上記従来の方法は、実際の外部障害(基地局や基地局制御局の故障、他の干渉波、天気、建築物、機械・重機)によるシャドーの変動等、基地局での受信電力が急に減少する場合を考慮にいれていない。以下に、シャドー効果のように、直接波、反射波の電波が遮られ電界伝度が変動する場合について説明する。
図17は、従来の移動体通信システムでのハンドーバ中の構成を表した図である。例えば、図17に示すように、移動局(MS)800が基地局A(BTS_A)850と基地局B(BTS_B)870に同時に通信しているソフトハンドオーバ中において、基地局制御局(BSC)860での選択合成後の信号のほとんどが、BTS_A850経由の信号であるようなBTS_A850とBTS_B870との信号品質に格差がある場合を考える。
MS800は、送信処理を行う送信器(Tx804)、可変利得増幅器803、送信電力制御を行う送信電力制御判定部(TPC(transfer power control)判定部)805、サーキュレータ802、送受信アンテナの801、受信処理を行う受信器(Rx806)を備える。BTS_A850は、送受信アンテナ851とサーキュレータ852、受信処理するRx853、受信信号のSIRを測定するSIR854、目標SIRを設定及び記憶する目標SIR設定部856、目標SIRと受信SIRとを比較する比較部855、送信信号に送電力制御信号を付加する加算器857、送信処理を行うTx858を備える。又、BTS_B870も、BTS_A850と同様な構成である。更にBSC860は、選択合成を行う選択合成部861と選択合成後の受信FER(frame error rate)を測定するFER部862、目標FERを記憶する目標FER記憶部864、受信FERと目標FERとを比較する比較部863、送信電力制御信号を制御信号に乗せる加算器865を備える。
先ず、MS800とBTS_A850との閉ループ送信電力制御について説明する。MS800から送信された上り信号(上り信号とは、MSからBSC860へ送信される信号である)は、BTS_A850のアンテナ851で受信される。アンテナから受信された信号は、サーキュレータ852を介した後、Rx853で受信処理を施され、SIR測定部854とBSC860へと送信される。SIR測定部854では、入力された受信信号のSIR(Signal Information Ratio)を測定して、比較部855に転送する。比較部855では、入力された受信SIRと予め決められた目標SIRとを比較し、その結果、受信SIRが目標SIRより小さい場合には、送信電力増加を意味する送信電力制御信号を、比較結果が受信SIRが目標SIRより大きい場合には、送信電力減少を意味する送信電力制御信号を加算器857によって下り信号(下り信号とは、BSC860からMSへ送信される信号)に付加する。送信電力制御信号を付加された送信信号は、サーキュレータ852を介した後、アンテナ851からMS800に対して送信する。
BTS_A850より送信された信号は、MSのアンテナ801より受信され、サーキュレータ802を介してRx806へと転送される。Rxでは、受信信号から送信電力制御信号を取り出し、TPC判定部805へと転送する。TPC判定部850では、送信電力制御信号の意味を判定し、判定結果が送信電力増加指示であれば、可変利得増加器803に対して利得増加の制御を行う。又、判定結果が送信電力制御減少指示であれば、可変利得増加器803に対して利得減少の制御を行う。MSの送信信号は、Tx804で送信処理された後、TPC判定部805により制御された可変利得増加器803によって所定の利得に増減化した上でアンテナ801から送信される。この動作を繰り返すことによってBTS_A850での受信SIRは、目標SIRに収束する。
次に、ハンドオーバ中での送信電力制御を説明すると、MS800は、BTS_A850とBTS_B870との間で通信を行うので、MS800より送信された上り信号は、BTS_A850および、BTS_B870のアンテナで受信され、各々のBTSは、上記の動作を行い、送信電力制御信号を付加した送信信号を各々のアンテナより送信する。BTS_A850とBTS_B870の送信電力制御の増減指示は、無線回線の違いと目標SIRの初期値の違いから、必ずしも一致するとは限らない。
MS800では、BTS_A850、およびBTS_B870からの送信信号を受信して最大比合成で受信処理を行い、TPC判定部805での判定では、一つでも送信電力制御信号に減少指示があれば可変利得増幅器803に対して利得減少制御を行う。逆に利得増幅と判定する為には、例えば、全ての送信電力制御信号が増加指示でなくてはならない。この動作は、受信品質が良い受信信号を基準に判定を行うことを意味する。
次に、ハンドオーバ中のBTSとBSC間の目標SIR更新制御について説明する。BTS_A850、BTS_B870により受信処理された上り信号は、BSC860に送られる。BSC860では、BTS_A850、およびBTS_B870の受信信号を選択合成部861により選択合成を行い、品質の良い信号を上位局へと転送する。又、選択合成された信号は、FER部862へと入力され、FER部では入力された信号のFERを測定し、比較部863へと転送する。比較部863では、システムにより決められている目標FERと比較して、受信FERが目標FERより大きい場合には、BTSの目標SIRの増加を意味する目標SIR更新御信号を、また、比較結果が受信FERが目標FERより小さい場合には、目標SIRの減少を意味する目標SIR更新信号を加算器865に送信する。加算器865では、比較部863より入力された信号をBTS−BSC間の制御信号に乗せて、ハンドオーバ中のBTS_A850とBTS_B870に対して送信する。BTS_A850とBTS_B870は、BSC860から受信した制御信号を解読して目標SIR更新信号が目標SIRの増加指示であるか、減少指示であるか解読する。解読結果が増加指示であれば、目標SIRを増加させ、解読結果が減少指示であれば、目標SIRを減少させる。この動作を繰り返すことによってBSC860での選択合成後の信号を目標FERの品質に収束させることができる。従来技術では、BTS−BSC間の目標SIR更新周期Tは、BTS−MS間の閉ループ送信電力制御周期τより十分長いことが知られている。
図18は、従来の移動体通信システムでの送信電力制御を表したグラフである。次に、図18のグラフを用いてハンドオーバ中において、無線回線品質がBTS_B−MS間よりBTS_A−MS間の方が十分に高い場合について説明する。ここで、図18(A)は、MSでの送信電力の遷移を表すグラフ、図18(B)は、各BTSでの目標SIRの遷移と受信SIRの遷移を表すグラフ、図18(C)は、BSCでの選択合成後の受信FERの遷移を表すものである。
BTS_A850とBTS_B870の目標SIRは、ハンドオーバ追加時の初期値の違いから異なっている。MS800から送信された上り信号は、BTS_A850とBTS_B870で受信され、各々の受信SIRを測定して閉ループ送信電力制御が行われる。MS800では、受信信号の最大比合成で受信処理、送信電力制御判定を行うので、送信電力制御判定結果は無線通路の品質が良いBTS_A850の信号を基に可変利得増加器803の制御を行うことになる。従って、t0〜t2時間のMS800の送信電力901は、BTS_A850の受信SIR903がBTS_A850の目標SIR902に収束するように制御される。一方、BTS_B870の受信SIR905は、無線回線品質が悪いため目標SIR904より低くなり、送信電力制御信号を通して送信電力増加を促すが、MS800での送信電力制御判定ではBTS_A850の送信電力制御信号を採用するために、BTS_B870の目標SIRは、収束することができない。
次に、t0〜t2時間でのBSC860の受信FER908を見ると目標FER907より品質が良い。これは、選択合成後の信号のほとんどが品質の良いBTS_A850からの受信信号であることを意味し、目標SIR更新制御は、実質的にBTS_A850の信号のFERを基に目標SIRを決めていくことになる。このグラフの場合には、受信FER908が目標FER907より良いので目標SIRを下げるように、目標SIR更新周期T910の間隔で制御され、受信FER908は、目標FER907に収束していく。また、BTS_A850およびBTS_B870の目標SIRが下がることによって、MS800の送信電力901も下がるのがわかる。
次に、t2時間以降にMS800とBTS_A850との間に障害物が現れたこと等により受信電力が急に減少した場合を想定すると、BTS_A850の受信SIR903は、グラフのt2〜t3時間に急激に低下し、それに伴ってBSC860の受信FER908も急激に悪くなる。BTS_A850の受信SIR903が低下していくと、BTS_B870の受信SIR905との交点tAがありこのtAを過ぎると、BSC860の選択合成部861での選択信号先がBTS_A850の信号からBTS_B870の信号へと移ることになる。又、MS800においてもBTS_A850850の下りの信号の品質の低下に伴い、送信電力制御判定がBTS_B870の送信電力制御信号を基に判定するように変わり、tA〜t3の間でMS800は、BTS_B870の目標SIR904を満たすように送信電力を上げていく。この閉ループ送信電力制御によってBSC860での受信FER908は、あるFER909に収束する。しかし、この時の受信FER908は、目標FER907を満たすものではない。何故ならば、この時に収束したBTS_B870の目標SIR904は、MS800とBTS_A850の無線回線品質が良好であり、BSC860での選択合成後信号が、ほとんどBTS_A850の信号であった場合において制御され決定された値だからである。
t3以降は、BSC860での受信FER908が目標FER907より悪いので、BTS_A850及びBTS_B870の目標SIRは、増加するように制御され、目標SIR更新周期T910で徐々に目標FERに近づいていく。
しかしながら、目標SIR更新周期Tは、非常に長いので、目標FERまで落ち着くまでには時間がかかり、かなりの時間、品質を保てない状態が続いてしまう。更に、BSC860の選択合成部861での選択先がBTS_A850の信号からBTS_B870の信号に移った後の受信FER909が、呼解放が生じるFER906を超えてしまい、かつ同期が維持できない時間、保持されると呼切断が生じる問題が発生してしまう。
本発明の目的は、以上の点に鑑み、ソフトハンドオーバー中にシャドウ効果等のように急激にデータ品質が劣化した場合にでも、早急に目標となる信号品質に収束させ回復させることができる無線通信システムを提供することにある。更に、本発明の目的は、外部障害によるシャドー変動に対して、呼切断が減少するセルラー移動通信システムを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、符号分割多元接続方式の移動通信システムにおいて通話中の移動局および基地局は、各々の無線回線の受信品質が所定の基準品質に等しくなるように送信電力制御を行い、移動局が複数の基地局に同時に接続されるソフトハンドオーバ中において複数の基地局は、有線回線を介して基地局制御局に接続され、複数の基地局から基地局制御局への複数の伝送信号は、基地局制御局において選択合成される移動通信システムにおいて、基地局制御局は、選択合成後の信号品質が所定の品質と等しくなるように、該基地局に対して、ある周期で送信電力制御で用いる基準品質値を更新する機能を有し、この制御する更新は、短い周期時間であることを、ひとつの特徴とした。
また、上記目的を達成するため、移動通信システムにおいて、基地局制御局が、該基地局の送信電力制御で用いる基準品質値を更新する周期は、送信電力制御周期時間と同じにすることを、他の特徴とした。
更に、上記目的を達成するため、符号分割多元接続方式の移動通信システムにおいて通話中の移動局および基地局は、各々の無線回線の受信品質が所定の基準品質に等しくなるように送信電力制御を行い、移動局が複数の基地局に同時に接続されるソフトハンドオーバ中において複数の基地局は、有線回線を介して基地局制御局に接続され、複数の基地局から基地局制御局への複数の伝送信号は、基地局制御局において選択合成される移動通信システムにおいて、ソフトハンドオーバ中の間、基地局制御局は、該基地局から受信する複数の伝送信号の信号品質により、最良の回線品質を提供する基地局を決定する手段と、最良の回線品質を提供する基地局に、基地局に対する基準品質の増減指示を通知する機能を具備し、基地局は、増減指示の有無を判断する手段と、増減指示を受け取らない該基地局は、システム設定値をもとに送信電力を行うことを、他の特徴とした。
また、上記目的を達成するため、基地局制御局において、最良の回線品質を提供する基地局を決定する手段は、選択合成前のハンドオーバ中の該基地局から受信した信号と選択合成によって選択された信号との割合を測定することによって決定することを、他の特徴とした。
また、上記目的を達成するため、基地局において、基地局制御局からの基準品質増減指示の有無を判断する手段は、待ち受け時間を管理する機能を具備することによって実現することを、他の特徴とした。
また、上記目的を達成するため、基地局において、基地局制御局からの基準品質増減指示を受けとらない該基地局は、送信電力制御の基準品質値をシステム初期設定値に設定することを、他の特徴とした。
更に、上記目的を達成するため、符号分割多元接続方式の移動通信システムにおいて通話中の移動局および基地局は、各々の無線回線の受信品質が所定の基準品質に等しくなるように送信電力制御を行い、移動局が複数の基地局に同時に接続されるソフトハンドオーバ中において複数の基地局は、有線回線を介して基地局制御局に接続され、複数の基地局から基地局制御局への複数の伝送信号は、基地局制御局において選択合成される移動通信システムにおいて、基地局は、基準品質と受信品質との差と、所定の閾値とを比較する手段を具備し、比較結果によって、該基地局は、自立的に最良の回線品質を提供している基地局であるか否かを判断する機能を具備し、該基地局が最良の回線品質を提供している基地局でないと判断した場合には、システム初期設定値をもとに送信電力制御をおこなうことを、他の特徴とした。
また、上記目的を達成するため、基地局において、基準品質と受信品質との差と、所定の閾値とを比較した結果が、基準品質と受信品質との差が閾値より小さいと判断された場合は、該基地局が最良の回線品質を提供している基地局であると判断することを、他の特徴とした。
また、上記目的を達成するため、記載の基地局において、基準品質と受信品質との差と、所定の閾値とを比較した結果が、基準品質と受信品質との差が閾値より大きいと判断された場合は、該基地局が最良の回線品質を提供している基地局ではないと判断する特徴を備えることができる。
また、上記目的を達成するため、基地局において、基準品質と受信品質との差と、所定の閾値とを比較した結果が、基準品質と受信品質との差が閾値より小さいと判断された場合にのみ、基地局制御局からの基準品質増減指示に従う特徴を備えることができる。
また、上記目的を達成するため、基地局において、基準品質と受信品質との差と、所定の閾値とを比較した結果が、基準品質と受信品質との差が閾値より小さいと判断された場合には、基地局の基準品質をシステム初期設定値に設定して送信電力制御を行う特徴を備えることができる。
本発明によると、上記従来の技術の課題を解決し、外部障害による無線回線品質の低下に対しても、選択合成後の品質を早急に回復させることが可能で、上位局に対しては品質の高い信号を供給することが出来る。更に、外部障害によるシャドー変動に対して、呼切断が減少するセルラー移動通信システムが実現できる。
以下では、発明の実施の形態を説明する。
(1)実施の形態1の説明
図1は、本発明を適用したセルラー移動通信システムにおいて、ハンドオーバ中の構成を表した図である。すなわち、図1は、本発明の送信電力制御方式を適用したCDMA移動通信システムにおいて、ソフトハンドオーバ中にあるMS400とハンドオーバ接続先であるBTS_A100、およびBTS_B200、BSC300を示した図である。MS400は、BTS_A100からの下り無線回線、およびBTS_B200からの下り無線回線を受信するとともに、両BTSに対して共通の上り無線回線を送信している。
また、BTS_A100とMS400との間、BTS_B200とMS400との間には送信電力制御によってMS400、および各BTSの送信電力が制御されている。送信電力制御は、例えば、ヘッダ、TPCビット、ユーザ情報を含む個別物理チャネル250のTPCビットを使うことによって実現される。このとき、一例として、BTS_A100、および、BTS_B200がMS400に対して送信電力を上げる指示をする場合には、TPCビットを“11”とし、逆に送信電力を下げる指示をする場合には、TPCビットを“00”として下りの御別物理チャネルに付加して送信する。MS400は、個別物理チャネル250を受信するとTPCビットを見て、“11”と判断するとBTSへの送信電力を上げ、逆に“00”と判断すると送信電力を下げる。また、上り方向に対しても同様なデータ形式であり、TPCビットによってBTSの送信電力が制御される。
また、BTS_A100は、有線回線410を介してBSC300に接続され、BTS_B200は、有線回線420を介してBSC300に接続され、BSC300において、上り信号を選択合成することで、より品質の高い上り信号を上位局へ送信することができる。この各BTSとBSC300との間には、BSC300でのFERと目標FERとの比較結果に基づきBTSの目標SIRを更新する制御があり、この制御は、BTSとBSC300間の局間制御チャネル252を使うことによって実現される。BSC300がBTSに対して目標SIR更新を指示したい場合には、局間制御チャネル252のデータ部に目標SIR更新信号を乗せて送信し、BTSでは目標SIR更新信号の中身を解読して、解読結果に従い目標SIRを更新する。
この実施の形態では、一例として、ハンドオーバ中の無線回線品質は、 BTS_B200とMS400との間の無線回線品質より、BTS_A100とMS400との無線回線品質の方が高いものとする。又、各々の実施の形態では、基地局での基準品質にはSIRを、基地局制御局での信号品質には、FERを用いて説明するが、これに限らず、基準品質、信号品質を表す適宜のパラメータを用いることができる、例えば、1Bit当りの信号比干渉電力Eb/No(Bit Energyper Noise)、ビット誤り率(Bit Error Rate)、フレーム誤り率、搬送波対干渉電力CIR(carrier interference ratio)、呼損率等を用いることができる。
実施の形態1でのシステム構成は、図17の従来の構成と同様であるが、BTSとBSC300との間の目標SIR更新周期T510を従来のものより短く設定していることが、主な特徴である。この実施の形態1の動作をグラフを用いて説明する。
図2は、本発明を適用した実施の形態1での送信電力制御を表したグラフである。図2(A)は、上からMS400の送信電力、図2(B)は、BTS_A100とBTS_B200の目標SIRと受信SIR、図2(C)は、BSCでの受信FERをそれぞれ示すグラフであり、図18の従来のグラフと比べると、特に、目標SIR更新周期T510が短く設定されている。
t0〜t3時間は、BTS_A100とMS400との無線回線品質が良好な場合である。MS400がハンドオーバ中の閉ループ送信電力制御は、品質の良い送信電力制御信号を選択することから、BTS_A100の送信電力制御信号をもとに閉ループ送信電力制御を行い、BTS_A100での受信SIR503は、目標SIR502に収束する。逆に、BTS_B200での受信SIR505は、MS400がBTS_B200の送信電力制御信号を基に閉ループ送信電力制御をしていないことから目標SIR504より低くなる。t1での受信FER508は、目標FER507より品質が良いので、BSC300は、t1での目標SIR更新時間に目標SIRを下げる制御信号をBTS_A100とBTS_B200に対して出す。その制御信号を受け取ったBTS_A100とBTS_B200は、制御信号に従い目標SIRを下げる。目標SIRが下がると、t1でのBTS_A100の受信SIR503は、目標SIR502より高くなり、MS400は、閉ループ送信電力制御によって送信電力501を下げ、BTS_A100の受信SIR503は、目標SIR502に収束していく。更にBSC300での受信FER508も目標FER507に収束していく。
次にt3以降にBTS_A100100とMS400との無線回線間に障害物が入ること等により、無線回線品質が低下したとすると、BTS_A100での受信SIR503は、急激に低下する。それに伴って、BSC300の受信FER508も急激に悪くなり、MS400の送信電力501は、閉ループ送信電力制御によって上がっていく。BSC300では、BTS_A100の受信SIR503がBTS_B200の受信SIR505より低くなった時点で、選択合成部での選択する信号がBTS_A100経由の信号からBTS_B200経由の信号へと変わり、受信FER508の上昇が止まる。次にt4では、目標SIR更新制御により目標SIRが上げられ、早急にFERが改善される。更に呼解放FER506を超える時間が短くなるので、同期外れが生じなくなり、呼解放が発生しなくなる。この動作を繰り返すとt7以降に受信FERが目標FERに収束して、品質を満たすことになる。このように目標SIR更新周期T510を短くすることで、受信FER508が悪くなった場合でも、早急に目標FER507に近づけることが出来る。
図4は、BTS_A100とBTS_B200の構成を示すブロック図である。図中において、無線信号の送受信を行うアンテナ101、上りと下り信号を分配するサーキュレータ102、高周波・中間周波数での受信処理を行う受信部(RxRF)103、逆拡散処理を行う逆拡散回路104a〜104n、上り信号の復号化処理を行う復号部105a〜105n、上り信号から通話信号と制御信号を挿入分離する上り情報部106、BSC300への送信インタフェースを持つ上りLIF部107、上り信号のSIRを測定する上りチャネルSIR測定部108、受信SIRと制御部150より指定された目標SIRとを比較し、比較結果により送信電力制御信号を作成する比較器109、BSC300からの受信インタフェースを持つ下りLIF部111、下り信号から通話信号と制御信号を分離、挿入する下り情報部111、下り信号を符号化する符号化部112a〜112n、下り信号に比較器から入力された送信電力制御信号を付加してフレームを作成するフレーム作成部113a〜113n、拡散処理を行う拡散回路114a〜114n、拡散回路から入力された上り信号を加算する加算回路115、下り信号の高周波数・中間周波数処理を行う送信部(TxRF)116、BSC300からの制御信号により目標SIRを更新させる制御部150を備える。
次に、図5は、BSC300の構成を示すブロック図である。図中において、BTSとのインタフェースを持つラインインタフェース部(LIF部)301a〜301n、信号の交換処理を行うスイッチ(SW)302、ハンドーバ中に選択合成処理を行う選択合成部320、上位局への送信インタフェースを持つ上位局IF部304、選択合成後の上り信号のFERを測定する上りFER測定部305、測定したFERと制御部より入力された目標FERとを比較する比較器306、比較器での比較結果を基に制御信号を作成する制御信号作成部307、上位局への受信インタフェースを持つ上位局IF308、下り信号に制御信号を挿入する加算器309、下り信号をハンドオーバ中のBTSへ複製する選択分離部310、メインパスを推定する目標SIR制御部350を備える。
以上のように構成されるCDMA移動通信システムにおいて、ハンドオーバ中のMS400およびBTSは、それぞれの無線回線の受信品質が所定の基準品質に等しくなるように閉ループ電力制御周期τで送信電力制御を行い、またBSC300においては、受信FERが所定の目標FERに等しくなるように、所定の目標SIR更新周期Tで目標SIRを補正制御する。
更に詳細に説明すると、先ず、BTS_A100では、MS400から送信された上り信号を、アンテナ101で受信し、サーキュレータ102を介してRxRF103に転送する。RxRF103では、ベースバンド信号の復調と高/中間周波数での受信処理が行われ、ベースバンド信号を逆拡散回路104a〜104nへと転送する。逆拡散回路104a〜104nでは、指定された拡散符号を使って上り信号に逆拡散処理を施し、該MS400の上り信号を取り出す。取り出した該MS400の上り信号は、上りチャネルSIR測定部108と復号部105a〜105nへと入力される。復号部105a〜105nでは、入力された上り信号にデインタリーブやビタビ復号等の誤り訂正制御処理を施し、更に無線回線の品質情報を付加して、上り信号を上り情報部106へと送信する。上り情報部106では、上り信号から制御信号と通話信号を分離してBSC300に送信すべき信号を選定して上りLIF部107を介してBSC300へと送信する。
一方、上りチャネルSIR測定部108は、入力された上り信号のSIRを測定し、受信SIRを比較部109へと転送する。比較部109では、入力された受信SIRと制御部150より指定された目標SIRとを比較して、受信SIRが目標SIRより小さい場合には、送信電力増加を意味する送信電力制御信号を、受信SIRが目標SIRより大きい場合には、送信電力減少を意味する送信電力制御信号を作成し、その信号をフレーム作成部113a〜113nへと送信する。
BSC300から受信する下り信号は、下りLIF110を介して下り情報部111へ入力される。下り情報部では、BTS_A100で終端する必要がある制御信号(例えば、目標SIRの増減指示のための制御信号等)は、制御部150へと転送し、MS400へと送信すべき信号には符号化部112a〜112nへと転送する。符号化部112a〜112nへ入力された下り信号は、インターリーブや符号化処理等を施され、フレーム作成部113a〜113nへと送信される。フレーム作成部113a〜113nでは、符号化部112a〜112nから入力された下り信号に比較部109から入力された送信電力制御信号を付加して拡散回路114a〜114nへと転送する。拡散回路114a〜114nでは、下り信号を拡散処理した後、加算回路115へと送信する。加算回路115では各拡散回路から入力された下り信号を加算してTxRF116へと転送する。TxRF116へと入力された下り信号は、高/中間周波数の送信処理を施されサーキュレータ102を介してアンテナ101からMS400へと送信される。又、BTS_B200でも同様な構成により同様な処理が行われて、送信電力制御信号を付加された下り信号がアンテナより送信される。
MS400では、BTS_A100とBTS_B200から受信した下り信号を、例えば、最大比合成等にて受信処理を行うことで、結果的には、品質の良い信号の送信電力制御信号を使って、送信電力制御判定を行うことになる。この場合には、BTS_A100との無線回線品質の方が良いので、BTS_A100の送信電力制御信号を解読して、その電力増減指示に従いMS400の送信電力を決定する。
一方、BTS_A100からBSC300へと送信された上り信号は、ラインインタフェース(LIF)301aを介してSW302へと入力され、BTS_B200からBSC300へと送信された上り信号は、LIF301nを介してSW302へと入力される。SW302では、ハンドーバ中のBTS_A100とBTS_B200の上り信号を選択合成部320へと交換する。
(2)実施の形態2の説明
次に実施の形態2の説明をする。まず、基地局制御局について説明する。
図7は、基地局制御局における選択合成部のブロック構成を表した図である。選択合成部320は、図のような、バッファ321a〜321n、選択判定部322、選択部323を備えており、SW302から入力された上り信号は、信号線324a〜324nを介して、一旦、バッファに入れられ、比較する信号の遅延差が吸収される。選択判定部323では、BTS_A100とBTS_B200の上り信号に付加された品質情報を比較して、より品質の高い信号の選択判定を行う。判定結果は、信号線325を通して、選択部323と目標SIR更新制御部350へとに連絡される。選択部323に判定結果が通知されると選択部323では、判定結果に従った信号を選択判定部322より読み出し、読み出した信号は、上りFER測定部305と上位局IF304へと転送される。
上位局IF304へ入力された信号は、上位局へと送信される。上りFER測定部305では、入力された選択合成後の信号のFERを測定して、受信FERを比較部306へと送信する。比較部306では、入力された受信FERと予めシステムによって決められた目標FERとを比較して、受信FERが目標FERより低い場合、BTSの目標SIRを下げる指示を、受信FERが目標FERより高い場合には、BTSの目標SIRを上げる指示の意味をもつ目標SIR更新信号を制御信号作成部307に入力する。制御信号作成部307では、比較部306より入力された目標SIR更新信号を下りの制御信号のフォーマットに変換して、加算器309を介して選択分離部310へと送信する。
図8は、基地局制御局における目標SIR更新制御部のブロック構成を表した図である。目標SIR更新制御部350は、図8のような選択合成部インタフェースの351とメインパス推定部の360、選択分離部へのインタフェースの353を備え、これらは、内部バス354で接続されている。選択合成部320により入力された選択判定結果信号は、選択合成部インタフェース(IF351)を介して入力され、メインパス推定部360へと転送される。
図10は、基地局制御でのメインパスを推定する手段を表したフローチャートである。メインパス推定部360では、図10に示すようなフローチャートでメインパスを推定する。
選択合成部IF351を介して、選択判定結果信号が入ってくると、先ず、ステップ361に進み、選択された信号がBTS_A100の信号であるか否か判定する。BTS_A100の信号であると判定された場合には、ステップ362に進み、BTS_A100の信号を選択している割合を測定し、ステップ363に進む。ステップ363では、ステップ362で測定した結果が、規定の閾値th以上であるか否か判定する。判定結果がth以上と判定された場合には、ステップ364に進み、メインパスは、BTS_A100からの通信路であると判定される。又、ステップ363で判定した結果がth未満であると判定された場合には、ステップ367に進み、メインパスは該当なしと判定される。
一方、ステップ361で選択信号がBTS_B200から受信した信号であると判定された場合には、ステップ365に進み、BTS_B200の受信信号を選択している割合を測定する。次にステップ366に進み、ステップ365で測定した結果が規定閾値th以上であると判定された場合には、ステップ368に進み、メインパスはBTS_B200からの通信路であると判定できる。また、ステップ366での判定結果が規定閾値th未満であると判定された場合には、ステップ367に進み、メインパス該当なしという判定になる。
ステップ364、367、368によってメインパスの判定が決まった後、ステップ369に進み、目標SIR更新時間であるかの判定が行われ、更新時間であれば、ステップ370に進み、選択分離部IF353を介して選択分離部310へ通知する。又、ステップ369での判定が目標SIR更新時間ではないと判定された場合には、選択分離部310への通知は行われず終了となる。
選択分離部310では、上位局IF308より入力された下り信号を複製して、ハンドオーバ中の全BTSに対して送信するが、目標SIR更新信号を乗せた制御信号は、制御部350より通知された信号を基に送信するBTSを選択する。制御部350よりBTS_A100経由の通信路がメインパスであると通知された場合には、目標SIR更新信号を乗せた制御信号は、BTS_A100に接続される信号にのみに送信し、BTS_B200には送信しない。又、制御部350よりメインパスなしと通知された場合には、ハンドーバ中の全BTSに対して送信する。選択分離部310よりSW302に対して送信された下り信号は、LIF301a〜301nを介して各BTSへと送信される。
BSC300から送信された下り信号は、BTS_A100とBTS_B200の下りLIF110を介して下り情報部111へと入力される。下り情報部111では、下り信号から制御信号を抽出すると制御部150へと転送する。
つぎに、基地局について説明する。
図6は、基地局における制御部のブロック構成を表した図である。制御部150は、図6に示すような情報部IF153、目標SIR制御部160、比較器IF151、タイマ154を備え、下り情報部111より入力された制御信号は、情報部IF153を介して目標SIR制御部160に入力される。
図9は、基地局での目標SIR更新制御を実現するフローチャートである。目標SIR制御部160では、このフローチャートに従った制御を行う。
先ず、ステップ161において、制御信号が入力されているかを判定する。情報部IF153より制御信号が入力されている場合には、ステップ162に進み、タイマー値をリセットし、ステップ163に進む。ステップ163では、制御信号の指示に従って目標SIRを増減する。次にステップ164に進み、更新された目標SIRを比較器IF151を介して比較器109に指示して終了である。一方、ステップ161で制御信号が無しと判定された場合には、ステップ165に進み、タイマ値が規定時間Thを超えているか否かを判定する。判定結果が、規定時間Thを超えていないと判定された場合には、ステップ161に戻る。又、判定結果が、規定時間Thを超えていると判定された場合には、ステップ166に進み、目標SIRを初期設定値に変更する。その後は、ステップ164に進み、比較器へ通知して終了となる。
次に、BTS_A100とMS400との間の無線回線品質が良好である時に、BTS_A100とMS400との無線回線間に障害物が入ってしまう等により、無線回線品質が急激に低下した場合の本発明の動作を説明する。図3は、本発明を適用した実施の形態2の送信電力制御を表したグラフである。すなわち、図3の(A)は、MS400の送信電力、図3(B)は、BTS_A100とBTS_B200の目標SIRと受信SIR、図3(C)は、BSCでの受信FERをそれぞれ示すグラフである。
t0〜t2時間は、BTS_A100とMS400との無線回線品質が良好な場合である。MS400がBTS_A100の送信電力制御信号をもとに閉ループ送信電力制御を行うことで、BTS_A100での受信SIR603は、目標SIR602に収束するが、BTS_B200での受信SIR605は、目標SIR604より低くなる。
t1での受信FER608は、目標FER607より品質が良いので、BSC300がBTS_A100からの通信路をメインパスと判断した場合には、t1での目標SIR更新信号には、目標SIRを下げる指示をBTS_A100のみに送信する。BTS_A100の制御部150は、BSC300からの目標SIR更新信号を受け取るとその内容に従い目標SIRを下げる。又、t1〜t2時間に見られるようにBTS_B200では、t1を過ぎても制御信号が届かないので、目標SIR制御部160での処理において、図9のステップ165の判定においてタイマー値が規定時間Thを超えたと判断され、目標SIRが初期設定値609に変更される。
BTS_A100での目標SIR602が下がると、t1での受信SIR603は、目標SIRより高くなるので、閉ループ送信電力制御によってMS400の送信電力601を下げ、受信SIR603は、目標SIR602に収束していく。更にBSC300での受信FERも目標FER607に収束していく。
次にt2以降にBTS_A100とMS400との無線回線間に障害物が入り、無線回線品質が低下したとすると、BTS_A100での受信SIR603は、急激に低下する。それに伴って、BSC300の受信FER608も急激に悪くなり、MS400の送信電力は、閉ループ送信電力制御により送信電力を上げていく。BTS_A100の受信SIR603がBTS_B200の受信SIR605より低くなった時点で、BSC300の選択合成部での選択する信号が、BTS_A100経由の信号からBTS_B200経由の信号へと変わり、受信FER608の上昇が止まる。MS400においては、閉ループ送信電力制御をBTS_A100の送信電力制御信号からBTS_B200の送信電力制御信号を基に制御するように変わり、既に初期設定値になっているBTS_B200の目標SIRに向かって送信電力を増加させる。この動作により、呼解放FER606を超える時間が短くなるので、同期外れが生じなくなり、呼解放が発生しなくなる。
通常、目標SIRの初期設定値609は、受信SIRが目標SIRに収束した場合にBSC300の受信FERが目標FERより品質が高くなるように設定される。t3以降は、目標SIR更新制御および閉ループ送信電力制御によってBSC300の目標FER607に収束するように動作する。又、BTS_A100とMS400の無線回線が低下したままであれば、t4でのメインパスは、BTS_B200からの通信路であるとBSC300が判定することで、BTS_A100は、目標SIR602をBTS_A100の初期設定値に変更する。
上記の動作によって、目標FERの品質を満たさない時間が短縮できる。なお、規定時間Thは、例えば、SIR更新周期Tより大きい値とすることができる。また、目標SIRの初期設定値は、例えば、十分に呼接続可能な程度高い値、インフラ・環境・システム設置状況に応じた経験値・設定値、MSが出力できる最大値より低い値等に適宜設定することができる。
(3)実施の形態3の説明
次に、実施の形態3について説明する。本発明を適用するシステムは、図1と同様であり、MS400、BSC300は従来の装置と同様である。図11は、実施の形態3で用いられるBTSのブロック構成図を示している。
このBTSで特徴的な構成は、主に目標SIRの更新制御を行う制御部170にある。上りチャネルSIR測定部108により上り信号のSIRを測定した後、受信SIRを比較器109と制御部170に転送する。比較器109は、実施の形態2で説明した動作と同様である。
図12は、実施の形態3での基地局における制御部のブロック構成を表した図である。制御部170は、上りチャネルSIR測定108とのインタフェースを持つSIR測定部IF172、比較器109とのインタフェースの171、目標SIR更新の制御を行う目標SIR制御部180、下り情報部111とのインタフェースを持つ情報部IF173を備え、これらは内部バス175で接続されている。
目標SIR更新制御は、目標SIR制御部180によって制御される。図13は、実施の形態3での基地局での目標SIR更新制御を実現するフローチャートである。目標SIR制御部180の動作を、このフローチャートを用いて説明する。先ず、ステップ181において、現在の目標SIRから、SIR測定部IF172を介して入力された受信SIRを減算した値をΔSIRとして求める。次にステップ182に進み、ステップ182で算出したΔSIRが予め決めていた閾値Xthと比較する。比較結果がΔSIRは、Xthより小さいと判定された場合には、ステップ183に進み、情報部IF173に目標SIR更新信号を含む制御信号が有るか否かを判断する。判断結果において制御信号が入力されていると判断された場合には、ステップ184に進み、目標SIR更新信号の指示に従い目標SIRを増減制御する。次にステップ185に進み、ステップ184の結果を、比較器IF171を介して比較器109に通知する。又、ステップ183にて制御信号が入力されていないと判断された場合には、終了となる。一方、ステップ182での比較結果がΔSIRは、閾値Xthより大きいと判定された場合には、ステップ186に進む。ステップ186では、目標SIRを初期設定値に変更する。この場合の初期設定値は、システム初期値とは限定せず、十分品質が保てる値を設定することも出来る。目標SIRを初期設定に変更した後は、ステップ185に進み、比較器109に通知して終了となる。このフローでは、ΔSIRがXthを超えた場合に、BSC300からの目標SIR更新信号を無視する動作になる。
次に、BTS_A100とMS400との無線回線品質が良好である時に、BTS_A100とMS400との無線回線間に障害物が入ってしまう等により、無線回線品質が急激に低下した場合の実施の形態3の動作を説明する。図14は、本発明を適用した実施の形態3での送信電力制御を表したグラフである。図14(A)は、MS400の送信電力、図14(B)は、BTS_A100とBTS_B200の目標SIRと受信SIR、図14(C)は、BSC300での受信FERをそれぞれ示すグラフである。
t0〜t2時間は、BTS_A100とMS400との無線回線品質が良好な場合である。MS400がBTS_A100の送信電力制御信号をもとに閉ループ送信電力制御を行うことで、BTS_A100での受信SIR703は、目標SIR702に収束するが、BTS_B200での受信SIR705は、目標SIR704より低くなる。
t1での受信FER708は、目標FER707より品質が良いので、t1での目標SIR更新信号には、目標SIRを下げる指示をBTS_A100とBTS_B200に送信する。BTS_A100の制御部170は、BSC300からの目標SIR更新信号を受け取ると図13のフローチャートにて目標SIRの更新制御が決められる。ステップ181でのΔSIRの値は、目標SIRと受信SIRの値が極めて等しいことから小さな値となる。ステップ182での判定では、ΔSIRの値は、Xthより小さいと判定され、ステップ183、ステップ184へと進み、BSC300から受信した目標SIR制御信号を基に目標SIRを更新する。この場合には、目標SIRを減少させ、比較器に通知される。
一方、BTS_B200の目標SIR更新制御部180においては、目標SIRと受信SIRに格差があるので、ステップ181のΔSIRの値が大きくなり、ステップ182での判定では、ΔSIRは、Xthより大きいと判定される。判定後は、ステップ186に進み、目標SIRが初期設定値に変更され、比較器109に通知される。
BTS_A100での目標SIR702が下がると、t1での受信SIR703は、目標SIRより高くなるので、閉ループ送信電力制御によってMS400の送信電力701を下げ、受信SIR703は、目標SIR702に収束していく。更にBSC300での受信FER708も目標FER707に収束していく。
次にt2以降にBTS_A100とMS400との無線回線間に障害物が入る等により、無線回線品質が低下したとすると、BTS_A100での受信SIR703は、急激に低下する。それに伴って、BSC300の受信FER708も急激に悪くなり、MS400の送信電力は、閉ループ送信電力制御により送信電力を上げていく。BTS_A100の受信SIR703がBTS_B200の受信SIR705より低くなった時点で、BSC300の選択合成部での選択する信号が、BTS_A100経由の信号から、BTS_B200経由の信号へと変わり、受信FER708の上昇が止まる。MS400においては、閉ループ送信電力制御をBTS_A100の送信電力制御信号からBTS_B200の送信電力制御信号を基に制御するように変わり、既に初期設定値になっているBTS_B200の目標SIRに向かって送信電力を増加させる。この動作により呼解放FER706を超える時間が短くなるので、同期外れが生じなくなり、呼解放が発生しなくなる。
通常、目標SIRの初期設定値は、受信SIRが目標SIRに収束した場合にBSC300の受信FERが目標FERより品質が高くなるように設定される。t3以降は、目標SIR更新制御および閉ループ送信電力制御によってBSC300の目標FER708に収束するように動作する。又、BTS_A100とMS400の無線回線が低下したままであれば、BTS_A100の目標SIR702と受信SIR703の差がXthを超えたと判断された時点で、BTS_A100の目標SIR702を初期設定値に変更する。
上記の動作によって、目標FERの品質を満たさない時間が短縮できる。なお、閾値Xth、目標SIRの初期設定値は、インフラ・環境・システム設定状況に応じた経験値・設定値等により適宜設定することができる。
(4)実施の形態4の説明
次に、実施の形態4について説明する。本発明が適用するシステムは、図1と同様であり、MS400、BTS100は従来の装置と同様の構成である。図15は、実施の形態4で用いれるBSC300のブロック構成図を示している。
このBSC300での特徴は、目標SIR更新制御を、各BTSに対して独立に行うことである。詳細に説明すると、ハンドオーバ中のBTS100とBTS200からの上り信号は、LIF301aとLIF301nを介してBSC300に入力される。入力された上り信号は、SW302によって交換され、信号線324a、信号線324nを通り選択合成部380と上りFER測定部381に転送される。選択合成部380に入力された信号は、選択合成されて上位局へと転送される。一方、上りFER測定部381は、入力された各上り信号のFERを測定して、FERを比較器382に転送する。比較器382では、各信号に対して、上りFER測定部から入力されたFERと制御部から指定されている目標FERとを比較して、受信FERが目標FERより低い場合には、BTSの目標SIRを下げる指示を、受信FERが目標FERより高い場合には、BTSの目標SIRを上げる指示の意味をもつ目標SIR更新信号を制御信号作成部383に送信する。制御信号作成部383は、比較部より入力された目標SIR更新信号を下りの制御信号フォーマットに変換して、各BTSに対応する信号を各BTSに接続される信号に加算器384a、384nを介して挿入される。
次に、BTS_A100とMS400との無線回線品質が良好である時に、BTS_A100とMS400との無線回線間に障害物が入ってしまう等により、無線回線品質が急激に低下した場合の実施の形態4の動作を説明する。図16は、本発明を適用した実施の形態4での送信電力制御を表したグラフである。図16(A)は、MS400の送信電力、図16(B)は、BTS_A100とBTS_B200の目標SIRと受信SIR、図16(C)は、BSC300でのBTS_A100から受信した信号のFER759、BTS_B200から受信した信号のFER761、選択合成後のFER758をそれぞれ示すグラフである。
t0〜t2時間は、BTS_A100とMS400との無線回線品質が良好な場合である。MS400がBTS_A100の送信電力制御信号をもとに閉ループ送信電力制御を行うことで、BTS_A100での受信SIR753は、目標SIR752に収束するが、BTS_B200での受信SIR755は、目標SIR754より低くなる。
t1でのBTS_A100経由のFER759は、目標FER757より品質が良いので、t1での目標SIR更新信号には、目標SIRを下げる指示をBTS_A100に送信する。一方、BTS_B200経由のFER761は、目標FER757より品質が悪いので、t1での目標SIR更新信号には、目標SIRを上げる指示をBTS_B200に送信する。t2においても同様に動作する。
次にt2以降にBTS_A100とMS400との無線回線間に障害物が入る等により、無線回線品質が低下した場合を考えると、BTS_A100での受信SIR753は、急激に低下する。それに伴って、BTS_A100のFER759は、急激に悪くなり、BSC300でのBTS_A100のFER759も急激に悪くなる。MS400の送信電力は、BTS_A100での受信SIRが目標SIRより低くなったことで、閉ループ送信電力制御により送信電力を上げていく。
BTS_A100の受信SIR753がBTS_B200の受信SIR755より低くなった時点で、BSC300の選択合成部での選択する信号は、BTS_A100経由の信号から、BTS_B200経由の信号へと変わり、MS400においても、閉ループ送信電力制御がBTS_A100の送信電力制御信号からBTS_B200の送信電力制御信号を基に制御するように変わる。このハンドオーバによって、MS400は、送信電力をBTS_B200の目標SIRを満たすように上げ、それによってBTS_B200のFER761も下がる。また、BSC300においても選択する信号が変わっているので、合成後FER758の上昇が止まり、下がっていく。
このようにBTS_B200の目標SIRは、BTS_A100とは独立に制御されているため、目標SIRと受信SIRに差があると、BSC300の目標SIR更新制御により上げるように制御される。従って、急にハンドオーバをした場合にでも、目標SIRが高くなっているので、合成後FERを急速に下げることができる。この動作により呼解放FER756を超える時間が短くなるので、同期外れが生じなくなり、呼解放が発生しなくなる。
上記の動作によって、目標FERの品質を満たさない時間が短縮できる。