JP4680718B2 - 汚染土壌修復の最適化方法及びそれに用いる浸透速度測定装置 - Google Patents
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従来、現地で汚染土壌に薬剤を注入する際に、モデル的に決定した標準的な施工で、目的とする土壌の修復がなされているかを確認するために、チェックボーリング、掘削などを行って土壌の状態を観察してそれをフィードバックするなどの煩雑な方法をとっており、薬剤注入を用いた汚染土壌の修復に際しては、その最適化を簡易に行う方法が望まれているのが現状である。
また、前記浸透速度測定工程に先立って、採取された汚染土壌を充填した前記容器内に、水を注入する事前注水工程を実施することで、汚染土壌の透水係数を予め測定することができる。この事前注水工程は、標準的な土壌の場合には、モデル的に決定された透水係数を用いることもできる。
さらに、本発明においては、目的に応じて、浸透速度測定工程による薬液注入試験を行った後、事後の注水工程を実施し、薬液浸透による土壌の透水性の変化などを予測することもできる。
このような浸透速度測定装置において、前記容器を光透過性材料からなること、前記薬液注入手段が、前記容器の側面へ接続され、容器内部と連通する液送管と、前記液送管へ圧力を付与した薬液を圧送する圧力槽と、送液管に設けられ、容器内に圧送される薬液の圧力を検出する圧力センサとを有すること、前記送液管が分岐して前記容器の側面へ接続されること、或いは、前記容器の内壁と土壌試料との間にフィルターを設け、前記内壁とフィルターとの間に空隙を形成することが好ましい態様である。
図1は、本発明の方法の概要を示すフローチャートである。
まず、前記(1)試料採取工程では、汚染土壌試料の採取と、所望により現場における土質調査を行う。この土壌試料を使用して薬液の注入試験を行う〔フローにおける工程(A)〕。このデータを基に土壌試料における薬液の移動の態様をプロットし〔フローにおける工程(B)〕、注入モデル式の作成と注入圧力の決定が行われ〔フローにおける工程(C)〕、さらに注入間隔の決定〔フローにおける工程(D)〕が実施されて、最終的な施工条件が決定される〔フローにおける工程(E)〕。
まず、修復対象となる土壌の試料を採取する。修復の対象となる汚染土壌試料を採取する方法としては、土壌の掘削など公知の方法を任意に適用することができる。試料採取工程においては、公知の掘削装置、例えば、興亜開発株式会社製のジオプローブなど、ドリルなどによる掘削と、所定の深さにおける土壌サンプリングが可能であれば、いずれの装置を適用してもよい。
試料採取は処理対象領域において1カ所のみ行ってもよく、複数箇所で行ってもよい。
図2は、この浸透速度測定工程と、所望により実施される予備試験である透水試験と、所望により実施される、薬液注入の影響を検知するための後透水試験とを含むフローチャートである。
(2)工程では、(2−1)採取されたボーリングコア試料を、側面に薬液の注入口と排出口が形成された容器に、ボーリングコア試料の外周面が注入口及び排出口と対向するように充填する試料充填工程と、(2−2)修復に使用する薬液を所定の圧力で注入口から容器内へ薬液を圧送する薬液注入手段により注入する工程と、(2−3)容器内に充填されたボーリングコア試料を横方向へ通過した薬液が排出口から排出される間での時間と流量とを計測して薬液の浸透速度を測定する工程と、を含む。
また、土壌の空隙係数は、所定のモデルに置き換えて予測することも可能であり、その場合には、この水を注入する工程(予備注水試験)は特に実施しなくてもかまわない。
図5は、本発明の方法に用いうる浸透速度計測装置10の一態様を示すモデル図である。
浸透速度計測装置10は、加圧手段を備えた薬液タンク12と透水試験に用いる水を供給するための水タンク14と土壌試料を充填する容器16と、薬液回収タンク18とを備え、これらは液送管(パイプ)20により連結されている。
薬液が充填した土壌内に横方向に浸透し、フィルター22Bを通過して側壁24Bに連通された液送管20により薬液回収タンク18へ排出される。薬液回収タンク18内の液体はその体積を計測するための目盛りを備える。排出される薬液の総量が一定の量となったとき、例えば、排出される薬液の総量が1000mLとなった時点で注入を停止する。注入開始から停止までの時間と各時間における排出量を計測する。
Q=k・A・iにおいて、Q=A・vから、v=k・iで表される。このようにして土壌試料特有の、当該薬液に対する透水係数kを求める。
この使用薬液に対する透水係数kは、流れが層流の場合、当該土壌については定数である。
本発明の浸透速度測定装置は、採取した土壌試料を収納可能であり、側面に薬液の注入口と排出口とが形成された容器16と、前記容器16の側面に形成された薬液の注入口から容器16内へ薬液を圧送する薬液注入手段と、前記容器の側面に設けられた薬液の排出口から、前記薬液注入手段で圧送され前記土壌試料を横方向に透過した薬液を回収し、薬液量を測定する薬液回収手段18と、を有することを特徴とする。
また、温度により粘度が変化する薬液を用いる場合には、薬液温度も重要な浸透性に対する重要なファクターとなる。
また、当該土壌が均一であり、モデル的な環境に近い場合には、公知のモデル試料、例えば、豊浦標準砂、浅間山砂など、の透水性に係る既存データを適用することができ、このような場合には、土壌試料を用いた事前の透水試験は特に必要ではない。
これらの水を用いた事前或いは事後の透水試験は、薬液注入試験前後で同じ方法で行うことができる。
このようにして、薬液の浸透速度、透水係数kなどを求めることにより、汚染土壌へ供給する薬液の種類及び供給量を最適化することができる。即ち、汚染土壌の量、存在する場所、及び修復を行う地域の周辺環境(例えば、井戸使用状況)などにより、速やかに浸透する薬液、或いは、必要以上に浸透しない薬液のいずれを選択すべきか、即ち、使用する薬液の種類、また、汚染土壌の量や存在する領域の体積に適合する当該薬液の最適な供給量、供給する際の注入圧力などのいずれか或いは全てを精度高く予測し、決定することが可能となる。
(2)浸透速度測定工程で得られた、各薬液毎の注入圧力と移動距離とをプロットして、注入モデルを近似し、汚染土壌に最適な薬液量を決定し、必要な移動距離を確保しうる注入圧力を決定することができる。
また、移動距離と時間とのファクターを考慮し、汚染土壌修復対象領域においてどのような間隔で薬液注入を行えば最適かを予測することも可能である。
さらにこの方法により、薬液、注入圧力、注入のためのボーリング間隔などを予測することができるため、コストを考慮した最適化を行うことができるという利点をも有するものである。
(実施例1)
本発明の方法を用いて、使用する薬液の種類を最適化する方法の例を示す。
まず、現地の試料土壌を採取し、薬液の透水性試験を行ない、当該地盤における薬液の移動速度を求め、適した薬液を選定する。
加圧手段を備えた薬液タンク12はステンレス製で直径97.6φ、高さ200mmであり、薬液充填後にコンプレッサ−により上部から加圧して所定の注入圧を確保する。土壌試料を充填する容器16本体はアクリル樹脂製の透明な円筒であり、直径90mm、長さ113mmである。注入口側に配置されたフィルター22Aは、直径1〜10mm程度の鉛玉と穴あきプラスチック板とを積層して形成したものであり、薬液の浸透は妨げないが、土壌は通過できない。排出口側に配置されたフィルター22Bもまた、直径1〜10mm程度の鉛玉を用いて作製されたものである。
薬液タンク12と容器16とはステンレス製パイプ20により連結されている。注入圧力は圧力計〔Pressure Transducer PA−850(商品名:日本電産コパル電子社製)〕32を用いて測定し、データロガー サーミック Model 2300A(商品名:江藤電気株式会社製)に接続して、連続的に計測を行っている。
高浸透型薬液A:平均粒径70nmのα−Fe・Fe3O4複合粒子をポリアスパラギン酸ナトリウム塩20質量%水溶液に25質量%分散させた分散液
通常浸透型の薬液B:平均粒径70nmのα−Fe・Fe3O4複合粒子をポリアスパラギン酸ナトリウム塩5質量%水溶液に25質量%分散させた分散液、
低浸透型の薬液C:平均粒径70nmのα−Fe・Fe3O4複合粒子を水に25質量%分散させた分散液
経済的な観点から、注入井戸一本あたりの影響半径はより広く取ることが望ましく、計画目標値は移動距離100cm以上の確保を目指した。
本地盤における注入条件としては、注入圧力300kPa、注入時間1時間で、移動距離51.2cmとなることから、計画目標値を達成するためには高浸透型の薬液Aを用い、注入圧力600kPaとすることで、移動距離100cmを確保できることがわかり、この移動距離に応じて注入井戸の間隔、設置本数を設定することができる。
12 薬液タンク(圧力槽)
16 土壌試料を充填する容器
18 排出タンク(薬液回収手段)
Claims (12)
- 修復の対象となる汚染土壌試料をボーリングして採取し、ボーリングコア試料を得る試料採取工程と、
採取されたボーリングコア試料を、側面に薬液の注入口と排出口が形成された容器に、ボーリングコア試料の外周面が注入口及び排出口と対向するように充填する試料充填工程と、修復に使用する薬液を所定の圧力で注入口から容器内へ薬液を圧送する薬液注入手段により注入し、容器内に充填されたボーリングコア試料を横方向へ通過した薬液が排出口から排出される間での時間及び流量を計測し、薬液の浸透速度を測定する浸透速度測定工程と、
得られた薬液の浸透速度より、汚染土壌へ供給する薬液の種類、供給量、供給する際の注入圧力のうち少なくとも1つを決定する最適化工程と、を有する汚染土壌修復の最適化方法。 - 前記容器が光透過性材料からなり、前記浸透速度測定工程が、薬液の浸透状態を目視にて観察する浸透状態観察工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌修復の最適化方法。
- 前記浸透速度測定工程を、薬液の注入圧力を変えて複数回行い、薬液の最適な注入圧力を決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚染土壌修復の最適化方法。
- 前記浸透速度測定工程に先立って、採取されたボーリングコア試料を充填した前記容器内に、水を注入する事前注水工程を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の汚染土壌修復の最適化方法。
- 前記汚染土壌が汚染物質として揮発性有機塩素化合物(VOC)を含有し、注入する薬液が金属系還元剤の分散液であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の汚染土壌修復の最適化方法。
- 前記汚染土壌が汚染物質として揮発性有機塩素化合物(VOC)を含有し、注入する薬液がフェントン試薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の汚染土壌修復の最適化方法。
- 前記汚染土壌が汚染物質として油分を含有し、注入する薬液がフェントン試薬であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の汚染土壌修復の最適化方法。
- 採取した土壌試料を収納可能であり、側面に薬液の注入口と排出口とが形成された容器と、
前記容器の側面に形成された薬液の注入口から容器内へ薬液を圧送する薬液注入手段と、
前記容器の側面に設けられた薬液の排出口から、前記薬液注入手段で圧送され前記土壌試料を横方向に透過した薬液を回収し、薬液量を測定する薬液回収手段と、を有することを特徴とする浸透速度測定装置。 - 前記容器が光透過性材料で形成されたことを特徴とする請求項8に記載の浸透速度測定装置。
- 前記薬液注入手段が、前記容器の側面に形成された薬液の注入口へ接続され、容器内部と連通する液送管と、前記液送管へ圧力を付与した薬液を圧送する圧力槽と、送液管に設けられ、容器内に圧送される薬液の圧力を検出する圧力センサとを有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の浸透速度測定装置。
- 前記送液管が分岐して前記容器の側面に形成された薬液の注入口へ接続されることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の浸透速度測定装置。
- 前記容器の内壁と土壌試料との間にフィルターを設け、前記内壁とフィルターとの間に空隙を形成することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の浸透速度測定装置。
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