JP4117922B2 - 徐放性製剤およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生理活性ポリペプチドを持続して放出するのに適した徐放性製剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生理活性ポリペプチドまたはその誘導体は、生体において種々の薬理作用を示すことが知られており、一方で最近の遺伝子工学あるいは細胞工学技術の進歩により純度の高いものを大量に生産することが可能となって、医薬品として臨床応用されているものが増えている。しかしながら、これらの生理活性ポリペプチドを経口投与する場合は、消化管内で酵素によって容易に分解されるので、その吸収率はきわめて低い。また生体内半減期が短いものも多い。このため通常、筋肉内や皮下に反復して注射する方法、あるいは静脈内に点滴注射する方法が取られているが、これらの方法は限られた回数の投与を必要とする場合には忍容しうるが、慢性疾患を対象として頻回投与する場合には、患者の肉体的負担は非常に大きい。例えば、C型肝炎患者の場合にはインターフェロンα(IFNα)が4週以上にわたり連日投与されており、また下垂体性小人症の場合には乳幼児あるいは若年患者に対して数カ月から10年以上の長期にわたり連日あるいは隔日に皮下あるいは筋肉内投与されている。しかもこれらの疾患で、症状の緩解、完治あるいは身長増加の効果を得るためには、臨床上有用な量の有効成分を長期間にわたって持続させることが必要と云われている。この問題を解決するために、生理活性ポリペプチドを含有する徐放性製剤の開発が数多く試みられている〔クリニカル リビューズ イン セラピュティック ドラッグ キャリヤー システムス(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems), 12号,第1〜99頁(1995年)〕。
【0003】
WO94/19020には、ポリペプチドとポリオールの混合物を有機溶媒に溶解させることによるポリペプチドの安定化法が開示されている。WO94/12158には、ポリマーと成長ホルモンとの混合物を有機溶媒に加えて急速冷凍することによって得られる徐放性製剤が開示されている。特開昭63−2930には、ポリペプチドをポリラクチドに分散させてなるマトリックスが開示されている。特開平4−46116および特開平6−65063には、生体内分解性ポリマーおよび脂肪酸塩を有機溶媒に溶解し、O/W型エマルションとすることによる徐放性製剤の製造法が開示されている。特公平6−57658には、生理活性ポリペプチドをアテロコラーゲンやアテロコラーゲンとゼラチンとの混合物からなる担体中に均一に含有させた徐放性製剤が開示されている。ファーマシューティカル リサーチ(Pharmaceutical Research),第9巻、1号、37〜39頁(1992)、ファーマシューティカル リサーチ(Pharmaceutical Research),第11巻、2号、337〜340頁(1994)およびジャーナル オブコントロールド リリース(Journal of Controlled Release),第33巻、437〜445頁(1995年)には、界面活性剤とポリマーの有機溶媒溶液にポリペプチドの水溶液を添加して得られるW/O/Wエマルションから得られる徐放性製剤が記載されている。このように、従来技術では、そのほとんどが界面活性剤と生体内分解性ポリマーとを有機溶媒に溶解し、その油相に生理活性ポリペプチドの水溶液を添加するW/O/W法が採用されている。また、生体内分解性ポリマーと界面活性剤とを含有する油相に生理活性ポリペプチドの粉末を直接添加するS/O/W法も報告されている。しかしながら、いずれの方法においても生理活性ポリペプチドの安定性が損なわれるため収率に多大の影響を及ぼしたり、あるいは得られた徐放性製剤の品質が劣るため、LHRHアナログなどの若干のペプチドを除いて医薬品として臨床上実用化されているものはない。
前記のように、生理活性ポリペプチドの生理活性を保持しながら徐放性製剤を製造する試みは種々報告されているが、LHRHアナログなどの若干のペプチドを除いて、特に高次構造を有するポリペプチドの場合生体内適合性ポリマーへの生理活性ポリペプチドの取り込み率、初期放出の抑制あるいは長期にわたる一定した徐放性などの点で未だ臨床上満足すべき製剤は得られていない。すなわち、投与初期の血中濃度が予想外に高くなったり、薬物放出速度が徐放期間中に一定でなかったりあるいは製造工程中に生理活性ポリペプチドが変性し十分な収率、効果が得られていない。また徐放性埋め込み剤の場合には、投与部位での疼痛により十分なコンプライアンスが得られないことや、基剤として用いられる異種動物コラーゲンに由来する抗原性が危惧される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
生理活性ポリペプチドの生理活性を保持しながら、長期にわたる一定した徐放性を有する臨床上有用な徐放性製剤およびその製造法の開発が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記の問題点を解決するため鋭意研究を進めたところ、あらかじめ生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを混合し、これを急速乾燥することによって得られた微粒子を、油相に分散させてから徐放性製剤に成型すると、予想外にも生理活性ポリペプチドのポリマーへの取り込み率が向上し、初期放出が飛躍的に抑制され、かつ長期間にわたる一定した放出速度を示す優れた徐放性製剤が得られることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は
(1)生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを含む急速乾燥品を油相に分散させ、成型することを特徴とする徐放性製剤の製造法;(2)油相に分散した急速乾燥品の平均粒子径が約0.05μmないし約50μmである前記(1)記載の製造法;(3)生理活性ポリペプチドと界面活性剤との重量比が約1:0.001ないし約1:1000である前記(1)記載の製造法;(4)油相が生体内適合性ポリマーを含む有機溶媒相である前記(1)記載の製造法;(5)有機溶媒中の生体内適合性ポリマーの濃度が約0.01%(W/W)ないし約80%(W/W)である前記(4)記載の製造法;(6)生理活性ポリペプチド、界面活性剤および生体内適合性ポリマーの全量に対する界面活性剤の使用割合が約0.002%(W/W)ないし約50%(W/W)である前記(4)記載の製造法;
【0006】
(7)生理活性ポリペプチドが水溶性である前記(1)記載の製造法;(8)生理活性ポリペプチドがホルモン類である前記(1)記載の製造法;(9)ホルモン類が成長ホルモン類である前記(8)記載の製造法;(10)ホルモン類がインスリン類である前記(8)記載の製造法;(11)生理活性ポリペプチドがサイトカイン類である前記(1)記載の製造法;(12)サイトカイン類がインターフェロン類またはインターロイキン類である前記(11)記載の製造法;(13)生体内適合性ポリマーが生体内分解性ポリマーである前記(4)記載の製造法;(14)生体内分解性ポリマーが脂肪酸ポリエステルである前記(13)記載の製造法;(15)脂肪酸ポリエステルが乳酸−グリコール酸共重合体である前記(14)記載の製造法;(16)乳酸−グリコール酸共重合体の分子量が約3,000ないし70,000で、この乳酸/グリコール酸の組成比が約100/0ないし約30/70である前記(14)記載の製造法;(17)脂肪酸ポリエステルがヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体である前記(14)記載の製造法;(18)ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体の分子量が約3,000ないし約70,000で、このヒドロキシ酪酸/グリコール酸の組成比が約100/0ないし約40/60である前記(17)記載の製造法;
【0007】
(19)界面活性剤が非イオン性である前記(1)記載の製造法;(20)非イオン性界面活性剤の親水性親油性比(HLB)が10以上である前記(19)記載の製造法;(21)界面活性剤がポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリビニルピロリドンから選ばれた1種または2種以上の非イオン性界面活性剤からなる前記(1)記載の製造法;(22)非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物である前記(19)記載の製造法;(23)徐放性製剤がマイクロカプセルである前記(1)記載の製造法;(24)マイクロカプセルの平均粒子径が約1.0ないし約200μm である前記(23)記載の製造法;(25)徐放性製剤が注射剤である前記(1)記載の製造法;(26)生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを含む急速乾燥品が油相に分散した分散液;(27)油相に分散した急速乾燥品の平均粒子径が約0.05μmないし50μmである前記(26)記載の分散液;(28)生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを含む水溶液または懸濁液の急速乾燥品が生体内適合性ポリマー含有の油相に分散した徐放性製剤用原料;および(29)前記(1)記載の製造法により製造される医薬用徐放性製剤;(30)生理活性ポリペプチドが成長ホルモン類である前記(29)記載の製剤;(31)成長ホルモン分泌不全症、下垂体性小人症、ターナー症候群、慢性腎疾患、軟骨異栄養症、成人性下垂体不全症、ダウン症候群、シルバー症候群、骨形成不全症、骨粗鬆症、又は若年性慢性関節症の予防又は治療用である前記(30)の製剤などに関する。
【0008】
本明細書においてアミノ酸、ペプチドなどに関して略号で表示する場合、IUPAC−IUB コミッション・オン・バイオケミカル・ノーメンクレーチャー(Commission on Biochemical Nomenclature)による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものとする。またアミノ酸に光学異性体がありうる場合は、特に明示しない限りL体を示すものとする。
本発明の構成成分である生理活性ポリペプチドとしては、哺乳動物にとって有用な生理活性を有し、臨床上用いることができる種々のペプチドまたはタンパク質が挙げられる。該「生理活性ポリペプチド」は、その分子量が、モノマーとして、例えば約2,000ないし約200,000のものが用いられ、好ましくは約5,000ないし約50,000、特に約5,500ないし約30,000のものが汎用される。好ましい生理活性ポリペプチドには、生化学の分野で高次構造を有すると云われるタンパク質に分類される高分子が含まれる。本発明で用いられる生理活性ポリペプチドの種類は、本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、その代表的なものとしては、例えば成長因子類、ホルモン類、サイトカイン類および酵素類などが挙げられる。より具体的には、例えば以下の高分子ペプチド、タンパク質などが挙げられる。
【0009】
(1)成長因子類としては、例えば神経成長因子(NGF−1,NGF−1など)、神経栄養因子(NTF)、上皮細胞成長因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン様成長因子(IGF−1,IGF−2,IGF−3など)、繊維芽細胞増殖因子(aFGF,bFGF)、骨形成原成長因子(BMP−1,BMP−2,BMP−3,BMP−4など)、心房性ナトリウム利尿因子(ANP)、軟骨誘導因子などが挙げられる。
(2)サイトカイン類としては、例えばインターフェロン類(IFN−α,−β,−γなど)、インターロイキン類(IL−1〜IL−11など)、カケクチン、オンコスタチン、コロニー刺激因子類(G−,M−,GM−CSFなど)、トロンボポエチン(TPO),エリスロポエチン(EPO)などが挙げられる。
(3)酵素類としては、例えば組織プラスミノーゲン・アクチベータ(tPA)、ウロキナーゼ(UK)、ストレプトキナーゼ、プロテインC、メタロプロテアーゼ類、スーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD)、第VIII及びIX因子などが挙げられる。
(4)ホルモン類としては、例えば成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、インスリン、グルカゴン、ガストリン、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、カルシトニンなどが挙げられる。
【0010】
本発明で用いられる生理活性ポリペプチドは、ある一定の水溶性を有するものが好ましく、その溶解度は水に対して、20℃で約1mg/100ml以上、好ましくは約100mg/100ml以上であるものが汎用される。
該「生理活性ポリペプチド」の好ましい例としては、例えばホルモン類〔例えば、成長ホルモン類(ヒト成長ホルモン類など)、インスリン類(ヒトインスリン類など)など〕、サイトカイン類(例えば、インターフェロン類、インターロイキン類など)などが挙げられる。
本発明で用いられる生理活性ポリペプチドは、天然由来あるいは遺伝子組換え技術によって得られたもの〔例えば、遺伝子組換えヒト成長ホルモン(以下、rhGHと略称することがある)〕いずれでもよい。これらは糖鎖を有していてもよく、また糖鎖構造が異なっていてもよい。さらに、これらはムテイン、誘導体、類縁体および活性フラグメントなども含む。以下において「生理活性ポリペプチド」、「成長ホルモン類」、「インスリン類」、「インターフェロン類」、「インターロイキン類」などと言う場合は、それぞれこれら糖鎖を有しているものムテイン、誘導体、類縁体および活性フラグメントを含む。
【0011】
また、本発明で用いられる生理活性ポリペプチドとしては、金属塩であってもよい。かかる金属塩としては、生体に悪影響をおよぼさない金属塩であれば特に限定されないが、生理活性ポリペプチドと水溶性多価金属塩との接触により得られる生理活性ポリペプチド金属塩が好ましい。本明細書では、これら金属塩になっているものも含めて、単に「生理活性ポリペプチド」と称する。該「水溶性多価金属塩」における多価金属としては、例えばアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウムなど)、亜鉛(II価)、鉄(II価、III価)、銅(II価)、スズ(II価、IV価)、アルミニウム(II価、III価)などが挙げられ、亜鉛、カルシウムなどが汎用される。該「水溶性多価金属塩」としては、多価金属と酸との塩、例えば多価金属と無機酸との塩または多価金属と有機酸との塩が挙げられる。該「多価金属と酸との塩」は、例えば常温(20℃)で水に対する溶解度が約20mg/ml以上の塩が好ましく、より好ましくは溶解度が約100mg/ml以上の塩であり、特に溶解度が約200mg/ml以上の塩が汎用される。該「多価金属と無機酸」との塩における無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸などが挙げられる。該「多価金属と有機酸との塩」における有機酸としては、例えば脂肪族カルボン酸、芳香族酸などが挙げられる。該「脂肪族カルボン酸」としては、例えば炭素数2ないし9の脂肪族カルボン酸(例えば脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸など)などが挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、飽和あるいは不飽和のいずれであってもよい。該「脂肪族モノカルボン酸」としては、例えば炭素数2ないし9の飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸など)および炭素数2ないし9の不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、プロピオール酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸など)などが挙げられる。該「脂肪族ジカルボン酸」としては、例えば炭素数2ないし9の飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸など)および炭素数2ないし9の不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸など)などが挙げられる。該「脂肪族トリカルボン酸」としては、例えば炭素数2ないし9の飽和脂肪族トリカルボン酸(例えば、トリカルバリル酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸など)が挙げられる。該「脂肪族カルボン酸」は、水酸基を1または2個有していてもよく、このような例としては、例えばグリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。該「脂肪族カルボン酸」は、脂肪族モノカルボン酸である場合が好ましく、より好ましくは炭素数2ないし9の脂肪族モノカルボン酸であり、特に酢酸などが汎用される。該「芳香族酸」としては、例えば安息香酸、サリチル酸などが挙げられ、特に安息香酸が汎用される。多価金属と無機酸との塩、すなわち無機酸多価金属塩としては、例えばハロゲン化塩(例えば、塩化亜鉛、塩化カルシウムなど)、硫酸塩、硝酸塩、チオシアン酸塩などが挙げられる。多価金属と脂肪族カルボン酸との塩、すなわち脂肪族カルボン酸多価金属塩としては、例えば酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、プロピオン酸カルシウム、グリコール酸亜鉛、乳酸カルシウム、乳酸亜鉛、酒石酸亜鉛などが挙げられ、例えば酢酸カルシウム、酢酸亜鉛などが好ましく、特に酢酸亜鉛が汎用される。多価金属と芳香族酸との塩、すなわち芳香族酸多価金属塩としては、例えば安息香酸塩、サリチル酸塩などが挙げられ、特に安息香酸亜鉛が汎用される。
【0012】
本発明で用いられる生理活性ポリペプチドは、あらかじめ界面活性剤と接触させてから油相に添加される。あらかじめ界面活性剤と生理活性ポリペプチドとを混合することによって、生理活性ポリペプチドは、その生理活性を臨床上有用な範囲で、例えば、少なくとも50%以上を維持し、しかも安定で微細な粒子となり、油相への分散性が非常によくなる。これにより、薬物への取り込み率が良好で、投与後の初期放出が抑制され、放出速度の一定した徐放性製剤が得られる。該「油相」としては、例えば生体内適合性ポリマーを含む有機溶媒相などが用いられる。
【0013】
該「界面活性剤」としては、イオン性および非イオン性界面活性剤が用いられるが、特に非イオン性界面活性剤が好ましい。とりわけ、親水性親油性比(HLB)が10以上(好ましくは12ないし30)の非イオン性界面活性剤が好ましい。例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物〔ポロクサマー類(旭電化工業):プルロニックF−68,F−87,F−108,F−127,L−44など〕、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル〔ポリソルベート類(日光ケミカルズ):Tween 80,60,40,20など〕、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類〔日光ケミカルズ:HCO−60,−50,−40など〕、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類〔日光ケミカルズ:ポリオキシエチレンラウリルエーテルなど〕、ソルビタン脂肪酸エステル〔スパン類(日光ケミカルズ):スパン80,60,40,20,セスキオレイン酸ソルビタンなど〕、ショ糖脂肪酸エステル〔DKエステル類(第一工業):SS,F50,F10など〕、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類が挙げられる。好ましくはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリビニルピロリドンなどが挙げられ、特にポロクサマー類(例えば、プルロニックF−68)などのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物などが汎用される。またこれらの非イオン性界面活性剤は、適当な親水性親油性比(HLB:hydrophile-lipophile balance)を得るために二種以上のものを適宜混合して用いてもよい。非イオン性界面活性剤を二種以上用いる場合、そのHLBは10以上(好ましくは12ないし30)である場合が好ましい。
該「油相」で用いられる有機溶媒としては、例えば沸点が120℃以下で、かつ水と混和しない性質のもので、高分子重合物を溶解するものであればよい。その具体例としては、例えばハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、脂肪酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などが挙げられる。これらは二種以上適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0014】
界面活性剤と生理活性ポリペプチドとの混合操作は、ふつう生理活性ポリペプチド水溶液中で行われる。この際、その水溶液は水溶性成分を含んでいてもよく、例えばpH調節剤(例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、安定化剤(例えば、血清アルブミン、ゼラチンなど)、保存剤(例えば、パラオキシ安息香酸類など)、塩類(例えば、塩化ナトリウムなど)、糖類(例えば、マンニトール、トレハロース、デキストロースなど)、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニンなど)などが挙げられる。生理活性ポリペプチドに対する界面活性剤の割合は、その生理活性ポリペプチドの生理活性が臨床上有用である(例えば、50%以上)と判断される限り特に限定されない。例えば、生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを水中で混合する際の重量比は、例えば約1:0.001ないし約1:1000、好ましくは約1:0.01ないし約1:50、より好ましくは約1:0.05ないし約1:20である。また、本発明の徐放性製剤の製造時における、生体内分解性ポリマー、生理活性ポリペプチドおよび界面活性剤の全量に対する界面活性剤の使用割合は、一般的に約0.002%(W/W)ないし約50%(W/W)、好ましくは約0.05%(W/W)ないし約20%(W/W)である。
該「急速乾燥品」とは、例えば生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを含む混合物を急速に乾燥して得られる調製品を示し、急速乾燥の方法としては、例えば凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥あるいはこれらを組み合わせた処理などがあげられる。急速乾燥とは、混合物中の生理活性ポリペプチドの生理活性が臨床上有用な範囲(例えば、50%以上)に維持され、かつ油相に分散した急速乾燥品の平均粒子径が約0.05μmないし約50μm、好ましくは約0.1μmないし約30μmであればその条件は特に問わない。特に好ましくは約0.1μmないし約10μmである。一般に、例えば生理活性ポリペプチドが熱変性による失活を起こさないような温度範囲で実施することが好ましい。
【0015】
該「生体内適合性ポリマー」としては、生体内に投与後、生体組織に適合して生体への障害反応などを示さないものであれば特に限定されない。例えば、生体内で代謝分解されて、最終的に体外に排泄されるものが好ましい。なかでも、水に難溶または不溶である高分子重合物などが汎用される。例えば脂肪酸ポリエステル類〔例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸など)、ヒドロキシトリカルボン酸類(例えば、クエン酸など)などの一種以上から合成された重合体、共重合体あるいはこれらの混合物など〕、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル類、ポリアミノ酸類(例えば、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸など)などが挙げられる。これらは、適宜の割合で混合して用いてもよい。重合の形式はランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよい。生体内分解性ポリマーは、脂肪酸ポリエステル類〔例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸など)、ヒドロキシトリカルボン酸類(例えば、クエン酸など)などの一種以上から合成された重合体、共重合体あるいはこれらの混合物など〕が汎用される。
前記した脂肪酸ポリエステル類中、α−ヒドロキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)の一種以上から合成された単重合体又は共重合体が生体内分解性および生体適合性の観点から好ましい。また、これらの重合体は適宜混合して使用してもよい。
【0016】
本発明で用いられる生体内適合性ポリマーは、自体公知の方法により製造される。前記α−ヒドロキシカルボン酸類はD−体、L−体およびD,L−体の何れでもよいが、D−体/L−体(モル/モル%)が約75/25ないし約25/75の範囲のものが好ましい。このD−体/L−体(モル/モル%)は、特に約60/40ないし約30/70の範囲のものが汎用される。前記α−ヒドロキシカルボン酸類の重合体(単重合体及び共重合体を含む。以下、単に共重合体と称する)の例としては、例えばグリコール酸と他のα−ヒドロキシカルボン酸類との共重合体が挙げられ、該「α−ヒドロキシカルボン酸類」としては、例えば乳酸、2−ヒドロキシ酪酸などが好ましい。α−ヒドロキシカルボン酸類の共重合体は、例えば乳酸−グリコール酸共重合体、2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体などが好ましく、特に乳酸−グリコール酸共重合体が汎用される。該「乳酸−グリコール酸共重合体」の組成比(乳酸/グリコール酸)(モル/モル%)は本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、約100/0ないし約30/70のものが用いられる。該組成比の好ましい例としては、約90/10ないし約40/60であり、特に約80/20ないし約45/55のものが汎用される。該「乳酸−グリコール酸共重合体」は、重量平均分子量が例えば約3,000ないし約70,000のものなどが用いられ、約3,000ないし約20,000のものが好ましい。特に約5,000ないし15,000のものが汎用される。また、該「乳酸−グリコール酸共重合体」は、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が約1.2ないし約4.0のものが好ましく、特に約1.5ないし約3.5のものが汎用される。該「乳酸−グリコール酸共重合体」は、自体公知の製造法、例えば特開昭61−28521号公報に記載の方法などに従って合成できる。該共重合体は無触媒脱水重縮合で合成されたものが好ましい。
【0017】
該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」としては、本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、例えばグリコール酸が約10ないし約75モル%、残りが2−ヒドロキシ酪酸である場合が好ましい。さらに好ましくは、グリコール酸が約20ないし約75モル%の場合である。特に、グリコール酸が約30ないし約70モル%のものが汎用される。該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」は、重量平均分子量が、例えば約2,000ないし約20,000のものが好ましい。該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」は、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、例えば約1.2ないし4.0のものが好ましく、特に約1.5ないし3.5のものが汎用される。該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」は、自体公知の製造法、例えば特開昭61−28521号公報に記載の方法などに従って合成できる。該共重合体は無触媒脱水重縮合で合成されたものが好ましい。
該「α−ヒドロキシカルボン酸類」としては、本発明の目的が達成される限り特に限定されないが、その重合体の好ましい例としては乳酸の重合体が挙げられる。該「乳酸重合体すなわちポリ乳酸」は、重量平均分子量が、例えば約3,000ないし約20,000のものが好ましく、特に約5,000ないし約15,000のものが汎用される。該「乳酸重合体」は、自体公知の製造法、例えば特開昭61−28521号公報に記載の方法などに従って合成できる。該重合体は無触媒脱水重縮合で合成されたものが好ましい。
【0018】
該「2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体」は、さらにポリ乳酸と混合して使用してもよい。該「ポリ乳酸」としては、D−体、L−体およびこれらの混合物の何れでもよいが、例えばD−体/L−体(モル/モル%)が約75/25ないし約20/80の範囲のものが用いられる。D−体/L−体(モル/モル%)は、約60/40ないし約25/75であるものが好ましく、特に約55/45ないし約25/75であるものが汎用される。該「ポリ乳酸」は、重量平均分子量が、例えば約1,500ないし約20,000のものが用いられ、約1,500ないし約10,000のものが好ましい。また、該「ポリ乳酸」は、分散度が約1.2ないし約4.0のものが用いられ、特に約1.5ないし約3.5のものが汎用される。該「ポリ乳酸」の製造法については、乳酸の二量体であるラクタイドを開環重合する方法と乳酸を脱水重縮合する方法などが知られている。本発明で使用する比較的低分子のポリ乳酸を得るためには、例えば特開昭61−28521に記載されているような乳酸を直接脱水重縮合する方法などが好ましい。
2−ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体とポリ乳酸とを混合して使用する場合、その混合比が、例えば約10/90ないし約90/10(重量%)であるものが用いられる。その混合比は、約20/80ないし約80/20の場合が好ましく、特に約30/70ないし約70/30の場合が汎用される。
【0019】
本明細書中、重量平均分子量とは、重量平均分子量が120,000、52,000、22,000、9,200、5,050、2,950、1,050、580、162の9種類のポリスチレンを基準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の分子量をいう。GPC測定により数平均分子量も計算される。分散度は重量平均分子量と数平均分子量とから計算される。GPC測定はGPCカラムKF804Lx2(昭和電工製)、RIモニターL−3300(日立製作所製)を使用し、移動相としてクロロホルムを用いた。
本発明で用いられる生体内適合性ポリマーは、金属塩となっていてもよい。該「生体内適合性ポリマー」を金属塩にするために用いられる金属塩は、生体に悪影響をおよぼさない金属塩であれば特に限定されない。該「金属塩」としては、例えば単価金属または多価金属と無機酸あるいは有機酸との塩が用いられる。該「単価金属」としては、例えばアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムなど)などが挙げられる。該「多価金属」としては、例えばアルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウムなど)、亜鉛(II価)、鉄(II価、III価)、銅(II価)、スズ(II価、IV価)、アルミニウム(II価、III価)塩などが挙げられる。該「金属」の中では、多価金属が好ましい。さらに好ましくはアルカリ土類金属、亜鉛であり、特にカルシウム、亜鉛などが汎用される。該「無機酸」としては、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、チオシアン酸などが挙げられる。該「有機酸」としては、例えば脂肪族カルボン酸、芳香族酸などが挙げられる。該「脂肪族カルボン酸」としては、例えば炭素数1ないし9の脂肪族カルボン酸(例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸など)などが挙げられる。該「脂肪族カルボン酸」は、飽和あるいは不飽和のいずれであってもよい。該「脂肪族モノカルボン酸」としては、例えば炭素数1ないし9の飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、炭酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸など)および炭素数2ないし9の不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、プロピオール酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸など)などが挙げられる。該「脂肪族ジカルボン酸」としては、例えば炭素数2ないし9の飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸など)および炭素数2ないし9の不飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸など)などが挙げられる。該「脂肪族トリカルボン酸」としては、例えば炭素数2ないし9の飽和脂肪族トリカルボン酸(例えば、トリカルバリル酸、1,2,3ーブタントリカルボン酸など)などが挙げられる。該「脂肪族カルボン酸」は、水酸基を1または2個有していてもよく、このような例としては、例えばグリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。該「脂肪族カルボン酸」は、脂肪族モノカルボン酸である場合が好ましく、より好ましくは炭素数2ないし9の脂肪族モノカルボン酸であり、特に酢酸などが汎用される。該「芳香族酸」としては、例えば安息香酸、サリチル酸、フェノールスルホン酸などが挙げられる。生体内適合性ポリマーを金属塩とするために用いられる金属塩は、多価金属と無機酸または有機酸との塩(以下、多価金属塩と略称する)が好ましい。該「多価金属塩」としては、例えば亜鉛と無機酸との塩〔例えば、ハロゲン化亜鉛(例えば、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、フッ化亜鉛など)、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛など〕、亜鉛と有機酸との塩〔例えば、脂肪族カルボン酸亜鉛塩(例えば、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、乳酸亜鉛、酒石酸亜鉛など)、芳香族酸亜鉛塩(例えば、安息香酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛など)など〕、カルシウムと無機酸との塩〔例えば、ハロゲン化カルシウム(例えば、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、フッ化カルシウムなど)、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、チオシアン酸カルシウムなど〕、カルシウムと有機酸との塩〔例えば、脂肪族カルボン酸カルシウム塩(例えば、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなど)、芳香族酸カルシウム塩(例えば、安息香酸カルシウム、サリチル酸カルシウムなど)など〕などが用いられる。該「多価金属塩」は、酢酸亜鉛、酢酸カルシウムなどが汎用される。本明細書においては、金属塩になっているものも含めて単に「生体適合性ポリマー」と称することがある。
【0020】
本発明の徐放性製剤は、生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを混合して得られる固形または半固形成分を、生体内適合性ポリマーを含む油相中に分散させることによって製剤化される。生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを混合する場合、これらを含む混合物(例えば、水溶液または懸濁液が好ましい)を急速乾燥することによって得られた急速乾燥品が好ましい。本発明の急速乾燥品は、油相に分散させた後、より微細な粒子として油相中に均一に分散させることが好ましいので、この時、例えば超音波照射あるいはホモゲナイザーによる微粒化操作などに付すことが好ましい。該「徐放性製剤」の製造法としては、例えば水中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥法あるいはこれらに準ずる方法などが挙げられる。
以下に徐放性製剤として、例えばマイクロカプセルを製造する場合の製造方法について記述する。
【0021】
(a)水中乾燥法(S/O/W法)
本方法においては、まず生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを混合し、ついで急速乾燥(例えば、凍結乾燥、真空乾燥など)に付し、急速乾燥品を得る。一方で、生体内適合性ポリマーを含む有機溶媒溶液を作製する。本発明の徐放性製剤の製造に使用する有機溶媒は、例えば沸点が120℃以下であることが好ましい。該「有機溶媒」としては、例えばハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、脂肪酸エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)などが挙げられる。これらは適宜の割合で混合して用いてもよい。該「有機溶媒」は、ジクロロメタン、酢酸エチルなどが好ましく、特にジクロロメタンが汎用される。生体内適合性ポリマーの有機溶媒溶液中の濃度は、生体内適合性ポリマーの分子量や有機溶媒の種類などによって異なるが、ふつう約0.01%(W/W)ないし約80%(W/W)の範囲のものから選ばれる。好ましくは約0.1%(W/W)ないし約70%(W/W)のものが選ばれ、特に約1%(W/W)ないし約60%(W/W)のものが汎用される。
【0022】
このようにして得られた生体内適合性ポリマー含有の有機溶媒溶液中に、前記の生理活性ポリペプチドと界面活性剤との急速乾燥品を添加し、分散させる。S/O懸濁液は、例えばポリトロン(キネマチカ社製)のようなホモゲナイザーを用いた乳化操作あるいは超音波照射などにより、分散性を向上させることができる。次いでこのS/Oエマルションを、さらに必要により、界面活性剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなど)を含有する水相中に加えて、タービン型撹拌機などを用いてS/O/Wエマルションを作成したのち、油相溶媒を蒸発させマイクロカプセルを製造する。このときの水相体積は、例えば油相体積の約1倍ないし約10,000倍から選ばれる。好ましくは、約2倍ないし約5,000倍、特に約5倍ないし約2,000倍から選ばれる。またこの際、該「水相」に pH調節剤(例えば、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、安定化剤(例えば、血清アルブミン、ゼラチンなど)、保存剤(例えば、パラオキシ安息香酸類など)あるいは浸透圧調整剤として、例えば塩類(例えば、塩化ナトリウムなど)、糖類(例えば、マンニトールなど)などを加えてもよい。
このようにして得られたマイクロカプセルは、遠心分離あるいは濾過操作により分取した後、マイクロカプセル表面に付着する乳化剤などを蒸留水で数回繰り返し洗浄除去し、再び蒸留水などに分散し、また必要であればマンニトールなどの添加物を加えて凍結乾燥する。その後、必要であれば、減圧下加温してマイクロカプセル中の水分および有機溶媒を除去する。加温条件としては、例えばマイクロカプセルを毎分10ないし20℃の昇温速度で示差走査熱量計で求めた生体内適合性ポリマーの中間点ガラス転移温度よりも約5℃以上高い温度まで加温し、マイクロカプセル自体が所定の温度に達した後、1週間以内、好ましくは2、3日以内、より好ましくは約1時間ないし24時間、同温度で保持する。
【0023】
(b)相分離法(コアセルベーション法)
本法によりマイクロカプセルを製造する場合には、前記(a)の生理活性ポリペプチド、界面活性剤および生体内適合性ポリマーを含むS/O懸濁液にコアセルベーション剤を撹拌下徐々に加えてマイクロカプセルを析出固化させる。該「コアセルベーション剤」は、エマルション体積の約0.01倍ないし約2,000倍の体積量が加えられる。さらに好ましくは約0.05倍ないし約500倍、特に約0.1倍ないし約200倍の体積量である場合が好ましい。また該「コアセルベーション剤」は、生体内適合性ポリマーの溶剤として用いた有機溶媒と混和する高分子、鉱物油または植物油等で、該「生体内適合性ポリマー」を溶解しない化合物であれば特に限定されない。具体的には、例えばシリコン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどが用いられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。このようにして得られたマイクロカプセルは、遠心分離あるいは濾過操作により分取した後、ヘプタンなどで繰り返し洗浄し、コアセルベーション剤を除去する。さらに(a)と同様にして洗浄を行い、次いで凍結乾燥する。
該「水中乾燥法」および「相分離法」でのマイクロカプセルの製造では、粒子どうしの凝集を防ぐために凝集防止剤を加えてもよい。該「凝集防止剤」としては、例えばマンニトール、ラクトース、ブドウ糖、デンプン類(例えば、コーンスターチなど)、ヒアルロン酸あるいはそのアルカリ金属塩などの水溶性多糖類;フィブリノーゲンやコラーゲンなどの蛋白;塩化ナトリウムやリン酸水素ナトリウムなどの無機塩類などが適量用いられる。
【0024】
(c)噴霧乾燥法
本法によりマイクロカプセルを製造する場合には、前記(a)の生理活性ポリペプチド、界面活性剤および生体内適合性ポリマーを含むS/O懸濁液を、ノズルを用いてスプレードライヤー(噴霧乾燥器)の乾燥室内へ噴霧し、きわめて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒を揮発させ、微粒子を調製する。該「ノズル」としては、例えば二流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型などがある。所望により凝集防止を目的として前記(b)記載の凝集防止剤を別ノズルより噴霧することも可能である。このようにして得られたマイクロカプセルは、必要であれば前記(a)と同様に減圧下加温してマイクロカプセル中の水分および有機溶媒を除去する。
【0025】
本発明の徐放性製剤は、例えば前記で得られたマイクロカプセルをそのまま、あるいはこのマイクロカプセルを原料物質として種々の剤型、例えば非経口剤(例えば、筋肉内、皮下、臓器、骨周縁部、関節部などへの注射剤または埋め込み剤、鼻腔、直腸、子宮などへの経粘膜剤など)、経口剤〔例えば、カプセル剤(例えば、硬カプセル剤、軟カプセル剤など)、顆粒剤、散剤などの固形製剤、懸濁剤などの液剤など〕などとして投与することができる。
本発明の徐放性製剤は、特に注射剤であることが好ましい。前記方法で得られたマイクロカプセルを注射剤とするには、マイクロカプセルを分散剤(例えば、Tween 80、HCO−60などの界面活性剤、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなどの多糖類、硫酸プロタミン、ポリエチレングリコール400など)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖など)、局所麻酔剤(例えば、塩酸キシロカイン、クロロブタノールなど)などとともに水性懸濁剤としたもの、ゴマ油、コーン油などの植物油またはこれにレシチンなどのリン脂質を混合したもの、あるいは中鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、ミグリオール812など)とともに分散して油性懸濁剤としたものを徐放性注射剤とする。
【0026】
徐放性製剤が、例えばマイクロカプセルである場合、微粒子であることが特に好ましい。マイクロカプセルの粒子径は、懸濁注射剤として使用する場合にはその分散度、通針性を満足する範囲であればよく、例えば、平均粒子径として約0.1ないし300μmの範囲が挙げられる。該「微粒子」は、平均粒子径が約1ないし200μmのものが好ましく、特に約2ないし100μmの範囲の粒子径を有するものが汎用される。
前記したマイクロカプセルを無菌製剤にするには、製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法などが挙げられるが、特に限定されない。
本発明の徐放性製剤は、低毒性で哺乳動物(例えば、ヒト、牛、豚、犬、ネコ、マウス、ラット、ウサギなど)に対して各生理活性ポリペプチドに応じた適応症の予防および/または治療に安全に用いることができる。
本徐放性製剤の適応は、使用する生理活性ポリペプチドにより異なる。徐放性製剤は、該「生理活性ポリペプチド」が、例えばインスリンである場合には糖尿病など、成長ホルモンである場合には、成長ホルモン分泌不全症、ターナー症候群、下垂体性小人症、慢性腎疾患、軟骨異栄養症、成人性下垂体不全症、ダウン症候群、シルバー症候群、骨形成不全症、骨粗鬆症、あるいは若年性慢性関節症など、インターフェロン−αである場合にはウイルス性肝炎(例えば、C型肝炎、HBe抗原陽性活動性肝炎など)や癌(例えば、腎癌、多発性骨髄腫など)など、エリスロポエチンあるいはトロンボポエチンの場合には貧血(例えば、腎透析時貧血など)など、G−CSFの場合には好中球減少症(例えば、制ガン剤治療時)や感染症など、IL−2の場合には癌(例えば、血管内皮腫、腎臓癌など)など、FGFの場合には消化管潰瘍など、FGF−9の場合には血小板減少症など、NGFの場合には老人性痴呆や神経病(ニューロパシー)など、tPAの場合には血栓症など、腫瘍壊死因子の場合には癌などのそれぞれ治療または予防に有効である。
【0027】
徐放性製剤の投与量は、生理活性ポリペプチドの種類と含量、放出の持続時間、対象疾患、対象動物などによって種々異なるが、該「生理活性ポリペプチド」の有効濃度が体内で保持される量であればよい。該「生理活性ポリペプチド」の投与量としては、例えば徐放性製剤が1週間型製剤である場合、好ましくは、成人1人当たり約0.0001ないし10mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは約0.0005ないし1mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。投与回数は、1週間に1回、2週間に1回、あるいは1ケ月に1回など、該「生理活性ポリペプチド」の種類と含量、剤型、放出の持続時間、対象疾患、対象動物などによって適宜選ぶことができる。
徐放性製剤の有効成分である生理活性ポリペプチドが、例えばヒト成長ホルモンで、2週間型製剤を下垂体性小人症の患者に投与する場合には、有効成分として通常、約0.01ないし約5mg/kg体重、好ましくは約0.03ないし約1mg/kg体重の範囲から適宜選び、2週間に1回投与するのがよい。また生理活性ポリペプチドがインスリンの場合、糖尿病患者に対する投与量は、有効成分として通常、約0.001ないし約1mg/kg体重、好ましくは約0.01ないし約0.2mg/kgの範囲から適宜選び、1週間に1回投与するのがよい。
徐放性製剤は、常温あるいは冷所に保存されるが、好ましくは冷所である。ここでいう常温あるいは冷所とは日本薬局方において定義されるものである。すなわち、常温とは15ないし25℃、冷所とは15℃以下を意味する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に実施例および試験例を挙げて、さらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
実施例1
ヒト成長ホルモン(rhGH)60mgおよびプルロニックF−68 20mgを蒸留水6mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末を乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=75/25;ポリスチレン換算平均分子量8400)1920mgの塩化メチレン2.5ml溶液に分散し、ポリトロンで微粒化した後、15℃に冷却した0.1% PVA水溶液800ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。この後、通常のプロペラ撹拌機で3時間ゆっくり撹拌し、塩化メチレンの揮散と共にマイクロカプセルが固化するのを待って遠心分離機で捕集し、同時に精製水で水洗した。捕集されたマイクロカプセルは、一昼夜凍結乾燥することによって粉末として得られた。
【0029】
比較例1
rhGH 60mgを蒸留水6mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末を乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=75/25;ポリスチレン換算平均分子量8400)1940mgの塩化メチレン2.5ml溶液に分散し、ポリトロンで微粒化した後、15℃に冷却した0.1% PVA水溶液800ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。以下実施例1の方法と同様の操作によりマイクロカプセル粉末を得た。〔表1〕に実施例1および比較例1の方法で得られたマイクロカプセルの特性を示す。
【表1】
〔表1〕の結果より、界面活性剤(プルロニックF−68)の添加により、マイクロカプセル中へのrhGH取り込み率が向上し、in vitro 溶出試験での初期放出(1日放出量)を抑制することが可能となった。
【0030】
比較例2
rhGH 60mgを蒸留水6mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末を、予めプルロニックF−68 20mgと乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=75/25,ポリスチレン換算平均分子量8400)1920mgとを塩化メチレン2.5mlに溶解した液に分散し、ポリトロンで微粒化した。次いで15℃に冷却した0.1%PVA水溶液800ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。以下実施例1の方法と同様の操作によりマイクロカプセル粉末を得た。
〔表2〕に実施例1および比較例2の方法で得られたマイクロカプセルの特性を示す。
【表2】
〔表2〕の結果より、界面活性剤(プルロニックF−68)を予め rhGHに添加し得られた凍結乾燥粉末を用いる実施例1の方法により調製されたマイクロカプセルは、同量の界面活性剤を溶解した油相(ジクロロメタン)を用いる比較例2の方法により調製されたマイクロカプセルより、マイクロカプセル中への rhGH取り込み率が向上し、in vitro 溶出試験での初期放出(1日放出量)を抑制することが可能となった。
【0031】
実施例2
rhGH 100mgおよびプルロニックF−68 100mgを蒸留水20mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末を乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=50/50;ポリスチレン換算平均分子量10100)1800mgの酢酸エチル2.5ml溶液に分散し、ポリトロンで微粒化した後、15℃に冷却した0.5% PVA水溶液800ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。この後、通常のプロペラ撹拌機で3時間ゆっくり撹拌し、酢酸エチルの揮散と共にマイクロカプセルが固化するのを待って遠心分離機で捕集し、同時に精製水で水洗した。捕集されたマイクロカプセルは、一昼夜凍結乾燥することによって粉末として得られた。
【0032】
実施例3
rhGH 50mg、プルロニックF−68 50mgおよびHCO−60 10mgを蒸留水10mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末をヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体(ヒドロキシ酪酸/グリコール酸=75/25;ポリスチレン換算平均分子量12,000)1890mgの塩化メチレン5ml溶液に分散し、ポリトロンで微粒化した後、15℃に冷却した5%のマンニトールを含有する0.2% PVA水溶液1000ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。この後、通常のプロペラ撹拌機で3時間ゆっくり撹拌し、塩化メチレンの揮散とともにマイクロカプセルが固化するのを待って遠心分離機で捕集し、同時に精製水で水洗した。捕集されたマイクロカプセルは、一昼夜凍結乾燥することによって粉末として得られた。
【0033】
実施例4
インターフェロン−α 10mgおよびプルロニックF−68 30mgを蒸留水10mlに溶解後、凍結乾燥した。凍結乾燥した得た粉末をヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体(ヒドロキシ酪酸/グリコール酸=75/25;ポリスチレン換算平均分子量12,000)1960mgの塩化メチレン5ml溶液に分散し、ポリトロンで微粒化した後、15℃に冷却した0.2% PVA水溶液1000ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。この後、通常のプロペラ撹拌機で3時間ゆっくり撹拌し、塩化メチレンの揮散とともにマイクロカプセルが固化するのを待って遠心分離機で捕集し、同時に精製水で水洗した。捕集されたマイクロカプセルは、一昼夜凍結乾燥することによって粉末として得られた。
【0034】
実施例5
rhGH 60mgとプルロニックF−68 2mgとを含む水溶液4.7mlに、サケ由来遊離プロタミン100mgを含む水溶液0.5mlを加え、25℃で20分間ゆっくり撹拌し不溶性複合体を形成後、凍結乾燥した。得られた粉末をカルボキシル基末端を完全にエチルエステル化したポリ乳酸重合体(乳酸100%,ポリスチレン換算平均分子量9000)1838mgの塩化メチレン5ml溶液に分散し、まずポリトロンを用いて15,000 rpm で1分間、さらに超音波照射2分間により微粒化した。次いで15℃に冷却した5%マンニトール含有0.1% PVA水溶液800ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。この後、通常のプロペラ撹拌機で3時間ゆっくり撹拌し、塩化メチレンの揮散と共にマイクロカプセルが固化するのを待って遠心分離機で捕集し、同時に精製水で水洗した。捕集されたマイクロカプセルは、一昼夜凍結乾燥することによって粉末として得られた。
【0035】
実施例6
rhGH 75mgとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油HCO−60 15mgとを5mM炭酸水素アンモニウム緩衝液(pH7.8)15mlに溶解後、酢酸亜鉛水溶液(5mg/ml)を徐々に添加し(rhGH:Zn=1:7モル比)不溶性複合体を形成した。遠心分離後、沈渣を少量の蒸留水に再分散し凍結乾燥した。得られた粉末を乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=50/50,ポリスチレン換算平均分子量15000)1425mgの塩化メチレン2ml溶液に分散し、まず超音波照射にて5分間、さらにポリトロンを用いて15,000 rpm で1分間処理し微粒化した。次いで15℃に冷却した10%マンニトール含有0.1%PVA水溶液800ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。この後、実施例5と同様の方法によりマイクロカプセルを作製した。
【0036】
実施例7
A法:
rhGH 75mgとプルロニックF−68 15mgとを蒸留水6mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末を乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=50/50,ポリスチレン換算平均分子量15000)1410mgの塩化メチレン3ml溶液に分散し、ボルテックスミキサーで約30秒間混合した。このS/O分散液0.1mlを塩化メチレンで希釈後、レーザ回折式粒度分布測定装置に供し rhGHの粒径を測定した。上記S/O分散液を、15℃に冷却した10%マンニトール含有0.1%PVA水溶液800ml中でホモジナイザーを使用してS/O/W型エマルションとした。この後、実施例5と同様の方法によりマイクロカプセルを作製した。
B法:
rhGH 75mgとプルロニックF−68 15mgとを蒸留水6mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末を乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=50/50,ポリスチレン換算平均分子量15000)1410mgの塩化メチレン3ml溶液に分散し、まず超音波照射にて5分間、さらにポリトロンを用いて15,000 rpm で1分間処理し十分に微粒化した。このS/O分散液0.1mlを塩化メチレンで希釈後、レーザ回折式粒度分布測定装置に供し rhGHの粒径を測定した。上記S/O分散液を実施例7−A法と同様の方法により処理し、マイクロカプセルを作製した。
【0037】
比較例3
rhGH 75mgを蒸留水6mlに溶解後、凍結乾燥した。得られた粉末を乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸/グリコール酸=50/50,ポリスチレン換算平均分子量15000)1410mgの塩化メチレン3ml溶液に分散し、ボルテックスミキサーで約30秒間混合した。このS/O分散液0.1mlを塩化メチレンで希釈後、レーザ回折式粒度分布測定装置に供し rhGHの粒径を測定した。上記S/O分散液を実施例7A法と同様の方法により処理し、マイクロカプセルを作製した。
〔表3〕に実施例7のA法、B法および比較例3の方法で得られたマイクロカプセルの特性を示す。
【表3】
〔表3〕の結果より、本発明に従って、液中 rhGH平均粒子径が20μm以下のS/O分散液を使用し調製したマイクロカプセルは、rhGHを界面活性剤とともに急速乾燥せず、かつ平均粒子径が30μm以上のS/O分散液を使用し調製したマイクロカプセルよりも rhGH取り込み率が向上した。
【0038】
試験例1
前記実施例1及び比較例1で得られた2種のマイクロカプセルをSDラット(雄性、6週齢)に15mg/kgで皮下投与し、その血清中濃度をラジオイムノアッセイ(Ab ビーズHGH:栄研化学)により測定した。これによって得られた結果を〔図1〕に示す。
プルロニックF−68の添加により、S/O/W型マイクロカプセルで頻繁に観察される投与後初期のrhGH血清中濃度の上昇を抑制し、より安定して長期間薬物の放出を持続させることが可能となった。その結果、in vivo での初期放出の指標である、18日間のAUC(Area Under the Concentration)に対する最初の1日間のAUCの比は、界面活性剤無添加時の94%に対し、プルロニックF−68添加時は56%に抑制された。
【0039】
試験例2
前記実施例1の方法および比較例2の方法で得られた2種のマイクロカプセルをSDラット(雄性、6週齢)に15mg/kgで皮下投与し、その血清中濃度を試験例1記載のラジオイムノアッセイにより測定した。これによって得られた結果を[図2]に示す。
プルロニックF−68を予め rhGHに添加し得られた凍結乾燥粉末を用いる実施例1の方法により調製されたマイクロカプセルは、同量の界面活性剤を溶解した油相(ジクロロメタン)を用いる比較例2の方法により調製されたマイクロカプセルより、投与後初期の rhGH血清中濃度の上昇が小さく、より安定した持続性を発揮した。その結果、投与1時間後の血清中濃度は比較例2のマイクロカプセルでは574ng/mlであったが、実施例1のマイクロカプセルでは188ng/mlであった。また in vivo での初期放出の指標である、18日間のAUCに対する最初の1日間のAUCの比は、プルロニックF−68油相添加の比較例2の方法の67%に対し、プルロニックF−68/rhGH凍結乾燥の実施例1の方法は56%に抑制された。
【0040】
試験例3
前記実施例7のA,B法および比較例3の方法で得られた3種のマイクロカプセルをSDラット(雄性、6週齢)に15mg/kgで皮下投与し、その血清中濃度を試験例1記載のラジオイムノアッセイにより測定した。これによって得られた結果を〔図3〕に示す。 プルロニックF−68の添加により、S/O/W型マイクロカプセルで頻繁に観察される投与後初期のrhGH血清中濃度の上昇を抑制し、より安定して長期間薬物の放出を持続させることが可能となった。その結果、in vivo での初期放出の指標である、14日間のAUCに対する最初の1日間のAUCの比は、界面活性剤無添加時の79%に対し、プルロニックF−68添加でボルテックス混合の場合には41%、プルロニックF−68添加で超音波−ポリトロン処理の場合には49%に抑制された。
【0041】
【発明の効果】
本発明によればあらかじめ生理活性ポリペプチドと界面活性剤とを混合し、ついで急速乾燥したものを油相に均一に分散させてから徐放性製剤に成型することによって、初期放出が抑制され、長期間にわたる一定した放出速度を示す優れた徐放性製剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は実施例1及び比較例1により得られた2種のマイクロカプセルをSDラットに皮下投与した試験例1の結果であり、rhGH血清中濃度の経時変化を示す。
【図2】は、試験例2結果であり、実施例1及び比較例2で得られた2種のマイクロカプセルをSDラットに皮下投与したときの rhGH血清中濃度の経時変化を示す。
【図3】は、試験例3の結果であり、実施例7のA法、B法及び比較例3により得られた3種のマイクロカプセルをSDラットに皮下投与したときの rhGH血清中濃度の経時変化を示す。
Claims (26)
- 水中乾燥法により水溶性生理活性ポリペプチドとポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物とを含む凍結乾燥品を生体内適合性ポリマー含有の油相に分散させ、成型することを特徴とする徐放性製剤の製造法。
- 油相に分散した凍結乾燥品の平均粒子径が0.05μmないし50μmである請求項1記載の製造法。
- 水溶性生理活性ポリペプチドとポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物との重量比が1:0.001ないし1:1000である請求項1記載の製造法。
- 油相が生体内適合性ポリマーを含む有機溶媒相である請求項1記載の製造法。
- 有機溶媒中の生体内適合性ポリマーの濃度が0.01%(W/W)ないし80%(W/W)である請求項4記載の製造法。
- 水溶性生理活性ポリペプチド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物および生体内適合性ポリマーの全量に対する界面活性剤の使用割合が0.002%(W/W)ないし50%(W/W)である請求項4記載の製造法。
- 水溶性生理活性ポリペプチドがホルモン類である請求項1記載の製造法。
- ホルモン類が成長ホルモン類である請求項7記載の製造法。
- ホルモン類がインスリン類である請求項7記載の製造法。
- 水溶性生理活性ポリペプチドがサイトカイン類である請求項1記載の製造法。
- サイトカイン類がインターフェロン類またはインターロイキン類である請求項10記載の製造法。
- 生体内適合性ポリマーが生体内分解性ポリマーである請求項4記載の製造法。
- 生体内分解性ポリマーが脂肪酸ポリエステルである請求項12記載の製造法。
- 脂肪酸ポリエステルが乳酸−グリコール酸共重合体である請求項13記載の製造法。
- 乳酸−グリコール酸共重合体の分子量が3 , 000ないし70 , 000で、この乳酸/グリコール酸の組成比が100/0ないし30/70である請求項13記載の製造法。
- 脂肪酸ポリエステルがヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体である請求項13記載の製造法。
- ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体の分子量が3 , 000ないし70 , 000で、このヒドロキシ酪酸/グリコール酸の組成比が100/0ないし40/60である請求項16記載の製造法。
- 徐放性製剤がマイクロカプセルである請求項1記載の製造法。
- マイクロカプセルの平均粒子径が1.0ないし200μmである請求項19記載の製造法。
- 徐放性製剤が注射剤である請求項1記載の製造法。
- 水溶性生理活性ポリペプチドとポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物とを含む凍結乾燥品が生体内適合性ポリマー含有の油相に分散した分散液。
- 油相に分散した凍結乾燥品の平均粒子径が0.05μmないし50μmである請求項21記載の分散液。
- 水溶性生理活性ポリペプチドとポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物とを含む水溶液または懸濁液の凍結乾燥品が生体内適合性ポリマー含有の油相に分散した徐放性製剤用原料。
- 請求項1記載の製造法により製造される医薬用徐放性製剤。
- 水溶性生理活性ポリペプチドが成長ホルモン類である請求項24記載の製剤。
- 成長ホルモン分泌不全症、下垂体性小人症、ターナー症候群、慢性腎疾患、軟骨異栄養症、成人性下垂体不全症、ダウン症候群、シルバー症候群、骨形成不全症、骨粗鬆症、又は若年性慢性関節症の予防又は治療用である請求項25記載の製剤。
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