本発明は輝線の発生を抑制する光学調整部材、並びに、それを備える照明装置及び液晶表示装置に関する。
液晶ディスプレイ等のディスプレイ分野や光通信分野等において、ある程度の広がりを持った光線を一定の方向に揃える光指向性制御シート(光指向性制御用光透過性シート)のような光学調整部材が用いられている。光指向性制御シートとは、透明なシート部材の上又はシート部材の中に所定の光学構造物を設けることにより、入射光を所定の方向に揃える機能を有する光学調整部材であり、例えば、プリズムシート、レンズシート等が代表的な製品として挙げられる。
これらの光学調整部材は、例えば、液晶ディスプレイのバックライトユニット等の照明装置にも用いられている。液晶ディスプレイのバックライトユニットに光学調整シートを用いることにより、光源からの光線の広がりや明るさ等の光学特性を調整でき、光源からの光を液晶表示面に効率よく導くことができる。この場合において、一般に光学調整部材は、光源からの光を液晶表示面の下へと導く導光板の上、あるいは、光源からの光を拡散する拡散板の上に直接配置される。
一般に、これらの導光板及び拡散板の表面は、比較的平坦な面、段差の緩やかな凹凸面、又は、略平行な縞状の凹凸が形成された面となっている。このような面上に光学調整部材を設置した場合、光学調整部材の光出射面には、明るい部分と暗い部分、つまり、輝度斑が生じることが知られている。このような輝度斑は、例えば、導光板又は拡散板と光学調整部材との界面を直進した光と、導光板又は拡散板の表面及び光学調整部材の表面で多重反射した光との干渉により生じる干渉縞(いわゆるニュートンリング)によるものである。
このような干渉縞の発生を防止するために、特許文献1に記載のレンズシート500では、図15に示すように、レンズ501が配置されたレンズ面500aと反対側の面(裏面)500bを覆うコーティング層502に1〜7μmの突出高さの多数の微小丘状突起503が形成されている。微小丘状突起503は、コーティング層502に分散して配置されている透光性材料(透光性ビーズ)504により形成されている。このような微小丘状突起503により、レンズシート500の裏面500bと、これに隣接する導光板510の平滑面510aとの間に1〜7μmの隙間511が形成される。これにより、レンズシート500の裏面500aと、導光板510の平滑面510aとの間の距離を、直進光と反射光との間で干渉が生じない程度に広げることができるので、干渉縞の発生を抑えることができる。
また、特許文献2に記載のディスプレイ装置においては、導光板の上に配置される透光性フィルムの下面に、透明な凸状ドットを設けることが開示されている。凸状ドットを設けて透光性フィルムと導光板との間に空隙を形成して、干渉縞の発生を防止するとともに、凸状ドットが導光板からの光を取り入れる効果を奏することから、光量の増大(輝度の向上)を実現している。
特開平10−300908号公報
特開平6−102506号公報
本発明者らは、例えば特許文献1に記載のレンズシートのように、干渉縞の発生を抑制された光学調整部材(光学調整シート)であっても、輝点、あるいは、線状又は帯状の輝線(以下、輝点及び輝線を単に輝線と呼ぶ)が生じることを見いだした。発明者らの知見によれば、輝線は次のようなメカニズムにより発生していると考えられる。特許文献1に記載のレンズシート500において、導光板510とレンズ501との間には空隙が形成されている。そのため、導光板510の内部において、光は導光板510の平滑面510aと空気との界面で全反射しつつ進行する。一部の光は、全反射条件から外れた角度で上記界面に入射して、導光板510の平滑面510aからレンズ501側に向かって取り出される。ここで、導光板510の平滑面510aと、微小丘状突起503との界面においては、屈折率が大幅には変化していないため、全反射は起こらず、光は微小丘状突起503側に屈折して取り出される。このように、導光板510の平滑面510aにおいて、空気との界面に比べて、微小丘状突起503との界面では、光が導光板510から取り出される割合が高くなる。微小丘状突起503を透過して取り出された光が、輝線を発生させていると考えられる。さらに、本発明者らは、後述するような指向性の高い光源と組み合わせて用いた場合には、非常に強い輝線が生じることを見いだした。また、たとえ指向性の高い光源と組み合わせていない場合であっても、特許文献1に記載のレンズシートのような光学調整部材を液晶ディスプレイに用いた場合に、画面を指で押したときなどにも同様の強い輝線が生じることを見いだした。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、輝線の発生を抑えることができる光学調整部材並びにこのような光学調整部材を備える照明装置及び液晶表示装置を提供することである。
本発明の第1の態様に従えば、板状光学部材と光学的に接続される光学調整部材であって、透明な板状の基材であって一方の面から入射された光を他方の面から放出する基材と、前記基材の前記他方の面に形成され、光の特性を調整する光学構造体と、前記基材の前記一方の面に塗布された透明なバインダと、前記バインダに所定の密度で分散された非透光性の複数の粒状体とを備え、前記バインダの厚さよりも前記粒状体の径の方が大きく、それによって、前記粒状体を介して前記板状光学部材と接触する光学調整部材が提供される。
本発明の光学調整部材によれば、基材の、バインダが塗布された面から入射した光は、光学構造体において、進行方向などを調整される。また、バインダには非透光性の複数の粒状体が分散して配置されている。バインダの厚さよりも粒状体の径の方が大きいので、本発明の光学調整部材を他の光学部材に重ねて配置する際に、バインダの表面と他の光学部材の表面とが直接接触することはない。つまり、光学調整部材は、他の光学部材に対して粒状体を介して点接触することになる。そのため、光学調整部材の表面と他の光学部材の表面とが面接触する際に生じる干渉縞などの輝度斑の発生を抑えることができる。さらに、粒状体は非透光性であるので、他の光学部材から、粒状体を透過して光学調整部材に直接入射する光を低減させることができる。そのため、他の光学部材から、粒状体を透過して光学調整部材に直接入射する光に起因する輝線の発生を抑えることができる。
なお、本願において非透光性であるとは、透光率が概ね20%以下であることをいい、バインダの厚さよりも粒状体の径の方が大きいとは、粒状体の径が実質的にバインダの厚さよりも大きいことをいう。例えば、他の平坦な板状光学部材に本発明の光学調整部材を重ねて配置した際に、バインダの表面が、直接、板状光学部材の表面に接触しない程度に、バインダの厚さよりも粒状体の径の方が十分大きいことをいう。
本発明の光学調整部材において、前記光学構造体が、複数の三角柱状のプリズムを有してもよい。この場合には、プリズム状の光学構造体の有するプリズム効果により、光の進行方向を調整することができる。
本発明の光学調整部材において、前記光学構造体は所定の延在方向に延在し、前記光学構造体の、前記延在方向に直交する断面が略三角形であってもよく、該断面を画成する3つの辺のうち、一つの辺が上記基材のと平行に接しており且つ他の2辺のうちの一方の辺が階段状であってもよい。この場合には、階段状の光学構造体の有する色分散抑制効果により、光学調整部材から出射される光の色分散を抑えることができると同時に、光学構造体の有するプリズム効果により、光の進行方向を調整することができる。
本発明の光学調整部材において、前記粒状体が黒色ビーズ、白色ビーズ及び高反射率金属粒子からなる群から選択される部材によって形成されていてもよく、前記黒色ビーズが、カーボンブラックを含有するアクリルビーズであって、前記白色ビーズが酸化チタン微粒子を含有するアクリルビーズであって、前記高反射率金属粒子が銀粒子であってもよい。この場合には、粒状体の光透過率を概ね20%以下(17%以下)に抑えることができる。
本発明の光学調整部材において、前記粒状体の透光率が17%以下であってもよい。この場合には、粒状体の透光率が十分低いので、輝線の発生を抑えることができる。また、前記粒状体の径が2μm以上40μm以下であって、前記粒状体の前記バインダの表面からの平均突起高さが1.8μm以上14.4μm未満であってもよい。この場合には、平均突起高さが十分高いので、光学調整シートを他の光学部材に配置した際に、光学調整部材の表面と他の光学部材の表面とが直接、面接触することを有効に防止することができる。
本発明の光学調整部材において、前記粒状体が前記バインダに1体積%以下の密度で分散されていてもよい。この場合には、粒状体がバインダ中に十分疎らに分散されているので、光学調整部材に向かって入射される光のうち、粒状体により遮られる光の量を抑えることができる。
本発明の第2の態様に従えば、照明装置であって、光源と、前記光源と光学的に接続された板状光学部材であって、前記光源から入射された光を出射する光出射面を有する板状光学部材と、前記板状光学部材の前記光出射面に光学的に接続された、本発明の第1の態様に係る光学調整部材とを備える照明装置が提供される。
本発明の第3の態様に従えば、液晶表示装置であって、本発明の第2の態様に係る照明装置と、前記光学調整部材に対向して配置された第1の偏光素子、液晶層、及び第2の偏光素子を有し、これらがこの順に積層された液晶表示素子とを備える液晶表示装置が提供される。
本発明の照明装置及び液晶表示装置によれば、本発明にかかる光学調整部材を有しているので、輝度斑及び輝線の発生を抑えつつ、高輝度の照明装置及び液晶表示装置を実現できる。なお、板状光学部材としては、例えば、拡散板及び導光板を用いることができる。拡散板の下面に光源を配置することにより、下面から入射した光を面方向に拡散させて、上面からほぼ均一な強度分布で取り出すことができる。本発明の照明装置(液晶表示装置)には、拡散板と、拡散板の下面に設けられた光源とを有する直下型の照明装置(液晶表示装置)が含まれる。また、導光板の側面に光源を配置することにより、側面から入射した光を上面から取り出すこともできる。このとき、導光板の下面の形状を工夫することにより、所定の方向に指向性の高い光を上面から取り出すこともできる。本発明の照明装置(液晶表示装置)には、導光板と、導光板の側面に設けられた光源とを有するエッジライト(サイドライト)型の照明装置(液晶表示装置)も含まれる。
本発明の照明装置において、前記板状光学部材が前記光出射面から所定の方向に指向性を有する光を放出する導光板であってもよく、前記光源は、前記導光板の側面に光学的に接続されていてもよい。この場合には、エッジライト方式の照明であっても、正面輝度が高く、輝度斑及び輝線の発生を抑えた照明装置を実現できる。
本発明の照明装置及び液晶表示装置によれば、本発明の光学調整部材を備えているので、輝度斑及び輝線の発生と、輝度不足の課題を解決しつつ、照明装置及び液晶表示装置の薄型化及び低コスト化を図ることができる。
以下に、本発明の実施形態として、本発明に係る光学調整部材の一例としての光学調整シート(光学シート)及びそれを用いた照明装置の実施例を図面を参照しながら説明する。
図1に実施例1の照明装置1の概略構成図を示す。照明装置1は、板状光学部材としての導光板5と、導光板5の側面5dに取り付けられた照明ユニット10と、導光板5の上面5b(図1の上側の面、光射出面)に配置された光学調整シート(光学調整部材)20を有する。
照明ユニット10は、高輝度のLED光源7と、LED光源7の後側(照明ユニット10の光出射方向と反対側)を覆って設けられたリフレクタ6とを有する。照明ユニット10は、リフレクタ6を有しているので、LED光源7から放出された光のうち、後方へ向かう光を反射することによって、光を効率よく前方から放出することができる。照明ユニット10の光出射面は、導光板5の側面5dに光学的に接続されている。なお、照明ユニット10と導光板5とを組み合わせるにより、後述の指向性の高い光源を実現している。
導光板5は、例えば、アクリル樹脂製の透明な板状の光学部材であり、その厚さは0.1〜3mmである。導光板5の上面(光射出面)5bは平坦な面であるが、下面5cには、不図示の所定の形状の複数の微小な凹凸が形成されている。これにより、後述のように、導光板5の上面5b及び下面5cにおいて全反射を繰り返しつつ導光板5の内部を進む光Lの一部が、下面5cの凹凸により散乱されて上面5bから取り出される。
導光板5の上面5bに配置される光学調整シート20は、厚さ50μmのPET製の基材(PETフィルム)21と、基材21の下面21b(導光板5と対向する面、光入射面)に塗布されたアクリル樹脂製のバインダ23と、バインダ23に分散して配置された黒色ビーズ22とを有する。図2に示されるように、基材21の上面(光出射面)21aには、複数の線状光学構造体25が所定のピッチP(約35μm)で配列されている。各線状光学構造体25は、延在方向に垂直な断面が、頂角θは42°、高さ約45.6μmの二等辺三角形である三角柱状のプリズムであって、図2の紙面垂直方向に延在している。線状光学構造体25は、光硬化性アクリル樹脂(硬化後の屈折率1.60)を用いて、2P(Photo Polymerization)法により形成されている。基材21の下面21bには、黒色ビーズ22が分散されたバインダ23が塗布されている。ここで、黒色ビーズ22の直径は約4μmであり、バインダ23中に1体積%の割合で分散されている。バインダ23の厚さは約2μm程度であるので、黒色ビーズ22の一部は、バインダ23の表面から突出している。バインダ23に分散配置された黒色ビーズ22が、バインダ23からどの程度突出しているかは、平均突起高さによって表される。ここで、平均突起高さとは、図3(a),(b)に示すように、ビーズの先端からバインダ23の表面の平坦部分までの距離の平均によって定義される量である。本実施形態の光学調整シート20において、平均突起高さをレーザー顕微鏡を用いて測定したところ、1.8μmであった。なお、任意に選択した10個のビーズについて突起高さを測定し、それらを平均することによって平均突起高さを得た。
黒色ビーズ22の材料、光学特性などについてさらに詳細に説明する。本実施形態の黒色ビーズ22は、カーボンブラックを含有したアクリルビーズにより形成されている。また、黒色ビーズ22の光透過率は、8%である。なお、黒色ビーズ22の光透過率は、以下のようにして測定した。まず、黒色ビーズ22を形成するアクリルと同じ屈折率の透明な光学材料と、黒色ビーズ22とを、体積比1:1で混合した。次に、光学材料と黒色ビーズとの混合したものを、厚さ約1mmの板状に成型して光学試料を作製した。このようにして作製した光学試料の光直進方向の透過率を分光光度計で測定して、黒色ビーズ22の透過率とした。なお、本願において「黒色ビーズ」とは、主に光を吸収することにより光透過性を低下させる粒状体を指す。本願の「黒色ビーズ」として、代表的には、本実施形態の黒色ビーズ22のようなカーボンブラックを含有したアクリルビーズが挙げられるが、本願の「黒色ビーズ」は、これに限られるものではない。
上述のような構造を有する照明装置1における、光の進行について説明する。図2に示すように、LED光源7から放出された光Lは、照明ユニット10の光出射面から、導光板5の側面5dへと入射して、導光板5の内部へと進む。導光板5の側面5dから導光板5の内部に入射された光は、図4に示すように、上面(光出射面)5b及び下面5cで全反射しつつ、導光板5の面方向に広がっていく。ここで、導光板5の上面5bと光学調整シート20のバインダ23表面との間には、空気の層が介在している。導光板5の上面5bと空気との界面では、屈折率が大きく異なるため、全反射条件を満たす所定の入射角度で、導光板5の内側から導光板5の上面5bに向かって進む光は全て反射される。上述のように、導光板5の下面5bには所定形状の微小な凹凸が形成されているので、導光板5の下面5cにおいて、光の一部は散乱される。全反射条件から外れた角度で導光板5の上面5bに入射した光の一部は、導光板5の上面5bから空気層に向かって取り出される。導光板5の上面5bから取り出された光は、バインダ23を通って光学調整シート20の基材21の下面21bへ入射する。光学調整シート20の基材21には、上述の線状光学構造体25が形成されているので、これを通過した光は、上向きに曲げられて光学調整シート20から出射される(プリズム効果)。
なお、導光板5の下面5cにおいて、光はランダムな方向に散乱されるわけではなく、所定の方向に強く散乱される。そのため、導光板5の上面5bから取り出される光は所定の方向に強い輝度ピークを有する(輝度ピーク光線)。つまり、導光板5の上面(光出射面)5bから取り出される光は、強い指向性を有する。
図5に本実施形態の照明装置1の、照明ユニット10と導光板5とを組み合わせた2つの光源(第1の光源、第2の光源)について、光強度の角度分布をプロットしたグラフを示す。図5のグラフによれば、第1、第2の光源から取り出される光の強度分布の半値幅は、それぞれ、25.7°、23.1°であり、一般的な光源から取り出される光と比べて比較的強い指向性を有する。
このような、強い指向性を有する光源の導光板5の上面5bに、光学調整シート20が配置されている。ここで、光学調整シート20の基材21の下面21bが導光板5の上面5bと対向するように配置されている。上述のように、光学調整シート20の基材21の下面21bには、黒色ビーズ22を分散させたバインダ23が塗布されている。バインダ23の厚さよりも黒色ビーズ22の直径の方が大きいため、光学調整シート20は、バインダ23から突出した黒色ビーズ22を介して導光板5の上面5bと点接触することになる。つまり、導光板5の上面5bに光学調整シート20を配置する際、光学調整シート20の基材21の下面21bに塗布されたバインダ23の表面と、導光板5の上面5bとの間には所定の隙間が形成されている。このように、導光板5の上面5bとバインダ23の表面とが面接触していないので、光学調整シート20の光出射面(基材21の上面21a)には、輝度斑が発生しない。
さらに、光学調整シート20と導光板5とは、黒色ビーズ22を介して点接触している。ここで、黒色ビーズ22の光透過率は非常に低い(光透過率は約8%)ので、導光板5から、黒色ビーズ22を透過して光学調整シート20へと入射する光の光量は、後述するような透明ビーズ22F(光透過率は約92%)を介して光学調整シート20Fと導光板5とを接触させている場合に比べて、著しく少なくなる。そのため、透明ビーズ22Fを介して光学調整シート20Fと導光板5とを点接触させている場合には、透明ビーズ22Fを透過した光に起因する輝線(輝点)が目視により確認できたが、本実施例の光源ユニットではそのような輝線は確認されなかった。また、導光板5と光学調整シート20とを面接触させたときに発生する輝度斑も目視で確認されなかった。
導光板5から出て黒色ビーズ22に入射する光の大部分は、黒色ビーズ22に吸収されるなどして、黒色ビーズ22を透過することができない。そのため、バインダ23中に含まれる黒色ビーズ22の含有量が多くなると、導光板5から出た光のうち黒色ビーズ22で吸収される割合が高くなり、光学調整シート20から取り出される光の光量を低下させる恐れがある。本実施例においては、上述のように黒色ビーズ22は、バインダ23中に約1体積%程度しか含まれていない。つまり、光学調整シート20の基材21の下面21bに塗布されたバインダ23中において、黒色ビーズ22は疎らに分散している。そのため、導光板5から出た光のうち黒色ビーズ22で吸収される割合は非常に低く、光学調整シート20から取り出される光の光量が低下することはない。なお、本実施例の照明装置1の正面輝度を測定したところ、(黒色ビーズ22を含有しない)バインダ23のみを用いて導光板5と光学調整シート20とを接合した照明装置における正面輝度と比べて、わずか0.5%しか正面輝度が低下していないことがわかった。このように、本実施例の照明装置1では、導光板5と光学調整シート20とを、黒色ビーズ22を介して点接触させている。そのため、導光板5と光学調整シート20とを面接触させたときに発生する輝度斑を防止するとともに、光透過率の低い黒色ビーズ22を用いているので、後述するような透明ビーズを用いたときに発生する輝線をも防止することができる。さらに、バインダ23中に含まれる黒色ビーズ22の割合を低く抑えることにより、正面輝度の低下を非常に低く抑えることもできた。
図6に示すように、本実施例の照明装置1Aは、光学調整シート20Aの基材21の厚さが100μmであることと、黒色ビーズ22に代えて直径約40μmの白色ビーズ22Aを用いていることと、白色ビーズ22Aを分散したバインダ23を平均厚さ30μmで塗布していることを除いて、実施例1の照明装置1と同様の構成を有する。そこで、実施例1と共通する構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施例では、上述のように白色ビーズ22Aを用いている。本実施例の白色ビーズ22Aは、アクリルビーズに酸化チタン微粒子を含有させることにより形成されており、約1体積%の密度でバインダ23中に分散させている。実施例1で説明した測定方法と同様の測定方法で白色ビーズ22Aの透過率を測定したところ、17%であった。また、本実施例における平均突起高さをレーザー顕微鏡を用いて測定したところ、9.6μmであった。本実施例の照明装置1Aについて、正面輝度を測定したところ、バインダ23のみを塗布した光学調整シート20Aを導光板5上に配置した照明装置における正面輝度と比べて、わずか1.9%しか正面輝度が低下していないことがわかった。さらに、本実施例の照明装置1Aにおいても、輝度斑及び輝線は目視で確認されなかった。
このように、黒色ビーズ22に代えて白色ビーズ22Aを用いた場合であったとしても、黒色ビーズ22を用いた場合と同様に、輝度斑及び輝線の発生を抑えることができた。さらに、正面輝度の低下もほとんど見られなかった。
なお、本願において、「白色ビーズ」とは、主に乱反射及び乱屈折により光を拡散することにより光透過性を低下させる粒状体を意味する。本願の「白色ビーズ」として、代表的には、本実施例の白色ビーズ22Aのような、酸化チタン微粒子を含有したアクリルビーズが挙げられるが、本願の「白色ビーズ」はこれに限られない。
図7に示すように、本実施例の照明装置1Bは、光学調整シート20Bにおいて、黒色ビーズ22に代えて直径約10μmの銀粒子22Bを用いていることと、銀粒子22Bを分散したバインダ23を平均厚さ5μmで塗布していることを除いて、実施例1の照明装置1と同様の構成を有する。そこで、実施例1と共通する構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施例では、上述のように銀粒子22Bを用いている。銀粒子22Bは、約1体積%の密度でバインダ23中に分散させている。実施例1で説明した測定方法と同様の測定方法で銀粒子22Bの透過率を測定したところ、7%であった。なお、透過率を測定する際、銀粒子22Bと混合する光学材料として、屈折率1.6のアクリル樹脂を用いた。また、本実施例における平均突起高さをレーザー顕微鏡を用いて測定したところ、4.8μmであった。本実施例の照明装置1Bについて、正面輝度を測定したところ、バインダ23のみを用いて導光板5と光学調整シート20とを接合した照明装置における正面輝度と比べて、わずか1.1%しか正面輝度が低下していないことがわかった。さらに、本実施例の照明装置1Bにおいても、輝度斑及び輝線は目視で確認されなかった。
このように、黒色ビーズ22に代えて、銀粒子22Bを用いた場合であったとしても、黒色ビーズ22を用いた場合と同様に、輝度斑及び輝線の発生を抑えることができた。さらに、正面輝度の低下もほとんど見られなかった。
なお、本実施例の銀粒子22Bは、「高反射率金属粒子」の一例である。ここで、「高反射率金属粒子」とは、主に光を乱反射することにより光透過性を低下させる金属製の粒状体を指す。本願の「高反射率金属粒子」は、銀粒子に限られず、例えば、金、アルミニウムなどの反射率の高い金属、又はこれらを主体的に含んで構成される合金の微粒子であってもよい。
次に、上述の実施例と比較検討するため、ビーズの粒径、密度、透過率などを変更した照明装置を用意し、上述の実施例と同様に正面輝度の測定、輝度斑及び輝線の有無の確認を行った。
[比較例1]
図8に示すように、比較例1の照明装置1Cは、白色ビーズ22Aに代えて、直径約50μmの白色ビーズ22Cを用いていることと、白色ビーズ22Cを分散したバインダ23を平均厚さ35μmで塗布していることを除いて、実施例2の照明装置1Aと同様の構成を有する。
白色ビーズ22Cの組成は、白色ビーズ22Aと同様であり、その透過率も17%である。また、白色ビーズ22Cはバインダ23中に約1体積%の密度で分散している。平均突起高さをレーザー顕微鏡を用いて測定したところ、14.4μmであった。比較例1の照明装置1Cについて、正面輝度を測定したところ、バインダ23のみを用いて導光板5と光学調整シート20とを接合した照明装置における正面輝度と比べて、3.6%も正面輝度が低下していることがわかった。なお、比較例1の照明装置1Cにおいては、輝度斑及び輝線は目視で確認されなかった。
[比較例2]
図9に示すように、比較例2の照明装置1Dは、黒色ビーズ22に代えて、直径約2μmの黒色ビーズ22Dを用いていることと、黒色ビーズ22Dを分散したバインダ23を平均厚さ1μmで塗布していることを除いて、実施例1の照明装置1と同様の構成を有する。
黒色ビーズ22Dの組成は、黒色ビーズ22と同様であり、その透過率も8%である。また、黒色ビーズ22Dはバインダ23中に約1体積%の密度で分散している。平均突起高さをレーザー顕微鏡を用いて測定したところ、0.9μmであった。比較例2の照明装置1Dについて、正面輝度を測定したところ、バインダ23のみを用いて導光板5と光学調整シート20とを接合した照明装置における正面輝度と比べて、0.1%しか正面輝度が低下していないことがわかった。しかしながら、比較例2の照明装置1Dにおいては、目視で輝線の発生が確認された。
[比較例3]
図10に示すように、比較例3の照明装置1Eは、白色ビーズ22Aを、3体積%の密度でバインダ23に分散させていることを除いて、実施例2の照明装置1Aと同様の構成を有する。
平均突起高さをレーザー顕微鏡を用いて測定したところ、9.8μmであった。比較例3の照明装置1Eについて、正面輝度を測定したところ、バインダ23のみを用いて導光板5と光学調整シート20とを接合した照明装置における正面輝度と比べて、5.3%も正面輝度が低下いることがわかった。なお、比較例3の照明装置1Eにおいては、輝度斑及び輝線は目視で確認されなかった。
[比較例4]
図11に示すように、比較例4の照明装置1Fは、黒色ビーズ22に代えて、直径約4μmの透明ビーズ22Fを用いていることを除いて、実施例1の照明装置1と同様の構成を有する。
透明ビーズ22Fは、透明なアクリル樹脂により形成されており、実施例1で説明した測定方法と同様の測定方法で透過率を測定したところ、92%であった。また、平均突起高さをレーザー顕微鏡を用いて測定したところ、1.7μmであった。比較例4の照明装置1Fについて、正面輝度を測定したところ、バインダ23のみを用いて導光板5と光学調整シート20とを接合した照明装置における正面輝度と比べて、0.2%しか正面輝度が低下していないことがわかった。しかしながら、比較例4の照明装置1Fにおいては、目視で輝線の発生が確認された。
以上説明した、実施例1〜3及び比較例1〜4を表1にまとめる。
実施例1〜3では、それぞれ黒色ビーズ、白色ビーズ、高反射率金属粒子としての銀粒子を用いているが、いずれの場合であっても輝線の発生を抑えることができるとともに、正面輝度の低下を抑えることができる。ここで、光の非透過率は、反射率と吸収率との和として考えることができる。そのような光学的な観点からは、黒色ビーズ、白色ビーズ、高反射率金属粒子(銀粒子)は、光の反射率と吸収率との比率がそれぞれ異なる光学材料として考えることができる。つまり、黒色ビーズは、光の吸収率が反射率よりも大幅に大きな光学材料であり、白色ビーズは、光の反射率が吸収率よりも大幅に大きな光学材料である。また、高反射率金属粒子(銀粒子)は、光の吸収率がほぼゼロであり、反射率がほぼ1の光学材料である。このように、光の反射率、吸収率の観点からは、上述の実施例1〜3で用いた3種類のビーズは互いに異なる特性を有しているが、光透過率が低い(非透過率が高い)という点では共通している。つまり、使用するビーズは、光の反射率、吸収率のいずれが高いかによらず、非透過率が高い方がよいことがわかる。なお、比較例4のように、光透過率の高い透明ビーズを用いた場合には、透明ビーズを透過して光学調整シートへと入射する光の光量が増えることから、上述のように輝線が発生すると考えられる。
比較例1のように、粒径の大きなビーズを用いた場合には、光の進行をビーズが遮ってしまい、正面輝度を低下させてしまうと考えられる。逆に、比較例2のように、粒径の小さなビーズを用いた場合には、平均突起高さが小さくなり、光学調整シートと導光板との接触を防止することができず、輝線の発生を抑えることができなかった。なお、測定された黒色ビーズの平均粒径は約2μmであるのに対して、バインダの厚さが約1μmであり、平均突起高さは0.9μmであった。しかしながら、平均突起高さが1μm以下であって非常にわずかであるため、実際にはバインダの一部が導光板の表面に触れていたと考えられる。また、比較例3では、バインダ中に分散されたビーズの密度が高すぎるため、光の進行をビーズが遮ってしまい、正面輝度を低下させてしまう。
以上のことから、ビーズの光透過率が低いこと(17%以下、すなわち、約20%以下であること)が望ましく、ビーズの平均粒径(直径)は4〜40μm程度であることが望ましく、ビーズはバインダ中に3体積%未満の密度で分散されていることが望ましい。また、ビーズの平均粒径は、バインダの厚さに比べて十分大きいことが望ましい。上記実施例1と比較例2の測定結果を勘案すると、ビーズの平均粒径は、バインダの厚さに比べて約2μm以上大きいことが望ましい。
なお、上記実施例では、導光板及び光学調整シートの基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用いた。導光板及び基材の厚さは、導光板及び光学調整シートの加工の容易性、ハンドリング性等を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましい。また、導光板及び光学調整シートの基材を形成する材料としては、PET以外にも、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサリファイド、ポリオレフィン、ポリプロピレン、セルロースアセテート、アクリル樹脂、ガラスなどの無機透明物質等、任意の光透過性材料を用いることができる。また、上述の実施例のように、基材の上面には、複数の線状光学構造体が形成されているが、これらの線状光学構造体は基材と一体的に形成されていてもよく、板状の基材の上に複数の光学構造体が光学的に接続されていてもよい。
また、上記実施例では、バインダに黒色ビーズ、白色ビーズ、銀粒子などの粒状体をそれぞれ分散させていたが、本発明はこれに限られず、光透過性が低い限りにおいて、任意の材質、形状の粒状体を使用しうる。上述のように、光透過率は約20%以下の物質であればよく、例えば、金属粒子、酸化物粒子、窒化物粒子、着色ビーズなどを用いることもできる。
また、線状光学構造体の数及び配置は、任意にしうる。なお、一方向に長い線状光学構造体に限らず、任意の光学構造体を使用しうる。光学構造体の形状は、三角柱状のプリズム形状に限らず、任意にしうる。例えば、多角柱状のプリズム形状であってもよく、半球状、半楕円球状のレンズ体であってもよく、半円柱状のレンチキュラーランズであってもよい。また、複数のマイクロレンズが設けられたマイクロレンズアレイ、又は、拡散材が設けられた拡散シートであってもよい。
あるいは、図12に示すように、階段形状の線状光学構造体124を基材120に設けてもよい。線状光学構造体124の延在方向に直交する断面は、第1断面部121aと、第1断面部121aの一辺上に設けられた形状の異なる2つの第2断面部122a及び123aとから構成される。ここで、第1断面部121aの頂角121e側に位置する第2断面部123aにおいては、その傾斜辺123cを含む線状光学構造体124(第2線状プリズム部)の面は、主に、入射光線の進行方向を光学調整シートの厚さ方向に屈折させる面、すなわち、入射光線を集光させる作用を有する面(集光面)である。一方、2つの辺123f、123gを含む傾斜辺123dのうち、辺123gを含む線状光学構造体124の面は、主に、光学調整シートからの出射光の色分離を抑制する作用を与える面(補正面)となる。また、もう一つの第2断面部122aにおいては、傾斜辺122cを含む線状光学構造体124(第2線状プリズム部)の面が集光面となり、一方、辺122dを含む線状光学構造体124の面は、主に、光学調整シートからの出射光の色分離を抑制する作用を与える面(補正面)となる。図13に示すように、集光面から取り出された光と、補正面から取り出された光とは、色分離の向きとなるので、これらの光を合わせることによって、色分離を抑制することができる。
なお、上述の実施例に係る照明装置及び光学調整シートは、任意の用途に用いることができる。例えば、図14に示されるように、液晶表示装置110は、液晶表示パネル107(液晶表示素子)と、上述の照明装置1とを含む。液晶表示パネル107は、第1の偏光板107a、ガラス基板107b、画素電極を成す第1の透明導電膜107c、第1の配向膜107d、液晶層107e、第2の配向膜107f、対抗電極を成す透明導電膜107g、カラーフィルター107h、ガラス基板107i、及び、第2の偏光板107jを含み、これらの層がこの順で積層されている。このように、光学調整シート20に近い方に第1の偏光板107aが配置されているので、光学調整シート20から出射した光は、液晶表示パネル107の第1の偏光板107a側から液晶表示パネル107に入射する。この場合においても、上述のように、照明装置1は輝線及び輝度斑がないので、液晶表示パネル107の表示を乱す恐れがない。また、上述のように照明装置1は正面輝度が高いので、液晶表示パネル107の画面表示を鮮明にすることができる。
上記実施例においては、本発明の光学調整部材として、厚さ50μmのフィルム状の基材21を有する光学調整シート20を例に挙げて説明してきた。しかしながら、本発明の光学調整部材はこのような薄い基材を有するシート状の部材に限られず、さらに厚い基材を有していてもよい。基材としては、10μm〜100mm程度の厚さの光学部材を用いることができるが、部材加工の工程上、30μm〜200μm程度の厚さの光学部材を用いることが好適である。また、上記実施例においては、導光板の側面に光源を配置したエッジライト方式の照明装置及び液晶表示装置を例に挙げて説明したが、本発明の照明装置及び液晶表示装置はこれに限られない。例えば、上述の照明装置及び液晶表示装置の導光板に代えて拡散板を用い、照明ユニットを拡散板の下面に光学的に接続してもよい。この場合、照明ユニットから出た光は、拡散板の下面から入射して、拡散板の内部において拡散された後、ほぼ一様な強度で拡散板の上面から放出され、光学調整シート(光学調整部材)へと進む。このような、直下型の照明装置及び液晶表示装置に対しても、本発明の光学調整部材を適用することが可能であり、上述の効果と同様の効果を得ることができる。なお、上述のように、本発明の光学調整部材は、特に指向性の高い光源と組み合わせたときに、基線の発生を抑制する効果が高くなる。そのため、上記実施例のように、指向性の高い光を放出する導光板の側面に光源を配置するエッジライト方式の照明装置、液晶表示装置などに本発明の光学調整部材を組み合わせることは好適である。
本発明の光学調整部材では、輝線の発生を抑えるとともに、輝度の低下を抑えることができる。特に、光学調整シートのような薄い基材を有する光学調整部材であっても、表面を指などで押圧したとしても輝線が発生することはないので、携帯電話の液晶ディスプレイなど、ユーザーが画面に触れる可能性の高いディスプレイ装置に好適である。
図1は、実施例1の照明装置の概略構成図である。
図2は、実施例1の光学調整シートの拡大断面図である。
図3(a)(b)は、光学調整シートの粒状体の拡大写真である。
図4は、実施例1の照明装置における光の進行を示す図である。
図5は、光源の輝度比の角度分布を示すグラフである。
図6は、実施例2の光学調整シートの図2相当図である。
図7は、実施例3の光学調整シートの図2相当図である。
図8は、比較例1の光学調整シートの図2相当図である。
図9は、比較例2の光学調整シートの図2相当図である。
図10は、比較例3の光学調整シートの図2相当図である。
図11は、比較例4の光学調整シートの図2相当図である。
図12は、階段状の光学調整部材を有する光学調整シートの図2相当図である。
図13は、出射光の色分離の様子を示した図である。
図14は、液晶表示装置の概略構成図である。
図15は、従来のレンズシートの概略図である。
符号の説明
1 照明装置
5 導光板
10 照明ユニット
20 光学調整シート
21 基材
22 黒色ビーズ
23 バインダ
110 液晶表示装置