JP4692100B2 - 内燃機関 - Google Patents

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本発明は、内燃機関のエンジンブレーキ作動による減速後の再加速時において迅速な加速を可能とすると共に、エンジンブレーキ作動時に、エンジンブレーキの制動トルクを容易に制御することができる内燃機関に関する。
乗用車やトラック、バス等の走行車両においては、ブレーキングが連続することによって、フットブレーキへの負担が増し、パッド、ライニング、ディスクロータ等のブレーキ周辺部品の磨耗が増加して、これらブレーキ周辺部品の交換サイクルを早めてしまうという問題がある。
また、フットブレーキに対する負荷の増加からフェードを招く恐れがある。このフェードとは、フットブレーキ用のドラムブレーキやディスクブレーキのライニングの摩擦材として一般的に使用されている有機材料の摩擦係数が概略350℃以上の高温になると、温度上昇と共に下がる傾向にあるため、フットブレーキを使用した高速からの制動や連続した繰り返し制動等によって、摩擦面が高温になり、摩擦係数が下がってしまうことによるブレーキ能力の低下現象である。
そのため、内燃機関を搭載した車両では、坂道を下る時などエンジンブレーキを使用し、フットブレーキの負担を減少している。このエンジンブレーキの一つに、排気弁の開弁時期を変更できる可変動弁機構を備えた内燃機関で、圧縮行程でピストンが上死点(TDC)に近づく時に、排気弁を開弁することにより、シリンダ内の圧縮ガスを排気マニホールド側に逃がして、圧縮ガスのエネルギーが膨張行程で使用されるのを防ぐことにより、内燃機関の回転力に対して制動トルクを発生し、車両の減速を促進する圧縮開放式のエンジンがある。
なお、この可変動弁機構としては、例えば、内燃機関の吸気弁又は排気弁等のバルブを開閉駆動するために、バルブを開弁させるための加圧された作動流体が供給される圧力室と、バルブの開弁初期の所定期間において、圧力室に高圧作動流体を供給するための高圧作動流体供給手段と、バルブの開弁初期の所定期間の経過後、圧力室に低圧作動流体を導入するための低圧作動流体導入手段と、バルブを閉弁させるために圧力室から作動流体を排出するための作動流体排出手段を備えた内燃機関の動弁駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、可変容量型ターボチャージャ(過給機)を採用した車両では、吸気及び排気マニホールドの圧力を、容量固定型ターボチャージャを用いている場合よりも高圧にすることができるので、この高圧によって、低中速のエンジン回転速度における抽気ブレーキの性能を大幅に向上することができる。
この一つに、エンジンブレーキ作動と吸気及び排気マニホールド圧力とを関連づけて、エンジンブレーキ作動時に、VG(可変ジオメトリ)型等の可変容量型ターボを制御して吸気過給圧を高めることによって、エンジンブレーキの制動トルク(制動力)を増大させる内燃エンジンにおけるエンジン・ブレーキの方法及びシステムが提案されている(例えば、特許文献2〜5参照。)。
しかしながら、このような可変動弁機構と可変容量型ターボチャージャを備えた内燃機関においても、走行路面においてコーナーが連続するような場合には、ブレーキングにて減速された後の加速時における加速性が低下してしまうという問題がある。この加速性は、ターボチャージャの回転速度に関係する。
特に、コーナー入口でのブレーキングにて減速し、コーナー出口で再加速を行うような状況において、ブレーキへの負担が非常に大きく、コーナーが連続するような状況ではフェードする危険性があると共に、再加速時の立ち上がりにおいてはターボチャージャの回転速度が落ちていることから、ブースト圧が立ち上がるまでは十分な加速が行えない。
また、更に、エンジンブレーキの作動時において、エンジンブレーキの制動トルクの大きさを調整することが難しいという問題がある。
この対策として、一部のレース用ガソリン機関においては、減速時に、筒内において火花点火を行わないことで、排気管へ過濃かつ未燃混合気を導入し、そこで新気と混合させることで着火させ、過給機の回転速度を維持する「ミスファイヤリングシステム」が見られるが、当然のことながら燃費、排出ガスおよび騒音の悪化を招くため、一般の量産車に適応された例は無い。
特表2002−079614号公報 特表2004−527686号公報(第7頁、第8頁、第12頁、第13頁) 特開2005−127143号公報 特開平10−266879号公報 特開平10−274067号公報
本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであり、内燃機関のエンジンブレーキ作動による減速後の再加速時において迅速な加速を可能とすると共に、エンジンブレーキ作動時に、エンジンブレーキの制動トルクを容易に制御することができる内燃機関を提供することにある。
上記のような目的を達成するための内燃機関は、可変動弁機構と可変容量型ターボチャージャとを備えた車両搭載の内燃機関において、ブレーキペダルの踏み込み量が大きくなるに連れて、可変容量型ターボチャージャの回転速度を所定の回転速度で維持するように排気弁の開弁時期を上死点近傍へと早める制御を行うと共に、前記排気弁の開弁時期が上死点近傍となる前記ブレーキペダルの踏み込み量までフットブレーキを非作動とするように構成される。
また、上記の内燃機関において、前記ブレーキペダルの踏み込み量が大きくなるに連れて、前記可変容量型ターボチャージャのノズル径を絞る制御を行うように構成する。
本発明によれば、エンジンの膨張行程において、排気弁の開弁時期を上死点近傍まで早めること、即ち、シリンダ内のピストンを押し下げるエネルギーを持った高圧の作動ガスをエンジンの排気下流側に配設されたターボチャージャに逃がすことにより、ターボチャージャのタービン入口圧力を高圧化させることができ、減速時(=無負荷時)のターボチャージャにおける回転速度を高回転に維持することが可能となる。この結果、減速後の再加速時において、迅速な加速が可能となる。
また、ブローダウン時期の早期化に伴い、エンジンのロス仕事が増えて、すなわち、ピストンを押し下げる力が必要になって、エンジンブレーキによる制動トルクが向上されるため、フットブレーキの負担が軽減され、パッド、ライニング、ディスクロータ等のブレーキ周辺部品の交換サイクルを長期化することができる。それと共に、フェードの発生を回避することができる。
そして、排気弁の開弁時期を変更する制御を行う構成は、可変動弁機構を備えた内燃機関では、比較的容易に実施できるので、容易にエンジンブレーキの制動トルクを調整できるようになる。また、排気弁の開弁時期をブレーキペダルの踏み込み量に応じて変更するように構成することにより、この制動トルクをブレーキペダルで容易に調整できるようになる。
つまり、本発明により、可変動弁機構からなる排気弁の開弁時期を上死点近傍に早期化することによって、過給機入口圧力を高圧化させ、減速時(=無負荷時)のターボチャージャにおける回転速度を高回転に維持できると共に、エンジンブレーキの制動トルクを増加させ、フットブレーキの負荷を低減することにより、ブレーキ周辺部品の交換サイクルの長期化やフェードの発生を回避することができるようになる。
その上、エンジンブレーキの制動トルクを比較的容易に制御できるようになるので、特にコーナリングにおける運転性能を向上できる。
本発明に係る内燃機関によれば、内燃機関のエンジンブレーキ作動による減速後の再加速時において迅速な加速を可能にできると共に、エンジンブレーキ作動時に、エンジンブレーキの制動トルクを容易に制御することができる。
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、VG(可変ジオメトリ)型ターボチャージャを例にして説明するが、本発明は、他の可変容量型ターボチャージャを用いた場合にも適用できる。
図1に示すように、本発明係る実施の形態の内燃機関1は、排気弁の開弁時期αを制御する可変動弁機構10と、ノズル径を絞ることにより、即ち、VG開度(絞り径:ラックポジション)βを変更できるVG型ターボチャージャ20を備えると共に、ブレーキペダルセンサ41が検出するブレーキペダル40の踏み込み量θを入力して、これらの可変動弁機構10とVG型ターボチャージャ20と、フットブレーキ圧Pbを制御することにより油空圧式のフットブレーキ30を制御する制御装置(ECU:エンジンコントロールユニット)50を備えて構成される。
そして、図2に示すように、通常のブレーキペダル40のストローク、踏力に応じて次のような制御を行う。
先ず、ブレーキペダル40の踏み込み量θが浅い第1段階(フットブレーキ非作動段階)では、排気弁の開弁時期αとノズルベーン開度であるVG開度(絞り径:ラックポジション)βを制御する。この制御量α、βはそれぞれの制御用マップデータにより算出される。その間、フットブレーキ圧であるブレーキラインの圧力Pbを開放し、フットブレーキ30は作動しない状態とする。
この排気弁の開弁時期αの制御は、ブレーキペダル40の踏み込み量θに応じて、可変バルブタイミング機構(VVT機構)を備えた可変動弁機構10を制御して行う。つまり、図3に示すように、膨張行程における排気弁の開弁時期αによってエンジンブレーキの制動トルクTebが変化するので、ブレーキペダル40の踏み込み量θが大きくなるに連れて、排気弁の開弁時期αが早くなるように、すなわち、上死点(TDC)に近づくように制御する。これにより、ブレーキペダル40の踏み込み量θに応じたエンジンブレーキの制動トルクTebを得ることが可能となる。
また、VG型ターボチャージャ20の制御は、多数のノズルベーン(可動ベーン)の開度、即ちVG開度βを変更し、このVG開度βを、ブレーキペダル40の踏み込み量θに対応させて、VG型ターボチャージャ20のタービンの回転速度Ntが所定の回転速度を維持するように制御する。
なお、別の形式の可変容量型ターボチャージャを用いる場合には、可変スクロール型の場合はスクロールへの排気ガスの流れを制御し、ジェットターボ(可変ノズル型)の場合はフラップベーン(可動フラップ)の開閉制御を行う。また、ウイングターボの場合は可動ウイングの開閉制御を行う。これらの制御により、回転速度の制御が行われる。
この制御は、踏み込み量θとVG開度βの制御用マップデータを使用して行うが、タービンの回転速度を検出する回転速度(回転数)センサの検出値を用いてフィードバック制御することによっても行うことができる。この回転速度維持により、車両を減速状態から再加速状態に移行するときの加速性を向上することができる。
そして、ブレーキペダル40を深く踏み込んだ第2段階(フットブレーキ作動段階)では、排気弁の開弁時期αを最も早期の状態、すなわち、上死点(TDC)側とし、VG開度βを最も絞った状態にする。また、フットブレーキ圧Pbを回復し、フットブレーキ30も併用して高い減速用の制動トルクを得る。
なお、このエンジンブレーキとフットブレーキを併用した制御を、エンジンの燃焼時において行うことは、排気ガス特性、騒音などの観点から適切では無いため、あくまでも、アクセルを戻し、燃料噴射がカットされた状態でのみ作動させる。
つまり、図1の左上に模式的示すように、燃料カット判定を行い、燃料がカットされている(YES)場合のみ、このエンジンブレーキ制御に入り、フットブレーキ30の作動、非作動を行う。また、燃料がカットされていない(NO)場合は、このエンジンブレーキ制御とは別の、通常のフットブレーキの作動制御を行う。
図4に、時刻ゼロで、燃料カットを行った場合のVG型ターボチャージャ20のタービン回転速度Ntの推移を示す。通常の運転状態Aに対し、VG型ターボチャージ20のノズル径を絞るVG開度制御を行う運転状態Bではタービン入口圧力Ptは若干上昇する。この結果、図4に示すように、タービン回転速度Ntの減速が緩和される。
次に、可変動弁機構10によって排気弁の開弁時期αを上死点(TDC)近傍にまで早期化する制御を行う運転状態Cでは、動圧ピークが高まることで、タービン回転速度Ntは高い値を維持することが可能となる。更に、これにVG型ターボチャージ20のノズル径を絞るVG開度制御を併用した運転状態Dでは、タービン入口圧力Ptが更に高まり、通常運転時、すなわち、燃料供給を行う燃焼(ファイアリング)時のタービン回転速度Nt、即ち、図4における時刻ゼロに相当するタービン回転速度Ntと略同等のタービン回転速度Ntが維持される。この結果、この減速後の再加速時において迅速な加速が可能となる。
次に、図5に、これらの各動作状態A,B,C,Dにおけるエンジンブレーキ30の制動トルクTebを示す。排気弁開弁時期αの早期化に伴い、内燃機関1は圧縮仕事のみが適応され、そのエネルギーが開放されることで高いロス仕事が発生することから、排気弁の開弁時期αの早期化により、エンジンブレーキの制動トルクTebは飛躍的に高まる。この結果、フットブレーキ30の負担が軽減される。
また、図6にこれらの各動作状態A,B,C,Dにおける、RICARDO社製1次元ガスダイナミクスエンジンシミュレーションソフトウェアWAVEによるタービン入口圧力Ptを示す。
本発明に係る実施の形態の内燃機関の制御の構成を示す図である。 ブレーキペダルの踏み込み量と、排気弁の開弁時期、ターボチャージのVG開度、ブレーキライン圧の関係を示す図である。 排気弁の開弁時期とエンジンブレーキの制動トルクとの関係を示す図である。 各動作状態におけるターボチャージャのタービン回転速度の推移を示す図である。 各動作状態におけるエンジンブレーキの制動トルクを示す図である。 各動作状態におけるタービン入口圧力を示す図である。
符号の説明
1 内燃機関(エンジン)
10 可変動弁機構
20 VG型ターボチャージャ
30 フットブレーキ
40 ブレーキペダル
41 ブレーキペダルセンサ
50 制御装置(ECU)
Nt タービン回転速度
Pb フットブレーキ圧(ブレーキライン圧)
Pt タービン入口圧力
Teb エンジンブレーキの制動トルク
α 排気弁の開弁時期
β VG開度
θ ブレーキペダルの踏み込み量

Claims (2)

  1. 可変動弁機構と可変容量型ターボチャージャとを備えた車両搭載の内燃機関において、ブレーキペダルの踏み込み量が大きくなるに連れて、可変容量型ターボチャージャの回転速度を所定の回転速度で維持するように排気弁の開弁時期を上死点近傍へと早める制御を行うと共に、前記排気弁の開弁時期が上死点近傍となる前記ブレーキペダルの踏み込み量までフットブレーキを非作動とすることを特徴とする内燃機関。
  2. 前記ブレーキペダルの踏み込み量が大きくなるに連れて、前記可変容量型ターボチャージャのノズル径を絞る制御を行うことを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
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