、当該異常である原波形の1波形全体をノイズ異常色で表示するようにしてもよい。
1波形分の異常判定データの表示が終了すると、ステップS31に戻り、次の1波形分の異常判定データの表示を行なう。
このように、この実施形態においては、ノイズ異常と波形異常とをリアルタイムで容易に視覚的に識別することができる。このため、実験動物など生体の体動によるノイズと、心筋の異常等による波形異常とをリアルタイムで容易に視覚的に確認することができる。
なお、この実施形態においては、「波形異常」と「ノイズ異常」とを別の色で表示するようにしたが、「波形異常」と「ノイズ異常」とを区別する必要がない場合には、同じ色で表示するようにすることもできる。
また、この実施形態においては、波形部分の色を変えることにより、各種異常部分や正常部分を識別するよう構成したが、この発明はこれに限定されるものではない。たとえば、波形部分の線の太さを変えて各種異常部分や正常部分を識別するようにしてもよい。また、異常部分の波形を点滅表示させるなどして識別するようにしてもよい。
つぎに、図7A、図7B、図7Cに基づいて、投与実験用認識データ管理・表示モジュール16における処理を説明する。図7Aに示すように、CPU74は、まず、投与実験用認識値表示用ウィンドウ28(図11参照)を作成する(ステップS41)。
投与実験用認識値表示用ウィンドウ28の縦軸は測定パラメータ(この実施形態においては、心電図)に対応した最適なスケールに設定される。投与実験用認識値表示用ウィンドウ28の横軸は、評価薬物投与の効果を把握するのに最適な時間スケールに設定される。この実施形態においては、長時間(たとえば数十時間)にわたる評価薬物投与の効果を一目で把握できるように時間スケールを設定している。
つぎに、CPU74は、認識モジュール10の出力(図4、ステップS5参照)である認識値データおよび異常判定データを1波形分取込み(ステップS42)、異常判定データの種類を識別する(ステップS43)。
異常判定データが「正常」を示している場合には、1波形分に相当する各認識値データを、それぞれ異なった色でグラフ表示する。図11に示すように、投与実験用認識値表示用ウィンドウ28のうち、上段のウィンドウにおいて、たとえば、P波始点Pbは暗い赤色、P波頂点Paは黄土色、Q波始点Qは白色、R波頂点Rは赤色、S波頂点Sは黄色、T波頂点Taは明るい紫色、T波終点Teは紫色、という具合にグラフ表示される。
また、投与実験用認識値表示用ウィンドウ28のうち、下段のウィンドウにおいて、たとえば、時間間隔RRは赤色、時間間隔QTは水色、時間間隔PRは灰色、という具合にグラフ表示される。
1波形分の認識値データのグラフ表示が終了すると、ステップS42に戻り、次の1波形分の認識値データのグラフ表示処理を行なう。
ステップS43において、異常判定データが「波形異常」または「ノイズ異常」を示している場合には、当該異常部分を有する1波形分については認識値データのグラフ表示を行なうことなく、ステップS42に戻る。
一方、図7Bに示すように、CPU74は、薬物投与イベントの発生を監視しており(ステップS51)、薬物投与イベントが発生すると、投与実験用認識値表示用ウィンドウ28の投与日時の位置に、たとえば緑色で、薬物投与イベントマーク52を表示する(ステップS52)。この実施形態においては、フットスイッチ104のうち薬物投与フットスイッチ(図示せず)が踏込まれると薬物投与イベントが発生するよう構成されている。
その後、CPU74は、各認識値データについて薬物投与イベントが発生する直前の値を算出する(ステップS53)とともに、薬物投与イベントが発生した日時を記憶し(ステップS54)、投与した薬物名、投与量など投与薬物に関する情報をインプットするための薬物情報入力ダイアログ(図示せず)を表示する(ステップS55)。操作者(実験者)は、当該ダイアログの案内にしたがって所定の薬物情報を入力する。
その後、CPU74は、ステップS53で算出した薬物投与直前の各認識値データ、および、ステップS54で記憶した薬物投与イベント発生日時を出力し(ステップS56)、ステップS51に戻って、次の薬物投与イベントの発生を待つ。
この実施形態においては、ステップS53で算出する薬物投与直前の各認識値データとして、時間間隔RR、時間間隔QT、時間間隔PR、P波頂点Pa、R波頂点R、S波頂点S、T波頂点Taの他、値QTc(算出式は、たとえば、QTc=時間間隔QT/SQRT(時間間隔RR)で表わされる。)などがある。なお、SQRT(X)は、Xの平行根を表わす。
また、図7Cに示すように、CPU74は、反応性投与イベントの発生を監視しており(ステップS61)、反応性投与イベントが発生すると、投与実験用認識値表示用ウィンドウ28の投与日時の位置に、たとえば黄色で、反応性投与イベントマーク54を表示し(ステップS62)、ステップS61に戻って、次の反応性投与イベントの発生を待つ。
この実施形態においては、フットスイッチ104のうち反応性投与フットスイッチ(図示せず)が踏込まれると反応性投与イベントが発生するよう構成されている。
なお、反応性投与とは、評価薬物の投与効果を確認するために用いる反応性薬物を投与する行為である。反応性薬物は一時的に心機能(一般的には生体機能)を変化させる薬物である。たとえば、評価薬物を投与した状態で、さらに一時的に心拍数を上昇させる反応性薬物を与え、そのときの心電図の様子を見れば、心拍数の上昇に対する評価薬物の投与効果を知ることができる。
このように、この実施形態においては、実質的にリアルタイムで、原波形データに基づいて当該原波形データの特徴を表わす認識値データを抽出するとともに時間軸を有するグラフを用いて当該認識値データを過去の履歴を含めてグラフ表示するようにしている。
したがって、リアルタイムで認識値データの特徴を容易に視覚的に確認することができる。このため、実験動物に対する投薬の効果をリアルタイムで容易に把握することができる。
また、認識値データのうちノイズ異常や波形値異常のような突発的異常部分を判別して除去するとともに当該突発的異常部分の除去された認識値データのみをグラフ表示するようにしている。
したがって、突発的異常部分の除去された認識値データのみをグラフ表示することで、リアルタイムで認識値データの投薬による変動をさらに正確に視覚的に確認することができる。
さらに、認識値データの変動をグラフ表示する際、同グラフに、薬物投与イベントマーク52や反応性投与イベントマーク54を併せて表示するようにしている。したがって、認識値データの変動と評価薬物や反応性薬物の投与との関係がリアルタイムで容易に判断でき、好都合である。
つぎに、図8A、図8B、図8Cに基づいて、反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18における処理を説明する。図8Aに示すように、CPU74は、まず、反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30(図11参照)を作成する(ステップS71)。
反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30の縦軸は測定パラメータ(この実施形態においては、心電図)に対応した最適なスケールに設定される。反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30の横軸は、反応性薬物投与による影響を把握するのに最適な時間スケールに設定される。
この実施形態においては、短時間(たとえば数分程度)で終る反応性薬物投与の影響を詳細に把握できるように時間スケールを設定している。つまり、反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30は、上述の投与実験用認識値表示用ウィンドウ28の横軸だけを拡大(たとえば、数百倍)して表示したものである。
反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18の図8Aに示すステップS72、ステップS73、ステップS74においては、投与実験用認識データ管理・表示モジュール16の図7Aに示すステップS42、ステップS43、ステップS44と同様の処理が行なわれる。
ステップS73において、異常判定データが「波形異常」または「ノイズ異常」を示している場合には、当該異常部分を有する1波形分については認識値データのグラフ表示を行なうことなく、ステップS72に戻るのも、前述の投与実験用認識データ管理・表示モジュール16の場合と同様である。
つぎに、CPU74は、当該反応性薬物が投与されてから所定期間内における認識値データの最大値および最小値を算出し(ステップS75)、出力し(ステップS76)、制御をステップS72に戻す。
この実施形態においては、上記所定期間として、次の反応性薬物が投与されるまでの期間を設定している。しかし、上記所定期間は、これに限定されるものではない。たとえば、上記所定期間を、当該反応性薬物が投与されてから一定時間(たとえば1分)とすることもできる。
このように、反応性薬物を投与してから予め定められた時点までの期間を単位として認識値データの最大値および最小値を算出する処理を行なうことで、反応性薬物を投与するごとに自動的に認識値データの最大値および最小値を算出させることができる。このため、次々と実施される反応性薬物投与に合わせて評価薬物の効果をリアルタイムで容易に把握することができる。
なお、任意のタイミングで所定期間を終了させるようにすることもできる。このようにすれば、たとえば、反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30で反応性薬物の影響を確認しながら、最適なタイミングで所定期間を終了させることができるため、信頼性の高い統計データ(最大値、最小値)が得られる。
さらに、上記認識値データの最大値および最小値を算出する対象期間の始期を任意のタイミングで設定するようにすることもできる。このようにすれば、たとえば、反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30で反応性薬物の影響を確認しながら、最適なタイミングで上記対象期間を開始させることができるため、さらに好都合である。
一方、図8Bに示すように、CPU74は、薬物投与イベントの発生を監視しており(ステップS81)、薬物投与イベントが発生すると、反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30の投与日時の位置に、たとえば緑色で、薬物投与イベントマーク(図示せず)を表示し(ステップS82)、ステップS81に戻って、次の薬物投与イベントの発生を待つ。
また、図8Cに示すように、CPU74は、反応性投与イベントの発生を監視しており(ステップS91)、反応性投与イベントが発生すると、反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30をクリアし、当該反応性投与イベントの発生時刻を横軸の起点として、それ以後の各認識値データの変動をグラフ表示する(ステップS92)。
つぎに、CPU74は、各認識値データについて反応性投与イベントが発生する直前の値を算出する(ステップS93)とともに、反応性投与イベントが発生した日時を記憶し(ステップS94)、投与した薬物名、投与量など反応性薬物に関する情報をインプットするための反応性薬物情報入力ダイアログ(図示せず)を表示する(ステップS95)。操作者(実験者)は、当該ダイアログの案内にしたがって所定の反応性薬物情報を入力する。
その後、CPU74は、ステップS93で算出した反応性薬物投与直前の各認識値データ、および、ステップS94で記憶した反応性投与イベント発生日時を出力し(ステップS96)、ステップS91に戻って、次の反応性投与イベントの発生を待つ。
この実施形態においては、ステップS93で算出する反応性薬物投与直前の各認識値データは、前述の投与実験用認識データ管理・表示モジュール16の場合と同様、時間間隔RR、時間間隔QT、時間間隔PR、P波頂点Pa、R波頂点R、S波頂点S、T波頂点Ta、および、値QTcなどである。
このように、この実施形態においては、投与実験用認識値表示用ウィンドウ28とともに、当該投与実験用認識値表示用ウィンドウ28の横軸だけを拡大して反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30として表示している。
したがって、比較的長い時間にわたって反応が持続する評価薬物の実験動物におよぼす影響と、比較的短い時間で反応がなくなる反応性薬物による影響とを、それぞれ最も適した時間軸のスケールを用いてグラフ表示することができる。このため、たとえば、反応性薬物を次に投与するタイミング等をリアルタイムで容易に決定することができる。
つぎに、図9、および、表示画面24のディジタルデータ表示ウィンドウ34を拡大した図14に基づいて、ディジタルデータ表示モジュール20における処理を説明する。CPU74は、まず、動物データベースに基づいて設定された測定モードを表示する(ステップS101)。測定モードは、図14に示すディジタルデータ表示ウィンドウ34の測定モード表示領域40に表示される。
CPU74は、コンピュータ内部で自動的に発生する1秒毎イベントを監視しており(ステップS102)、1秒毎イベントが発生すると、測定開始からの計測時間(ステップS103)、終了時刻が確定している場合には測定残時間(ステップS104)、測定状態(ステップS105)、評価薬物の投与後経過時間(ステップS106)、反応性薬物の投与後経過時間(ステップS107)、および、現在の認識値データ(測定データ)の1秒間の平均値(ステップS108)を表示する。
計測時間、測定残時間(残時間)および測定状態は、図14に示すディジタルデータ表示ウィンドウ34の計測時間等表示領域42に表示される。評価薬物の投与後経過時間(投与後時間)および反応性薬物の投与後経過時間(反応後時間)は、ディジタルデータ表示ウィンドウ34の投与後時間等表示領域44に表示される。現在の認識値データ(測定データ)の1秒間の平均値(現在値)は、ディジタルデータ表示ウィンドウ34の現在値表示領域46に表示される。
一方、CPU74は、上述の薬物投与イベント入力があったか否かの判断を行ない(ステップS109)、薬物投与イベント入力があった場合には、投与実験用認識データ管理・表示モジュール16で出力された薬物投与前値(各認識値データについて薬物投与イベントが発生する直前の値)および投与日時(薬物投与イベントが発生した日時)(図7B、ステップS56参照)を取込み(ステップS110)、取込んだ薬物投与前値を表示する(ステップS111)。薬物投与前値は、ディジタルデータ表示ウィンドウ34の前値表示領域48に表示される。
CPU74は、その後、評価薬物の投与後経過時間(投与後時間)をリセットする。投与後時間をリセットすることにより、ディジタルデータ表示ウィンドウ34の投与後時間等表示領域44には、今回の薬物投与イベントを起点として、評価薬物の投与後経過時間が表示されることとなる。
CPU74は、つぎに、反応性投与イベント入力があったか否かの判断を行なう(ステップS113)。なお、ステップS109において薬物投与イベント入力がなかった場合も、ステップS113に制御を移す。
ステップS113において反応性投与イベント入力があった場合には、反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18で出力された反応性投与前値(各認識値データについて反応性投与イベントが発生する直前の値)および投与日時(反応性投与イベントが発生した日時)(図8C、ステップS96参照)を取込み(ステップS114)、取込んだ反応性投与前値を表示する(ステップS115)。反応性投与前値は、ディジタルデータ表示ウィンドウ34の前値表示領域48に表示される。したがって、前値表示領域48には、反応性投与前値または薬物投与前値のいずれか一方が表示されることになる。
CPU74は、その後、反応性薬物の投与後経過時間(反応後時間)をリセットする。反応後時間をリセットすることにより、ディジタルデータ表示ウィンドウ34の投与後時間等表示領域44には、今回の反応性投与イベントを起点として、反応性薬物の投与後経過時間が表示されることとなる。
CPU74は、つぎに、反応性薬物が投与されてから所定期間内における認識値データの最大値および最小値についての情報があるか否かについて判断する(ステップS117)。なお、ステップS113において反応性投与イベント入力がなかった場合も、ステップS117に制御を移す。
ステップS117において、上記最大値および最小値についての情報がある場合には、反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18で出力された当該最大値および最小値(図8A、ステップS76参照)を取込んで(ステップS118)、表示する(ステップS119)。
当該最大値および最小値は、ディジタルデータ表示ウィンドウ34の最大値等表示領域50に表示される。図14に示すように、最大値等表示領域50には、反応性投与イベントが発生するごとに、代表認識値データ(この実施形態においては時間間隔RR)の最大値および最小値が、過去の分も含めて表示される。
最大値等表示領域50の各行には、上記最大値[Max:393等]および最小値[Min:307等]の他、反応性薬物の投与回数[(01)等]、投与前の代表認識値データ[Bf:356等]、投与前の代表認識値データから最大値または最小値までの変化値[Δ+37、Δ−49等]、投与時から最大値または最小値が生ずるまでの経過時間[Tm101s、Tm6s等]が、表示される。
最大値等表示領域50の表示が終ると、CPU74は、ステップS102に制御を移す。ステップS117において上記最大値および最小値についての情報がない場合にも、CPU74は、ステップS102に制御を移す。
このように、この実施形態においては、反応性投与イベントが発生するごとに、代表認識値データの最大値および最小値やこれに関連する量を、リアルタイムで表示するようにしている。
したがって、反応性薬物の影響による心電図の変化を端的に表わす代表認識値データの最大値および最小値を表示することで、実験動物の心機能の変化をリアルタイムで容易に把握することができる。
また、代表認識値データの最大値および最小値やこれに関連する量については、過去の分も含めて表示するようにしている。したがって、反応性実験用認識値表示用ウィンドウ30に表示されない過去の反応性薬物投与の結果についても、リアルタイムで把握することができる。
また、上述のように、ディジタルデータ表示ウィンドウ34には、測定モード、測定開始からの計測時間、測定残時間、測定状態、評価薬物の投与後経過時間、反応性薬物の投与後経過時間、現在の認識値データ、薬物投与前値または反応性投与前値など、試験の条件や状況に関する表示を行なうようにしている。
したがって、リアルタイムで上記条件を容易に確認することができる。このため、たとえば、実験中にメモなどをとることなく、実験動物の状態を含め実験の状況をリアルタイムで容易に把握することができる。
また、この実施形態においては、認識値データのうち代表認識値データとして時間間隔RRについてのみ最大値および最小値を表示するようにしている。しかし、最大値および最小値を表示する認識値データは時間間隔RRに限定されるものではない。たとえば、値QTcを代表認識値データとして最大値および最小値を表示するようにしてもよい。また、複数種の認識値データを代表認識値データとし、各代表認識値データについて、それぞれ最大値および最小値を表示するようにしてもよい。
また、認識値データの最大値および最小値を表示するようにしたが、認識値データの最大値または最小値のいずれか一方のみを表示するようにしてもよい。さらに、認識値データの最大値や最小値以外に、たとえば、平均値や分散など、認識値データについて、適切と思われる他の統計量を表示するようにしてもよい。
つぎに、図10に基づいて、認識データ保存モジュール22における処理を説明する。CPU74は、前述の認識モジュール10の出力(図4、ステップS5参照)である1波形分の認識値データおよび異常判定データを取込み(ステップS121)、ハードディスク90に設定された心電図保存領域内の認識値保存領域に、これらを保存する(ステップS122)。CPU74は、ステップS121、ステップS122の動作を繰り返し、全波形について、1波形ごとの認識値データおよび異常判定データを記録する。
[4.その他の実施形態]
なお、上述の実施形態においては、状態量表示装置70の各機能をCPU74を用いて実現した場合を例に説明したが、状態量表示装置70の各機能の一部または全部を、ハードウェアロジックにより実現するよう構成することもできる。
また、上述の実施形態においては、測定パラメータとして心電図を例に説明したが、測定パラメータが、たとえば、血圧、血流、左心室内圧など他の循環器系パラメータである場合や、呼吸量等呼吸器系パラメータである場合や、さらに消化器系パラメータである場合にも、この発明を適用することができる。
また、1体の実験動物106について一つの測定パラメータを測定する場合を例に説明したが、この発明はこれに限定されるものではない。たとえば、異種または同種の複数の実験動物について、同時に一つの測定パラメータを測定する場合や、1体の実験動物について、同時に複数種の測定パラメータの測定を行なう場合や、さらに、異種または同種の複数の実験動物について、同時に複数種の測定パラメータの測定を行なう場合にも、この発明を適用することができる。
また、この発明は、実験動物のみならず、人間を含む生体全般ついてその状態を表わす測定パラメータを測定する場合にも適用することができる。さらに、生体のみならず、気象状態や経済状態など時間の関数として表現し得る状態に対応した状態量データに基づいて表示を行なうような場合にも、この発明を適用することができる。
この発明の一実施形態による状態量表示装置70の構成を示す図面である。
図1に示す状態量表示装置70の各機能をCPU74を用いて実現した場合のハードウェア構成の一例を示す図面である。
図1に示す状態量表示装置70の各機能をCPU74を用いて実現した場合のソフトウェア構成の一例を示す図面である。
認識モジュール10の処理内容を表わすフローチャートである。
原波形保存モジュール12の処理内容を表わすフローチャートである。
図6A,Bは、原波形表示モジュール14の処理内容を表わすフローチャートである。
図7A,B,Cは、投与実験用認識データ管理・表示モジュール16の処理内容を表わすフローチャートである。
図8A,B,Cは、反応性実験用認識データ管理・表示モジュール18の処理内容を表わすフローチャートである。
ディジタルデータ表示モジュール20の処理内容を表わすフローチャートである。
認識データ保存モジュール22の処理内容を表わすフローチャートである。
ディスプレイ82の表示画面24を示す図面である。
表示画面24の原波形表示用ウィンドウ32の一部を拡大して表わした図面である。
図12に示す原波形表示用ウィンドウ32の一部を、さらに拡大して表わした図面である。
表示画面24のディジタルデータ表示ウィンドウ34を拡大して表わした図面である。
表示画面24の投与実験用認識値表示ウィンドウ28の一部を拡大して表わした図面である。
表示画面24の反応性実験用認識値表示ウィンドウ30の一部を拡大して表わした図面である。
符号の説明
32・・・・・原波形表示用ウィンドウ
36・・・・・波形異常である原波形のR波頂点
38・・・・・ノイズ異常である原波形のR波頂点
R・・・・・・正常である原波形のR波頂点