JP4691169B2 - 荷電粒子加速器用真空チェンバにおける電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け方法 - Google Patents

荷電粒子加速器用真空チェンバにおける電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け方法 Download PDF

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本発明は、荷電粒子の周回通路となるビームチャンネルと、該ビームチャンネルの側方に一体形成されたアンテ部とを有する荷電粒子加速器用真空チェンバにおいて、上記アンテ部に排気孔を備える電磁ノイズ遮蔽用仕切り板を取付ける方法に関する。
非特許文献1には、荷電粒子加速器に使用される銅製の真空チェンバの一例が記載されている。図5に断面を示すように、この非特許文献1に記載の真空チェンバ101は、荷電粒子の周回通路となるビームチャンネル102と、このビームチャンネル102の一側方および他側方にそれぞれ突出するアンテ部103と、これらのアンテ部103の外側端にそれぞれ形成された冷却水路104とを備えている。
各アンテ部103は、図示のように、ビームチャンネル102と連通するように該ビームチャンネル102に対して一体に形成されている。そして、各アンテ部103は、その下壁を貫通する排気孔103aと該下壁の外方に取付けられたダクト105とを介してNEGポンプ(Non Evaporable Getter pomp)106と連通している。
NEGポンプ106は、アンテ部103の長手方向(図5の紙面に垂直な方向)に所定の間隔をおいて配列設置されている。この、NEGポンプ106は、コンスタンタンからなる薄板にジルコニウムやバナジウムなどの粉末を圧着させたNEGストリップ(図示せず)を有する。図示しないターボポンプなどによって真空チェンバ101内を減圧した後、通電によるジュール熱によって上記NEGストリップの粉末を活性化すると、上記排気孔103aを介して導入された気体分子がその活性化された粉末によって吸着され、この結果、ビームチャンネル102内が超高真空状態となる。このように、NEGポンプ106は、その排気作用によってビームチャンネル102内の真空度を向上させる。
「KEKB Roadmap」の第7、第36頁、平成20年12月25日検索、インターネット<URL:http//www-acc.kek.jp/KEKB/Commissioning/KEKB_Roadmap_Oide_ECFA
ところで、真空チェンバ101が荷電粒子加速器のビーム周回経路に位置される場合には、ビームを集束するために、図示していないビーム集束用電磁石、例えば四極電磁石が該真空チェンバ101の外周囲に配設される。この場合、上記NEGポンプ106は、上記四極電磁石との干渉を回避するために、該四極電磁石の配置部位を避けた部位に配設することになるが、これは、四極電磁石の配設部位に位置したビームチャンネル2の内部空間の排気機能が低下するという不都合をもたらす。
そこで、四極電磁石の配設部位におけるNEGポンプの配置を可能にするため、該NEGポンプをアンテ部103内に収容することが考えられる。
しかし、アンテ部103内には、ビームチャンネル102内を走行するビームに基づいて発生した「HOM(Higher Order Mode)」と呼ばれる高次調波の電磁ノイズが入り込むので、NEGポンプをアンテ部103内に収容する場合には、この電磁ノイズに対する遮蔽作用を持つ仕切り板をアンテ部103の入口部位に設けて、この電磁ノイズによるNEGポンプの発熱を防止する必要がある。なお、この仕切り板には、ビームチャンネル102内の気体分子をNEGポンプに導くための排気孔が形成されることになる。
上記仕切り板を設ける場合、この仕切り板をアンテ部103に対して電気的に接触させる必要がある。なぜなら、仕切り板が帯電して、アンテ部103との間で放電を発生する恐れがあるからである。そこで、上記仕切り板をアンテ部103に溶接によって固定することが考えられる。
しかし、銅の溶接には高い熱入力が必要になるため、大気中の溶接では、広範囲で軟化および酸化を生じることになる。そこで、真空中での電子ビーム溶接を適用することが考えられるが、この電子ビーム溶接でも、多大な熱入力により真空チェンバに歪を生じさせるという欠点や、加工費用が嵩むという欠点がある。
本発明の目的は、このような状況に鑑み、電磁ノイズ遮蔽用仕切り板を荷電粒子加速器用真空チェンバのアンテ部に溶接を行うことなく取付けるための方法を提供することにある。
本発明は、荷電粒子の周回通路となるビームチャンネルと、前記ビームチャンネルに連通する形態で該ビームチャンネルの側方に一体形成されたアンテ部とを備える真空チェンバにおいて、前記アンテ部に排気孔を備える電磁ノイズ遮蔽用仕切り板を取付ける方法を提供する。
上記の目的を達成するため、本発明では、前記仕切り板として、前記排気孔を配列形成した所定幅の長尺状金属板が使用され、前記アンテ部の上壁部内面および下壁部内面の相対向する部位に前記ビームチャンネルの長手方向に沿うガイド溝をそれぞれ形成するステップと、前記真空チェンバに加圧力を作用させて、前記各ガイド溝相互の間隔が拡がるように該真空チェンバを弾性変形させるステップと、拡げられた状態の前記各ガイド溝に沿ってスライドさせながら前記仕切り板を前記各ガイド溝間に挿入するステップと、前記真空チェンバに対する加圧力を除き、これに伴って発生する前記アンテ部の上壁部および下壁部の弾性復元力によって前記仕切り板を前記各溝間に挟持するステップと、が含まれる。
前記真空チェンバは、前記アンテ部として、前記ビームチャンネルの一側方および他側方にそれぞれ突出する第1および第2のアンテ部を備えることができる。この場合、前記仕切り板は前記第1のアンテ部に取付けられる。また、前記加圧力は前記第1のアンテ部の外端と第2のアンテ部の外端との間に作用させることができる。
前記仕切り板はE字状の縦断面を有することができ、また、この仕切り板は無酸素銅で形成することができる。
本発明によれば、溶接を行うことなく荷電粒子加速器用真空チェンバのアンテ部に電磁ノイズ遮蔽用仕切り板を取付けることができるので、この電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け部位に熱的な悪影響(軟化、酸化、歪等)を与えることがなく、また、該仕切り板の取付けに必要な手間や設備費も少なくて済む。
本発明が適用される荷電粒子加速器用の真空チェンバの一例を概略的に示す斜視図である。 図1のA−A断面図である。 仕切り板の形状およびアンテ部に対する仕切り板の挿入形態を示す斜視図である。 真空チェンバを弾性変形させるための加圧力の作用箇所を示す断面図である。 従来の真空チャンバにおけるNEGポンプ配設形態を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される荷電粒子加速器用の真空チェンバの一例を示している。この真空チェンバ1は、例えば2〜3mの長さを有し、荷電粒子の周回通路となるビームチャンネル2と、このビームチャンネル2の一側方および他側方にそれぞれ突出するアンテ部3と、これらのアンテ部3の外側端にそれぞれ形成された冷却水路4と、端部に形成された連結用フランジ5とを備えている。
なお、上記の各構成要素は、いずれも無酸素銅によって形成されている。また、図1においては、上記仕切り板6、NEGポンプ7および後述のガイド溝3aが省略されている。
図1のA−A断面図である図2に示すように、各アンテ部3は、ビームチャンネル2に一体形成され、かつ、ビームチャンネル2と連通している。そして、一方のアンテ部3は、排気孔6aを備える電磁ノイズ遮蔽用仕切り板6がその入口部位に配設されるとともに、この仕切り板6からその外側端部に至る空間内にNEGポンプ(Non Evaporable Getter pomp)7が配設されている。
NEGポンプ7は、アンテ部3の長手方向に連続するNEGストリップを備えている。NEGストリップは、コンスタンタンからなる薄板にジルコニウムやバナジウムなどの粉末を圧着させた構成を有し、該粉末を加熱して活性化することにより、その粉末に気体分子を吸着させることができる。
図3に示すように、仕切り板6は、E字状の縦断面を有する長尺状の金属板(本実施形態では無酸素銅板)で形成され、その上下の凹条部位に排気孔6aが貫通形成されている(図2参照)。排気孔6aは、その径が例えば4mmに設定され、仕切り板6の長手方向に例えば6mmの間隔で配列している。
アンテ部3の上、下内面の相対向する部位には、仕切り板6を挿入するためのガイド溝3aがそれぞれビームチャンネル2の長手方向、すなわち、アンテ部3の長手方向に沿って形成されている。そして、上記仕切り板6は、その幅Wが上記ガイド溝3a、3aの設計間隔L(溝3a、3aの底面間の間隔)よりもΔLだけ大きくなるように設定されている。なお、本実施形態ではΔLが0.1mmに設定されている。
次に、図4を参照して、上記仕切り板6をアンテ部3に取付けるための手順について説明する。
仕切り板6をアンテ部3に取付ける場合には、矢印B、Bで示すように、冷却水路4(図2参照)が加工される前の各アンテ部3の外端に所定の押圧力が加えられる。真空チェンバ1は、空洞構造を有するので、上記押圧力B、Bの印加によって弾性変形することになる。すなわち、真空チェンバ1は、ビームチャンネル2の上部壁および下部壁の間隔が拡大するように弾性変形され、これに伴って、アンテ部3もその上部壁および下部壁の間隔が拡大するように弾性変形する(矢印C、C参照)。
なお、上記押圧力B、Bは、例えば、シャコ万力や油圧プレス等の適宜な加圧手段によって発生させることができる。上記シャコ万力を用いる場合には、このシャコ万力が真空チェンバ1の長手方向に所定の間隔おいて複数個の配列されることになる。
前記したように、仕切り板6の幅Wはアンテ部3に形成された各ガイド溝3a、3aの設計間隔LよりもΔL(0.1mm)だけ大きくなるように設定されている。そこで、真空チャンバ1は、各ガイド溝3aの間隔がL+ΔLよりも若干大きくなる程度に弾性変形される。
真空チャンバ1を上記のように弾性変形させた状態で、図3に矢印で示すようにアンテ部3の端部側から仕切り板6を各ガイド溝3a、3a間に挿入する。そして、仕切り板6をアンテ部3の長手方向全域に亘るまでスライドさせた後、上記加圧力B、Bを解除する。
加圧力B、Bを解除すると、真空チェンバ1がその弾性によって変形前の形状に戻ろうとする。したがって、各ガイド溝3aに挿入された仕切り板6は、真空チェンバ1の弾性復元力、具体的には、アンテ部3の上壁部内面および下壁部内面の弾性復元力によって各ガイド溝3a間に挟持される。
このとき、各ガイド溝3aの底面のなす間隔は、前記設計間隔LよりもΔLだけ大きくなるので、それらの底面がアンテ部3の上、下壁部内の弾性力によって仕切り板6に押圧当接することになる。したがって、仕切り板6は、アンテ部3に安定に固定保持され、かつ、アンテ部3に対して安定かつ良好な電気的結合がなされることになる。
図1に示す真空チェンバ1は、荷電粒子加速器のビーム周回経路に沿って多数個配列設置される。したがって、この真空チェンバ1には、直線状のものと円弧状のものとが含まれることになる。
電子、陽電子、イオン等の荷電粒子は、各真空チェンバ1のビームチャンネル2の軸心部を通って周回し、その際、周回経路の接線方向に沿う放射光が発生する。この放射光は、周回経路の外側(径外方向側)に位置するアンテ部3に入射するので、当該アンテ部3に仕切り板6を取付けた場合、該仕切り板6が発熱して損傷する虞がある。そこで、本実施形態では、周回経路の内側(径内方向側)に位置するアンテ部3に仕切り板6およびNEGポンプ7を取付けるようにしている。
なお、真空チェンバ1が直線状であっても、この真空チェンバ1に曲線状真空チェンバからのビームが導入される場合には、周回経路の外側に位置するアンテ部3に上記放射光が入射することになる。したがって、この場合にも、周回経路の内側に位置するアンテ部3に仕切り板6およびNEGポンプ7を取付ける必要がある。
上記NEGポンプ7が配置されたアンテ部3内の空間は、仕切り板6の排気孔6aを介してビームチャンネル2と連通している。したがって、ターボポンプなどによって真空チェンバ1内を減圧した後、通電によるジュール熱によってNEGポンプ7を活性化すれば、上記排気孔6aを介して導入された気体分子がその活性化されたNEGポンプ7によって吸着され、その結果、ビームチャンネル2内が超高真空状態となる。
上記超高真空状態のビームチャンネル2においては、その軸心に沿って荷電粒子のビームが通過するが、その際、このビームがHOM(Higher Order Mode)」と呼ばれる高次調波の電磁ノイズを発生させる。しかし上記仕切り板6は、アンテ部3の入口部位において上記電磁ノイズを遮蔽する機能を有するので、アンテ部3内にNEGポンプ7が配置されているにもかかわらず、上記電磁ノイズの影響で該NEGポンプ7が加熱損傷することが防止される。そして、仕切り板6は、前述した弾性復元力によってアンテ部3に対して電気的に良好に接触しているので、それ自身が帯電してアンテ部3との間で放電を発生するという恐れはない。
上記のように、本発明によれば、溶接という手段を用いることなくアンテ部3の入口部位に仕切り板6を安定に固定設置することができるので、仕切り板6の取付け部位に熱的な悪影響(軟化、酸化、歪等)を与えることがなく、また、仕切り板6の取付けに必要な手間や設備費も少なくて済む。
一方、アンテ部3の入口部位に仕切り板6を固定設置することは、次のような利点をもたらす。
すなわち、真空チェンバ1が荷電粒子加速器のビーム周回経路に位置される場合には、ビームを集束するために、図2に鎖線で示すビーム集束用電磁石、例えば四極電磁石8が該真空チェンバ1に併設される。図示のように、四極電磁石8は真空チェンバ1の外周囲に配設されるので、NEGポンプをアンテ部3の外部に配設するという従来の手法を採用した場合、この四極電磁石8の配設部位にNEGポンプを配設することが困難になる。なぜなら、NEGポンプが四極電磁石8のヨーク8aやコイル8bに接触するからである。
しかし、アンテ部3の入口部位に仕切り板6を固定設置した上記実施形態では、NEGポンプ7をアンテ部3の内部に配置することができるので、四極電磁石8の配設部位に位置したビームチャンネル2の内部空間においてもNEGポンプ7による排気を実行して、該空間の真空度を向上することが可能になる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形態様を含むものである。
すなわち、真空チェンバとして、ビームチャンネル2の一方側のみにアンテ部3を突出させた形状のものを使用しても良い。この場合、アンテ部3を弾性変形させるためにアンテ部3の外端とビームチャンネル2の外周壁間に押圧力が加えられることになるが、アンテ部3に上記仕切り板6を取付ける手法そのものは、前記真空チェンバ1におけるそれと同様である。
また、真空チェンバ1の長手方向長が大きい場合には、長さの短い複数本の仕切り板を適宜な連結具で相互に連結して1本の長尺状の仕切り板を構成するようにしても良い。
本発明は、荷電粒子加速器用真空チェンバのアンテ部に溶接を用いることなく電磁ノイズ遮蔽用仕切り板を取付ける手段として有効に利用することができる。
1 真空チャンバ
2 ビームチャンネル
3 アンテ部
3a ガイド溝
4 冷却水路
5 連結用フランジ
6 仕切り板
6a 排気孔
7 NEGポンプ
8 四極電磁石

Claims (5)

  1. 荷電粒子の周回通路となるビームチャンネルと、前記ビームチャンネルに連通する形態で該ビームチャンネルの側方に一体形成されたアンテ部とを備える真空チェンバにおいて、前記アンテ部に排気孔を備える電磁ノイズ遮蔽用仕切り板を取付ける方法であって、
    前記仕切り板として、前記排気孔を配列形成した所定幅の長尺状金属板を使用し、
    前記アンテ部の上壁部内面および下壁部内面の相対向する部位に前記ビームチャンネルの長手方向に沿うガイド溝をそれぞれ形成するステップと、
    前記真空チェンバに加圧力を作用させて、前記各ガイド溝相互の間隔が拡がるように該真空チェンバを弾性変形させるステップと、
    拡げられた状態の前記各ガイド溝に沿ってスライドさせながら前記仕切り板を前記各ガイド溝間に挿入するステップと、
    前記真空チェンバに対する加圧力を除き、これに伴って発生する前記アンテ部の上壁部および下壁部の弾性復元力によって前記仕切り板を前記各溝間に挟持するステップと、
    を含むことを特徴とする荷電粒子加速器用真空チェンバにおける電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け方法。
  2. 前記真空チェンバは、前記アンテ部として、前記ビームチャンネルから前記荷電粒子の周回経路の一側方および他側方にそれぞれ突出する第1および第2のアンテ部を備え、
    前記仕切り板は、前記第1のアンテ部に取付けられることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子加速器用真空チェンバにおける電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け方法。
  3. 前記加圧力は、前記第1のアンテ部の外端と前記第2のアンテ部の外端との間に作用されることを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子加速器用真空チェンバにおける電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け方法。
  4. 前記仕切り板は、E字状の縦断面を有することを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子加速器用真空チェンバにおける電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け方法。
  5. 前記仕切り板は、無酸素銅で形成されることを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子加速器用真空チェンバにおける電磁ノイズ遮蔽用仕切り板の取付け方法。
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