JP4703274B2 - 太陽電池および太陽電池の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は太陽電池および太陽電池の製造方法に関し、特に配線時おける損傷や破損の発生を抑止した太陽電池および太陽電池の製造方法に関する。
太陽電池の中で発電効率が高く、宇宙用太陽電池に適している太陽電池としては、半導体基板上に化合物半導体単結晶層を積層してなる化合物半導体太陽電池がある(たとえば、非特許文献1参照)。従来の化合物半導体太陽電池においては、化合物半導体単結晶層の太陽光が入射する側の最表面に配線用の表面電極が形成され、太陽光が入射する側の反対側の最表面には互いに表面電極とは極性の異なる配線用の裏面電極が形成される。
浜川圭弘他,「太陽エネルギー工学」,培風館,1994年,p.179
宇宙用太陽電池として太陽電池の質量を低減することは重要であり、太陽電池として機能しない半導体基板の厚みを薄くして軽量化することが効果的である。
しかしながら、実際に化合物半導体太陽電池の半導体基板の厚みを薄くして軽量化する場合、次のような問題があった。すなわち、上述したように、化合物半導体太陽電池においては、化合物半導体単結晶層の太陽光が入射する側の最表面には表面電極が形成されるため、化合物半導体太陽電池の最表面に凹凸が生じる。そして、裏面電極に配線する際には、表面電極が形成されて凹凸が形成された側を定盤に載置した状態で、銀リボン等が裏面電極に溶接等される。このとき、凹凸が生じている表面電極の側の表面が定盤に接触した状態で表面電極の側から化合物半導体太陽電池が押さえられることになる。そのため、化合物半導体太陽電池が損傷を受けたり、あるいは割れが生じたりして破損してしまうという問題があった。
そこで、本発明の目的は、配線時おける損傷や破損の発生を抑止した太陽電池および太陽電池の製造方法を提供することにある。
本発明は、互いに接触しているn型半導体単結晶層とp型半導体単結晶層とを含む第1太陽電池積層体を含み、第1太陽電池積層体の第1の導電型を有する第1導電型半導体層の太陽光が入射する側の表面上に形成された第1の極性を有する第1電極と、第1太陽電池積層体の第2の導電型を有する第2導電型半導体層の太陽光が入射する側の第1電極とは異なる表面上に形成された第2の極性を有する第2電極と、をむ太陽電池であって、第1太陽電池積層体は基板上にエピタキシャル成長されることにより形成された化合物半導体単結晶層を含み、かつ、太陽電池は基板を含まない太陽電池である。また、本発明の太陽電池において、第2導電型半導体層の太陽光が入射する側と反対側の表面上に形成された第2の極性を有する第3電極を含むことができる。
ここで、本発明の太陽電池においては、第2電極と第3電極との間の抵抗が1Ω以下であることが好ましい。また、本発明の太陽電池においては、第3電極は不透明材料からなり、太陽光が入射する側と反対側の表面の30%以下の面積を被覆することができる。また、本発明の太陽電池において、第3電極は透明導電材料からなることができる。
また、本発明の太陽電池は、第1電極および第2電極にそれぞれ電気的に接続された配線と、第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側に設置された透明保護材と、を含むことができる。
また、本発明の太陽電池において、透明保護材は、ガラスまたは高分子材料のいずれかからなることができる。
また、本発明の太陽電池においては、第1太陽電池積層体のn型半導体単結晶層およびp型半導体単結晶層を構成する材料よりも禁制帯幅の狭い材料からなるn型半導体層およびp型半導体層を含む第2太陽電池積層体を第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側と反対側の位置に備えることができる。
らに、本発明は、互いに接触しているn型半導体単結晶層とp型半導体単結晶層とを含む第1太陽電池積層体を基板上に形成する工程と、第1太陽電池積層体の第1の導電型を有する第1導電型半導体層の太陽光が入射する側の表面上に第1の極性を有する第1電極を形成する工程と、第1太陽電池積層体の一部を除去することによって第2の導電型を有する第2導電型半導体層の太陽光が入射する側の表面を露出させる工程と、露出させた表面上に第2の極性を有する第2電極を形成する工程と、第1電極および第2電極にそれぞれ配線を電気的に接続する工程と、基板をエッチングにより除去する工程と、を含む、太陽電池の製造方法である。
ここで、本発明の太陽電池の製造方法は、配線の接続後に第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の表面上に透明保護材を透明接着剤によって接着する工程をさらに含むことができる。また、本発明の太陽電池の製造方法は、第2導電型半導体層の太陽光が入射する側とは反対側の表面に第2の極性を有する第3電極を形成する工程をさらに含むことができる。
また、本発明の太陽電池の製造方法は、第3電極の形成後に、第1太陽電池積層体のn型半導体単結晶層およびp型半導体単結晶層を構成する材料よりも禁制帯幅の狭い材料からなるn型半導体層およびp型半導体層を含む第2太陽電池積層体を第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側と反対側の位置に設置する工程をさらに含むことができる。
本発明によれば、配線時おける損傷や破損の発生を抑止した太陽電池および太陽電池の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
本発明は、互いに接触しているn型半導体単結晶層とp型半導体単結晶層とを含む第1太陽電池積層体を含み、第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の表面上に形成された第1の極性を有する第1電極と、第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の第1電極とは異なる表面上に形成された第2の極性を有する第2電極と、第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側と反対側の表面上に形成された第2の極性を有する第3電極と、を含む太陽電池であることを特徴としている。
このような構成の本発明の太陽電池においては、共に太陽光が入射する側の表面上に形成されている第1電極および第2電極にそれぞれ配線を電気的に接続することができるため、太陽光が入射する側と反対側に配線を行なう必要がない。したがって、本発明においては、凹凸のない平坦な表面を定盤に載置した状態で第1電極および第2電極への配線をすることができるため、配線時に定盤の方向に押さえつける力が太陽電池に働いたとしても、太陽電池が損傷したり破損したりするのを抑制することができるのである。なお、本発明において「太陽光が入射する側」とは、太陽電池を使用する際に太陽電池を設置したと仮定したときに太陽光が入射してくる方向にある側のことをいう。また、本発明において、第1の極性と第2の極性とは互いに異なる極性であり、第1の極性および第2の極性はそれぞれ正負いずれかの極性を示す。
ここで、第2電極と第3電極との間の抵抗は1Ω以下であることが好ましい。第3の電極は電流の広がり抵抗を低減させ、電流を均一に収集するためのものである。したがって、第2の電極および第3の電極がそれぞれ第1太陽電池積層体とオーミック接合を形成している場合には第2の電極と第3の電極との間には導通があり、さらに第2電極と第3電極との間の抵抗が1Ω以下である場合には、第3の電極の配線を行なわなくとも第3の電極から取り出すことができる電流を第2の電極に形成された配線のみから取り出すことができる傾向にある。
また、本発明において、第1電極または第2電極に電気的に接続することができる配線としては、たとえば金属ワイヤまたは金属リボンなどがある。
また、本発明においては、第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側に透明保護材を設置することができる。このような透明保護材としては、たとえばガラスまたは高分子材料などがある。ここで、透明保護材として用いられる高分子材料としては、たとえばポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエラストマー、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはシリコーン樹脂などがある。このような透明保護材はたとえば透明接着剤によって第1太陽電池積層体と接着することができる。なお、透明接着剤としては、たとえばエポキシ系、シリコーン系またはアクリル系の接着剤などがある。
また、本発明において、第1電極、第2電極および第3電極はそれぞれ、金属などの不透明材料またはZnO(酸化亜鉛)、SnO2(酸化スズ)若しくはITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料を用いることができる。
また、本発明においては、第1太陽電池積層体のn型半導体単結晶層およびp型半導体単結晶層を構成する材料よりも禁制帯幅の狭い材料からなるn型半導体層およびp型半導体層を含む第2太陽電池積層体を第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側と反対側に備えることができる。この場合には、第1太陽電池積層体で吸収することができない波長を有する太陽光を第2太陽電池積層体で吸収することが可能となるため太陽電池の変換効率が向上する傾向にある。このとき、第1太陽電池積層体の第3電極が不透明材料からなる場合には、より多くの太陽光を第2太陽電池積層体に入射させるため、第3電極が太陽光が入射する側と反対側の表面の30%以下の面積を被覆することがさらに好ましい。また、第3電極が透明導電材料からなる場合には第3電極が不透明材料からなる場合よりもさらに多くの太陽光を第2太陽電池積層体に入射させることができるため、変換効率の向上を図ることができる点で好ましい。また、第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側と反対側の最表面に反射防止膜を形成することも変換効率の向上の観点から好ましい。なお、第1太陽電池積層体と第2太陽電池積層体とは透明接着剤などによって接着することができる。
また、本発明は、互いに接触しているn型半導体単結晶層とp型半導体単結晶層とを含む第1太陽電池積層体を形成する工程と、第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の表面上に第1の極性を有する第1電極を形成する工程と、第1太陽電池積層体の一部を除去することによって太陽光が入射する側の表面を露出させる工程と、露出させた表面上に第2の極性を有する第2電極を形成する工程と、第1電極および第2電極にそれぞれ配線を電気的に接続する工程と、第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側と反対側の表面上に第2の極性を有する第3電極を形成する工程と、を含む、太陽電池の製造方法である。これにより、上述の本発明の太陽電池を作製することが可能になる。
ここで、本発明の太陽電池の製造方法は、第1電極および第2電極にそれぞれ配線を電気的に接続した後に第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の表面上に透明保護材を透明接着剤により接着する工程と、透明保護材の接着後に第1太陽電池積層体の厚みを太陽光が入射する側と反対側から低減する工程と、を含むことが好ましい。この場合には、第1太陽電池積層体の厚みを低減することによって太陽電池の軽量化を図ることができるとともに、透明接着剤により接着された透明保護材によって第1太陽電池積層体の厚みを低減した場合でも太陽電池に割れが生じにくくなる傾向にある。
また、本発明の太陽電池の製造方法は、第3電極の形成後に、第1太陽電池積層体のn型半導体単結晶層およびp型半導体単結晶層を構成する材料よりも禁制帯幅の狭い材料からなるn型半導体層およびp型半導体層を含む第2太陽電池積層体を第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側と反対側の位置に設置する工程を含むことが好ましい。この場合には、第1太陽電池積層体で吸収することができない波長を有する太陽光を第2太陽電池積層体で吸収することができる太陽電池の作製が可能になる。
参考例1)
まず、p型Ge基板上に以下に示す化合物半導体単結晶層を順次エピタキシャル成長させることによって、図1の模式的断面図に示す第1太陽電池積層体20を作製した。具体的には、まず、Gaをドーピングした直径50mmの円板状のp型Ge基板1上にバッファ層として厚さ3μmのn型GaAs層3を形成した。その際、n型GaAs層3中のAsがp型Ge基板1に拡散してp型Ge基板1の表面に厚さ0.5μmのn型Ge層2が形成された。次に、n型GaAs層3上に厚さ0.02μmのn型InGaP層4を形成し、n型InGaP層4上に厚さ0.02μmのp型AlGaAs層5を形成した。ここで、n型InGaP層4とp型AlGaAs層5とはトンネル接合となる。
次いで、p型AlGaAs層5上に裏面電界層として厚さ0.1μmのp型InGaP層6を形成し、p型InGaP層6上にベース層として厚さ3μmのp型GaAs層7を形成した。そして、p型GaAs層7上にエミッタ層として厚さ0.1μmのn型GaAs層8を形成し、n型GaAs層8上に窓層として厚さ0.03μmのn型AlInP層9を形成した。続いて、n型AlInP層9上に厚さ0.02μmのn型InGaP層10を形成し、n型InGaP層10上に厚さ0.02μmのp型AlGaAs層11を形成した。ここで、n型InGaP層10とp型AlGaAs層11とはトンネル接合となる。
さらに、p型AlGaAs層11上に裏面電界層として厚さ0.03μmのp型AlInP層12を形成し、p型AlInP層12上にベース層として厚さ0.5μmのp型InGaP層13を形成した。そして、p型InGaP層13上にエミッタ層として厚さ0.05μmのn型InGaP層14を形成し、n型InGaP層14上に窓層として厚さ0.03μmのn型AlInP層15を形成した。次いで、n型AlInP層15上にキャップ層として厚さ0.5μmのn型GaAs層16を形成した。これにより、図1の模式的断面図に示す第1太陽電池積層体20が作製された。
なお、上記のエピタキシャル成長の条件として、温度は約700℃とした。また、GaAs層を成長させるための原料としては、TMG(トリメチルガリウム)およびAsH3(アルシン)が用いられた。また、InGaP層を成長させるための原料としては、TMI(トリメチルインジウム)、TMGおよびPH3(ホスフィン)が用いられた。AlInP層を成長させるための原料としては、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMIおよびPH3が用いられた。また、n型GaAs層、n型InGaP層およびn型AlInP層を形成するためのn型不純物源としては、それぞれSiH4(モノシラン)が用いられた。一方、p型GaAs層、p型InGaP層およびp型AlInP層を形成するためのp型不純物源としては、それぞれDEZn(ジエチル亜鉛)が用いられた。さらに、AlGaAs層を成長させるための原料としては、TMI、TMGおよびAsH3が用いられ、p型AlGaAs層を形成するためのp型不純物源としては、CBr4(四臭化炭素)が用いられた。
次に、図2の模式的断面図に示すように、n型GaAs層16の一部をアンモニア系エッチャントによって所定のパターン状に除去した。そして、残されたn型GaAs層16の表面上に厚さ100nmのAu−Ge膜、厚さ20nmのNi膜、厚さ100nmのAu膜および厚さ5000nmのAg膜を順次蒸着した後に熱処理して図3の模式的断面図に示すように第1電極17を形成した。
次いで、図4の模式的断面図に示すように、アンモニア系およびHCl系エッチャントによって、第1太陽電池積層体20の一部をp型Ge基板1の表面が露出するまで所定のパターン状に除去した。そして、露出したp型Ge基板1の表面上に厚さ30nmのAu膜および厚さ5000nmのAg膜を順次蒸着した後熱処理することによって図5の模式的断面図に示すように第2電極18を形成した。さらに、図示はしていないが、n型AlInP層15の表面上に反射防止膜として厚さ55nmのTiO2膜および厚さ85nmのAl23膜を順次形成した。
その後、50mm径のp型Ge基板1から幅20mm×長さ20mmの矩形の板状に第1太陽電池積層体20を切り出した。
続いて、図6の模式的断面図に示すように、第1電極17および第2電極18の所定の位置にそれぞれ長さ10mm×幅3mm×厚さ0.03mmのAgリボン22、23を配線として溶接により電気的に接続した。このとき、平坦なp型Ge基板1を定盤に設置して配線が行なわれるので、第1太陽電池積層体20に損傷や破損が発生するのを低減することができる。
続いて、図7の模式的断面図に示すように、第1太陽電池積層体20の太陽光が入射する側の表面上にシリコーンからなる透明接着剤24を塗布し、厚さ100μmのガラスからなる透明保護材21をこれに貼り合わせ、所定の温度にて透明接着剤24を硬化させることによって透明保護材21を接着した。
その後、透明保護材21の表面をレジストでカバーし、太陽光が入射する側と反対側の表面からp型Ge基板1の厚みをHF系エッチャントを用いたエッチングにより低減することによって、p型Ge基板1の厚みを20μmまで薄型化した。そして、薄型化されたp型Ge基板1の太陽光が入射する側と反対側の表面上に厚さ30nmのAu膜および厚さ3000nmのAg膜を順次蒸着した後に熱処理することによって図8の模式的断面図に示すように第3電極19を形成して参考例1の太陽電池を作製した。ここで、第2電極18と第3電極19との間の抵抗は1Ω以下であることがテスターによる抵抗測定によって確認された。
この参考例1の太陽電池の特性をソーラシミュレータによって評価した。なお、ソーラシミュレータとは、太陽電池の特性試験、信頼性試験を屋内で行なうために使用される照射光源をいい、試験目的に応じて要求される放射照度、均一性およびスペクトル合致度が満足される。
まず、照射光源としてエアマス(AM)0の基準太陽光線を用いた。そして、照射時の電流電圧特性を測定した。測定した電流電圧特性に基づいて短絡電流Isc、開放電圧Voc、曲線因子FFおよび変換効率Effを求めた。その結果、短絡電流Iscは17mA、開放電圧Vocは2.5V、曲線因子FFは0.85および変換効率Effは26.3%であった。また、太陽電池の質量は220mgであった。従来の標準的なInGaP/GaAs/Ge3接合太陽電池の変換効率Effは約27%で、質量は570mgであることから、参考例1の太陽電池は変換効率Effを従来のものとほぼ同等に維持しつつ、約6割の軽量化を図ることができた。
(実施例2)
まず、p型Ge基板上に以下に示す化合物半導体単結晶層を順次エピタキシャル成長させることによって、図9の模式的断面図に示す第1太陽電池積層体20を作製した。具体的には、まず、Gaをドーピングした直径50mmの円板状のp型Ge基板25上にバッファ層として厚さ3μmのp型GaAs層26を形成した。次に、p型GaAs層26上に厚さ0.02μmのp型InGaP層27を形成し、p型InGaP層27上に厚さ0.02μmのp型AlGaAs層28を形成した。
次いで、p型AlGaAs層28上に裏面電界層として厚さ0.03μmのp型AlInP層29を形成し、p型AlInP層29上にベース層として厚さ0.5μmのp型InGaP層30を形成した。そして、p型InGaP層30上にエミッタ層として厚さ0.05μmのn型InGaP層31を形成し、n型InGaP層31上に窓層として厚さ0.03μmのn型AlInP層32を形成した。続いて、n型AlInP層32上にキャップ層として厚さ0.5μmのn型GaAs層33を形成した。これにより、図9の模式的断面図に示す第1太陽電池積層体20が作製された。
なお、上記のエピタキシャル成長の条件として、温度は約700℃とした。また、GaAs層を成長させるための原料としては、TMG(トリメチルガリウム)およびAsH3(アルシン)が用いられた。また、InGaP層を成長させるための原料としては、TMI(トリメチルインジウム)、TMGおよびPH3(ホスフィン)が用いられた。AlInP層を成長させるための原料としては、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMIおよびPH3が用いられた。また、n型GaAs層、n型InGaP層およびn型AlInP層を形成するためのn型不純物源としては、それぞれSiH4(モノシラン)が用いられた。一方、p型GaAs層、p型InGaP層およびp型AlInP層を形成するためのp型不純物源としては、それぞれDEZn(ジエチル亜鉛)が用いられた。さらに、AlGaAs層を成長させるための原料としては、TMI、TMGおよびAsH3が用いられ、p型AlGaAs層を形成するためのp型不純物源としては、CBr4(四臭化炭素)が用いられた。
次に、図10の模式的断面図に示すように、n型GaAs層33の一部をアンモニア系エッチャントによって所定のパターン状に除去した。そして、残されたn型GaAs層33の表面上に厚さ100nmのAu−Ge膜、厚さ20nmのNi膜、厚さ100nmのAu膜および厚さ5000nmのAg膜を順次蒸着した後に熱処理して図11の模式的断面図に示すように第1電極17を形成した。
次いで、図12の模式的断面図に示すように、アンモニア系およびHCl系エッチャントによって、第1太陽電池積層体20の一部をp型AlGaAs層28の表面が露出するまで所定のパターン状に除去した。そして、露出したp型AlGaAs層28の表面上に厚さ30nmのAu膜および厚さ5000nmのAg膜を順次蒸着した後熱処理することによって図13の模式的断面図に示すように第2電極18を形成した。さらに、図示はしていないが、n型AlInP層32およびp型AlGaAs層28の表面上に反射防止膜として厚さ55nmのTiO2膜および厚さ85nmのAl23膜を順次形成した。
その後、50mm径のp型Ge基板1から幅20mm×長さ20mmの矩形の板状に第1太陽電池積層体20を切り出した。
続いて、図14の模式的断面図に示すように、第1電極17および第2電極18の所定の位置にそれぞれ長さ10mm×幅3mm×厚さ0.03mmのAgリボン22、23を配線として溶接により電気的に接続した。このとき、平坦なp型Ge基板1を定盤に設置して配線が行なわれるので、第1太陽電池積層体20に損傷や破損が発生するのを低減することができる。
さらに、図15の模式的断面図に示すように、第1太陽電池積層体20の太陽光が入射する側の表面上にシリコーンからなる透明接着剤24を塗布し、厚さ100μmのガラスからなる透明保護材21をこれに貼り合わせ、所定の温度にて透明接着剤24を硬化させることによって透明保護材21を接着した。
その後、透明保護材21の表面をレジストでカバーし、太陽光が入射する側と反対側の表面からp型Ge基板25およびp型GaAs層26をHF系エッチャントを用いたエッチングにより除去し、図16の模式的断面図に示すように、p型InGaP層27の表面を露出してエッチングを停止した。そして、図17の模式的断面図に示すように、露出したp型InGaP層27の表面にメタルマスクによってパターンニングされた厚さ30nmのAu膜および厚さ5000nmのAg膜を順次蒸着した後に熱処理することによって第3電極19を形成した。ここで、第3電極19は、露出したp型InGaP層27の表面の10%の面積を被覆していた。また、第2電極18と第3電極19との間の抵抗は1Ω以下であることがテスターによる抵抗測定によって確認された。
さらに、図18の模式的断面図に示すように、第1太陽電池積層体20の太陽光が入射する側と反対側の表面にシリコーンからなる透明接着剤24を塗布し、n型Si基板34の太陽光が入射する側と反対側の表面にn型不純物拡散Si層35とp型不純物拡散Si層36とが形成された裏面電極型太陽電池である第2太陽電池積層体37をこれに貼り合わせ、所定の温度にて透明接着剤24を硬化させることによって第2太陽電池積層体37を接着して、実施例2の太陽電池を作製した。ここで、n型不純物拡散Si層35上にはn電極38が形成され、p型不純物拡散Si層36上にはp電極39が形成されていた。さらに、n電極38上には配線としてAgリボン40が電気的に接続され、p電極39上には配線としてAgリボン41が電気的に接続されていた。
実施例2の太陽電池においては、第1太陽電池積層体20のp型InGaP層30およびn型InGaP層31を構成するInGaP(禁制帯幅:1.85eV)よりも第2太陽電池積層体37のn型不純物拡散Si層35およびp型不純物拡散Si層36を構成するSi(禁制帯幅:1.12eV)は禁制帯幅が狭いため、第1太陽電池積層体20では吸収することができない波長の太陽光を第2太陽電池積層体37で吸収することができる。
この実施例2の太陽電池の特性をソーラシミュレータによって評価した。照射光源としてエアマス(AM)0の基準太陽光線を用いた。そして、照射時の電流電圧特性を測定した。測定した電流電圧特性に基づいて短絡電流Isc、開放電圧Voc、曲線因子FFおよび変換効率Effを求めた。その結果、短絡電流Iscは21mA、開放電圧Vocは2.1V、曲線因子FFは0.85および変換効率Effは27.2%であった。したがって、従来の標準的なInGaP/GaAs/Ge3接合太陽電池の変換効率Effは約27%であることから、実施例2の太陽電池は変換効率Effを従来のものよりも向上することができた。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の太陽電池は、宇宙空間で用いられる宇宙用太陽電池として好適に利用することができる。
本発明の参考例1における第1太陽電池積層体を示す模式的な断面図である。 図1に示す第1太陽電池積層体中のn型GaAs層の一部を除去した後の状態を示す模式的な断面図である。 図2に示すn型GaAs層の表面上に第1電極を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。 図3に示す第1太陽電池積層体の一部を除去してp型Ge基板の表面を露出させた後の状態を示す模式的な断面図である。 図4に示すp型Ge基板の露出した表面上に第2電極を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。 本発明の参考例1における第1太陽電池積層体に備えられた第1電極および第2電極にAgリボンからなる配線を電気的に接続した後の状態を示す模式的な断面図である。 図6に示す第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の表面上に透明接着剤によって透明保護材を接着した後の状態を示す模式的な断面図である。 本発明の参考例1における太陽電池の模式的な断面図である。 本発明の実施例2における第1太陽電池積層体を示す模式的な断面図である。 図9に示す第1太陽電池積層体のn型GaAs層の一部を除去した後の状態を示す模式的な断面図である。 図10に示すn型GaAs層の表面上に第1電極を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。 図11に示す第1太陽電池積層体の一部を除去してp型AlGaAs層の表面を露出させた後の状態を示す模式的な断面図である。 図12に示すp型AlGaAs層の露出した表面上に第2電極を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。 図13に示す第1電極および第2電極にAgリボンからなる配線を電気的に接続した後の状態を示す模式的な断面図である。 図14に示す第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の表面上に透明接着剤によって透明保護材を接着した後の状態を示す模式的な断面図である。 図15に示すp型Ge基板およびp型GaAs層を除去した後の状態を示す模式的な断面図である。 図16に示す露出したp型InGaP層の表面に第3電極を形成した後の状態を示す模式的な断面図である。 本発明の実施例2における太陽電池の模式的な断面図である。
符号の説明
1 p型Ge基板、2 n型Ge層、3 n型GaAs層、4 n型InGaP層、5 p型AlGaAs層、6 p型InGaP層、7 p型GaAs層、8 n型GaAs層、9 n型AlInP層、10 n型InGaP層、11 p型AlGaAs層、12 p型AlInP層、13 p型InGaP層、14 n型InGaP層、15 n型AlInP層、16 n型GaAs層、17 第1電極、18 第2電極、19 第3電極、20 第1太陽電池積層体、21 透明保護材、22,23 Agリボン、24 透明接着剤、25 p型Ge基板、26 p型GaAs層、27 p型InGaP層、28 p型AlGaAs層、29 p型AlInP層、30 p型InGaP層、31 n型InGaP層、32 n型AlInP層、33 n型GaAs層、34 n型Si基板、35 n型不純物拡散Si層、36 p型不純物拡散Si層、37 第2太陽電池積層体、38 n電極、39 p電極、40,41 Agリボン。

Claims (12)

  1. 互いに接触しているn型半導体単結晶層とp型半導体単結晶層とを含む第1太陽電池積層体を含み、
    前記第1太陽電池積層体の第1の導電型を有する第1導電型半導体層の太陽光が入射する側の表面上に形成された第1の極性を有する第1電極と、
    前記第1太陽電池積層体の第2の導電型を有する第2導電型半導体層の太陽光が入射する側の表面上に形成された第2の極性を有する第2電極と、
    を含む太陽電池であって、
    前記第1太陽電池積層体は基板上にエピタキシャル成長されることにより形成された化合物半導体単結晶層を含み、かつ、前記太陽電池は前記基板を含まないことを特徴とする、太陽電池。
  2. 前記第2導電型半導体層の太陽光が入射する側と反対側の表面上に形成された第2の極性を有する第3電極を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池。
  3. 前記第2電極と前記第3電極との間の抵抗は1Ω以下であることを特徴とする、請求項に記載の太陽電池。
  4. 前記第3電極は不透明材料からなり、太陽光が入射する側と反対側の表面の30%以下の面積を被覆することを特徴とする、請求項2または3に記載の太陽電池。
  5. 前記第3電極は透明導電材料からなることを特徴とする、請求項2または3に記載の太陽電池。
  6. 前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ電気的に接続された配線と、前記第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側に設置された透明保護材と、を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池。
  7. 前記透明保護材は、ガラスまたは高分子材料のいずれかからなることを特徴とする、請求項に記載の太陽電池。
  8. 前記第1太陽電池積層体の前記n型半導体単結晶層および前記p型半導体単結晶層を構成する材料よりも禁制帯幅の狭い材料からなるn型半導体層およびp型半導体層を含む第2太陽電池積層体を前記第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側と反対側の位置に備えたことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の太陽電池。
  9. 互いに接触しているn型半導体単結晶層とp型半導体単結晶層とを含む第1太陽電池積層体を基板上に形成する工程と、
    前記第1太陽電池積層体の第1の導電型を有する第1導電型半導体層の太陽光が入射する側の表面上に第1の極性を有する第1電極を形成する工程と、
    前記第1太陽電池積層体の一部を除去することによって第2の導電型を有する第2導電型半導体層の太陽光が入射する側の表面を露出させる工程と、
    前記露出させた表面上に第2の極性を有する第2電極を形成する工程と、
    前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ配線を電気的に接続する工程と、
    前記基板をエッチングにより除去する工程と、
    を含む、太陽電池の製造方法。
  10. 前記配線の接続後に前記第1太陽電池積層体の太陽光が入射する側の表面上に透明保護材を透明接着剤によって接着する工程をさらに含む、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
  11. 前記第2導電型半導体層の太陽光が入射する側とは反対側の表面に第2の極性を有する第3電極を形成する工程をさらに含む、請求項9または10に記載の太陽電池の製造方法。
  12. 前記第3電極の形成後に、前記第1太陽電池積層体の前記n型半導体単結晶層および前記p型半導体単結晶層を構成する材料よりも禁制帯幅の狭い材料からなるn型半導体層およびp型半導体層を含む第2太陽電池積層体を前記第1太陽電池積層体よりもさらに太陽光が入射する側と反対側の位置に設置する工程をさらに含む、請求項9から11のいずれかに記載の太陽電池の製造方法。
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