JP4682333B2 - 弾性表面波励振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス等の非圧電素材に弾性表面波(surface acoustic wave :SAW)を励振する装置に関し、非圧電素材に対して効率的に弾性表面波を発生させることを可能にしたものである。
超音波振動の一種である弾性表面波は、従来から、通信機用のフィルタや共振子などのデバイスで利用されており、また、センサやアクチュエータなどへの応用について研究開発が進められている。
弾性表面波は、図18に示すように、圧電性基板2に交差指電極を持つ櫛型電極11を形成し、この電極間に交流電圧を印加したときに、圧電性基板2の表面で発生する。このとき、図19に示すように、圧電性基板2には、交差指電極周辺の電界13により、交差指電極のマイナス電極付近とプラス電極付近とで逆向きの応力12が発生する。この電極11のプラス/マイナスは交流電圧で反転し、電極11付近に発生する応力12の向きも周期的に反転を繰り返すため、圧電性基板2には弾性表面波が発生する。この弾性表面波の周波数は櫛型電極11の幾何形状(交差指電極のピッチ)によって決まり、発生した弾性表面波は、図18の左右方向に伝搬する。つまり、圧電性基板2は弾性表面波を伝搬する媒体としても機能する。弾性表面波が圧電性基板2を伝搬するとき、図20の模式的断面図に示すように、圧電性基板2の表面付近の粒子は楕円運動を行っている。
通信機用フィルタの場合は、圧電性基板2上に櫛型電極11から距離を置いて同形の受信用櫛型電極が形成され、圧電性基板2を伝搬した弾性表面波が、受信用櫛型電極により電気信号に再変換される。
また、下記非特許文献1には、弾性表面波の波動現象を利用した「弾性表面波リニアモータ」が記載されている。このモータは、弾性表面波が伝搬する圧電性基板上に、駆動体となるスライダが配置されており、このスライダを圧電性基板に押し付けると、圧電性基板表面付近の粒子の楕円運動が摩擦を介してスライダに伝達され、圧電性基板の上で、弾性表面波の伝搬方向と逆方向にスライダが移動する。
また、下記非特許文献2には、弾性表面波の波動現象を利用した「皮膚感覚ディスプレイ」が記載されている。このデバイスは、圧電性基板上を伝搬する弾性表面波の機械振動を利用して指の皮膚表面に振動を発生させるものであり、このデバイスをPC用マウスのボタン部分に取り付け、操作者が、このマウスを操作してPC画面上に表示された凹凸面をカーソルでなぞるときに、デバイスのSAW駆動信号をカーソル位置に応じて変調することにより、操作者は、その凹凸に相当する粗さ感を指先に感じることができる。
これらの圧電性基板には、弾性表面波を効率よく励振するためにLiNbO3などの圧電性単結晶基板が広く用いられている。また、近年、結晶の切り出し方向により高い電気機械結合係数が得られるKNbO3などの材料が発見されており、その利用に期待が持たれている。
また、非圧電素材の弾性表面波を利用する装置では、下記非特許文献3に記載されているように、弾性表面波をタッチ位置の検出に利用するタッチパネルが知られている。この装置は、図21に示すように、SAWの伝搬が可能なガラス基板30と、その周辺に対向して配置された一対の駆動電極31及び一対の受信電極32とを有している。駆動電極31及び受信電極32は、「く」の字形状の櫛型電極111を具備し、この櫛型電極111は、ガラス基板30の電極位置に設けられた圧電薄膜21の上に形成されている。駆動電極31から発信された弾性表面波は、ガラス基板30の表面を伝搬して受信電極32で受信されるが、ガラス基板30を指でタッチすると、タッチ位置を通る弾性表面波が減衰するため、この受信信号を解析してタッチ位置を検出することができる。
また、弾性表面波を利用したタッチパネルは、下記特許文献1にも記載されている。このタッチパネルでは、櫛型電極が形成された複数の圧電板を、櫛型電極をガラス基板側に向けてガラス基板の周囲に固着している。
また、下記特許文献2には、約220μmの厚さの圧電薄板に櫛型電極を形成し、この圧電薄板とガラス基板とを、櫛型電極を間に挟むようにエポキシ樹脂で接着した超音波トランスデューサが記載されている。
また、下記特許文献3には、約200μmの厚さの圧電体に櫛型電極を形成し、ガラス基板の圧電体接合面に溝を形成し、圧電体の電極形成面の反対面とガラス基板とを溶融金属層を介して接合した圧電体装置が記載されている。
特開2002−196876号公報 特開平6−46496号公報 特開2003−8094号公報 http://www.intellect.pe.u-tokyo.ac.jp/reseach/sawmotor/sawmotor-j.html「弾性表面波リニアモータ」 http://www.intellect.pe.u-tokyo.ac.jp/reseach/saw-tactile/saw-tactile-j.html「弾性表面波を用いた皮膚感覚ディスプレイ」 http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/11/26/14.html「光透過率98%のクリアなPDA向けタッチパネルを開発」
しかし、圧電性単結晶基板は、製造が容易では無く、入手可能な最大ウエハサイズは直径10cm(4インチ)程度である。また、1枚当たりの単価も高額である。
弾性表面波の機械振動をメカトロニクスへ応用する場合は、広い範囲で弾性表面波を励振し、長い距離に渡って弾性表面波を伝搬することが必要となるが、このような応用は、弾性表面波を励振する圧電性単結晶基板のサイズにより制限されている。
前記非特許文献3に記載されたタッチパネルでは、ガラス基板に弾性表面波を励振しているが、この場合にガラス基板を伝搬する弾性表面波のパワーは弱く、この構成により弾性表面波の機械エネルギを取り出してメカトロニクスへ応用することはできない。
また、前記特許文献1〜3に記載された構成によっても、強いパワーの弾性表面波をガラス基板に発生させることはできない。
本発明は、こうした課題を解決するものであり、ガラスのように形状を自由に設定できる材料の表面に、弾性表面波を効率的よく励振することができる弾性表面波励振装置を提供することを目的としている。
本発明の弾性表面波励振装置は、非圧電体と、圧電体と、この非圧電体及び圧電体の間に介在する櫛型電極と、この櫛型電極を介して前記圧電体を前記非圧電体に圧接する与圧手段とを備え、櫛型電極の交差指電極と直交する方向(即ち、弾性表面波伝搬方向)の前記圧電体の長さが、櫛型電極に交流電圧を印加したときに前記圧電体に弾性波の定在波が発生する長さに設定され、前記非圧電体が、前記圧電体よりも大きい面積を有し、前記圧電体が、前記与圧手段の圧接により、前記櫛型電極を介して前記非圧電体に固定され、この圧電体に発生した定在波により、非圧電体に弾性表面波が励振される。
この装置では、圧電体と電極及び非圧電体との音響的結合が与圧手段により増進され、圧電体に発生した弾性波の定在波の応力が、電極を介してガラス基板等の非圧電体に伝搬する。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、圧電体に、弾性波として、弾性表面波を発生させている。
この装置では、圧電体の非圧電体と接する面の表面で弾性表面波の定在波が発生する。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、前記圧電体の前記長さを、当該圧電体を伝搬する波の1/2波長の整数倍の長さに設定している。
この長さを有する圧電体は、櫛型電極に交流電圧が印加されたとき、弾性波や弾性表面波の定在波を発生する。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、前記交差指電極の隣接する交差指電極とのピッチを、前記非圧電体を伝搬する波の1/2波長に設定している。
この交差指電極の各々を通じて非圧電体に励振される各弾性表面波は、すべて同相になり、それらが合成されて弾性表面波の振幅が大きくなる。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、前記圧電体の櫛型電極に接する側の面の交差指電極と接触しない位置に、圧電体と非圧電体との音響的結合を増進するための溝を、交差指電極と並行に設けている。
この溝の存在で圧電体の等価的ヤング率が低下し、圧電体に発生する弾性表面波の波長と非圧電体に励振される弾性表面波の波長とが異なる場合でも、両者の音響的結合が増進される。また、圧電体の等価的ヤング率の低下で、圧電体の等価的圧電係数が向上する。それらの結果、非圧電体における弾性表面波の励振効率が向上する。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、前記交差指電極に接触する前記圧電体の突条部が、非圧電体表面に励振する弾性表面波の周波数で共振して交差指電極形成面の垂直方向に伸縮するように構成している。
この突条部の共振振動が加わり、非圧電体は、この突条部を通じて大きい振幅で励振される。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、与圧手段が、真空吸着を利用して圧電体を非圧電体に圧接するように構成している。
真空吸着の利用により、与圧手段をコンパクトに構成することが可能になる。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、圧電体を覆い、裾部分が非圧電体に密着する軟質カバーを備えており、この軟質カバーの内部を真空にして、圧電体を非圧電体に圧接させている。
軟質カバーは、圧電体や非圧電体と機械インピーダンスが著しく異なるため、軟質カバーが圧電体及び非圧電体に密着し、圧電体が非圧電体に強固に圧接される。
また、本発明の弾性表面波励振装置では、前記圧電体と前記非圧電体との間に真空の空間を有し、この空間が、並行する交差指電極と、前記交差指電極に直交する櫛型電極の側面に配置された接着剤とで密封されている。
この場合、与圧手段は、櫛型電極のエリア内にコンパクトに構成される。
本発明の弾性表面波励振装置は、ガラスのように形状の自由度がある材料の表面に、メカトロニクスへの利用が可能な振幅を有する弾性表面波を効率的に励振させることができる。
そのため、弾性表面波を広い範囲で励振したり、長い距離を伝搬させたりすることが可能になり、弾性表面波を使用するメカトロニクスのアプリケーションの幅が広がる。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態における弾性表面波励振装置は、非圧電体であるガラス基板と、ガラス基板上に形成した櫛型電極と、櫛型電極に機械的に結合された圧電体とを有している。この櫛型電極に交流電圧を印加すると、圧電体内で発生した応力変化が、櫛型電極を介して非圧電体に伝搬し、非圧電体に弾性表面波が励振される。
図1は、この弾性表面波励振装置の構造を、組み立て順序を追って示している。まず、図1(a)に示すように、非圧電体のガラス基板30上に、従来から行われている真空蒸着やスパッタリング等の方法で0.2〜0.3μの膜厚の櫛型電極11を形成する。ガラス基板30の形状は任意であるが、ここでは、20mm×60mmの大きさで1〜2mmの厚さのガラス板を使用している。
次に、図1(b)に示すように、櫛形電極11の交差指電極111の上に圧電体20を配置する。ここでは圧電体20として、8mm×10mmの大きさで1mmの厚さのLiNbO3結晶を用いている。
また、図1(c)に示すように、櫛形電極11に交流電圧を印加するための配線41を接続し、さらに、圧電体20を、櫛型電極11を介してガラス基板30に圧接するための与圧機構42を設け、4N(接触圧力83.3kPa)の与圧を加えている。
櫛型電極11に電圧を印加すると、図2に示すように、圧電体20には、圧電体内を貫く電界により、交差指電極111のマイナス電極付近とプラス電極付近とで向きが反対になる応力12が発生する。交差指電極111への印加が交流電圧であるから、この応力は交番力となり、その交番力が交差指電極111を介してガラス基板30に伝搬する。そのため、ガラス基板30の表面には通常の弾性表面波駆動原理の作用する応力33の分布が発生し、櫛形電極の交差指電極111のピッチで決定される周波数の弾性表面波が励振され、この弾性表面波が、図1(c)に矢印50で示す方向にガラス基板30表面を伝搬する。
与圧機構42は、圧電体20が櫛型電極11に圧接するように圧力を与えている。そのため、圧電体20と電極11との音響的結合が増進され、ガラス基板30での弾性表面波の励振が効率良く行われる。圧電体20を接着剤等で電極11及びガラス基板30に接合しただけでは、音響的結合が弱く、ガラス基板30に強力な弾性表面波を励振することができない。
また、圧電体20の弾性表面波伝搬方向50(即ち、櫛型電極11の交差指電極111と直交する方向)の長さLを、圧電体20の非圧電体30と接する面の表面で弾性表面波の定在波が発生するように、または、発生圧電体20内で弾性表面波の定在波が発生するように設定することにより、ガラス基板30における弾性表面波の励振効率が向上する。
図3は、このときの圧電体20の長さLと、ガラス基板30上の交差指電極111のピッチとの関係を示している。発生する弾性表面波の周波数をf、圧電体20の音速をVpとすると、圧電体20に発生する弾性表面波の波長λpは(Vp/f)である。この場合、圧電体20の弾性表面波伝搬方向の長さLを、
L=m×λp/2 (mは整数)
に設定することにより、弾性表面波の定在波が圧電体20に発生し、この定在波の応力を受けてガラス基板30が大きく振動する。
また、このとき、ガラス基板30の音速をVnとすると、一対の交差指電極111のピッチλnを、
λn=Vn/f
に設定し、かつ、各交差指電極111の少なくとも一部が、圧電体20に発生する定在波の腹(振幅が大きい箇所)の位置と重なるように配置すれば、各交差指電極111を発生源とするガラス基板30の各弾性表面波はすべて同相になり、それらが合成されたガラス基板30の弾性表面波の振幅が大きくなる。
圧電体20の音速Vpとガラス基板30の音速Vnとが等しい(従って、λp=λnとなる)場合は、図4に示すように、圧電体20の弾性表面波伝搬方向の長さLを交差指電極の1/2ピッチ(λn/2)の整数倍に設定すれば、圧電体20に弾性表面波の定在波が発生し、ガラス基板30での励振効率が向上する。
ちなみに、LiNbO3におけるλpは、弾性表面波の周波数が9.6MHzのとき、400μである。
図5及び図6は、図1の弾性表面波励振装置のガラス基板30に励振される弾性表面波について測定した結果を示している。図7は、この測定に用いた装置を模式的に示しており、振動振幅はレーザドップラー振動計で測定した。この弾性表面波励振装置のガラス基板30は、図5(a)(b)に示すように、圧電振動子特有のアドミタンス(=(コンダクタンス)+j(サセプタンス))の周波数特性を保持している。なお、図5(a)(b)において、この装置のガラス基板30の特性を線72で示し、比較のために、従来の圧電性基板(LiNbO3)を用いた振動子の特性を線71で、また、電極を設けただけのガラス基板30の特性を線73で示している。
図5(c)は、電極に印加する電力を5W及び30Wに設定し、この装置のガラス基板30における振動振幅と印加電圧の周波数との関係を測定した結果を示している。振幅のピークは9.62MHz及び10.00MHzの周波数で現れている。なお、振幅のピークは、圧電体20に定在波が出現する周波数において現われており、複数の各ピークは、波数の異なる定在波の出現に対応している。
図6は、電極に印加する電圧の周波数を9.62MHz及び10.00MHzに設定し、印加電流と振動振幅との関係を測定した結果を示している。一点鎖線は、比較のために示したLiNbO3の特性であり、直線は周波数9.62MHzのとき、また、点線は周波数10.00MHzのときに、この装置のガラス基板30に励振された弾性表面波の特性である。振動振幅は印加電流に比例して増加しており、圧電性基板から成る従来の振動子程の振動振幅は得られないが、機械振動をメカトロニクスに利用可能な2nm程度の振幅は得られている。
このように、この弾性表面波励振装置は、形状が自由に設定できるガラス基板などの非圧電素材に対して、その機械振動をメカトロニクスに利用できる強力な弾性表面波を励振することが可能である。また、この弾性表面波を広い範囲で励振し、長い距離を伝搬させることができるため、弾性表面波を使用するメカトロニクスのアプリケーションの幅が広がる。
例えば、このガラス基板30の弾性表面波の伝搬路にスライダを配置して、ストロークの大きい「弾性表面波モータ」を構成することができる。また、このモータでは、図8に示すように、ガラス基板30上に弾性表面波の伝搬方向を異にする複数の圧電体201、202を配置し、各圧電体201、202を駆動する交流電圧の周波数や位相を調整することにより、種々のパターンのスライダ移動経路51をガラス基板30上に設定することができる。
また、図9に示すように、ガラス基板で構成された表示装置の画面301に圧電体201、202を配置することにより、画面301に表示された物体501、502の感触を画面301に指を触れて確かめる「皮膚感覚ディスプレイ」を構成することができる。この場合、タッチパネル用の電極(図21)を別に設けて、指が触れた画面301上の位置を検出し、当該位置に表示されている物体の画像の凹凸を表す信号で圧電体201、202を駆動し、画面301上に、その弾性表面波を励振する。
なお、この弾性表面波励振装置の圧電体20を電極11に圧接する与圧機構42は、真空吸着の技術を利用して小型化することができる。例えば、図10に示すように、ガラス基板30の櫛型電極11の上に圧電体20を配置し、その上を機械インピーダンスが著しく異なる軟質カバー61で覆い、軟質カバー61内部を真空に保持する。こうすると、圧電体20とガラス基板30との間の交差指電極が存在していない箇所での隙間が真空になり、圧電体20がガラス基板30に真空吸着される。また、軟質カバー61は、圧電体20に密着し、軟質カバー61の裾部分がガラス基板30に密着して機密状態を維持し、且つ、圧電体20をガラス基板30に圧接する。なお、軟質カバー61の裾部分がガラス基板30に密着しても、カバー素材が軟質であるため、ガラス基板30における弾性表面波の伝搬は妨げられない。
また、次のように構成しても良い。図11に示すように、ガラス基板30上に、両方の最外側の交差指電極112を内方の交差指電極111よりも長く延ばした櫛型電極11を形成し(図11(a))、このガラス基板30を真空室内に配置して、両方の交差指電極112に跨るように圧電体20を載せる(図11(b))。次いで、圧電体20の交差指電極112と直交する各端面に接着剤62を滴下し、接着剤62の硬化後にガラス基板30を真空室内から取り出す(図11(c))。
こうすると、0.2〜0.3μの膜厚の交差指電極上に載る圧電体20は、ガラス基板30との間に、交差指電極112及び接着剤62で囲まれた真空の空間を持つことになり、ガラス基板30に真空吸着される。この交差指電極の層は、真空吸着状態の圧電体20から常時押圧されているため、機密性を保つことができ、この機密性は、弾性表面波の数nm程度の振幅を受けても破られない。また、接着剤62は、ガラス基板30上に交差指電極の膜厚による凹凸が有っても、その凹凸に合わせて形を変えて硬化するため、真空空間の機密性が維持される。
この装置では、与圧機構が櫛型電極11の領域内に収まるため、ガラス基板30における弾性表面波の伝搬に影響が及ばない。また、この与圧機構による与圧は、図11の作業を行う真空室の真空度を変えることにより調整可能である。また、交差指電極112の延長した端部は、櫛型電極11の接続端として利用することができる。
また、この弾性表面波励振装置で弾性表面波を励振するガラス基板30は、曲面状であっても良い。
また、ここでは、櫛型電極11をガラス基板30の側に形成する場合について説明したが、櫛型電極11を圧電体20の側に形成し、この櫛型電極11を介して圧電体20とガラス基板30とを圧接するようにしても良い。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態における装置の弾性表面波の励振効率をさらに高める工夫について説明する。
この装置では、図12に示すように、ガラス基板30に形成した櫛型電極11の交差指電極上に配置する圧電体20に溝22を設けている。その他の構成は第1の実施形態と変わりがない。
図13は、この圧電体20をガラス基板30の交差指電極111に圧接させた状態の断面図を示している。溝22は、圧電体20の交差指電極111と接触しない位置に周期的に設けている。この溝22の存在により、圧電体20の矢印方向の等価的ヤング率が低下する。そのため、圧電体20に発生する弾性表面波の波長とガラス基板30に励振される弾性表面波の波長とが異なる場合でも、圧電体20の等価的ヤング率の低下により、圧電体20と交差指電極111(及びガラス基板30)との音響的結合が増進する。また、圧電体20の等価的ヤング率の低下で、圧電体20の等価的圧電係数も向上する。それらに起因して、ガラス基板30に対する弾性表面波の励振効率が向上する。
なお、圧電体20に設ける溝22の幅は、図14に示すように、交差指電極間の間隔より短くても良い。また、図15及び図16に示すように、溝22のピッチを交差指電極のピッチの整数倍に設定しても良い。
また、この圧電体20の溝22は、与圧機構として第1の実施形態(図10、図11)で説明した真空吸着手段を用いる場合に、容量の大きい真空室として作用する。そのため、圧電体20とガラス基板30とは、強固、且つ、安定的に圧接される。
また、図13において、圧電体20に溝22を設けることは、見方を変えれば、圧電体20が、突起(突条体)23を通じて交差指電極111及びガラス基板30に機械的振動を伝えていることになる。図17に示すように、この突起23における伸縮(矢印方向の伸び縮み)の共振周波数は、突起23の幅wと高さhに依存している。この共振周波数と圧電体20に発生する弾性表面波の周波数とが一致するように突起23の形状を設定した場合は、突起23が非圧電体表面に励振する弾性表面波の周波数で共振し、圧電体20に発生する弾性表面波の振幅と突起23の伸縮とが加算されてガラス基板30に伝わるため、ガラス基板30に励振される弾性表面波の振幅が大きくなる。
このように、本発明の弾性表面波励振装置では、圧電体20を共振させて定在波を発生させ、また、圧電体20の突起23に共振振動を起こさせるなど、圧電体の共振現象を利用することにより、非圧電体への弾性表面波の励起を効率化している。
なお、各実施形態では、非圧電体がガラス基板である場合について説明したが、非圧電体として、その他の絶縁体や、絶縁被覆を形成した金属板などを用いることもできる。
本発明の弾性表面波励振装置は、弾性表面波(超音波)モータや皮膚感覚ディスプレイなど、弾性表面波を使用する各種デバイスに広く利用することができる。
本発明の第1の実施形態における弾性表面波励振装置の構成を示す図 本発明の第1の実施形態における装置での弾性表面波の励振原理を説明する図 本発明の第1の実施形態における装置の圧電体の長さと電極ピッチとを説明する図 本発明の第1の実施形態における装置でλp=λnのときの圧電体の長さと電極ピッチとを説明する図 本発明の第1の実施形態における装置の周波数特性を示す図 本発明の第1の実施形態における装置の印加電流と振動振幅との関係を示す図 本発明の第1の実施形態における装置の特性測定形態を示す図 本発明の第1の実施形態における装置で構成した弾性表面波モータを示す図 本発明の第1の実施形態における装置で構成した皮膚感覚ディスプレイを示す図 本発明の第1の実施形態における装置での真空吸着を利用した与圧機構を示す図 本発明の第1の実施形態における装置での真空吸着を利用した第2の与圧機構を示す図 本発明の第2の実施形態における弾性表面波励振装置の圧電体の構成を示す図 本発明の第2の実施形態における装置の圧電体、電極及びガラス基板の断面図 本発明の第2の実施形態における装置の圧電体、電極及びガラス基板の断面図(変形例1) 本発明の第2の実施形態における装置の圧電体、電極及びガラス基板の断面図(変形例2) 本発明の第2の実施形態における装置の圧電体、電極及びガラス基板の断面図(変形例3) 本発明の第2の実施形態における装置の突起形状を説明する図 従来の圧電素子の構成を示す図 圧電素子での弾性表面波の励振原理を説明する図 弾性表面波が伝搬する圧電素子の模式的断面図 弾性表面波を利用するタッチパネルの構造を示す図
符号の説明
2 圧電性基板
11 櫛型電極
12 応力
13 電界
20 圧電体
21 圧電薄膜
22 溝
23 突起
30 ガラス基板
31 駆動電極
32 受信電極
33 応力
41 配線
42 与圧機構
50 弾性表面波伝搬方向
51 スライダ移動経路
61 軟質カバー
62 接着剤
71 圧電性振動子の特性
72 本発明の装置におけるガラス基板の特性
73 ガラス基板のみの特性
111 交差指電極
112 最外側の交差指電極
201 圧電体
202 圧電体
301 画面
501 表示物体
502 表示物体

Claims (9)

  1. 非圧電体と、圧電体と、前記非圧電体及び圧電体の間に介在する櫛型電極と、前記櫛型電極を介して前記圧電体を前記非圧電体に圧接する与圧手段とを備え、
    前記櫛型電極の交差指電極と直交する方向の前記圧電体の長さが、前記櫛型電極に交流電圧を印加したときに前記圧電体に弾性波の定在波が発生する長さに設定され、
    前記非圧電体が、前記圧電体よりも大きい面積を有し、
    前記圧電体が、前記与圧手段の圧接により、前記櫛型電極を介して前記非圧電体に固定され、
    前記圧電体に発生した前記定在波により、前記非圧電体に弾性表面波が励振されることを特徴とする弾性表面波励振装置。
  2. 請求項1に記載の弾性表面波励振装置であって、前記圧電体に発生する前記弾性波が、弾性表面波であることを特徴とする弾性表面波励振装置。
  3. 請求項1または2に記載の弾性表面波励振装置であって、前記圧電体の前記長さが、当該圧電体を伝搬する波の1/2波長の整数倍の長さに設定されていることを特徴とする弾性表面波励振装置。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の弾性表面波励振装置であって、前記交差指電極の隣接する交差指電極とのピッチが、前記非圧電体を伝搬する波の1/2波長に設定されていることを特徴とする弾性表面波励振装置。
  5. 請求項1または2に記載の弾性表面波励振装置であって、前記圧電体の前記櫛型電極に接する側の面の前記交差指電極と接触しない位置に、前記圧電体と前記非圧電体との音響的結合を増進するための溝が、前記交差指電極と並行に設けられていることを特徴とする弾性表面波励振装置。
  6. 請求項5に記載の弾性表面波励振装置であって、前記交差指電極に接触する前記圧電体の突条部が、非圧電体表面に励振する弾性表面波の周波数で共振して交差指電極形成面の垂直方向に伸縮することを特徴とする弾性表面波励振装置。
  7. 請求項1または2に記載の弾性表面波励振装置であって、前記与圧手段が、真空吸着を利用して、前記圧電体を前記非圧電体に圧接することを特徴とする弾性表面波励振装置。
  8. 請求項7に記載の弾性表面波励振装置であって、前記圧電体を覆い、裾部分が前記非圧電体に密着する軟質カバーを備え、前記軟質カバーの内部を真空にして、前記圧電体を前記非圧電体に圧接することを特徴とする弾性表面波励振装置。
  9. 請求項7に記載の弾性表面波励振装置であって、前記圧電体と前記非圧電体との間に真空の空間を有し、前記空間が、並行する前記交差指電極と、前記交差指電極に直交する櫛型電極の側面に配置された接着剤とで密封されていることを特徴とする弾性表面波励振装置。
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