JP4690182B2 - 電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、アルミニウム電解コンデンサ用陽極材およびアルミニウム電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、アルミニウム電解コンデンサ用陽極材およびアルミニウム電解コンデンサ Download PDF

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Description

この発明は、電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、アルミニウム電解コンデンサ用陽極材およびアルミニウム電解コンデンサに関する。
なお、この明細書において「アルミニウム」の語はその合金を含む意味で用い、アルミニウム材には箔と板およびこれらを用いた成形体が含まれる。
アルミニウム電解コンデンサ用電極材料として一般に用いられるアルミニウム材は、静電容量を大きくする目的で、電気化学的あるいは化学的エッチング処理を施して、アルミニウム材の実効面積を拡大することが行われている。
直流エッチング法でトンネル状ピットを生成させる電解コンデンサ陽極用アルミニウム材の製造においては、アルミニウムの立方体集合組織を発達させるために、冷間圧延工程の途中に中間焼鈍を実施し、仕上げ冷間圧延(低圧下率圧延)を行った後、500℃前後の温度で不活性雰囲気もしくは真空中で最終焼鈍するのが一般的である(例えば特許文献1)。また、特許文献2に記載されているように、仕上げ冷間圧延の代わりにアルミニウム材に引張歪を付与することによってもアルミニウムの立方体集合組織を発達させることができる。
最終焼鈍後のアルミニウム材のエッチング特性は、焼鈍前のアルミニウム材の特性に大きく依存することから、アルミニウム材表面層の特性を均一化するために、冷間圧延の途中や冷間圧延終了後にアルミニウムを溶解する液で洗浄することが検討されている。
特許文献3では、純度99.96〜99.98%の純アルミニウム材を使用し、中間焼鈍を200〜500℃の温度で1時間以上行い、中間焼鈍後最終焼鈍までの間にアルミニウム箔の表層部を厚さ方向に0.1μm以上除去することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム箔の製造方法が記載されている。
また、特許文献4には、アルミニウム箔の表面層を除去する工程と、除去後、温度:40〜350℃、露点:0〜80℃、時間:30〜1800秒の条件で加熱酸化する工程と、加熱酸化後、非酸化性雰囲気で焼鈍する工程を実施することにより、焼鈍後のアルミニウム箔表層の酸化膜を薄くでき、かつエッチング液中で速やかに溶解除去できることが開示されている。
特公昭54−11242号公報 WO 2004/003248 A1 特開平10−81945号公報 特開平7−201673号公報
しかしながら、化学的処理によって表層部を除去する場合、表層除去前のアルミニウム材表面の耐食性が不均質なため、表層部を均一に除去することは困難であり、静電容量の向上には限界があった。
また、特許文献4の方法では、焼鈍前の加熱酸化はアルミニウム材表層酸化膜の均質化に寄与するが、除去前のアルミニウム材表面層の特性は不均質であり、洗浄した後の表面層は洗浄前の表面層の不均質さの影響を受けるため、その後の加熱酸化による均質化は不十分でありエッチング特性の向上には限界があった。
この発明は、従来の電解コンデンサ用アルミニウム材の製造法において、アルミニウム材表面層を洗浄により溶解させる際に、アルミニウム材表面層の溶け方が不均質であるため最終焼鈍後のアルミニウム材のエッチング特性が不十分であるという問題点を解決し、エッチング特性に優れ高静電容量を実現できる電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、アルミニウム電解コンデンサ用陽極材およびアルミニウム電解コンデンサを提供することを課題とする。
上記課題は以下の手段によって解決される。
(1)熱間圧延及び冷間圧延を行い、次いで中間焼鈍を施し、中間焼鈍後で最終焼鈍を開始するまでの間に、引張歪を付与したのち、最終焼鈍を施して電解コンデンサ電極用アルミニウム材を製造するに際し、前記引張歪の付与後で最終焼鈍前にアルミニウム材を酸化性雰囲気中で加熱した後アルミニウム材表面層を洗浄により除去することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(2)洗浄に用いる洗浄液がアルカリ性水溶液である前項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(3)洗浄に用いる洗浄液が酸性水溶液である前項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(4)洗浄は、アルカリ性水溶液による洗浄と酸性水溶液による洗浄の順次的実施により行われる前項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(5)アルカリ性水溶液中のアルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウムの中から選ばれた1種または2種以上である前項2または前項4に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(6)酸性水溶液中の酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン元素を含む酸の中から選ばれた1種または2種以上である前項3または前項4に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(7)酸化性雰囲気中での加熱後の洗浄によるアルミニウム材表面層除去量が、以下に規定する除去量D(nm)においてアルミニウム材片面あたり1nm以上500nm以下である前項1ないし前項6の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
除去量D(nm)=E(g/cm2)×107/2.7(g/cm3
ただし、Eは洗浄による単位表面積当たりの質量減
2.7g/cm3はアルミニウムの密度
(8)酸化性雰囲気中での加熱温度が50〜400℃である前項1ないし前項7の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(9)酸化性雰囲気中での加熱時間が3秒以上72時間以下である前項8に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(10)加熱における酸化性雰囲気中の酸素濃度が0.1体積%以上である前項1ないし前項9の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(11)最終焼鈍が不活性ガス雰囲気中で行われる前項1ないし前項10の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(12)最終焼鈍が450℃以上600℃以下の温度で行われる前項1ないし前項11の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(13)アルミニウム材のアルミニウム純度が99.9質量%以上である前項1ないし前項12の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
(14)前項1ないし前項13の何れか1項に記載の製造方法によって製造された電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
(15)中圧用または高圧用陽極材として用いられる前項14に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
(16)前項14または前項15に記載のアルミニウム材に、エッチングを実施する工程を含むことを特徴とする電解コンデンサ用電極材の製造方法。
(17)エッチングの少なくとも一部が直流電解エッチングである前項16に記載の電解コンデンサ用電極材の製造方法。
(18)前項16または前項17に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム電解コンデンサ用陽極材。
(19)電極材として前項16または前項17に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム電極材が用いられていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
前項(1)に係る発明によれば、熱間圧延及び冷間圧延を行い、次いで中間焼鈍を施し、中間焼鈍後で最終焼鈍を開始するまでの間に、引張歪を付与したのち、最終焼鈍を施して電解コンデンサ電極用アルミニウム材を製造するに際し、前記引張歪の付与後で最終焼鈍前にアルミニウム材を酸化性雰囲気中で加熱した後アルミニウム材表面層を洗浄により除去するから、洗浄時にアルミニウム材を均一に溶解することができ、その後最終焼鈍により、エッチング特性に優れ、ひいては高静電容量の電解コンデンサ電極用アルミニウム材とすることができる。
前項(2)に係る発明によれば、洗浄に用いる洗浄液がアルカリ性水溶液であるから、アルミニウム材表面層を洗浄により確実に除去することができる。
前項(3)に係る発明によれば、洗浄に用いる洗浄液が酸性水溶液であるから、アルミニウム材表面層を洗浄により確実に除去することができる。
前項(4)に係る発明によれば、洗浄は、アルカリ性水溶液による洗浄と酸性水溶液による洗浄の順次的実施により行われるから、アルミニウム材表面層をさらに確実に除去することができる。
前項(5)に係る発明によれば、アルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウムの中から選ばれた1種または2種以上であるから、より効果的な表面層の除去を行うことができる。
前項(6)に係る発明によれば、酸性水溶液中の酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン元素を含む酸の中から選ばれた1種または2種以上であるから、より効果的な表面層の除去を行うことができる。
前項(7)に係る発明によれば、酸化性雰囲気中での加熱後の洗浄によるアルミニウム材表面層除去量がアルミニウム材片面あたり1nm以上500nm以下であるから、アルミニウム材の均一溶解による静電容量の増大効果を確実に得ることができる。
前項(8)に係る発明によれば、酸化性雰囲気中での加熱温度が50〜400℃であるから、アルミニウム材の表面層を過度の厚さの酸化膜の生成を抑制しながら十分に酸化させることができ、その後の洗浄による表面層の除去時に表面層を均一に溶解することができる。
前項(9)に係る発明によれば、酸化性雰囲気中での加熱時間が3秒以上72時間以下であるから、アルミニウム材の表面層を無駄なエネルギ消費を抑制しながら十分に酸化させることができ、その後の洗浄による表面層の除去時に表面層を均一に溶解することができる。
前項(10)に係る発明によれば、酸化雰囲気中での加熱における雰囲気中の酸素濃度が0.1体積%以上であるから、アルミニウム材表面層を十分に酸化させることができる。
前項(11)に係る発明によれば、最終焼鈍が不活性ガス雰囲気中で行われるから、酸化皮膜の厚さの増大化を抑制することができ、アルミニウム材の酸化性雰囲気中での加熱及び洗浄除去の効果を有効に発揮させることができる。
前項(12)に係る発明によれば、最終焼鈍が450℃以上600℃以下で行われるから、エッチピットが均一に生成するアルミニウム材表面を得ることができる。
前項(13)に係る発明によれば、アルミニウム純度が99.9%以上であるから、不純物が多すぎることによるエッチング特性の劣化を防止することができる。
前項(14)に係る発明によれば、エッチング特性に優れた電解コンデンサ電極用アルミニウム材となしうる。
前項(15)に係る発明によれば、エッチング特性に優れた中圧用または高圧用陽極材となし得る。
前項(16)に係る発明によれば、エッチングにより大きな静電容量を有する電解コンデンサ用電極材を製造することができる。
前項(17)に係る発明によれば、エッチングの少なくとも一部を直流エッチングで行うことにより、深くて太い多数のトンネル状ピットを生成することができ、前記酸化性雰囲気中での加熱及び洗浄による表面層除去による前記効果を効率的に発揮させることができる。
前項(18)に係る発明によれば、高静電容量のアルミニウム電解コンデンサ用陽極材となし得る。
前項(19)に係る発明によれば、高静電容量のアルミニウム電解コンデンサとなし得る。
本願発明者は、中間焼鈍後に引張歪を付与し、さらに酸化性雰囲気中で加熱した後、アルミニウム材表面層を洗浄により溶解させ最終焼鈍すると、引張歪付与終了後の酸化性雰囲気中の加熱によるアルミニウム材の酸化によりアルミニウム材表層の溶解性が均一になり、最終焼鈍後のアルミニウム材のエッチング特性が顕著に向上することを見出した。
以下に、電解コンデンサ用アルミニウム材の製造方法を詳細に説明する。
アルミニウム材の純度は電解コンデンサ用に使用される範囲であれば特に限定されないが、純度99.9質量%以上のものが好ましく、特に99.95質量%以上が好ましい。なお、本発明においてアルミニウム材の純度は便宜的に100質量%からFe, SiおよびCuの合計濃度(質量%)を差し引いた値とする。
アルミニウム材の製造工程は、限定されないが、アルミニウム材の溶解成分調整・スラブ鋳造、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、引張歪付与、酸化性雰囲気中での加熱、洗浄によるアルミニウム材表面層の除去、最終焼鈍の順に実施することができる。
引張歪付与後であって最終焼鈍前に行う酸化性雰囲気中での加熱とその後の洗浄によるアルミニウム材表面層の除去はそれぞれ一回ずつ行っても良く、酸化性雰囲気中での加熱とその後の洗浄によるアルミニウム材表面層除去を交互に複数回行っても良い。
引張歪付与は中間焼鈍と組み合わせて立方体方位の制御のため行われる工程である。引張歪付与は仕上げ冷間圧延のように多量の潤滑油がアルミニウム材表面に付着するという問題がないため、その後の酸化性雰囲気中での加熱によりアルミニウム材表面を酸化させやすい。また、引張歪付与は仕上げ冷間圧延に比べ箔が厚くても最終焼鈍時にアルミニウム結晶粒の粗大化が起こりにくく、厚いアルミニウム材を製造しやすいという特長を有する。引張歪付与方法は特に限定されないが、WO 2004/003248 A1に記載されている方法を適用することができる。
中間焼鈍後に引張歪を付与する場合の引張歪は1%以上15%以下であることが好ましい。引張歪が1%未満では立方体方位を有する結晶粒を優先成長させるための加工歪が不十分であり、15%を越えると引張過程でアルミニウム材が破断する恐れがある。引張歪の付与は、アルミニウム材に対して1方向、例えば長さ方向のみに引張歪を付与する一軸引張でも良いし、異なる2方向、例えば長さ方向と幅方向に引張歪を付与する二軸引張によっても良い。また、アルミニウム材を曲げ変形させて引張歪を生じさせても良い。
引張歪付与より後の工程で行われる酸化性雰囲気中での加熱は、加熱体との接触によるものではなく、雰囲気加熱により行われる。雰囲気加熱は、アルミニウム材と加熱体が接触しないため、加熱体との接触加熱のように加熱時に皺や疵が発生する恐れがないため、本発明では雰囲気加熱が行われる。
酸化性雰囲気中での加熱方法としては、送風加熱、輻射加熱などを例示できる。また、加熱されるアルミニウム材の形態は特に限定されるものではなく、コイルに巻き取った状態でバッチ加熱しても良いし、コイルを巻き戻し連続加熱したのちコイルに巻き取っても良い。
引張歪付与より後の工程で行われる酸化性雰囲気中でのアルミニウム材の加熱温度は50〜400℃であることが好ましい。
加熱温度が50℃未満では、アルミニウム材表層の酸化が不十分でアルミニウム材表面層除去時にアルミニウム材が均一に溶解しない恐れがある。加熱温度が400℃を越えるとアルミニウム材表層酸化膜が厚くなりアルミニウム材の溶解性が低下し、アルミニウム材を均一に溶解させ難くなる。特に好ましいアルミニウム材の加熱温度は70〜350℃であり、とりわけ70〜250℃が好ましい。
引張歪付与より後の工程で行われる酸化性雰囲気中での加熱時間は3秒以上72時間以下であることが好ましい。加熱時間が3秒未満ではアルミニウム材表面層の酸化が不十分であるため、表面層除去時にアルミニウム材が均一に溶解し難く、加熱時間が72時間を超えるとアルミニウム材表面層除去時の溶解均一性は殆ど変わらなくなるため、加熱時のエネルギー消費によりコスト高となる。特に好ましい加熱時間は10秒以上48時間以下であり、とりわけ70秒以上48時間以下が良い。
引張歪付与より後の工程で行われる酸化性雰囲気中でのアルミニウム材の加熱における酸化性雰囲気中の酸素濃度は0.1体積%以上であることが好ましい。酸素濃度が0.1体積%未満では加熱時にアルミニウム材表面が十分酸化されない恐れがある。酸素濃度は特に1体積%以上であることが好ましく、とりわけ5体積%以上であることが好ましく、空気を酸化性雰囲気として好適に利用できる。
洗浄によるアルミニウム材表面層の除去に用いる洗浄液は特に限定されないが、アルカリ性水溶液、酸性水溶液を用いることができる。表面層の除去は、アルカリ性水溶液あるいは酸性水溶液のどちらかを用いて行ってもよく、アルカリ性水溶液を用いて実施した後酸性水溶液を用いて洗浄しても良い。
アルカリ性水溶液中のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウムが例示でき、これらアルカリの中から選ばれた1種あるいは2種以上を水に溶解させ洗浄液として用いることができる。
酸性水溶液中の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン元素を含む酸の中から選ばれる1種または2種以上を用いる。リン元素を含む酸としてはオルトリン酸(以後リン酸と称す。)、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸を例示できる。
アルミニウム材の表面層除去量は、アルカリまたは酸の濃度、アルカリ性または酸性水溶液の温度およびアルミニウム材とアルカリまたは酸水溶液との接触時間を適正なものにすることにより調節される。
また、アルミニウム材表面層の洗浄効果を高める目的で洗浄液に界面活性剤やキレート剤を添加しても良い。
酸化性雰囲気中の加熱後の洗浄によるアルミニウム材表面層除去量はアルミニウム材片面あたり1nm以上500nm以下であることが好ましい。表面層除去量が1nm未満の場合アルミニウム材表面層の酸化膜の除去が不十分な恐れがあり、500nmより多く表層を除去するとアルミニウム材表面層のエッチピット核の生成が抑制されるため却ってエッチング特性が悪く静電容量が低下する恐れがある。より好ましい表面層除去量は1.5nm以上200nm以下であり、さらに5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上150nm以下が良い。
なお、アルミニウム材表面層酸化膜と金属のアルミニウムは密度が異なるが、本願においてアルミニウム材の表面層除去量D(nm)は洗浄による単位表面積当たりの質量減E(g/cm2)とアルミニウムの密度2.7g/cm3を用いて、D(nm)=E×107/2.7と規定する。
洗浄液とアルミニウム材との接触方法としては、特に限定されないが、浸漬、洗浄液表面へのアルミニウム材の接触、スプレー等があげられる。
洗浄によるアルミニウム材表面層の除去は中間焼鈍後であって、最終冷間圧延あるいは引張歪付与後に行われる酸化性雰囲気中での加熱より前の工程で行っても良く、洗浄条件は前記酸化性雰囲気加熱後の洗浄条件の範囲で実施することができる。
また、熱間圧延後であって中間焼鈍より前の工程において、洗浄によりアルミニウム材表面層を除去してもよい。熱間圧延後であって中間焼鈍より前の工程での洗浄に用いる洗浄液は目的に応じて選択され特に限定されないが、前記酸化性雰囲気中の加熱後の洗浄に用いられるものと同じものを用いることができる。
アルミニウム材の最終焼鈍における処理雰囲気は特に限定されるものではないが、酸化皮膜の厚さを増大させすぎないように、水分および酸素の少ない雰囲気中で加熱するのが好ましい。具体的には、アルゴン、窒素などの不活性ガス中あるいは0.1Pa以下の真空中で加熱することが好ましい。
最終焼鈍後のアルミニウム材の立方体方位占有率は90%以上が好ましい。
最終焼鈍の方法は特に限定されるものではなく、コイルに巻き取った状態でバッチ焼鈍しても良く、コイルを巻き戻し連続焼鈍したのちコイルに巻き取っても良く、バッチ焼鈍と連続焼鈍の少なくともどちらかを複数回行っても良い。
焼鈍時の温度、時間は特に限定されるものではないが、例えばコイルの状態でバッチ焼鈍を行う場合には、450〜600℃にて10分〜50時間焼鈍するのが好ましい。温度が450℃未満、時間が10分未満では、エッチピットが均一に生成する表面が得られず、(100)面の結晶方位の発達も不十分となる恐れがあるからである。逆に600℃を越えて焼鈍すると、コイルでバッチ焼鈍する場合はアルミニウム材が密着を起こし易くなり、また50時間を超えて焼鈍してもエッチングによる拡面効果は飽和し、却って熱エネルギーコストの増大を招く。特に好ましい焼鈍温度は460〜570℃である。特に好ましい焼鈍時間は20分〜40時間である。
また、昇温速度・パターンは特に限定されず、一定速度で昇温させても良く、昇温、温度保持を繰り返しながらステップ昇温・冷却させても良く、焼鈍工程にて450〜600℃の温度域で合計10分〜50時間焼鈍されれば良い。
最終焼鈍後に得られる電解コンデンサ電極用アルミニウム材の厚さは特に規定されない。箔と称される200μm以下のものも、それ以上の厚いものも本発明に含まれる。
最終焼鈍を経たアルミニウム材には、拡面率向上のためエッチング処理を実施する。エッチング処理条件は特に限定されないが、好ましくは直流エッチング法を採用するのが良い。直流エッチング法によって、前記焼鈍において生成が促進されたエッチピットの核となる部分において、深く太くエッチングされ、多数のトンネル状ピットが生成され、高静電容量が実現される。
エッチング処理後、望ましくは化成処理を行って陽極材とするのが良く、特に、中圧用および高圧用の電解コンデンサ電極材として用いるのが良いが、陰極材として用いることを妨げるものではない。また、この電極材を用いた電解コンデンサは大きな静電容量を実現できる。
本発明で規定した以外の工程および工程条件は限定されず、常法に従って行われる。また、アルミニウム材のエッチング条件との関係で、アルミニウム材の製造工程は適宜変更される。
なお、静電容量の測定は常法に従えば良く、化成処理されたエッチド箔について、例えば30℃の80g/Lのホウ酸アンモニウム水溶液中で、ステンレス板を対極として120Hzにて測定する方法を例示できる。
以下に本発明の実施例および比較例を示す。
アルミニウムスラブを熱間圧延して得られた板を冷間圧延した後中間焼鈍し、純度99.99質量%のシート状アルミニウム材を用意した。表1に中間焼鈍より後に実施する工程、表2に表1中の工程3(加熱)の条件、表3および表4に表1中の工程4(洗浄によるアルミニウム材表面層の除去)の条件を示す。最終焼鈍後に得られるアルミニウム材の厚さは、中間焼鈍以前に行う冷間圧延の圧下率を調節することにより全て110μmとした。
なお、アルミニウム材表面層除去量は洗浄液への浸漬時間により制御し、アルカリ洗浄の後に酸洗浄を実施する場合にはアルカリ洗浄液への浸漬時間を調節することにより除去量を制御した。
Figure 0004690182
Figure 0004690182
Figure 0004690182
Figure 0004690182
[実施例1]
アルミニウムスラブを熱間圧延して得られた板を冷間圧延した後、さらに中間焼鈍を施した純度99.99質量%のアルミニウム材に、表5に記載のように、引張歪を付与したのち(工程1)、空気中で150℃にて24時間の加熱を行った(工程3)。次いで、80℃20質量%硫酸水溶液中に浸漬することにより洗浄し表面層を10nm除去した(工程4)。洗浄後のアルミニウム材をアルゴン雰囲気中で550℃にて4時間最終焼鈍し(工程6)、電解コンデンサ電極用アルミニウム材を得た。
[実施例2〜実施例45、比較例1〜比較例4]
表5及び表6に示す条件にて電解コンデンサ電極用アルミニウム材を得た。

上記の各実施例および比較例で得られたアルミニウム材を、HCl 1.0mol/LとH2SO4 3.5mol/Lを含む液温75℃の水溶液に浸漬した後、電流密度0.2A/cm2で直流電解エッチングを施した。電解処理後のアルミニウム材をさらに前記組成の塩酸―硫酸混合水溶液に90℃にて360秒間浸漬し、ピット径を太くしエッチド箔を得た。得られたエッチド箔を化成電圧270VにてEIAJ規格に従い化成処理し、静電容量測定用サンプルとした。
表5〜表6に比較例4の静電容量を100としたときの相対静電容量(%)を示す。
Figure 0004690182
Figure 0004690182
上記表の実施例1〜45のように、熱間圧延、冷間圧延、および中間焼鈍を順次実施して得られたアルミニウム材に引張歪を付与し、引張歪付与後に酸化性雰囲気中で加熱した後、アルミニウム材表面層を洗浄により溶解させ最終焼鈍することにより、エッチング特性に優れた電解コンデンサ電極用アルミニウム材を得ることができる。
一方、引張歪付与後に酸化性雰囲気中での加熱および洗浄によるアルミニウム材表面層除去を実施することなく最終焼鈍した比較例1は、エッチング時のアルミニウム材表面の溶解性が不均一であり実施例より静電容量が低い。また、仕上げ冷間圧延を行ったのち酸化雰囲気中での加熱を行うことなく洗浄によりアルミニウム材表面層を除去し、その後焼鈍した比較例2では、洗浄時のアルミニウム材の溶解性が不均一であるために、また、仕上げ冷間圧延、酸化性雰囲気中での加熱を順次実施した後、アルミニウム材の表面層除去を行うことなく焼鈍した比較例3では、圧延時の汚染層や油分が多く残留するために、何れも静電容量が低い。仕上げ冷間圧延、洗浄によるアルミニウム材表面層の除去を順次実施した後酸化雰囲気中で加熱した比較例4では、比較例1〜比較例3に比べ静電容量が高いが、洗浄時に不均質に溶解したアルミニウム材表面層を酸化雰囲気中での加熱により十分均質化できないため、実施例の静電容量には及ばない。

Claims (19)

  1. 熱間圧延及び冷間圧延を行い、次いで中間焼鈍を施し、中間焼鈍後で最終焼鈍を開始するまでの間に、引張歪を付与したのち、最終焼鈍を施して電解コンデンサ電極用アルミニウム材を製造するに際し、
    前記引張歪の付与後で最終焼鈍前にアルミニウム材を酸化性雰囲気中で加熱した後アルミニウム材表面層を洗浄により除去することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  2. 洗浄に用いる洗浄液がアルカリ性水溶液である請求項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  3. 洗浄に用いる洗浄液が酸性水溶液である請求項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  4. 洗浄は、アルカリ性水溶液による洗浄と酸性水溶液による洗浄の順次的実施により行われる請求項1に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  5. アルカリ性水溶液中のアルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウムの中から選ばれた1種または2種以上である請求項2または請求項4に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  6. 酸性水溶液中の酸が塩酸、硫酸、硝酸、リン元素を含む酸の中から選ばれた1種または2種以上である請求項3または請求項4に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  7. 酸化性雰囲気中での加熱後の洗浄によるアルミニウム材表面層除去量が、以下に規定する除去量D(nm)においてアルミニウム材片面あたり1nm以上500nm以下である請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
    除去量D(nm)=E(g/cm2)×107/2.7(g/cm3
    ただし、Eは洗浄による単位表面積当たりの質量減
    2.7g/cm3はアルミニウムの密度
  8. 酸化性雰囲気中での加熱温度が50〜400℃である請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  9. 酸化性雰囲気中での加熱時間が3秒以上72時間以下である請求項8に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  10. 加熱における酸化性雰囲気中の酸素濃度が0.1体積%以上である請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  11. 最終焼鈍が不活性ガス雰囲気中で行われる請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  12. 最終焼鈍が450℃以上600℃以下の温度で行われる請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  13. アルミニウム材のアルミニウム純度が99.9質量%以上である請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。
  14. 請求項1ないし請求項13の何れか1項に記載の製造方法によって製造された電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
  15. 中圧用または高圧用陽極材として用いられる請求項14に記載の電解コンデンサ電極用アルミニウム材。
  16. 請求項14または請求項15に記載のアルミニウム材に、エッチングを実施する工程を含むことを特徴とする電解コンデンサ用電極材の製造方法。
  17. エッチングの少なくとも一部が直流電解エッチングである請求項16に記載の電解コンデンサ用電極材の製造方法。
  18. 請求項16または請求項17に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム電解コンデンサ用陽極材。
  19. 電極材として請求項16または請求項17に記載の製造方法によって製造されたアルミニウム電極材が用いられていることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
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