JP4683319B2 - 徐放性製剤用の分散剤 - Google Patents
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このような生理活性ペプチド性医薬品固有の問題に対処するため、薬物送達システムに関する種々の研究が行われてきた。例えば、生理活性ペプチドを長期間にわたって持続放出する徐放剤である。特許文献1には、水溶性ペプチド性生理活性物質を塩化亜鉛水溶液等により水不溶性ないし水難溶性多価金属塩とし、これと生体内分解性ポリマーとを含有してなる徐放性製剤の製造法が開示されている。また、特許文献2には、生理活性ペプチド水溶液に、水混和性有機溶媒および/または揮発性塩類を添加し凍結乾燥することにより得られる生理活性ペプチド粉体を、生体内分解性ポリマーの有機溶媒液に分散させた後、有機溶媒を除去することを特徴とする徐放性製剤の製造法が開示されている。また、特許文献3には、生理活性物質と生体内分解性ポリマーとを含有する徐放性マイクロカプセルの製造法において、マイクロカプセル化後に該生体内分解性ポリマーのガラス転移温度以上で約24〜120時間加熱乾燥することにより、残留有機溶媒が極めて少ない、医薬品として臨床上、非常に優れた性質を有する徐放性マイクロカプセルの製造法が開示されている。
さらに、特許文献4には、徐放性注射剤として、生理活性物質(疎水性抗精神病薬)を生体内分解性ポリマーからなる基剤に包含させてなるマイクロスフェアを水性溶媒に分散させて水性懸濁液とするか、植物油などに分散させて油性懸濁液としたものが開示されている。
分散液剤用の分散剤としては、(i)水性溶媒からなる水性懸濁剤、(ii)非水溶性溶媒からなる油性懸濁剤または(iii)非水溶性溶媒と水性溶媒からなる脂肪乳剤が挙げられる。しかし、水性懸濁剤は薬物の初期放出を低減する効果が小さい。また、油性懸濁剤は注射時の通針性が悪く、注射剤としては実用的でない。さらに、脂肪乳剤は、非水溶性溶媒が細かい油滴として水性溶媒との安定な均一系を形成しており、初期放出を低減する効果は小さい。
(1) 非水溶性溶媒と水性溶媒とを含有してなる2層性の徐放性製剤用分散剤、
(2) 非水溶性溶媒が植物油である前記(1)記載の分散剤、
(3) 植物油が大豆油である前記(2)記載の分散剤、
(4) 水性溶媒が水である前記(1)記載の分散剤、
(5) 水性溶媒の体積が非水溶性溶媒の体積の約0.2ないし約1000倍である前記(1)記載の分散剤、
(6) 等張化剤を含有する前記(1)記載の分散剤、
(7) 等張化剤がマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、ブドウ糖またはグリセリンである前記(6)記載の分散剤、
(8) 界面活性剤を含有する前記(1)記載の分散剤、
(9) 界面活性剤が非イオン性界面活性剤である前記(8)記載の分散剤、
(10) 増粘剤を含有する前記(1)記載の分散剤、
(11) 増粘剤がカルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムまたはヒアルロン酸ナトリウムである前記(10)記載の分散剤、
(12) 保存剤を含有する前記(1)記載の分散剤、
(13) 保存剤がアルキルパラベンである前記(12)記載の分散剤、
(14) 注射用である前記(1)記載の分散剤、
(15) 生理活性物質を含有したマトリックスと前記(1)記載の分散剤とを含有する徐放性製剤、
(16) 生理活性物質が生理活性ペプチドである前記(15)記載の徐放性製剤、
(17) 生理活性ペプチドが分子量約200〜約500,000である前記(16)記載の徐放性製剤、
(18) 生理活性ペプチドが分子量約5,000〜約500,000である前記(16)記載の徐放性製剤、
(19) 生理活性ペプチドがホルモン、サイトカイン、造血因子、増殖因子、酵素または抗体である前記(16)記載の徐放性製剤、
(20) 生理活性ペプチドがヒト成長ホルモンである前記(16)記載の徐放性製剤、
(21) マトリックス基剤が生体内分解性ポリマーである前記(15)記載の徐放性製剤、
(22) 生体内分解性ポリマーがα−ヒドロキシカルボン酸類の単独もしくは共重合体またはそれらの混合物である前記(21)記載の徐放性製剤、
(23) 生体内分解性ポリマーが乳酸/グリコール酸の組成比が約100/0〜約40/60モル%の共重合体である前記(21)記載の徐放性製剤、
(24) 生体内分解性ポリマーが乳酸単独重合体である前記(21)記載の徐放性製剤、
(25) 生体内分解性ポリマーの重量平均分子量が約3,000〜約50,000である前記(21)記載の徐放性製剤、
(26) マトリックスがマイクロカプセルである前記(15)記載の徐放性製剤、
(27) 生理活性物質を含有したマトリックスを前記(1)記載の分散剤中に分散させることを特徴とする徐放性製剤の製造方法、
(28) 生理活性物質を含有したマトリックスを非水溶性溶媒中に分散させ、得られた分散液をさらに水性溶媒中に分散させることを特徴とする徐放性製剤の製造方法、
(29) 前記(27)または(28)記載の方法により得られる徐放性製剤を提供するものである。
本発明の分散剤における非水溶性溶媒としては、大豆油、ゴマ油、コーン油、オリーブ油、ツバキ油、ナタネ油、ラッカセイ油、メンジツ油などの植物油などが用いられる。これらのうち大豆油が好ましい。
本発明の分散剤における水性溶媒としては、水、または、水と親水性有機溶媒との混合液などが用いられる。親水性有機溶媒としては、例えば、エタノールが挙げられる。このような親水性有機溶媒は、水100重量部に対して、0〜約50重量部、好ましくは0〜約10重量部添加されてもよい。本発明における水性溶媒としては、好ましくは水が用いられる。
本発明における水性溶媒には、等張化剤(浸透圧調整剤)、界面活性剤、増粘剤(粘稠化剤)、保存剤(安定化剤)、無痛化剤、局所麻酔剤およびpH調整剤等から選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。
等張化剤としては例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、ブドウ糖等の糖類もしくは塩類、またはグリセリンが挙げられる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレノキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが用いられる。
非イオン性界面活性剤の中でも、例えば、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油(polyethoxylated castor oil)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(polyethoxylated hydrogenated castor oil)、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール共重合体、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが好ましく用いられる。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に、モノステアリン酸ソルビタン(商品名:SS-10、日光ケミカルズ(株))、セスキオレイン酸ソルビタン(商品名:SO-15、日光ケミカルズ(株))、トリオレイン酸ソルビタン(商品名:SO-30、日光ケミカルズ(株))などが好適である。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、特に、ポリソルベート20(商品名:TL-10、日光ケミカルズ(株))、40(商品名:TP-10、日光ケミカルズ(株))、60(商品名:TS-10、日光ケミカルズ(株))、80(商品名:TO-10、日光ケミカルズ(株))などが好適である。ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、特に、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)(商品名:MYL-10、日光ケミカルズ(株))などが好適である。ショ糖脂肪酸エステルとしては、特に、ショ糖パルミチン酸エステル類(例えば商品名:S-1670、三菱化学フーズ(株))、ショ糖ステアリン酸エステル類(例えば商品名:P-1670、三菱化学フーズ(株))などが好適である。ポリオキシエチレンヒマシ油(polyethoxylated castor oil)としては、特に、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレート35(Polyoxy 35 Castor Oil、商品名クレモホールELもしくはEL−P、ビーエーエスエフジャパン(株))などが好適である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(polyethoxylated hydrogenated castor oil)としては、特に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(Polyoxyethylene Hydrogenated Castor Oil 50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(Polyoxyethylene Hydrogenated Castor Oil 60)などが好適である。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール共重合体としては、特に、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(商品名:アデカプルロニック F-68、旭電化工業(株))などが好適である。グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸グリセリル(MGS シリーズ、日光ケミカルズ(株))などが好適である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、特に、テトラグリセリンモノステアリン酸(MS-310、阪本薬品工業(株))デカグリセリンモノラウリン酸(Decaglyn 1-L、日光ケミカルズ(株))などが好適である。
界面活性剤としては、ポリソルベート80(Tween80)、HCO−60等が好ましい。
界面活性剤は、非水溶性溶媒と水性溶媒とが脂肪乳剤のような安定なファインエマルジョンを形成することはないが、徐放性製剤を注射すべく生理活性物質を含有したマトリックスを該分散剤で分散(例えば、手で撹拌乳化)させた際に、注射前に非水性溶媒と水性溶媒とが完全に分離して通針性を損なうことがない程度に分散系を安定化し得る量で用いることが好ましい。
増粘剤としては例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、デキストラン等の水溶性多糖類等が挙げられる。
保存剤としては例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のアルキルパラベン等が挙げられる。
無痛化剤としては例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
局所麻酔剤としては例えば、塩酸キシロカイン、クロロブタノール等が挙げられる。
pH調整剤としては例えば、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウムあるいは各種緩衝剤等が挙げられる。
尚、これらの添加剤は、溶解性、安定性等に不都合がない限り、非水溶性溶媒中に含有させることもできる。
本発明の分散剤における水性溶媒の体積は、非水溶性溶媒の体積の約0.2〜1000倍、好ましくは約2〜500倍、更に好ましくは約4〜100倍、とりわけ好ましくは約4〜50倍から選ばれる。
本発明の分散剤は、1種または2種以上の非水溶性溶媒と1種または2種以上の水性溶媒とが含まれている2層性の分散剤であり、生理活性物質を含有したマトリックスを分散させるために用いられる。従来の脂肪乳剤も、非水溶性溶媒と水性溶媒とを含有するが、非水溶性溶媒が細かい油滴として水性溶媒との安定な均一系を形成している。一方、本発明の分散剤では、振り混ぜるとある程度の時間(例えば、振り混ぜてから分散液を注射し終えるのに十分な時間)脂肪乳剤のような状態になるものの、非水溶性溶媒と水溶性溶媒とが熱力学的に不安定であり均一系を形成することができず、速やかに2層性となるものである(ここで2層性とは、混合した際に2層性となるものであって分散剤として一体不可分に用いられるものである限り、非水溶性溶媒と水性溶媒とは必ずしも界面を接した状態で調製される必要はない)。また、従来の脂肪乳剤は、例えば、油成分(例えば大豆油)、リン脂質(例えば卵黄レシチン)、水及び必要に応じてその他添加剤(例えばグリセンリン)等を混合後、必要により加熱して、マントン−ガウリン型等の加圧噴射式ホモジナイザー、ミクロフルイダイザー、超音波ホモジナイザー等により充分に微細化することにより製造でき、さらに必要に応じて滅菌(濾過滅菌や高圧蒸気滅菌)し、窒素ガスとともに容器中(例えばアンプル)に充填密封される。一方、本発明の2層性の徐放性製剤用分散剤は、一般的な溶液注射剤の製法に準じて製造することができる。具体的には例えば、非水溶性溶媒(例えば大豆油)と、水性溶媒(例えば、水)、等張化剤(例えばマンニトール)に、所望により界面活性剤(例えばポリソルベート80)、増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)等から選ばれる1種または2種以上の添加剤を加え、それらをたとえば窒素ガスとともに容器中(例えばアンプル)に充填密封して、高圧蒸気滅菌することにより製造することができる。
また、本発明の徐放性製剤は、(1)生理活性物質を含有したマトリックスを非水溶性溶媒と水性溶媒とを含有してなる2層性の分散剤中に分散させるか、あるいは(2)生理活性物質を含有したマトリックスをまず上記した非水溶性溶媒で分散させた後、上記した水性溶媒をさらに加えて分散させることにより製造することができる。本明細書において、「マトリックス(または分散液)を分散剤もしくは非水溶性溶媒(または水性溶媒)中に分散させる」という場合、その方向性は限定されず、マトリックス(または分散液)に分散剤もしくは非水溶性溶媒(または水性溶媒)を添加しても、あるいは分散剤もしくは非水溶性溶媒(または水性溶媒)にマトリックス(または分散液)を添加してもよい。
生理活性物質を含有したマトリックスと本発明の分散剤とを含有する徐放性製剤は、例えばマイクロカプセルとして、あるいはマイクロカプセルを原料物質として種々の剤形に製剤化し、非経口剤〔非血管内への注射剤(例えば、筋肉内、皮下、臓器等への注射剤または埋め込み剤等);血管内への注射剤または点滴剤等〕、経口剤(懸濁剤等の液剤等)として投与することができる。本明細書において、「マイクロカプセル」は、マトリックス構造を有する固体微粒子担体の総称の意味で用いられており、内部構造的には均一なマトリックス型担体といわゆるリザーバー型担体(狭義のマイクロカプセル)の両方を包含し、また外形的には球状(狭義のマイクロスフェア)だけでなく、注射剤用として許容されるいかなる形状をも包含する。
本発明の徐放性製剤は特に注射用であることが好ましい。例えば、徐放性製剤がマイクロカプセルである場合、本発明の分散剤を加え懸濁剤とすることにより実用的な注射用徐放性製剤が得られる。
本発明における生理活性物質としては、特に限定されないが、例えば生理活性を有するペプチド系化合物(以下、「生理活性ペプチド」という)、その他抗生物質、抗真菌薬、抗高脂血症薬、抗腫瘍薬、解熱薬、鎮痛薬、消炎薬、鎮咳去痰薬、鎮静薬、筋弛緩薬、抗てんかん薬、抗潰瘍薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、強心薬、不整脈治療薬、血管拡張薬、降圧利尿薬、糖尿病治療薬、抗凝血薬、止血薬、抗血小板薬、抗結核薬、ホルモン薬、麻薬拮抗薬、骨吸収抑制薬、骨形成促進薬、血管新生抑制薬が挙げられる。このうち、特にペプチド系化合物が好ましい。
本発明における生理活性ペプチドとしては、哺乳動物にとって有用な生理活性を有し、臨床上用いることが出来る種々のペプチドまたはタンパク質が挙げられる。該「生理活性ペプチド」は、その分子量がモノマーとして、例えば約200ないし500,000のものが用いられ、好ましくは分子量約1,000ないし500,000のものが汎用される。さらに好ましくは分子量5,000ないし約500,000のペプチドが用いられる。
生理活性ペプチドの活性として代表的なものとしては、ホルモン作用が挙げられる。該生理活性ペプチドは天然物、合成物、半合成物のいずれでもよく、さらにそれらの誘導体ないし類縁体でもよい。該生理活性ペプチドの作用機作は、作動性あるいは拮抗性のいずれでもよい。
本発明における生理活性ペプチドとしては、例えばペプチドホルモン、サイトカイン、ペプチド性神経伝達物質、造血因子、各種増殖因子、酵素、抗体、ペプチド系抗生物質、鎮痛性ペプチド等が用いられる。
ペプチドホルモンとしては、例えばインスリン、ソマトスタチン、ソマトスタチン誘導体(サンドスタチン,米国特許第4,087,390号,同第4,093,574号,同第4,100,117号,同第4,253,998号参照)、成長ホルモン(GH)、ナトリウム利尿ペプチド、ガストリン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、ACTH誘導体(エビラタイド等)、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、甲状腺ホルモン放出ホルモン(TRH)、その塩およびその誘導体(特開昭50−121273号、特開昭52−116465号公報参照)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ヒト絨毛ゴナドトロピン(HCG)、サイモシン(チモシン)、モチリン、バソプレシン、バソプレシン誘導体{デスモプレシン〔日本内分泌学会雑誌,第54巻 第5号 第676ないし691頁(1978)〕参照}、オキシトシン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン、セクレチン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、アンジオテンシン、ヒト胎盤ラクトーゲン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)およびその誘導体(特開平6−80584号、特開平7−2695号、EP658568号、特開平8−245696号、特開平8−269097号、WO97/15296号、WO97/31943号、WO98/19698号、WO98/43658号、特表平10−511365号、WO99/55310号、特表平11−513983号、CA2270320号、WO99/64061号、特表平11−514972号、特表2000−500505号、WO2000/66138号、WO2000/66142号、WO2000/78333号、特開2001−11095号、Tissue Eng. 7(1)35−44(2001)、Diabetologia 43(10)1319−1328(2000)、WO2000/34331号、WO2000/34332号、米国特許第6,268,343号、米国公開2001/011071号、米国公開2001/006943号、EP0733644号、WO2000/77039号、WO99/43707号、WO99/43341号、WO99/43706号、WO99/43708号、WO99/43705号、WO99/29336号、WO2000/37098号、EP0969016号、米国特許第5,981,488号、米国特許第5,958,909号、WO93/25579号、WO98/43658号、EP0869135号、米国特許第5,614,492号、米国特許第5,545,618号、米国特許第5,120,712号、米国特許第5,118,666号、WO95/05848号、WO91/11457号、EP0708179号、WO96/06628号、EP0658568号、WO87/06941号参照)、メタスチンおよびその誘導体(WO2000/24890号参照)等が用いられる。ペプチドホルモンとしては、好ましくはインスリンおよび成長ホルモン等である。
サイトカインとしては、例えばリンホカイン、モノカイン等が用いられる。リンホカインとしては、例えばインターフェロン類(アルファ型、ベータ型、ガンマ型等)、インターロイキン類(例えば、IL−2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12等)等が用いられる。モノカインとしては、例えばインターロイキン−1(IL−1)、腫瘍壊死因子(TNF)等が用いられる。サイトカインとしては、好ましくはリンホカイン等、さらに好ましくはインターフェロン等、特に好ましくはインターフェロンアルファ等である。
ペプチド性神経伝達物質としては、例えばサブスタンスP、セロトニン、GABA等が用いられる。
各種増殖因子としては、例えば塩基性あるいは酸性の繊維芽細胞増殖因子(FGF)あるいはこれらのファミリー(例えば、EGF、TGF−α、TGF−β、PDGF、酸性FGF、塩基性FGF、FGF−9等)、神経細胞増殖因子(NGF)あるいはこれらのファミリー(例えば、BDNF、NT−3、NT−4、CNTF、GDNF等)、インスリン様成長因子(例えば、IGF−1、IGF−2等)、骨増殖に関与する因子(BMP)あるいはこれらのファミリー等が用いられる。
酵素としては、例えばスーパーオキシドディスミュターゼ(SOD)、ウロキナーゼ、ティシュープラスミノーゲンアクティベーター(TPA)、アスパラギナーゼ、カリクレイン等が用いられる。
抗体としては、例えば抗エンドセリン抗体(特開平2−238894号公報参照)、抗エンドセリン−2抗体(特開平5−184388号公報参照)、抗エンドセリン−3抗体(特開平4−152894号公報、特開平6−335397号公報参照)、抗下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)抗体(国際公開第91/14786号パンフレット参照)、抗インターロイキン−2抗体(特開昭62−135770号公報参照)、抗インターフェロン−α抗体(特開昭61−67481号公報参照)、抗β−アミロイド抗体(国際公開第94/17197号公報参照)、抗神経成長因子(NGF)抗体(特開平6−317587号公報参照)、抗神経成長因子−2(NGF-2)抗体(特開平4−128298号公報、特開平6−189787号公報参照)、抗塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)抗体(特開平2−193号公報参照)、抗C5aレセプター抗体(特開平8−109200号公報参照)、抗メタスチン抗体(国際公開第03/27149号パンフレット参照)等が用いられる。さらに、既存の抗体医薬品の活性成分として知られる、マウス抗CD3モノクローナル抗体、キメラ抗gpIIIb/IIIaモノクローナル抗体、マウスもしくはキメラ抗CD20モノクローナル抗体、キメラもしくはヒト化抗インターロイキン−2レセプターモノクローナル抗体、ヒト化抗erbB2モノクローナル抗体、キメラ抗腫瘍壊死因子−α(TNF-α)モノクローナル抗体、ヒト化抗F蛋白質モノクローナル抗体、ヒト化抗CD33モノクローナル抗体、ヒト化抗CD52モノクローナル抗体等も用いられ得る。
ペプチド系抗生物質としては、例えばポリミキシンB、コリスチン、グラミシジン、バシトラシン等が用いられる。
鎮痛性ペプチドとしては、例えばエンケファリン、エンケファリン誘導体〔米国特許第4,277,394号,ヨーロッパ特許出願公開第31567号公報参照〕,エンドルフィン、キョウトルフィン等が用いられる。
その他、生理活性ペプチドとしては、サイモポエチン、ダイノルフィン、ボムベシン、セルレイン、サイモスチムリン、胸腺液性因子(THF)、血中胸腺因子(FTS)およびその誘導体(米国特許第4,229,438号参照)、およびその他の胸腺因子〔医学のあゆみ、第125巻,第10号,835−843頁(1983年)〕、ニューロテンシン、ブラジキニンおよびエンドセリン拮抗作用を有するペプチド類(ヨーロッパ特許公開第436189号、同第457195号,同第496452号、特開平3−94692号、同3−130299号公報参照)等が挙げられる。
本発明に特に好ましく適用される生理活性ペプチドとしては、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)およびこれと同様の作用を有する誘導体あるいはLH−RH拮抗物質、成長ホルモン、インスリン等が挙げられ、中でも成長ホルモン、とりわけヒト成長ホルモンが好ましい。
成長ホルモンとしては、いずれの種由来のものでも良いが、好ましくはヒト成長ホルモンである。また、脳下垂体等から抽出される天然由来も本発明に用いられるが、好ましくは遺伝子組換え型GH(特公平6−12996号公報、特公平6−48987号公報参照)であり、さらに好ましくはN末端にメチオニンを有さない天然型と同じ構造を有する組換え型hGHである。該GHとしては金属塩であってもよいが、実質的に金属を含有しないGHも用いられる。hGHとしては、分子量約22Kダルトンのみならず、分子量約20Kダルトンのもの(特開平7−101877号公報、特開平10−265404号公報参照)を用いてもよい。また、hGHの誘導体あるいはその関連タンパク質(WO99/03887号公報参照)を用いてもよい。
本発明におけるマトリックスとは、基剤(例えば、生体内分解性ポリマー)で生理活性物質を含有した固形物であり、必要に応じて添加物をも含有するものであり、実質的に徐放性を制御している単位であり、例えばマイクロカプセル、埋込用ロッド等の形態がある。
本発明に用いられる生体内分解性ポリマーとしては、例えばα−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸等)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸等)、ヒドロキシトリカルボン酸(例えば、クエン酸等)等の1種以上から無触媒脱水重縮合で合成され、遊離のカルボキシル基を有する重合体あるいはこれらの混合物、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸等)、無水マレイン酸系重合体(例えば、スチレン−マレイン酸重合体等)等が挙げられる。これらはホモポリマーまたはコポリマーのいずれであってもよい。重合の形式は、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよい。また、上記のα−ヒドロキシカルボン酸類、ヒドロキシジカルボン酸類、ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有する場合、D−、L−、DL−体のいずれも用いることができる。
これらの中では、末端に遊離のカルボキシル基を有する生体内分解性ポリマー、例えばα−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸等)から合成された重合体(例えば、乳酸重合体、乳酸−グリコール酸共重合体等)、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル等が好ましい。
生体内分解性ポリマーとしては、さらに好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸類から合成された重合体等、特に好ましくは乳酸−グリコール酸重合体等である。
生体内分解性ポリマーとして乳酸−グリコール酸重合体(乳酸−グリコール酸共重合体または単重合体)を用いる場合、その組成比(モル%)は約100/0ないし約40/60が好ましく、約85/15ないし約50/50がさらに好ましい。
乳酸−グリコール酸重合体の重量平均分子量は、約3,000ないし約50,000が好ましく、約3,000ないし約25,000がより好ましく、約5,000から約20,000がさらに好ましい。
乳酸−グリコール酸重合体の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は約1.2ないし約4.0が好ましく、約1.5ないし約3.5がさらに好ましい。
約1gないし約3gの生体内分解性ポリマーをアセトン(25mL)とメタノール(5mL)との混合溶媒に溶解し、フェノールフタレインを指示薬としてこの溶液中のカルボキシル基を0.05Nアルコール性水酸化カリウム溶液で、室温(20℃)で攪拌下、速やかに滴定して末端基定量による数平均分子量を次式で算出した。
末端基定量による数平均分子量=20000×A/B
A:生体内分解性ポリマーの質量(g)
B:滴定終点までに添加した0.05Nアルコール性水酸化カリウム溶液(mL)
末端基定量による数平均分子量が絶対値であるのに対して、GPC測定による数平均分子量は、各種分析・解析条件(例えば、移動相の種類、カラムの種類、基準物質、スライス幅の選択、ベースラインの選択等)によって変動する相対値であるため、一義的な数値化は困難であるが、両測定による数平均分子量がほぼ一致するとは、例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類から合成された重合体において、末端基定量による数平均分子量がGPC測定による数平均分子量の約0.5倍から約2倍の範囲内であること、好ましくは約0.7倍から約1.5倍の範囲内であることをいう。
例えば、1種類以上のα−ヒドロキシカルボン酸類から無触媒脱水重縮合法で合成され、末端に遊離のカルボキシル基を有する重合体では、GPC測定による数平均分子量と末端基定量による数平均分子量とがほぼ一致する。これに対し、環状二量体から触媒を用いて開環重合法で合成され、末端に遊離のカルボキシル基を本質的には有しない重合体では、末端基定量による数平均分子量がGPC測定による数平均分子量の約2倍以上に大きく上回る。この相違によって末端に遊離のカルボキシル基を有する重合体は、末端に遊離のカルボキシル基を有しない重合体と明確に区別することができる。
乳酸−グリコール酸重合体の分解・消失速度は、組成比あるいは重量平均分子量によって大きく変化するが、一般的にはグリコール酸分率が低いほど分解・消失が遅いため、グリコール酸分率を低くするかあるいは分子量を大きくすることによって放出期間を長くすること(例えば、約6ヶ月)ができる。逆に、グリコール酸分率を高くするあるいは分子量を小さくすることによって放出期間を短くすること(例えば、約1週間)もできる。例えば、1週間ないし2ヶ月型徐放性製剤とするには、上記組成比および重量平均分子量の範囲の乳酸−グリコール酸重合体を用いるのが好ましい。
用いる乳酸−グリコール酸重合体は、上記公報記載の方法等、公知の方法に従い製造できる。該重合体は無触媒脱水重縮合で製造されたものが好ましい。上記GPC測定法による数平均分子量と末端基定量法による数平均分子量とが、ほぼ一致する乳酸−グリコール酸重合体(PLGA)を用いることが好ましい。
また、該重合体は組成比および/または重量平均分子量の異なる2種の乳酸−グリコール酸重合体を任意の割合で混合して用いてもよい。このような例としては、組成比(乳酸/グリコール酸)(モル%)が約75/25で重量平均分子量が約10,000の乳酸−グリコール酸共重合体と、組成比(乳酸/グリコール酸)(モル%)が約50/50で重量平均分子量が約12,000の乳酸−グリコール酸共重合体との混合物等が用いられる。混合する際の重量比は、好ましくは約25/75ないし約75/25である。
本明細書においては、生体内分解性ポリマーが金属塩の場合も含めて生体内分解性ポリマーと称することがあり、例えば乳酸−グリコール酸重合体が多価金属塩の場合も乳酸−グリコール酸重合体と称することがある。
これらの生体内分解性ポリマーの多価金属塩はWO97/01331号公報に記載の方法およびこれに準じる方法により製造することができる。
また、生体内分解性ポリマーの多価金属塩が亜鉛塩の場合には、生体内分解性ポリマーと酸化亜鉛とを有機溶媒中で反応させることによって製造することもできる。
有機溶媒への生体内分解性ポリマーおよび酸化亜鉛の添加順序は、生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液に酸化亜鉛を粉末状であるいは該有機溶媒に懸濁した状態で添加してもよく、逆に酸化亜鉛の有機溶媒懸濁液中に生体内分解性ポリマーの有機溶媒溶液を添加してもよい。また、両者を粉末状で混和後、有機溶媒を添加してもよい。
本発明の徐放性製剤に含まれる生体内分解性ポリマーの含量は、通常約30ないし99.9%(W/W)、好ましくは約60ないし97%(W/W)、さらに好ましくは約70ないし90%(W/W)である。
本発明における生理活性物質の初期放出率とは、動物(ラット)に徐放性製剤を投与後1日以内に放出された生理活性物質量の投与用量に対する割合を示す。
本法によれば、まず生理活性物質水溶液に水混和性の有機溶媒および/または揮発性塩類を添加した後、凍結乾燥により生理活性物質粉体(S相)を作成する。この際、微細な粉体を得るためには、生理活性物質溶液中の塩濃度、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)イオン濃度が低いことが好ましい。例えば、アルカリ金属がナトリウムである場合には、そのイオン濃度は約10μg/mL以下であることが好ましい。次に生体内分解性ポリマーを有機溶媒に溶解し、この有機溶媒液中に上記の生理活性物質粉体を添加し分散させる。この際、生理活性物質と生体内分解性ポリマーとの比率(重量比)は、例えば約1:1000ないし約1:1、好ましくは約1:200ないし約1:5、さらに好ましくは約1:100ないし約1:5である。また、生理活性物質粉体を有機溶媒液中に均一に分散させるため、外部物理的エネルギーを加えることが好ましい。その方法としては例えば、超音波照射、タービン型撹拌器、ホモジナイザー等が用いられる。この時の有機溶媒液中での生理活性物質の平均粒子径としては約10μm以下、さらに好ましくは約0.1μmないし約5μm、より好ましくは約0.5μmないし約2μmであることが望ましく、本発明により得られた生理活性物質粉体を用いることにより容易に達成される。本発明における生理活性物質の平均粒子径は、ホモジナイザーを用いて該生理活性物質をジクロロメタン等の有機溶媒中で分散した後に、レーザー解析式粒度分布測定装置(SALD2000A:島津)により得られる値を示す。その際、生理活性物質はジクロロメタン等の有機溶媒に、例えば約20ないし100mg/mLの濃度で添加後、ホモジナイザー(例えば、ポリトロン(キネマチカ社))を用いて約20,000rpmで約30秒ないし1分間攪拌することにより分散液とされ、さらに上記粒度分布測定装置の測定可能な範囲となるように適宜、該有機溶媒で希釈し、供試される。
次いでこのようにして調製された有機溶媒分散液(S/O型分散液)を、さらに水性溶媒(W相)中に添加して、上記と同様の外部物理的エネルギー、例えば超音波照射、タービン型撹拌器、あるいはホモジナイザー等によりS/O/W型エマルションを形成させる。以後、油相溶媒を蒸発させマイクロカプセルを製造する。この際の水相体積は、一般的には油相体積の約1倍ないし約10,000倍から選ばれる。さらに好ましくは約2倍ないし約5,000倍から選ばれる。特に好ましくは約5倍ないし約2,000倍から選ばれる。
上記外水相中には、乳化剤を加えてもよい。該乳化剤としては、一般的に安定なS/O/Wエマルションを形成できるものであれば何れでもよい。乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸等が挙げられる。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。外水相中の乳化剤の濃度は、好ましくは約0.001%ないし20%(W/W)である。さらに好ましくは約0.01%ないし10%(W/W)、特に好ましくは約0.05%ないし5%(W/W)である。
このようにして得られたマイクロカプセルは、遠心分離あるいは濾過操作により分取した後、マイクロカプセルの表面に付着している乳化剤等を蒸留水による洗浄で除去し、再び蒸留水等に分散して凍結乾燥する。
本法において生理活性物質水溶液に添加される揮発性の塩類としては、例えばアンモニウム塩(例えば酢酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、好ましくは酢酸アンモニウム等)が挙げられる。これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。揮発性の塩類の生理活性物質水溶液への添加量は、モル比において約10倍ないし約80倍モルであり、好ましくは約10倍ないし約70倍モルであり、さらに好ましくは約15倍ないし約70倍モルであり、より好ましくは約20倍ないし約70倍モルであり、最も好ましくは約20倍ないし約50倍モルである。水混和性の有機溶媒を添加する場合と同様に、揮発性塩類の添加により得られる生理活性物質水溶液を、さらに凍結乾燥することにより、取り扱いが容易で(操作性のよい)、かつ微細な(粒子径の小さな)微細生理活性物質粉体が作成できる。
本法において、生理活性物質水溶液に添加される水混和性の有機溶媒および/または揮発性の塩類は、単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。水混和性の有機溶媒および揮発性の塩類を組み合わせて用いる時は、上記のそれぞれの添加量に従って、生理活性物質水溶液に添加することができる。
本法によれば、まず生理活性物質に水または適当な緩衝液を添加し、生理活性物質溶液(W相)を作成する。次に生体内分解性ポリマーを有機溶媒に溶解し、この有機溶媒液中に上記の生理活性物質溶液を添加し分散させる。このようにして得たW/O型乳化液をさらに水性溶媒(W相)中に添加して、上記S/O/W法と同様にW/O/W型エマルションを経由して、マイクロカプセルを得る。
(a−3)水中乾燥法(O/W法)
本法によれば、まず生理活性物質とともに生体内分解性ポリマーを有機溶媒に溶解し、有機溶媒液(O相)をさらに水性溶媒(W相)中に添加して、上記S/O/W法と同様にO/W型エマルションを経由して、マイクロカプセルを得る。
本法においては、上記(a−1)のS/O型分散液あるいは(a−2)のW/O型乳化液もしくは(a−3)の油相溶液にコアセルベーション剤を撹拌下徐々に加えマイクロカプセルを析出、固化させる。該コアセルベーション剤は、上記分散液の約0.01倍ないし約1,000倍の体積量が加えられる。さらに好ましくは、約0.05倍ないし約500倍、特に好ましくは約0.1倍ないし約200倍の体積量である。コアセルベーション剤としては、生体内分解性ポリマーを溶解する有機溶媒と混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で使用した生体内分解性ポリマーを溶解しないものであればよい。具体的には、例えばシリコン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタン等が用いられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。このようにして得られたマイクロカプセルを濾過分取した後、ヘプタン等により繰り返し洗浄してコアセルベーション剤を除去する。さらに、上記(a)と同様に洗浄し、次いで凍結乾燥する。
水中乾燥法およびコアセルベーション法でのマイクロカプセルの製造では、粒子同士の凝集を防ぐために凝集防止剤を加えてもよい。該凝集防止剤としては、例えばマンニトール、ラクトース、ブドウ糖、デンプン類(例えば、コーンスターチ等)、ヒアルロン酸あるいはこのアルカリ金属塩等の水溶性多糖、グリシン、フィブリン、コラーゲン等の蛋白質、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等の無機塩類等が適宜用いられる。
本法においては、上記(a−1)のS/O型分散液あるいは(a−2)のW/O型乳化液もしくは(a−3)の油相溶液を、ノズルを用いてスプレードライヤー(噴霧乾燥器)の乾燥室内へ噴霧し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒を揮発させ、マイクロカプセルを製造する。該ノズルとしては、例えば二流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型等がある。この際所望により、上記の分散液と同時に、マイクロカプセル粒子同志の凝集防止を目的として上記凝集防止剤の水溶液を別ノズルより噴霧することも有効である。このようにして得られたマイクロカプセルは、さらに、上記(a)と同様に洗浄し、必要であれば加温(要すれば減圧下)により、水分および有機溶媒をさらに除去する。
本発明における生理活性物質を含有したマトリックスとして、埋込用ロッドを製造する場合の製造方法としては、生理活性物質と基剤の混合物を基剤のガラス転移温度以上に加温後、鋳型に入れて成形する方法(mold)や押し出し成形法(extrude)等がある。形状としては、ロッド状のものの他、自在に選択できる。あるいは、予め生理活性物質と基剤の混合物を何らかの方法で微細粉末化あるいはマイクロカプセル化しておき、ステンレスチューブあるいはテフロン(登録商標)チューブに充填し、圧縮成形することでロッド状の埋込用製剤が製造できる。この時、必要に応じて基剤のガラス転移温度以上に加温しても良い。例えば、水中乾燥法で得たマイクロカプセルを内径2.0mmのテフロン(登録商標)チューブに充填し、60℃で15分間加熱後、直径2.0mmの棒で圧縮し冷却後成形することで、外径2.0mmのロッド状製剤が得られる。
本発明における徐放性製剤の生理活性物質の初期放出率[投与後1日(24時間)までの放出率]は、好ましくは投与用量の約50%以下、より好ましくは約1ないし約30%、さらに好ましくは約2ないし約20%、もっとも好ましくは約2ないし約15%である。なお、該初期放出率は本発明の徐放性製剤皮下投与後24時間までの血中濃度のAUC(Area Under the Concentration-Time Curve)を、生理活性ペプチド溶液皮下投与後24時間までのAUCから得られる投与量−AUC直線に適用させることにより初期放出量が得られ、さらに初期放出率が算出される。
上記したマイクロカプセルを無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等が挙げられるが、特に限定されない。
徐放性製剤の適応は、使用する生理活性物質により種々異なる。生理活性物質が、例えばインスリンである場合には、糖尿病等、インターフェロンアルファである場合には、ウイルス性肝炎(例えば、C型肝炎、HBe 抗原陽性活動性肝炎等)、癌(例えば、腎癌、多発性骨髄腫等)等、エリスロポエチンの場合には貧血(例えば、腎透析時貧血等)等、G−CSFの場合には好中球減少症(例えば、制ガン剤治療時)、感染症等、IL−2の場合には癌(例えば、血管内皮腫等)等、FGFの場合には骨折、創傷(床ずれ等)、歯周病、消化管潰瘍等、FGF−9の場合には血小板減少症等、NGFの場合には老人性痴呆、神経病(ニューロパシー)等、TPAの場合には血栓症等、腫瘍壊死因子の場合には癌等の治療または予防に有効である。また、GH含有徐放性製剤では、GHの成長ホルモン作用に基づき、GH分泌不全性低身長症の他、ターナー症候群、慢性腎不全、軟骨発育不全症(軟骨異栄養症)、さらには成人成長ホルモン欠損症(成人GHD)の治療やAIDS等の消耗性疾患の治療にも適応できる。また、GHはダウン症候群、シルバー症候群、骨形成不全症、あるいは若年性慢性関節症等の疾患にも適応され、有効な治療効果を得たとの報告もあり、GH含有徐放性製剤はこれらの疾患にも適応可能である。さらには鬱血性心不全等の治療または予防にも有効である。その他、GH含有徐放性製剤が適応できる対象としては、臓器移植時やAIDS患者の薬物治療時の造血、低栄養状態の改善、腎性貧血、狭心症、高脂血症、肥満、火傷・創傷・潰瘍の治療促進、外科侵襲(手術・外傷)/術後の早期回復、敗血症、骨粗鬆症の骨折予防、骨粗鬆症による骨折患者の術後筋力早期回復、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、褥瘡等が挙げられる。また、虚弱老人の生活の質(QOL)の向上を目的とする抗老化薬として、あるいはhGHの神経保護作用により神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、脳血管障害など)の進展抑制および改善にも効果が期待できる。GHを徐放性製剤化することにより、GH連日皮下注射剤よりも、これらの適応症に対してすぐれた薬効が得られる。
徐放性製剤の有効成分である生理活性物質が、例えばインスリンである場合には、糖尿病の成人に対する投与量は、有効成分として通常、約0.001ないし約1mg/kg体重、好ましくは約0.01ないし約0.2mg/kg体重の範囲から適宜選び、1週間に1回投与するのがよい。
徐放性製剤は、常温あるいは冷所に保存することが好ましい。徐放性製剤は、冷所に保存することがさらに好ましい。ここでいう常温あるいは冷所とは、日本薬局方において定義されるものである。すなわち、常温とは15ないし25℃を、冷所とは15℃以下を意味する。冷所のうち、とりわけ2ないし8℃が好ましい。
参考例1
遺伝子組換え型hGH水溶液(hGH濃度=2mg/mL)に、酢酸アンモニウムの20倍モル等量を添加し、急速凍結後、真空乾燥することによりhGH粉体を得た。乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール=65/35,粘度=0.160dL/g)69.375gと酸化亜鉛0.375gとをジクロロメタン135gに溶解した。この有機溶媒液に上記のhGH粉体を11.25g添加し、ミニミキサー(特殊機化工業社)を用いて微粒化した。このS/O分散液を0.1%ポリビニルアルコール水溶液30Lに添加し、ホモミキサーを用いて撹拌・乳化した。室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させた後、遠心分離(約1800rpm)することによりマイクロカプセルを分取した。D−マンニトール9gを添加し凍結乾燥し、hGH含有マイクロカプセルを得た。
(1)分散媒の製造
マンニトール5g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5gおよびポリソルベート80 0.1gを注射用蒸留水に溶解し、注射用蒸留水で100mLにメスアップした。得られた溶液を孔径0.45μmのフィルターでろ過後、マイクロカプセル注射用分散媒とした。
(2)徐放性製剤の製造
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルを上記(1)で得た分散媒で分散させ、徐放性製剤を得た。
比較例2
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルをイントラファット0.75mLで分散させ、徐放性製剤を得た。
イントラファットは、ダイズ油10w/v%を含有する脂肪乳剤で、日本製薬株式会社のイントラファット注射液を使用した。
実施例1
参考例1で得たhGH含有マイクロカプセルを大豆油0.075mLで分散したのち、比較例1(1)で得た分散媒0.675mLで懸濁液を調製し、徐放性製剤を得た。
実施例1、比較例1及び2で得た徐放性製剤を用いて以下の試験を実施した。
(1)ラットでのin vivo放出性
免疫抑制SDラット(雄性、6週齢)に、マイクロカプセルを皮下投与し(hGH量として6mg/ラット)、経時的に採血後、その血清中のhGH濃度をラジオイムノアッセイ(AbビーズHGH、栄研化学)により測定し、hGH徐放性を評価した。免疫抑制SDラットはプログラフ(藤沢薬品工業)を、マイクロカプセル投与3日前に0.4mg/ラット、投与時、4日後、7日後にそれぞれ0.2mg/ラットを皮下投与して作成した。結果を図1、図2に示す。
(2)初期放出率
免疫抑制SDラット(雄性、6週齢)に、hGH水溶液(濃度5、10、20mg/kg)を皮下投与し、経時的に24時間まで採血後、その血清中のhGH濃度をラジオイムノアッセイ(AbビーズHGH、栄研化学)により測定し、各濃度におけるAUC(Area Under the Concentration)を求め、投与量−AUC直線を得た。
また、免疫抑制SDラット(雄性、6週齢)に、マイクロカプセル(hGH量として12mg)を皮下投与し、経時的に24時間まで採血後、その血清中のhGH濃度をラジオイムノアッセイ(AbビーズHGH、栄研化学)により測定し、各マイクロカプセルにおけるAUCを求めた。得られたAUCを投与量−AUC直線に適用することにより初期放出量を得、初期放出率を算出した。
実施例1の徐放性製剤の初期放出率は16.9%で、参考例1の徐放性製剤の初期放出率は、それぞれ27.6%及び26.1%であった。
以上の結果から明らかなように、実施例1の徐放性製剤は、初期放出(投与1日目までの放出量)が小さく、その後の持続濃度(投与後1日を超え2週間までの放出量)が高かった。すなわち、分散剤として非水溶性溶媒と水性溶媒とを安定に乳化させることなく用いることにより、徐放性製剤の初期放出の抑制と、2週にわたる高い血中hGH濃度の持続が達成された。
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