JP4682374B2 - 光触媒機能皮膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、汚染物質の無害化、抗菌、及び殺菌を行うことが可能な超親水性の光触媒機能皮膜形成方法に関する技術に係り、更に詳細には二酸化チタンを使用した光触媒機能皮膜形成方法に関する。
従来、二酸化チタン(TiO2)を用いた光触媒機能皮膜の研究及び応用が行われている。ここで、光触媒とは、その伝導帯と価電子帯のバンドギャップエネルギーより大きい光エネルギーが照射されると励起状態となり、電子−正孔対を生成して酸化及び還元反応を引き起こす触媒物質(光半導体物質)のことである。この二酸化チタンが成膜された基材を使用することにより、例えば、大気中のNOx及びSOxの分解、有害有機物(VOCs)の無害化、抗菌、殺菌、脱臭、防汚、自浄作用、及び環境ホルモンの分解を行うことが可能になる。
この光触媒の成膜方法としては、例えば、特許文献1に開示された乾式法と、例えば、特許文献2に開示された湿式法がある。乾式法を用いた成膜方法(以下、乾式成膜法ともいう)は、主として真空装置を使用し、基材に直接、原子又は分子をコーティングする方法であり、その方法としては、例えば、スパッタリング法、PVD(physical vapor deposition)法、又はCVD(chemical vapor deposition)法がある。また、湿式法を用いた成膜方法(以下、湿式成膜法ともいう)は、一般に光触媒溶質を含んだ溶液を基材に塗布し、その後これを乾燥させる方法であり、その方法としては、例えば、ゾルゲル法又は塗布コーティング法がある。
乾式成膜法は、湿式成膜法と比較して、膜自体の耐久性及び膜厚精度の点で優れているが、高価な真空装置が必要であり、またこの真空装置の例えば、大きさ、機能、及び性能によって成膜できる化学種が制約され、更に基材の例えば、大きさ、形状、及び種類も制約される。一方、湿式成膜法は、常温常圧で成膜できるメリットがあるが、塗布溶液並びに乾燥工程の品質管理、及び膜厚の精度確保が難しいといった制約がある。
このように、いずれの成膜方法を使用しても、その成膜条件に制約があるため、汎用性のある成膜方法、例えば、常温又は大気圧で成膜でき、基材サイズ、基材種類、基材形状、及び成膜場所の制約がなく、しかも短時間に成膜でき、更には乾式成膜法(ドライ)で後施工が可能な光触媒成膜方法の開発が望まれている。この方法を実現する手段として、プラズマ溶射又は高温ガス(例えば、3000℃程度)のフレーム溶射といった溶射法を用いた成膜方法が開示されている。なお、この方法においては、二酸化チタンが高温に加熱された後に基材に被覆される(例えば、特許文献3参照)。
特開2002−348665号公報 特許第2756474号公報 特開2000−300999号公報
しかしながら、前記した溶射法を使用して基材上に成膜された二酸化チタンの皮膜は、使用した二酸化チタン量に応じた触媒活性性能を十分に発揮できていない。また、前記した溶射法は、プラズマ又は高温ガスを使用しているため、溶射時における操作性が良好でなく、しかも作業性が劣る。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、大気中かつ常温で簡単に施工でき、大面積で複雑形状の基材表面にも耐久性のある皮膜を形成可能で、しかも光触媒機能を十分に発揮可能な超親水性の光触媒機能皮膜形成方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う発明に係る光触媒機能皮膜の形成方法は、熱膨張性を有する基材上に、燃料に加える酸素と空気の混合ガスからなる燃焼支援ガスの酸素ガス量に対する燃料量を減少させた、700℃以上1500℃以下の温度の溶射フレームを用い、5nm〜500nmのアナターゼ型二酸化チタン粒子をアルコール又はアルコールと水の混合物を用いて1μm以上100μm以下の粒子に造粒した溶射材料の高速溶射を行なって、圧縮の残留応力が発生し、しかもアナターゼ型二酸化チタンの残存率を80%以上とした溶射層を形成する。
ここで、基材には、例えば、金属、タイルガラス、板ガラス、繊維、コンクリート建材、プラスチック系建材、又はアルミニウム系建材を用いることができる。溶射フレームの温度とは、溶射ガン先端から100mmの位置で測定した温度をいう。高速溶射とは、例えば、800〜2000m/秒の噴出速度を有する溶射をいう。
なお、溶射フレームの温度が700℃未満の場合、溶射材料への入熱が十分でなく、溶射層を基材に安定に形成することができない。一方、溶射フレームの温度が2000℃を超える場合、溶射材料への入熱が過剰になり、アナターゼ型からルチル型に変態する二酸化チタンの量が増加し、基材に形成した二酸化チタンが十分な光触媒機能を発揮できない。また、溶射時において、二酸化チタンの溶射フレーム中での滞留時間は瞬時であり、溶射フレームの温度が2000℃以下であれば、二酸化チタンの光触媒機能に大きな影響を及ぼさないものと考えられる。従って、光触媒機能を十分に発揮する二酸化チタンを、溶射層中に存在させるためには、溶射フレームの温度の下限値を700℃、好ましくは800℃にし、上限値を2000℃、好ましくは1500℃、更に好ましくは1000℃にする。
発明に係る光触媒機能皮膜の形成方法において、前記溶射材料は、外径最大寸法が1μm以上100μm以下に造粒されており、前記溶射層は前記基板上に1層又は2層以上の多孔質薄膜を積層して形成することが好ましい。
溶射材料の外形最大寸法が1μm未満の場合、溶射材料が細かくなり過ぎ、乾式の状態では溶射フレームに到達する前に凝集が起こり、溶射作業を安定して実施できない。一方、溶射材料の外形最大寸法が100μmを超える場合、溶射材料が大きくなり過ぎ、溶射層の表面に凹凸が生じ易く、例えば平滑化のために後処理を行う必要が生じる場合がある。このため、平滑化された溶射層を基材に安定して形成するためには、溶射材料の外形最大寸法の下限値を1μm、好ましくは5μmとし、上限値を100μm、好ましくは80μm、更に好ましくは60μmにする。
発明に係る光触媒機能皮膜の形成方法において、前記溶射材料には、アパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上が含有されていることが好ましい。ここで、吸着材は、溶射層中に1重量%以上10重量%以下含有させるのがよい。
また、前記基材上に自溶合金のアンダーコート層を高速フレーム溶射してから、前記溶射材料の高速溶射を行なうことが好ましい。ここで、自溶合金とは、ニッケル基自溶合金、コバルト基自溶合金、及び鉄基自溶合金のいずれか1を指す。
請求項1〜4記載の光触媒機能皮膜の形成方法においては、溶射法を用いるため、大気中かつ常温で簡単に光触媒機能皮膜を施工でき、大面積で複雑形状の基材表面にも耐久性のある皮膜を形成できる。また、溶射層中のアナターゼ型二酸化チタンの存在比率を高めるので、光触媒機能皮膜が紫外光の照射を受けた際の光触媒機能(正孔の形成による酸化分解性)を向上することが可能になる。更に、溶射層中に存在する圧縮の残留応力の影響で、光触媒機能皮膜の表面が膨張し易い状態になっていると考えられる。このため、光触媒機能皮膜の表面の膨張を伴うチタン原子への付着水の水酸基の配位が生じ易くなり、紫外光の照射で生成した正孔により表面水酸基のチタン原子との結合力が低下すると、付着水の水酸基とチタン原子との結合が促進され、光触媒機能皮膜の親水性が向上すると考えられる。その結果、光触媒機能皮膜は、水に対する優れた濡れ性と、親水性によって接触した水への優れた熱伝達性を示すので、例えば、蒸発管(供給された水を過熱して蒸気を発生させる伝熱部位)の外面に光触媒機能皮膜を形成した場合、水冷時の冷却効果を高めることができる。
また、溶射材料が1μm以上100μm以下に造粒されているので、溶射材料が溶射フレームに到達する際に凝集するのを防止でき、溶射フレームまで安定して搬送できる。このため、光触媒機能皮膜を基材上に安定して形成できる。
請求項3記載の光触媒機能皮膜形成方法においては、溶射層にアパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上が含有されるので、被処理物(例えば、酸化分解される物質)を光触媒機能皮膜に吸着させて被処理物の濃度が低下しても光触媒機能皮膜上での濃度を高く保持することができ、被処理物の処理を効率的に行なうことが可能になる。
請求項4記載の光触媒機能皮膜形成方法においては、基材上に自溶合金のアンダーコート層が形成されているので、基材と溶射層との直接接触を防ぐことができ、光触媒機能皮膜の酸化作用から基材の酸化を防止することで基材の寿命を長くすることができると共に、光触媒機能皮膜の寿命も延長できる。また、基材と溶射層の結合力が高められるので、光触媒機能皮膜の保持力が増して光触媒機能皮膜の寿命を延長することができる。
請求項記載の光触媒機能皮膜の形成方法においては溶射層1層又は2層以上の多孔質薄膜を積層して形成されているので、光触媒機能皮膜の比表面積を増加することができ、光触媒機能及び親水性の向上を図ることが可能になる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)は本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の溶射層形成時の説明図、(B)は形成された溶射層の説明図、図2は同光触媒機能皮膜の溶射層に対する親水性試験の結果を示すグラフ、図3は変形例に係る溶射層の形成方法の説明図、図4は本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の溶射層の形成に使用する溶射温度可変型の高速溶射装置の説明図、図5は溶射温度とアナターゼ型二酸化チタンの残存率との関係を示す説明図、図6(A)〜(C)はそれぞれプラズマ溶射、HVOF溶射、及び低温高速溶射により形成された溶射層のX線回折結果を示す説明図、図7は本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の溶射層の形成に使用する溶射ガンを取付けた台車の説明図、図8は本発明の第3の実施の形態に係る光触媒機能皮膜のメチレンブルー分解試験の試験方法の説明図、図9は同光触媒機能皮膜の溶射層中のアナターゼ型二酸化チタン残存率とメチレンブルーの分解活性の関係を示すグラフである。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜(以下、単に皮膜ともいう)10は、溶射材料の一例であるアナターゼ型二酸化チタン(以下、単に二酸化チタンという場合もある)の粒子(粒径が5nm以上500nm以下)11がルチル型に変態するのを制御しながら、例えば、ニッケル基自溶合金のアンダーコート層12が表面に予め形成された熱膨張性を有する基材13上に、低温度(例えば、700℃以上、好ましくは800℃以上で、2000℃以下、好ましくは1500℃以下、更に好ましくは1000℃以下)の溶射フレームを用いて二酸化チタン粒子11の高速溶射を行なって形成した溶射層14を有し、溶射層14は1層又は2層以上(図2では3層)の多孔質薄膜15で形成されている。以下、詳細に説明する。
ここで、制御とは、例えば、アナターゼ型の残存率を変えることをいい、具体的には、溶射フレーム温度、フレームの勢い、及び雰囲気の酸化還元性のいずれか1又は2以上をコントロールすることを意味する。これによって、光触媒機能皮膜10中でのアナターゼ型二酸化チタンの残存率は、例えば、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上とすることができる。なお、溶射層14中の他の成分は、溶射時にアナターゼ型からルチル型へと変態したルチル型二酸化チタンと、不可避的不純物である。また、基材13は、500℃以上の温度に耐える特性を有すればよく、例えば、スレート材、コンクリート建材、タイルガラス、繊維、プラスチック系建材、アルミニウム系建材、又はステンレス等の鋼材、銅材を使用できる。
次に、このアナターゼ型二酸化チタンを使用し、溶射層14の形成方法の違いによる親水性への影響を検討した結果について説明する。親水性は、二酸化チタンの自浄作用(セルフクリーニング)を示す指標になる。
一般に、二酸化チタンの光誘起による超親水化反応は、以下のように説明される。すなわち、紫外線の照射で生成した正孔が二酸化チタンの酸素にトラップされたとき、チタン原子と酸素原子との結合距離が長くなる。これによって、二酸化チタンの酸素欠陥に配位した水酸基とチタン原子との相互作用が弱まり、二酸化チタンに吸着していた吸着水がチタン原子に配位して新たな表面水酸基が形成される。このため、表面の水酸基密度が増加し、超親水性が発現すると考えられる。そして、超親水化反応は、二酸化チタンの表面水酸基の構造変化とも考えられ、この反応は二酸化チタンの表面側の体積膨張を伴う可能性がある。
ここで、熱膨張性を有する基材13上に、低温度の溶射フレームを用いて二酸化チタン粒子11の高速溶射を行なうと、形成された溶射層14には圧縮の残留応力が発生する。このため、溶射層14は圧縮の残留応力によって潜在的に体積膨張する特性を有しており、溶射層14においては表面側の体積膨張を伴う表面水酸基の増加、すなわち超親水化反応が促進すると解され、少ない光エネルギーでの超親水化(暗所維持特性の強化)、水との接触角の極端な低下といった現象が期待される。更に、溶射層14は、1層又は2層以上の多孔質薄膜15が積層して形成されているので、付着水が接触する接触面積が実質的に増大し、表面水酸基の増加に寄与する。
そこで、試料の表面に水を滴下し、これをCCDカメラで撮像し、試料表面と水との接触状態の時間変化をテレビモニターで観察した。使用した試料は、粒径が20nmの二酸化チタン粒子に低融点ガラスバインダーを添加して基板上に形成した溶射層(No.1)、粒径が20nmの二酸化チタン粒子に高融点ガラスバインダーを添加して基板上に形成した溶射層(No.2)、二酸化チタン粒子をアンダーコート層を介して基板上に形成した溶射層(No.3)、No.3を再加熱し表面を平滑化した溶射層(No.4)、ガラス板表面に二酸化チタンの市販コーティング材を塗布して形成した塗布層(No.5)の5種類である。また、No.1及びNo.2は紫外線照射を行うことなく暗所に放置し、No.3及びNo.4は1時間の紫外線照射を行った後に暗所に放置し、No.5は30分の紫外線照射を行った後に暗所に放置したものである。接触角度は、溶射層上に滴下された水の上端位置と、水の最大径部分である溶射層との接触位置とを直線で結んだ際の、直線と試料上面とのなす角の2倍の角度とし、算出した接触角度が小さい程、親水性(濡れ性)が良好になり、より大きな自浄作用を示すことになる。
図2に接触角度の時間変化を示す。接触角度は、No.1〜No.4においては、暗所に放置した時点から、極めて良好な親水性を示している。一方、No.5については、暗所に放置した時点から親水性が悪くなっている。以上のことから、潜在的に体積膨張する特性を有する圧縮の残留応力が発生している溶射層では、少ない光エネルギーでの超親水化(暗所維持特性の強化)が生じて、しかも水との接触角が極めて小さくなる(高い自浄作用を有する)ことが確認できた。
続いて、前記したアナターゼ型二酸化チタンを使用した二酸化チタン層の形成方法の違いによるガス分解性能への影響を検討した結果について説明する。
試験は、光触媒製品技術協議会により示されるアセトアルデヒドガス分解評価試験法(ガスバックB法)を採用した。この試験は、3時間以上紫外線を照射した試料とアセトアルデヒドガスを封入した袋を4つ準備し、2つの袋に紫外線を照射し(明条件試験区)、他の2つの袋を暗所に静置して(暗条件試験区)行った。なお、試料の大きさは50mm×50mm、紫外線照射位置から試料までの距離は30cm、紫外線照射強度は1mW/cm2で、評価は、20時間経過後の「暗条件試験区」のガス濃度平均値と「明条件試験区」のガス濃度平均値との差をとり、これを「暗条件試験区」のガス濃度平均値で除して行った。試験結果を表1に示す。
Figure 0004682374
ここで、使用した試料は、実施例として、ステンレス鋼板上に二酸化チタンの低温高速溶射により形成した溶射層を有する試料、比較例として、銅板上に二酸化チタンを塗布して形成した塗布層を有する試料、ブラスト処理されたガラス板上に二酸化チタンを塗布して形成した塗布層を有する試料、及びガラス板上に二酸化チタンを塗布して形成した塗布層を有する試料である。なお、実施例の試料は、粒径が7nmの二酸化チタン粒子に10重量%の有機バインダーが添加されたもの(U20)、粒径が200nmの二酸化チタン粒子に10重量%の有機バインダーが添加されたもの(U22)、粒径が20nmの二酸化チタン粒子に低融点ガラスバインダーが添加されたもの(U23)、粒径が20nmの二酸化チタン粒子に高融点ガラスバインダーが添加されたもの(U24)である。
表1に示されるように、U20、U22、U23、及びU24については、アセトアルデヒドガスの除去率が100%であった。一方、二酸化チタンを塗布法により形成した比較例1では27.6%、比較例2では55.0%、比較例3では12.9%となり、いずれも溶射法を使用した実施例と比較して低い除去率であった。以上のことから、溶射法により形成された二酸化チタン層は、塗布法で形成された二酸化チタン層と比較して、高いガス分解性能が得られることを確認できた。
図1に示すように、ニッケル基自溶合金、コバルト基自溶合金、及び鉄基自溶合金のいずれか1の自溶合金のアンダーコート層12がある場合、アンダーコート層12は、例えば、10μm以上100μm以下の厚みを有している。また、多孔質薄膜15を形成している二酸化チタン粒子の一部又は全部は、例えば、卵形、円盤状、リング状、破砕粉状、及び断面楕円形のいずれか1又は2以上で構成された偏平状となっている。この偏平形状は、高速のフレーム溶射によって加速された二酸化チタン粒子が、アンダーコート層12に衝突することによって成る形状である。このように、基板13上にアンダーコート層12を形成することで、基材13に対する溶射層14の結合強度を高めると共に、自溶合金が酸化物や炭化物を含むため、基材13の耐摩耗性や耐食性を向上させることができる。
また、基材13に対する溶射層の結合強度を高めるため、図3に示すように、二酸化チタン粒子11の周囲にバインダー21を付着させ、これを基材13上に低温度で高速溶射して溶射層22を形成することもできる。このバインダー21は、粒状となっており、樹脂、ガラス、及び低融点金属のいずれか1又は2以上によって構成され、その量が溶射層22に対して10重量%以上50重量%以下含まれている。ここで、基材13上にはアンダーコート層を形成していないが、前記したように、予め基材13上に自溶合金のアンダーコート層を形成しておくことも可能である。
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の溶射層の形成方法について、図1を参照しながら説明する。
まず、二酸化チタンを基材13上に溶射する前に、基材13上に予めアンダーコート層12を高速フレーム溶射により形成する。そして、このアンダーコート層12に対して、アナターゼ型二酸化チタン粒子11を溶射する。ここで、使用する二酸化チタンの粒子11は、5nm以上500nm以下、好ましくは7nm以上300nm以下の微細粒であるため、乾式の状態のままでは溶射フレームに到達する前の搬送過程で凝集が起こり、溶射作業を安定して実施できない。
そこで、搬送過程におけるアナターゼ型二酸化チタン粒子11の凝集の抑制、更に凝集を防止する方法として、アナターゼ型二酸化チタン粒子11を1μm以上100μm以下の粒径に、予め造粒して搬送する。この造粒は、アナターゼ型二酸化チタン粒子11と結合剤(例えば、ポリビニルアルコール:PVA)と水との混合物を、粒径が1μm以上100μm以下になるようにアトマイズ(噴霧)しながら、例えば200℃程度で乾燥して行う。ここで、アナターゼ型二酸化チタン粒子11の造粒時の溶液としては、水を使用することなく、アルコール(有機系溶液の一例)を使用することも可能であり、また水とアルコールとの混合液を使用することも可能である。
アナターゼ型二酸化チタン低温高速溶射に使用する装置としては、例えば、特願2003−209398号に記載された溶射温度可変型の高速溶射装置(以下、単に溶射装置ともいう)23を使用することができる。
図4に示すように、溶射装置23は、高圧燃焼支援ガス(酸素+空気)及びガス燃料によって形成された高速の溶射フレーム24と共に、溶射材料を基材13に対して噴出して溶射層14を形成する溶射ガン(溶射ガンバレル)25を備えている。
溶射ガン25の上流側には、所定の混合比率に調整された高圧の酸素ガス及び空気を予め混合して高圧の燃焼支援ガスを製造する混合手段(例えば、スタティックミキサ)26が設けられ、酸素ガス量に対する燃料量又は燃料量に対する酸素ガス量を増減させて、溶射フレーム24の温度を可変可能に調整できるものである。この溶射装置23を使用し、溶射原料を形成された溶射フレーム24中に投入するので、噴出される溶射原料の溶射速度を超音速に維持しながら、融点の異なる材料の種類に応じた温度制御を行うことが可能となる。
なお、混合手段26によって酸素ガスと空気とを予め混合し、この燃焼支援ガスを溶射ガン25へ供給するので、酸素ガス量に対する燃料量を減少させて、溶射フレーム24の温度を低温に調整した場合に、空気の混合量、溶射ガン25の燃焼圧力、及び溶射原料の溶射速度の低下を制御して、基材13上に形成した溶射層14の酸化を抑制できる。また、酸素ガス及び空気を混合手段26によって略均一な状態に混合し、この燃焼支援ガスを溶射ガン25へ供給して溶射フレーム24を形成するので、混合の不均一に起因する溶射フレーム24の揺らぎ等の発生を抑制、更には防止できる。
ここで、溶射時に使用する燃料量を変化させた場合、すなわち溶射温度を変化させた場合、アナターゼ型二酸化チタンの残存量について、図5を参照しながら説明する。溶射温度は燃料量に依存するため、燃焼時に使用する燃料量が多くなるに伴って溶射温度は高くなり、一方、燃料量が少なくなるに伴って溶射温度は低くなる。なお、溶射原料として、粒径が7nmのアナターゼ型二酸化チタン(U20:◆)、粒径が200nmのアナターゼ型二酸化チタン(U22:■)をそれぞれ使用した。
一方、アナターゼ型二酸化チタンは、約800℃でルチル型へ変態し、ルチル型二酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタンに比べ、光触媒機能は極めて小さい。このため、アナターゼ型二酸化チタンの残存率が高い溶射層ほど光触媒機能は活性となる。図5から明らかなように、溶射時に使用する燃料量を少なくすることで、溶射温度が低下し、基材上に形成されるアナターゼ型二酸化チタンの残存率を増加できるので、低温高速フレーム溶射法を用いると、アナターゼ型二酸化チタン残存率が大きな溶射層が得られることが期待できる。
そこで、溶射温度が異なるプラズマ溶射、HVOF(High Velocity Oxygen Fuel)溶射、及び前記した溶射装置23を使用した低温高速溶射により形成した各溶射層中の二酸化チタンの結晶構造をX線回折により評価した。なお、溶射に使用した二酸化チタンは略全量アナターゼ型である。また、溶射層中のアナターゼ型二酸化チタンの含有率は、溶射層のX線回折強度を測定し、ルチル型二酸化チタンの110面のX線回折強度IRと、アナターゼ型二酸化チタンの101面のX線回折強度IAを求め、次式から算出した。
アナターゼ含有率(重量%)=100/{1+1.265×(IR/IA)}
図6(A)〜(C)に、各溶射層のX線回折結果を示す。図(A)〜(C)中の●はアナターゼ型、×はルチル型、αは基板のそれぞれのX線回折強度を現している。
プラズマ溶射を行った場合、図6(A)に示すように、アナターゼ型のピークよりもルチル型のピークの方が大きく現れる結果が得られ、アナターゼ型二酸化チタンの含有率は18重量%であった。HVOF溶射を行った場合、図6(B)に示すように、アナターゼ型のピークとルチル型のピークが略同程度の結果が得られ、アナターゼ型二酸化チタンの含有率は63重量%であった。一方、低温高速溶射を行った場合、図6(C)に示すように、ルチル型のピークはほとんど現れず、略全体に渡ってアナターゼ型のピークが現れ、アナターゼ型二酸化チタンの含有率は92重量%であった。以上のことから、低温高速溶射を行うことで、溶射層中の二酸化チタンの大半をアナターゼ型に維持できることが確認できた。
なお、二酸化チタンの溶射時においては、図7に示すように、前記した高速溶射を行う溶射ガン25を、例えば、特開2004−89864号公報に開示された分割型自動溶射装置の台車27に設けて行う。溶射ガン25は、アンダーコート層12が表面に形成された基材13表面の手前側に隙間を有して配置された2本の水平レール28、29上を走行する台車27に、取付手段30を介して上下動可能に取付ける。これにより、台車27の走行方向に直交する方向(前後方向)と、台車27の走行方向(左右方向)にそれぞれ独立して移動できるので、基材13の溶射時における作業性が良好になる。
前記した溶射装置23を使用して、溶射ガン25から噴出する溶射フレーム24の温度が、700℃以上2000℃以下の低温度になるように、ガス燃料と燃焼支援ガス量との配合量を調整する。そして、1μm以上100μm以下の粒径に造粒した二酸化チタンの造粒物を含む溶射材料を図示しない搬送ホースを介して溶射ガン25の溶射原料入口に供給し、溶射ガン25で形成された溶射フレーム24中へ投入する。これにより、アナターゼ型二酸化チタンがルチル型二酸化チタンに変態するのを抑制しながら、アナターゼ型二酸化チタン粒子11を、基材13上に形成されたアンダーコート層12上に高速溶射できる。このとき、基材13上に自溶合金のアンダーコート層12を介して形成される溶射層14は、例えば、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上のアナターゼ型二酸化チタンを含んでいる。そして、基材13上には自溶合金のアンダーコート層12が形成されているため、基材13に対する溶射層14の結合力が高められると共に、基材13の耐摩耗性や耐食性が向上する。
なお、基材に対する溶射層の結合強度を高めるために、図3に示すように、アナターゼ型二酸化チタン粒子11の周囲にバインダー21を付着させる場合、溶液中でアナターゼ型二酸化チタン粒子11とバインダー21とを撹拌混合して行う。また、二酸化チタンの粒子を造粒した造粒物の周囲に、前記したバインダー21の粒子を付着させた後、これを基材13に溶射することも可能である。
本発明の第2の実施の形態に係る光触媒機能皮膜は、溶射層にアパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上からなる吸着材が1重量%以上10重量%以下含有されていることが特徴となっている。また、その光触媒機能皮膜の形成方法では、溶射層にアパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上からなる吸着材が1重量%以上10重量%以下含有されるように、アナターゼ型二酸化チタン粒子11に吸着材を混合した溶射材料を調製し、この溶射材料を低温度の溶射フレームを用いて高速溶射を行なって溶射層を形成するが、溶射材料の調製方法及び低温度の溶射フレームを用いた高速溶射射方法は、第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の形成方法と実質的に同一とすることができる。このため、得られた溶射層の作用についてのみ説明する。
アナターゼ型二酸化チタン粒子11にアパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上(以下、単に吸着材という)を混合した溶射材料を低温度の溶射フレームを用いた高速溶射射して溶射層を形成すると、得られた溶射層には、二酸化チタン(アナターゼ型とアナターゼ型から変態したルチル型の二酸化チタン)の他に吸着材が含有された状態になっている。このため、溶射層の表面側、溶射層の気孔の内面側は、二酸化チタン粒子と共に吸着材が存在している状態になっている。
一般に、被分解処理物の濃度が高い場合、被分解処理物が溶射層中の二酸化チタンと接触する頻度は高く、二酸化チタンの光触媒機能により被分解処理物の分解処理が進行し、分解処理物の濃度は低下する。そして、分解処理が進行し被分解処理物の濃度が低下してくると、被分解処理物が溶射層中の二酸化チタンと接触する頻度が低下し、被分解処理物の分解速度は低下する。
ここで、溶射層中に吸着材が存在していると、溶射層の表面側、溶射層の気孔の内面側には、二酸化チタン粒子と共に吸着材が存在することになり、この吸着材は被分解処理物を吸着する作用を有するため、分解処理が進行して被分解処理物の全体の濃度が低下しても二酸化チタン粒子の周囲では被分解処理物の濃度を高く保持することができる。その結果、被分解処理物と二酸化チタンの接触する頻度が、被分解処理物の濃度の影響を受けずに高位に維持されるので、被分解処理物の分解速度の低下を抑制して被分解処理物の効率的な分解を行なうことができる。
本発明の第3の実施の形態に係る光触媒機能皮膜は、溶射材料に含まれるアナターゼ型二酸化チタン粒子がルチル型に変態するのを制御しながら、低温度の溶射フレームを用いて溶射材料の高速溶射を行なって形成した溶射層のアナターゼ型二酸化チタン残存率が60%以上であることが特徴になっている。そして、低温度の溶射フレームを用いた高速溶射射方法は、第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の形成方法と実質的に同一とすることができる。このため、得られた溶射層の作用についてのみ説明する。
図8に示すように、例えば、粒径が20nmのアナターゼ型二酸化チタン粒子に低融点ガラスバインダーを添加したものを溶射材料とし、低温度の溶射フレームを用いた高速溶射によりアナターゼ型二酸化チタンの残存率(含有率)が異なる溶射層16を基板(例えば、ステンレス鋼板)16a上に形成し、この溶射層16上に円筒形のセル17を配置してその内部に濃度が10μmol/L(Lはリットルを表す)のメチレンブルー水溶液18を入れ、上方からブラックライトをあてて紫外線(紫外線照射強度は1mW/cm2)を照射して、メチレンブルーの分解による水溶液中のメチレンブルーの濃度低下を分光光度計で測定した。そして、メチレンブルー水溶液18の濃度変化を分解時間で除して分解活性(分解活性係数ともいう)、すなわちメチレンブルーの分解能力(分解速度)を求めた。なお、溶射層16とセル17との接触部分には、接触部分からのメチレンブルー水溶液18の漏れ出しを防止するためのシリコングリース19を塗布し、またセル17上には、メチレンブルー水溶液18の漏れ出し及び蒸発を防止するためのカバーガラス20を配置している。
図9に、アナターゼ型二酸化チタンの残存率(含有率)が異なる溶射層16の分解活性を示す。溶射層16中のアナターゼ型の残存率が高く(ルチル型の残存率が少なく)なるに伴い、分解活性は上昇し、分解活性は残存率43.7%の溶射層で15.8nmol/L/min、残存率66.2%の溶射層で20.2nmol/L/min、残存率70%の溶射層で21nmol/L/min、残存率91.7%の溶射層で21.4nmol/L/minであった。このことから、アナターゼ型二酸化チタンの残存率を60%以上にした溶射層では、より高い光触媒機能が示されることが確認できた。
なお、圧縮の残留応力が発生している溶射層が1層又は2層以上の多孔質薄膜で形成されるとしたが、残留応力の発生が無視できる溶射層又は引張の残留応力が発生している溶射層においても、溶射層を1層又は2層以上の多孔質薄膜で形成することができる。これによって、溶射層比の表面積を増加させて、光触媒機能の向上を図ることが可能になる。
また、圧縮の残留応力が発生している溶射層にアパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上が含有されるようにしたが、残留応力の発生が無視できる溶射層又は引張の残留応力が発生している溶射層に、アパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上を含有させるようにしてもよい。これによって、溶射層に被処理物質を吸着させる機能を付与でき、被処理物の濃度が低下しても光触媒機能皮膜上での濃度を高く保持して、被処理物の処理を効率的に行なうことが可能になる。
更に、基材上に自溶合金のアンダーコート層を予め形成してから圧縮の残留応力が発生する溶射層を形成したが、基材上に自溶合金のアンダーコート層を予め形成してから残留応力の発生が無視できる溶射層又は引張の残留応力が発生する溶射層を形成することもできる。これによって、光触媒機能皮膜の酸化作用から基材の酸化を防止し基材の寿命を長くすることで光触媒機能皮膜の寿命を延長でき、基材と溶射層の結合力が高められることで光触媒機能皮膜の保持力が増して光触媒機能皮膜の寿命を延長することができる。
(実施例1)
酸素に空気を最大で50%混合した燃焼支燃ガスを使用することでフレーム温度を制御し、溶射距離250mで、ステンレス基板上にアナターゼ型二酸化チタン粒子からなる溶射材料を低温高速溶射法で溶射層(3層の場合40μm、2層の場合30μm、1層の場合20μm)を形成した。フレーム温度は、溶射ガンの噴出ノズルから100mmの位置における温度である。そして、得られた溶射層の残留応力及びアナターゼ残存率、並びに溶射層によるメチレンブルーの分解活性を測定した。なお、残留応力は、日本材料学会X線材料強度部門委員会X線応力測定法標準に基づくsin2Ψ法を用いたX線残留応力測定法を用いた。その結果を表2に示す。
また、比較例1として、同一の溶射材料をステンレス基板上に高温ガスフレーム溶射法で溶射層を形成し、溶射層の残留応力及びアナターゼ残存率、並びに溶射層によるメチレンブルーの分解活性を測定した。その結果も表2に示す。
Figure 0004682374
表2に示すように、実施例1では、全ての溶射層に圧縮の残留応力(25.2〜148.1MPa)が発生し、比較例1では引張の残留応力が発生していることが確認された。また、実施例1の溶射層は比較例1の溶射層に比べてアナターゼ残存率(80〜91%)が大きく、このため、実施例1の溶射層によるメチレンブルーの分解活性は、比較例1の溶射層に比べて大きいことが確認できた。
(実施例2)
アナターゼ型二酸化チタン粒子に吸着材として5%のアパタイト、ゼオライト、及び活性炭をそれぞれ添加した溶射材料を調製し、低温高速溶射法でステンレスメッシュ上に、積層数が4層で溶射層を形成した。フレーム温度は1600〜1700℃、溶射距離は300mmである。また、比較例2として、吸着材を添加していないアナターゼ型二酸化チタン粒子からなる溶射材料を低温高速溶射法で溶射層を形成した。フレーム温度は、溶射ガンの噴出ノズルから100mmの位置における温度である。そして、得られた各溶射層による2、4ジニトロフェノール(DNP)の分解試験を4時間行なって、濃度の変化を調べた。その結果を表3に示す。
Figure 0004682374
表3に示すように、比較例2では、DNP濃度が13ppmから7〜8ppmまで減少し濃度変化量が5〜6ppmであったのに対して、実施例2のアパタイトを添加した場合ではDNP濃度が11ppmから3ppmまで減少し濃度変化量が8ppm、ゼオライトを添加した場合ではDNP濃度が11ppmから1ppmまで減少し濃度変化量が10ppm、活性炭を添加した場合ではDNP濃度が12ppmから3ppmまで減少し濃度変化量が9ppmとなった。これから、吸着材を加えることで、分解能を向上できることが確認できた。
(実施例3)
SS材及び銅板の基板にそれぞれニッケル基自溶合金を、SS材の基板にコバルト基自溶合金を高速フレーム溶射して基板上にアンダーコート層を形成した。次いで、アナターゼ型二酸化チタン粒子からなる溶射材料を、低温高速溶射法(フレーム温度は1600〜1700℃、溶射距離は200mm)によりアンダーコート層上に、積層数がSS材の場合3層、銅板の場合1層で溶射層を形成した。また、比較例3として、SS材及び銅板の基板上に、同一の溶射材料を低温高速溶射法(フレーム温度は1600〜1700℃、溶射距離は200mm)により、積層数がそれぞれ3層、1層で溶射層を形成した。そして、SS材の基板上に形成した溶射層に対して塩水噴霧試験を行ない、銅板の基板上に形成した溶射層については基板との密着性を調べた。その結果を表4に示す。
Figure 0004682374
アンダーコート層を形成した実施例3の試料では、800時間経過後も錆の発生は確認できなかったが、アンダーコート層を形成していない比較例3の試料では1時間経過後溶射層の全面に錆の発生が認められた。
また、銅板を基板とした場合、自溶合金のアンダーコート層を設けることで、溶射層と基板(銅板)との間の結合力を向上できることが確認でき、銅板上への二酸化チタン溶射層の形成が可能になった。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の光触媒機能皮膜形成方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、本実施の形態では、予め基材に自溶合金のアンダーコート層を形成してから、低温高速溶射法で溶射層を形成したが、基材に低温高速溶射法で溶射層を形成することも可能である。
(A)は本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の溶射層形成時の説明図、(B)は形成された溶射層の説明図である。 同光触媒機能皮膜の溶射層に対する親水性試験の結果を示すグラフである。 変形例に係る溶射層の形成方法の説明図である。 本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の溶射層の形成に使用する溶射温度可変型の高速溶射装置の説明図である。 溶射温度とアナターゼ型二酸化チタンの残存率との関係を示す説明図である。 (A)〜(C)はそれぞれプラズマ溶射、HVOF溶射、及び低温高速溶射により形成された溶射層のX線回折結果を示す説明図である。 本発明の第1の実施の形態に係る光触媒機能皮膜の溶射層の形成に使用する溶射ガンを取付けた台車の説明図である。 本発明の第3の実施の形態に係る光触媒機能皮膜のメチレンブルー分解試験の試験方法の説明図である。 同光触媒機能皮膜の溶射層中のアナターゼ型二酸化チタン残存率とメチレンブルーの分解活性の関係を示すグラフである。
10:光触媒機能皮膜、11:アナターゼ型二酸化チタン粒子、12:アンダーコート層、13:基材、14:溶射層、15:多孔質薄膜、16:溶射層、16a:基板、17:セル、18:メチレンブルー水溶液、19:シリコングリース、20:カバーガラス、21:バインダー、22:溶射層、23:高速溶射装置、24:溶射フレーム、25:溶射ガン、26:混合手段、27:台車、28、29:水平レール、30:取付手段

Claims (4)

  1. 熱膨張性を有する基材上に、燃料に加える酸素と空気の混合ガスからなる燃焼支援ガスの酸素ガス量に対する燃料量を減少させた、700℃以上1500℃以下の温度の溶射フレームを用い、5nm〜500nmのアナターゼ型二酸化チタン粒子をアルコール又はアルコールと水の混合物を用いて1μm以上100μm以下の粒子に造粒した溶射材料の高速溶射を行なって、圧縮の残留応力が発生し、しかもアナターゼ型二酸化チタンの残存率を80%以上とした溶射層を形成することを特徴とする光触媒機能皮膜の形成方法。
  2. 請求項記載の光触媒機能皮膜の形成方法において、前記溶射層は前記基板上に1層又は2層以上の多孔質薄膜を積層して形成することを特徴とする光触媒機能皮膜の形成方法。
  3. 請求項1又は2記載の光触媒機能皮膜の形成方法において、前記溶射材料には、アパタイト、ゼオライト、及び活性炭のいずれか1又は2以上が含有されていることを特徴とする光触媒機能皮膜の形成方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒機能皮膜の形成方法において、予め前記基材上に自溶合金のアンダーコート層を高速フレーム溶射してから、前記溶射材料の高速溶射を行なうことを特徴とする光触媒機能皮膜の形成方法。
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