以下、本発明の光導波路および光導波路構造体について添付図面に示す好適実施形態に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の光導波路構造体の実施形態を示す斜視図(一部切り欠いて示す)である。
なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」または「上方」とし、下側を「下」または「下方」とする(以下の図において同様である。)。
また、各図は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
図1に示す光導波路構造体9は、光導波路90と、その上面および下面に、それぞれ設けられた導体層901、902とを有し、これら各層が接合されたものである。
導体層901、902の構成材料としては、それぞれ、例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金のような各種金属材料、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素含有インジウムスズ酸化物(FTO)のような各種酸化物材料等が挙げられる。
導体層901、902の平均厚さは、それぞれ、光導波路90の平均厚さの10〜90%程度であるのが好ましく、20〜80%程度であるのがより好ましい。具体的には、導体層901、902の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、3〜100μm程度が好ましく、5〜70μm程度がより好ましい。これにより、光導波路構造体9の可撓性が低下するのを防止しつつ、導体層901、902を導電性に優れたものとすることができる。
また、図1に示す構成では、導体層901、902は、いずれも、平板状(シート状)をなしている。この場合、導体層901、902の所定のパターンに加工した後、所望の箇所に、光学素子(発光素子、受光素子等)を実装することにより、光学回路と電気回路とを備える複合装置を製造することができる。
なお、導体層901、902は、それぞれ、予めパターニングされたもの(配線)であってもよい。また、必要に応じて、導体層901および902のいずれか一方を省略してもよい。
また、導体層901、902と光導波路90との間には、任意の目的(例えば、密着性を向上させる目的等)の層が1層または2層以上設けられていてもよい。
光導波路90は、図1中下側からクラッド層(下部クラッド層)91、コア層93およびクラッド層(上部クラッド層)92をこの順に積層してなるものであり、コア層93には、所定パターンのコア部94と、このコア部(導波路チャンネル)94に隣接するクラッド部95とが形成されている。
コア部94とクラッド部95との屈折率の差は、特に限定されないが、0.3〜5.5%程度が好ましく、特に0.8〜2.2%程度が好ましい。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部94の屈折率をA、クラッド部95の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、図1に示す構成では、コア部94は、平面視で直線状に形成されているが、途中で湾曲、分岐等してもよく、その形状は任意である。なお、後述するような光導波路構造体9の製造方法を用いれば、複雑かつ任意の形状のコア部94を容易にかつ寸法精度よく形成することができる。
また、コア部94は、その横断面形状が正方形または矩形(長方形)のような四角形をなしている。
コア部94の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。
このコア部94は、クラッド部95に比べて屈折率が高い材料で構成され、また、クラッド層91、92に対しても屈折率が高い材料で構成されている。
クラッド層91および92は、それぞれ、コア部94の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、コア部94は、その外周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。
クラッド層91、92の平均厚さは、コア層93の平均厚さの0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.3〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層91、92の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路90が不要に大型化(圧膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
なお、クラッド層91、クラッド部95およびクラッド層92の構成材料は、それぞれ、同一(同種)のものでも異なるものでもよいが、これらは、屈折率が同じかまたは近似しているものであるのが好ましい。クラッド層91、92およびコア層93の構成材料の詳細については、後に説明する。
本発明の光導波路構造体9は、コア部94の材料の光学特性等によっても若干異なり、特に限定されないが、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用される。
次に、光導波路構造体9の製造方法の一例について説明する。
<第1の製造方法>
まず、光導波路構造体9の第1の製造方法について説明する。
図2〜図7は、それぞれ、本発明の光導波路構造体の第1の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
[1A] まず、支持基板951上に、層910を形成する(図2参照)。
層910は、コア層形成用材料(ワニス)900を塗布し硬化(固化)させる方法により形成される。
具体的には、層910は、支持基板951上にコア層形成用材料900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成する。
層910を塗布法で形成する場合、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
コア層形成用材料900は、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマー、助触媒および触媒前駆体を含む)とで構成される光誘発熱現像性材料(PITDM)を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー915中において、モノマーの反応が生じる材料である。
そして、得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915は、いずれも、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤920は、ポリマー915内に実質的に一様かつランダムに分散されている。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつ任意に分散されている。
このような層910の平均厚さは、形成すべきコア層93の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用材料900中や層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことを言う。
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
これらの中でも、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。ポリマー915としてノルボルネン系ポリマーを用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層93を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーは、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層93を得ることができる。
ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系ポリマーとしては、下記化2(構造式B)で表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。このものは、透明性、耐熱性および可撓性に富むことからも好ましい。
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、後述するノルボルネン系モノマー(後述する化4で表されるノルボルネン系モノマーや、架橋性ノルボルネン系モノマー)を用いることにより好適に合成される。
なお、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーとしては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系ポリマーは、特に高い屈折率を有する。
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。
かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
また、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、光導波路90に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が低下するのを防止し、かつ、高い柔軟性を保持することができる。また、かかるノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
このようなノルボルネン系ポリマーの好ましい具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態のコア層形成用材料900は、添加剤920として、モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含んでいる。
モノマーは、後述する活性放射線に照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、層910において照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
ここで、この反応物としては、モノマーがポリマー(マトリックス)915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー915同士を架橋する架橋構造、および、ポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ここで、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用される。
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分がクラッド部95となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア部94となる。
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマーとしては、ノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層93(光導波路90)が得られる。
ここで、ノルボルネン系モノマーとは、下記化3(構造式A)で示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記化4(構造式C)で表される化合物が挙げられる。
[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、R
1およびR
2のいずれか一方、R
3およびR
4のいずれか一方は存在しない。]
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C6〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C7〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、R1およびR2、R3およびR4が、それぞれ炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基およびデシル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基およびシクロヘキセニル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基および2−ブチニル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロオクチル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基およびアントラセニル(anthracenyl)基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アラルキル(aralkyl)基の具体例としては、ベンジル基およびフェニルエチル(フェネチル:phenethyl)基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、アルキリデニル(alkylidenyl)基の具体例としては、メチリデニル(methylidenyl)基およびエチリデニル(ethylidenyl)基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
置換された炭化水素基としては、前記の炭化水素基が有する水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたもの、すなわち、ハロハイドロカルビル(halohydrocarbyl)基、パーハロハイドロカルビル(perhalohydrocarbyl)基であるか、パーハロカルビル(perhalocarbyl)基のようなハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
これらのハロゲン化炭化水素基において、水素原子に置換するハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素および臭素から選択される少なくとも1種が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
このうち、パーハロゲン化された炭化水素基(パーハロハイドロカルビル基、パーハロカルビル基)の具体例としては、例えば、パーフルオロフェニル基、パーフルオロメチル基(トリフルオロメチル基)、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
なお、ハロゲン化アルキル基には、炭素数1〜10のもの以外に、炭素数11〜20のものも好適に用いることができる。すなわち、ハロゲン化アルキル基には、部分的または完全にハロゲン化され、直鎖状または分岐状をなし、一般式:−CZX’’2Z+1で表される基を選択することができる。ここで、X’’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子または水素原子を表し、Zは、1〜20の整数を表す。
また、置換された炭化水素基としては、ハロゲン原子の他、直鎖状または分岐状の炭素数1〜5(C1〜C5)のアルキル基またはハロアルキル基、アリール基およびシクロアルキル基で更に置換された、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基(アラアルキル基)等が挙げられる。
また、官能置換基としては、例えば、−(CH2)n−CH(CF2)2−O−Si(Me)3、−(CH2)n−CH(CF3)2−O−CH2−O−CH3、−(CH2)n−CH(CF3)2−O−C(O)−O−C(CH3)3、−(CH2)n−C(CF3)2−OH、−(CH2)n−C(O)−NH2、−(CH2)n−C(O)−Cl、−(CH2)n−C(O)−O−R5、−(CH2)n−O−R5、−(CH2)n−O−C(O)−R5、−(CH2)n−C(O)−R5、−(CH2)n−O−C(O)−OR5、−(CH2)n−Si(R5)3、−(CH2)n−Si(OR5)3、−(CH2)n−O−Si(R5)3および−(CH2)n−C(O)−OR6等が挙げられる。
ここで、前記各式において、それぞれ、nは、0〜10の整数を示し、R5は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20(C1〜C20)アルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20(C1〜C20)のハロゲン化もしくはパーハロゲン化アルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルキニル基、炭素数5〜12(C5〜C12)のシクロアルキル基、炭素数6〜14(C6〜C14)のアリール基、炭素数6〜14(C6〜C14)のハロゲン化もしくはパーハロゲン化アリール基または炭素数7〜24(C7〜C24)のアラルキル基を表す。
なお、R5で示される炭化水素基は、R1〜R4で示されるものと同一の炭化水素基を示す。R1〜R4で示すように、R5で示される炭化水素基は、ハロゲン化またはパーハロゲン化されていてもよい。
例えば、R5が炭素数1〜20(C1〜C20)のハロゲン化またはパーハロゲン化アルキル基である場合、R5は、一般式:−CZX’’2Z+1で表される。ここで、zおよびX’’は、それぞれ、上記の定義と同じであり、X’’の少なくとも1つは、ハロゲン原子(例えば、臭素原子、塩素原子またはフッ素原子)である。
ここで、パーハロゲン化アルキル基とは、前記一般式において、すべてのX’’がハロゲン原子である基であり、その具体例としては、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、−C7F15、−C11F23が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
パーハロゲン化アリール基の具体例としては、ペンタクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、R6としては、例えば、−C(CH3)3、−Si(CH3)3、−CH(R7)−O−CH2CH3、−CH(R7)OC(CH3)3および下記化5の環状基等が挙げられる。
ここで、R
7は、水素原子、あるいは直鎖状または分岐状の炭素数1〜5(C
1〜C
5)のアルキル基を表す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル、ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
なお、上記化5で表される環状基では、環構造から延びる単結合と酸置換基との間でエステル結合が形成される。
R6の具体例としては、例えば、1−メチル−1−シクロヘキシル基、イソボルニル(isobornyl)基、2−メチル−2−イソボルニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、テトラヒドロフラニル(tetrahydrofuranyl)基、テトラヒドロピラノイル(tetrahydropyranoyl)基、3−オクソシクロヘキサノイル(3−oxocyclohexanonyl)基、メバロンラクトニル(mevalonic lactonyl)基、1−エトキシエチル基、1−t−ブトキシエチル基等が挙げられる。
また、他のR6としては、例えば、下記化6で表されるジシクロプロピルメチル基(Dcpm)、ジメチルシクロプロピルメチル基(Dmcp)等が挙げられる。
また、モノマーには、上記のモノマーに代えて、または、上記のモノマーとともに架橋性モノマー(架橋剤)を用いることもできる。この架橋性モノマーは、後述する触媒前駆体の存在下で、架橋反応を生じ得る化合物である。
架橋性モノマーを用いることにより、次のような利点がある。すなわち、架橋性モノマーは、より速く重合するので、コア層93(光導波路90)の形成(プロセス)に要する時間を短縮することができる。また、架橋性モノマーは、加熱しても蒸発し難くいので、蒸気圧の上昇を抑えることができる。さらに、架橋性モノマーは、耐熱性に優れるため、コア層93の耐熱性を向上させることができる。
このうち、架橋性ノルボルネン系モノマーは、前記化3(構造式A)で表されるノルボルネン系部位(ノルボルネン系二重結合)を含む化合物である。
架橋性ノルボルネン系モノマーとしては、連続多環環系(fused multicyclic ring systems)の化合物と、連結多環環系(linked multicyclic ring systems)の化合物とがある。
連続多環環系の化合物(連続多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、下記化7で表される化合物が挙げられる。
[式中、Yは、メチレン(−CH
2−)基を表し、mは、0〜5の整数を表わす。ただし、mが0である場合、Yは、単結合である。]
なお、簡略化のため、ノルボルナジエン(norbornadiene)は、連続多環環系に含まれ、重合性ノルボルネン系二重結合を含むものと考えることとする。
この連続多環環系の化合物の具体例としては、下記化8で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
一方、連結多環環系の化合物(連結多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、下記化9で表される化合物が挙げられる。
[式中、aは、それぞれ独立して、単結合または二重結合を表し、mは、それぞれ独立して、0〜5の整数を表し、R
9は、それぞれ独立して二価の炭化水素基、二価のエーテル基または二価のシリル基を表す。また、nは、0または1である。]
ここで、二価の置換基とは、端部にノルボルネン構造に結合し得る結合手を2つ有する基のことを言う。
二価の炭化水素基(ハイドロカルビル基)の具体例としては、一般式:−(CdH2d)−で表されるアルキレン基(dは、好ましくは1〜10の整数を表す。)と、二価の芳香族基(アリール基)とが挙げられる。
二価のアルキレン基としては、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が挙げられる。
なお、分岐アルキレン基は、主鎖の水素原子が、直鎖状または分岐状のアルキル基で置換されたものである。
一方、二価の芳香族基としては、二価のフェニル基、二価のナフチル基が好ましい。
また、二価のエーテル基は、−R10−O−R10−で表される基である。
ここで、R10は、それぞれ独立して、R9と同じものを表す。
この連結多環環系の化合物の具体例としては、下記化10、化11、化12、化13、化14で表される化合物の他、化15、化16で表されるフッ素含有化合物(フッ素含有架橋性ノルボルネン系モノマー)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
この化11で表される化合物は、ジメチルビス[ビシクロ[2.2.1]へプト−2−エン−5−メトキシ]シランであり、またの命名では、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(「SiX」と略される。)と呼ばれる。
[式中、mおよびnは、それぞれ、1〜4の整数を表す。]
各種の架橋性ノルボルネン系モノマーの中でも、特に、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(SiX)が好ましい。SiXは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位および/またはアラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーに対して十分に低い屈折率を有する。このため、後述する活性放射線を照射する照射領域の屈折率を確実に低くして、クラッド部95とすることができる。また、コア部94とクラッド部95との間における屈折率差を大きくすることができ、コア層93(光導波路90)の特性(光伝送性能)の向上を図ることができる。
なお、以上のようなモノマーは、単独または任意に組み合わせて用いるようにしてもよい。
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層93(光導波路90)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路90の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)
3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2およびPd(OAc)2(P(Cy)3)2のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
なお、以下では、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2を「Pd545」と、また、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2を「Pd785」と略すことがある。
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6 −)等が挙げられる。
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記化18で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
このような助触媒の市販品としては、例えば、ニュージャージ州クランベリーのRhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標、以下同様である。) PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、日本国東京のみどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、日本国東京の東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」、日本国東京のみどり化学工業株式会社より入手可能な「NAI−105(CAS番号第85342−62−7番)」等が挙げられる。
なお、助触媒(第1の物質)として、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、後述する活性放射線(化学線)としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、層910に対して、300nm未満の十分なエネルギーの紫外線(活性放射線)を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して、上記のカチオンおよびWCAを発生させることができる。
また、コア層形成用材料(ワニス)900中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
増感剤は、活性放射線に対する助触媒の感度を増大して、助触媒の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、助触媒の活性化に適する波長に活性放射線の波長を変化させる機能を有するものである。
このような増感剤としては、助触媒の感度や増感剤の吸収のピーク波長等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen−9−ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いられる。
増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
なお、9,10−ジブトキシアントラセン(DBA)は、日本国神奈川県の川崎化成工業株式会社から入手が可能である。
コア層形成用材料900中の増感剤の含有量は、特に限定されないが、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
さらに、コア層形成用材料900中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマー915の自然酸化を防止することができる。その結果、得られたコア層93(光導波路90)の特性の向上を図ることができる。
この酸化防止剤としては、ニューヨーク州タリータウンのCiba Specialty Chemicals社から入手可能なCiba(登録商標、以下同様である。) IRGANOX(登録商標、以下同様である。) 1076およびCiba IRGAFOS(登録商標、以下同様である。) 168が好適に用いられる。
また、他の酸化防止剤としては、例えば、Ciba Irganox(登録商標、以下同様である。) 129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標、以下同様である。) 1790、Ciba Irganox(登録商標) 3114、Ciba Irganox 3125等を用いることもできる。
なお、このような酸化防止剤は、例えば、層910が酸化条件に曝されない場合や、曝される期間が極めて短い場合等には、省略することもできる。
コア層形成用材料(ワニス)900の調製に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒等の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
さて、支持基板951上に形成された液状被膜中から溶媒を除去(脱溶媒)する方法としては、例えば、自然乾燥、加熱、減圧下での放置、不活性ガスの吹付け(ブロー)などによる強制乾燥等の方法が挙げられる。
以上のようにして、支持基板951上には、コア層形成用材料900のフィルム状の固化物(または硬化物)である層910が形成される。
このとき、層(PITDMの乾燥フィルム)910は、第1の屈折率(RI)を有している。この第1の屈折率は、層910中に一様に分散(分布)するポリマー915およびモノマーの作用による。
[2A] 次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線(活性エネルギー光線)930を照射する(図3参照)。
以下では、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用い、また、触媒前駆体として、活性放射線930の照射に伴って活性化温度が低下するものを用いる場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925がクラッド部95となる。
したがって、ここで示す例では、マスク935には、形成すべきクラッド部95のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
また、図3においては、形成すべきクラッド部95のパターンと等価な開口(窓)9351は、活性放射線930の未照射領域940のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
用いる活性放射線930は、助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
これらの中でも、活性放射線930は、助触媒の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、助触媒を比較的容易に活性化させることができる。
また、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、助触媒を確実に活性化させることができる。
マスク935を介して、活性放射線930を層910に照射すると、活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域925内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことを言う。
したがって、活性放射線930照射後においても、例えば−40℃程度で、層910を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線930照射後の層910を複数用意しておき、これらに一括して加熱処理を施すことにより、コア層93を得ることができ、利便性が高い。
なお、活性放射線930として、レーザ光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
[3A] 次に、層910に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域925に集まってくる。
その結果、照射領域925では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
一方、未照射領域940では、当該領域から照射領域925にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー915の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される(図4参照)。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域925内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
[4A] 次に、層910に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部94およびクラッド部95の安定化を図ることができる。
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
[5A] 次に、層910に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層93に生じる内部応力の低減や、コア部94およびクラッド部95の更なる安定化を図ることができる。
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上の工程を経て、コア層93が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部94とクラッド部95との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[5A]や前記工程[4A]を省略してもよい。
[6A] 次に、支持基板952上に、クラッド層91(92)を形成する(図5参照)。
クラッド層91(92)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用材料)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
クラッド層91(92)を塗布法で形成する場合、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
支持基板952には、支持基板951と同様のものを用いることができる。
クラッド層91(92)の構成材料としては、下記化19で表されるノルボルネン系ポリマーを主とするものが用いられる。
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
2は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、X
1は、酸素原子またはメチレン基を表し、X
2は、炭素原子またはシリコン原子を表し、aは、0〜3の整数を表し、cは、1〜3の整数を表し、p/qが20以下である。]
ノルボルネン系ポリマーは、耐熱性に優れるが、付加共重合体である化19で表されるノルボルネン系ポリマーは、特に耐熱性に優れる。このため、これをクラッド層91(92)の構成材料として使用する光導波路90では、光導波路90に導体層901、902を形成する際、導体層901、902を加工して配線を形成する際、光学素子を実装する等に加熱されたとしても、クラッド層91(92)が軟化して、変形するのを防止することができる。
また、このノルボルネン系ポリマーは、比較的低い屈折率のものであり、かかるノルボルネン系ポリマーを主材料としてクラッド層91(92)を構成することにより、光導波路90の光伝送性能をより向上させることができる。
また、このノルボルネン系ポリマーまたはその原料であるノルボルネン系モノマーは、比較的安価であり、入手が容易であることからも好ましい。
特に、化19で表されるノルボルネン系ポリマーは、アリール基を有することから、疎水性が極めて高く、クラッド層91(92)の吸水による寸法変化等を確実に防止することができる。
また、疎水性が高い、すなわち、脂溶性(親油性)に優れるため、前述したようなコア層93に用いられるポリマーとの親和性が高い。このため、化19で表されるノルボルネン系ポリマーを用いてクラッド層91(92)を形成することにより、これらとコア層93との間での層間剥離を防止することができ、耐久性に優れた光導波路90が得られる。
かかる効果は、コア層93に用いるポリマーとして、ノルボルネン系ポリマーを選択することにより、より顕著となる。
また、化19で表されるノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことから、柔軟性が高く、光導波路90に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。なお、アルキルノルボルネンが有するアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
ここで、クラッド層91(92)に用いるノルボルネン系ポリマーは、比較的屈折率の低いものが好適であるのに対して、分子構造中にアリール基が存在すると、一般に屈折率が高くなる傾向を示すが、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、屈折率の上昇を防止することができる。
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
このような化19で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基、R2がメチル基、aが1、cが2である化合物、例えば、ブチルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等や、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、X1がメチレン基、X2が炭素原子、Arがフェニル基、R2が水素原子、aが0、cが1である化合物、例えば、ブチルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
また、p/qは、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、2種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
また、クラッド層形成用材料中には、各種の添加剤を添加(混合)するようにしてもよい。
例えば、クラッド層形成用材料中には、添加剤として、前記コア層形成用材料で挙げたモノマー、触媒前駆体および助触媒を混合してもよい。これにより、クラッド層91(92)中において、前述したのと同様にして、モノマーを反応させて、クラッド層91(92)の屈折率を変化させることができる。
モノマーとしては、架橋性モノマーを含むものを用いるのが好ましい。これにより、クラッド層91(92)において、ノルボルネン系ポリマーの少なくとも一部のもののを、架橋剤(架橋性モノマー)を介して架橋させることができる。また、架橋剤の種類、コア層93に用いるポリマーの種類等によっては、このノルボルネン系ポリマーとコア層93に用いるポリマーとを架橋させることもできる。換言すれば、かかるノルボルネン系ポリマーは、その少なくとも一部のものが架橋剤を介して架橋しているのが好ましい。
その結果、クラッド層91(92)自体の強度を向上させることや、クラッド層91(92)とコア層93との密着性を向上させることができる。
なお、この場合、クラッド層91(92)中において、屈折率の差を設けることが要求されないので、助触媒を省略して、加熱により容易に活性化する触媒前駆体を用いることもできる。
かかる触媒前駆体としては、例えば、[Pd(PCy3)2(O2CCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[2−methallyl Pd(PCy3)2]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[Pd(PCy3)2H(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[Pd(P(iPr)3)2(OCOCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
その他の添加剤としては、前述したような酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を混合することにより、クラッド材(ノルボルネン系ポリマー)の酸化による劣化を防止することができる。
以上のようにして、支持基板952上に、クラッド層91(92)が形成される。
[7A] 次に、支持基板951からコア層93を剥離し、このコア層93を、クラッド層91が形成された支持基板952と、クラッド層92が形成された支持基板952とで挟持する(図6参照)。
そして、図6中の矢印で示すように、クラッド層92が形成された支持基板952の上面側から加圧し、クラッド層91、92とコア層93とを圧着する。
これにより、クラッド層91、92とコア層93とが接合、一体化される。
また、この圧着作業は、加熱下で行われるのが好ましい。加熱温度は、クラッド層91、92やコア層93の構成材料等により適宜決定されるが、通常は、80〜200℃程度が好ましく、120〜180℃程度がより好ましい。
次いで、クラッド層91、92から、それぞれ、支持基板952を剥離、除去する。これにより、本発明の光導波路90が得られる。
[8A] 次に、光導波路90の上面および下面に、それぞれ導体層901、902を形成する(図7参照)。
各導体層901、902の形成方法としては、それぞれ、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法のような化学的気相成膜法(CVD法)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のような物理的気相成膜法(PVD法)等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法や、ラミネート法による導電性シート材の接合のうちの少なくとも1つを用いることができる。これにより、各導体層901、902と光導波路90との高い密着性が得られる。
以上のようにして、本発明の光導波路構造体9が完成する。
このような光導波路構造体9の好ましい例では、コア層93において、コア部94が第1のノルボルネン系材料を主材料として構成され、クラッド部95が第1のノルボルネン系材料より低い屈折率を有する第2のノルボルネン系材料を主材料として構成され、クラッド層91、92が、それぞれ、第1のノルボルネン系材料(コア層93のコア部94)より屈折率が低いノルボルネン系ポリマーを主材料として構成される。
そして、第1のノルボルネン系材料と前記第2のノルボルネン系材料とは、いずれも、同一のノルボルネン系ポリマーを含有するが、このノルボルネン系ポリマーと異なる屈折率を有するノルボルネン系モノマーの反応物の含有量が異なることにより、互いに屈折率が異なっている。
ノルボルネン系ポリマーは、透明性が高いため、かかる構成の光導波路構造体9では、光導波路90の高い光伝送性能が得られる。
また、このような構成により、コア部94とクラッド部95との間の高い密着性のみならず、コア層93とクラッド層91およびクラッド層92との間の高い密着性が得られ、光導波路構造体9に曲げ等の変形が生じた場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93とクラッド層91、92との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路90の光伝送性能が維持される。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、高い耐熱性、高い疎水性を有するため、かかる構成の光導波路90(光導波路構造体9)では、耐久性に優れたものとなる。
また、光導波路90に高い耐熱性や高い疎水性を付与することができるため、その特性の低下(劣化)を防止しつつ、前述したような各種の方法を採用して導体層901、902を確実に形成することができる。特に、光の伝送に重要なコア部94と重なるように、導体層901、902を形成した場合でも、コア部94の変質・劣化を防止することができる。
また、以上のような製造方法によれば、簡単な処理で、しかも短時間に、所望の形状を有し、かつ、寸法精度の高いコア部94を有する光導波路構造体9を得ることができる。
<第2の製造方法>
次に、光導波路構造体9の第2の製造方法について説明する。
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2の製造方法では、コア層形成用材料900の組成が異なり、それ以外は、前記第1の製造方法と同様である。
すなわち、第2の製造方法で用いられるコア層形成用材料900は、活性放射線の照射により活性化する離脱剤(物質)と、主鎖と該主鎖から分岐し、活性化した離脱剤の作用により、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ぺンダントグループ)とを有するポリマー915とを含有している。
離脱剤には、前記第1の製造方法で挙げた助触媒と同様のものを用いることができる。
第2の製造方法において用いられるポリマー915としては、前記第1の製造方法で挙げたポリマー915が有する置換基を離脱性基で置換したものや、前記第1の製造方法で挙げたポリマー915に離脱性基を導入したもの等が挙げられる。
かかるポリマー915は、離脱性基の離脱(切断)により、その屈折率が変化(上昇または低下)する。
離脱性基は、カチオン、アニオンまたはフリーラジカルの作用により離脱するもの、すなわち、酸(カチオン)脱離性基、塩基(アニオン)脱離性基、フリーラジカル脱離性基のいずれであってもよいが、好ましくはカチオン(プロトン)の作用により離脱するもの(酸基離脱性基)である。
酸離脱性基としては、その分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。かかる酸離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
このうち、離脱によりポリマー915の屈折率に低下を生じさせる酸離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
なお、フリーラジカルの作用により離脱するフリーラジカル脱離性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基等が挙げられる。
また、ポリマー915は、前記第1の製造方法で説明したのと同様の理由から、ノルボルネン系ポリマーを用いるのが好ましく、アルキル(特にヘキシル)ノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーを用いるのがより好ましい。
以上のことを考慮した場合、離脱性基の離脱により屈折率が低下するポリマー915としては、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランのホモポリマーや、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマーが好適に用いられる。
以下では、ポリマー915として、離脱性基(特に酸離脱性基)の離脱により屈折率が低下するものを用いる場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925がクラッド部95となる。
[1B] 前記工程[1A]と同様の工程を行う。
このとき、層(PITDMの乾燥フィルム)910は、第1の屈折率(RI)を有している。この第1の屈折率は、層910中に一様に分散(分布)するポリマー915の作用による。
[2B] 前記工程[2A]と同様の工程を行う。
マスク935を介して、活性放射線930を層910に照射すると、活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する離脱剤は、活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、カチオンは、離脱性基そのものを主鎖から離脱させるか、または、離脱性基の分子構造の途中から切断する(フォトブリーチ)。
これにより、照射領域925では、未照射領域940よりも完全な状態の離脱性基の数が減少し、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、このとき、未照射領域940の屈折率は、第1の屈折率が維持される。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第1の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される。
なお、この場合、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.3〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.6〜6J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、離脱剤を確実に活性化させることができる。
[3B] 次に、層910に対して加熱処理を施す。
これにより、ポリマー915から離脱(切断)された離脱性基が、例えば、照射領域925から除去されたり、ポリマー915内において再配列または架橋する。
さらに、このとき、クラッド部95(照射領域925)に残存する離脱性基の一部がさらに離脱(切断)すると考えられる。
したがって、このような加熱処理を施すことにより、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差をより大きくすることができる。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、70〜195℃程度であるのが好ましく、85〜150℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域925から離脱(切断)された離脱性基を十分に除去し得るに設定され、特に限定されないが、0.5〜3時間程度であるのが好ましく、0.5〜2時間程度であるのがより好ましい。
なお、例えば、加熱処理を施す前の状態で、コア部94とクラッド部95との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[3B]を省略してもよい。
また、必要に応じて、1回または複数回の加熱処理(例えば、150〜200℃×1〜8時間程度)の工程を追加することもできる。
以上の工程を経て、コア層93が得られる。
[4B] 前記工程[6A]と同様の工程を行う。
[5B] 前記工程[7A]と同様の工程を行う。
[6B] 前記工程[8A]と同様の工程を行う。
以上のようにして、本発明の光導波路構造体9が完成する。
このような光導波路構造体9の好ましい例では、コア層93がノルボルネン系材料を主材料として構成され、クラッド層91、92が、それぞれ、コア層93のコア部94より屈折率が低いノルボルネン系ポリマーを主材料として構成される。
そして、コア部94とクラッド部95とは、主鎖と主鎖から分岐し、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基とを有するノルボルネン系ポリマーを主材料として構成され、コア部94とクラッド部95とは、主鎖に結合した状態の離脱性基の数が異なることにより、それらの屈折率が異なっている。
ノルボルネン系ポリマーは、透明性が高いため、かかる構成の光導波路構造体9では、光導波路90の高い光伝送性能が得られる。
また、このような構成により、コア部94とクラッド部95との間の高い密着性のみならず、コア層93とクラッド層91およびクラッド層92との間の高い密着性が得られ、光導波路構造体9に曲げ等の変形が生じた場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93とクラッド層91、92との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路90の光伝送性能が維持される。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、高い耐熱性、高い疎水性を有するため、かかる構成の光導波路90(光導波路構造体9)では、耐久性に優れたものとなる。
また、光導波路90に高い耐熱性や高い疎水性を付与することができるため、その特性の低下(劣化)を防止しつつ、前述したような各種の方法を採用して導体層901、902を確実に形成することができる。特に、光の伝送に重要なコア部94と重なるように、導体層901、902を形成した場合でも、コア部94の変質・劣化を防止することができる。
また、以上のような製造方法によれば、簡単な処理で、しかも短時間に、所望の形状を有し、かつ、寸法精度の高いコア部94を有する光導波路構造体9を得ることができる。
特に、第2の製造方法によれば、少なくとも活性放射線をすればよく、極めて簡単な処理で、コア層93を形成することができる。
<第3の製造方法>
次に、光導波路構造体9の第3の製造方法について説明する。
以下、第3の製造方法について説明するが、前記第1および第2の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3の製造方法では、コア層形成用材料900として、第1および第2の製造方法で用いたコア層形成用材料を組み合わせたものを用い、それ以外は、前記第1または第2の製造方法と同様である。
すなわち、第3の製造方法で用いられるコア層形成用材料900は、前述したような離脱性基を有するポリマー915と、モノマーと、助触媒(第1の物質)と、触媒前駆体(第2の物質)とを含有している。また、助触媒は、前記第2の製造方法における離脱剤と同じものであり、離脱剤を離脱させる機能も有する。
このようなコア層形成用材料900では、選択する離脱性基と、選択するモノマーとの組み合わせにより、得られるコア層93において、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差をより多段階に調整することが可能となる。
なお、前述したように、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用い、また、触媒前駆体として、活性放射線930の照射に伴って活性化温度が低下するものを用い、ポリマー915として、離脱性基の離脱により屈折率が低下するものを用いると、照射領域925をクラッド部95とし、コア部94との屈折率差が極めて大きいコア層93を得ることができる。
以下では、このような組み合わせのポリマー915、モノマーおよび触媒前駆体を用いる場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925がクラッド部95となる。
[1C] 前記工程[1A]と同様の工程を行う。
このとき、層(PITDMの乾燥フィルム)910は、第1の屈折率(RI)を有している。この第1の屈折率は、層910中に一様に分散(分布)するポリマー915およびモノマーの作用による。
[2C] 前記工程[2A]と同様の工程を行う。
マスク935を介して、活性放射線930を層910に照射すると、活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線930の作用により反応または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
また、カチオンは、離脱性基そのものを主鎖から離脱させるか、または、離脱性基の分子構造の途中から切断する。
これにより、照射領域925では、未照射領域940よりも完全な状態の離脱性基の数が減少し、屈折率が低下して第1の屈折率より低くなる。なお、このとき、未照射領域940の屈折率は、第1の屈折率が維持される。
なお、この場合、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜5J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜4J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、助触媒を確実に活性化させることができる。
[3C] 前記工程[3A]と同様の工程を行う。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散して照射領域925に集まってくる。
また、この加熱処理により、ポリマー915から離脱(切断)された離脱性基が、例えば、照射領域925から除去されたり、ポリマー915内において再配列または架橋する。
その結果、照射領域925では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになること、ポリマー915から離脱(切断)された離脱性基が減少すること等により、さらに屈折率が低下して第2の屈折率となる。
一方、未照射領域940では、当該領域から照射領域925にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー915の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される。
[4C] 前記工程[4A]と同様の工程を行う。
[5C] 前記工程[5A]と同様の工程を行う。
[6C] 前記工程[6A]と同様の工程を行う。
[7C] 前記工程[7A]と同様の工程を行う。
[8C] 前記工程[8A]と同様の工程を行う。
以上のようにして、本発明の光導波路構造体9が完成する。
このような光導波路構造体9の好ましい例では、コア層93は、主鎖とこの主鎖から分岐し、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基とを有するノルボルネン系ポリマーを含有しており、コア部94とクラッド部95とは、主鎖に結合した状態の離脱性基の数が異なること、および、ノルボルネン系ポリマーと異なる屈折率を有するノルボルネン系モノマーの反応物の含有量が異なることにより、それらの屈折率が異なっており、また、クラッド層91、92が、それぞれ、コア層93のコア部94より屈折率が低いノルボルネン系ポリマーを主材料として構成される。
ノルボルネン系ポリマーは、透明性が高いため、かかる構成の光導波路構造体9では、光導波路90の高い光伝送性能が得られる。
また、このような構成により、コア部94とクラッド部95との間の高い密着性のみならず、コア層93とクラッド層91およびクラッド層92との間の高い密着性が得られ、光導波路構造体9に曲げ等の変形が生じた場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93とクラッド層91、92との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路90の光伝送性能が維持される。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、高い耐熱性、高い疎水性を有するため、かかる構成の光導波路90(光導波路構造体9)では、耐久性に優れたものとなる。
また、光導波路90に高い耐熱性や高い疎水性を付与することができるため、その特性の低下(劣化)を防止しつつ、前述したような各種の方法を採用して導体層901、902を確実に形成することができる。特に、光の伝送に重要なコア部94と重なるように、導体層901、902を形成した場合でも、コア部94の変質・劣化を防止することができる。
また、以上のような製造方法によれば、簡単な処理で、しかも短時間に、所望の形状を有し、かつ、寸法精度の高いコア部94を有する光導波路構造体9を得ることができる。
特に、第3の製造方法によれば、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差を多段階に設定することが可能となる。
<第4の製造方法>
次に、光導波路構造体9の第4の製造方法について説明する。
図8〜図13は、それぞれ、本発明の光導波路構造体の第4の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
以下、第4の製造方法について説明するが、前記第1〜第3の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4の製造方法では、光導波路90の形成工程が異なり、それ以外は、前記第1〜第3の製造方法と同様である。
すなわち、コア層形成用材料900やクラッド層形成用材料には、前記第1〜第3の製造方法で説明したのと同様のものを用いることができる。
なお、以下では、コア層形成用材料として、前記第1の製造方法で挙げたものを用いる場合を代表に説明する。
[1D] まず、支持基板1000上に、クラッド層形成用材料(第1のワニス)を前述したのと同様の方法を用いて塗布して、第1の層1110を形成する(図8参照)。
支持基板1000には、支持基板951と同様のものを用いることができる。
第1の層1110の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
[2D] 次に、第1の層1110上に、コア層形成用材料(第2のワニス)を前述したのと同様の方法を用いて塗布して、第2の層1120を形成する(図9参照)。
コア層形成用材料は、第1の層1110をほぼ完全に乾燥させた後に塗布するようにしてもよいし、第1の層1110が乾燥する前に塗布するようにしてもよい。
後者の場合、第1の層1110と第2の層1120とは、それらの界面において相互に混ざり合った状態となる。この場合、得られた光導波路90において、クラッド層91とコア層93との密着性の向上を図ることができる。
また、この場合、第1のワニスおよび第2のワニスは、それぞれ、粘度(常温)が好ましくは100〜10000cP程度、より好ましくは150〜5000cP程度、さらに好ましくは200〜3500cP程度に調製される。これにより、第1の層1110と第2の層1120とが、それらの界面において必要以上に混ざり合うのを防止することができるとともに、第1の層1110および第2の層1120の厚さが不均一となるのを防止することができる。
なお、第2のワニスの粘度は、第1のワニスの粘度より高くするのが好ましい。これにより、第1の層1110と第2の層1120とが、それらの界面において必要以上に混ざり合うのを確実に防止することができる。
第2の層1120の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、15〜125μm程度であるのがより好ましく、25〜100μm程度であるのがさらに好ましい。
[3D] 次に、第2の層1120上に、クラッド層形成用材料(第3のワニス)を前述したのと同様の方法を用いて塗布して、第3の層1130を形成する(図10参照)。
第3の層1130は、前記第2の層1120と同様にして形成することができる。
第3の層1130の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
これにより、積層体2000が得られる。
[4D] 次に、積層体2000中の溶媒を除去(脱溶媒)する。
脱溶媒の方法としては、例えば、加熱、大気圧または減圧下での放置、不活性ガス等の噴き付け(ブロー)等の方法が挙げられるが、加熱による方法が好ましい。これにより、比較的容易かつ短時間での脱溶媒が可能である。
この加熱の温度は、25〜60℃程度であるのが好ましく、30〜45℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱の時間は、15〜60分程度であるのが好ましく、15〜30分程度であるのがより好ましい。
[5D] 次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、積層体2000に対して活性放射線(活性エネルギー光線)930を照射する(図11参照)。
マスク935を介して、活性放射線930を積層体2000に照射すると、第2の層1120の活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線930の作用により反応または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
[6D] 次に、積層体2000に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散して照射領域925に集まってくる。
その結果、照射領域925では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。
一方、未照射領域940では、当該領域から照射領域925にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー915の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される(図12参照)。
[7D] 次に、積層体2000に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部94およびクラッド部95の安定化を図ることができる。
[8D] 次に、積層体2000に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層93に生じる内部応力の低減や、コア部94およびクラッド部95の更なる安定化を図ることができる。
以上の工程を経て、本発明の光導波路90が得られる。
[9D] 次に、光導波路90の上面および下面に、それぞれ導体層901、902を形成する(図13参照)。
これは、前記工程[8A]と同様にして行うことができる。
以上のようにして、本発明の光導波路構造体9が完成する。
かかる方法では、第1の加熱処理の後、積層体2000内にコア部94が目視で確認することができるようになる。
また、第1のワニスおよび第3のワニスとして、第2のワニスと同様の組成、すなわち、ポリマー915、モノマー、助触媒および触媒前駆体を含有するものを用いるようにしてもよい。これにより、モノマーの反応が、第1の層1110および第3の層1130と、第2の層1120の界面、および/または、かかる界面を越えて第1の層1110および第3の層1130内で生じて、クラッド層91、92とコア層93との剥離をより確実に防止することができる。
また、この場合、例えば、I:第1の層1110および第3の層1130のポリマー915として、第2の層1120のポリマー915の屈折率より相対的に低い屈折率(RI)のものを選択したり、II:第1の層1110および第3の層1130のモノマーとして、第2の層1120のモノマーと同じものを用いるが、第1の層1110および第3の層1130における触媒前駆体およびモノマーの比率を、第2の層1120のそれより低くなるように調節するようにしたりすればよい。
これにより、活性放射線930を照射しても、クラッド層91、92内に、コア層93のコア部94より高い屈折率を有する領域が形成されるのを防止することができる。
なお、コア層形成用材料(第2のワニス)として、離脱性基を有するポリマー915を含有するものを用いる場合、クラッド層形成用材料(第1のワニス、第3のワニス)としては、脱離性基を有しないポリマー915を用いて調製したものを用いるか、離脱性基を有するポリマー915を用いるが、離脱剤を含有しないものを用いるようにすればよい。
これにより、第1の層1110および第3の層1130において、ポリマー915から離脱性基が離脱(分解)することを防止することができる。
また、第4の製造方法では、第1のワニスおよび第3のワニスには、末端にエポキシ構造を含む置換基を有するノルボルネン系ポリマーと、助触媒とを含むものを用いるのが好ましい。これにより、コア部94およびクラッド部95を形成する際に、エポキシ構造が開裂し、コア層93のポリマー915との反応(重合)を生じるようになる。その結果、クラッド層91、92のコア層93に対する密着性の向上を図ることができる。
このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、ヘキシルノルボルネン(HxNB)とノルボルネンメチルグリシジルエーテル(AGENB)との共重合体等が挙げられる。
また、この場合、助触媒には、コア層93を形成する際には、活性化しないものを選択するようにしてもよい。例えば、第2のワニスが含有する助触媒の活性化に適した活性放射線を吸収しないか、または、活性放射線に代わって熱の作用により活性化される助触媒を選択するようにすればよい。
このような助触媒としては、例えば、非吸収性光塩基発生剤(PBG)や熱塩基発生剤(TBG)等が挙げられる。
以上の説明したような光導波路構造体9は、活性放射線の照射という簡単な方法でコア部94のパターニングをすることができ、コア部(光回路)94のパターン形状の設計の自由度が広く、しかも寸法精度の高いコア部94が得られる。
また、予め導体層901、902が形成されているため、素子への配線(電気回路の形成)が容易であるとともに、素子の種類(端子の設置箇所)等に係わらずそれに適した配線が可能であり、配線回路の構成の自由度(例えば、端子の設置箇所の選択の自由度)が広く、汎用性に富む。
そして、光導波路構造体9は、配線(電気回路)およびコア部(光回路)94の双方を高い配設密度で形成することができるため、光および電気の混成回路において、効率の良い回路設計が可能となるとともに、さらなる回路の集積化が可能となる。
このような光導波路構造体9は、光回路(光導波路のパターン)や電気回路の設計の幅が広く、歩留まりが良く、光伝送性能を高く維持し、信頼性、耐久性に優れ、汎用性に富むため、種々の電子部品、電子機器等に対し用いることができる。
なお、前記第1〜第4の製造方法では、いずれも、支持基板951、952、1000を除去するものとして説明したが、これらを導電性材料で構成し、除去することなく、そのまま導体層901、902として用いるようにしてもよい。
また、必要に応じて、クラッド層91、92のうちのいずれか一方または双方を省略してもよい。
また、コア層93の形成方法も、前述した方法に限定されるものでないことは、言うまでもない。
また、光導波路90は、図示の構成に限定されず、例えば、2つのクラッド層の間に、複数層のコア層が積層して設けられるような構成であってもよく、クラッド層とコア層とを順に積層して構成したものであってもよく、2つのクラッド層の間に1つのコア層が設けられた積層体を、複数層積層して構成したもの等であってもよい。
また、コア部94の途中には、その光路、すなわち、コア部94の長手方向に対しほぼ45°傾斜する傾斜面(反射面)を形成してもよい。これにより、コア部94を伝播する光(伝送光)を、この傾斜面において、ほぼ90°屈曲させることができる。
そして、この傾斜面の方向を適宜設定することにより、伝送光の光路を、コア層90内(2次元方向)のみならず、光導波路90の厚さ方向も含めた3次元方向に変更することが可能となる。
この傾斜面は、コア部94を、例えば切断、除去(欠損)等することにより形成することができる。なお、傾斜面には、例えば多層光学薄膜や金属薄膜(例えばアルミ蒸着膜)のような反射膜あるいは反射増加膜を形成するようにしてもよい。
以上、本発明の光導波路および光導波路構造体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、以下では、ヘキシルノルボルネン(CAS番号第22094−83−3番)を「HxNB」と、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(CAS番号第376634−34−3番)を「diPhNB」と、フェニルエチルノルボルネン(CAS番号第29415−09−6番)を「PENB」と、ブチルノルボルネン(CAS番号第22094−81−1番)を「BuNB」と、デシルノルボルネン(CAS番号第22094−85−5番)を「DeNB」と、ベンジルノルボルネン(CAS番号第265989−73−9番)を「BzNB」と、メチルグリシジルエーテルノルボルネン(CAS番号第3188−75−8番)を「AGENB」と、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン(CAS番号第68245−19−2番)を「TMSENB」と、トリエトキシシリルノルボルネン(CAS番号第18401−43−9番)を「TESNB」と、トリメトキシシリルノルボルネン(CAS番号第7538−46−7番)を「TMSNB」と、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(CAS番号第376609−87−9番)を「SiX」と、それぞれ略すことがある。
1.ポリマーの合成およびポリマー溶液の調製
以下に示すようにして、各ポリマーP1〜6を合成し、その溶液を調整した。
<<ポリマーP1:ヘキシルノルボルネン(HxNB)/ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)コポリマーの合成およびポリマーP1溶液の調製>>
HxNB(17.25g,0.097mol)、diPhNB(7.75g,0.024mol)、1−ヘキセン(5.04g,0.060mol)、および、トルエン(56.7g)を秤量し、250mLのシーラムボトルに入れて、オイルバス中80℃に加熱し混合溶液を得た。
次いで、この溶液に、[Pd(PCy3)2(O2CCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(以下、「Pd1446」と略す。)(7.0×10−3g,4.8×10−6mol)、および、DANFABA(1.5×10−2g,1.9×10−5mol)を添加した。
次いで、混合物を、80℃で7時間維持し、その後、20mLのアセトニトリルを加えて、Pd触媒の活性を消失させた。その後、反応混合物にメタノールを滴下すると共重合体が沈殿した。
沈殿した共重合体をろ過して集め、60℃のオーブンで、真空で乾燥させた。乾燥後の重量は19.8gであった(収率:79%)。
上記で得た共重合体の分子量を、THF溶媒でGPC法により測定すると(ポリスチレン換算)、Mw=86,000およびMn=22,000であった。
共重合体の組成を、1H−NMRにより測定すると、78/22=HxNB/diPhNBコポリマーであった。
共重合体の屈折率を、プリズムカップリング法で測定すると、波長633nmで、TEモードで1.5318であり、TMモードで1.5303であった。
そして、乾燥させた共重合体をトルエンに溶解して30wt%のポリマーP1溶液とした。
<<ポリマーP2:ブチルノルボルネン(BuNB)/フェニルエチルノルボルネン(PENB)コポリマーの合成およびポリマーP2溶液の調製>>
BuNB(24.33g,0.162mol)、PENB(5.67g,0.029mol)、1−ヘキセン(13.36g,0.16mol)、および、トルエン(170.0g)を500mLのシーラムボトルで混合し、オイルバス中80℃に加熱し混合溶液を得た。
次いで、この溶液に、Pd1446(0.0110g,7.62×10−6mol)、および、DANFABA(0.024g,3.05×10−5mol)を、それぞれ濃縮ジクロロメタン溶液の形態で、加えた。
添加後、得られた溶液を80℃で50分間維持した。次いで、勢いよく攪拌された混合物に、メタノールを滴下すると共重合体が沈殿した。
沈殿した共重合体をろ過して集め、60℃のオーブンで、真空で乾燥させた。乾燥後の重量は23.60gであった(収率:79%)。
上記で得た共重合体の分子量を、THF溶媒でGPC法により測定すると(ポリスチレン換算)、Mw=73,000およびMn=28,000であった。
共重合体の組成を、1H−NMRにより測定すると、85/15=BuNB/PENBコポリマーであった。
共重合体の屈折率を、プリズムカップリング法で測定すると、波長633nmで、TEモードで1.5241であり、TMモードで1.5657であった。
そして、乾燥させた共重合体をトルエンに溶解して30wt%のポリマーP2溶液とした。
<<ポリマーP3:ヘキシルノルボルネン(HxNB)/フェニルエチルノルボルネン(PENB)コポリマーの合成およびポリマーP3溶液の調製>>
HxNB(25.08g,0.141mol)、PENB(4.92g,0.025mol)、1−ヘキセン(11.31g,0.135mol)、および、トルエン(185.35g)を、500mLのシーラムボトルで混合し、オイルバスで80℃に加熱して溶液を形成した。
この溶液に、Pd1446(0.0096g,6.62×10−6mol)およびDANFABA(0.021g,2.65×10−5mol)を、それぞれ濃縮ジクロロメタン溶液の形態で加えた。
添加後、得られた溶液を80℃で50分維持した。勢いよく攪拌した反応混合物にメタノールを滴下すると共重合体が沈殿した。
沈殿した共重合体をろ過して集め、60℃のオーブンで真空で乾燥させた。乾燥後の重量は、22.21gであった(収率:68%)。
共重合体の分子量を、THFを溶媒としてGPC法で測定すると(ポリスチレン換算)、Mw=95,000およびMn=26,000であった。
共重合体の組成を、1H−NMRで測定すると、83/17=HxNB/PENBコポリマーであった。
共重合体の屈折率を、プリズムカップリング法で測定したところ、波長633nmで、TEモードで1.5238であり、TMモードで1.5221であった。
そして、乾燥させた共重合体をトルエンに溶解して30wt%のポリマーP3溶液とした。
<<ポリマーP4:デシルノルボルネン(DeNB)/フェニルエチルノルボルネン(PENB)コポリマーの合成およびポリマーP4溶液の調製>>
DeNB(24.76g,0.106mol)、PENB(5.24g,0.026mol)、1−ヘキセン(12.26g,0.146mol)、および、トルエン(170.0g)を、500mLのシーラムボトルで混合し、オイルバスで80℃に加熱して溶液を形成した。
この溶液に、Pd1446(0.0076g,5.28×10−6mol)、および、DANFABA(0.017g,2.11×10−5mol)を、それぞれ濃縮ジクロロメタン溶液の形態で加えた。
添加後、得られた溶液を80℃で50分維持した。勢いよく攪拌した反応混合物にメタノールを滴下すると共重合体が沈殿した。
沈殿した共重合体をろ過して集め、60℃のオーブンで真空で乾燥させた。乾燥後の重量は、19.74gであった(収率:66%)。
共重合体の分子量を、THFを溶媒としてGPC法で測定すると(ポリスチレン換算)、Mw=78,000およびMn=36,000であった。
共重合体の組成を、1H−NMRで測定すると、81/19=DeNB/PENBコポリマーであった。
共重合体の屈折率を、プリズムカップリング法で測定したところ、波長633nmで、TEモードで1.5118であり、TMモードで1.5123であった。
そして、乾燥させた共重合体をトルエンに溶解して30wt%のポリマーP4溶液とした。
<<ポリマーP5:ヘキシルノルボルネン(HxNB)/ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB)コポリマーの合成およびポリマーP5溶液の調製>>
HxNB(8.94g,0.050mol)、diPhNB(16.06g,0.050mol)、1−ヘキセン(5.04g,0.060mol)、および、トルエン(56.7g)を秤量し、250mLのシーラムボトルに入れて、オイルバス中80℃に加熱し混合溶液を得た。
次いで、この溶液に、[Pd(PCy3)2(O2CCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(以下、「Pd1446」と略す。)(5.8×10−3g,4.0×10−6mol)、および、DANFABA(1.3×10−2g,1.6×10−5mol)を添加した。
次いで、混合物を、80℃で7時間維持し、その後、20mLのアセトニトリルを加えて、Pd触媒の活性を消失させた。その後、反応混合物にメタノールを滴下すると共重合体が沈殿した。
沈殿した共重合体をろ過して集め、60℃のオーブンで、真空で乾燥させた。乾燥後の重量は19.8gであった(収率:79%)。
上記で得た共重合体の分子量を、THF溶媒でGPC法により測定すると(ポリスチレン換算)、Mw=86,000およびMn=22,000であった。
共重合体の組成を、1H−NMRにより測定すると、50/50=HxNB/diPhNBコポリマーであった。
共重合体の屈折率を、プリズムカップリング法で測定すると、波長633nmで、TEモードで1.5558であり、TMモードで1.5541であった。
そして、乾燥させた共重合体をトルエンに溶解して30wt%のポリマーP5溶液とした。
<<ポリマーP6:ヘキシルノルボルネン(HxNB)/フェニルエチルノルボルネン(PENB)コポリマーの合成およびポリマーP6溶液の調製>>
HxNB(4.59g,0.026mol)、PENB(20.41g,0.103mol)、1−ヘキセン(13.36g,0.16mol)、および、トルエン(170.0g)を500mLのシーラムボトルで混合し、オイルバス中80℃に加熱し混合溶液を得た。
次いで、この溶液に、Pd1446(7.44×10−3g,5.15×10−6mol)、および、DANFABA(0.016g,2.06×10−5mol)を、それぞれ濃縮ジクロロメタン溶液の形態で、加えた。
添加後、得られた溶液を80℃で50分間維持した。次いで、勢いよく攪拌された混合物に、メタノールを滴下すると共重合体が沈殿した。
沈殿した共重合体をろ過して集め、60℃のオーブンで、真空で乾燥させた。乾燥後の重量は23.60gであった(収率:79%)。
上記で得た共重合体の分子量を、THF溶媒でGPC法により測定すると(ポリスチレン換算)、Mw=73,000およびMn=28,000であった。
共重合体の組成を、1H−NMRにより測定すると、20/80=HxNB/PENBコポリマーであった。
共重合体の屈折率を、プリズムカップリング法で測定すると、波長633nmで、TEモードで1.5672であり、TMモードで1.5651であった。
そして、乾燥させた共重合体をトルエンに溶解して30wt%のポリマーP6溶液とした。
以上合成した各ポリマーを、下記表1に要約する。
2.ワニスの調製
以下に示すようにして、各ワニスV1〜4およびV51〜56を、それぞれ調製した。
<<ワニスV1の調製>>
HxNB(42.03g,0.24mol)、および、SiX(7.97g,0.026mol)を秤量しガラス瓶にいれた。
このモノマー溶液に、フェノール系酸化防止剤として、Ciba社製、IRGANOX 1076(0.5g)、および、有機リン系酸化防止剤として、Ciba社製、IRGAFOS 168(0.125g)を加え、モノマー酸化防止剤溶液を得た。
上記のポリマーP5溶液(30.0g)に、モノマー酸化防止剤溶液(3.0g)、触媒前駆体として、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2(以下。「Pd785」と略す。)(4.93×10−4g,6.28×10−7mol、メチレンクロライド0.1mL中)、および、光酸発生剤(助触媒)として、Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(2.55×10−3g,2.51×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)を加えて、ワニスV1を得た。
このワニスV1を0.2μmの細孔のフィルターでろ過して使用した。
なお、以下では、「Ciba社製、IRGANOX 1076」を「IRGANOX 1076」と、「Ciba社製、IRGAFOS 168」を「IRGAFOS 168」と、「Rhodia社製、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074」を「RHODORSIL 2074」と略す。
<<ワニスV2の調製>>
HxNB(16.64g,0.093mol)、および、SiX(33.36g,0.110mol)を秤量しガラス瓶にいれた。このモノマー溶液に、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX1076(0.5g)、および、有機リン系酸化防止剤として、IRGAFOS 168(0.125g)を加え、モノマー酸化防止剤溶液を得た。
上記のポリマーP6溶液(30.0g)に、モノマー酸化防止剤溶液(2.16g)、触媒前駆体として、Pd785(1.47×10−3g,1.88×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)、および、光酸発生剤(助触媒)として、RHODORSIL 2074(7.67×10−3g,7.54×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)を加えて、ワニスV2を得た。
このワニスV2を0.2μmの細孔のフィルターでろ過して使用した。
<<ワニスV3の調製>>
上記のポリマーP5(5g)に、メシチレン(20g)、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(0.05g)、有機リン系酸化防止剤として、IRGAFOS 168(0.0125g)、および、光酸発生剤(離脱剤)として、RHODORSIL 2074(4.0×10−3g、0.1mLのメチレンクロライド中)を加えて、ワニスV3を調製した。
このワニスV3を0.2μmの細孔のフィルターでろ過して使用した。
<<ワニスV4の調製>>
2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(6.4g,0.02mol)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(4.44g,0.01mol)、および、ピロメリット酸二無水物(2.18g,0.01mol)を、ジメチルアセトアミド(86.6g)に溶解させ、窒素雰囲気下、室温で2日間攪拌し反応させ、ポリイミド樹脂前駆体のワニスV4を得た。
このワニスV4を0.2μmの細孔のフィルターでろ過して使用した。
<<ワニスV51の調製>>
HxNB(42.03g,0.24mol)、および、SiX(7.97g,0.026mol)を秤量しガラス瓶にいれた。
このモノマー溶液に、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(0.5g)、および、有機リン系酸化防止剤として、IRGAFOS 168(0.125g)を加え、モノマー酸化防止剤溶液を得た。
上記のポリマーP1溶液(30g)に、モノマー酸化防止剤溶液(2.0g)、触媒前駆体として、Pd785(3.29×10−4g,4.19×10−7mol、メチレンクロライド0.1mL中)、光酸発生剤として、東洋インキ製造株式会社製、TAG−372R(7.63×10−4g,8.38×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)、および、トルエン(10.0g)を加えてワニスV51を調製した。
このワニスV51を0.2μmの細孔のフィルターに通して使用した。
なお、以下では、「東洋インキ製造株式会社製、TAG−372R」を、「TAG−372R」と略す。
<<ワニスV52の調製>>
上記のポリマーP1(5g)に、メシチレン(20g)、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(0.05g)、および、有機リン系酸化防止剤として、IRGAFOS 168(0.0125g)を加えてワニスV52を調製した。
このワニスV52を0.2μmの細孔のフィルターに通して使用した。
<<ワニスV53の調製>>
HxNB(16.64g,0.093mol)、および、SiX(33.36g,0.110mol)を秤量しガラス瓶にいれた。
このモノマー溶液に、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(0.5g)、および、有機リン系酸化防止剤として、IRGAFOS 168(0.125g)を加え、モノマー酸化防止剤溶液を得た。
上記のポリマーP2溶液(30.0g)に、モノマー酸化防止剤溶液(2.16g)、触媒前駆体として、Pd785(1.47×10−3g,1.88×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)、および、光酸発生剤として、RHODORSIL 2074(7.67×10−3g,7.54×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)を加えてワニスV53を調製した。
このワニスV53を0.2μmの細孔のフィルターに通して使用した。
<<ワニスV54の調製>>
HxNB(16.64g,0.093mol)、および、SiX(33.36g,0.110mol)を秤量しガラス瓶にいれた。
このモノマー溶液に、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(0.5g)、および、有機リン系酸化防止剤として、IRGAFOS 168(0.125g)を加え、モノマー酸化防止剤溶液を得た。
上記のポリマーP3(30.0g)に、モノマー酸化防止剤溶液(2.16g)、触媒前駆体として、Pd785(1.47×10−3g,1.88×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)、および、光酸発生剤として、RHODORSIL 2074(7.67×10−3g,7.54×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)を加えてワニスV54を調製した。
このワニスV54を0.2μmの細孔のフィルターでろ過して使用した。
<<ワニスV55の調製>>
HxNB(16.64g,0.093mol)、および、SiX(33.36g,0.110mol)を秤量しガラス瓶にいれた。
このモノマー溶液に、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(0.5g)、および、有機リン系酸化防止剤として、IRGAFOS 168(0.125g)を加え、モノマー酸化防止剤溶液を得た。
上記のポリマーP4溶液(30.0g)に、モノマー酸化防止剤溶液(2.16g)、触媒前駆体として、Pd785(1.47×10−3g,1.88×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)、および、光酸発生剤として、RHODORSIL 2074(7.67×10−3g,7.54×10−6mol、メチレンクロライド0.1mL中)を加えてワニスV55を得た。
このワニスV55を0.2μmの細孔のフィルターでろ過して使用した。
<<ワニスV56の調製>>
以下の2成分A、Bを調製した。なお、すべての単量体は、使用に先立って乾燥窒素ガスを使用して脱ガスした。
・成分A
HxNB(33g,0.185mol)、TESNB(9.5g,0.037mol)、および、SiX(7.5g,0.0247mol)の混合物に、0.2mLのジクロルメタン中に溶解したアリルPd−PCy3TFA(0.0107g,1.98×10−5mol)を加え、この混合物に、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(0.50g)を加えて、成分Aとした。
・成分B
TESNB(9.5g,0.037mol)、および、SiX(7.5g,0.0247mol)の混合物中に、リチウムテトラキス(ペンタフルオルフェニルボレート)・2.5エーテラート(0.0689g,7.91×10−5mol)を溶解させ、固形物が一旦完全に溶解されてから、その混合物に、HxNB(33g,0.185mol)を加えた。
そして、この混合物に、フェノール系酸化防止剤として、IRGANOX 1076(1.0g)を加え溶解させ、さらに、有機リン系酸化防止剤(相乗剤)として、IRGAFOS 168(0.25g)を加えて、成分Bとした。
以上調製した各ワニスの組成を、下記表2に要約する。
3.光導波路構造体の作製および評価
3−1.光導波路構造体の作製
以下に示すようにして、実施例1〜5および比較例の光導波路構造体を、それぞれ10個ずつ作製した。
(実施例1)
まず、クラッド層形成用材料としてワニスV51を、4インチ厚みのガラス基板上に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて50℃で15分間加熱し、これにフォトマスクなしで超高圧水銀ランプを用いてUV光を照射した(照射量:3000mJ/cm2、波長:365nm)。
続いて、クリーンオーブンを用い100℃で15分間、さらに160℃で1時間硬化させて下部クラッド層を形成した。
次に、コア層形成用材料としてワニスV1を、硬化させた下部クラッド層の表面に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて45℃で10分間加熱し、溶剤を蒸発させ、実質的に乾燥した固体フィルムを形成した。
このフィルムにフォトマスクを通してUV光を照射(照射量:3000mJ/cm2、波長:365nm)した後、45℃のホットプレートで30分間加熱したところ、直線状のパターンが出現した。
得られたサンプルをクリーンオーブン中で、85℃で30分間、さらに150℃で60分間加熱してパターニングされたコア層を得た。
次に、クラッド層形成用材料としてワニスV51を用い下部クラッド層と同様の方法にて、コア層上に、上部クラッド層を形成し、ガラス基板上に、幅0.5cm、長さ10cmの直線状の光導波路を得た。
なお、得られた光導波路において、コア層の平均厚さは、50μm(コア部の幅:50μm)、クラッド層(上部および下部)の平均厚さは、50μmであった。
次に、この光導波路を基板から剥離し、その両面に、それぞれ、ロールラミネート法により、平均厚さ45μmの銅層(導体層)を接合して、光導波路構造体を作製した。
(実施例2)
まず、クラッド層形成用材料としてワニスV52を、4インチ厚みのガラス基板上に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて50℃で10分間加熱し、乾燥させた。続いて、110℃で15分間、その後160℃で1時間硬化させ、下部クラッド層を形成した。
次に、コア層形成用材料としてワニスV2を、硬化させた下部クラッド層の表面に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
その後、45℃のホットプレート上に10分間置き、乾燥させ、固体フィルムを形成した。
ワニスV2から形成したフィルムに、フォトマスクを通してUV光(波長:365nm)を照射し(照射量=3000mJ/cm2)、室温で30分間熟成させ、次に、45℃で30分間加熱し、85℃で30分間加熱し、さらに150℃で60分間加熱した。これにより、コア層を得た。
なお、直線状のコア部のパターンは、45℃で30分間加熱した時点で目視で確認することができた。
次に、クラッド層形成用材料としてワニスV52を、コア層の表面に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
この塗布したガラス基板をホットプレートに置いて50℃で10分間加熱し、乾燥させた。
続いて、110℃で15分間、その後160℃で1時間硬化させ、上部クラッド層を形成し、ガラス基板上に、幅0.5cm、長さ10cmの直線状の光導波路を得た。
なお、得られた光導波路において、コア層の平均厚さは、50μm(コア部の幅:50μm)、クラッド層(上部および下部)の平均厚さは、50μmであった。
次に、この光導波路を基板から剥離し、その両面に、それぞれ、ロールラミネート法により、平均厚さ45μmの銅層(導体層)を接合して、光導波路構造体を作製した。
(実施例3)
まず、クラッド層形成用材料としてワニスV53をシリコンウエハ基板上に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて50℃で15分間加熱し、これにフォトマスクなしで超高圧水銀ランプを用いてUV光を照射した(照射量:1500mJ/cm2、波長:365nm)。
その後、さらにクリーンオーブンを用い、150℃で1時間加熱し、下部クラッド層を作成した。
次に、下部クラッド層の上に、コア層形成用材料としてポリイミド前駆体のワニスV4をバーコーターで塗布し、オーブンを用い、窒素雰囲気下にて、320℃で1時間加熱し、コア層とした。
次に、前記コア層上に、膜厚0.3μmのアルミニウム層を蒸着し、マスク層を形成した。さらに、前記アルミニウム層上に、ポジ型フォトレジスト(ジアゾナフトキノン−ノボラック樹脂系、東京応化製、商品名OFPR−800)を、スピンコート法により塗布した後、約95℃でプリベークを行った。
次に、直線光導波路パターン形成用のフォトマスク(Ti)を配置し、超高圧水銀ランプを用いて、紫外線を照射した後、ポジ型レジスト用現像液(TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、東京応化製、商品名NMD−3)を用いて現像した。
その後、135℃でポストベークを行った。次に、アルミニウム層のウエットエッチングを行い、レジストパターンをアルミニウム層に転写した。
更に、パターニングされたアルミニウム層をマスクとして、コア層をドライエッチングにより加工した。
次に、アルミニウム層をエッチング液で除去することで、直線状のコア部を形成した。
なお、コア部は、幅:50μm、高さ(平均厚さ):50μmとした。
次に、得られたコア部の上から、クラッド層形成用材料としてワニスV53を注ぎ、下部クラッド層と同様の方法で、上部クラッド層を作成し、シリコンウエハ基板上に幅0.5cm、長さ10cmの直線状の光導波路を得た。
なお、得られた光導波路において、クラッド層(上部および下部)の平均厚さは、50μmであった。
次に、この光導波路を基板から剥離し、その両面に、それぞれ、ロールラミネート法により、平均厚さ45μmの銅層(導体層)を接合して、光導波路構造体を作製した。
(実施例4)
まず、離型処理したガラス基板上に、クラッド層形成用材料としてワニスV54を注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて50℃で15分間加熱し、これにフォトマスクなしで超高圧水銀ランプを用いてUV光を照射した(照射量:2500mJ/cm2、波長:365nm)。
その後、さらにクリーンオーブンを用い、150℃で1時間加熱し、下部クラッド層を作成した。
その上に、コア層形成用材料として、前記クラッド層形成用材料よりも屈折率の高いUV硬化型エポキシ樹脂(NTT−AT製E3135)をスピンコートした後、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィーにより、直接、直線状のコア部をパターニングした。
なお、コア部は、幅:50μm、高さ(平均厚さ):50μmとした。
その後、クラッド層形成用材料として下部クラッド層を形成したものと同じワニスV54を用いて、下部クラッド層と同様の方法にて上部クラッド層を形成し、ガラス基板上に幅0.5cm、長さ10cmの直線状の光導波路を得た。
なお、得られた光導波路において、クラッド層(上部および下部)の平均厚さは、50μmであった。
次に、この光導波路を基板から剥離し、その両面に、それぞれ、ロールラミネート法により、平均厚さ45μmの銅層(導体層)を接合して、光導波路構造体を作製した。
(実施例5)
まず、離型処理したPETフィルム基板上に、クラッド層形成用材料としてワニスV55を注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて50℃で15分間加熱乾燥した後、これにフォトマスクなしで超高圧水銀ランプを用いてUV光を照射(照射量:2000mJ/cm2、波長:365nm)した後、PETフィルムから剥離して単体の下部クラッド層を形成した。また、同様の材料、方法により単体の上部クラッド層も準備した。
一方、コア層形成用材料として、ろ過したワニスV3を、石英ガラス基板の上に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定の厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて45℃で10分間加熱し、溶剤を蒸発させ、実質的に乾燥した固体フィルムを形成した。
このフィルムにフォトマスクを通してUV光を照射(照射量:3000mJ/cm2、波長:365nm)した後、85℃のクリーンオーブンで30分間加熱したところ、直線状のコア部のパターンが出現した。
さらに160℃で2時間加熱してパターニングされたワニスV3の硬化層(フィルム)を得た。
このフィルムを水中で石英ガラス基板から剥離し、十分な水で洗浄し、45℃で1時間、オーブンで乾燥させて、単体のコア層を得た。
このコア層を、前記の上下のクラッド層の間に挟み、電熱プレスを用い、6MPaの圧力を掛けながらで150℃で1時間加熱して、幅0.5cm、長さ10cmの直線状の光導波路を得た。
なお、得られた光導波路において、コア層の平均厚さは、50μm(コア部の幅:50μm)、クラッド層(上部および下部)の平均厚さは、50μmであった。
次に、この光導波路の両面に、それぞれ、ロールラミネート法により、平均厚さ45μmの銅層(導体層)を接合して、光導波路構造体を作製した。
(比較例)
まず、ワニスV56において調製した成分Aおよび成分Bを等量混合したワニスを、4インチ厚みのガラス基板上に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
これをクリーンオーブン中で、65℃で10分間、さらに160℃で1時間加熱硬化して下部クラッド層を形成した。
次に、コア層形成用材料としてワニスV1を、硬化させた下部クラッド層の表面に注ぎ、ドクターブレードで実質的に一定厚さに広げた。
次に、これをホットプレートに置いて45℃で10分間加熱し、溶剤を蒸発させ、実質的に乾燥した固体フィルムを形成した。
このフィルムにフォトマスクを通してUV光を照射(照射量:3000mJ/cm2、波長:365nm)した後、45℃のホットプレートで30分間加熱したところ、直線状のコア部のパターンが出現した。
得られたサンプルをクリーンオーブン中で、85℃で30分間、さらに150℃で60分間加熱してパターニングされたコア層を得た。
次に、クラッド層形成用材料として、下部クラッド層の用いたものと同じワニスを用い、下部クラッド層と同様の方法にて、コア層上に、上部クラッド層を形成し、ガラス基板上に、幅0.5cm、長さ10cmの直線状の光導波路を得た。
なお、得られた光導波路において、コア層の平均厚さは、50μm(コア部の幅:50μm)、クラッド層(上部および下部)の平均厚さは、50μmであった。
次に、この光導波路を基板から剥離し、その両面に、それぞれ、ロールラミネート法により、平均厚さ45μmの銅層(導体層)を接合して、光導波路構造体を作製した。
3−2.評価
3−2−1.光伝播損失の測定
各実施例および比較例の光導波路構造体に対して、それぞれ、光伝播損失を「カットバック法」を使用して測定した。
これは、レーザダイオードから発生させた光を、光ファイバーを通して、コア部の一端から入力し、他端からの出力を測定し、コア部の長さを数段階の長さにカットして、各長さについて光出力を測定することにより行った。
各長さのコア部での総光損失は、下記式で表される。
総光損失(dB) = −10log(Pn/Po)
式中、Pnは、P1、P2、…Pnの各長さのコア部の他端での測定された出力であり、Poは、光ファイバーをコア部の一端に結合する前の光ファイバーの端部における光源の測定出力である。
次に、総光損失は、図14(チャート1)のようにプロットされる。このデータの回帰直線は、下記式によって表わされる。
y=mx+b
式中、mは、光伝播損失を示し、bは、結合損失(coupling loss)を示す。
なお、実施例3では、波長1300nmの光を用い、その他では、波長850nmの光を用いた。
3−2−2.密着性試験
各実施例および比較例の光導波路構造体に対して、それぞれ、コア層とクラッド層との密着性試験を行った。
これは、コア層からクラッド層を90°上方に引き剥がすピール試験により行った。
光伝播損失の測定および密着性試験の結果を、それぞれ、下記表3に示す。
なお、表中の各数値は、それぞれ、5個の平均値を示す。
表3からも明らかなように、各実施例の光導波路構造体は、いずれも、光伝播損失が小さく、光伝送性能が高いものであり、また、コア層とクラッド層との密着力が高いものであった。
これに対して、比較例の光導波路構造体は、光伝播損失が大きく、かつ、コア層とクラッド層との密着力が低く、特性に劣るものであった。これは、コア層とクラッド層との界面における密着が悪く、一部において剥離が生じていることが原因となり、光伝搬損失も大きくなったものと考えられる。
また、各実施例および比較例の光導波路構造体を、高湿度環境(60℃、90%RH、2000時間)に曝した後、前記と同様にして光伝播損失の測定を行った。その結果、各実施例の光導波路構造体は、いずれも、高湿度環境に曝す前とほぼ変化が認められなかった。これに対して、比較例の光導波路構造体では、顕著な光伝播損失の増大が認められた。
さらに、各実施例および比較例で作製した光導波路構造体(高湿度環境に曝す前のもの)の導体層を、それぞれ、パターニングして配線を形成し、所定の箇所に、発光素子および受光素子を実装して、複合装置を作製した。
そして、これらの複合装置を動作させたところ、各実施例の光導波路構造体を用いた複合装置は、いずれも、比較例の光導波路構造体を用いた複合装置に対して、より高速での動作が可能なことが確認された。