以下、本発明の反射型表示素子及び電気機器の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下の説明では、カラー画像表示を表示可能な表示部を備えた携帯電話に本発明を適用した場合を例示して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる反射型表示素子を用いた携帯電話の表示部を示す平面図である。図1において、本実施形態の携帯電話では、本発明の反射型表示素子1を用いて構成された表示部2が設けられている。この表示部2は、例えば2インチの表示面を備えており、表示面には、赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色のRGBの各色表示用の画素3r、3g、3b(以下、“3”で総称する。)が含まれている。各画素3では、後に詳述するように、対応する色と黒色との間で表示色を変更するようになっている。
また、表示部2では、1つの絵素4がRGBの3色の画素3を1組として構成されており、複数組の絵素4が、図1にY及びX方向にてそれぞれ示す表示面の縦及び横方向に沿ってマトリックス状に配設されている。各画素3の具体的な縦及び横寸法(図1にそれぞれ“S1”及び“S2”にて図示)は、例えば120μm及び40μmである。また、1つの絵素4の縦及び横寸法(図1にそれぞれ“S3”及び“S4”にて図示)は、例えば120μm及び120μmに設定されている。
以下、1つの絵素4での基本的な構成を示す図2を参照して、反射型表示素子1について具体的に説明する。
図2において、反射型表示素子1は、上記表示面側に設けられた透明基板5と、透明基板5の非表示面側に設けられ、表示面側が開口した筐体6と、透明基板5と筐体6との間に設置されたスペーサ7とを具備している。透明基板5は、例えば厚さ0.7mm程度の透明なガラス板またはアクリル等の合成樹脂板を用いて構成されている。また、透明基板5は、その非表示面側に設置された反射型表示素子1の各部を保護する保護基板として機能するとともに、ユーザに視認される表示面を実質的に形成している。
筐体6は、透明で可撓性を有する合成樹脂、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いて構成されており、平板状の底部6aと、底部6aに対し立設された断面矩形状の隔壁部6bとを備えている。また、筐体6では、底部6a及び隔壁部6bにより、RGBの画素単位の画素セルが形成されている。すなわち、筐体6では、底部6aが全ての画素3に共用されている。また、隔壁部6bは、底部6a上で格子状に配列されており、Y方向で隣接する2つの隔壁部6bとX方向で隣接する2つの隔壁部6bとにより、直方体状の内部空間が形成され、RGBのいずれかの画素3r、3g、3bの上記画素セルとして用いられている。なお、図2では、図面の明瞭化のために、X方向に平行に配列された隔壁部6bの表示面側部分の図示は省略している(後掲の図面においても、同様。)。
また、底部6aには、RGBの画素単位に設けられるとともに、反射型表示素子1の厚さ方向、すなわち図2に示す状態から表示面側または非表示面側に(塑性)変形可能な可動部分6ar、6ag、6abが設けられている。各可動部分6ar、6ag、6abは、後述の駆動部により、互いに独立して駆動されて変形するようになっている。
スペーサ7は、感光性を有する合成樹脂、例えばUV硬化型アクリル樹脂を用いて構成されており、スペーサ7が透明基板5の非表示面側の表面と隔壁部6の表示面側の表面とに接合されることにより、反射型表示素子1では、透明基板5と筐体6との間に所定の空隙層12が形成されている。また、スペーサ7は、格子状に配列された隔壁部6bの交点上にのみ設置されており、空隙層12ではRGBの画素セルが互いに連通するように構成されている。
また、反射型表示素子1は、RGBの各画素セル内で表示面側から順次配置された多孔質層8r、8g、8b(以下、“8”で総称する。)及び液溜層10r、10g、10b(以下“10”で総称する。)を備えている。多孔質層8r、8g、8bには、RGBにそれぞれ対応する色の蛍光材料が含有されており、表示面の外部から入射された外光を散乱反射することによって、その蛍光材料の色と同一の色光(散乱反射光)を表示面から外部に出射可能に構成されている。また、液溜層10には、透明液体11が予め注入され満たされており、透明液体11は、多孔質層8と液溜層10との間で可逆的に移動、つまり液溜層10内から多孔質層8内に浸透または多孔質層内8から液溜層10内へ排出されるようになっている。
また、反射型表示素子1には、図示を省略したCPU等を用いて構成された制御部13と、この制御部13にて駆動制御が行われるとともに、RGBの画素単位に透明液体11を対応する多孔質層8に対して出し入れする駆動部としての圧電素子部14とが設けられている。また、圧電素子部14には、液溜層10に対向するように配置された駆動部材としての上部電極が含まれており、この上部電極が上記外光に含まれた可視光を吸収する可視光吸収部を兼用することにより、RGBの画素3では、黒色の反射光を表示面から外部に個別に出射可能に構成されている。そして、反射型表示素子1では、圧電素子部14が多孔質層8内の透明液体11の浸透量を増減することにより、表示面上に表示される表示色を画素単位に変更できるようになっている。尚、図2に“S5”、“S6”、及び“S7”にてそれぞれ示す空隙層12、多孔質層8、及び液溜層10の厚さ方向の寸法は、例えば10μm、46μm、及び14μmである。
詳細には、多孔質層8は、透明な合成樹脂、例えばポリビニルアルコール(PVA)を用いて構成されており、多数の連続気孔9が不規則に形成されたスポンジ状の形態を有している。すなわち、多孔質層8には、図3も参照して、一端開口部及び他端開口部がそれぞれ空隙層12側及び液溜層10側に連通した連続気孔9が複数設けられている。この連続気孔9では、その開口部の大きさは透明液体11固有の粘度・動粘度・表面張力といった物性値、多孔質層8と透明液体11との界面張力などを基に決定されている。具体的には、連続気孔9の開口部は、最大直径が10μm程度に定められており、後述の接触角を適切に、かつ容易に設定することができ、透明液体11が毛細管現象によって連続気孔9内に流入するのを極力防止できるようになっている。
また、多孔質層8r、8g、8bでは、上記PVAの内部に蛍光剤、非発光着色剤、及び樹脂等を混合した蛍光材料が含有されており、対応するRGBのいずれかの色を表示可能に構成されている。より具体的には、多孔質層8rには、Hostasol Red GG(Clariant社製)、Macrolex Fluorescent Red G(Bayer社製)、またはLumogenF Red 305(BASF社製)のいずれかの赤色蛍光材料が使用されている。多孔質層8gには、Hostasol Yellow 3G(Clariant社製)またはMacrolex Fluorescent Yellow 10GN(Bayer社製)と、HOSTAPERM BLUE BG(Pigment Blue 15:3)(Clariant社製)とを混合した緑色蛍光材料が使用されている。多孔質層8bには、UvitexOB(チバスペシャリティ社製)またはLumogentF Violet(Bayer社製)と、HOSTAPERM BLUE BG(Pigment Blue 15:3)(Clariant社製)とを混合した青色蛍光材料が使用されている。
そして、多孔質層8では、連続気孔9内に空気が存在しているときに、当該連続気孔9周囲の表面と空気との界面や多孔質層8の内部で表示面側から入射された外光を着色しつつ、表示面側の外部に反射するよう構成されている。つまり、多孔質層8では、連続気孔9周囲の表面と空気との屈折率差により、上記外光を散乱し、かつ当該外光に含まれた着色された色以外の光を吸収して、多孔質層8に着色された色光のみを外部側に反射するようになっている。さらには、多孔質層8に含まれた蛍光材料にて励起発光させることで、外部側への反射光の光量を増やして、各画素3での表示色の明度を高めている。
さらに、多孔質層8では、1.34以上の屈折率の材料が使用されており、連続気孔9内の空気との屈折率差が0.34以上となるように構成されている。つまり、上記PVAを用いた多孔質層8には、例えば1.49の屈折率のものが使用されている。これにより、多孔質層8では、液溜層10内の透明液体11が連続気孔9内に流入していないときには、図3に例示するように、外光L1が表示面側から入射されたときに、当該外光L1を効率よく散乱反射させることができ、表示面から出射される散乱反射光L2の光量を増加させることが可能となる。この結果、外光の光利用率を高めることが可能となり、高明度な反射型表示素子1を容易に構成することができる。
尚、1.34未満の屈折率の材料を多孔質層8に用いた場合では、連続気孔9周囲の表面での空気との界面での屈折率差が小さくなって、当該界面で散乱反射される反射光の光量が小さくなり、RGBの対応する色光の明度や色純度の低下を招く。
また、1.34以上の屈折率を有し、多孔質層8として使用可能な具体的な樹脂材には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、あるいはポリ塩化ビニリデン(PVDC)などがある。
透明液体11は、無色透明で、かつ筐体6及び多孔質層8の材質(多孔質層8に含有された蛍光材料を含む。)と化学的な相互作用、すなわち化学反応を生じない組成の液体を用いて構成されている。具体的には、透明液体11には、例えば無色のシリコーンオイルが使用されている。
また、透明液体11では、その屈折率が多孔質層8の屈折率を基に選択されており、透明液体11が連続気孔9内に充填されて多孔質層8内に浸透したときに、上記外光が多孔質層8で散乱反射することなく、液溜層10側に向かって透過するようになっている。具体的にいえば、透明液体11には、多孔質層8との屈折率差が0.20以下となるような屈折率のものが用いられており、透明液体11が多孔質層8の連続気孔9内に充填されたときに、透明液体11の屈折率と多孔質層8の屈折率とがほぼ一致(マッチング)する。この結果、上記外光は多孔質層8と連続気孔9内に充填された透明液体11との界面で表示面側に反射することなく、これらの透明液体11及び多孔質層8の内部を透過することができる。
尚、多孔質層8と透明液体11との屈折率差が0.20を越える場合では、透明液体11が連続気孔9内に充填されたときに、屈折率の適切なマッチングが生ぜずに、表示面側に散乱反射される光量が増加し、黒色表示の表示品位が低下する。
また、透明液体11では、多孔質層8との接触角が70°以上、好ましくは90°以上、より好ましくは120°以上となるように、透明液体11及び多孔質層8では、各構成材料が選択されている。すなわち、透明液体11及び多孔質層8では、それらの構成材料の成分、組成、分子構造等に起因する各種の分子間相互作用力の物性値を用いて、連続気孔9内の空気に対する透明液体11の表面張力及び透明液体11と空気との界面張力の各値が求められる。その後、前記の各値に基づいて、多孔質層8と透明液体11との接触角を算出し、その算出した接触角が70°以上となるか否かについて判別して、接触角が70°以上となる透明液体11及び多孔質層8の各構成材料が決定されている。
また、上記接触角を70°以上とした場合には、透明液体11が毛細管現象によって自然に多孔質層8内に流れ込むのを防止することができ、反射型表示素子1での誤動作を未然に防ぐことが可能となって当該反射型表示素子1の表示品位を確実に向上させることができる。
また、上記接触角を90°以上とした場合には、透明液体11が毛細管現象によって多孔質層8内に流れ込むのを確実に防げることができ、反射型表示素子1の表示品位の向上を容易に行うことができる。さらに、120°以上の接触角にした場合では、透明液体11の多孔質層8への流れ込みをより確実に防ぐことができ、反射型表示素子1の表示品位の向上をより容易に行うことができる。
尚、上記接触角を70°未満とした場合には、透明液体11が毛細管現象により多孔質層8内に自然に流れ込むことがあり、反射型表示素子1の表示品位の低下を招く。
また、透明液体11では、その動粘度が500mm2/s以下、好ましくは50mm2/s以下、より好ましくは6mm2/s以下となるように、構成材料(粘度調整剤等の添加物も含む。)の選択が行われている。そして、透明液体11の動粘度を500mm2/s以下とした場合には、当該透明液体11には必要な流動性が付与されて、透明液体11の応答性の低下を防ぐことができ、表示色の変更速度が極端に小さくなるのを防止することができる。
また、50mm2/s以下の動粘度とした場合には、透明液体11の粘性抵抗を小さくして、透明液体11の流動性を適切に高めることができる。これにより、透明液体11の応答性の低下を確実に防ぐことが可能となり、表示色の変更速度を適正なものとすることができる。さらに、6mm2/s以下の動粘度とした場合には、透明液体11の粘性抵抗をより小さくして、透明液体11の流動性をより適切に高めることができる。従って、透明液体11の応答性の低下をより確実に防いで、表示色の変更速度をより適正なものとすることができる。
尚、500mm2/sを越える動粘度とした場合には、透明液体11に対し必要な流動性を付与することができなくなり、透明液体11の応答性の向上や各画素3での表示色の変更速度の向上を図るのが難しくなる。
制御部13は、表示部2に表示される画像や文字等の表示情報に従って、圧電素子部14に対する駆動信号を画素単位に生成して、圧電素子部14に出力する。つまり、制御部13には、上記携帯電話の本体側に設けられた制御装置(図示せず)から上記表示情報についての指示信号を入力するようになっており、この指示信号に基づいて各画素3で表示される表示色の色合いや明度に応じた上記駆動信号を生成し出力する。尚、この説明以外に、制御部13の機能を携帯電話の本体側の上記制御装置に付与することにより、当該制御部13の設置を省略することもできる。
圧電素子部14は、RGBの画素単位に液溜層10の体積を変化させることにより、対応する多孔質層8に対して透明液体11を出し入れするように構成されている。具体的にいえば、圧電素子部14には、例えば2つの圧電層16、18を備えたバイモルフタイプの圧電素子が使用されている。これらの圧電層16、18は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子圧電材料を用いて構成されており、互いに同じ分極方向となるように積層されている。
また、圧電素子部14は、RGBの画素単位に設けられた上部電極15r、15g、15b(以下、“15”で総称する。)、中間電極17r、17g、17b(以下、“17”で総称する。)、及び下部電極19r、19g、19b(以下、“19”で総称する。)を備えている。上部電極15、中間電極17、及び下部電極19は、クロムやアルミニウムなどの金属を用いて構成されたものであり、反射型表示素子1の厚さ方向での同一位置で、表示面側からこの順番で順次配設されている。つまり、例えば上部電極15rでは、その表示面側の表面が筐体6の対応する可動部分6arに固着されて、圧電層16の表示面側に設けられている。また、中間電極17rは、上部電極15rとで圧電層16を狭持するように圧電層16、18の間に形成され、下部電極19rは、中間電極17rとで圧電層18を狭持するように圧電層18の非表示面側に形成されている。
また、圧電素子部14では、電源Sを含んだアクティブマトリックス回路からの電力供給が行われるように構成されており、上部電極15及び下部電極19には、中間電極17に対して常に同じ極性の電圧が印加されるようになっている。また、圧電素子部14では、上記アクティブマトリックス回路が制御部13からの駆動信号に基づき上部電極15、中間電極17、及び下部電極19に対する選択的な電圧印加を行うように構成されている。そして、圧電素子部14では、中間電極17に対して、例えば+極性の電圧が上部電極15及び下部電極19に印加されると、上記画素セルの中心部に一致して設けられた当該圧電素子部14の中心部が表示面側に向かって突出するように凸状に歪んで、上部電極15に固着している可動部分6ar、6ag、6abを同様に塑性変形させる。これにより、圧電素子部14は、液溜層10の体積を減少させ、液溜層10内から多孔質層8内に透明液体11を浸透させて当該多孔質層8内の浸透量を増加させることができる。
一方、圧電素子部14では、中間電極17に対して、例えば−極性の電圧が上部電極15及び下部電極19に印加されると、当該圧電素子部14の上記中心部が非表示面側に向かって突出するように凹状に歪んで、上部電極15に固着している可動部分6ar、6ag、6abを同様に塑性変形させる。これにより、圧電素子部14は、液溜層10の体積を増加させ、多孔質層8内から液溜層10内に透明液体11を排出させて当該多孔質層8内の浸透量を減少させることができる。
また、各上部電極15は、液溜層10に対向するように配置された駆動部材を構成しており、その表示面側の表面15s(図3)または当該表面15sに接する底部6aの部分がRGBに対応する補色に着色されることにより、各上部電極15は、上記可視光吸収部として機能するようになっている。すなわち、上部電極15r、15g、15bの表示面側の表面または当該表面に当接する底部6aの部分には、赤、緑、及び青の補色である、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)がRGBの画素領域に対応してパターン着色されており、透明液体11が多孔質層8内に満たされているときに、透明基板5から入射された外光を吸収可能になっている(詳細は後述。)。
ここで、図4〜図7を参照して、反射型表示素子1の具体的な製造方法について説明する。尚、以下の説明では、1つの絵素4の製造方法を図示して説明する。
まず、圧電素子部14の形成工程について、図4を用いて説明する。
図4(a)に示すように、圧電素子部14では、まず例えば厚さ35μmのポリフッ化ビニリデンからなる圧電層18が、バーコート法により、可撓性のポリエチレンテレフタレート(PET)基材B1上に積層される。その後、圧電層18では、ポーリング処理が実施されることにより、当該圧電層18の内部構造が分極される。
続いて、図4(b)に示すように、例えば1000Åのアルミニウムからなる中間電極17r、17g、17bが、蒸着法により、RGBの画素単位に応じたパターンで圧電層18上に形成される。
次に、図4(c)に示すように、厚さ35μmのポリフッ化ビニリデンからなる圧電層16が、バーコート法により、中間電極17を覆うように当該中間電極17及び圧電層18上に積層される。その後、圧電層16では、圧電層16と同様に、ポーリング処理が施されて、当該圧電層16の内部構造が圧電層18と同一方向に分極される。
続いて、図4(d)に示すように、例えば1100Åのクロムからなる上部電極15r、15g、15bが、蒸着法により、RGBの画素単位に応じたパターンで、対応する中間電極17r、17g、17b上となるように位置合わせされた状態で圧電層16上に形成される。その後、上部電極15r、15g、15bの表面は、フォトレジストによるマスキング処理を経て、それぞれシアン色、マゼンタ色、イエロー色の染料にて着色される。
次に、図4(e)に示すように、厚さ数μm程度のポリジメチルシロキサンからなる底部6aが、上部電極15を覆うように当該上部電極15及び圧電層16上に成膜される。その後、圧電層16、18、上部電極15、中間電極17、及び底部6aの積層体には、PET基材B1を支持基板として、ロール圧着が施され、当該積層体は一体化される。尚、下部電極19の形成工程については、後述する。また、上部電極15と底部6aとは、ポリジメチルシロキサンが本来的に有する粘着性により、粘着剤などを用いることなく、容易に接着させることができる。さらに、上部電極15r、15g、15bの表面に対応するCMYの各色を着色する場合の代わりに、当該表面に当接する底部6aの部分にCMYの各色のパターン着色を行うときには、ポリジメチルシロキサンを容易に着色できる染料タイプもしくは顔料タイプのインクジェットインクによりインクジェット法にてパターン印刷することで可視光吸収部として機能可能なように着色することができる。
次に、図5を用いて、筐体6、多孔質層8、及び液溜層10の形成工程について具体的に説明する。
図5(a)に示すように、まず筐体6の隔壁部6bを成形するための金型Kが、シリコン精密加工を用いて作成される。この金型Kには、隔壁部6bを成形するための格子状の穴部K1が形成されている。
次に、図5(b)に示すように、上記金型Kを用いて、ポリジメチルシロキサンをモールドすることにより、筐体6の隔壁部6bが形成される。尚、隔壁部6bの上方には、平板状の仮基部6b1が所定厚さで設けられている。
続いて、図5(c)に示すように、可撓性のポリエチレンテレフタレート(PET)基材B2が、仮基部6b1上にロール圧着される。その後、図5(d)に示すように、隔壁部6bがPET基材B2とともに、金型Kから離型される。
次に、図5(e)に示すように、隔壁部6bによって区画されたRGBの上記画素セルの空間に対して、対応するRGBの上記蛍光材料を含有したポリビニルアルコール水溶液を注入する。続いて、RGBの各ポリビニルアルコール水溶液に対して、例えば結晶芒硝の多孔化剤と、樹脂架橋剤と、反応触媒とを含んだ混合液をインクジェット法により滴下した後、全体を加熱(煮沸)処理することにより、各画素セルの空間内で架橋反応を発生させる。その後、多孔化剤を洗浄除去することにより、空隙率30%程度の多孔質層8r、8g、8bを各空間内に形成する。
続いて、図5(f)に示すように、動粘度が例えば65mm2/sのシリコーンオイルが、多孔質層8r、8g、8b上に形成された液溜層10r、10g、10bに対し、インクジェット法により滴下されることにより、液溜層10に透明液体11が溜められる。これにより、多孔質層8及び透明液体11を含んだ液溜層10を備えた筐体部が形成される。
次に、図6(a)に示すように、図4(e)で形成された上部電極15、圧電層16等の積層体と、図5(f)で形成された筐体部との貼合わせ作業がロール圧着によって実施される。この作業では、RGBの各画素セルが構成されるように、RGBの液溜層10r、10g、10bと対応する上部電極15r、15g、15bとの位置合わせが行われる。また、上記積層体と筐体部との接合面である底部6aの表面及び隔壁部6bの表面は、予め紫外線が照射されることにより、ポリジメチルシロキサンの本来的な粘着性が高められた状態で、これらの表面が相互に接着されている。
続いて、図6(b)に示すように、PET基材B1、B2を剥離した後、図6(c)に示すように、例えば1000Åのアルミニウムからなる下部電極19r、19g、19bが、蒸着法により、RGBの画素単位に応じたパターンで圧電層18上に形成される。その後、ポリフッ化ビニリデンが不溶でポリジメチルシロキサンが可溶である溶剤内に、短時間浸漬することにより、図6(d)に示すように、仮基部6b1だけを溶解剥離する。これにより、反射型表示素子1の画素セル部が形成される。
次に、図7(a)に示すように、ガラス基板からなる透明基板5の非表示面側に対して、フォトリソグラフィーを用いて、スペーサ7を形成する。その後、図7(b)に示すように、スペーサ7を形成した透明基板5と、図6(d)に示した画素セル部とを貼り合わせることにより、反射型表示素子1が完成される。
上記のように構成された本実施形態の反射型表示素子1の動作について、図8〜図13も参照して具体的に説明する。
図8に例示するように、本実施形態の反射型表示素子1では、圧電素子部14への電源Sからの電力供給量に応じて駆動するようになっている。すなわち、画素3rでは、上部電極15r、中間電極17r、及び下部電極19rに電圧が印加されていないため、これらの電極15r、17r、19rは互いに平行な状態で維持される。このため、液溜層10rでは、体積が変化しておらず、透明液体11は多孔質層8r内に全く浸透していない。
また、画素3gでは、上部電極15g及び下部電極19gと中間電極17gとの電圧差がその最大値の1/2(例えば、+5V)となるように、これらの電極15g、17g、19gに電圧が電源Sから印加されると、当該電極15g、17g、19gは各電極15g、17g、19gで狭持された圧電層16、18の部分及び可動部分6agとともに液溜層10g側に向かって塑性変形する。このため、液溜層10gでは、体積がほぼ半分に低減して、透明液体11は液晶層10g内から多孔質層8g内の一部に浸透する。
また、画素3bでは、上部電極15b及び下部電極19bと中間電極17bとの電圧差がその最大値(例えば、+10V)となるように、これらの電極15b、17b、19bに電圧が電源Sから印加されると、当該電極15b、17b、19bは各電極15b、17b、19bで狭持された圧電層16、18の部分及び可動部分6abとともに液溜層10b側に向かってほぼ最大限に塑性変形する。このため、液溜層10bでは、体積が最大限に低減して、透明液体11は液晶層10g内から多孔質層8g内全体に浸透する。
また、各画素3において、上部電極15及び下部電極19と中間電極17との電圧差がマイナスとなるように、これらの電極15、17、19に電圧を印加したときには、当該電極15、17、19は各電極15、17、19で狭持された圧電層16、18の部分及び対応する可動部分とともに液溜層10とは反対側に向かう方向で、印加電圧に応じて塑性変形する。これにより、液溜層10の体積を増加させて、多孔質層8内に浸透している透明液体11を液溜層10側に排出させる。
以上のように、反射型表示素子1では、圧電素子部14の上部電極15、中間電極17、及び下部電極19への印加電圧を調整することにより、多孔質層8内の透明液体11の浸透量を調整することができる。また、上部電極15、中間電極17、及び下部電極19への印加電圧を一定で保つことにより、液溜層10の体積変化量、及び透明液体11の浸透量を維持することができる。
次に、図9及び図10を参照して、画素3での基本的な動作について説明する。
図9に示すように、透明液体11が多孔質層8内に浸透していないときでは、透明基板5側から入射された外光L1が多孔質層8の内部を通過する際に、同図に黒点FLにて例示する、多孔質層8に含有された蛍光材料を励起する。これにより、多孔質層8の内部では、図9に矢印にて例示するように、蛍光材料FLによる発光成分が生じて進行し、画素3から出射される表示光の光量を増加させて、その明度を向上させることができる。
また、図10に示すように、透明液体11が多孔質層8内に浸透しているときでは、外光L1は透明液体11で満たされた多孔質層8及び液溜層10を透過して、上部電極15の表面15sで吸収される。また、蛍光材料FLで生じた発光成分は、上部電極15に直接的に進んだり、多孔質層8と空隙層12との界面で多孔質層8内側に全反射されたりして、表面15sで吸収される。
尚、透明液体11が多孔質層8内に浸透しているとき、蛍光材料FLによる発光成分の一部(例えば、20〜25%程度)は多孔質層8と空隙層12との界面での全反射条件に該当せず表示面側から出射される現象を生じることがある。一方、それに対して透明液体11が多孔質層8内に浸透していないときで散乱反射する場合では、蛍光材料FLによる発光成分のアシストによる明度の向上効果が十分に大きいため、コントラスト比の低下を防ぐことができる。
具体的には、本願発明の発明者等による検証試験では、蛍光材料FLのかわりに、非発光材料を着色剤として多孔質層に用いた場合、例えば黒表示時及び白表示時の反射率がそれぞれ約20%及び約80%で、黒白表示でのコントラスト値が約4の表示素子を構成することができた。
一方、上記表示素子と同一素子構造において、蛍光材料FLを多孔質層に用いて、蛍光発光及び蛍光の導光現象を利用した本実施形態品の場合、黒表示時の反射率が36〜52%で非発光材料の場合よりも若干性能低下が認められるものの、白表示時の反射率が約160〜240%で非発光材料の場合よりも飛躍的に性能向上していることが確認された。さらに、この性能向上により、コントラスト値は約4.4〜4.6となり、非発光材料を用いた場合以上のコントラスト性能を有する表示素子を構成することが実証された。
次に、図11〜図13をそれぞれ参照して、RGBの各画素3での具体的な動作について、詳細に説明する。
図11(a)において、画素3rでは、上部電極15rの表示面側の表面15srは赤色の補色であるシアン色に着色されている。また、この画素3rでは、多孔質層8rの外側表面が赤色に着色されているので、透明基板5及び空隙層12を経て多孔質層8r内に入射された外光L3は、赤色の波長域以外の色が当該多孔質層8rにて吸収される。すなわち、図11(b)にi〜VIにて示すように、画素3rでは、外光L3を変調して、上記表示面側のユーザに対し表示光L4として視認可能になっている。
具体的には、多孔質層8r内に透明液体11が満たされている場合、可視光の全て波長域を含んだ外光L3は、多孔質層8r内を透過したときに赤色以外の波長域(400〜600nm)の色光が当該多孔質層8rにて吸収されて、赤色に着色された光が表面15srに向かって進行し、当該表面15srで吸収される(図11(b)のi〜IVを参照。)。そして、画素3rでは、図11(b)のV及びVIに示すように、表示面側に出射(反射)される表示光L4に、可視光の波長域が全く含まれなくなり、黒色表示が行われる。
一方、多孔質層8r内に透明液体11が満たされていない場合、上記外光L3は、多孔質層8r内で赤色以外の波長域の色光が吸収されるとともに、残りの赤色光が、図2に示したように、多孔質層8r内で散乱反射して、表示光L4として出射される。この結果、画素3rでは、赤色表示が行われる。また、図8の画素3gに示したように、多孔質層8r内の一部の連続気孔9に空気が存在している場合では、外光L3の一部を赤色に着色光散乱させて、残りを表面15srに吸収させることができ、赤色と黒色との間の中間調を表現可能となっている。
また、図12(a)において、画素3gでは、上部電極15gの表示面側の表面15sgは緑色の補色であるマゼンタ色に着色されている。また、この画素3gでは、多孔質層8gの外側表面が緑色に着色されているので、透明基板5及び空隙層12を経て多孔質層8g内に入射された外光L5は、緑色の波長域以外の色が当該多孔質層8gにて吸収される。すなわち、図12(b)にi〜VIにて示すように、画素3gでは、外光L5を変調して、上記表示面側のユーザに対し表示光L6として視認可能になっている。
具体的には、多孔質層8g内に透明液体11が満たされている場合、可視光の全て波長域を含んだ外光L5は、多孔質層8g内を透過したときに緑色以外の波長域(400〜500nm及び600〜700nm)の色光が当該多孔質層8gにて吸収されて、緑色に着色された光が表面15sgに向かって進行し、当該表面15sgで吸収される(図12(b)のi〜IVを参照。)。そして、画素3gでは、図12(b)のV及びVIに示すように、表示面側に出射(反射)される表示光L6に、可視光の波長域が全く含まれなくなり、黒色表示が行われる。
一方、多孔質層8g内に透明液体11が満たされていない場合、上記外光L5は、多孔質層8g内で緑色以外の波長域の色光が吸収されるとともに、残りの緑色光が、図2に示したように、多孔質層8g内で散乱反射して、表示光L6として出射される。この結果、画素3gでは、緑色表示が行われる。また、図8の画素3gに示したように、多孔質層8g内の一部の連続気孔9に空気が存在している場合では、外光L5の一部を緑色に着色光散乱させて、残りを表面15sgに吸収させることができ、緑色と黒色との間の中間調を表現可能となっている。
また、図13(a)において、画素3bでは、上部電極15bの表示面側の表面15sbは青色の補色であるイエロー色に着色されている。また、この画素3bでは、多孔質層8bの外側表面が青色に着色されているので、透明基板5及び空隙層12を経て多孔質層8b内に入射された外光L7は、青色の波長域以外の色が当該多孔質層8bにて吸収される。すなわち、図13(b)にi〜VIにて示すように、画素3bでは、外光L7を変調して、上記表示面側のユーザに対し表示光L8として視認可能になっている。
具体的には、多孔質層8b内に透明液体11が満たされている場合、可視光の全て波長域を含んだ外光L7は、多孔質層8b内を透過したときに青色以外の波長域(500〜700nm)の色光が当該多孔質層8bにて吸収されて、青色に着色された光が表面15sbに向かって進行し、当該表面15sbで吸収される(図13(b)のi〜IVを参照。)。そして、画素3bでは、図13(b)のV及びVIに示すように、表示面側に出射(反射)される表示光L8に、可視光の波長域が全く含まれなくなり、黒色表示が行われる。
一方、多孔質層8b内に透明液体11が満たされていない場合、上記外光L7は、多孔質層8b内で青色以外の波長域の色光が吸収されるとともに、残りの青色光が、図2に示したように、多孔質層8b内で散乱反射して、表示光L6として出射される。この結果、画素3bでは、青色表示が行われる。また、図8の画素3gに示したように、多孔質層8b内の一部の連続気孔9に空気が存在している場合では、外光L7の一部を青色に着色光散乱させて、残りを表面15sbに吸収させることができ、青色と黒色との間の中間調を表現可能となっている。
また、RGBの全ての画素3において、多孔質層8による着色光散乱が生じると、当該RGBを含んだ1つの絵素4では、RGBの各色光が混色して上記表示面上では白色表示が行われる。
以上のように構成された本実施形態では、RGBの蛍光材料をそれぞれ含有した多孔質層8r、8g、8bと、透明液体11が溜められた液溜層10r、10g、10bと、透明液体11が多孔質層8内に満たされたときに外光に含まれた可視光を吸収する上部電極(可視光吸収部)15r、15g、15bとが設けられている。また、圧電素子部(駆動部)14が多孔質層8内の透明液体11の浸透量を増減して表示面上での表示色を画素単位に変更している。従って、圧電素子部14が多孔質層8内の透明液体の浸透量を最大として当該多孔質層8内を透明液体11で満たしたときに、黒色の表示を画素単位に行うことができる。この結果、表示面のカラー化を図る場合でも、上記従来例と異なり、黒色の表示専用の画素を設けることなく、黒色表示を簡単に行うことができ、よって表示品位に優れたコンパクトな反射型表示素子1を構成することができる。
また、本実施形態では、多孔質層8にRGBいずれかの蛍光材料が含有されているので、対応するRGBの色表示を行うときに、その蛍光材料による発光成分がプラスされて、対応するRGBの表示色の明度を向上させることができる。
[第2の実施形態]
図14は、本発明の第2の実施形態にかかる反射型表示素子の1画素での要部構成を示す斜視図である。図において、本実施形態と上記第1の実施形態との主な相違点は、上部電極の表示面側の表面を黒色とした点である。尚、上記第1の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図17に示すように、本実施形態では、液溜層10の非表示面側に、圧電素子部14(図2)の上部電極20が設けられている。この上部電極20では、液溜層10側の表面20sの色は黒色に着色されており、透明液体11が多孔質層8内に浸透したときに、外光に含まれた可視光を吸収して、黒色表示を行えるように構成されている。
ここで、図15〜図17を参照して、本実施形態のRGBの各画素3での具体的な動作について、詳細に説明する。尚、以下の説明では、各画素3の黒色表示について主に説明する。
図15(a)において、画素3rでは、上部電極20rの表示面側の表面20sは黒色に着色されている。このため、画素3rでは、図15(b)にi〜VIにて示すように、外光L3を変調して、上記表示面側のユーザに対し表示光L4として視認可能になっている。
具体的には、多孔質層8r内に透明液体11が満たされている場合、可視光の全て波長域を含んだ外光L3は、多孔質層8r内を透過したときに赤色以外の波長域の色光が当該多孔質層8rにて吸収されて、赤色に着色された光が表面20sに向かって進行し、当該表面20sで吸収される(図15(b)のi〜IVを参照。)。そして、画素3rでは、図15(b)のV及びVIに示すように、表示面側に出射(反射)される表示光L4に、可視光の波長域が全く含まれなくなり、黒色表示が行われる。
一方、多孔質層8r内に透明液体11が満たされていない場合、上記第1の実施形態と同様に、外光L3は多孔質層8r内で赤色以外の波長域の色光が吸収されるとともに、残りの赤色光だけが、多孔質層8r内で散乱反射して、表示光L4として出射されて、赤色表示が行われる。
また、図16(a)において、画素3gでは、上部電極20gの表示面側の表面20sは黒色に着色されている。このため、画素3gでは、図16(b)にi〜VIにて示すように、画素3gでは、外光L5を変調して、上記表示面側のユーザに対し表示光L6として視認可能になっている。
具体的には、多孔質層8g内に透明液体11が満たされている場合、可視光の全て波長域を含んだ外光L5は、多孔質層8g内を透過したときに緑色以外の波長域の色光が当該多孔質層8gにて吸収されて、緑色に着色された光が表面20sに向かって進行し、当該表面20sで吸収される(図16(b)のi〜IVを参照。)。そして、画素3gでは、図16(b)のV及びVIに示すように、表示面側に出射(反射)される表示光L6に、可視光の波長域が全く含まれなくなり、黒色表示が行われる。
一方、多孔質層8g内に透明液体11が満たされていない場合、上記第1の実施形態と同様に、外光L5は多孔質層8g内で緑色以外の波長域の色光が吸収されるとともに、残りの緑色光だけが、多孔質層8g内で散乱反射して、表示光L6として出射されて、緑色表示が行われる。
また、図17(a)において、画素3bでは、上部電極20bの表示面側の表面20sは黒色に着色されている。このため、画素3bでは、図17(b)にi〜VIにて示すように、外光L7を変調して、上記表示面側のユーザに対し表示光L8として視認可能になっている。
具体的には、多孔質層8b内に透明液体11が満たされている場合、可視光の全て波長域を含んだ外光L7は、多孔質層8b内を透過したときに青色以外の波長域の色光が当該多孔質層8bにて吸収されて、青色に着色された光が表面20sに向かって進行し、当該表面20sで吸収される(図17(b)のi〜IVを参照。)。そして、画素3bでは、図17(b)のV及びVIに示すように、表示面側に出射(反射)される表示光L8に、可視光の波長域が全く含まれなくなり、黒色表示が行われる。
一方、多孔質層8b内に透明液体11が満たされていない場合、上記第1の実施形態と同様に、外光L7は多孔質層8b内で青色以外の波長域の色光が吸収されるとともに、残りの青色光だけが、多孔質層8b内で散乱反射して、表示光L8として出射されて、青色表示が行われる。
以上の構成により、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。また、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、上部電極20の表示面側の表面20sを黒色に着色することにより、当該表面20sを可視光吸収部として機能させているので、多孔質層8に含有された蛍光材料の色に係わらず黒色表示を行うことが可能となる。この結果、蛍光材料の色が互いに異なる複数の多孔質層8を使用する場合でも、全ての同一の可視光吸収部を用いることができ、反射型表示素子1の製造工程を簡単化してコスト低減を容易に行うことができる。
[第3の実施形態]
図18は、本発明の第3の実施形態にかかる反射型表示素子の1絵素での基本的な構成を示す断面図である。図において、本実施形態と上記第2の実施形態との主な相違点は、圧電素子部に代えて、ペルチェ素子部を上記駆動部に用いた点である。尚、上記第2の実施形態と共通する要素については、同じ符号を付して、その重複した説明を省略する。
すなわち、図18に示すように、本実施形態では、上記駆動部としてのペルチェ素子部21が設けられている。ペルチェ素子部21では、RGBの画素単位に、対応する透明液体11に対して、加熱または冷却する加熱/冷却部材22r、22g、22b(以下、“22”で総称する。)が設けられている。これらの加熱/冷却部材22には、p型及びn型の熱電半導体とこれらの熱電半導体を接合した電極部材とが含まれており、全ての画素で共用された基板23に保持された状態で、筐体6の非表示面側に設置されている。また、加熱/冷却部材22は、一方または他方の熱電半導体に対して電源Sから電力供給が行われることにより、透明液体11をそれぞれ加熱または冷却可能になっており、ペルチェ素子部21では、透明液体11の体積を変化させることにより、対応する多孔質層8に対して透明液体11を出し入れして、透明液体11の浸透量及び各画素3での表示色を変更するように構成されている。
また、加熱/冷却部材22は、液溜層10に対向するように配置された駆動部材であり、当該加熱/冷却部材22が、可視光吸収部としても機能するようになっている。すなわち、加熱/冷却部材22の表示面側の表面は、黒色に着色されており、多孔質層8内に透明液体11が満たされたときに上記外光の可視光の波長域の光を吸収して、各画素3において黒色表示を行えるように構成されている。尚、上記第1の実施形態と同様に、加熱/冷却部材22の表示面側の表面に、RGBに対応する補色が着色される構成でもよい。
以上の構成により、本実施形態では、上記第2の実施形態と同様に、黒色表示を簡単に行うことができ、よって表示品位に優れたコンパクトな反射型表示素子1を構成することができる。
尚、上記の実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって規定され、そこに記載された構成と均等の範囲内のすべての変更も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上記の説明では、カラー画像表示を表示可能な表示部を備えた携帯電話に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は文字及び画像を含んだ情報を表示する表示部が設けられた電子機器であれば何等限定されるものではなく、例えば電子手帳等のPDAなどの携帯情報端末、パソコンやテレビなどに付随する表示装置、あるいは電子ペーパーその他、各種表示部を備えた電子機器に好適に用いることができる。
また、上記の説明では、RGBの各色表示用の画素を含んだ表示面を構成した場合について説明したが、本発明は所定色の蛍光材料を含有した多孔質層と、多孔質層に対して出し入れされる透明液体と、透明液体を溜める液溜層と、液溜層を多孔質層とで狭持するように設けられた可視光吸収部と、多孔質層と液溜層との間で可逆的に透明液体を出し入れする駆動部とを備えたものであれば何等限定されない。例えば上記RGBの画素に代えて、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)のCMYの色をそれぞれ着色した3つの多孔質層を設けて、CMYの各色表示用の画素を構成してもよい。さらに、RGB、CMY以外の表示面においてカラー画像表示が可能な複数の原色、例えば、RGBYC(五色)、RGBC(四色)、RGBY(四色)、GM(二色)等の組合せの多孔質層を使用することもできる。また、透明な多孔質層の表面に所定色の蛍光塗料などを塗布したものも使用することができる。
また、上記の説明では、ポリビニルアルコールを用いて構成した多孔質層と、シリコーンオイルからなる透明液体とを用いた場合について説明したが、本発明の多孔質層及び透明液体は化学的な相互作用を生じない材料を用いたものであればよい。具体的には、例えばシリコーンオイルに代えて、デカン、ドデカン等の炭化水素系オイルを使用することもできる。また、ポリプロピレンを用いて多孔質層を構成するとともに、当該ポリプロピレンと互いに不動態である、純水、アルコール系溶液、またはその他の極性液体などの流体を透明液体として使用することもできる。
また、上記の説明では、連続気孔が不規則に形成されているスポンジ状の多孔質層を用いた場合について説明したが、本発明の多孔質層はこれに限定されるものではなく、例えば断面円形状に構成されるとともに、同一の開口径を有し、液溜層と空隙層とを一直線状に連通した多数の連続気孔が周期的に設けられたキャピラリー状の形態を有する多孔質層を使用することもできる。
また、上記の説明では、無色の透明液体を用いた場合について説明したが、本発明の透明液体はこれに限定されるものではなく、染料や顔料などの着色剤によって着色された有色の透明液体、好ましくは多孔質層と同一の所定の色に着色された透明液体を使用することもできる。
但し、上記実施形態のように、無色の透明液体を用いる場合の方が、表示面のカラー化を図る場合でも、着色剤により透明液体を着色することなく、同一の透明液体を使用できる点で好ましい。また、透明液体に着色剤を使用していないので、化学的に安定した液体を用いることが可能であり、他部材との化学的反応を抑制でき、かつ着色剤を用いた液体の場合のように着色剤の析出やブリードの発生がないため、反射型表示素子の信頼性を容易に高めることができる点で好ましい。さらには、着色剤が相異なる複数の透明液体どうしの混色が生じないことから、上記実施形態での画素セル単位に設けた液溜層に代えて、全ての画素セルで共用される一つの液溜層を用いて、反射型表示素子の構造簡単化を図れる点でも好ましい。
また、上記の説明以外に、チクソトロピー性を有する透明液体を使用することもできる。このような透明液体を使用したときには、そのチクソトロピー性を利用して、当該透明液体を多孔質層内に保持させることが可能となり、表示面での表示情報を保持可能なメモリー性が付与された反射型表示素子を構成することができる。
また、上記の説明では、可視光吸収部を駆動部の駆動部材に兼用させた構成について説明したが、本発明の可視光吸収部はこれに限定されるものではなく、駆動部と別個に構成された可視光吸収部を用いることもできる。但し、上記実施形態のように、可視光吸収部を駆動部材に兼用させる場合の方が、反射型表示素子の部品点数を削減して、コンパクト化及び低コスト化を容易に図れる点で好ましい。
また、上記第1及び第2の各実施形態では、バイモルフタイプの圧電素子を用いて駆動部を構成するとともに、当該駆動部が液溜層の体積を変化させることで多孔質層に対して透明液体を出し入れする構成について説明したが、本発明の駆動部はこれに限定されるものではなく、例えば1つの圧電層と、この圧電層を狭持する2つの電極を備えたユニモルフタイプの圧電素子を用いてもよい。このユニモルフタイプでは、バイモルフタイプと同様に、電極から圧電層に与えられる電気エネルギーにより、応力(歪み)が発生して、液溜層の体積を変化させる。
また、上記圧電素子以外の液溜層の体積を変化させる駆動部には、熱エネルギー及び光エネルギーをそれぞれ歪みに変換する形状記憶合金アクチュエータ及びフォトメカニカルアクチュエータ、pH変化などの化学変化及びクーロン力により応力をそれぞれ発生するメカノケミカルアクチュエータ及び静電アクチュエータなどのマイクロアクチュエータを利用することができる。
また、上記第3の実施形態では、ペルチェ素子を用いて駆動部を構成するとともに、当該駆動部が透明液体の体積を変化させることで多孔質層に対して透明液体を出し入れする構成について説明したが、本発明の駆動部はこれに限定されるものではなく、例えば温水と冷水とを選択的に循環させることが可能なウォータジャケットを液溜層の周囲に設置し、透明液体の体積変化を発生させてもよい。
また、上記の説明以外に、液溜層または透明液体の体積を変化させるための駆動部の構成部材を液溜層や多孔質層の周囲、上記隔壁部の内部、または駆動部と別個に構成した可視光吸収部の内部などに設置することもできる。
また、上記の説明以外に、透明基板を筐体の隔壁部上に直接設置して画素セル単位に空隙層を構成することもできる。但し、上記実施形態のように、全ての画素セルで共用される、所定の空隙層を介在させる場合の方が、透明液体の多孔質層に対する流入出及びこれに伴う空気の移動を円滑に行わせることができ、表示色の変更速度が透明液体や空気の移動抵抗により低下するのを防ぐことができる点で好ましい。