JP4683170B2 - 複合的機能を有する医療材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、細菌、血小板、細胞および結石等の付着を抑制する機能を有する医療材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療材料に求められる機能としては種々のものがある。例えば、抗血栓性および抗菌性の問題である。血栓形成には、凝固系、血小板系、補体系など多くの因子が相互に関連し、複雑であるが、現在では抗血栓性に関しては、主に二つのアプローチがなされている。一つは、血栓形成を阻止する生理活性物質を用いる方法と他の一つは材料のみで血液成分との相互作用を弱くする方法を求めるアプローチである。前者の代表的な生理活性物質として、ヘパリンやウロキナーゼがあげられ、その固定化法が種々考えられている。しかし、結合された多量の生理活性化物質が長期にわたって血液性状に与えるかもしれない未知の影響や、高価な該物質とその固定化に要する費用の問題、また、その機能を発揮する効力存続時間に制約が存する等の課題は未だ解決されたとはいえない。後者については、材料表面の構造により血栓形成を抑制する方法であるが、経験的に、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドンのような親水性ポリマーから作製された高含水率のハイドロゲルは、比較的に血栓を形成しにくいことが知られているが、機械的強度が低く、成形加工が困難であるために実用的ではない。また、対照的な性質(親水性・疎水性、結晶性・非晶性、柔軟性・剛直性)を示すミクロ相分離構造をもつ材料表面は、血液適合性に優れているとの報告も多い。例えば、親水性のPHEMAと疎水性のポリスチレンとからなるブロック共重合体表面での血小板粘着が、特定のミクロ相分離構造において血小板の粘着数が少なくなることの報告(J.Biomed.Mater.Res15:393−402,1981)がある。さらにこうした材料表面が生体内で長期間の血液適合性を示すことが認められている(Trans.Am.Soc.Artif.Intern. Organs 33:596−601,1987)。感染防止に関しても、抗血栓性と同様に種々の抗菌物質(抗生物質、クロルヘキシジン、銀化合物など)を種々の固定化法で材料に組み入れる方法と、主に親水性材料を用いて、微生物の付着を抑制する方法が考えられる。前者については、多くの提案が出されているが、ある程度の感染予防効果は期待できるが、長期に用いた場合効果存続時間に限界があり、また、薬物アレルギーや耐性菌の問題も無視できない。後者については、特開平10−101828号にポリエチレンオキサイド単位を側鎖に含む抗バクテリア成形品が提案されている。細胞接着性についても、特開平8−266615号に混合高分子の含水ゲルの成形品が細胞非接着性を示し、手術の際に臓器内あるいは臓器間の癒着を防ぐための癒着防止用フィルムや、火傷の治療などに用いられる創傷カバー材としての利用が考えられている。抗結石性についても、特開昭62−161376号、特開平6−34815号において、結石生成の一原因物質であるカルシウムと反応する物質を材料に混合する方法や、特開平9−509195号、特開平11−47262号に示されたように材料自身が結石の付着を防止するものからなるもの等提案されているが、未だ臨床における効果は報告されていない。上述のように、従来は多くの場合、抗血栓性、抗菌性、細胞非接着性のそれぞれの分野毎に提案がなされ、例えば、血管内留置カテーテルの場合についていえば、該カテーテル周囲に析出したフィブリンが該カテーテル内外の汚染から血管内に到達した微生物を取り込み、感染性血栓を形成し菌血症を発症させることがあるなど、カテーテルに限らず、医療用具の使用用途によって異なる種々の問題が発生し、また、これらは複合した原因から発生するが、その解決について、適切な提案はなされていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、血管内や血液に触れる用途に利用される医療用具に生理活性物質を使用せず、抗血栓性を付与でき、また、長期留置等による感染を防ぐため、細菌の付着を抑制でき、或いは、創傷の癒着や臓器の癒着を防止するため、組織細胞の付着を抑制でき、さらに、腎臓や尿管に留置するカテーテル類への結石付着を抑制でき、しかもこれらの機能を簡便な方法で付与できるとともに、同一の医療材料でこれらの機能が有効に発揮できる医療材料を提案するものである。
【0004】
【課題を解決するための技術手段】
上記課題を解決するため鋭意研究し、および検討を重ねた結果、これを解決することができた。即ち、従来知られている三級アミン化合物にハロゲン化合物、特にハロゲン化メチル基を含む芳香族化合物が室温の付近でも容易に架橋反応して四級化アンモニウム塩化合物が生成することにまず着目した。
【0005】
【化1】
【0006】
そこで、更に検討を重ね、三級アミノ基を含む高分子とハロゲン化メチレンスチレンを含むビニル共重合体の間にも架橋反応が容易に生ずることを見出した。
【0007】
【化2】
【0008】
また、ハロゲン化メチルスチレンをふくむビニル共重合体の合成材料として、性質の異なる親水性モノマーと疎水性モノマーを用いたところ、これらと三級アミノ基をふくむ高分子の架橋体は、各種物質の付着性が低いことを見出した。即ち、ハロゲン化メチル芳香族基、親水性モノマー、疎水性モノマーからなるビニル共重合体と三級アミノ基を含む高分子を混合した、各種物質の付着性の低い医療材料を提案する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る三級アミノ基を含む高分子の例についてまず説明する。例えば、特許第2663186号や特許第2615698号に示されたように、三級アミノ基含有ジオールを使用して作製されたポリウレタンおよびポリウレタンウレアが使用できるが、これに限定されず、三級アミノ基を含有していれば、使用できる。好ましくは、主鎖にその三級アミノ基を含むポリエーテル型ポリウレタンが望ましい。例えば、ポリウレタンは、ジイソシアネートと、イソシアネート基と反応性を有する水酸基を含む長鎖ジオールおよび三級アミノ基を有するジオール、さらに必要に応じて短鎖ジオール鎖延長剤を反応して得られる。ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4(または2、6)−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。特に好ましくは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。長鎖ジオールとしては、数平均分子量500〜10000のソフトなセグメントを有するポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリシロキサン系ジオール等が挙げられる。好ましいのは、ポリエーテル系ジオールである数平均分子量1000〜3000のポリテトラメチレングリコールである。三級アミノ基を含むジオールとしては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−エチルジイソプロパノールアミン等が挙げられる。好ましくはN−メチルジエタノールアミンである。三級アミノ基を含むジオールの含有量は全ジオールに対して5〜85モル%、好ましくは10〜70モル%である。三級アミノ基を含むジオールの含有量が5モル%未満では三級アミノ基を含むポリウレタンとビニル共重合体の間には架橋反応が十分に進まないので好ましくない。また、含有量が85モル%を越える場合には、三級アミノ基を含むポリウレタンの機械的特性が低下するため好ましくない。また、必要に応じて、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールのような短鎖ジオール鎖延長剤を併用してもよい。
【0010】
三級アミノ基を含むポリウレタンは、公知の製造方法により得ることができる。例えば、液体重合法によりポリウレタンを製造するには、まず、長鎖ジオールおよびジイソシアネートをイソシアネート基に不活性な溶媒に溶解させ、30〜150℃、好ましくは40〜120℃で0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間にわたり攪拌しながら反応させる。これに三級アミノ基を含むジオールおよび必要に応じて短鎖ジオールを添加し、30〜150℃、好ましくは40〜120℃で1〜24時間、好ましくは3〜10時間反応させて鎖延長し、高分子量化する。ここで使用される溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびこれらの混合物が好ましい。反応時には、必要に応じて重合触媒が加えられる。触媒としては、シラウリル酸ジブチルスズ、エチルヘキサン酸スズ等が挙げられる。
【0011】
本発明に係るビニル共重合体は、ハロゲン化メチル芳香族基モノマー、好ましくはハロゲン化メチルスチレン、親水性モノマー、また、必要に応じて他の重合性モノマーを反応させて得られる。ハロゲン化メチルスチレンとしては、クロロメチルスチレン、ヨードメチルスチレン等が挙げられる。特にクロロメチルスチレンが安価であり、しかも入手が容易である点から好ましい。ハロゲン化メチルスチレンの含有量はビニル共重合体の全構造単位に対して1〜15モル%、好ましくは3〜10モル%である。
【0012】
親水性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。特にN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。疎水性モノマーとしては、種々の長さのアルキル鎖をもったアルキル(Cn)メタクリレート等が挙げられる。特にn−ラウリルメタクリレートやn−ステアリルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレートや2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルメタクリレートが好ましい。
【0013】
本発明に係るビニル共重合体は、上記のハロゲン化メチルスチレン、親水性モノマーの他に必要に応じて他の重合性モノマーを反応させて製造することができる。例えば、ハロゲン化メチルスチレン、親水性モノマー、疎水性モノマーおよび必要に応じて他の重合性モノマーを溶媒中で重合開始剤の存在下で、反応させて得られる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびこれらの混合物が挙げられる。特に、各モノマーが溶解できるメタノール、エタノールおよびこれらの溶媒を含有する混合物が好ましい。重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤ならば何れを用いても良く、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスマレノニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の有機過酸化物が挙げられる。重合開始剤の添加量は全モノマーに対して0.1〜5モル%、好ましくは0.2〜2モル%である。反応温度は、40〜120℃、好ましくは50〜100℃である。また、反応時間は、3〜72時間、好ましくは5〜48時間である。このようにして得られた三級アミノ基を含むポリウレタンとビニル共重合体を溶解して混合する。次に、塗布またはディッピング法等の方法により基材表面に皮膜を形成させる。溶媒としては、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0014】
三級アミノ基を含むポリウレタンとビニル共重合体の配合比は任意に変化させることができるが、組成物の良好な機械的特性を得るために、その重量配合比(三級アミノ基を含むポリウレタン:ビニル共重合体)が99:1〜1:99、好ましくは90:10〜30:70である。基材は次いで加熱処理し、溶媒を除去すると同時に基材表面上のコート膜を生成させる。加熱処理条件は室温〜150℃で1時間〜48時間、好ましくは80〜120℃で1時間〜5時間である。以上のように本発明で得られたコート膜は、種々の物質の付着性が低いため、抗菌性、抗血栓性、細胞非接着性および抗結石性を単独あるいは複合的に要求される各種医療用具、例えば、人工心臓、人工肺、カテーテル、ガイドワイヤー、バイパスチューブ、チューブ接続用コネクタ、癒着防止用フィルム、創傷カバー材等の幅広い分野で使用できる。
【0015】
参考例1(三級アミノ基を有するポリウレタンの製造例)。1000mlの4口セパラブルフラスコに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート41.25g(0.165モル)とジオキサン95mlを加え、攪拌下に60℃に加熱した。これにポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1010)55.55g(0.55モル)をジオキサン110mlに溶解した溶液を加え、更に触媒として、ジオキサン5mlに溶解したジラウリル酸ジブチルスズ0.0546gを加え、2時間攪拌を行った。この溶液にジオキサン425mlを追加し、さらにN−メチルジエタノールアミン9.82g(0.085モル)および1,4−ブタンジオール2.48g(0.0275モル)をジオキサン95mlに溶解した溶液を約30分間にわたって滴下した後、60〜65℃で4時間反応を続行した。反応生成物を大量の蒸留水に加え、ポリマーを沈澱させ、水とメタノールで洗浄し、60℃の送風乾燥機で一晩乾燥することにより三級アミノ基を含むポリウレタンを得た。
【0016】
参考例2(ビニル共重合体の製造例1)。100mlの3口丸底フラスコにクロロメチルスチレン0.67g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート9.82g、n−ラウリルメタクリレート5.03g、アゾビスイソブチロニトリル0.1148g、エタノール15.52gを入れ、攪拌下、窒素気流中、60℃で6時間、次いで、70℃で18時間反応を続行させた。反応生成物を大量の石油エーテル中に加え、ポリマーを沈澱させ、石油エーテルで、数回洗浄後、60℃の送風乾燥機で一晩乾燥することによりビニル共重合体を得た。
【0017】
参考例3(ビニル共重合体の製造例2)。100mlの3口丸底フラスコにクロロメチルスチレン1.22g、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート17.86g、n−ステアリルメタクリレート12.17g、アゾビスイソブチロニトリル0.1312g、エタノール31.25gを入れ、攪拌下、窒素気流中、60℃で6時間、次いで、70℃で18時間反応を続行した。反応生成物を大量の石油エーテル中に加え、ポリマーを沈澱させ、石油エーテルで、数回洗浄後、60℃の送風乾燥機で一晩乾燥することによりビニル共重合体を得た。
【0018】
参考例4(ビニル共重合体の製造例3)。以下に典型的な合成方法を述べるがこれに限定されるものではない。3口フラスコ中に10.09gトリフロロエチルメタクリレート、14.90gのメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、1.53gのクロロメチルスチレン、さらに、重合開始剤として0.1642gのアゾビスイソブチロニトリルを加え、さらに、66mlのトルエンを加える。この反応系中を窒素雰囲気下、60℃で3時間反応させた。その後、さらに70℃で18時間反応させた。その後、ヘキサンで再沈精製をおこない、その後で60℃乾燥後、わずかに黄色がかった飴状のビニル共重合体を得た。
【0019】
参考例5(ビニル共重合体の製造例4)。3口フラスコ中に12.01gの2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルメタクリレート、11.92gのメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、1.22gのクロロメチルスチレン、さらに、重合開始剤として0.1314gのアゾビスイソブチロニトリルを加え、さらに、66mlのトルエンを加える。この反応系中を窒素雰囲気下、60℃で3時間反応させた。その後、さらに、70℃で18時間反応させた。その後、ヘキサンで再沈精製をおこない、その後で60℃乾燥後、わずかに黄色がかった飴状のビニル共重合体を得た。
【0020】
参考例6(ポリウレタンとビニル共重合体の混合物のフィルム作製)。参考例1で合成したポリウレタンと参考例2または参考例3で合成したビニル共重合体のそれぞれ10重量%のテトラヒドロフラン溶液を作製し、ポリウレタン溶液:ビニル共重合体溶液=7:3の重量配合比の溶液を作製した。各溶液をガラスシャーレに流し込み、風乾後に60℃、5時間の真空乾燥を行いフィルムを作製した。
【0021】
参考例7(ポリウレタンとビニル共重合体の混合物のポリウレタンシートへのコーティング)。参考例1で合成したポリウレタンと参考例2または参考例3で合成したビニル共重合体のそれぞれ10重量%のテトラヒドロフラン溶液を作製し、ポリウレタン溶液:ビニル共重合体溶液=7:3の重量配合比のコーティング液を作製した。このコーティング液に、ポリウレタンシートを浸漬し、風乾後、115℃で1時間の熱処理を行った。(参考例1で合成したポリウレタンと参考例2で合成したビニル共重合体より作製したコーティングサンプルを以下「サンプル−1」といい、参考例1で合成したポリウレタンを参考例3で合成したビニル共重合体より作製したコーティングサンプルを「サンプル−2」として引用する。)本参考例で作製したコーティング試料に対する微生物付着試験を行った。すなわち、直径8mmの試験片にUVを照射後、無菌的に48穴プレート(滅菌済み)のウェル内に置いた。Trypticase Soy Broth(TSB)培地で、一晩、37℃で振とう培養したE.coli IFO13500の菌液を0.4%TSB培地で菌濃度、約106個/mlになるように菌液を調整し、0.5mlを先のウェル内に分注した。37℃で、24時間の静置培養を行った。試験片を燐酸緩衝液でリンス後、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した1000倍視野の写真中の付着菌数を計数した。対照としてポリウレタン(Pellethane)とシリコーンについても同様に操作した。その結果、サンプル−1には10個、サンプル−2には18個、シリコーンには275個、ポリウレタンには152個の菌が付着していた。次に、本参考例で作製したコーティング試料に対する血小板粘着試験を行った。すなわち、ウサギの保存血(日本生物材料センター製)を1000rpmの遠心分離機にかけて上清分をサンプル−1とサンプル−2に、37℃、1時間接触させた。対照としてポリウレタンについても同様に操作した。その結果、サンプル−1には3個、サンプル−2には2個、ポリウレタンには4個の血小板が粘着していた。つまり、抗血栓性に優れた医療材料であるセグメント化ポリウレタンと同様に、ほとんど血小板が粘着しなかった。また、本参考例で作製したコーティング試料に対する細胞付着試験を行った。すなわち、直径8mmの試験片にUVを照射後、無菌的に48穴プレート(滅菌済み)のウェル内に置いた。マウス由来繊維芽細胞(L929)を約105個/mlになるように、カナマイシン(100μg/ml)と10%牛血清を添加したMinimum Essential Medium培地を用いて調製し、各ウェル内に0.5ml分注した。炭酸ガス濃度5%、37℃に設定したインキュベーター内に24時間静置した。対照としてシリコーンと48穴プレートのウェル内の底面(ポリスチレン)についても同様に操作した。位相差顕微鏡で細胞の付着状態を観察するとともに、試験片を燐酸緩衝液でリンス後、クリスタルバイオレットで染色し写真を撮影した。位相差顕微鏡での観察の結果、ウェル内の底面(ポリスチレン)では、ほぼ全ての細胞が偏平して付着していた。サンプル−1とサンプル−2については、ほぼ全ての細胞が偏平せずに、丸い細胞あるいは丸い細胞が凝集した塊が一部で認められるだけで接着していなかった。シリコーンでは、一部で偏平した細胞が認められた。リンス、染色後の様子は、ウェル内の底面(ポリスチレン)では多くの細胞が付着していたが、サンプル−1とサンプル−2については、細胞がほとんど付着していなかった。シリコーンでは、部分的に付着している様子が認められた。
【0022】
参考例8。参考例1で合成したポリウレタンと参考例4または参考例5で合成したビニル共重合体のそれぞれ10重量%のテトラヒドロフラン溶液を作製し、ポリウレタン溶液:ビニル共重合体溶液=7:3の重量比で混合しコート液を作製した。各溶液でポリウレタンシートをコートし、室温で3時間乾燥させる。続いて、120℃で1時間熱処理を施し試験用サンプルAおよびBとした。そこで、本参考例で作製した試験用サンプルに対する血小板粘着試験を行った。方法は、ウサギの保存血(日本生物材料センター製)を800〜1000rpmの遠心分離機にかけて上清分を回収し、残りの血液を3000rpmの遠心分離機にかけて得た上清分で、最初に回収した上清分で希釈した。このようにして得た多血小板血漿溶液(PRP)を、試験サンプル表面と1時間接触させた。その後、試験サンプル表面をリンスした後、グルタルアルデヒヒドで固定化し、後処理を行ったサンプル表面に粘着する血小板数を電子顕微鏡の1000倍視野の写真より計数した。比較対照サンプルとしてシリコーンシートおよびポリウレタンシートを用いて同様の試験を実施した。その結果、試験用サンプルAおよびBは比較対照サンプルと比較して著しく血小板の粘着を抑制する結果であった。次に、本参考例で作製した試験用サンプルに対する微生物付着試験を行った。方法は、試験サンプルを105個/mlの初発菌濃度の下記に示す人工尿中に投入、37℃で一晩振とう培養させた。その後、サンプルを取り出し燐酸緩衝液で軽く洗浄し、後処理を実施し表面に付着している菌数を電子顕微鏡の2000倍視野での写真より計数した。比較対照サンプルとしてシリコーンシートおよびポリウレタンシートを用いて同様の試験を実施した。その結果、今回使用した緑膿菌(P.aeruginosa IF012689)および大腸菌(E.coli IF013500)に対して試験用サンプルは比較対照サンプルと比較して、著しく細菌の粘着を抑制する結果を得た。また、本参考例で作製した試験用サンプルに対する細胞付着試験を行った。方法は、直径8mmに打抜いて得た試験サンプルを48穴マルチプレート底面に軽く固定化し、約5×104個/0.5ml/wellに調整した各細胞を播種し、37℃の炭酸ガスインキュベーター内にて18時間静置培養した。その後、サンプル表面を燐酸緩衝液で軽く洗浄し、後処理を実施し表面に付着している細胞数を電子顕微鏡の1000倍視野での写真より計数した。比較対照サンプルとしてシリコーンシートおよびポリウレタンシートを用いて同様の試験を実施した。その結果、V79およびL929細胞においてシリコーンシートに比べ、何れのサンプルも細胞の付着数は同等もしくは少なかった。更に、本参考例で作製した試験用サンプルに対する結石付着試験を行った。その結果、試験用サンプルAおよびBは、一般的に結石の付着が少ないと考えられている比較対照サンプルであるシリコーンおよびポリウレタンシートよりも著しく結石の付着が少なかった。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、血管内や血液に触れる用途に利用される医療用具に生理活性物質を使用せず、抗血栓性を付与でき、また、長期留置等による感染を防ぐため細菌の付着を抑制でき、或いは創傷の癒着や臓器の癒着を防止するため組織細胞の付着を抑制でき、更に腎臓や尿管に留置するカテーテル類への結石付着を抑制でき、しかもこれらの機能を簡便な方法で付与できるとともに、同一の医療材料でこれらの機能が有効に発揮できる医療材料を得ることができる。
Claims (1)
- 三級アミノ基含有ジオールを使用して作製された主鎖に三級アミノ基を含むポリウレタンとハロゲン化メチル芳香族基、親水性モノマー(親水性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドのうちいずれか一つ以上)、および疎水性モノマー(疎水性モノマーとしてアルキル(Cn)メタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフロロブチルメタクリレートのうちいずれか一つ以上)を含むビニル共重合体の混合物からなることを特徴とする医療材料
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JP2001327594A (ja) | 2001-11-27 |
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