JP4701377B2 - 金属ガラス体、その製造方法及び装置 - Google Patents
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Description
本発明は、溶融金属に電磁振動力を付与させながら凝固させることにより、金属ガラスを製造すること、及び該方法で作製した特定の金属ガラス組織構造を有する新しい金属ガラス体を提供することを特徴とするものである。本発明では、好適には、金属ガラス化が容易な金属及び合金が対象とされ、本発明は、ガラス形成能を有する合金系の全てに適用されるが、例えば、マグネシウム基合金、鉄基合金等が例示されるが、これらに限定されるものではなく、金属ガラス化が可能なものであればその種類は特に制限されない。マグネシウム系としては、例えば、Mg65Y10Cn25(Y:0〜30、Cu:0〜40)、鉄系としては、(Fe0.6Co0.4)72Si4B20Nb4が例示される。その他の具体例として、マグネシウム系では、Mg−Ca,Mg−Ni,Mg−Cu,Mg−Zn,Mg−Y,Mg−Ca−Al,Mg−Ca−Li,Mg−Ni−Ln,Mg−Cu−La,Mg−Cu−Y,
Mg−Ni−Y,Mg−Cu−Ce,Mg−Cu−Nd,Mg−Zn−Si,Mg−Al−Zn,Mg−Ni−Si,Mg−Cu−Si,Mg−Ni−Si,Mg−Ca−Si,Mg−Ni−Ge,Mg−Cu−Ge,Mg−Zn−Ge等が、また、鉄系では、(Fe0.8Co0.2)74Si4B20Nb2,Fe−Al−P,Fe−Al−C,Fe−Al−B,Fe−Si−B−Nb,Fe−
Si−B−Zr,(Fe0.775Si0.10B0.125)98Nb2,(Fe0.75Si0.1
0B0.15)99Zr1,(Fe0.75Si0.10B0.15)96Nb4,Fe−Co−Ni−P−C−B,Fe−Si−B,Fe−P−C,Fe−Co−Si−B,Fe75Si10B15,Fe72Si6B18Nb4,Fe70Si4B20Nb6,Fe68Si4B20Nb8,Fe70Si4B20Nb6,Fe68Si4B20Nb8が例示される。マグネシウム系、鉄系以外の合金系として、Ln(ランタン)系、Zr(ジルコニウム)系、Pd(パラジウム)系、Co(コバルト)系、Ni(ニッケル)系、Ti(チタン)系、Al(アルミニウム)系、Cu(銅)系、Nd(ネオジウム)系、Pr(プラセオジウム)系、Pt(白金)系が例示される。また、本発明では、電磁振動力として、直流磁場と交流電場の同時印加により発生する電磁振動力が用いられるが、これに制限されるものではなく、これと同効のものであれば同様に使用することができる。本発明は、冷却速度に依存しない方法で金属ガラスの製造を可能とするために、直流磁場と交流電場を同時に併用することにより、電磁振動力を発生させ、その下で溶融金属を凝固させることを主要な特徴としている。
1)方法
保持容器にMo箔を用いた電磁振動付与機構を作製し、この保持容器に試料としてMg65Y10Cu25(2φ、12mm)合金を入れ、これを外部ヒータで加熱し、550℃,2minで溶解した後、電磁振動を10秒印加し、電磁振動を印加しながら水を吹きかけることにより水冷し、金属ガラス形成能に及ぼす電磁振動力の影響を調べた。
2)結果
その結果、図1(a)の組織写真及び図2(a)のXRD図に示すように、電磁振動電流:5A,1000Hz,磁場:10T、で電磁振動を印加した条件では、金属ガラス単相が得られることが判明した。
1)方法
保持容器にMo箔より冷却速度が遅くなるアルミナ管(外径3φ,内径2φ)を用い、この保持容器に試料としてMg65Y10Cu25(2φ、12mm)合金を入れ、これを外部ヒータで加熱し、550℃,2minで溶解した後、電磁振動を10秒印加し、電磁振動を印加しながら水を吹きかけることにより水冷し、より冷却速度が遅くなるアルミナ管を保持容器に用いた場合の金属ガラス形成能に及ぼす電磁振動力の影響を調べた。
電磁振動力を磁場:10T、電磁振動電流:5Aと固定し、電磁振動周波数を100Hz、1000Hz、5000Hzと変化させた時の組織写真を図3に示す。図3(a)に示すように、電磁振動周波数が100Hzでは、金属ガラス相は観察されず、結晶相のみが観察された。図3(b)に示すように、電磁振動周波数が1000Hzでは、金属ガラス相中に結晶相の核が大量に観察された。また、図3(c)より、電磁振動周波数が5000Hzでは、金属ガラス単相が得られることが判明した。これらのことより、電磁振動周波数がより高いほうが、金属ガラス形成能を向上させる能力が高いことが判明した。
1)方法
Mg65Y10Cu25合金以外の金属材料においてもこのプロセスが有効であることを確認するために、Mg合金よりも融点が800℃ほど高い(Fe0.6Co0.4)72Si4B20Nb4合金について、同様の実験を行い、本プロセスの効果を確認した。電流周波数範囲:10Hz以上、磁場強度範囲:1テスラ以上、電流強度範囲:1×106A/m2以上。
結果
その結果、図5に示されるように、電磁振動を印加しない場合には、黒色で識別される結晶が多数生成しているが、電磁振動(5A,5,000Hz,10T)を印加した場合には、結晶が減少し、ガラス化が促進していることがわかった。このことより、マグネシウム系合金以外の金属材料においても電磁振動プロセスによる金属ガラスの生成が有効であることがわかる。
1)方法
Mg65Y10Cu25合金の電磁振動(20A、10T)によるガラス化し易さに及ぼす、電流周波数(5,000Hz、50,000Hz)の影響を調べた。
結果
4mmφの試料は2mmφの試料に較べて、径が2倍に大きくなることにより、冷却速度が遅くなるため、ガラス化し難くなる。しかし、このような場合でも、図6に示されるように、電磁振動力を利用したプロセスでは、電流周波数を増加することで容易にガラス化することがわかった。このことより、電磁振動プロセスによる金属ガラスの生成方法では、冷却速度による影響を、電磁振動力や電磁振動周波数でカバーできることがわかる。
方法
高分解能FE−TEM(電解放射型透過電子顕微鏡)で、両ガラスの構造を解析し、格子像も確認した。
結果
その結果、両者に違いのあることが判明した。従来の急冷凝固法により生成した金属ガラスの組織構造は、単相のガラス相からなっているが、本発明のプロセスによる金属ガラス体の組織構造は、微結晶がガラス相全体に均一に分散した金属ガラス組織構造を有している点に違いがある。本組織を確認することにより、本発明のプロセスで造られた金属ガラス体であることが確認されるので、この手法を利用することにより、本発明の金属ガラス体と、従来の急冷凝固法による金属ガラスとを容易に区別(判別)することができる。即ち、本発明のプロセスで得られる金属ガラス体の特徴は、均一に微結晶が分散した金属ガラス構造を有していることである。図7に、微結晶がセル状になってガラス相全体に均一に分散した金属ガラス体の組織構造を示す。図8に、マイクロオーダーの微結晶が均一に分散した金属ガラス体の一例を示す。
1)方法
Mg65Y10Cu25合金のガラス化し易さを、水冷して凝固開始させる前に、加熱度約100℃の溶融状態で電磁振動(5A,5000Hz,10T)を印加する時間の影響を調べた。
2)結果
その結果、図9に示されるように、水冷前の電磁振動印加時間が0秒の時は、その後の冷却に伴いほぼ完全に結晶化した。磁振動印加時間が2.5秒の時は、結晶は生成するが、その量は非常に少なくなった。電磁振動印加時間が10秒の時は、全く結晶化が起こらず、完全に金属ガラスとなった。このことより、凝固前の液体状態での電磁振動印加時間の増加が、金属ガラスの形成能を向上させることがわかる。
1)方法
Mg65Y10Cu25合金のガラス化し易さを、加熱度約100℃の溶融状態で10秒間電磁振動(5A,5000Hz,10T)を印加し、その後、水冷して凝固開始させるまでの間、電磁振動を与えない休止時間の影響を調べた。
2)結果
その結果、図10に示されるように、休止時間が1秒の時は、その後の水冷に伴いわずかに結晶が生成した。休止時間が9秒の時は、水冷時の結晶生成量がかなり増加した。休止時間が60秒の時は、水冷時にほぼ完全に結晶化した。このことより、液体状態での電磁振動印加後の無振動保持時間が長くなる程、金属ガラス形成能は低下することがわかる。
1)方法
Mg65Y10Cu25合金のガラス化し易さを、過熱度約100℃の溶融状態で10秒間電磁振動(0〜10A,5000Hz,10T)を印加し、引き続いて水冷により凝固開始させ、その後10秒間電磁振動(0〜10A,5000Hz,10T)を継続した時の電流変化による電磁振動力の影響を調べた。
2)結果
その結果、図11に示されるように、電流強度の増加による電磁振動力の増加が金属ガラスの形成能を向上させることがわかった。
Claims (10)
- ガラス形成能を有する金属又は合金の溶融金属に電磁振動力を付与しながら凝固させることにより、冷却速度に依存しない方法で、単相の金属ガラス組織構造を有する金属ガラスバルク体を製造する方法であって、
直流磁場と交流電場を同時に印加して電磁振動を発生させ、溶融金属に作用させて、単相の金属ガラス組織構造を有する金属ガラスバルク体を製造することを特徴とする金属ガラス体の製造方法。 - 単相の金属ガラス組織構造を有し、かつ微結晶がガラス相全体に均一に分散した金属ガラス体であって、該微結晶が、ナノオーダーからマイクロオーダーまでの範囲で制御された大きさを有する金属ガラスバルク体を製造する請求項1に記載の方法。
- 少なくとも1000Hzの電流周波数帯域において、電磁振動発生下で金属ガラス体を製造する請求項1に記載の方法。
- 少なくとも2Tの磁場強度において、電磁振動発生下で金属ガラス体を製造する請求項1に記載の方法。
- 電流周波数を増加することにより、金属ガラス形成能を向上させる請求項1に記載の方法。
- 凝固前の液体状態で電磁振動を印加することにより、金属ガラスの形成能を向上させる請求項1に記載の方法。
- 電磁振動印加後の無振動保持時間を短くする請求項6に記載の方法。
- 電磁振動の印加電流強度を増加することにより、金属ガラスの形成能を向上させる請求項1に記載の方法。
- 金属が、ガラス形成能を有する合金系である請求項1に記載の方法。
- 合金組成を選択し、電磁振動力条件及び温度条件を調整することにより、金属ガラスの機能性と微結晶による強度、靭性、及び/又は耐破断性の性質を制御したコンポジット材料を製造する請求項9に記載の方法。
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