JP4692443B2 - 脚式ロボット - Google Patents
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Description
人間や動物は、高速に移動する際には「歩行」よりも「走行」という動作を行う。脚式ロボットにおいても、高速に移動するために「走行」という動作が行えることを好ましい。なお、「歩行」とは、常にいずれかの脚部が接地しながら移動することであり、「走行」とは、脚部が接地している状態と全ての脚部が宙に浮いている状態を周期的に繰り返しながら移動することをいう。本明細書では、周期的に繰り返される2つの状態を一組として跳躍動作と称し、一跳躍動作に要する時間を跳躍周期と称する。換言すれば、「走行」とは、跳躍動作を周期的に繰り返す動作と表現することができる。1脚の脚式ロボットがホッピングしながら移動する動作も、跳躍動作を周期的に繰り返す動作ということができる。
「走行」或いは「ホッピング」において周期的に繰り返される前記2つの状態のうち、脚部が接地している状態におけるロボットの動作を踏み切り動作と称する。踏み切り動作の終了時点、即ち、脚部が接地している状態から全ての脚部が宙に浮いている状態に切り替わる時点を踏み切り時点(踏み切りタイミング)と称する。また、踏み切り時点から床に着地する着地時点(着地タイミング)までの、脚部が宙に浮いている間の時間を跳躍時間と称する。また、本明細書では、各跳躍周期において、脚部が宙に浮いている期間(跳躍時間に対応する期間)を空中相と称し、空中相に先立って脚部が床に接地している期間(即ち、踏み切り動作の期間)を接地相と称する場合がある。
走行(跳躍)する脚式ロボットが例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。
ロボットの動作を完全にシミュレーションすることは不可能であるため、作成された動作データによって特定される動作と、ロボットの実際の動作の間には差異が生じる。この差異をシミュレーション誤差と称する。「歩行」する脚式ロボットでは、シミュレーション誤差は歩行中に逐次フィードバック制御によって補償される。
「走行」では空中相から接地相に移行する際に、脚式ロボットの状態が、宙に浮いている状態(空中相)から、脚部によって床に支持される状態(接地相あるいは踏み切り動作期間)へ不連続に変化する。この不連続な移行時点は、換言すれば、前記した着地時点である。着地時点において、前記のシミュレーション誤差が不連続的に顕在化すると、歩行時のような逐次的なフィードバック制御では補償が困難となり、脚式ロボットの動作が不安定となりやすい。特に2脚を有する脚式ロボットでは、動作が不安定となることは転倒に至る虞がある。そのため、安定した走行を実現するために、脚式ロボットでは、着地時点におけるシミュレーション誤差の影響を極力排除することが望まれる。
脚部と床が接触しているか否かは、容易かつ正確に検出することができる。従って、実跳躍時間は、接触センサによって容易かつ正確に検出することができる。一方、重心の速度を正確に計測することは困難である。本発明は、特定の跳躍周期以降の一の跳躍周期の踏み切り時における脚式ロボットの重心の目標鉛直方向速度を決定することに際して、その特定の跳躍期間における実跳躍時間(跳躍時間の計測値)を利用する。これによって、特定の跳躍期間における踏み切り時の重心の速度を計測することなく、特定の跳躍周期以降の一の跳躍周期の踏み切り時における脚式ロボットの重心の目標鉛直方向速度を決定することができる。
漸近的に前記目標鉛直方向速度に到達するように前記「一の跳躍周期」の踏み切り動作(即ち接地相)における重心の目標軌道を生成する目標重心軌道生成手段と、生成された重心の目標軌道に基づいて、前記「一の跳躍周期」の踏み切り動作(接地相)における各関節の目標関節角の時系列データを算出する目標関節角算出手段をさらに備える。
駆動手段は、算出された目標関節角の時系列データに基づいて関節を駆動する。
前述したように、実跳躍時間は、ロボットの踏み切り時点における重心の鉛直方向速度に比例する。従って、特定の跳躍周期における目標跳躍時間から実跳躍時間を差し引いた時間差は、その特定の跳躍周期の踏み切り時点における目標鉛直方向速度と重心の実際の鉛直方向速度の誤差に比例する。上記の構成によれば、速度の誤差を正確に補償することができる。即ち、着地タイミングのずれを正確に補償することができる。
関節108aは、体幹リンク102とリンク106aを回転可能に連結する。関節108bは、リンク106aとリンク106bを回転可能に連結する。関節108cは、リンク106bとリンク106cを回転可能に連結する。リンク106cは、脚部104の先端リンクであり、足平リンク106cと称する場合がある。
足平リンク106cの下面には、足平リンク106cと床Fが接触しているか否かを検出する接触センサ112が配置されている。
各関節108には、モータ(不図示)が内蔵されている。モータは、コントローラ110によって駆動される。モータを駆動することによって、各関節108の関節角(即ち、関節108に連結された2つのリンクの相対位置関係)を制御することができる。
この脚式ロボット100は、コントローラ110が関節108を適切に駆動することによって、跳躍を周期的に繰り返すことができる。
コントローラ110は、記憶部120、差分器124、計測部126、目標重心速度決定部128、目標重心軌道生成部130、変換部132、及びモータドライバ134を備える。記憶部120は具体的にはメモリ若しくはハードディスクなどのストレージ装置である。差分器124、計測部126、目標重心速度決定部128、目標重心軌道生成部130、変換部132、及びモータドライバ134は、具体的にはソフトウエアのモジュールとしてコントローラ110に実装されている。
軌道データは、位置の時系列データであるので、そのデータから速度と加速度を求めることができる。
また、以下では、脚式ロボット100の重心の鉛直方向の速度に着目して説明し、重心の水平方向の速度には言及しない。脚式ロボット100が水平方向に移動する場合、空中相では重心は等速運動を行なうことになり、着地タイミングに影響しないからである。
図3に(a)と(c)に示すように時刻t1(k)と時刻t2(k)では、脚式ロボット100は接地しており、(b)に示すように第k周期の空中相では脚式ロボット100は宙に浮いている状態となる。また、(d)に示すように、時刻tcでは、脚式ロボット100は沈み込んだ姿勢となる。
計測部126が計測した計測継続時間Tfs(k)は、差分器124に入力される。差分器124には、記憶部120の歩容データ122のうち、第k周期の空中相の目標継続時間Tfr(k)が入力される。この目標持続時間Tfr(k)は、歩容データ122に格納されている重心Gの予定重心軌道Lgrと、踏み切り時と着地時の重心Gの高さH0から図3に示すように求められる。差分器124では、目標持続時間Tfr(k)から計測継続時間Tfs(k)を差し引いた時間差ΔTが出力される。出力された時間差ΔTは、目標重心速度決定部128に入力される。
Vgz(k+1)=Vgz(k)+(g/2)×ΔT ・・・(1式)
ここで、「g」は、重力加速度である。Vgz(k)は、第k周期における踏み切りタイミングでの重心Gの鉛直方向の目標速度(目標鉛直方向速度)であり、目標重心速度決定部128が前回の演算で決定した値である。
第k周期における踏み切りタイミングでは、重心Gの鉛直方向の目標速度(目標鉛直方向速度)がVgz(k)となるように各関節は制御されている。目標速度Vgz(k)は、第k周期における空中相の継続時間(即ち跳躍時間)が目標継続時間Tfr(k)(即ち目標跳躍時間)となるように調整された速度である。しかしながら第k周期が終了したときに、第k周期における空中相の継続時間を計測するとその値はTfs(k)であった。目標継続時間Tfr(k)と計測継続時間Tfs(k)の時間差ΔTが生じたのは、目標速度Vgz(k)が与えられたにも係わらず、第k周期の踏み切りタイミングの重心の実際の速度がVgz(k)と異なったからである。これは、重心Gの鉛直方向の目標速度Vgz(k)を実現するための関節のモータへの指令値を生成するための変換関数に、実際には存在する物理現象が考慮されていないからである。考慮されていない物理現象とは例えば、リンクの撓みや、モータの粘性などである。
ここで、次の第k+1周期において、ΔTをゼロとすることが重要である。空中相では重心Gに加わる外力は重力加速度gのみであるから、時間差ΔTに起因する鉛直方向の重心Gの速度差ΔV(目標速度Vgz(k)と実現された速度との差)は、(g/2)×ΔTで与えられる。従って、次の第k+1周期における踏み切りタイミングの重心Gの鉛直方向の目標速度をΔVだけ増分すれば、第k+1周期では、空中相の継続時間の計測値Tfs(k+1)を目標継続時間Tfr(k+1)に一致させることが可能となる。
こうして、目標重心速度決定部128によって、次の第k+1周期における時間差ΔTを補償する目標速度Vgz(k+1)が決定される。
計測部126が計測継続時間Tfs(k)を出力するのは、第k周期の空中相が終了した時刻t2(k)以降であるから、目標重心速度決定部128が目標速度Vgz(k+1)を決定するのも時刻t2(k)以降となる。従って、目標重心軌道生成部130が処理を行なうときには脚式ロボット100は、時刻t2(k)以降であり、例えば図3の時刻tcである。目標重心軌道生成部130は、時刻tcから第k+1周期における接地相の終了時(時刻t1(k+1))までの重心Gの目標軌道Lg(k+1)を生成する。目標軌道Lg(k+1)は次のように生成される。目標重心軌道生成部130は、歩容データ122に格納された第k+1周期の予定重心軌道Lgr(k+1)を記憶部120から読み出して、第k+1周期における予定踏み切りタイミング時刻t1(k+1)を特定する。現在時刻(時刻Tc)には脚式ロボット100の重心Gは図3の(d)の位置にあることがから解っているので、時刻Tcのその位置から時刻t1(k+1)の高さH0の位置までを連続する曲線で繋げばその曲線が重心の目標軌道Lg(k+1)となる。またこのとき、時刻t1(k+1)における重心Gの鉛直方向の目標速度は、目標重心速度決定部128によって、目標速度Vgz(k+1)に決定されている。従って、目標軌道Lg(k+1)の終点において、重心Gの鉛直方向の速度が目標速度Vgz(k+1)に漸近的に到達するように決定される。重心Gの鉛直方向の速度は、図3の重心Gの軌道の接線に等しい。従って、時刻t1(k+1)における重心Gの軌道の接線が目標速度Vgz(k+1)に一致するように重心の目標軌道Lg(k+1)を設定すれば、踏み切りタイミング(時刻t1(k+1))に向って漸近的に目標軌道Lg(k+1)に到達する目標軌道を生成することができる。そのようにして生成された目標軌道Lg(k+1)を図3に一点鎖線で示す。
なお、踏み切りタイミングにおける重心Gの速度を与えたときの重心Gの軌道を決定する手法は、例えば、特許2006−212736号公報に開示された手法を利用すればよい。
なお、図3において、第k+1周期における踏み切りタイミング(時刻t1(k+1))の前後において、破線で示す予定重心軌道Lgrと一点鎖線で示す目標重心軌道Lg(k+1)の間の差異が生じている。この差異の意味は次の通りである。目標重心軌道Lg(k+1)は目標であり、前述したように、考慮されていないシミュレーション誤差によって、脚式ロボット100は目標重心軌道Lg(k+1)の通りには動作しない。目標重心軌道Lg(k+1)を目標として脚式ロボット100を動作させる結果として、破線で示す予定重心軌道Lgrに追従するように脚式ロボット100が動作するのである。
一方、上記実施例では、跳躍の第k周期における空中相の目標継続時間と計測継続時間の時間差から、第k+1周期における踏み切りタイミングの鉛直方向の重心速度を決定する。空中相の継続時間は、脚式ロボット100の脚部が床に接しているか否かを検知することで容易にかつ正確に計測できる。第k+1周期における着地のタイミングを予定された着地タイミングに一致するように、正確に脚式ロボット100を制御することができる。
(1)脚部の関節を駆動することによって、踏み切り、宙に浮き、着地する跳躍動作を周期的に繰り返す脚式ロボットであり、各跳躍周期において、脚部が宙に浮いている期間を空中相と定義し、空中相に先立って脚部が床に接地している期間を接地相と定義したときに、各跳躍周期における空中相の目標継続時間を記憶する記憶手段と、各跳躍周期における空中相の継続時間を計測する計測手段と、現在の跳躍周期における目標継続時間と計測継続時間の差に基づいて、次の跳躍周期における踏み切り時の脚式ロボットの重心の目標鉛直方向速度を決定する速度決定手段と、前記目標鉛直方向速度を実現するように関節を駆動する駆動手段と、を備えることを特徴とする脚式ロボット。
(2)漸近的に前記目標鉛直方向速度に到達するように次の跳躍周期の接地相における重心の目標軌道を生成する目標重心軌道生成手段と、生成された重心の目標軌道に基づいて、次の跳躍周期の接地相における各関節の目標関節角の時系列データを算出する目標関節角算出手段をさらに備え、前記駆動手段は、算出された目標関節角の時系列データに基づいて関節を駆動することを特徴とする(1)の脚式ロボット。
(3)脚部の下端に、床との接触を検出する接触センサを備えており、計測手段は、接触センサの出力信号に基づいて、脚部が床から離れた時点から床に接触する時点までの時間を空中相の継続時間として計測することを特徴とする(1)又は(2)の脚式ロボット。
(4)速度決定手段は、目標継続時間から計測継続時間を差し引いた時間差に略比例した速度を現在の跳躍周期における目標鉛直方向速度に加算した速度を、次の跳躍周期における目標鉛直方向速度に決定することを特徴とする(1)から(3)のいずれかの脚式ロボット。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
102:体幹リンク
104:脚部
106:リンク
108:関節
110:コントローラ
112:接地センサ
120:記憶部
124:差分器
126:計測部
128:目標重心速度決定部
130:目標重心軌道生成部
132:変換部
134:モータドライバ
Claims (5)
- 脚部の関節を駆動することによって床に対する踏み切り動作を行って脚部を宙に浮かせた後に床に着地する跳躍動作を周期的に繰り返す脚式ロボットであり、
踏み切り動作終了時点である踏み切り時点から着地時点までの脚部が宙に浮いている間の時間を跳躍時間として、目標とする目標跳躍時間を記憶する記憶手段と、
実際の跳躍動作における実跳躍時間を計測する計測手段と、
特定の跳躍周期における目標跳躍時間と実跳躍時間との時間差に基づいて、特定の跳躍周期以降の一の跳躍周期の踏み切り時点における脚式ロボットの重心に関する目標鉛直方向速度を決定する速度決定手段と、
速度決定手段によって決定された目標鉛直方向速度を実現するように前記関節を駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とする脚式ロボット。 - 脚部が床に接触した状態を検知することによって、踏み切り時点と着地時点を特定する時点特定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の脚式ロボット。
- 計測手段は、時点特定手段が特定した踏み切り時点から着地時点までの間の時間を計測することを特徴とする請求項2に記載の脚式ロボット。
- 漸近的に前記目標鉛直方向速度に到達するように前記「一の跳躍周期」の踏み切り動作における重心の目標軌道を生成する目標重心軌道生成手段と、
生成された重心の目標軌道に基づいて、前記「一の跳躍周期」の踏み切り動作における各関節の目標関節角の時系列データを算出する目標関節角算出手段をさらに備え、
前記駆動手段は、算出された目標関節角の時系列データに基づいて関節を駆動することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の脚式ロボット。 - 速度決定手段は、前記「特定の跳躍周期」の前記時間差に略比例する補正速度量を算出し、前記「一の跳躍周期」の踏み切り時点における目標鉛直方向速度に、前記補正速度量を加算した速度を新たな目標鉛直方向速度に決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の脚式ロボット。
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