JP4690168B2 - 乗り物およびペダル操作装置 - Google Patents
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Description
特許文献2には、(a)1つのペダルと、(b)そのペダルを前後方向に延びる軸線の回りに左右方向に回動可能に保持するペダル保持装置とを含むペダル操作装置が記載されている。
また、請求項2に係る乗り物においては、前記左側ペダルの第1軸線と、前記右側ペダルの第1軸線とが、当該ペダル操作装置において、前方へ進むにつれて、それらの間隔が大きくなる姿勢で配設され、請求項3に係る乗り物においては、前記ペダル保持装置が、さらに、前記左側ペダルと前記右側ペダルとを、それぞれ、前記第1軸線と、平面視において交差する向きに延びる第2軸線回りに回動可能に保持する2軸回動可能保持部を含むものとされる。
さらに、請求項4に係る乗り物においては、前記連結装置が、前記左側ペダルと前記右側ペダルとのいずれか一方の前記第1軸線回りの、そのペダルの内側が下がる回動を、他方のペダルの前記第1軸線回りの、そのペダルの外側が下がる回動に、回動角度を小さくして伝達するリンク機構を含むものとされ、請求項5に係る乗り物においては、前記リンク機構が、(a)前記左側ペダルと右側ペダルとに、それぞれ、相対回動不能に、前記第1軸線より外側へ延び出た姿勢で設けられた左側アーム部および右側アーム部と、(b)コの字形を成し、前記左側アーム部と前記右側アーム部とを、それぞれ、相対回転可能に連結するロッド部とを含むものとされる。
それらペダルを、それぞれ、少なくとも、第1軸線回りに左右方向に回動可能に保持するペダル保持装置と、
前記左側ペダルと前記右側ペダルとを互いに連動する状態で機械的に連結する連結装置と
を含むことを特徴とするペダル操作装置。
本項に記載のペダル操作装置においては、左側ペダル、右側ペダルの各々が、第1軸線回りに左右方向に回動可能とされる。また、一対のペダルは、各々の左右方向の回動が、互いに連動する状態で連結される。その結果、連結されない場合に比較して、運転者の操作フィーリングを向上させることができる。
また、例えば、左側ペダルと右側ペダルとのいずれか一方と制御対象装置とが機械的に連結されている場合、あるいは、左側ペダルと右側ペダルとの少なくとも一方の操作状態が検出装置により検出され、それによって、制御対象装置が作動させられる場合等には、左側ペダルと右側ペダルとのいずれか一方を操作すればよく、必ずしも両方を操作する必要がない。運転者は、任意で、両方のペダルを操作したり、いずれか一方のペダルを操作したりすることができるのであり、制御対象装置に同じ作動を要求する場合に、複数の態様で操作することが可能となる。
さらに、一対のペダルが機械的に連結されるため、一方のペダルの左右方向の回動を他方のペダルに確実に伝達することができる。
特許文献1,2に記載のペダル操作装置は、いわゆる、作業用車両に搭載されたものである。作業用車両においては、運転者(作業者)は、複数の作業機を作動させるために、複数の操作部材を操作しなければならない。そのため、運転席の周辺には、相当数の操作部材が設けられるのが普通であり、2つの操作部材が互いに連動して連結されると、作動可能な作業機の数は増えないのに、操作部材の数が増え、望ましくない。
それに対して、本項に記載のペダル操作装置においては、2つの操作部材の操作が連動する状態で連結される。左足の操作と右足の操作とが連動すれば、運転者の操作フィーリングを向上させることができ、操作性を向上させることができるのである。
「第1軸線」は、ペダルの踏面に平行な向きで設けられる。ここにおいて、「平行な向き」とは、踏面を規定する面と幾何学的に平行な向き、あるいは、踏面を規定する面との傾斜角度が設定角度以下である向きをいう。設定角度は、例えば、25度以下、20度以
下、15度以下、10度以下、5度以下とすることができる。また、第1軸線が踏面に対して傾斜する向きで設けられる場合においては、前方に進むにつれて踏面との間隔が大きくなる向きに傾斜しても小さくなる向きに傾斜してもいずれでもよいが、踏面との間隔が大きくなる向きに傾斜する方が運転者は操作し易い。
「第1軸線」は、ペダルの踏面、あるいは、踏面と反対側の面である裏面から設定距離だけ隔てて設けても、踏面あるいは裏面に接して、あるいは、ペダルの内部に設けてもよい。
設定距離だけ隔てて設ける場合には、第1軸線を、ペダルの回動に伴うペダルの踏面上の1点{中立状態(非操作状態)において、回動中心からの距離が最短の点}と回動中心との間の左右方向の距離の変化が小さい位置に設けることが望ましい。左右方向の距離の変化は、ペダルの回動中心とペダルの踏面あるいは裏面との間の距離をRとし、回動許容角度範囲を±θ0とした場合に、Rsinθ0となる。この左右方向の距離の変化が小さい
場合においては、大きい場合より、ペダルの左右方向の回動操作を安定して行うことができ、操作し易くなる。また、第1軸線を、ペダルの回動に伴うペダルの踏面上の前記点の高さの変化が小さい位置に設けることが望ましい。高さの変化は、R(1−cosθ0)と
なる。この高さの変化が小さい場合においては、大きい場合より、ペダルを同じ角度だけ回動させる場合に、運転者の操作ストロークを少なくすることができ、操作負担を軽減させることができる。また、ペダル操作装置の設置スペースが小さくて済むという利点もある。これらの事情を考慮して、距離Rを、100mm以下、70mm以下、50mm以下等とすることが望ましく、0(踏面あるいは裏面に接した状態あるいはペダルの内部にある状態)とすればさらに望ましい。
「左右方向」は、運転席の前方にペダル操作装置が設けられた場合、運転者の左方、右方であり、「前後方向」は、運転席の前方、後方であり、運転席の前後方向、ペダル操作装置の前後方向は一致することがある。また、ペダル操作装置が乗り物に搭載された場合において、その乗り物の前後方向と一致することもある。
「左右方向の回動」とは、ペダルの左側の部分と右側の部分とが相対的に上下する回動をいう。左側の部分が右側の部分より下がる回動と、右側の部分が左側の部分より下がる回動との両方を含むとは限らない。
また、ペダル操作装置が乗り物に搭載された場合において、「踏面」、「第1軸線」は、それぞれ、乗り物の定常状態において、水平な姿勢(路面に平行な姿勢)で設けても、水平面に対して傾斜した姿勢で設けてもよい。
(2)前記左側ペダルの第1軸線と、前記右側ペダルの第1軸線とが、当該ペダル操作装置において、前方へ進むにつれて、それらの間隔が大きくなる姿勢で配設された(1)項に記
載のペダル操作装置。
一対のペダルのそれぞれの第1軸線は、互いに、前方へ進むにつれて間隔が大きくなる姿勢で設けられる。換言すれば、一対の第1軸線は、前方が広がる「ハ」の字形、「V」の字形に配設される。
また、第1軸線が、ペダルの回動操作に伴うペダルの踏面と回動中心との間の左右方向の距離の変化が小さい状態で設けられる場合には、運転者が一対のペダルを操作する場合に、「かかと」が、ほぼ第1軸線上に位置し、親指の付け根が一対のペダルの第1軸線より内側に位置する。その結果、踏面の第1軸線より内側の部分に踏力を加えて、ペダルの内側が下がる向きの回動操作が容易となる。また、「かかと」がほぼ第1軸線上に位置すれば、左右方向の回動操作を安定して行うことができる。
なお、一対の第1軸線の成す角度は、5度以上45度以下とすることが望ましく、10度以上、15度以上、20度以上としたり、40度以下、35度以下、30度以下、25度以下としたりすることができる。さらに、15度以上35度以下とすることが望ましく、特に、20度以上30度以下、23度以上28度以下とすることが望ましい。
(3)前記一対のペダルの第1軸線が、それぞれ、そのペダルの踏面の左右方向の中線より外側に設けられる(1)項または(2)項に記載のペダル操作装置。
一対のペダルは、主として、第1軸線の回りに内側の部分が下がる向きに回動操作される。その場合に、非操作状態(中立位置)において、第1軸線より内側の部分の面積が第1軸線より外側の部分の面積より大きくされれば、内側の部分が下がる向きの回動操作が容易となる。
また、小さな力で大きなモーメントを出せるため、ペダルを確実に回動させることができる。
(4)前記ペダル保持装置が、さらに、前記左側ペダルと前記右側ペダルとを、それぞれ、前記第1軸線と交差する向きに延びる第2軸線回りに回動可能に保持する2軸回動可能保持部を含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載のペダル操作装置。
第1軸線のみならず、第2軸線回りにも回動可能とすれば、一対のペダルを複数の態様で操作することが可能となる。その結果、例えば、一対のペダルの操作状態に応じて制御対象装置が作動させられる場合に、一対のペダルの操作によって、複数の種類の指令を出力することが可能となる。
(5)前記連結装置が、前記左側ペダルと前記右側ペダルとのいずれか一方の前記第1軸線回りの、そのペダルの内側が下がる回動を、他方のペダルの前記第1軸線回りの、そのペダルの外側が下がる回動に伝達するリンク機構を含む(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載のペダル操作装置。
(6)前記リンク機構が、前記一方のペダルの回動を、その回動角度を小さくして他方のペダルに伝達する(5)項に記載のペダル操作装置。
(7)前記リンク機構が、(a)前記左側ペダルと右側ペダルとに、それぞれ、相対回動不能に、前記第1軸線より外側へ延び出た姿勢で設けられた左側アーム部および右側アーム部と、(b)コの字形を成し、前記左側アーム部と前記右側アーム部とを、それぞれ、相対回転可能に連結するロッド部とを含む(6)項に記載のペダル操作装置。
本項に記載のリンク機構はいわゆる台形リンク機構である。一方のペダルの内側の部分を下げる回動操作が行われた場合に、その回動は他方のペダルに伝達され、他方のペダルの外側の部分が下がる。この場合に、他方のペダルの第1軸線回りの回動角度が一方のペダルの回動角度より小さくされる。アーム部は、ペダル、あるいは、ペダルと相対回動不能な部材に取り付けられる。
なお、第2軸線回りの回動も連動して連結することも可能である。
(8)前記ペダル保持装置が、前記左側ペダルと前記右側ペダルとにそれぞれ対応して設けられ、左側ペダルと右側ペダルとをそれぞれ右回りと左回りとのいずれか一方に付勢する
付勢手段を含む(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載のペダル操作装置。
本項に記載のペダル操作装置においては、左側、右側のペダルの各々が、右回りと左回りとの一方の向きに回動操作されると、それに伴って反力が付与される。
左側ペダルと右側ペダルとが(5)項に記載のように連結されている場合には、一方のペ
ダルが、そのペダルに対する付勢力の向きと逆の向きに回動操作されると、他方のペダルに対する付勢力を受ける。すなわち、いずれかのペダルが、中立位置からいずれの向きに回動操作されても、その操作向きに抗する向きの付勢力を受けるのである。この場合には、一対のペダルの各々に、左回りと右回りとに、それぞれ付勢する付勢手段を2つずつ設けなくても、一方の向きの回動を付勢する1つずつの付勢手段を設ければ、一対のペダルの各々が、左右いずれの方向に回動操作されても反力を付与することができる。
付勢手段は、例えば、ペダルあるいはペダルと相対回動不能な部材とペダル保持装置の本体との間に設けられたスプリングとすることができる。
(9)当該ペダル操作装置が、前記ペダルの前記第1軸線回りの回動を阻止するロック装置を含む(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のペダル操作装置。
ロック装置は、ロック作用位置とロック解除位置との間で移動可能な可動部材を含む。可動部材は、直線的に前進・後退可能に設けられたものであっても、回動可能に設けられたものであってもよく、運転者の操作によって、ロック作用位置とロック解除位置とに切り換え可能なものとすることが望ましい。
(10)前記ロック装置が、(a)回動軸線の回りに回動可能なアーム部と、(b)そのアーム部に取り付けられたロック部材と、(c)前記アーム部を回動させる駆動装置であって、(i)アーム部と相対回動不能に設けられたプーリと、(ii)プーリに巻き掛けられたケーブルであって、一端部が、運転者によって操作可能な操作部材に係合させられ、他端部が、前記ペダル保持装置本体に付勢手段を介して取り付けられたケーブルとを備えた駆動装置とを含む(9)項に記載のペダル操作装置。
ケーブルには、運転者の操作部材の操作によって引張力が加えられたり、スプリングのによって引張力(弾性力)が加えられたりする。このように、ケーブルに加えられる引張力の向きを変えることにより、プーリの回転方向を変えることができる。アーム部は、ロック作用位置からロック解除位置に回動させられたり、ロック解除位置からロック作用位置に回動させられたりする。本項に記載のペダル操作装置においては、アーム部とロック部材とによって可動部材が構成される。
(11)当該ペダル操作装置が、(a)前記一対のペダルのうちの少なくとも一方の、前記第
1軸線回りの回動角度を検出する回動角度検出装置と、(b)前記一対のペダルの各々に加
えられた踏力を検出する踏力検出装置との少なくとも一方を含む(1)項ないし(10)項のい
ずれか1つに記載のペダル操作装置。
踏力検出装置は、ペダルの第2軸線回りの回動を利用して踏力を検出するものとすることができるが、踏面に加えられる力を検出するものとすることもできる。
検出装置によって検出されたペダルの回動角度や、ペダルに加えられた踏力に基づいて、制御対象装置を電気的に制御することができる。
そのペダルを、第1軸線回りに左右方向に回動可能、かつ、その第1軸線と交差する第2軸線回りに前後方向に回動可能に保持するペダル保持装置と
を含むことを特徴とするペダル操作装置。
本項に記載のペダル操作装置においては、少なくとも1つのペダルが、第1軸線回りと、第2軸線回りとにそれぞれ回動可能に保持される。また、本ペダル操作装置は、少なくとも1つのペダルを含むものであり、必ずしも、左側ペダル、右側ペダルの一対のペダルを含むものとする必要はない、
本項に記載のペダル操作装置には、(1)項ないし(11)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
(13)乗り物を操作する運転者によって操作可能な少なくとも1つのペダルと、そのペダルを、第1軸線回りに左右方向に回動可能に保持するペダル保持装置とを含むペダル操作装置と、
そのペダル操作装置の前記ペダルの操作状態に応じて乗り物のボディーを路面に対して傾斜させる傾斜装置と
を含む乗り物。
傾斜装置は、(a)ペダルに機械的に連結され、ペダルの左右方向の回動操作により、ボディーを傾斜させるものであっても、(b)ペダルの操作状態を検出する検出装置を設け、検出装置によって検出された操作状態に応じてボディーを傾斜させるものであってもよい。傾斜装置は、ボディーを乗り物の横方向に傾けるものであっても、前後方向に傾けるものであってもよい。
本項に記載の乗り物のペダル操作装置には、(1)項ないし(11)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(14)乗り物を操作する運転者によって操作可能なペダルと、そのペダルを、第1軸線回りに左右方向に回動可能に保持するペダル保持装置とを含むペダル操作装置と、
そのペダル操作装置の前記ペダルの操作状態に応じて乗り物の操舵装置,駆動装置および制動装置のうちの少なくとも1つを制御する走行状態制御装置と
を含む乗り物。
ペダルの操作状態に基づけば、乗り物の旋回状態、駆動状態、制動状態を制御することができる。
本項に記載の乗り物のペダル操作装置には、(1)項ないし(11)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
図1,2において、乗り物は、ボディー10と、転舵車輪である1つの前輪12と、駆動輪である一対の左右後輪14,16とを含む。ボディー10には、乗車部としてのシート20が1つ設けられ、シート20の前方にはペダル操作装置22が設けられる。
ペダル操作装置22は、前輪12の左右両側にそれぞれ設けられた左側ペダル24と右側ペダル25とを含む。左側、右側ペダル24,25は、本実施例においては、姿勢指示操作部材である。
また、ボディー10のシート20の中間部に対応する部分の左右両側には、一対のグリップ操作装置(左側グリップ操作装置、右側グリップ操作装置)26,28(図10参照)が設けられる。
なお、乗り物は、重心高・トレッド比、重心高・ホイールベース比が、0.95以上、0.9以上、0.85以上、0.8以上のものとすることもできる。
このように、当該乗り物においては、前輪12が1つであるため、2つとする場合より、小型化を図ることができる。
左右駆動輪14,16には、駆動・制動装置(駆動・制動アクチュエータ)40,42が設けられる。駆動・制動装置40,42は、互いに構造が同じものであり、駆動用モータ44,減速機46、図示しない蓄電装置等を含む。左右駆動輪14,16には、駆動用モータ44が減速機46を介してそれぞれ接続される。駆動用モータ44の制御により、左右駆動輪14,16に付与される駆動力や、回生制動力が制御される。本実施例においては、左右駆動輪14,16に付与される駆動力、制動力が、それぞれ、別個独立に制御され得る。
上下方向移動装置50,52は、互いに構造が同じものであり、図3,4に示すように、ボディー10に固定されたフレーム58と、フレーム58に固定され、上下方向に延びる一対のガイド部材60,62と、ガイド部材60,62に沿って相対移動可能に取り付けられた車輪保持部材64と、上下動用モータ66と、その上下動用モータ66の駆動を車輪保持部材64に伝達する駆動伝達装置68と、ボディー10(フレーム58)と車輪保持部材64との間に設けられたサスペンションスプリング70等とを含む。
車輪保持部材64には、車輪14,16に接続された駆動・制動装置40,42がそれぞれ保持される。車輪保持部材64がガイド部材60,62に沿って上下方向に相対移動させられると、車輪14,16と駆動・制動装置40,42とが一体的にボディー10(フレーム58)に対して相対的に上下方向に相対移動させられる。車輪保持部材64は、一対のガイド部材60,62にそれぞれ係合させられた一対の係合部71,72を含む。
駆動伝達装置68は、減速機73,ボールねじ機構74等を含み、ボールねじ機構74は、ガイド部材60,62と平行に伸び、フレーム58に相対回転可能かつ軸方向に相対移動不能に取り付けられたねじ部材76と、そのねじ部材76に螺合させられたナット部材78とを含む。ナット部材78が車輪保持部材64に上下方向に相対移動不能に取り付けられる。
上下動用モータ66の回転が減速機73を介してボールねじ機構74のねじ部材76に伝達される。そして、ボールねじ機構74によって回転運動がナット部材78の直線運動に変換されて、車輪保持部材64に伝達される。駆動伝達装置68は運動変換装置でもある。
また、電磁クラッチ80の作動により、上下動用モータ66に電流が供給されなくても、車輪14,16のボディー10に対する相対位置(車輪保持部材64のガイド部材60,61に対する相対位置)が保持される。前述の上下動用モータ66,減速機73,電磁クラッチ80等を合わせてモータユニット81と称することができる。
さらに、サスペンションスプリング70が車輪保持部材64とボディー10(フレーム58)との間に設けられるため、車輪保持部材64とボディー10との間の距離に応じた弾性力が付与され、上下動モータ66の出力を低減することができる。
また、構造的には、車輪保持部材64あるいは車輪保持部材64に保持された駆動・40,42等がフレーム58等に当接する範囲内で、車輪保持部材64をボディー10に対して上下方向に相対移動させることができるが、本実施例においては、この構造で決まる範囲に制限を加え、この範囲より狭い予め定められた範囲(上方、下方の移動限度で決まる範囲より狭い範囲である)内において、相対移動が許容される。
上下方向移動装置50,52は、図2に示すように、ボディー12の幅方向の左右両側に設けられるが、左側上下方向移動装置50のガイド部材60,62と右側上下方向移動装置52のガイド部材60,62とは、互いに平行な姿勢で設けられる。その結果、車輪14,16は、互いに平行にボディー10に対して上下方向に相対移動させられる。本実施例においては、予め定められたゼロ点から車輪14,16のボディー10に対する上方の相対位置(バウンド側の相対位置)を正の値で表し、下方の相対位置(リバウンド側の相対位置)を負の値で表す。バウンド側に移動すると車高が低くなり、リバウンド側に移動すると車高が高くなる。ゼロ点は、上下方向移動装置50,52の上述のストローク可能な範囲の中点としたり、サスペンションスプリング70等によって構造的に決まる点としたりすることができる。
また、車輪14,16がボディー10にリンク機構を介して保持され、車輪14,16のボディー10に対する相対位置が調整される構成とすることもできる。
さらに、本実施例においては、車輪14,16のボディー10に対する相対移動が、構造的に決まるストロークで決まる範囲より狭い範囲で許容されるようにされていたが、構造的に決まる範囲で許容されるようにすることもできる。
ペダル回動機構100,102は、互いに同じ構造を成したものであり、ペダル操作装置22の前後方向の中心線Aに対して互いに対称とされる。左側ペダル24,右側ペダル25も同様に、中心線Aに対して互いに対称とされ、第1軸線BL、BR、第2軸線CL、CRの回りにそれぞれ回動可能とされる。一対のペダル24,25は、連結装置104によって、第1軸線BL、BRの回りの回動が連動する状態で連結される。また、ペダル24,25の回動操作は、ロック装置106の作動により、許可されたり、阻止されたりする。
ペダル回動機構100は、第1軸部材110,第2軸部材112,押圧板114,コイルスプリング116,ダンパ118等を含む。
第1軸部材110は、第1軸線BLと平行に延びたものであり、押圧板114に、軸方向に隔たって設けられた一対の軸受け122,123によって、相対回転可能に取り付けられる。第1軸部材110には、軸方向に隔たって相対回転不能にフランジ124,125が取り付けられ、そのフランジ124,125にペダル24が相対回動不能に取り付けられる。ペダル24は、第1軸部材110と一体的に第1軸線BLの回りに回動可能とされる。第1軸部材110と押圧板114との間には、図7に示すように、第1軸部材110の回転角度を検出する回転角度検出装置としてのポテンショメータ130が設けられ、ペダル24の左右方向の回動(左回りの回動、右回りの回動)に起因する第1軸部材110の押圧板114に対する相対回動角度が検出される。
第2軸部材112は、第2軸線CLと平行に、第1軸部材110と交差する向きに延びる。第2軸部材112は、本体98に、軸方向に隔たって設けられた一対の軸受け126,127を介して相対回転可能に取り付けられる。第2軸部材112には、相対回転不能に押圧板114が取り付けられる。押圧板114は、第2軸部材112と一体的に回動可能とされるが、回動可能な角度はわずかである。
押圧板114と本体98との間の第2軸部材112の両側(後方側、前方側)には、それぞれ、図7に示すように、圧力センサ128、129が設けられる。圧力センサ128,129は運転者によってペダル24に加えられた踏力を検出するものであるが、押圧板114が第2軸線CLの回りに相対回動可能に設けられるため、正確に踏力を検出し得る。
本実施例においては、一対のペダル24,25が互いに連結され、かつ、左側のペダル回動機構100のコイルスプリング116と、右側のペダル回動機構102のコイルスプリング116とが、ペダル24,25の中立位置において、ストロークが0となるように付勢された状態で設けられる。そのため、ペダル24,25に加えられた踏力が除かれると、これら一対のコイルスプリング116により正確に中立位置に戻される。
一方、第1軸部材110の後端部には、相対回転不能に回動伝達部材132が設けられ、回動伝達部材132を介して第1軸部材110の回動がダンパ118に伝達される。ダンパ118により、ペダル24の第1軸線BLの回りの回動に伴って抵抗が加えられる。
換言すれば、左右のペダル24,25は、アーム部134,ロッド142,継ぎ手140,144を含むリンク機構によって連結されることになる。ロッド142は、本体98の下方を通って、延びている。
図9に示すように、リンク機構(連結装置)104において、ロッド142の有効長さLP2は、一対の第1軸部材110,110の間隔LP1より長く、台形リンクとされている。そのため、ペダル24の第1軸線BLより内側の部分が下がる向きの回動は、ペダル25の第1軸線BRの外側の部分が下がる向きの回動に連動するが、外側の回動角度θfoot′は、内側の回動角度θfootより小さくなる。
このように、本項の構成によれば、一対のペダル24,25の各々に、内側が下がる回動と外側が下がる回動とに、付勢力を付与するコイルスプリングをそれぞれ設けなくても、一対のペダル24,25の各々が、いずれの向きに回動操作されても反力を付与することができる。ただし、第1軸線BLより外側の部分が下がる向きの回動操作がされる頻度は低いと考えられる。
そのため、運転者がペダル24,25に足をおいた場合に、かかと(回動中心)が第1軸部材110上に位置し、ペダル24,25の第1軸部材110の内側の部分の前部に親指の付け根が位置する。かかとが第1軸部材110上に位置するため、ペダル24,25の回動操作を容易に行うことができる。
また、ペダル24,25の回動操作に際して、膝がボディー12の外側に飛び出すことを回避することができる。
さらに、親指の付け根に大きな力が加わるのが普通であるため、第1軸部材110の内回りの回動が容易とされる。
また、第1軸線BL、BRは、それぞれ、ペダル24,25の横方向の中央部より外側に配設されている。その結果、第1軸線BL、BRより内側の部分の面積が外側の部分の面積より大きくされ、内側の部分が下がる向きの回動操作が容易とされる。小さい踏力で大きなモーメントを生じさせることができるのであり、ペダル24,25を確実に回動さえることができる。
符号157,158はストッパを示し、ストッパ157,158にペダル24の裏面が当接することによりペダル24の回動限度が規定される。
ロック作動部160〜163は、基本的には、互いに同じ機構を備えたものであり、本体98に垂直に設けられた回動軸164と、その回動軸164の回りに相対回動可能なアーム165と、そのアーム165に取り付けられたロック部材166と、アーム165と相対回転不能なプーリ167とを含む。
図5のロック作用位置R1において、ロック部材166がペダル24の下方に位置するため、ペダル24の回動が阻止される。ロック解除位置R2において、ロック部材166がペダル24から外れてカバー168の下方に位置するため、ペダル24の回動が許可される。カバー168は、一対のペダル24,25の間に設けられ、フットレストとしても機能する。
ケーブル173に、運転者の操作に起因してスプリング174の弾性力に抗して引張力が加えられると、ロック作動部161において、アーム165が回動軸164の回りにロック作用位置R1からロック解除位置R2まで反時計方向に回動させられる。この回転は、連結ロッド170を介してロック作動部160に伝達され、ロック作動部160においても同様にアーム165が反時計回りに、ロック作用位置R1からロック解除位置R2まで回動させられる。ロック作動部162においては、逆に、時計方向にアーム165がロック作用位置R1からロック解除位置R2まで回動させられる。この回転が、連結ロッド172を介してロック作動部163に伝達され、ロック作動部163においても同様にアーム165が時計回りに、ロック作用位置R1からロック解除位置R2まで回動させられる。
運転者の操作に起因して加えられた引張力が緩められると、ケーブル173は、スプリング174の弾性力により反対向きに引っ張られる。ロック作動部162において、アーム165が、反時計回りにロック解除位置R2からロック作用位置R1まで回動させられる。ロック作動部163においても同様である。ロック作動部161においては、アーム165が時計回りにロック解除位置R2からロック作用位置R1まで回動させられるが、ロック作動部160においても同様である。ロック作動部161,160とロック作動部162,163とは、左右対称に設けられるため、ロック作用位置R1とロック解除位置R2との間の回動の向きが逆になる。
このように、本実施例においては、4つのロック作動部160〜163が、互いに連結されているため、互いに連動して、ロック作用位置R1とロック解除位置R2とに切り換えられる。その結果、駆動装置169を共有することが可能となり、それぞれに設ける必要がない。その分、部品点数を少なくし、コストダウンを図ることができる。
ペダル24,25の回動が許可された状態においては、運転者は、姿勢指示部材としてのペダル24,25の操作が可能となり、後述するように、ペダル24,25の操作状態に応じて乗り物の姿勢を制御することができる。
また、同様に、一対のペダル24,25は連結されているため、ダンパ118もいずれか一方に設ければよい。
さらに、ペダル24,25を第2軸線CL、CRの回りに回動可能とすることは不可欠ではない。圧力センサを歪みゲージとすれば、ペダル24,25自体に設けて、踏力を検出することができる。
また、第1軸線BL、BR、第2軸線CL、CRは、互いに直交する向きで設けてもよい。さらに、第1軸線BL、BRもペダル操作装置22の中心線Aと平行に設けても、ペダル24,25の横方向の中央部に設けてもよい。
左側、右側のグリップ操作装置26,28は、構造が互いに同じものであり、左右対称に配置される。以下、グリップ操作装置28について説明する。
グリップ操作装置28は、図11、12に示すように、グリップ200と、グリップ200を保持するグリップ保持装置(兼用部材保持装置)220とを含む。
グリップ操作装置26,28のグリップ200は、互いに、左右対称な形状を成したものであり、それぞれの内側にスイッチ202、204が設けられる。グリップ200は、運転者によって、親指が内側に、人差し指から小指が外側に位置する状態で把持される。外側には湾曲部と窪み部とを含み、窪み部に薬指が位置するようにされ、回動操作が容易にされている。また、スイッチ202、204は親指で操作可能な位置に設けられる。
グリップ200を保持するグリップ基部223は、図11に示すように、第2軸線D2に平行な第2軸部材225の回りに、操作装置本体224に対して相対回転可能に保持される。
また、グリップ基部223には、相対回動不能かつ第1軸線D1回りに相対回転可能に第1軸部228が保持される。第1軸部228は、回転伝達部230にユニバーサルジョイント222を介して連結される。グリップ基部223が、第2軸線D2の回りに、操作装置本体224に対して相対回動しても、その位置において、第1軸部228の第1軸線C1の回りの回動が、ユニバーサルジョイント222を介して回転伝達部230に伝達される。
グリップ200は第1軸部228に第1軸線D1回りに相対回動可能に保持される。したがって、グリップ200の第1軸線D1回りの回動操作により、第1軸部228が回転させられ、回転伝達部230が回転させられることになる。
なお、図11に示すように、第2軸線D2は、ボディー10の幅方向に平行に延び、第1軸線D1は、グリップ200の中立位置において、第2軸線D2に直交し、ボディー10の前後方向線に対して多少傾いた姿勢とされる。
操作装置保持装置194,196は、互いに構造が同じであるが、左右対称に構成される。以下、右側のグリップ操作装置28を保持する右側の操作装置保持装置196について説明する。
操作装置本体244は、操作装置保持装置196によってボディー10に対して相対移動可能に取り付けられる。
図13に示すように、操作装置保持装置196は、ボディー10に固定されたボディー側部材250と、そのボディー側部材250に取り付けられた2つのスプライン軸252,254とそのスプライン軸252,254に嵌合されたナット部材256,258とを含む。スプライン軸252,254は、第3軸線D3と平行に設けられ、第3軸線D3と平行に延びた複数の歯部を有する。一端部には、固定的に、それぞれプーリ260,261が設けられる。また、ナット部材256,258にも、それぞれ一端部に固定的にプーリ262,263が設けられる。第3軸線D3は、ボディー10に対して、前方に進むにつれて上方にいく向きに傾斜した姿勢で設けられる。
それに対して、操作装置本体224には、スプライン軸252,254に対向する溝部270,272と、ナット部材256,258に対向する溝部274,275とが設けられる。溝部270,272は、スプライン軸252,254より大径のものであり、スプライン軸252,254の歯部と係合するのではない。同様に、溝部274,275は、ナット部材256,258より大径とされている。そのため、ボディー側部材250に操作装置本体224が、スプライン軸252,254が溝部270,272に嵌合され、ナット部材256,258が溝部274,275に嵌合された状態で、取り付けられた状態において、ナット部材256,258、スプライン軸254,254の回転が許容される。
また、ナット部材256,258はスプライン軸252,254より大径とされ、かつ、溝部274,275が溝部270,272より大径とされている。そのため、操作装置本体224がボディー側部材250に取り付けられた状態で、溝部274,275の軸方向の端面により、ナット部材256,258の操作装置本体224に対する第3軸線D3に沿った相対移動が阻止される。
ロック装置278は、ソレノイドを含むものであり、ボディー側本体250に設けられる。ソレノイドへの供給電流の制御により、プランジャ278Pが操作装置本体224の位置決め穴278Hへ挿入されることにより、操作装置本体224の相対移動が阻止され(ロック作用位置)、位置決め穴278Hから後退することにより、相対移動が許容される(ロック解除位置)。プランジャ278Pが位置決め穴278H1に挿入される位置が操作装置本体224の前進端位置であり、位置決め穴278H2に挿入される位置が後退端位置である。ロック装置278は、スイッチ202の操作に基づいて作動させられる。
また、ナット部材256、258が嵌合するスプライン軸252,254のプーリ260,261には、それぞれ、ケーブル284S,284Bが巻き掛けられ、前述の反力付与装置190,192、左側の操作装置保持装置196を経て、左側の操作装置26に至る。
右側のグリップ操作装置28のグリップ200が第1軸線D1回りに回動操作されると、回転伝達部230が回動させられる。回転伝達部230の回動は、ケーブル282Sを介してナット部材256のプーリ262に伝達され、ナット部材256が回転する。ナット部材256の回転とともにスプライン軸252、プーリ260が回転する。その回転がケーブル284Sを介して反力等付与機構190を経て左側の操作装置保持装置194のスプライン軸252に伝達され、ケーブル282Sを介して回転伝達部230に伝達される。回転伝達部230の回動により、第1軸部材228が第1軸線D1回りに回転させられ、左側グリップ200が運転者が操作しなくても第1軸線D1の回りに回動させられる。この場合に、反力等付与機構190は、右側グリップ操作装置28,左側グリップ操作装置26の第1軸線D1回りの回動に対して共通とされるのであり、右側、左側のいずれのグリップ200が第1軸線D1回りに回動操作されても、反力等が付与されるとともに、回動角度が検出される。
この回転伝達は、ナット部材256,258がスプライン軸252,254上のいずれの相対位置にあっても可能である。
なお、回転伝達機構182は、ケーブル284S、プーリ260等によって構成され、回転伝達機構184は、ケーブル284B、プーリ261等によって構成される。
また、グリップ200は、後述するように、操舵指示操作部材、加減速指示操作部材であり、これらの兼用部材である。
操作装置本体224の後退端位置では、ロック装置106において、ケーブル173が引っ張られ、ロック解除位置R2とされる。操作装置本体224の前進端位置では、スプリング174によりケーブル173が引っ張られ、ロック作用位置R1とされる。
また、本実施例においては、グリップ操作装置26,28が左右両側に設けられたが、左右両側に設けることは不可欠ではなく、1つでもよい。
さらに、グリップ200を、加減速指示部材と操舵指示部材とに兼用な部材とする必要は必ずしもなく、別々のものとすることができる。
グリップ200は、図14(a)に示すように、矢印Aに示すように第1軸線C1回り、矢印Bに示すように第2軸線C2回りにそれぞれ回動可能とされるが、図14(b)に示すように、グリップ200の第1軸線C1の回りの、中立位置より運転者の右方向回動が右転舵指示を表し、左方向回動が左転舵指示を表す。本実施例においては、内側に所定の角度(角度は、10〜20度とすることが望ましく、例えば、15°とすることができる。)傾斜した位置が中立位置とされる。また、中立位置からの回動角度θLATが転舵指示角度の大きさに対応する。本実施例においては、便宜的に、右旋回指示方向を正の値とし、左旋回指示方向を負の値で表す。後述するが、転舵車輪12の転舵角度、乗り物の傾斜角度についても同様に、右向きの転舵角度を正の値とし、左向きの転舵角度を負の値とし、右向きの傾斜角度を正の値とし、左向きの傾斜角度を負の値とする。
また、図14(c)に示すように、グリップ200の第2軸線C2回りの、中立位置より前方あるいは下方への回動(以下、前回りの回動と称する)が加速指示を表し、中立位置より上方あるいは後方への回動(以下、後ろ回りの回動と称する)が減速指示を表す。車速が0である場合において後ろ回りの回動角度が設定角度以上(θR)である場合には後退速度指示を表す。また、前回りの回動操作は、加速指示でない場合もあるが、回動角度θLON(θD)に基づいて決まる目標車速が実際の車速より大きい場合には、駆動装置40,42による加速が行われることになるため、加速指示であると称することができる。後ろ回りの回動角度θLON(θB)は、要求減速度に対応する。なお、中立位置は、弱制動加速を指示する状態とされる。いわゆるエンジンを搭載した車両のエンジンブレーキ状態であり、本乗り物において、駆動用モータ44の回転速度より駆動車輪14,16が路面から回転させられる場合の回転速度の方が大きい場合には、駆動車輪14,16に制動力が加えられ、駆動車輪14,16の回転速度の方が小さい場合には、駆動力が加えられる状態である。本実施例においては、便宜的に、前回りの回動角度が正の値とされ、後ろ回りの回動角度が負の値とされる。
本実施例においては、乗り物が、基準姿勢(基準位置)より幅方向線に対して後部が前部に対して下がる姿勢(後傾姿勢)である場合の傾斜角度を正の値で表し、前傾姿勢となる場合の傾斜角度を負の値で表す。後輪14,16をバウンド側に移動させて、後傾姿勢とされるが、本実施例においては、バウンド側のストロークが正の値とされ、リバウンド側のストロークが負の値とされる。
インジケータ320は、乗り物の図示しないメインスイッチをON・OFFの状態を表示するものであり、例えば、ONの場合に点灯し、OFFの場合に消灯するランプを含むものとすることができる。なお、後述するように、コンフォートモードであるかパフォーマンスモードであるかを区別して表示するインジケータ、リーン角が不足しているか否かを報知するインジケータ等も設けることができる。
また、制御装置300からモータ制御装置322,324,326に、モータの回転トルク指令(回転速度指令)が出力され、モータ制御装置322,324,326から制御装置300に、モータの作動状態(車輪の状態)を表す情報が供給される。
コンフォートモードは、ペダル24,25の操作が考慮されることなくボディー10の姿勢が制御されるモードであり、パフォーマンスモードは、ペダル24,25の操作に基づいて制御されるモードである。したがって、運転者はコンフォートモードを選択する場合には、操作装置本体224を後退端位置に移動させる。この状態では、ペダル操作装置22において、ペダル24,25の操作が阻止される。また、パフォーマンスモードを選択する場合には、操作装置本体224を前進端位置に移動させる。それによって、ペダル操作装置22において、ペダル24,25の回転が許可されるのである。
記憶部には、図23〜31のフローチャートで表される複数のプログラム等が格納されている。
まず、全体の作動の流れを図16のブロック図に基づいて簡単に説明する。
目標車速演算部350において、グリップ200の前後方向の回動角度θLON、実際の車速Vsに基づいて目標車速VTが求められ、目標車輪速演算部352において、目標車速VTと目標転舵角度参照値(後述するが、モータトルク演算部に出力される目標転舵角度と区別するために参照値と称する)δTref1とに基づいて左駆動輪14、右駆動輪16のそれぞれの目標車輪速度WTL、WTRが求められる。目標モータトルク演算部354においては、左駆動輪14、右駆動輪16の目標車輪速度WTL、WTR、実車輪速度WCL、WCR等に基づいて駆動用モータ44の目標トルクMWL、MWRが求められる。目標トルクMWL、MWRは、駆動トルクの場合と制動トルクの場合とがある。
求められた目標トルクMWL、MWRを表す情報は、モータ制御装置324に供給される。モータ制御装置324は、駆動用モータ44の作動状態を、実際のトルクが目標トルクに近づくように制御する(PWM信号が出力される)。モータ制御装置324から制御装置300にへは、実際の車輪速度WCL、WCR、車輪14,16に実際に加わる駆動トルク、制動トルクを表す情報等が供給される。
駆動車輪14,16の実際の車輪速度WCL、WCRはエンコーダによる検出値に基づいて取得されるが、回転角速度ωに車輪14,16の半径Rを掛ければ(ω・R)車輪の周速度を取得することができ、それに基づけば乗り物の走行速度を取得することができる。乗り物の走行速度は、以下、単に車速VSと称するが、本実施例において、車速VSは、左右駆動輪14,16の周速度の平均値に基づいて決まる値とされる。車輪速度は、周速度で表しても回転角速度で表してもよく、以下、特にこれらを区別することなく、車輪速度、車速と称する。
目標駆動トルクMδを表す情報は、モータ制御装置322に供給される。モータ制御装置322は、転舵用モータ32の作動状態を、実際のトルクが目標駆動トルクとなるように制御する。モータ制御装置322からは、転舵車輪12の実際の転舵角度δC、転舵車輪12に加わる実負荷を表す情報等が供給される。
また、目標フロント舵角演算部356において求められた目標転舵角度参照値δTref1、δTref2は、目標車輪速度演算部352,目標上下ストローク演算部358に供給される。
目標駆動トルクMHR、MHLを表す情報は、モータ制御装置326に供給される。モータ制御装置326は、実際のトルクが目標トルクに近づくように、上下動用モータ66の作動状態を制御する。モータ制御装置336から制御装置300へは、左右駆動輪14,16のボディー10に対するストロークHCR、HCLを表す情報等が供給される。
横方向の姿勢制御においては、図32(a)に示すように、ボディー10の上下方向を規定する直線Yの路面の法線Zとの成す角度である傾斜角度θLが制御される。この横方向の傾斜角度θLを以下、左右リーン角と称する。左右駆動輪14,16のボディー10に対する上下方向の相対位置を異ならせることにより、ボディー10および車輪14,16が傾く。本実施例においては、前述のように、左側上下方向移動装置50のガイド部材60,62と、右側上下方向移動装置52のガイド部材60,62とが互いに平行に設けられているため、左右輪14,16の回転面の上下方向を規定する直線Ywと法線Zとの成す角度θLと、ボディー12の上下方向を規定する直線YBと法線Zとの成す角度である傾斜角度θLとは、互いに同じ大きさとなる。
また、図32(b)に示すように、左右駆動輪14,16のボディー10に対する相対位置が同じ向きに相対移動させられると、ボディー10の前後方向を規定する直線Xの前後方向を規定する直線X0に対する傾斜角度が変化する。この直線Xの直線X0からの角度である傾斜角度θpitを、以下、ピッチ角(前後リーン角)と称する。
本実施例においては、乗り物のメインスイッチがOFFからONとされた時、乗り物の停止状態、あるいは、定速直進状態を定常状態として、その場合の左右駆動輪14,16のボディー10に対する相対位置を基準位置(前後リーン角0の位置)とする。この定常状態において前後方向を規定する直線が直線X0である。基準位置のゼロ点からの隔たりは、上下ストロークの累積値に基づいて取得することができるが、ストローク限度に達した場合等に修正すれば、基準位置のゼロ点からの隔たりを正確に取得することができる。
一方、グリップ200が後回りに操作された場合には、目標減速度取得部366によって、回動角度θLON(θB)に基づいて目標減速度Gが取得され、その後、目標減速度G(G<0)と実際の車Vsとに基づいて目標車速VT2が目標車速取得部368によって取得され(t秒後の目標車速:VT2=VS+G・t)、取得された目標車速VT2がローパスフィルタ370によって処理された後に、出力される(VT)。また、目標車速VT2から実際の車速VSを引いた値である車速偏差ΔV(VT2−VS)も出力される。
目標転舵角度参照値δTref1と目標車速VTとに基づいて、差動演算部380によって、乗り物が旋回する場合の左右輪14,16の回転速度差が演算され、左車輪14、右車輪16の差動対応目標速度VWTL、VWTRが求められる。
右駆動輪目標車輪速演算部382においては、右駆動輪14の差動対応目標車速VWTRと、目標車速VTとに基づいて右駆動輪14の目標車速WTRが取得され、左駆動輪目標車輪速演算部384においては、左駆動輪16の差動対応目標車速VWTLと、目標車速VTとに基づいて左後輪輪16の目標車速WTLが取得される。取得された目標車速WTL、WTRは、図に示すように、ローパスフィルタ390において処理された後、処理部392において、予め定められた設定値より絶対値が小さい値が除去されて(0とされて)、出力される(WTL、WTR)。
なお、前述のように、目標車輪速演算部382において、右駆動輪16の目標車輪速WTR、左駆動輪14の目標車輪速WTR、実際の右駆動輪16、左駆動輪14の車輪速度WCR、WCLに基づいて、目標モータ駆動トルク演算部354において駆動モータ44の目標駆動トルクMTR、MTRが求められる。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、グリップ200の前後方向の回動角度θLONと実際の車速Vsとに基づいて目標車速VTが求められ、S2において、目標車速VT、目標舵角参照値δTref1から左右駆動輪14,16の目標車輪速WTL、WTRが求められ、S3において、これら目標車輪速WTL、WTRと実際の車輪速度WCL、WCRとから駆動トルクの目標値MWL、MWRが求められ、出力される。
乗り物の直進状態においては、目標車輪速度演算部352から出力される目標車輪速WTL、WTRは同じ大きさになるが、右旋回時には、右駆動輪16の目標車速WTRが左駆動輪14の目標車速WTLより小さくなり、左旋回時には、左駆動輪14の目標車速WTLが右駆動輪16の目標車速WTRより小さくなる。
また、後述するように、本実施例においては、転舵角度の制御が、姿勢制御より遅れて開始される。この場合において、左右駆動輪14、16の回転速度差の制御は、転舵に伴って行われるようにすることが望ましい。それに対して、目標車輪速度演算部352に入力される目標転舵角度参照値δTref1は、遅れを含むデータである。その結果、転舵車輪12の転舵に伴って左右駆動輪14,16に回転速度差が生じることになり、乗り物の旋回性を向上させることができる。また、左右輪14,16に回転速度差を生じさせることにより、乗り物を小回り(旋回半径が小さい旋回)が可能となる。
本実施例においては、制御装置300のうちの目標車速取得部362等により目標車速決定部が構成され、目標減速度取得部366等により目標減速度決定部が構成され、目標モータトルク演算部354、目標車輪速演算部352等により目標値対応駆動・制動制御部が構成される。また、モータ制御装置324等により駆動・制動制御装置が構成される。
その後、第1目標舵角取得部394によって、回動角度θLATと車速Vsとに基づいて目標転舵角度θS1が求められる。目標転舵角度θS1は、回動角度θLATの絶対値が大きい場合は小さい場合より大きくされるが、車速VSが大きい場合は小さい場合より、回動角度θLATが同じであっても、目標転舵角度θS1が小さくされる。
その後、処理部396によって、目標転舵角度θS1がリーン角の余裕量(上下ストロークの余裕量)に基づいてサチュレートされる。左右輪14,16のボディー10に対する相対移動可能なストロークは予め決まっているため、目標転舵角度θS1に対応する姿勢を実現するために制限を越えないように、転舵角度θS1に予め制限が加えられるのである。リーン角余裕量は、リーン角余裕量取得部397において、実際のストロークHCL、HCRと予め定められた制限値とに基づいて取得される。
このように、目標転舵角度は、上下方向移動装置50,52の移動限度内において決められるのであり、暫定的に決められた目標転舵角度θS1に対応する横方向姿勢に制御できない場合には、暫定的に決められた目標転舵角度θS1の絶対値が小さくされるのである。それによって、転舵角度と横方向姿勢とがほぼ対応するようにすることができ、乗り物の旋回安定性を向上させることができる。この意味において、この制御は、フィードフォワード制御であると考えることができる。
前述のように、偏差ΔVの絶対値が大きい場合は小さい場合より大きな駆動力や制動力が加えられるため、それに対応して、前後方向の姿勢制御において、ピッチ角の絶対値が大きくされる。それに対して、旋回中に、前後方向の傾斜角度の絶対値が大きくされるのは望ましくない。そこで、入力(目標転舵角度θS2)が同じであっても、偏差ΔVの絶対値が大きい場合は小さい場合より出力(目標転舵角度θS3)が小さくされるのであり、それによって走行安定性が図られる。
なお、乗算部400の出力値θS3は目標転舵角度参照値δTref2として出力され、ローパスフィルタ402の出力値δT0は目標転舵角度参照値δTref1として出力される。目標転舵角度参照値δTref1は遅れが大きいものであり、目標転舵角度参照値δTref2は遅れが小さいものである。目標転舵角度参照値δTref1は、前述のように、目標車輪速度演算部352に供給され、目標転舵角度参照値δTref2は目標上下ストローク演算部368に供給される。
処理部404においては、入力値δT0(ローパスフィルタ402の出力値)が、伝達関数T1(s)/T2(s)によって処理される。伝達関数は、(T1・s+1)/(T2・s+1)で表され、時定数T1が可変である。
目標転舵角度δT0の微分値s(s=dδT0/dt)が0の場合には、入力値(目標転舵角δT0)がそのまま出力されるが、微分値が0でない場合には、微分値と入力値とに基づいて決まる値(δ0)が出力される。
このように、本実施例においては、目標転舵角度δT0が変化する過渡的な場合(グリップ200が第1軸線回りに回動操作されて、回動角度θLATが変化した場合)には、目標転舵角度δ0は、目標転舵角度δT0の変化の向きとは逆向きに変化し、その後、定常値[変化後の値、図33(a)のδT02}となる。このように、転舵車輪12を、グリップ200の操作の向き(目標転舵角度δT0の変化の向き)に対応する向きとは逆向きに転舵することにより、タイヤに加わる横力の反力によるロールモーメントが生じるが、それを利用して、ボディー10を旋回内側(変化後の旋回方向に対する旋回内側であって、逆向き転舵時の旋回外側)に確実に、速やかに傾けることが可能となる。その結果、スラローム走行や、急旋回等が可能となる。
さらに、目標転舵角度δT0の微分値の絶対値(グリップ200の第1軸線回りの回動角度θLATの操作速度)が大きい場合は小さい場合より逆向きの転舵する場合の転舵角度が大きくなる。その結果、グリップ200の操作速度が大きい場合に、ボディー10を速やかに旋回内側に傾けることができるのであり、運転者の要求を速やかに満たすことができる。
また、目標駆動トルクMδの変化が小さい場合には、電動モータの慣性により、転舵用モータ32の回転状態は変化しない。そのため、微分値が小さく、逆方向に転舵させる場合の転舵角度が小さくなると、それに応じて、目標駆動トルクMδの変化も小さくなる。転舵用モータ32の作動状態は変化せず、逆方向転舵が行われないことになる。すなわち、グリップ200の第1軸線回りの回動操作速度が設定速度より小さい場合には、転舵車輪12は、その操作に対応する向きとは逆向きに転舵されず、設定速度以上である場合に、逆向きに転舵されることになる。
ロールオーバガード制御は、乗り物がロールオーバ状態であると判定された場合に開始され、ロールオーバが収束した場合、ロールオーバガード制御が不要になった場合に終了される。乗り物において、左右、前後のリーン角が制限を受けた場合等に、ロールオーバ状態になることがある。ロールオーバガード制御においては、転舵車輪12の転舵角度の絶対値が小さくされる。
S21において、ロールオーバガード制御中フラグがセット状態にあるか否かが判定される。リセット状態にある場合には、S22,23において、左右駆動輪14,16の上下ストロークHCL、HCRの変化速度からロールレートβ′が推定され、S23において、S22において推定されたロールレートβ′と実際のロールレートセンサ332による検出値βとが比較され、符号が逆である場合(ロールレートの向きが逆である場合)、あるいは、これらの差の絶対値が設定値βsより大きい場合には、ロールオーバ状態であるとされる(ロールオーバガード制御開始条件が満たされたとされる)。
β′×β<0
or
|β′−β|>βs
S24において、ロールオーバガード制御中フラグがセットされ、ロール値がリセットされ、S25以降が実行される。
S27において、目標転舵角度δT0に基づいて、すなわち、運転者よって行われた回避操舵の状態に基づいて、ロールオーバガード制御量δROSが補正される。
目標転舵角度δT0の変化量ΔδT0(今回の目標転舵角度δT0(n)からロールオーバ検出時の目標転舵角度δrを引いた値に基づいて決まる)の絶対値が、ロールオーバガード制御量δROSの絶対値より小さい場合には、運転者による回避操舵が不足し、回避操舵によっては、ロールオーバが抑制されないため、その回避操舵からの不足分がロールオーバガード制御補正量δROとして出力される。
ΔδT0←δT0(n)−δr
|ΔδT0|<|δR0S|
δRO←δROS−ΔδT0
それに対して、運転者によって回避操舵が行われない場合(目標転舵角度T0がロールオーバ判定時の転舵角度と同じである)には、ロールオーバガード制御量δROSがそのまま補正制御量δROとして出力される。
ΔδT0=0
δRO←δROS
δRO←0
運転者による操舵角度の変化量ΔδT0の絶対値が、ロールオーバガード制御量δROSの絶対値以上である場合(|ΔδT0|≧|δROS|)には、ロールオーバガード制御が終了させられる。運転者による回避操舵によってロールオーバが抑制されるからである。また、運転者は、切り返しのためにグリップ200を操作した場合もあり、その場合には、運転者の意図に従って転舵されることが望ましく、ロールオーバガード制御が行われない方が望ましいからである。また、ロールレートの絶対値が設定範囲内の値となり、ロールオーバが収束したと考えられる場合にも終了させられる。
また、ロールオーバガード制御の開始条件が満たされない場合にも、S31において、制御補正量δROは0とされる。
運転者による修正操舵が行われた場合には、運転者による回避操舵によりロールオーバを抑制できるか否かが判定され、Aの場合のように、ロールオーバが抑制できない場合には、その不足分が、ロールオーバガード制御補正量δROとして出力される。Bの場合のように、運転者による回避操舵によりロールオーバを抑制できる場合には、終了条件が満たされたとされて、制御補正量δROは0とされる。
δT←δ0+δRO
ただし、δ0、δROは、互いに符号が逆の値である。
それによって、転舵角度の絶対値が小さくされて(戻されて)、ロールオーバが抑制される。
それに対して、本実施例においては、ロールオーバ状態である場合には、目標転舵角度δT0の絶対値を小さくする向きのロールオーバガード制御補正量δROが出力される。したがって、それにより、逆方向の転舵は行われないことになる。
また、ロールオーバ状態において、運転者が切り返しを目的としてグリップ200の操舵回動操作を行っても、ロールオーバガード制御補正量δROが出力されるため、逆向きの転舵は行われない。しかし、この場合においても、目標転舵角度δT0の変化量ΔδT0の絶対値がロールオーバガード制御量δROSの絶対値以上になれば、ロールオーバガード制御が終了させられるため、運転者のグリップ200の回動操作に応じて目標転舵角度δTが決まり、転舵車輪12が転舵されることになる。
なお、ロールオーバ状態でない場合には、ロールオーバガード制御部406から出力されるロールオーバガード制御補正量δROは0であるため、逆向きの転舵が行われる。
踏力値Pfoot、実際の車速Vs、車速偏差ΔV、目標転舵角度参照値δTref2に基づいて目標ピッチ角度(前後リーン角)演算部410によって目標前後リーン角θTpit1、横G(Gy)が求められ、横G、実際の車速Vs、ペダル回動角度θfootに基づいて目標左右リーン角演算部412によって目標左右リーン角θTL、補正角θHが求められ、目標前後リーン角θTpit1に補正角θHを加えた値が目標前後リーン角θTpitとして要求調整部414に入力される。要求調整部414において、目標前後リーン角θTpit、目標左右リーン角θTLに基づいて左右駆動輪14,16の目標上下ストロークHTL、HTRが求められる。
車速偏差ΔVが正である場合には、駆動により加速度が加えられるため乗り物は後傾姿勢となる。それに対して、目標ピッチ角θT1は、負の値(θT1<0)とされ、左右後輪14,16がリバウンド側に相対移動させられる。また、傾斜角度θT1の絶対値は、車速偏差ΔVが大きくなるにつれて大きくされる。加速度が大きい場合は、慣性力も大きくなるからである。
車速偏差ΔVが負の値である場合には、制動により減速度が加えられるため乗り物は前傾姿勢となる。目標ピッチ角θT1は、正の値(θT1>0)とされ、左右後輪14,16がボディー10に対してバウンド側に相対移動させられる。偏差ΔVの絶対値が大きい場合は小さい場合より傾斜角度θT1が大きくされる。
また、いずれにしても、傾斜角度θT1の絶対値は、実際の車速Vsが大きい場合は小さい場合より小さくされる。車速Vsが大きい場合に、前後方向の傾斜角度が大きくされるのは望ましくないからである。
このように取得された傾斜角度θT1にゲインKp1が掛けられる。
θT2←θT1・Kp1
乗り物に加速度が加えられる場合には、平面視において、重心Gが後方に移動する。それに対して、目標ピッチ角θTpitを負の値として、重心Gを前方に移動させれば、重心Gが円から外れることを回避することができるのであり、重心Gの後方への移動量を小さくすることができる。
Gy←f(δTref2、Vs)
推定された横Gは絶対値取得部424によって処理され(絶対値が取得され)、係数取得部426において、係数Kp2が取得される。係数Kp2は、0〜1の間の値で、横Gの絶対値が小さい場合は大きい場合より大きく、0に近いほど1に近づき、絶対値が大きくなるほど0に近づく値である。横Gの絶対値が大きい場合、すなわち、旋回中であって、旋回半径が小さい場合や走行速度が大きい場合には、前後リーン角を小さくする方が望ましいため、0に近い値とされるのである。また、事情は、右旋回中においても左旋回中においても同じであるため、横Gの絶対値が用いられる。
処理部430において、係数Kp2と目標前後リーン角θT2とをかけ算した値が求められ、目標前後リーン角θT3が取得される。
θT3←θT2・KP2
目標前後リーン角θT3は、処理部432において勾配制限を受け(前回値と今回値との差の絶対値が大き過ぎる場合には、設定勾配とされる)、処理部434においてサチュレートされ、処理部436において車速Vsによって補正されて、処理部437において勾配制限を受けた後に、出力される。車速Vsが非常に小さく、停止しているとみなしうる場合、あるいは、後退している場合には、乗り物を前後方向に傾斜させる必要性が低いため、目標前後リーン角θTpitは非常に小さい値とされる。
なお、車速Vsが停止していると考えられる設定値以下である場合、後退中である場合には、目標前後リーン角を0とすることもできる。
一方、横G推定部422によって推定された横Gは、ローパスフィルタ438によって処理された後、出力され、目標左右リーン角演算部412に供給される。
また、目標転舵角度参照値δTref2は遅れの小さいデータである。
パフォーマンスモードにある場合には、踏力値Pfootにゲイン1を掛け、前後リーン角θxに換算された値が、上述の目標前後リーン角θT3に加えられる。この場合には、ゲインKp1の値がコンフォートモードにおける場合より小さくされる。以下、同様に、踏力値Pfootを考慮した値が処理部434,436,437によって処理されて出力される。
すなわち、コンフォートモードにおいては、基本的には、車速偏差ΔVが0である場合には、目標前後リーン角δTpitも0とされるが、パフォーマンスモードにおいては、車速偏差ΔVが0であっても、ペダル24,25に運転者によって踏力が加えられることにより、目標前後リーン角δTpit1を0以外の値とすることができる。換言すれば、前後方向の姿勢制御を早期に行うことが可能となる。
また、パフォーマンスモードにおいても、踏力値Pfootのみに基づいて目標前後リーン角δTpi1tが求められるのではなく、車速偏差ΔVも考慮される。その結果、運転者によるペダル操作を補助して前後方向の姿勢を適正に制御することができる。
θLA2←Kp3・θLA1
コンフォートモードにおいては、ペダル回動角度θfootに掛けられるゲインが0とされるため、アシスト角θLA2が処理部456によってサチュレートされた値が目標左右リーン角θTLとされて、出力される。
また、パフォーマンスモードにおいては、ポテンショメータ130の検出値が処理部452においてサチュレートされた後、処理部454において、回動角度θfootに基づいて目標左右リーン角θyが取得される。目標左右リーン角θyの絶対値は、回動角度θfootの絶対値が大きいほど大きくされるが、車速Vsが大きい場合は小さい場合より小さくされる。回動角度θfootが大きい場合は運転者によってボディーを大きく左右方向に傾ける意図があるからである。回転角度θfootに基づいて決まる目標左右リーン角θyにアシスト角θLA2が加えられて、サチュレートされた後、目標左右リーン角θTLとして出力される。
ゲインKp3は、パフォーマンスモードにおいてはコンフォートモードにおける場合より、小さい値とされる。
図2に示すように、例えば、右旋回時には、遠心力(横G)により、平面視において、重心Gが左方へ移動する。それに対して、ボディー10を右方(旋回内側)に傾斜させれば、重心Gを右方へ移動させることができ、それによって、重心Gが円から外れないようにすることができる。また、重心Gの左方への移動量を小さくすることができる。
目標左右リーン角演算部412からは、目標左右リーン角θTLと、補正角θHとが出力される。
補正角θHは、左右リーン角の制御に伴う重心高さの変化を是正するための補正値である。左右リーン角の制御、すなわち、左車輪14と右車輪16とのボディー10に対する上下方向の相対位置の変化に伴ってボディー後部の平均的な高さが変化するが、この変化は、前後リーン角の変化に対応する。そこで、補正値は前後リーン角に含まれると考えることができるのである。補正値θHは、横Gの微分値の絶対値が0より大きい場合、あるいは、予め定められた設定値(0より大きい値)以上である場合、すなわち、操舵操作が行われた場合(旋回の方向が変化し、横方向の姿勢を変化させる場合)に出力される。
S31において、設定されたモードがコンフォートモードであるか否かが判定される。コンフォートモードである場合には、S32において、ゲインKp1、Kp3がコンフォートモード用とされ、S33において、主として車速偏差ΔVに基づいて目標前後リーン角θTpitが取得され、横Gに基づいて目標左右リーン角θTLが取得される。そして、S34において、要求調整部414において調整されて、、目標ストロークHTL、HTRが決定されて、目標モータトルク演算部354に出力される。
それに対して、パフォーマンスモードである場合には、S35において、ゲインKp1、Kp3が決定される。パフォーマンスモード用ゲインは、コンフォートモード用ゲインより小さい値である。その後、S36において、車速偏差ΔV、踏力値Pfootに基づいて目標前後リーン角θTpitが決定され、横G、回動角度θfootに基づいて目標左右リーン角θTLが決定される。その後、S34において、要求調整部414において目標ストロークHTL、HTRが決定されて、出力される。
このように、本乗り物において、コンフォートモードとパフォーマンスモードとが、運転者によって選択可能とされているため、乗り物の使い勝手をよくすることができる。
また、パフォーマンスモードが選択された場合には、回動角度θfoot、踏力値Pfootの大きさに応じた制御を行うのではなく、ペダル24,25の操作をトリガとして使用し、回動角度θfootが検出された場合には、運転者がボディー10を左右方向に傾斜させることを望んでいることを表す信号とし、踏力値Pfootが検出された場合には、前後方向に傾斜させる意図があることを表す信号として、目標左右リーン角θy、目標前後リーン角θxを予め定められた設定値とすることもできる。ペダル操作(足による操作)によって、回動角度の大きさや、踏力の大きさを調整することは困難だからである。
要求調整部414においては、原則として、目標前後リーン角θTpitに基づいて目標ストローク(以下、ピッチ対応目標ストロークと称する)HTPR、HTPLが決定され、目標左右リーン角θTLに基づいて目標ストローク(以下、リーン対応目標ストロークと称する)HTLR、HTLLが決定され、これらの和が目標ストロークHTR、HTLとされて、出力される。目標モータトルク演算部354において、目標ストロークHTL、HTRと実ストロークHCL、HCRとに基づいて上下動用モータ66の目標トルクMTL、MTRが演算されて、出力される。
tanθL=2HR/T
が成立する。ここで、Tはトレッドである。前述のように、右旋回時には、ストロークHRは正の値であるため、tanθLが正の値となり、左右リーン角θLも正の値となる。
また、同様に、前後リーン角θpitとストロークHとの間には、ホイールベースをWとした場合に、式
tanθpit=H/W
が成立する。ただし、H=HR=HLである。前述のように、左右後輪14,16をバウンド側に相対移動させた場合(後傾姿勢)には、ストロークHは正の値であるため、tanθpitが正の値となり、前後リーン角θTpitも正の値となる。
したがって、これらの式に基づけば、目標左右リーン角θTL、目標前後リーン角θTpitから目標ストロークを取得することができるのである。
厳密にいえば、前後リーン角は、左右リーン角の影響を受ける。車輪14,16、ボディー10の横方向の傾斜により、タイヤの接地点が変化する。また、ボディー10の横方向の傾斜により法線方向の高さは、ストロークHにcosθLを掛けた値(H・cosθL)となる。これらを考慮して、ピッチ対応目標ストロークを、左右リーン角の影響を受けて補正することができるのである。しかし、ピッチ対応目標ストロークを補正することは不可欠ではない。
以下、本明細書において、「前後リーン角に基づいて取得されたストローク」は、左右リーン角を考慮して取得された値であっても、左右リーン角を考慮しないで取得された値であってもいずれでもよい。
また、本実施例においては、前述のように、姿勢制御が転舵制御より先に行われる。すなわち、グリップ200の第1軸線D1回りの回動操作に伴ってボディー10が旋回内側に傾けられることになる。それに対して、グリップ200の左回りの回動操作が乗り物の左方向旋回の指示に対応し、ボディー10が左側(旋回内側)に傾斜させられる。グリップ200の操作の向きとボディー10の傾斜する向き(運転者が傾斜する向きと同じ)とが同じになるため、運転者のグリップ200の操作フィーリングを向上させ、乗り心地を向上させることができる。また、姿勢制御が転舵制御より先に行われるため、乗り物の走行安定性を向上させ、旋回性を向上させることができる。
さらに、グリップ200の回動操作開始時には、転舵車輪12が前述のように逆方向に転舵される。通常、ボディー10を旋回内側に傾斜させる制御の途中に、転舵車輪12が逆方向に転舵されることになる。その結果、転舵車輪12の逆方向の転舵により生じるロールモーメントと姿勢制御との両方により、ボディー10を速やかに、かつ、確実に旋回内側に傾斜させることが可能となる。
図26(a)のS41において、目標前後リーン角に基づいて左右駆動輪14,16各々のピッチ対応目標ストローク(HTPL、HTPR)が演算され、S42において、目標左右リーン角に基づいて左右駆動輪14,16各々のリーン対応目標ストローク(HTLL、HTLR)が演算される。
S41において、制動時には、ピッチ対応目標ストロークは正の値(バウンド側)となり、駆動が行われる場合には、負の値(リバウンド側)となる。
S42において、右旋回が行われる場合には、右駆動輪16のリーン対応目標ストロークが正の値、左駆動輪14のリーン対応目標ストロークが負の値となり、左旋回が行われる場合には、右駆動輪16のリーン対応目標ストロークが負の値、左駆動輪14のリーン対応目標ストロークが正の値となる。
HSTR←HTPR+HTLR
HTR←HSTR
HSTL←HTPL+HTLL
HTL←HSTL
図2に示すように、制動により重心が前方に移動するのに対して、前後方向の傾斜により重心を後方へ移動させ、右旋回に伴って重心が左方へ移動するのに対して、左右方向の傾斜により重心を右方へ移動させるのである。その結果、重心位置の定常状態における位置からの移動量を小さくすることができる。
右駆動輪16の総目標ストロークHSTRが制限値Lを越えた場合には、S46の判定がNOとなり、S48において、右駆動輪16の目標ストロークHTRが制限値Lとされ、左駆動輪14の目標ストロークHTLは、総目標ストロークHSTLよりストローク不足分LSだけ絶対値が大きい値とされる。
HSTR←HTPR+HTLR
HTR←L
Ls←HSTR−L
HSTL←HTPL+HTLL
HTL←HSTL+Ls=HTPL+(HTLL+Ls)
その結果、図36の(a)に示すように、旋回に対応する目標左右リーン角θTLは実現することができないが、制動に対応する目標前後リーン角θTpitは実現することが可能となる。
tanθTL=2HTLR/T
tanθL=2(HTLR−Ls)/T=tanθTL−2Ls/T
tanθTpit=HTPR/W
また、上式のように、左右リーン角の不足分は、ストロークの不足分Ls(2Ls/T)に対応する大きさとなる。
なお、図36(a)においては、ストロークと制限量Lとの関係をわかり易くするために、ストロークを法線上に模式的に書いた。
このように、制動中で旋回中である場合には、右駆動輪16、左駆動輪14のうち総目標ストロークHSTR、HSTLの大きい方について、制限値L以下であるか否かが判定されるのであり、制限値L以下である場合には、総目標ストロークHSTL、HSTRが目標ストロークHTL、HTRとされて、出力されるが、制限値Lを越えた場合には、総目標ストロークが大きい方については、制限値Lとされ、小さい方については、ストロークが不足分LSだけ大きくされる。
その結果、制動に対応する目標前後リーン角θTpitは満たされるが、旋回に対応する目標左右リーン角θTLは満たされないことになる。このように、制動と旋回との両方が行われた場合には、制動が優先されるのである。
右旋回でも左旋回でもない場合には、S54において、総目標ストロークHSTL、HSTRが目標ストロークHTL、HTRとされて出力される。この場合には、リーン対応目標ストロークHTPL、HTPRは非常に小さい値であるか0であるかのいずれかであるため、目標ストロークHTL、HTRはピッチ対応目標ストロークHTPL、HTPRとほぼ同じであると考えることもできる。
HSTL←HTPL+HTLL
HTL←−L(L>0)
Ls←|HSTL|−L
HSTR←HTPR+HTLR
HTR←HSTR+Ls=HTLR+(HTPR+Ls)
その結果、図36の(b)に示すように、駆動に対応する目標前後リーン角θTpitは実現することができないが、旋回に対応する目標左右リーン角θTLは実現することが可能となる。
tanθTpit=HTPR/W(<0)
tanθpit=(HTPR+Ls)/W=tanθTpit+Ls/W
tanθTL=2HTLR/T
このように、前後リーン角の不足分は、ストロークの不足分Ls(Ls/W)に対応する大きさとなる。
右旋回中でも左旋回中でもない場合、制動中でも駆動中でもない場合には、S66において、総目標ストロークHSTL、HSTRが目標ストロークHTL、HTRとされて、出力される。
これらの場合には、ピッチ対応目標ストロークやリーン対応目標ストロークが、非常に小さい値であったり、0であったりする。
このように、制動、駆動、旋回では、制動の要求が最も重要であり、駆動の要求は満足できなくても差し支えない場合が多い。そこで、本実施例においては、制動、旋回、駆動の順に優先順位が決定され、その優先順位に従って、姿勢制御が行われる。それによって、運転者の要求をできる限り満たしつつ、走行安定性を向上させることができる。
図37に示すように、車輪14,16のボディー10に対する相対位置が中立位置に対して対称となるように制御されると、左右リーン角θLの変化に伴って後輪14,16の平均高さが変化し、それによって、重心高さGHが変化する。重心高さGHは、図38(a)に示すように、左右後輪14,16のボディー10に対する相対位置がいずれも中立位置になった場合(左右リーン角θLが0である場合)に最も高くなり、左右リーン角θLの絶対値の増加に伴って低くなる。重心高さGHの変化は、乗員に不快感を与え、望ましくない。また、特に、切り返し(旋回方向を逆にする操作)が行われた場合には、重心高さGHの変化量が大きいと、ボディー10を速やかに傾けることができないという問題もある。なお、中立位置は、その時点の前後リーン角に応じたストロークで決まる。中立位置は基準位置である場合がある。
そこで、本実施例においては、ボディー10の横方向の姿勢を制御する場合に、左右後輪14、16の平均車高(ボディー10の後輪14,16に対応する部分の車高)が、左右リーン角θLに基づいて変化させられる。平均車高を変化させつつ後輪14,16のボディー10に対する相対位置が、左右リーン角θLが得られるように制御されるのである。ここで、平均車高は、左右リーン角θLが0の場合の車高であり、中立位置に対応する。平均車高(中立位置)は、左右輪14,16の相対位置を同じ向きに変化させることによって変化させることができるのであり、このことは、前後リーン角の変化に対応する。この中立位置の変化に対応する前後リーン角の変化が前述の補正値θHである。
前後リーン角θpitは左右後輪14,16がバウンド側に変化する場合が正の値であり、バウンド側のストロークが大きくなると大きくなるように決められている。すなわち、補正値θHが大きい場合は小さい場合より平均車高の補正値(減少量)が大きくなる。
また、グリップ200の操作速度は、図33(b)が示すように、操作途中(左右リーン角θLの絶対値が小さい場合)において大きく、操作開始、終了時(左右リーン角θLの絶対値が大きい場合)には小さい。
さらに、横Gは、車速VSと、グリップ200の回動角度θLATとに基づいて推定されるため、車速VSが一定の場合には、回動角度θLATの変化速度(操作速度)が大きい場合は小さい場合より、横Gの微分値の絶対値は大きくなる。
したがって、補正値θHを、図22(処理部460)に示すように、横Gの微分値の絶対値(操作速度)が大きい場合は小さい場合より大きくなる値とすれば、図38(b)に示すように、左右リーン角θLの絶対値が小さい場合は大きい場合より大きくなる。
すなわち、左右リーン角θLの絶対値が小さくなるのに伴って中立位置をバウンド側へ移動させつつ、横方向の姿勢制御が行われることになるのであるが、中立位置のバウンド側の移動量(平均車高の減少量)が左右リーン角の絶対値が小さい場合は大きい場合より大きくなる。
それに対して、本実施例においては、目標前後リーン角θTpitに補正値θHが含まれるため、ピッチ対応目標ストロークとリーン対応目標ストロークとの和が目標ストロークとされた場合には、この補正値が考慮されていることになる。その結果、図38(c)に示すように、補正値θHが加えられない場合(図38(a)の場合)に比較して、平均車高の変化を抑制することができ、重心高さGHの変化を抑制することができる。なお、横Gが変化しない場合、すなわち、グリップ200の操舵操作が行われず、左右リーン角(横方向の姿勢)が制御されない場合には、補正値θHも0である。
なお、ブロック図においては、平均高さの補正値が、目標前後リーン角の補正値θHとして取得されるようにされていたが、本フローチャートでは、上下ストロークの補正値hとして取得される場合について記載する。
S81において、目標前後リーン角θTpitに基づいてピッチ対応目標ストロークHTPL、HTPRが取得され、S82において、目標左右リーン角θTLに基づいてリーン対応目標ストロークHTLL、HTLRが取得される。そして、S83において、推定横Gの微分値の絶対値に基づいて補正値hが取得される。そして、左右各輪14,16の総目標ストロークHSTL、HSTRに、補正値hを加えた値(バウンド側の値)が目標上下ストロークHTL、HTRとされて、出力される。
その結果、平均車高の変化が小さくなり、重心高さの変化を小さくすることができる。その結果、切り返しが行われる場合の乗員の不快感を低減させることができ、速やかにボディーを傾けることができる。
その結果、本実施例においては、旋回状態が逆にされる場合には、直進状態から旋回状態にされる場合や、旋回状態から直進状態にされる場合に比較して、重心高さの変化が抑制されることになる。
その場合の一例を図28のフローチャートで表す。
S101において、制動中あるいは駆動中であるか否かが判定される。制動中でも駆動中でもない場合には、S102において、旋回中であるか否かが判定される。旋回中である場合には、S103において、ピッチ対応目標ストロークHTPL、HTPRとリーン対応目標ストロークHTLL、HTLRとの和である総目標ストロークHSTL、HSTRが求められて、目標ストロークHTL、HTRとして出力される。
制動中あるいは駆動中である場合には、S104において、旋回中であるか否かが判定される。旋回中である場合には、S105、106において、目標前後リーン角θTpitが制限されて、目標前後リーン角θTpit′とされる。目標前後リーン角の制限は、例えば、ロール角とロールレートとの少なくとも一方に基づいて行うことができる。旋回中であっても、ロール角が小さく、ロールレートが小さい場合には、前後リーン角を小さくする必要性が低い。その場合には、目標前後リーン角θTpit′は、θTpitと同じ大きさとされる。それに対して、ロール角が大きい場合や、ロールレートが大きい場合には、目標前後リーン角θTpitの絶対値が小さくされる(|θTpit′|<|θTpit|)。そして、目標前後リーン角θTpit′に基づいてピッチ対応目標ストロークHTPL′、HTPR′が取得される。S107において、制限後のピッチ対応目標ストロークHTPL′、HTPR′とリーン対応目標ストロークHTLL、HTLRの和である総目標ストロークHSTL、HSTRが目標ストロークHTL、HTRとして出力される。
このように、旋回中には、前後リーン角が制限されるため、旋回中に前後方向にボディー10が大きく傾斜させられることを回避することができ、旋回安定性を向上させることができる。
また、目標前後リーン角θTpitがロール角、ロールレートとの少なくとも一方に基づいて制限されるため、旋回性の低下を良好に抑制することができる。
また、駆動が行われた場合には、目標前後リーン角θTpitを制限し、制動が行われた場合には、制限されないようにすることもできる。制動が行われた場合には、目標左右リーン角が制限されるようにすることもできる。
さらに、目標前後リーン角θTpitは、ピッチ角、ピッチレートも考慮して制限されるようにすることもできる。
横方向姿勢制御装置のうちの処理部450等により傾斜角度決定部が構成され、処理部458〜460,要求調整部414等により重心高さ変化抑制部が構成され、前後方向姿勢制御装置のうちの目標前後リーン角演算部410のうちの処理部420〜437等により加減速時前後方向傾斜部が構成され、図28のフローチャートで表される旋回中前後リーン制限プログラムを記憶する部分、実行する部分等により傾斜角度抑制部が構成される。
また、図26のフローチャートのS48,53を記憶する部分、実行する部分等により旋回制動時制御部、制限付き横方向姿勢制御部が構成され、S60,65を記憶する部分、実行する部分等により旋回駆動時制御部、制限付き前後方向姿勢制御部が構成され、処理部454,目標モータトルク演算部354等により操作対応姿勢制御部が構成される。
それに対して、本実施例においては、目標前後リーン角θTpitが実現できなかった場合には、その分、駆動トルクMDが抑制され、目標左右リーン角θTLが実現できなかった場合には、その分、目標転舵角度δの絶対値が小さくされる。
本実施例においては、要求調整部414からの出力信号が目標フロント転舵角度演算部384と目標モータトルク演算部354とに供給される。
S121において、ストロークの不足量Lsが0より大きい値であるか否か、すなわち、姿勢制御において、上下方向移動装置50,52のストロークの制限を受けたか否かが判定される。制限を受けた場合には、S122において、制動中であるか否かが判定され、S123において駆動中であるか否かが判定される。
制動中である場合には、S124〜128において、転舵が抑制される。ストロークの不足量LSに対応する横Gの絶対値が取得され、横Gの絶対値に対応する転舵角度の抑制量Δδが取得される。不足量LSが大きい場合は小さい場合より横Gの絶対値が大きな値とされ、横Gの絶対値が大きい場合は小さい場合より転舵角度の抑制量Δδが大きくされる。右旋回である場合には、抑制量Δδ(>0)が目標フロント転舵角度演算部384に出力され、左旋回である場合には、符号を逆にした抑制量Δδ(<0)が出力される。
Δδ←−Δδ
目標フロント転舵角度演算部384においては、目標転舵角度δTから抑制量Δδを引いた値
δT←δT−Δδ
が最終的な目標転舵角度とされる。右旋回であっても左旋回であっても、最終的な目標転舵角度については、絶対値が小さくされる。
MWL←MWL−ΔMD /2
MWR←MWR−ΔMD /2
このように、制動中に旋回が行われる場合にストロークが不足した場合には、目標左右リーン角θTLが実現されなかったが、その分、目標転舵角度δTの絶対値が小さくされるため、横方向姿勢と旋回状態とを対応付けることができる。また、駆動中に旋回が行われる場合にストロークが不足した場合には、目標前後リーン角θTpitが実現されなかったが、前後方向の姿勢に対応して駆動トルクが小さくされる。前後方向の姿勢と乗り物の前後加速度とを対応付けることができ、乗り物の走行安定性を向上させることができる。
本実施例においては、制御装置300のS124〜128を記憶する部分、実行する部分等により転舵戻し部が構成され、S129〜131を記憶する部分、実行する部分等により速度減速部が構成される。
その場合の一例を図30のフローチャートで表す。S141において、上下ストロークの制御において、制限を受けたか否かが判定される(不足分Lsが0より大きいか否かが判定される)。制限を受けた場合には、S142において、駆動中であるか否かが判定される。駆動中である場合には、S143において、ピッチレート、ピッチ角が検出され、S144において、これらピッチレートとピッチ角とに基づいて加速度の制限量が取得される。
ピッチ角、ピッチレートが大きい場合は小さい場合より制限が強くされる。例えば、ピッチ角、ピッチレートが小さい場合には、たとえ、ストロークが不足していても加速度を制限する必要性は低い。それに対して、ピッチ角、ピッチレートが大きくなると、上限値以上の加速度が出力されないようにし、さらに、大きくなると、加速度が小さくされ、それ以上になると、制動が加えられるようにする。S145において、加速度の制限に基づいて駆動トルクの制限が取得され、その駆動トルクの制限に関する情報が目標モータトルク演算部354に出力される。
目標モータトルク演算部354においては、供給された駆動トルク制限情報に基づいて目標モータトルクを取得する。
本実施例においては、制御装置300のS143、144を記憶する部分、実行する部分等により加速度制限部が構成される。ピッチレートセンサ324等により傾斜角度取得装置が構成される。
上記実施例における場合と同様に、S151、152において、ロールオーバガード制御フラグがセットされていない場合に、ロールオーバガード制御開始条件が満たされた場合には、S153において、ロール値がリセットされて、S154において、実ロール角が取得されるのであるが、本実施例においては、S155において、実ロール角に基づいて車速制限が行われる。例えば、実ロール角が大きい場合は小さい場合より車速が小さくされたり、車速の上限値が小さくされたりするのである。そして、S156において、車速の制限情報が、目標車輪速度演算部352に供給される。
このように、本実施例においては、ロールオーバであることが検出された場合に、車速が制限されるため、それによって、走行安定性の低下を抑制することができる。
Claims (6)
- 操舵装置と、駆動装置と、制動装置と、ボディーを路面に対して横方向に傾斜させる傾斜装置とを備えた乗り物であって、
(i)運転者の足によって操作可能な左側ペダルと右側ペダルとからなる一対のペダルと、(ii)それら一対のペダルを、それぞれ、少なくとも、前後方向の中心線に対する傾斜角度が20度以下の角度である第1軸線回りに左右方向に回動可能に保持するペダル保持装置と、(iii)前記左側ペダルと前記右側ペダルとを互いに連動する状態で機械的に連結する連結装置とを備えたペダル操作装置と、
そのペダル操作装置の前記一対のペダルの操作状態に応じて、前記操舵装置,前記駆動装置,前記制動装置,前記傾斜装置のうちの少なくとも1つを制御する制御装置と
を含むことを特徴とする乗り物。 - 前記左側ペダルの第1軸線と、前記右側ペダルの第1軸線とが、当該ペダル操作装置において、前方へ進むにつれて、それらの間隔が大きくなる姿勢で配設された請求項1に記載の乗り物。
- 前記ペダル保持装置が、さらに、前記左側ペダルと前記右側ペダルとを、それぞれ、前記第1軸線と、平面視において交差する向きに延びる第2軸線回りに回動可能に保持する2軸回動可能保持部を含む請求項1または2に記載の乗り物。
- 前記連結装置が、前記左側ペダルと前記右側ペダルとのいずれか一方の前記第1軸線回りの、そのペダルの内側が下がる回動を、他方のペダルの前記第1軸線回りの、そのペダルの外側が下がる回動に、回動角度を小さくして伝達するリンク機構を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の乗り物。
- 前記リンク機構が、(a)前記左側ペダルと右側ペダルとに、それぞれ、相対回動不能に、前記第1軸線より外側へ延び出た姿勢で設けられた左側アーム部および右側アーム部と、(b)コの字形を成し、前記左側アーム部と前記右側アーム部とを、それぞれ、相対回転可能に連結するロッド部とを含む請求項4に記載の乗り物。
- 乗り物の、旋回状態と、駆動状態と、制動状態と、ボディーの横方向の傾斜状態とのうちの少なくとも1つを制御するためのペダル操作装置であって、
運転者の足によって操作可能な左側ペダルと右側ペダルとからなる一対のペダルと、
前記左側ペダル、右側ペダルを、それぞれ、当該ペダル操作装置において、前方へ進むにつれて、それらの間隔が大きくなる姿勢で設けられた第1軸線回りに左右方向に回転可能に保持するペダル保持装置と、
前記左側ペダルと前記右側ペダルとを互いに連動する状態で機械的に連結する連結装置と
を含むことを特徴とするペダル操作装置。
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