そこで、以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の研磨装置の要部を示す構成図である。
研磨装置は、モータMによって回転される円盤状の下側定盤2と、吸着パッド(不図示)を介して被研磨物Wを支持する円盤状の上側定盤3とを有している。下側定盤2と上側定盤3内にはそれぞれ1つ又は複数の空洞からなる共振部2a,3aが形成されている。また、下側定盤2上には、被研磨物Wと対向接触する研磨布1が張りつけられている。
研磨布1は例えば発泡ウレタンからなるもので二層構造となっている。
研磨布1の上層部には、図2(a),(b)に示すような深さ2mm程度の第一の溝4が複数の箇所に形成されている。第一の溝4に囲まれた矩形状の領域は例えば20mm四方の広さを有し、研磨時に被研磨物Wに接触して振動を誘発する励振部5となっている。また、研磨布1の下層部には、励振部5に重なる第二の溝(空洞)6が形成され、その第二の溝6は、励振部5の振動に共振するようになっている。
第一の溝4の形成領域は特に限定されるものではないが、例えば図2(a)、(b)に示すようなものがある。図2(a)に示す第一の溝4は平面が矩形状のもので、十字方向に複数本形成されている。また、図2(b)に示す第一の溝4は、直線状に縦横に複数本形成されたものである。
上側定盤3は、図3に示すように、ゴムやバネ等の弾性部7を介して内部空洞の筐体8に支持されていて、筐体8とは異なる動きをするようになっている。筐体8の上部は、シャフト駆動部21によって回転及び上下動されるシャフト9の下端に固定されている。筐体8と上側定盤3と弾性部7は全体でヘッドとも呼ばれ、そのヘッド内部の空間は、上側定盤3を研磨布1に押圧し得るような内部圧力となっている。
上側定盤3の上部又は側部には振動検出素子(以下、加速度素子ともいう)10が取り付けられ、その振動検出素子10の出力端は筐体8に取り付けられた送信機13に接続されている。振動検出素子10として、例えば圧電素子加速度センサーが使用される。
筐体8と上側定盤3と弾性部7によって囲まれる空間が所定の圧力に保持される構造のヘッドは、エアバック式ヘッドと呼ばれる。エアバック式ヘッドでは、上側定盤3が上にずれると上側定盤3には位置を元に戻す下向きの圧力が加わる一方、上側定盤3が下にずれると上側定盤3には位置を元に戻す上向きの圧力が加わるような圧力が加えられ又はそのような圧力が保持される。その圧力は、シャフト9内の空洞を通して外部から加えられる。
また、送信機13は、振動検出素子10からの振動周波数、振動強度に関する情報の信号を無線で受信機14に送信し、受信機14で受けた振動情報を信号解析部15によって分析し、得られた振動周波数と振動強度のパワースペクトルから研磨以外の原因による固有振動成分(例えば、研磨装置固有の振動成分)を差し引き、その結果を例えば表示部16に表示したり、駆動制御部17を介してシャフト9やドレッサー12を移動したり駆動、停止したり、或いは駆動制御部17を介してノズル11から供給される研磨液供給量を制御したりしている。
研磨布1の表面はドレッサー12により目立てされる。ドレッサー12の上下動及び回転動作は、駆動制御部17によって制御される。
下側定盤2を回転させるモータMの回転数は、駆動制御部17によって制御される。
上述した研磨装置により研磨される被研磨物Wとしては、例えばシリコン、ゲルマニウムや化合物半導体などのウェハや、そのようなウェハに形成された導電膜、絶縁膜、金属膜がある。
なお、上記した第一及び第二の溝の代わりに研磨布1に複数の小孔を形成するようにしてもよい。
そこで次に、半導体ウェハの研磨を例に挙げて上記した研磨装置の動作を説明する。
まず、被研磨物Wとして半導体ウェハWを上側定盤3の下面に貼った後に、かつ駆動制御部17からの信号により下側定盤2を回転させる。さらに、駆動制御部17からの信号によりシャフト9を回転、下降させて半導体ウェハWを研磨布1に押圧する。その研磨の際にはノズル11を通して研磨液を研磨布1に供給する。
研磨が開始すると、半導体ウェハWと研磨布1の摩擦によって半導体ウェハWが振動するので、研磨布1に形成された振動部5が振動し、その振動は第二の溝6や下側定盤2及び上側定盤3の共振部2a,3aの共振によって増幅され、振動検出素子10に伝達される。
振動検出素子10に入力する振動としては、摩擦による振動成分の他にシャフト9を駆動するシャフト駆動部21からの振動成分が存在する。シャフト駆動部21の固有振動は、摩擦振動を検出する振動検出素子10のノイズになる。しかし、振動検出素子10は、上側定盤3に取り付けられているので、シャフト9及び筐体8に伝達したシャフト駆動部21の固有振動は、弾性体7の振動吸収によって減衰される。この結果、上側定盤3に伝わるシャフト駆動部21の固有振動は弱くなるので、振動検出素子10に入力するノイズが低減する。
振動検出素子10によって検出された振動周波数や振動強度等の振動情報は、送信機13、受信機14、信号解析部15を介して表示部16に表示される。表示部16では、例えば図4に示すような振動のパワースペクトルが表示される。このパワースペクトルは、信号解析部15によって研磨以外の原因による固有振動成分を引いたものである。
研磨の初期段階であって研磨面の全面に凹凸が存在する状態では、図4に見られるように低周波から高周波までの広い振動周波数帯にわたり振動強度が大きくなっていることがわかる。研磨が進んで研磨面の一部が局部的に平坦になると、振動強度が振動周波数全体で減少するだけでなく、500Hz程度の低い振動周波数の振動強度の減衰が顕著になる。低周波の減衰は、研磨面の一部が平坦に研磨されることにより起こる特有の現象であり、全体が一様に研磨されている場合には1000Hz前後の高周波の振動強度が減衰する。研磨面の一部が平坦化されている場合には、駆動制御部17によって上側定盤3や下側定盤2の回転数や上側定盤3による圧力などを調整して、研磨のバラツキを少なくする。
研磨面の全面が一様に平坦化すると振動が生じなくなるので、図4に見られるように振動強度が全振動周波数帯域でほぼ零になる。
このように、研磨布1に設けた励振部5の振動誘発によって振動周波数帯域が広くかつ振動強度が大きくなって感度が良くなるばかりでなく、研磨布1の第二の溝6や上側定盤3及び下側定盤2の共振部2a,3aによる共振によって振動が増幅される。
これにより、研磨面での微細な凹凸の存在を増幅して検出することが可能になった。その振動の変化によって研磨状態が研磨面の0.05μm以下の微小な凹凸でも検出でき、また、研磨面の研磨バラツキの状況を精度良く把握でき、そのバラツキが低下する方向に研磨圧力を変えたり上側又は下側定盤2,3の回転数を変えることにより自動的に修正して研磨バラツキを修正することができる。これにより、研磨状態を高精度に把握して、研磨の終了の判断を容易にしたり、追加研磨が不要になってスループットが向上する。
振動周波数に対する振動強度のスペクトルを信号解析部15により積分すると研磨が進行するにつれて積分値は次第に減少するので、積分値の時間的変化が無くなった場合には研磨が終了したと判断して信号解析部15から研磨終了の信号を駆動制御部17に送り、駆動制御部17はシャフト9の回転を停止したり、シャフト9を上昇させたりして、半導体ウェハWと研磨布1の接触を断って研磨を終了させる。
なお、その積分値が研磨終了時にも完全に零にならないような場合には、その積分値が予め設定した基準値となったり、或いは積分値の時間的変化が予め設定した基準値よりも小さくなった時点で研磨終了であると判断してもよい。
ところで、研磨が終わらない状態で研磨布1が磨耗すると、被研磨物Wと励振部5との摩擦が減少して振動が生じなくなり、振動強度が急速に減衰して研磨終了の状態とほぼ同じ特性に変化する。このような急峻な振動強度の減衰は、振動検出素子10、送信機13、受信機14を介して信号解析部15によって検出され、信号解析部15により研磨布1の劣化と判断される。この場合には、駆動制御部17を介して研磨を中止するとともにドレッサー12を駆動して研磨布1を目立てすることになる。そして、目立てを終えた後に研磨を再開する。
研磨布1の表面が滑らかになった場合には、振動周波数の0〜数百Hzの帯域の振動強度が数dBの大きさで存在するので、その振動周波数帯域での振動強度の存在と振動強度の変化の情報に基づいて研磨布が磨耗したことを検知してもよい。
研磨布の劣化の基準は、研磨開始から終了までの時間が予め設定した時間よりも短い場合や、積分値の時間的変化が指定値を超えて減少した場合を劣化基準としてもよい。
次に、上記した研磨装置を用いて半導体装置の配線を覆う絶縁膜を研磨する工程について説明する。
半導体装置の配線を形成する場合には、まず、図5(a)に示すように半導体基板W1 の上に第一の絶縁膜W2を形成した後に、第一の絶縁膜W2上に金属膜を形成し、ついで、図5(b)に示すようにその金属膜をパターニングして配線パターンW3を形成する。その後に、図6(a)に示すように、配線パターンW3を保護するための第二の絶縁膜W4 を形成する。配線パターンW3と第一の絶縁膜W2によって形成される段差は、第二の絶縁膜W4の表面に凹凸となって現れる。第二の絶縁膜W4の表面は、上記した研磨装置によって終点が検出されるまで研磨され、その研磨面は図6(b)に示すように平坦になった。
第二の絶縁膜W4が、例えばTEOSを使用したSiO2膜である場合には、研磨速度が大きいので、図7(a)に示すように、第二の絶縁膜W4の上にCVDにより窒化シリコン膜W5が形成される場合もある。その窒化シリコン膜W5の表面には凹凸が現れる。第二の絶縁膜W4と窒化シリコン膜W5の表面は本発明の研磨装置によって終点が検出されるまで研磨され、その研磨面は図7(b)に示すように平坦になる。窒化シリコンはSiO2よりも硬いので、窒化シリコン膜W5が存在する場合の研磨量は、窒化シリコン膜W5が存在しない場合の研磨量よりも少ない。
第二の絶縁膜W4だけを研磨する場合には、その研磨面は図8(a)〜(c)のように変化し、これらの場合に振動検出素子10に入力する振動の波形は図10に示すように研磨が進行するにつれて小さくなる。
一方、第二の絶縁膜W4及び窒化シリコン膜W5を研磨する場合には、図9(a),(b)に示すように、初期の状態で全体を覆っていた窒化シリコン膜W5は、研磨が進むにつれて一部が消失し、その部分から第二の絶縁膜W4が露出することになる。さらに窒化シリコン膜W5と第一の絶縁膜W4を研磨すると、研磨面が平坦化した時点で研磨の終点が検出され、研磨は停止される。その研磨面には、図9(c)に示すように、第一の絶縁膜W4のみが露出する場合もあるし、一部に窒化シリコン膜W5が残っている場合もある。
これらの研磨の際に振動検出素子10に入力する振動の波形はほぼ図10に示すようになる。
従って、上記した研磨装置は、特開平6−320416号公報に記載されているように膜質の変化によって振幅が大きくなるような状況を捉えるものではなく、研磨面の平坦性が良くなるにつれて振動強度が減少する事象を捉え、振動の減少が所定の基準に達した段階で研磨終点を判断して研磨を停止する構成となっている。
なお、上記した振動検出素子10は上側定盤3に複数個取り付けてもよい。例えば、縦方向の振動と横方向の振動を別々に検出して研磨状態をさらに詳細に検出してもよい。また、振動検出素子10の振動は縦方向の振動でなく、横方向又は円周方向の振動であってもよく、円周方向の振動については第8、9実施形態で詳述する。また、振動検出素子10の取り付け場所を上側定盤3でなく下側定盤3としてもよい。その取付け箇所については、以下の実施形態でも同様に適用される。
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態を示す側面図である。
本実施形態では、図11に示すように、セラミックや水晶等の圧電材料からなる振動検出素子(加速度素子)18を上側定盤3の中間層に介在させている。これにより、被研磨物Wの研磨面に垂直な振動は勿論のこと、研磨面の面に沿って生じる捩れ方向の摩擦、即ち「ずり摩擦力」を検出できる。ずり摩擦力は、研磨面の一部が局所的に平坦化すると急激に減少するので、全体的に均一に研磨したい場合には、急激に減少しないように研磨条件(例えば研磨圧力、研磨速度)を調整して研磨のバラツキを解消させる。
この実施形態の振動検出素子18は、第1実施形態と同様に送信機13に接続される。また、この振動検出素子18は、研磨布1に励振部5を有しない研磨装置にも適用してもよい。
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態を示す側面図である。
本実施形態では、図12に示すように、歪みゲージのようなフィルム状の圧力センサ19を被研磨物Wと上側定盤3の間に介在させている。これにより、被研磨物Wが研磨面に垂直な方向に受ける圧力変化を電気抵抗の変化として検出することにより、垂直方向の振動周波数や振動強度を検出できる。この圧力センサ19として圧力分布を検出できるタイプのものを用いてもよい。
この実施形態の振動検出素子18は、第1実施形態と同様に送信機13に接続されるが、研磨布に上記した励振部を有しない研磨装置にも適用できる。
(第4実施形態)
上記した実施形態では被研磨物を上側定盤に取り付け、研磨布を下側定盤に貼り付けるようにしたが、図13に示すように、被研磨物Wを下側定盤2に取り付け、研磨布1を上側定盤3に貼り付けるようにしてもよい。
この実施形態でも、研磨布1には励振部5が設けられ、また振動検出素子10及び送信機13が上側定盤3に取り付けられている。
なお、本実施形態でも研磨布1には第1実施形態と同様に第二の溝6を形成したり、上側定盤3や下側定盤2には空洞からなる共振部2a,3aを設けてもよい。
(第5実施形態)
上記した実施形態では、シャフトで上側定盤を回転する機構となっているが、図14に示すように、回転機構のない上側定盤20を使用するいわゆるデッドウェイト型の研磨装置を使用する場合にも、上側定盤20に振動検出素子10や送信機13を搭載してもよい。この場合、下側定盤2上の研磨布1に励振部5を設けたり、上側定盤20や下側定盤2に空洞からなる共振部を設けてもよい。
なお、図14において、図1と同一符号は同一要素を示している。
(第6実施形態)
図15は、本発明の第6実施形態の側面図である。本実施形態では、電池を使用せずに送信機に電力を供給する構造と、送信機と受信機を無線で接続する構造を有する研磨装置を示す。図15において図1と同一符号は同一要素を示している。
図15において、シャフト9の上には、モーターを有するシャフト駆動部21が取り付けられ、このシャフト駆動部21は弾性体22を介して揺動装置23に取り付けられている。揺動装置23は、ベルト24に接続されて研磨布1aの上面に沿って縦横に移動可能に配置されている。
また、上側定盤3には振動検出素子(例えば加速センサー) 10が、上側定盤3の中心から定盤半径の1/4〜3/4だけ離れた位置に取り付けられている。また送信機13が取付けられた筐体8の外周面には送信機13に接続された送信用アンテナ25が少なくとも1周形成されている。また、揺動装置の外周面には受信用アンテナ26が少なくとも1周形成され、受信用アンテナ26は弾性体22及びベルト24に沿って配置された信号線27を介して図1に示した受信機14に接続される。なお、受信用アンテナ26は、接地されたシールド線27aに囲まれている。
一方、シャフト9の周囲には、その表面から絶縁された環状導体28が形成され、この環状導体28には導電性のブラッシ29が接触しており、導電性ブラッシ29は外部に引き出される電力供給用配線に接続されている。また、環状導体28からはシャフト9の内部又は外部に沿って電線30が引き出されており、その電線30は送信機13の電源端子に接続されている。その電線30は絶縁物によって被覆されている。
なお、上側定盤3を筐体8に支持するための弾性部7が絶縁体である場合には、上側定盤3と送信機13の間にはアース電位を確保するために上側定盤3を導電体により形成するか或いは上側定盤3の表面に金属を蒸着してそれらをアース線に接続する必要がある。これにより接地電位であるシャフト9の長さ方向に引かれる電線30は1本で足りることになる。
このような研磨装置によれば上側定盤3をシャフト9により回転する場合でも、送信機13から出力された信号は上側定盤3の周囲にある略環状の送信用アンテナ25を通して無線で送信される。その無線信号は、シャフト駆動部21の周囲の略環状の受信用アンテナ26を介して図1に示す受信機14に入力することになるので、無線信号がシャフト9によって妨害されることがなくなる。この場合、揺動装置23が揺動しても送信用アンテナ25と受信用アンテナ26は同時に揺動し、そのうちの送信用アンテナ25が回転する。なお、受信用アンテナ26は回転することはない。
送信用アンテナ25と受信用アンテナ26は、それらのうちの一方をシャフト9の周囲に略環状に配置すれば送受信が可能になる。しかし、シャフト9の揺動による送受信状態の不安定性を避けるためには、上記したように送信用アンテナ25と受信用アンテナ26の双方を環状にした上で、それらを同軸上に配置することが好ましい。
一方、送信機13で消費される電力は、シャフト9に沿って配置された電線30を通して供給されるので、送信機13に電力を供給するための電池の交換の手間が不用となり、しかも、電力不足による研磨の中断を回避してスループットを向上することができる。
なお、研磨布1aは、第1実施形態のように励振部が形成されたものであってもよい。また、電力供給系統及び信号伝達系統以外は、第1実施に示した構造を採用してもよい。
(第7実施形態)
第1実施形態や第6実施形態に示した研磨装置を複数台使用して、複数の被研磨物を並行して研磨する場合に管理システムを構築する必要があるので、その実施形態を図16に基づいて説明する。
図16において、上記した構造を有する複数の研磨装置m1〜mnには、周波数の異なる信号f1〜fnを送信する上記した送信機13が取付けられ、送信機13にはそれぞれ上記した振動検出素子10が接続されている。また、それらの送信機13は、フィルターにより特定の振動周波数帯域のみを送信するように構成されている。
各送信機13から出力された信号は送信用アンテナ25及び受信用アンテナ26を介して無線で伝搬される。
送信用アンテナ25の上方の受信用アンテナ26に入力した周波数の異なる信号f1〜fnは合成器31を介して受信機32に入力するようになっている。受信機32は、信号解析部33が一定量の受信データを要求する毎に複数の送信機13の信号f1〜fnを時分割で順に同調して、同調した信号を信号解析部33に送信するとともに、オートチューニング(自動周波数制御) 機構を有している。オートチューニング機構は、同調すべき信号の周波数の変動を参照周波数の範囲内に自動的に保持する機構なので、各信号f1〜fnの周波数が温度変化などにより僅かにずれても、受信不能といった不都合が回避される。このため、送信機13の送信周波数が温度変化などによって変動しても、常に最良の受信状態で受信される。
また、受信機32は、同調した信号と同一か最も近い周波数の信号f1〜fnとして信号解析部33に伝送するので、信号解析部33での信号処理は正常に行われる。
信号解析部33では、時分割された信号f1〜fnの情報に基づいて各研磨装置m1〜mnの駆動制御部17を制御して定盤の駆動、停止や圧力調整、或いは定盤の回転数の調整を行ったり、又はドレッサーを駆動、停止する。
なお、チューニングは、周波数の大きさ順に行ってこれを何度も繰り返す。
以上により、複数の研磨装置を効率良く且つ最適に管理することができる。
(第8実施形態)
本実施形態では、研磨面の円周方向(又は回転方向)の振動によって研磨を制御する研磨装置について説明する。図17は、第8実施形態を示す研磨装置の側面図であり、図18は、ヘッドの底面図を示している。図17において、図1及び図15と同一符号は同一要素を示し、また、図示しない部分は図1及び図15の何れかと同じ機構となっている。
本実施形態において、エアバック式の筐体8と上側定盤3を接続する弾性体7は特に材料を限定されるものでないが、布を挟み込んだ多層構造のゴムシートを使用したり、そのゴムシートを複数枚重ねたものを使用すれば機械的強度の大きいものが得られる。
上側定盤3の上には振動検出素子10Aが取付けられていて、図18に示すように上側定盤3の円周方向の微小振動を検出する向きとなっている。その振動検出素子10Aは、その向きを変えることによって検知すべき振動の方向を選択できる構造となっている。前述した第1〜第7の実施形態における振動検出素子10は上下の振動を検出する向きに配置されている。
振動検出素子10は、信号線を介して筐体8上の送信機13Aに接続されている。送信機13Aの信号出力端は筐体8外周面の環状の送信用アンテナ25に接続され、また、送信機13Aの電源端は図15で示した環状導電体28に接続されている。送信用アンテナ25から出力される無線信号を受ける側の機構は、図15で示した環状の受信用アンテナ26を含む構成となっている。
なお、図17中符号34は、後述する第1のアンプ34aとフィルタ34bと第2のアンプ34cを集積した回路を示している。
その送信系と受信系の回路は図19のようになる。
振動検出素子10Aは、第1のアンプ34aとフィルタ34bと第2のアンプ34cを介して送信機13Aに有線で接続されている。振動検出素子10Aは、50mV/G(約50μV/ガル)相当以上の感度であってノイズレベルが1mG(約1ガル)相当以下のものが使用され、振動検出素子10Aとして加速度センサを使用する場合には、その共振周波数が20kHz以上であり、または、研磨の進行に伴って振動強度が変化する周波数に共振をもつものである。
第1のアンプ34aは増幅率500、フィルタは10Hz〜30KHzのバンドパス、第2のアンプ34cは増幅率1/50の特性のものが使用され、送信機13Aとして例えばFM送信機が用いられる。
そのアンプ34a,34cはそれぞれ市販のオペアンプを適用できる。また、フィルタ34bは、研磨条件や被研磨物の変化や研磨装置改造による振動モードの変化にすぐに対応できるように、グラフィックイコライザのように中心周波数の異なるバンドパスフィルタを複数個組み合わせたものを使用したり、或いはプログラマブル・バンドパスフィルタを使用し、各振動周波数帯域の透過率を変えるようにしてもよい。グラフィックイコライザを用いたフィルタの特性の一例を図20に示す。なお、各バンドパスフィルタは、それぞれ、減衰率が34dB/oct以上、帯域幅が中心の周波数と同等以下又は1kHz程度のものを使用することが好ましい。
一方、受信系では、受信用アンテナ26に接続された受信機14は、図1に示す信号解析部15、駆動制御部17を有する処理部35を有し、処理部35はFFTアナライザ又はCPUボード又は所謂パソコンによって構成される。処理部35は例えば10Hz程度から30kHz程度までの振動周波数のスペクトルを得るようにする。
以上は研磨固有の振動を測定するための構造について説明しているが、実際には、下側定盤2や上側定盤3を回転するためのモータなどの振動が振動検出素子10Aに入力する。そこで、研磨装置自体の振動が原因となる上側定盤3の振動が50mG(約50ガル)以下になるような構造にすることが好ましい。50mG以下か否かを判断する方法として、被研磨物Wとして平坦なウェハを用いた場合に上側定盤3に及ぼす研磨振動を測定すればよい。
次に、上記した構造の研磨装置を使用して研磨終点を検出することについて説明する。
まず、下側定盤2と上側定盤3を回転させるとともに、下側定盤2の下に貼り付けた被研磨物Wを下側定盤2上の研磨布1に押しつけて被研磨物Wの研磨を開始する。研磨布1は第1実施形態で説明したような格子状の溝4と振動部5を有している。
上側定盤3の円周方向の0〜25kHzの振動の周波数とその振動の強度の関係が研磨時間によってどのように変化するかを調べたところ図21のような結果が得られ、研磨が進むにつれて振動周波数の帯域全体で振動強度が低下することがわかる。
このことから、振動検出素子10Aによって検出された振動信号は、送信機13A、受信機14などを介して処理部35に入力する。処理部35では、基準値であるリファレンススペクトルと測定中の振動信号とを比較し、例えば、特定の周波数域における振動強度の積分値とリファレンススペクトルの積分値との比が所定の閾値以下になったとき、或いは、特定の周波数域の振動強度の積分値の時間変化量が所定の閾値以下になったときに、研磨の終了と判定する。
振動信号の検出精度は、無線送信機13Aの性能に大きく影響する。第1及び第2のアンプ34a,34cとフィルタ34bに要求される特性や送信する振動信号は次のような手順を踏んで決定される。
まず、有線で上側定盤3の振動強度を測定する。次に、振動強度信号を増幅した電圧がフィルタ34bの許容入力電圧を越えないような値となるように第1のアンプ34aの増幅率を決定する。さらに、フィルタ34bを通過した振動強度信号を増幅して得られる電圧が送信機13Aの許容入力電圧を越えないような値になるように第2のアンプ34cの増幅率が決定される。
また、フィルタ34bの振動強度周波数の透過周波数帯域を決定する場合にはまず、実際に研磨を行いながら無線送信し、研磨が進行しても振動強度が変化しない振動周波数を調べ、この振動周波数を透過させないような透過周波数帯域を決定する。研磨が進行しても振動強度が変化しない振動成分は、研磨装置自身に起因する振動ノイズである。
研磨布1の劣化や研磨液の濃度変化は、予め測定しておいたスペクトルと実測のスペクトルの形状を比較することにより知ることができる。これらの情報が不要であって研磨終点のみを知りたい場合には、送信機13Aの前段で特定の周波数域の振動強度信号をその実効値に対応する直流信号に変換し、これを送信機13Aから受信機14に送るようにしてもよい。
また、振動信号を無線送信する際に振幅レンジを拡大するために、振動信号を対数アンプ34cで増幅してから送信機13Aで無線送信し、その無線信号を受信機14で受信した後にその受信信号を処理部35内の逆対数アンプで元の信号を再現するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、図15に示すと同じように環状導電体28を使用して発振器13Aに電力を供給する構造となっているが、電池を使用する構造としてもよい。また、送信機13Aは、無線でなく、電源供給用に使用した環状導電体28と同じ構造の信号用環状導電体を使用して有線で受信機14に送信してもよい。さらに、送信機13Aは、筐体8の外部に取り付けているが、振動検出素子10と同様に筐体8内の空洞の内部に取り付けてもよい。
図17では、1個の下側定盤2の上に1個の上側定盤3を配置したが、1個の下側定盤2の上に複数個の上側定盤を配置したり、或いは下側定盤2と上側定盤3の組を複数備えた研磨装置を使用する場合には、研磨の進行や終了を各ヘッド毎に上記した構成を設けて、各々独立に研磨を制御するようにする。
本実施形態で説明したアンプやフィルタは、第1〜第7の実施形態の研磨装置に適用してもよい。
(第9実施形態)
上記した第8実施形態では、1つの振動検出素子10Aを取付ける場合について説明したが、振動検出素子10Aと同じ重さの錘又は第2の振動検出素子を上側定盤3の上に振動検出素子10Aと中心対称にして取付けると、回転する上側定盤3のバランスがよくなって回転時の振動が安定する。
第2の振動検出素子を取付けた装置を示すと図22のようになり、この構成では以下に示すような回路構成を採ることによって2つの振動検出素子10A,10Bの振動ノイズを低減できる。
その振動ノイズは測定方向に対して直角方向の振動成分によるものである。振動検出素子10A,10Bは、一般に、測定方向に対して直角方向となる振動成分に数%の感度を有する。本実施形態において、その直角方向の振動成分は縦方向の振動である。
図22において、2つの振動検出素子10A,10Bにそれぞれ入力する2つの縦方向の振動ノイズは、図23(a),(b)に示すように逆方向の場合と、図24(a),(b)に示すように同方向の場合がある。
図23に示すような逆方向で縦の振動ノイズが生じる場合には図25(a)に示すように、振動検出素子10A,10Bの出力端に接続された第1のアンプ34d,34eの出力端に加算器36を接続し、その加算器36の出力端をフィルタ34bに接続することになる。この場合、図22(a)の実線の矢印で示すように、2つの振動検出素子10A,10Bはそれぞれ上側定盤3の回転振動を同一円周方向で検出するように配置する。
このような振動検出素子10A,10Bの配置にして、第1のアンプ34d,34eの出力側に加算回路36を挿入することによって縦方向の振動ノイズを打ち消して低減することができ、しかも、フィルタ34bに入力する円周方向の振動強度が2倍になるのでS/N比が改善される。
これに対して、図24(a),(b)に示すような同方向の縦の振動ノイズが生じる場合には図25(b)に示すように、振動検出素子10A,10Bの出力端に接続された第1の増幅器34d,34eの出力端に減算器38を接続し、その減算器38の出力端をフィルタ34bに接続する。この場合、図22(a)の破線の矢印で示すように、2つの振動検出素子10A,10Bはそれぞれ上側定盤3の回転振動を逆方向で検出するように配置する。
このような振動検出素子10A,10Bの配置にして、第1のアンプ24d,34eの出力側に減算器38を挿入することによって逆向きの振動ノイズを加えて振動ノイズを低減できる。しかも、逆方向に検出された円周方向の振動強度は、減算器38によって絶対値が2倍になるので、フィルタ34bに入力する円周方向の振動強度が2倍になり、S/N比が改善される。
上側定盤3が、図23(a),(b)に示すような縦振動となるか或いは図24(a),(b)に示すような縦振動になるかは研磨装置や研磨条件によって異なるので、予めどちらの縦振動をとるかを調査しておく必要がある。そのような縦の振動は、2つの振動検出素子10A,10Bの取付け方向を変えたり、信号の加算器と減算器を入れ換えて、一番ノイズの少ない構成を選べばよい。
なお、本実施形態では、円周方向の振動成分を検出対象とし、縦方向の振動成分を除くようにしたが、縦方向の振動成分を検出対象とする場合には、円周方向の振動成分を除去対象とするが、この場合には2つの振動検出素子の向きを調整する必要がある。
(第10実施形態)
図26は、本発明の第10実施形態を示す側面図である。
本実施形態は、研磨中にゴミにより研磨面が傷つくことを防止するとともに、ゴミの除去を容易にするものである。研磨面を傷つけるようなゴミとしては、研磨液に含まれる酸化シリコンが乾燥して固まったものや、被研磨物のかけらなどがある。
図26において、デッドウェイト型の上側定盤41を使用し、その表面には加速度検出素子(振動検出素子)42が取り付けられている。また、上側定盤41の下には被研磨物Wとして例えば半導体ウェハを張りつけ、これを下側定盤43に張り付けられた研磨布44の上に載置する。
また、下側定盤43の側部には光反射率が高いマーカー45が取付けられ、マーカーが所定位置に有るか否かは下側定盤43の側方のマーカー位置検出器46によって検出される。マーカー検出器46は発光素子と受光素子を有し、マーカー45による反射光により受光量が増加するので、マーカー45の有無が検出される。
上側定盤41の加速度センサー42の信号は、第1実施形態で示した送信機13、受信機14を介して信号解析部15に入力される。
上記した研磨装置において、下側定盤43を回転させて研磨布44により被研磨物Wを研磨する。この場合、被研磨物Wは図示しないアームによって一定の方向に移動される。そして、マーカー45が1回転する間に加速度センサー42によって検出された上側定盤41の振動情報を図1に示す送信機13、受信機14を介して信号処解析部15に少なくとも1度、或いは連続して入力する。
正常に研磨がなされる場合には図27(a)のような振動周波数と振動強度のスペクトルが得られるが、研磨布44上のゴミによって被研磨物Wの研磨面が傷付くと図27(b)のように一部の周波数で振動強度が増加する。増加の判断基準となるスペクトルは、予め調べておいてもよいし、傷付く前のスペクトルを用いてもよい。
そのような、振動強度の異常によってゴミの存在が明らかになった場合に、駆動制御部17は、ノズル11を通して水を研磨布44に供給させながらドレッサー12を駆動して研磨布44の表面からゴミを下側定盤43の外部に排出させた後に、再び研磨を再開させる、といった制御を行う。
ところで、ゴミの位置を特定したい場合には次のような処理を行う。
研磨の際には、上側定盤41の振動情報を信号解析部15に連続して入力すると、マーカー検出器46によってマーカー43の検出時が分かるので、これを時間軸にマーカー位置として記録し、併せて異常信号を記録してゆくと、例えば図28のような特性が得られる。マーカー位置は一定周期で現れるので、研磨面にゴミによる傷が発生した場合には、異常信号の発生時を時間軸に記録する。これにより、マーカー通過の時間的間隔とマーカー通過時から異常信号発生までの時間との割合から、研磨布44の中心からマーカー45を結ぶ線を基準にしてそこからゴミの発生した角度θが容易に求まる。
そこで、信号解析部15は駆動制御部17に駆動信号を送ってドレッサー122を駆動して、少なくともその角度θの法線に沿って研磨布44の表面をドレッサー12を駆動させるとゴミの除去が短時間で行われる。
また、ドレッサー後にも同じ位置で異常信号が発生したり、被研磨物Wを交換しても同じ位置で異常信号が発生するような場合には、研磨を即時停止するとともに異常信号を発生させて作業員に知らせ、作業員は異常信号の原因を取り除くことなる。これにより、次の被研磨物Wの研磨は正常な状態で開始することができるので、無駄に消費される被研磨物W、例えば半導体ウェハの数が減り、また研磨効率が良くなる。
ところで、図28に示すように、マーカーの1周期以内で異常信号が止まれば異常信号がゴミによるものであることがわかる。しかし、1周期以上続く場合にはゴミ以外の原因による異常信号の発生の可能性が大きいので、この場合には信号解析部によって研磨を完全に停止させ構成にし、停止指令と同時に異常信号音を発するようにして作業員に知らせる必要がある。
(第11実施形態)
本実施形態では、振動検出素子の出力のS/N比や振動検出素子に入力する振動のS/N比を改善するための装置を図29〜図35に基づいて説明する。振動検出素子に入力する振動のノイズは、被研磨物Wと研磨布1の摩擦によって生じる振動以外の振動であって主にモータから発生し、このようなノイズを以下にバックグラウンドノイズという。
なお、図29〜図35において、振動検出素子10を上側定盤(ヘッドの底板)3の上面中央に置いているのは、被振動検出物Wと研磨布1の相対速度が安定して検出の誤差が小さくなるなるからである。本実施形態の基本的な構造は第1又は第7実施形態と同じであり、それらの実施形態と同じ符号は、同じ要素を示している。
図29は、ヘッドの筐体8内の空洞において、防音/吸音材50により間隙を介して振動検出素子10を囲む構造を採用したものである。防音/吸音材50は、上側定盤3が自由に振動できるような蛇腹式スプリング、ゴム等の弾性材や多孔性樹脂などにより構成されている。
このような構成を採用することにより、筐体8内の空間を伝達するバックグラウンドノイズを防音、吸音して、振動検出素子10に入力するS/N比を向上することができる。しかも、防音/吸音材50と振動検出素子10の間に間隙が形成されているので、防音/吸音材50と振動検出素子10の摩擦による新たなノイズが発生することがない。
上側定盤3の固有振動周波数とバックグラウンドノイズの振動周波数とを一致させないようにすると、さらにS/N比が改善される。
なお、図29中符号51は、被研磨物Wの厚さバラツキを吸収するために上側定盤3と被研磨物Wの間に介在されたインナーシートを示している。
図30は、図29に示した振動検出素子10と上側定盤3の間に共振板52を介在させた装置である。共振板52は、測定しようとする特定の振動周波数で共振するもので、例えばスプリングコイルなどから形成されている。
これによれば、共振板52の共振周波数と相違する周波数のバックグラウンドノイズは、共振板52によって遮蔽されて振動検出素子10への入力が妨げられるので、振動検出素子10への入力のS/N比は向上する。
図31は、図30に示した共振器10の側方にアンプ53を取り付けた装置である。
振動検出素子10自体のインピーダンスが高い場合に、アンプ53との接続配線が長ければ振動検出素子10の出力信号にノイズが入り易くなるが、共振器10とアンプ53を上側定盤3上に取り付けることによりその接続配線を短くして振動信号に加わるノイズを大幅に低減でき、これによりS/N比が改善される。
図32に示す研磨装置のヘッドにおいて、上側定盤3とインナーシート51の双方にはそれらを貫通する孔54が形成されており、その孔54の中には振動検出素子10と被検出物Wに接触する振動伝達用針55が挿通されている。研磨布1との摩擦によって被検出物Wに生じた振動は、インナーシート51によって吸収されずに振動伝達用針55を介して振動検出素子10に伝達されるので、振動検出素子10に入力する振動強度が大きくなってS/N比が向上する。
図33は、図29に示した振動検出素子10と上側定盤3の間に振動板56を介在させ、且つ筐体8の上にバックグラウンド測定用の第2の振動検出素子57を搭載した装置である。第2の振動検出素子57から出力されたバックグラウンドノイズの信号は、振動制御部58によって逆位相に変換された後に、その振動制御部58によってその逆位相の信号と同じ波形で振動板56を振動させるようにした装置である。振動板56は、例えばピエゾ素子などの圧電材料から形成されたものがある。
この装置によれば、振動板56により発生する振動は、振動検出素子10に入力するバックグラウンドノイズを打ち消すので、研磨布1と被研磨物Wにより発生する振動を選択的に振動検出素子10に入力することが可能になり、S/N比が大幅に向上する。
ところで、振動検出素子10の共振周波数f0はそれ以外の周波数に比べて5〜10倍の感度がある。しかし、検出しようとする振動の周波数f1がその共振周波数f0と一致しない場合がある。この場合には、図34に示すように、検出した周波数f1の振動を周波数変換回路59に入力して、この周波数変換回路59により検出した振動周波数f1と同じ強度又は比例した強度で振動板56を周波数f0で発振させ、その周波数f0の振動を振動検出素子10にフィードバックすることにより、高感度な振動検出が可能になる。この場合、振動数f0の振動について第1又は第6実施形態で示したような処理を行う。
図35は、図29に示した振動検出素子10を上側定盤3の上に複数個配置するとともに、それらの振動検出素子10と上側定盤3の間に個々に振動板52を介在させた装置である。そして、各振動板52に一定の信号を加えることにより、振動検出素子10の感度の検査を行って検出しようとする振動の周波数に対し最も感度が良い振動検出素子10を図示しない選択回路により選択するようにしている。
これにより振動検出素子10の特性のバラツキを回避するとともに、劣化した振動検出素子10の代わりに電気回路によって別なものに選択することができ、振動検出素子10の交換作業の手間を軽減することができる。
S/N比を改善する上記以外の方法として、振動検出時に研磨装置の一部又は全てのモータの電源供給を停止させてもよく、これによれば、バックグラウンドノイズは大幅に減少する。その停止時間は数秒以下とし、この程度の時間であればヘッド及び下側定盤2は慣性によって回転するので研磨処理は続行される。また、振動検出には数秒以下の時間あれば十分であり、振動検出に支障はない。そのモータの電源供給の停止は、図1に示すような駆動制御部17の制御信号によって行われる。
また、振動検出素子10の出力は、第8実施形態に示したようなアンプ、フィルタを通して外部に取り出すか、或いはA/D変換してから外部に取り出すことにより、信号伝達系で生じるノイズを低減することができる。A/D変換した信号を無線送信する場合には、図17に示す発振器13Aと振動検出素子10Aの間にA/D変換器(不図示)を介在させる。
さらに、ヘッドが揺動しているような場合には、ヘッドの方向が変化する場所ではその揺動によるバックグラウンドノイズが大きくなるので、振動の検知を避ける。
なお、各振動検出素子の一例として米国バイブロメータ社の圧電素子加速センサーの型名CE507M101、CE507M301があり、これらのセンサーを使用する場合には、図36に示すように、高感度が得られる共振周波数f0で振動強度を検出するのが好ましい。このことは上記した各実施形態についても適用できる。
次に、測定結果を図37及び図38に示す。
図37は、振動の周波数スペクトルが研磨時間の経過とともにどのように変化すかを示す一例である。これによれば、研磨時間の経過とともに、振動強度が低下することがわかる。
図38は、図37のようなスペクトルにおいて、特定の周波数範囲のスペクトルを積分し、一定時間経過毎の積分値の差を算出して記載したものである。これによれば、研磨時間経過とともに、積分値の変化量が小さくなって研磨による平坦化が進行していることがわかる。積分値の変化が無くなった時が研磨の終点となる。この終点の判断は上記した各実施形態についても適用できる。
(第12実施形態)
図39(a)は、本発明の第12実施形態に係る研磨装置の機械部分を示す断面図、図39(b)は、下側定盤を示す平面図である。図40は、本発明の第12実施形態に係る研磨装置の信号処理部分を示す回路図である。なお、これらの図において、図1、図15と同じ符号は同じ要素を示している。
図39(a)において、シャフト駆動部21の側方には上側定盤3の位置を検出する位置検出器61が配置されている。この位置検出器61は、シャフト駆動部21に取り付けた検知板62に光を照射する発光素子61aと、検知板62からの反射光を受光する受光素子61bを有している。位置検出器61は、受光素子61bの入射光量に応じてシャフト駆動部21からの距離Lを測定し、その測定データを後述するコンピュータ77に入力するものである。発光素子61aとしては例えば半導体レーザを使用し、受光素子61bとしてはフォトダイオードを使用する。
下側定盤2には、縦横に複数本の溝4aが切られている研磨布1dが張り付けられており、研磨布1dは、下側定盤2とともにモータMによって研磨時に回転される。その研磨布1d上では、研磨の際に、上側定盤3が点aと点bの間を往復動し、さらに上側定盤3は定速で回転するようになっている。その上側定盤3の往復動及び回転は、弾性体7、筐体8、シャフト9を介してシャフト駆動部21から伝達される。シャフト駆動部21の動作は第1実施形態と同様にして駆動制御部17によって制御される。
上側定盤3に取り付けられた振動検出素子10の出力端は、図40に示すように、整流器63を介して電圧が印加され、さらにコンデンサ64、アンプ65、ローパスフィルタ66及びハイパスフィルター67を介してFM送信機34Bに接続されている。振動検出素子10から出力された振動信号は、コンデンサ64で機械的及び電気的ノイズが除かれ、アンプ65により増幅された後に、ローパスフィルタ66とハイパスフィルタ67によって特定振動数帯域に狭められてFM送信機34Bに入力する。その特定振動数帯域は、例えばローパスフィルタ66が18kHz以上の振動信号を除去し、ハイパスフィルター67が8kHz以下の振動信号を除去するものである場合には、8kHz〜18kHzとなる。
FM送信機34Bは、振動信号を筐体8周囲の送信用アンテナ25から無線でFM受信機69へ送信する。
シャフト駆動部21の周囲に取り付けられた受信アンテナ26に入力した振動信号は、図40に示すように、FM受信機69で受信される。
FM受信機69の出力端には記録装置70が接続されていて、記録装置70に格納された振動信号データは、データライブラリの作成、周波数解析、処理回路の調整などに利用される。また、FM受信機69の出力端は、1kHzハイパスフィルター71、第1のアンプ72、整流回路73、0.5Hzローパスフィルター74、第2のアンプ75、A/D変換器76を介してコンピュータ77に接続されている。そのハイパスフィルター71は振動信号の直流成分をカットするもので、また、整流回路73とローパスフィルター74は振動信号の特定振動数帯域を積分して振動数の実効値を求めるものである。
上記したコンピュータ77では振動信号を図41のフローチャートに従って演算及び表示が行われる。
まず、上側定盤3の回転中心が研磨布面上を移動せずに、上側定盤3の回転のみによって研磨対象物Wを研磨する場合について説明する。
コンピュータ77では、連続して入力する振動信号の実効値を1秒間に10個の割合(10Hz)で順次サンプリングし、ついで、サンプリングした10個のデータD1の平均値を計算し、その平均値を1つの点データD2とする。
次に、点データD2をそのまま経時的に画像表示すると凹凸の多い線が得られるので、その線を平滑に表示するために5つの点データD2の平均値を求めて点表示データD3を得る。この場合、演算された順に1つずつ点データD2を繰上げながら5つの点データD2の平均を求めるようにすると、点表示データD3は1秒間に1個得られることになる。このような平均を移動平均という。
この移動平均により得られた点表示データは、順次、コンピュータの画像表示部77Dに描かれ、点表示データが複数描かれることにより振動強度曲線が得られる。
ところで、サンプリングされたデータD1は、上記した実施形態から推測されるように、上側定盤3が単に回転するだけの場合には研磨に進むにつれて緩やかに減衰していくことになる。
しかし、上側定盤3が回転以外の動作、例えば研磨布1d上で往復動作を伴う場合には、点表示データD3は図42(a)の一点鎖線で示すように交流成分を含むようになるので、研磨の終点が検出しにくくなる。例えば、図42(a)の一点鎖線の曲線を微分すると図42(b)の一点鎖線のような曲線となるので、その微分値が零になった時点を研磨の終点として判断することはできない。
そこで、上側定盤3が研磨布1d上で点a・点b間で往復動作する場合には、10Hzでサンプリングした実効値のデータD1をそれぞれ補正係数ηで割算する補正を行い、その後に点データD2、点表示データD3を求め、ついで点表示データD3を画像表示部77Dに表示すると、図42(a)の実線で示す曲線が得られる。そしてその曲線の微分を示す曲線は図42(b)の実線で示す曲線が得られる。通常、往復動作の周期は数十秒程度以上なので、点データD2に対して補正関数で割算してもよい。
回転している上側定盤3が、図39(b)に示すように、下側定盤2の回転中心O0からの直径方向にある2つの点aと点bの間を往復する場合には、距離rの時間的変化は図43(a)のようになり、補正係数ηは図43(b)のようなr2 /r1 2となる。例えば、点aと点b間の距離が32mm、上側定盤3の移動速度vが2mm/秒である場合には、図43(b)の波形の周期Tは32秒となる。この場合のr1は134mmである。
このような補正係数ηは次のようにして決定される。
研磨布1dの回転中心からの距離rにある研磨対象物Wの研磨面の微小部分Pが角速度ωで回転する研磨布1dにより擦られることを考えると、微小部分Pと研磨布1dとの相対速度はrωの関数となる。この距離rは、位置検出器61からの位置データに基づいて求められる。なお、微小部分Pは上側定盤3の回転中心とした。
また、研磨布1dの表面には図44(a),(b)に示すように、一定の密度で溝4e又は小孔4fが掘ってあるものがあり、この場合には、研磨布1dが1回転する間に微小部分Pが溝4e又は小孔4fと接触する接触回数pはrωの関数となる。また、図44(c),(d)に示すように、溝4g又は小孔4hが、研磨布1dの回転中心から放射状に拡がっている場合には、研磨布1dが1回転する間に微小部分Pが溝4G又は小孔4Hと接触する接触回数pはωの関数となる。なお、溝及び小孔が形成されていない研磨布を使用する場合には、微小部分Pの溝及び小孔による影響を考慮する必要がなくなる。
そこで、上記した相対速度rωと接触回数pとの積を補正関数ηとした。補正関数ηの基本は表1のようになる。
なお、研磨液の種類、研磨布の材料などの要因は研磨中には殆ど変化しないと考えられるので、補正係数ηには含めないことにした。また、上側定盤3が回転以外の動作を伴わない場合にはrは一定であるのでrを1とし、また、上側定盤3の回転数は研磨中に変化しないのが一般的であり、ωを1として補正関数ηを決めてもよい。さらに、補正関数ηは、係数を含むようなものであってもよい。例えば、図39(b)、図43(b)に示すように、距離rを距離r1(定数)で割ってもよい。
以上のように、補正されたサンプリングデータDsは、図41に示すように、10Hzで平均化された後に、点データD2に変換され、ついで、点表示データD3に変換される。そして、点表示データD3は、画像表示部77dにおいて、例えば図42(a)の実線のように研磨時間と振動強度の関係で表示される。
さらに、コンピュータ77内では点表示データD3に基づいて描かれた曲線の微分値(dV/dt)又は時間変化量ΔVが演算される。その演算結果は、例えば図42(b)の実線のように曲線として画像表示部77dに表示される。
点表示データの時間変化量ΔVの演算は、例えば、現在の点表示データD3から10個前の点表示データD3を差し引いた値で示される。この例の場合、時間変化量ΔVは、1秒間に1個のデータとなって表示される。
その微分値(dV/dt)又は時間変化量ΔVが零又はそれ以上になった時点を研磨終点とし、その終点検出結果は画像表示部77Dに表示される。
以上のような演算及び表示を行うコンピュータ77は、第1実施形態で示す駆動制御部17として機能するので、研磨終点を検出した時点で研磨の停止をシャフト駆動部21に指令する。
ところで、上側定盤3が研磨布1d上で2点a,b間を往復する軌跡は、研磨布1dの回転中心O0から直径方向にあるとは限らない。例えば図45(a)に示すように、直径方向に直交する直線状の軌跡となって存在したり、或いは図46(a)に示すように、ロボットのアームによって上側定盤3が揺動されて、上側定盤3の軌跡が円弧状になることもある。
これらの場合、上側定盤3の回転中心と研磨布1dの回転中心O0の間の距離rは、図45(a)に示す軌跡の場合には図45(b)のように時間的に変化し、また、図46(a)に示す軌跡の場合には図46(b)のように時間的に変化する。
コンピュータ77においては、位置検出器61によって検出されたデータに基づいて実効値測定時の距離rを演算し、補正関数ηとして利用する。
ところで、上側定盤3に回転動作だけを付与した場合には、補正関数ηを考慮する必要はなく、その点表示データによる曲線は図47(a)のようになり、その微分値を示す曲線は図47(b)のようになる。なお、図47(a),(b)における曲線Aは、TEOSを使用して形成されたSiO2膜を研磨した状態を示し、また、曲線Bは、そのSiO2膜の上にさらに窒化シリコン膜を形成した後にそれらの膜を研磨した状態を示している。
なお、上記した説明では、上側定盤3の振動強度に基づいて研磨終点を検出することについて説明した。しかし、研磨の進行状況は、シャフト駆動部21に内蔵したモータのトルクの変化としても捕らえられる。従って、上記したようにトルクの実効値を求めて、その実効値をサンプリングしたり補正する手段によって研磨状況を把握したり、終点検出をすることができる。
(第13実施形態)
本実施形態では、ヘッドと研磨布の摩擦による振動(音)を測定するのではなく、ヘッドと研磨布の摩擦力の変化に基づいて研磨状態や研磨終点を測定するようにした装置の一例を示す。
図48は、第12実施形態の要部を示す断面図及び底面図である。図48において、図1、図15、図17と同じ符号は同じ要素を示している。
図48(a),(b)において、研磨布1が上面に貼り付けられた下側定盤2は、シャフト駆動部21によって所定の回転数によって回転される。また、研磨布1の上面に押しつけられて研磨される被研磨物Wは、エアバック式のヘッドの底部にある金属製の上側定盤3の下面にインナーパッド51を介して貼り付けられている。上側定盤3の周囲には側壁3bが固定され、その側壁3bとヘッドの筐体(支持体)8は弾性部7を介して接続されている。筐体8の中央には、筐体8を回転させるための筒状のシャフト9が取付けられている。また、シャフト9及び筐体8の周囲には、筒状のヘッドカバー80が回転不可能に取り付けられており、ヘッドの研磨液による汚染が防止されている。
上側定盤3の上面には、上側定盤の横方向の変位(ずれ)量を縦方向の変位量に変換するための傾斜面(不図示)が形成されている。
筐体8の底面には、上側定盤3の側壁3bの変位を検出するための第1の変位検出器81が取り付けられ、また、ヘッドカバー80の底面には上側定盤3の側壁3bの変位を検出するための第2の変位検出器82が取り付けられ、さらに、上側定盤3の傾斜面の上方にある筐体8内の天井面には、傾斜面との距離の変位を検出するための第3の変位検出器83が取り付けられている。
第1、第2及び第3の変位検出器81〜83は針の伸縮によって変位量を検出する触針式変位計や、上側定盤側壁3bとの距離の変化によるキャパシタの変化量によって変位量を検出する容量式変位計や、上側定盤側壁3bとの距離の変化による磁束密度の変化量によって変位量を検出する渦電流変位計、光の反射によって距離を検出する光学式変位計などがある。
このような第1〜第3の変位検出器81〜83は、図48(b)のヘッドの底面図に示すように複数個配置してもよいし、1つずつ配置してもよい。また、第1〜第3の変位検出器81〜83は、図48(a),(b)のように全て設ける必要はなく、少なくとも1つ取り付ければよい。
第1〜第3の変位検出器81〜83の出力は、図19に示すようなアンプ34a,34c、フィルタ34bを介して送信機13bに接続され、送信機13bから発振された検出信号は受信機14を介して処理部35に入力するように構成され、処理部35は、変位信号の変化によって研磨終点を判断したり、研磨条件を変えることになる。
なお、特に図示していないが、上記した実施形態と同様に研磨液供給用ノズルやドレッサが研磨布1の上方に配置されている。
また、第1及び第2の変位検出器81、82に研磨液や水がかからないように透明なカバーで保護するようにしてもよい。第3の変位検出器83は、筐体8内に配置されるのでカバーは不要である。
次に、このような研磨装置を使用した研磨終点検出について説明する。
まず、平坦な標準ウェハをインナーパッド51の下面に取り付けて研磨動作を行わせると、上側定盤3の位置は図49(a)から図49(c)のように変化する。この時の第1〜第3の変位検出器81〜83の変位信号を規準信号として記録する。標準ウェハは規準信号測定後に外される。
次に、被研磨物Wとして層間膜が形成されたウェハをインナーパッド51の下面に取り付けて研磨作業を行わせると、図49(a)の位置に存在した上側定盤3は筐体8の移動にともなって図49(b)のように変位する。このような上側定盤3な変位が生じるのは、被研磨物Wと研磨布1との摩擦が大きいので上側定盤3周囲の弾性体7に加わる応力が大きくくずれるからである。このため、上側定盤3が筐体8の移動方向に引かれるように偏ってしまう。これを初期状態とし、このとき第1〜第3の変位検出器81〜83により検出された変位量を最大値とする。
そして、研磨を続けると時間の経過とともに被研磨物Wと研磨布1との摩擦が少しずつ小さくなり上側定盤3は図49(c)のように筐体8の中央寄りに位置するようになる。さらに上側定盤3の変化も小さくなって、図50に示すように、第1〜第3の変位検出器81〜83により検出される変位の変化量も徐々に小さくなり遂には変化量が零又は零に近くなり、この状態で研磨を停止する。研磨の停止は、筐体3を持ち上げることにより研磨圧力を低減するか被研磨物Wを研磨布1から離すことで行う。
なお、上側定盤3の変位の変化量によって終点検出がし難い場合には、図51に示すように、変位量と規準信号を比べて一致した時点あるいは差がほとんどなくなった時点を研磨の終了点としてもよい。終点検出がし難い例として、例えば被研磨物W内に終点検出のための異物質を形成している場合に、平坦化されてその異物質が露出したときにさらに変位が増加することがある。
このような定盤の変位を調べる場合には、変位検出器81〜83の出力信号の変化は緩やかであって直流成分として測定すればよい。また、筐体8、上側定盤3及び研磨布1の回転に伴って変位検出器81〜83の検出信号が数十Hzの低周波の場合にはその低周波成分のみを検出信号として抽出すればよい。バックグラウンドノイズのような高周波信号はフィルタによって除去されるので、変位検出器81〜83の感度は振動検出素子10に比べて高くなる。そのように検出信号が直流の場合、或いは周波数帯域が0〜100Hz前後と狭い場合には、高周波の場合よりも検出器への伝達精度が良いので、上記した振動測定の場合に比べて高感度測定が可能になる。
ところで、第1の変位検出器81は、ヘッドと同期して回転しているので、上側定盤3の測定する範囲が変わらないので上側定盤3の形状のバラツキの影響を受けない。しかし、第1の変位検出器81は、上側定盤3が1回転する間に上側定盤3との距離が変化するので、変位信号の強度や変位方向が自転周波数に対応して周期的に変化する。この自転周波数は、最大でも100Hz前後であり、しかもヘッドの回転と同期しているからS/N比を劣化させない。
第2の変位検出器82は、変位信号が周期的に変わらずに上側定盤3の変化量をリニアに検出できるが、筐体8や上側定盤3の形状のバラツキの影響を受けやすい。
第3の変位検出器83は、上側定盤3の上に形成した斜面の上下動を被検出対象としてるが、そのような斜面をなくして上側定盤3の上面の上下動を被検出対象としてもよい。
このような変位検出器81〜82を複数取り付けることにより、筐体8や上側定盤3の前後、左右及び上下の変位を測定することにより、総合的な情報量が豊富になってが受ける種々の力を総合して、ウェハの脱落、ウェハの破損、研磨条件(研磨液の供給、研磨布の異常、圧力の変更、回転数の変更など)についてさらに多くの情報を得ることができる。
また、上側定盤3の側壁3bの検出場所に図52(a),(b)に示すような半球形の突起91,92又は図示しない窪みを形成しておけば、同一場所における多方向の変位を検出することができる。
なお、複数の研磨対象物Wを同時に研磨する場合には図39に示すヘッドを複数同時に起動させることになる。各ヘッドの下での研磨のバラツキが10パーセント以下の場合には、全てのヘッドで研磨終点を検出する必要はなく一部のヘッド(1つでもよい)に変位検出器81〜83や上記実施形態の振動検出素子10を取り付けるだけいよい。この場合には、変位検出器81〜83又は振動検出素子10を取り付けたヘッドが終点に達したときに、全ヘッドの研磨を停止することによっても良好な結果がえられる。なお、その終点に達した後で所定の時間だけ研磨を過剰に行ってもよい。
また、全てのヘッドに振動検出素子や変位検出器を取付けるには、研磨の終点検出を終えた順にヘッド(上側定盤3)を上昇させて研磨を停止させて全ての研磨が終わるまで待機させてもよい。
複数のヘッドの研磨の停止指令は、図1や図19に示した制御部17,35によって行わせる。
以上述べたように本発明によれば、研磨時の振動を誘発する機構を研磨布に形成するようにしているので、研磨時に生じる振動の振動強度が大きくなるとともに、振動検出素子により検出できる振動周波数帯域が広くなって、研磨条件を緻密に制御でき、また研磨の終点検出を容易にできる。そのような機構としては、研磨布に複数の溝を形成し、その溝に囲まれた領域での振動を誘発させるものがある。
この場合、研磨布や定盤の内部に空洞を形成すると、誘発された研磨時の振動が増幅されて、振動検出の振動強度の変化の把握を容易にできる。
また、振動検出素子から得られる振動情報を周波数分析し、研磨以外の原因による固有振動成分を差し引いた振動強度を時間毎に積分し、積分値が基準値を下回った時、又はその積分値の時間的変化が基準値を下回った時の何れかの時点で、研磨停止の信号を送る信号解析手段により研磨を停止するようにしたので、研磨の終点検出が容易にできる。
その信号解析手段では、研磨開始から研磨停止までの時間が設定時間よりも短い場合と、前記積分値の時間的変化が指定値を越えて減少した場合とのいずれかで、研磨布劣化信号を示す信号を出力するので、研磨の終了か研磨布の劣化かの判断が容易になり、研磨作業を最適にできる。
研磨の際に、特定の振動周波数の振動強度の減少率が他の振動周波数のそれに比べて大きい場合には、研磨が一様に行われていないことが実験的に確認されているので、そのような振動強度の減衰を検知して研磨条件を変えて研磨が一様になるように研磨条件を変えるて研磨を最適にできる。
さらに、研磨の際の振動検出器による振動の減衰量を実効値として捉え、この実効値の変化を時間毎に測定してその変化の積分値又は一定時間の変化量が零又はそれ以上になった時点を研磨の終点検出とする場合であって、第1の定盤が回転の他に研磨布上を移動する動作を伴う場合には、第1の定盤の位置を含む関数によって実効値を割ることにより検出信号を補正すると、研磨の終点検出が速く且つ正確に検出できる。
また、本発明によれば、研磨時の振動の検出する振動検出素子の出力を無線で外部に送信する場合に、送信アンテナと受信アンテナを同軸上に配置するようにしたので、アンテナが回転したり揺動のある状態ででも送受信を安定にすることができる。
さらに、定盤に取付けられる振動検出素子や送信部に電力を供給する場合にはその定盤を回転するシャフトの周囲に環状導電体を取付け、この環状導電体に接触するブラッシを通して電力を供給するようにしているので、電池交換の手間や電力不足による作業停止といった事態を回避できる。
また本発明によれば、複数の研磨を同時に行い、研磨情報を無線で送受信する場合に自動周波数制御機構を用いているので、温度変化による周波数変動が生じても安定した受信状態にすることができる。
さらに、本発明によれば、研磨時において、定盤に取付けられた振動検出素子により検出された振動強度の異常を検出して、振動強度の異常検出時間が定盤の回転周期よりも短い場合にゴミの存在を示す信号を出力する信号分析部を設けるようにしているので、その後に続く被研磨物の研磨面のゴミによる傷の発生を未然に防止できる。
さらに別の本発明によれば、内部が空洞で機密保持される筐体から防振されたエアバック式の上側定盤を有する構造において、円周方向の振動を検出するような振動検出素子を上側定盤に取り付け、その振動検出素子から出力された振動強度又は振動スペクトルの信号の変化によって研磨の終了などを行わせているので、エアバック式の上側定盤の回転方向の振動強度やそのスペクトルの変化を知ることにより、研磨状態の変化を判断することが容易になる。
また、振動検出素子からの信号をバンドパスフィルタを介して制御部に出力するようにすると、研磨装置や研磨条件に合わせて、研磨装置固有の周波数の振動に依存する振動成分を除去して、実際の研磨によって発生する振動だけを選択することができる。
また、振動検出素子により検出した振動信号を無線で制御部に送る場合に、対数アンプを介して振動信号の振幅レンジを拡大して無線で送り、受信後に逆対数アンプで振動信号を復元すると、S/N比が向上する。
また、振動検出素子による出力信号が小さい場合に、振動検出素子を複数接続することにより出力信号を大きくすることができる。しかも、それら複数の振動検出素子によって不要な振動成分も大きくなるので、その不要な振動成分が互いに打ち消しあい且つ必要な振動成分が加算されるように振動検出素子の向きや配置を選択するようにしているので、不要な振動成分によるノイズを低減してS/N比を向上できる。
また、他の本発明の研磨装置によれば、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、その振動検出素子の周囲に防音材を配置しているために、モータなどのバックグラウンドノイズの振動検出素子への入力を抑制してS/N比を改善できる。
また、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、検出しようとする振動の周波数を振動検出素子の最大感度周波数に変換するようにしたので、S/N比を改善できる。
また、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、検出しようとする振動周波数と同じ周波数の固有振動周波数を有する振動板を被研磨物支持盤と振動検出素子の間に介在させたので、振動検出素子に入力する検出振動を共振させて増幅することができ、S/N比が改善される。
また、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、被研磨物支持盤を貫通して振動検出素子と被研磨物に接触する振動伝達体を設けたので、被研磨物から振動検出素子への振動伝達効率が良くなってS/Nを改善できる。
また、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、検出時において、被研磨物支持盤を駆動するエネルギーの供給を一時的に停止するようにしたので、バックグラウンドノイズを大幅に低減でき、S/N比を改善できる。
また、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、検出しようとする振動周波数とバックグラウンドノイズの振動周波数とを相違させるとともに、被研磨物支持盤の固有振動周波数と検出しようとする振動周波数を同じにしたので、S/N比を改善できる。
また、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、バックグラウンドノイズと逆位相で振動する振動板を被研磨物支持盤と振動検出素子の間に介在させたので、振動検出素子へのバックグラウンドノイズの入力を排除してS/N比を改善できる。
また、研磨の進行によって変化する被研磨物支持盤の振動を振動検出素子で検出する場合に、被研磨物支持盤上に振動検出素子を複数取り付けて選択可能にしたので、振動検出素子の故障による交換の手間が軽減できる。
さらに他の本発明の研磨装置によれば、研磨の際に被研磨物支持盤の位置を検出する変位検出器を有しているので、研磨が進むにつれて研磨布と被研磨物の摩擦力が変化して被研磨物支持盤の位置が変化し、その変位の変化量により研磨の終点等を検出できる。この場合、被研磨物支持盤の位置の変化量はバックグラウンドノイズとは振動周波数帯が異なるので、モータ等の振動の影響を受けずにS/N比の良い検出が可能になる。