JP4683843B2 - 人工髄核ディスクおよびその製造方法。 - Google Patents

人工髄核ディスクおよびその製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は、整形外科及び脳神経外科等の分野で使用される人工髄核ディスク、特に、椎間板ヘルニア等の疾患や事故等によって障害を受けた椎間板に対し、椎間板の主構成部位である髄核のみを補綴するポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲル製の人工髄核ディスクおよびその製造方法に関するものである。
椎間板は、機能的にみても、解剖学的にみても、非常に複雑な機能、構造を有した関節である。これらは、繊維輪、椎体終板、髄核の機能構造体から成り立っている。
椎間板において、外傷、疾病、老化により変性、損傷を生じる場合がある。この場合、髄核がヘルニアを形成し、椎間孔へ突出してしまう。突出した髄核は、脊髄神経を圧迫し、それら周辺組織の痛み、麻痺、または、下肢の痛み、麻痺を引き起こす。
現在、生体内で重要な役割を担う椎間板において椎間板ヘルニア等の疾病は発生した患者に対しては、患部椎間板の摘出後、自家移植骨、骨セメントまたは人工椎体スペーサー等を用いた椎体間固定術が行なわれている。
しかし、これらの治療法は椎体の固定を目的としており、本来、椎間板が有する柔軟性や負荷緩衝作用といった力学的特性を無視している。そのため、隣接する上下椎体に悪影響を及ぼし、二次的な椎間板障害を引き起こしている。
一方、椎間板ヘルニアは、髄核の老化等により引き起こされることが知られている。比較的軽度な症例の場合には、椎体の固定術より、老化した髄核のみを置換する治療の方が望ましい。つまり、椎間板の自然生理機能を模倣しつつ、正常な椎体間のスペースを維持し、椎間板の十分な可動性を補う機能を持つ人工の補綴物により、部分的、全体的な置換治療を行なうことが望ましい。
そこで、Bao Qi-Bin等は、ハイドロゲルによる生体髄核の補綴を試みている(特許文献1,2,3参照)。また、Charles D. Ray等もポリエチレンとハイドロゲルを組み合わせた生体髄核の置換を目的とする補綴物を作製している(特許文献4,5参照)。
PVAハイドロゲルは、ハイドロゲル中の構造水の吐出、吸引といったポンプ作用による耐繰り返し荷重性、衝撃緩和性を具備しており、人工髄核ディスク材料として好適である。
これらの人工髄核ディスクは、疾患椎間板部位において、繊維輪と椎体終板と呼ばれる椎体軟骨に囲まれた部位に挿入される。挿入された人工髄核ディスクは、生体内において、ときには体重の数倍の荷重を受けながら、上下に隣接する椎体軟骨を激しく摩擦する。
前記特許文献1, 2, 3に示される人工髄核ディスクにおける椎体軟骨との摺動面の表面粗さは2〜5μm程度であり、摺動面近傍における含水率は70〜99%程度であった。一方、前記特許文献4,5に示される人工髄核ディスクにおける椎体軟骨との摺動面は、ポリエチレン等の高分子織物ジャケットにより具現されており表面粗さは、0.5mm程度であり、更には近傍における含水状態も望めない。
米国特許発行公報第5047055号 米国特許発行公報第5192326号 米国特許発行公報第5976186号 米国特許発行公報第5824903号 米国特許発行公報第6132465号
しかし、前述の人工髄核ディスクは、含水率が70〜99%程度であったため、荷重支持性が低く、高荷重負荷による変形によりヘルニア状態の再現の恐れがあった。そして、組織の再建を周囲の繊維輪の状態に依存していた。つまり、繊維輪の状態が不完全な場合、椎間板としての機能を果たすことなく、脱落による障害の恐れがあった。加えて、荷重支持性が不十分である場合には、それを補うための椎体固定用のインストゥルメントが必要となり、患者への負担を増大させる恐れがあった。
かかる従来技術の課題に鑑み本発明は、PVAハイドロゲルからなる人工髄核ディスクにおいて荷重支持性を高め、それにより周囲の繊維輪の状態に依存することなく、単独でも十分な椎間板荷重支持機能を有する人工髄核ディスクを提供することを目的とする。
前記課題を解決するため本発明の人工髄核ディスクは、椎間板の疾患により損傷した髄核を補綴するポリビニルアルコールハイドロゲル製の人工髄核ディスクであって、椎体軟骨と摺動する概略互いに背中合わせに配置された上下の摺動面とこれら摺動面間に配置された側面とを有するとともに、前記ポリビニルアルコールハイドロゲルの含水率が20〜50%であることを特徴とする。
かかる本発明の構成によれば、20〜50%の含水率によって十分な荷重支持性を発揮することができる。十分な荷重支持性を発揮することにより、ヒトが生活する上で発生する体重の数倍の荷重を人工髄核ディスク単独で、支えることができる。従って、荷重負荷の際の破損、過度の変形、脱落等の恐れを回避できる。併せて、椎体補助固定用インストゥルメントの必要もなく、患者への負担を軽減できるのである。
また、前記範囲の含水率によれば、摩耗特性を向上させるために照射するガンマ線による架橋効率に、良い影響を与えることができる。なお、PVAハイドロゲルの含水率は25〜35%であることがさらに好ましい。
前記含水率が20%未満の場合、接触する椎体終板軟骨との界面において、十分な水分量が得られず、潤滑摩耗状態をつくりだせない。また、飽和含水量が20%以下の均質なハイドロゲルの作製は、極めて困難であり、工業的に不利である。
他方、前記含水率が50%を超える場合、ヒトの椎間板が持つ圧縮剛性、軸ヤング率、ねじり剛性、ねじりヤング率等の機械的特性を満たすことが困難であり、椎間板本来の機能を果たすことが困難になる。
本発明において、PVAハイドロゲルの含水率の測定方法は次のように行う。PVAハイドロゲルを真空中、40〜60℃にて十分に乾燥させ、その乾燥時の重量(W1)を測定する。乾燥重量測定後、40℃の温水に48時間以上浸漬する。ハイドロゲルの含水が飽和に達した後、素早く秤量瓶に移し蓋をし、含水時の重量(W2)を測定し、以下の式により算出する。

含水率(%) = (W 2 - W 1 ) × 100 / W2

次に、本発明の人工髄核ディスクの製造方法は、前記摺動面に対して50〜100kGyのガンマ線照射する工程を含むことを特徴とする。このガンマ線照射により、前記摺動面において架橋を施す。
そして、50〜100kGyの適度な照射線量によりガンマ線を照射することでPVAハイドロゲル本来の機械的特性、ヤング率、含水率を犠牲にすることなく、PVA分子鎖の架橋を引き起こし、耐摩耗性を向上させるものである。
このガンマ線照射工程は、窒素置換された低酸素濃度水中で行なうことが好ましい。これは、水中に溶存酸素が存在すると、これら酸素がまず分子鎖の切断を起こすので、PVAハイドロゲルが酸化劣化を引き起こし、耐摩耗特性およびその他の特性が低下する傾向があるためである。
前記ガンマ線照射量が50kGy未満の場合、主に主鎖の切断が起こり、主鎖の再結合および架橋が起こるには至らず、耐摩耗特性の向上への貢献は低い。
他方、前記ガンマ線照射量が100kGyを越える場合、PVAハイドロゲルの耐摩耗特性の機能は十分に発揮できるが、その高い剛性のために、接触する上下の椎体終板軟骨を損傷させる恐れがある。
本発明においてガンマ線照射量の測定は、フィルム線量計、ポリメチルメタクリレート線量計、カロリーメーターを用いて行なう。ガンマ線滅菌を行なうとき、PVAハイドロゲルは、窒素置換された生理食塩水とともに密封容器に梱包される。この密封容器外側近傍に前述の線量計を設置し測定を行なう。
更に、本発明は、以上のPVAハイドロゲル人工髄核ディスクに、ヒアルロン酸ナトリウム等のムコ多糖類を、その摺動面に添加されることがある。これらは、軟骨摺動の助剤となり、その濃度により弾性流体潤滑状態、境界潤滑状態を作り出すことで、良好な摺動特性を発揮させる。
なお、本発明の人工髄核ディスクは、椎体軟骨と摺動する摺動面を有するとともに、該摺動面の中心線表面粗さRaが0.01μm〜0.15μmであることが好ましい。かかる人工髄核ディスクは、中心線表面粗さRaが0.01μm〜0.5μmの成型面を有する金型により作製することができ。具体的には、図1の作製模式図のように、予め、任意の表面粗さにまで研磨された鋳型に、PVA溶液を流し込み、急冷することでゲル化させる。これにより、金属またはセラミックスに匹敵する表面性状をもったハイドロゲルを作製することができる。
一般に、人工関節材料の金属やセラミックスは表面研磨により、摺動面を滑らかにし優れた耐摩耗性を実現している。一方、ハイドロゲルはその柔らかく弱い物性のため、ハイドロゲル自身を研磨することはできない。そこで、前述に示すように、予め金属またはセラミックスの鋳型表面を研磨しておき、そこにPVA溶液を流し込み、ゲル化させることで、金属またはセラミックスの鋳型表面の性状が転写されたPVAハイドロゲルを作製することができる。そして、前述のように滑らかな摺動面により優れた対摩耗性が実現する。
金属またはセラミックスの鋳型としては、チタンあるいはチタン合金、コバルトクロム合金等の金属材料、アルミナ、ハイドロキシアパタイト、石英ガラス等のセラミックス材料等を用いることができる。
なお、前記中心線表面粗さRaが0.01μmより小さい場合を再現しても、ハイドロゲル状態においては、その弾性変形により実質的な効果をなさない。併せて、これらを作製するために準備される金型の加工は非常に困難を要し、工業的に不利である。
また、前記中心線表面粗さRaが0.15μmより大きい場合、生体内において、ときには体重の数倍の荷重を受けながら、上下に隣接する椎体軟骨を激しく摩擦した際、その椎体軟骨を著しく損傷させる恐れがある。
前記中心線表面粗さRaの測定は次のように行う。オリンパス光学工業株式会社製走査型共焦点レーザー顕微鏡を用い、粗さ解析により粗さ曲線標高絶対値の平均値を中心線表面粗さRaとして求めた。
本発明によれば、椎体軟骨と摺動する摺動面を有するとともに、PVAハイドロゲルの含水率が20〜50%である構成としたことにより、PVAハイドロゲルからなる人工髄核ディスクにおいて荷重支持性を高め、それにより荷重負荷の際の破損、過度の変形、脱落等の恐れを回避させしめ、併せて、椎体補助固定用インストゥルメントの必要もなく、患者への負担を軽減することができる。
また、本発明によれば、含水率が20〜50%であるPVAハイドロゲル製の人工髄核ディスクにおける前記摺動面に対して50〜100kGyのガンマ線照射により架橋を施すことにより、耐摩耗性を向上させることができる。
以下に、図を用いて実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例1
ジメチルスルホキシド(DMSO):水=80:20の重量比で作製した混合溶液に重合度8800のPVAを溶解し、PVA溶液とした。このPVA溶液を120〜140℃で溶融した後、アルミナ製の鋳型に流し込み、−15℃で急冷した。その後、DMSOと水をエタノールで洗浄し、60℃で12時間、140℃で3時間、真空熱処理をした。窒素置換した水中に48時間以上浸漬してPVAをハイドロゲル化させた。この状態にて、50 kGyのガンマ線照射及び滅菌を行なった。このPVAハイドロゲルの含水率は35%であった。
得られたPVAハイドロゲルを(L = 30) x (W =40) x (B =6) mmの角板型試験片になるように調整した。この試験片の圧縮強度をインストロン(INSTRON)社製万能試験機(INSTRON 1123)を用いて測定した。25 kNのロードセルを用い、負荷速度1.0 mm/minとして2300 kgfまで圧縮荷重を加えて測定した。試験片は試験直前に37℃の生理食塩水から取り出し、濡れたままの状態で大気中(室温)にて測定した。得られたstress−strain曲線より破断応力、見かけ弾性率及び降伏荷重を計算した。
図2〜3に、試験体のstress−strain曲線及びstress−modulus図を示す。stress−strain曲線は非常に緩やかなS字状を呈していた。このことは図3のstress−modulus図において、応力が変化するにつれて、見かけ弾性率が変化していくことを示している。stress−modulus図において試験片は、低荷重域では見かけ弾性率は非常に低く、荷重を増大させるにつれて次第に剛性を増した。その後ほぼ一定の値を示し、それ以降見かけ弾性率が低下していく傾向を示した。1200 kgfの荷重後、見かけ弾性率は上昇した。また、2300 kgfの荷重負荷後も、試験片は破壊しなかった。つまり、これらの機械的特性は、PVAハイドロゲルが人工髄核ディスクとして、十分な荷重支持性を発揮することを示唆している。
実施例2
ジメチルスルホキシド(DMSO):水=80:20の重量比で作製した混合溶液にPVAを溶解し、PVA溶液とした。このPVA溶液を120〜140℃で溶融した後、−15℃で急冷した。その後、DMSOと水をエタノールで洗浄し、60℃〜140℃で、真空熱処理をした。窒素置換した水中に48時間以上浸漬してPVAをハイドロゲル化させた。これらの手法により、含水率25%、30%、35%、60%のPVAハイドロゲルを作製した。含水率15%のPVAハイドロゲルの作製も試みたものの、十分な試験片の作製は困難であった。得られたPVAハイドロゲルを、直径20mm、厚さ3mmの円柱状に加工した。これらのPVAハイドロゲルについて、アイコー社製圧縮試験機を用い、負荷速度0.5mm/minで荷重負荷を行なった。表1に圧縮試験により観察された圧縮特性評価を、PVAハイドロゲル作製条件と併記して示す。比較参考として、イヌ腰椎から、長軸径24mm、短軸径16mm、厚さ3mmの生体試験片を採取し、併せて評価を行なった。
Figure 0004683843
含水率25〜35%のPVAハイドロゲルは、同等のサイズの生体試験片と比較して、高い圧縮剛性、圧縮ヤング率を示した。つまり、生体内においても、十分な荷重支持性を実現するPVAハイドロゲルが得られたのである。
実施例3
ジメチルスルホキシド(DMSO):水=80:20の重量比で作製した混合溶液にPVAを溶解し、PVA溶液とした。このPVA溶液を120〜140℃で溶融した後、−15℃で急冷した。その後、DMSOと水をエタノールで洗浄し、60℃〜140℃で、真空熱処理をした。窒素置換した水中に48時間以上浸漬してPVAをハイドロゲル化させた。これらの手法により、含水率35%のPVAハイドロゲルを作製した。得られたPVAハイドロゲルを窒素置換された低酸素濃度水中にて、25kGy、50kGy、75kGy、100kGy、125kGyのガンマ線照射を行なった。得られたPVAハイドロゲルのゲル分率を測定し、ガンマ線照射による架橋効果を評価した。ゲル分率の測定は、次のように行なった。各々作製されたPVAハイドロゲルを真空中、40〜60℃にて十分に乾燥させ、その乾燥時の重量(Wa)を測定した。重量測定後、煮沸した水中にてPVAゲルを溶解させた。煮沸後、残ったPVAゲル画分を真空中、40〜60℃にて十分に乾燥させ、その乾燥時の重量(Wb)を測定し、以下の式により算出した。

ゲル分率(%) = Wb x 100 / Wa
表2に、ガンマ線照射量とPVAハイドロゲルのゲル分率の関係を示す。
Figure 0004683843
ガンマ線照射量の増加と共に、ゲル分率は上昇し、50kGy以上にて、約90%と飽和する傾向を示した。つまり、50kGy以上のガンマ線照射により、高度に架橋されたPVAハイドロゲルが作製されるといえる。
実施例4
ジメチルスルホキシド(DMSO):水=80:20の重量比で作製した混合溶液にPVAを溶解し、PVA溶液とした。このPVA溶液を120〜140℃で溶融した後、−15℃で急冷した。その後、DMSOと水をエタノールで洗浄し、60℃〜140℃で、真空熱処理をした。窒素置換した水中に48時間以上浸漬してPVAをハイドロゲル化させた。得られたPVAハイドロゲルを窒素置換された低酸素濃度水中にて、75kGyのガンマ線照射を行なった。このPVAハイドロゲルを、直径20mm、厚さ3mmの円柱状に加工した。これらのPVAハイドロゲルについて、アイコー社製圧縮試験機を用い、負荷速度0.5mm/minで荷重負荷を行なった。図4に圧縮試験により観察された圧縮特性評価を示す。評価した全ての含水率のPVAハイドロゲルにおいて、ガンマ線を照射することにより、圧縮ヤング率の増加が観察された。ガンマ線照射による架橋において、更なる荷重支持性の付与が実現された。
実施例5
ジメチルスルホキシド(DMSO):水=80:20の重量比で作製した混合溶液に重合度8800のPVAを溶解し、PVA溶液とした。このPVA溶液を120〜140℃で溶融した後、アルミナ製の鋳型に流し込み、-15℃で急冷した。その後、DMSOと水をエタノールで洗浄し、60℃〜140℃で、真空熱処理をした。窒素置換した水中に48時間以上浸漬してPVAをハイドロゲル化させた。この状態にて、100 kGyのガンマ線照射及び滅菌を行なった。これらの手法により、含水率25%、45%、60%のPVAハイドロゲルを作製した。含水率15%のPVAハイドロゲルの作製も試みたものの、十分な試験片の作製は困難であった。また、生後6ヶ月、体重100 kgの食用ブタの膝蓋骨より生体軟骨試料切り出し、これを直径10 mm、高さ10 mmの円柱状に加工した。
過酷な潤滑条件で試験を行うために図6に示す一方向端面型摩擦試験機を用いた。試験機の上側に生体軟骨試料を、下側にPVAハイドロゲルを設置した。面圧を1.0 MPa、すべり速度20 mm/secとし、牛血清とリン酸緩衝液より調整した37℃の潤滑液を用いて、前述の試験機を用いて摩擦・摩耗試験を行った。
図7に摩擦試験を開始した直後の25%と45%含水率PVAハイドロゲルの摩擦係数の比較を示す。起動時の摩擦係数は、25%含水率PVAハイドロゲルの方が低い値を示した。
これら、摩擦試験により観察された摩擦摩耗評価を、PVAハイドロゲル作製条件と併記して表3に示す。
Figure 0004683843
図8に、代表的な摩擦試験後のPVAハイドロゲル表面を示す。ガンマ線を照射した45%含水率のPVAハイドロゲルでは、ガンマ線未照射のハイドロゲルと同様に若干の摩耗痕がその表面に観察された。一方、25%含水率PVAハイドロゲルでは、ガンマ線照射により、摩耗が抑制されている様子が観察された。比較的高い60%含水率のPVAハイドロゲル表面は、多くの摩耗痕が観察された。
表3の条件5〜8においては、次に示す実施例6と同様の作製方法にて準備したPVAハイドロゲルであり、その表面性状により接触する生体軟骨試料との親和性が非常に高く、PVAハイドロゲルのみならず、対合生体軟骨試料表面の状態も良好であった。
実施例6
鋳型をアルミナセラミックにより作製し、表面を研磨した。成型面の中心線表面粗さRaは0.020 mmであった。
ジメチルスルホキシド(DMSO):水=80:20の重量比で作製した混合溶液に重合度8800のPVAを溶解し、PVA溶液とした。
このPVA溶液を120〜140℃で溶融した後、アルミナセラミックス鋳型に流し込み、-15℃で急冷した。その後、DMSOと水をエタノールで洗浄し、60℃で12時間、140℃で3時間、真空熱処理をした。窒素置換した水中に48時間以上浸漬してPVAをハイドロゲル化させた。この状態にて、50kGyのガンマ線照射及び滅菌を行なった。このPVAハイドロゲルの含水率は35.4%であった。
得られたハイドロゲルの表面性状について、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。図2に、アルミナセラミック表面転写PVAハイドロゲルの共焦点レーザー顕微鏡イメージを示す。アルミナセラミック表面転写PVAハイドロゲルの表面粗さ(Ra)は、0.045 mmであった。
実施例7
実施例1と同様、鋳型表面性状を転写しガンマ線架橋を施したPVAハイドロゲルについての実施例であるが、鋳型をコバルトクロム合金により作製したのが本例である。成型面の中心線表面粗さRaは0.026 mmであった。このPVAハイドロゲルの含水率は34.8%であった。実施例1と同様に共焦点レーザー顕微鏡によりPVAハイドロゲル表面性状を評価した。図3に、コバルトクロム合金表面転写PVAハイドロゲルの共焦点レーザー顕微鏡イメージを示す。コバルトクロム合金表面転写PVAハイドロゲルの表面粗さ(Ra)は、0.071 mmであった。
実施例8
実施例1と同様、鋳型表面性状を転写しガンマ線架橋を施したPVAハイドロゲルについての実施例であるが、鋳型を石英ガラスにより作製したのが本例である。成型面の中心線表面粗さRaは0.020 mmであった。このPVAハイドロゲルの含水率は35.1%であった。実施例1と同様に共焦点レーザー顕微鏡によりPVAハイドロゲル表面性状を評価した。石英ガラス表面転写PVAハイドロゲルの表面粗さ(Ra)は、0.021 mmであった。
実験例
過酷な潤滑条件で試験を行うために図5に示す一方向端面型摩擦試験機を用いた。試験機の上側に生体軟骨試料を、下側にPVAハイドロゲルを設置した。面圧を1.0 MPa、すべり速度20 mm/secとし、牛血清とリン酸緩衝液より調整した37℃の潤滑液を用いて、前述の試験機を用いて摩擦・摩耗試験を行った。PVAハイドロゲル、対合する生体軟骨ともに摩耗傷が観察された。
その結果、実施例6〜8はPVAハイドロゲル、対合する生体軟骨ともに、摩耗跡が残らず良好な摺動状態であった。これに対して、比較例はハイドロゲル、対合する生体軟骨ともに、摩耗跡が残った。この結果から、本発明が比較例に対して大きな優位性があることが判る。
本発明によるPVAハイドロゲル人工髄核ディスクの作製方法の概要である。 実施例1のPVAハイドロゲルのstress−strain曲線図である。 実施例1のPVAハイドロゲルのstress−modulus図である。 実施例4のPVAハイドロゲルのガンマ線照射量による圧縮ヤング率の変化を示した図である。 実施例5に使用した一方向端面型摩擦試験機の概要図である。 実施例5のPVAハイドロゲルの試験開始直後の摩擦係数を示す図である。 実施例5における摩擦試験前後のPVAハイドロゲルの表面顕微鏡写真である。(a)は摩擦試験前のPVAハイドロゲル表面の顕微鏡写真、(b)は摩擦試験後の25%含水率、ガンマ線未照射PVAハイドロゲル表面の顕微鏡写真、(c)は摩擦試験後の45%含水率、ガンマ線未照射のPVAハイドロゲル表面の顕微鏡写真、(d)は摩擦試験後の25%含水率、100 kGyガンマ線照射PVAハイドロゲル表面の顕微鏡写真、(e)は摩擦試験後の45%含水率、100 kGyガンマ線照射のPVAハイドロゲル表面の顕微鏡写真である。 実施例6に示す、アルミナ鋳型により作製されたPVAハイドロゲル人工髄核ディスクの表面の共焦点レーザー顕微鏡イメージである。 実施例7に示す、コバルトクロム合金鋳型により作製されたPVAハイドロゲル人工髄核ディスクの表面の共焦点レーザー顕微鏡イメージである。
符号の説明
1・・・・・試験の荷重方向
2・・・・・ロードセル
3・・・・・上部試験片, 生体軟骨試料
4・・・・・潤滑液
5・・・・・下部試験片, PVAハイドロゲル試料
6・・・・・試験回転運動

Claims (3)

  1. 椎間板の髄核を補綴するポリビニルアルコールハイドロゲル製の人工髄核ディスクであって、椎体軟骨と摺動する概略互いに背中合わせに配置された上下の摺動面とこれら摺動面間に配置された側面とを有するとともに、前記ポリビニルアルコールハイドロゲルの含水率が20〜50%であることを特徴とする人工髄核ディスク。
  2. 前記摺動面の中心線表面粗さが0.01μm〜0.15μmであることを特徴とする請求項1記載の人工髄核ディスク。
  3. 請求項1または2に記載の人工髄核ディスクの製造方法であって、記摺動面に対して50〜100kGyのガンマ線を照射する工程を含むことを特徴とする人工髄核ディスクの製造方法。
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JP2003038637A (ja) * 1997-05-05 2003-02-12 Georgia Tech Research Corp ポリ(ビニルアルコール)クリオゲル

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