図7は従来のプラズマ処理装置30を示す断面図であり、図8は図7に示すスロットアンテナ5を示す平面図である。図7に示したプラズマ処理装置30は、例えば、特開2005−268763号公報に記載されているものである。
図7において、プラズマ処理装置30は、上部が開口された処理容器1を含み、処理容器1は、チャンバ11と、アッパープレート12と、スペーサー13と、プレートカバー14とを重ねて構成されている。これらはすべてアルミ合金によって形成されている。処理容器1内には、被処理基板2を保持するためのサセプタ3が配置されている。サセプタ3には、処理容器1の外部に設けられた交流電源17から、バイアス用の高周波信号が供給される。
処理容器1内の均一な排気を実現するために、サセプタ3の周囲にはリング状に空間1Aが形成され、処理容器1の底部には、真空ポンプなどの図示しない排気装置によって処理容器1内の空気を排気するための排気管16が設けられている。処理容器1上には、サセプタ3上の被処理基板2に対応する位置に、誘電板4が配置され、さらに誘電板4の上部には、スロットアンテナ5が設けられている。
スロットアンテナ5は、図8に示すようなラジアルラインスロットアンテナであり、同軸導波管9の外側導波管に接続された平坦なディスク状のスロットアンテナ放射板5aを含み、スロットアンテナ放射板5aの開口部には、多数のスロット5bと、これに直交する多数のスロット5cとが形成されているとともに、外縁に沿って複数の取付け穴5dが形成されている。スロットアンテナ5の上部には、遅波板6が配置されており、スロットアンテナ放射板5aは、取付け穴5dにネジ15を締め付けることにより冷却板7に固定される。冷却板7は、遅波板6とスロットアンテナ5を覆ってスロットアンテナ5を冷却するものであり、内部に冷却水が供給されている。冷却板7は冷却板固定具10によってプレートカバー14に固定される。
スロットアンテナ5は外部のマイクロ波発生装置8のマイクロ波出力端子に、同軸導波管9を介して接続されており、マイクロ波発生装置8の接地端子は処理容器1に接続されている。マイクロ波発生装置8は、例えば2.45GHzのマイクロ波を、図示しない負荷整合器から同軸導波管9を介してスロットアンテナ5に供給する。スロットアンテナ5は、マイクロ波発生装置8からのマイクロ波により、図示しないガス供給口から供給されて空間1Bに放出されたプラズマガスを励起する。
このように構成されたプラズマ処理装置30でプラズマ処理する際には、処理容器1内のサセプタ3上に被処理基板2を載置し、ガス導入部から所定の処理ガスを処理容器1内に供給しつつ、排気管16から排気することで処理空間1B内を所定の圧力にする。そして、交流電源17によって被処理基板2にバイアス高周波を印加するとともに、マイクロ波発生装置8によってマイクロ波を発生させてスロットアンテナ5に供給する。
マイクロ波は、スロットアンテナ5と冷却板7との間を、半径方向に広がりながら進行するが、その際に遅波板6の作用により波長が圧縮される。半径方向に進行するマイクロ波の波長に対応してスロット5bおよび5cを同心円状に、かつ相互に直交するように形成しておくことにより、円偏波を有する平面波をスロットアンテナ5に実質的に垂直な方向に放射することができ、誘電板4の下方に電界を発生させる。すると空間1B内の処理ガスがプラズマ化され、処理ガスの種類を選択することで、被処理基板2に対して所定のプラズマ処理が行われる。
特開2005−268763号公報
図9および図10は、図7に示したプラズマ処理装置30において、スロットアンテナ5から処理容器1に流れるマイクロ波電流の流れる経路を説明するための要部断面図である。特に、図9は図7の一点鎖線30Aで囲んだ部分を拡大して示し、図10は同じく一点鎖線30Aおよび30Bで囲んだ部分を拡大して示す。
図7に示した冷却板7と、プレートカバー14は、メンテナンスをし易くするために、別の部材として形成されている。スロットアンテナ5は遅波板6とともにネジ15により冷却板7に固定されており、冷却板7をプレートカバー14の開口部に装着したときに、冷却板7と、プレートカバー14との間にわずかなギャップが生じる。
冷却板7をプレートカバー14に装着するときに、冷却板7とプレートカバー14との間のギャップが均一になるようにすれば、冷却板7が直接プレートカバー14に接触することがない。この結果、電流は、スロットアンテナ5から図9の矢印IAに示すように、表皮効果により冷却板7の外壁部に沿って上方向に流れ、さらに冷却板固定具10の下面からプレートカバー14、スペーサー13、アッパープレート12、チャンバ11のそれぞれの内壁部に沿って流れ、マイクロ波発生装置8の接地端子に戻る。この場合、マイクロ波電流の流れは同心状に半径方向に広がりながら進行するため、スロットアンテナ5面において均一になるので、プラズマ密度も均一になる。
しかし、冷却板7やプレートカバー14を製造するときに工作精度や公差の問題から、空隙を確保する必要があり、冷却板7をプレートカバー14に装着するごとに、冷却板7のプレートカバー14への装着場所がわずかにずれてしまい、ギャップの間隔が変動し、冷却板7やプレートカバー14ごとにギャップの寸法が変わってしまう。また、取付け具合によってもギャップの間隔が変動することもある。
特に、図10に示す一点鎖線30A側で、冷却板7がプレートカバー14に直接接触し、一点鎖線30B側のギャップが広くなると、一点鎖線30A側では、スロットアンテナ5から冷却板7とプレートカバー14との接触部分から矢印IBに示すように直接マイクロ波電流が流れる。これに対して、一点鎖線30B側では、図9の説明と同様にして、矢印ICに示す経路でマイクロ波電流が流れる。このため、スロットアンテナ5に流れるマイクロ波電流の流れが図8の破線に示すように偏るため不均一になり、プラズマ密度が不均一になってしまう。
そこで、この発明の目的は、取付け具合や寸法誤差での電流流れの不均一性を排除し、均一なプラズマ生成を可能にしたプラズマ処理装置を提供することである。
この発明は、上部開口を有し、金属で形成された処理容器と、処理容器の上部開口を閉鎖するように配置された誘電体と、接地側が処理容器に接続されており、マイクロ波を供給するためのマイクロ波供給源と、誘電体上に配置され、マイクロ波供給源からのマイクロ波を、誘電体を透過させて処理容器の内部に供給し、処理容器の内部にプラズマを発生させる平板状アンテナと、平板状アンテナとは別部材で形成され、処理容器の内壁部および平板状アンテナの外縁部に直接接触する導電性部材とを備え、導電性部材は、平板状アンテナ側に取付けられて、実質的に全周にわたって処理容器の内壁部側を径方向に押し付けるように、弾性的に接触することにより、平板状アンテナを処理容器の内壁部に電気的に接続することを特徴とする。
導電性部材により処理容器全周にわたり、平板状アンテナと処理容器の内壁部とを直接接触させることにより、処理容器の内壁と平板状アンテナ外縁との電気抵抗の大きさを略等しくすることができるので、マイクロ波電流の大きさを略等しくできる。
好ましくは、平板状アンテナを覆うカバー部材を含み、平板状アンテナはカバー部材にネジにより固定されており、導電性部材は、平板状アンテナとともにネジによりカバー部材に固定される。導電性部材を平板状アンテナとともにカバー部材に固定するので、導電性部材の取付けが容易になる。
好ましくは、導電性部材は、リング状形態であって、その外縁部が径方向外方および上方に立上って、処理容器の内壁部に弾性的に接触する接触片を含む。接触片により弾性的に処理容器の内壁部に接触させることができるので、電気的な接続を確実にできる。
好ましくは、平板状アンテナを覆うカバー部材を含み、導電性部材は、カバー部材に保持される。導電性部材をカバー部材に保持することにより、処理容器に装着し易くなる。
好ましくは、導電性部材は、所定の幅を有する金属帯をらせん状に巻回したリング状形態であり、カバー部材は、導電性部材を嵌め込むための溝を含み、導電性部材は、溝に嵌め込まれる。
溝に導電性部材を嵌め込むことにより、カバー部材を処理容器に取付けたときに、導電性部材は溝の壁部と処理容器の内壁部とで圧力を受けて変形し、平板状アンテナと処理容器の内壁部との電気的接続を良好にする。
この発明によれば、導電性部材は、平板状アンテナ側に取付けられて、実質的に全周にわたって処理容器の内壁部側を径方向に押し付けるように、弾性的に接触することにより、平板状アンテナを処理容器の内壁部に電気的に接続するので、処理容器の内壁と平板状アンテナ外縁との電気抵抗の大きさを略等しくできるので、マイクロ波電流の大きさが略等しくなり、マイクロ波が均一に広がって、均一なプラズマを発生することができる。
図1はこの発明の一実施形態におけるプラズマ処理装置40の要部断面図であり、図7に示した一点鎖線Aに対応する部分の拡大図であり、図2は図1に示した一点鎖線Cに示す部分を拡大して示した図であり、図3は図1および図2に示す導電性部材20を示す外観斜視図である。
図1ないし図3において、この発明の一実施形態のプラズマ処理装置40は、図7に示したプラズマ処理装置30と同様にして、上部開口を有し、アルミ合金などの金属で形成した処理容器1としてのチャンバ11と、アッパープレート12と、スペーサー13と、プレートカバー14と、処理容器1の上部開口を閉鎖するように配置された誘電体4と、マイクロ波を誘電体4に供給し、マイクロ波を、誘電体4を透過させて処理容器の内部に供給し、処理容器の内部にプラズマを発生させる平板状アンテナとしてのスロットアンテナ5とを含む。さらに、スロットアンテナ5上には、遅波板6が載置されており、スロットアンテナ5は導電性部材20とともにカバー部材としての冷却板7にネジ15により固定される。冷却板7は冷却板固定具10によってプレートカバー14に固定される。
導電性部材20は、スロットアンテナ5側に取付けられて、処理容器の一部を構成するプレートカバー14の実質的に全周にわたってプレートカバー14の内部に弾性的に直接接触して、マイクロ波電流が流れる経路を形成する。この経路により、プレートカバー14、スペーサー13、アッパープレート12およびチャンバ11のそれぞれの全周にわたり、それぞれの内壁とスロットアンテナ5の外縁との間の電気抵抗の大きさを略等しくすることでマイクロ波電流の大きさを略等しくして均一にマイクロ波を伝播させ、均一なプラズマを生成できる。導電性部材20は、リング状形態であって、例えばリン青銅などによって形成されており、図3に示すように、冷却板7の下面に接触する平坦なリング状部21と、リング状部21の外縁部が径方向および上方に立上る多数の接触片22とを含み、接触片22は処理容器1の内壁部に弾性的に接触する。
リング状部21には、図8に示したスロットアンテナ5の取付け穴5dに対応して取付け穴23が形成されている。スロットアンテナ5の取付け穴5dと、導電性部材20の取付け穴23とにネジ15を挿入して冷却板7にネジ止めする。接触片22は図2に示すように、リング状部21の外縁部が径方向外方および上方に立上るように形成されているので弾性を有している。このため、導電性部材20とスロットアンテナ5とを取付けた冷却板7をプレートカバー14に固定すると、接触片22の外壁部がプレートカバー14の内壁部により圧力を受けるので、図2の破線Eに示す状態から実線に示す状態に変形して、スロットアンテナ5とプレートカバー14とを強制的に電気的に接続する。
図1には図示を省略しているが、図7と同様にして、マイクロ波供給源として作動するマイクロ波発生装置が設けられている。マイクロ波出力端子から図示しない同軸導波管を介してマイクロ波がスロットアンテナ5に供給されており、接地端子は処理容器1に接続されている。マイクロ波発生装置からマイクロ波がスロットアンテナ5に供給されると、図1の矢印IDに示すように、スロットアンテナ5から導電性部材20を介して、プレートカバー14、スペーサー13、アッパープレート12およびチャンバ11の経路にマイクロ波電流が流れ、マイクロ波発生装置に戻る。
スロットアンテナ5を取付けた冷却板7をプレートカバー14に取付けたときに、冷却板7のプレートカバー14への装着場所がわずかにずれてしまうことがある。このために、ギャップの間隔が変動し、冷却板7やプレートカバー14ごとにギャップの寸法が変わってしまっても、導電性部材20により、プレートカバー14の内壁部とスロットアンテナ5の外縁との電気的接続を確保できる。これにより、プレートカバー14の内壁部とスロットアンテナ5の外縁との間の電気抵抗の大きさを略等しくし、スロットアンテナ5に流れるマイクロ波電流を均一にできる。その結果、工作精度や公差などに影響されることなく、スロットアンテナ5の全面から発生されるプラズマ密度を均一にできる。
図4はこの発明の他の実施形態におけるプラズマ処理装置50の要部断面図であり、図7に示した一点鎖線Aに対応する部分の拡大図であり、図5は図4に示した一点鎖線Dに示す部分を拡大して示した図であり、図6は図4および図5に示す導電性部材25を示す外観斜視図である。
この実施形態のプラズマ処理装置は図1と同様にして、チャンバ11と、アッパープレート12と、スペーサー13と、プレートカバー14と、誘電体4と、スロットアンテナ5と、遅波板6とを含む。スロットアンテナ5は冷却板7にネジ15により固定される。冷却板7は冷却板固定具10によってプレートカバー14に固定される。スロットアンテナ5は導電性部材25を介してプレートカバー14の内壁部に電気的に接続される。
この実施形態に使用される導電性部材25は、図6に示すような所定の幅を有し、厚さが例えば0.1mm程度の銅やアルミニウムやSUSなどの金属帯をらせん状に巻回したリング状形態であり、冷却板7に保持されてプレートカバー14の内壁部およびスロットアンテナ5の両者に弾性的に接触する。冷却板7の外壁部の下部には、逆V字状の溝71が外壁部全域にわたって、プレートカバー14の内壁部に対向するように形成される。この溝71に導電性部材25を嵌め込む。このとき、導電性部材71の中に図6に示すようにワイヤー26を挿入して円になるようにし、溝71に装着し易いようにし、装着時に離脱しないようにする。冷却板7に導電性部材25を取付けた後、冷却板7をプレートカバー14に装着する。
導電性部材25は、溝71の壁部とカバープレート14の内壁部との間で挟まれるので、圧縮されて断面が円形から楕円に変形する。その結果、導電性部材25はスロットアンテナ5を押し付けるので、スロットアンテナ5とカバープレート14とを電気的に接続し、電位差をなくして等電位に保つ。その結果、プレートカバー14の内壁部とスロットアンテナ5の外縁との電気的接続を確保できるので、プレートカバー14の内壁部とスロットアンテナ5の外縁との間の電気抵抗の大きさを略等しくし、スロットアンテナ5に流れるマイクロ波電流を均一にできる。その結果、工作精度や公差などに影響されることなく、スロットアンテナ5の全面におけるプラズマ密度を均一にできる。
なお、導電性部材20,25は、プレートカバー14の内壁部とスロットアンテナ5の外縁とを電気的に接続できるものであれば、図3および図6に示したもの以外のものであってもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
4 誘電体、5 スロットアンテナ、6 遅波板、7 冷却板、8 マイクロ波発生装置、9 同軸導波管、10 冷却板固定具、11 チャンバ、12 アッパープレート、13 スペーサー、14 プレートカバー、15 ネジ、20,25 導電性部材、21 リング状部、22 接触片、23 穴、26 ワイヤー、40,50 プラズマ処理装置、71 溝。