JP4680289B2 - 睡眠評価装置及び睡眠評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、睡眠の有無及びその程度(例えば、睡眠時間や睡眠の質等)を評価する装置及びその方法に関する。
従来、人の睡眠時における生体情報を計測し、あるいは、それに基づいて、その睡眠状態に対する一定の評価を実行する装置(以下、まとめて「睡眠評価装置」という。)が提供されている。この睡眠評価装置によれば、例えば、寝床に就いてから起床までの間に、どの程度の睡眠時間が実質的に確保されたのか等が、具体的数値の裏付けをもって確認され得る。また、睡眠時において、前記生体情報に何らかの異変が生じた場合には、付添者等に適宜の処置を促すため、当該付添者等に向けて警報等を発する機能をもたせた装置もある。
このような睡眠評価装置としては、例えば以下に掲げる特許文献に開示されているようなものが知られている。
特開2002−52010号公報 再表WO2004/107978号公報 特開2006−280686号公報
これらの特許文献1乃至3に開示される技術の概要は次のようである。すなわち、特許文献1は、「エアマットの内部圧力変化」に基づく「被験者の生体データ」を測定し、これに基づいて「被験者の就寝状態を監視する」技術を開示する(以上、「」内は特許文献1の〔請求項1〕より)。また特許文献2は、「心拍信号あるいは呼吸信号、並びにこれらの信号から導出したパラメータのうち、少なくとも1つの信号を指標信号」についての「所定時間のデータから睡眠段階を判定する閾値を算出し、この閾値を用いて睡眠段階を判定する」技術を開示する(以上、「」内は特許文献2の〔請求項1〕より)。
さらに特許文献3は、「人体の呼吸信号の変動のみを用いて睡眠段階を判定する」技術を開示する(以上、「」内は特許文献3の〔請求項1〕より)。
これらの技術では、被験者の心拍数や呼吸数を利用する点において共通点があるといえる(特許文献1では例えば〔0012〕。なお、特許文献2及び3では上述の引用事項から明らかである。)。また、これらの技術においてはすべて、被験者の心拍数等を検出するために、圧力センサの出力結果に対する周波数解析の手法を用いる点でも共通している(特許文献1では〔0025〕等、特許文献2では第7頁第13行〜第47行等、特許文献3では〔0051〕等、参照)。
このようなことからすると、被験者の睡眠状態を正確に評価するためには、この心拍数等の測定、あるいは算出結果の正確性が要求されるはずである。
しかしながら、この正確性を確保するのは容易ではない。言い換えると、測定された心拍数等のデータは、必ずしも、現実の被験者の状態を正確に反映しているとはいえず、当該データが全幅の信頼のおける正確無比なものであるという保障があるわけではないのである。実際、寝返り等の大きな振動があった場合の取扱いは比較的困難であるし、睡眠時無呼吸障害や不整脈のある被験者の睡眠状態を評価する場合にも、前記出力結果の解釈が比較的難しくなるという問題がある。
このようであると、不正確なデータに基づく不正確な睡眠評価が帰結されざるを得ない。
これを改善するためには、測定されるデータが、可能な限り正確に、現実の被験者の状態を反映するように工夫すること、あるいはまた、仮に当該データに一定程度の不正確さが伴うにしても、その取り扱い方に工夫を加えるなどして睡眠評価手法の妥当性を確保すること等が重要となる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、前述した各種の課題の全部又は一部を解決可能な睡眠評価装置及び睡眠評価方法を提供することを課題とする。
本発明に係る睡眠評価装置は、上述した課題を解決するため、被験者の心拍数及び呼吸数の各々を、第1検出時間間隔ごとの時系列として検出する心拍・呼吸検出部と、前記心拍・呼吸検出部の検出結果に基づいて、前記被験者の睡眠の質を判定する判定手段と、を備える睡眠評価装置であって、前記判定手段は、前記被験者の入眠時点を判定し、前記時系列上にある、前記入眠時点から第1の所定時間だけ隔たった第1時点から、前記第1時点から第2の所定時間だけ隔たった第2時点までの窓を設定し、当該窓内に存在する前記心拍数についての第1標準偏差が第1所定値よりも大きい場合は、当該窓内のA個の第3時点(ただし、Aは、A≧2を満たす整数)の各々を中心とした第1時間幅内において、前記第1検出時間間隔ごとに検出された複数の前記呼吸数についてのA個の第2標準偏差を求め、そうではない場合は、当該窓内のA個の第3時点の各々を中心とした第1時間幅内において、前記第1検出時間間隔ごとに検出された複数の前記心拍数についてのA個の第3標準偏差を求め、前記A個の第2又は第3標準偏差のうち最大値をもつものに対応する前記第3時点である最大値対応第3時点を求め、少なくとも当該最大値対応第3時点において、前記被験者はREM(Rapid Eye Movement。以下同じ。)睡眠期にある、と判定する、ことを特徴とする。
本発明によれば、前記窓内における心拍数についての第1標準偏差(例えば、図9又は図10中のstd_range_hrが、その一具体例である。)が求められ、その値の大小が、第1所定値(例えば、図9中のconst3が、その一具体例である。)を基準として判断される。そして、その結果は、REM睡眠期判定にあたって、その判定根拠として利用されるデータを、呼吸数に関する第2標準偏差とするか、あるいは、心拍数に関する第3標準偏差とするかという使い分けのために利用される。前者は、第1標準偏差>第1所定値の場合、後者は、そうではない場合に利用される。
このようなことから、本発明においては、心拍数データに一定程度の不正確さが伴う場合は、その代わりに、呼吸数データ、ないしはそれについての標準偏差(即ち、前記第2標準偏差)が用いられるということになる。
一般に、心拍数というのは、その性質上、観測値のばらつきがさほど大きくなるはずがなく、したがって、第1標準偏差>第1所定値が成立する場合とは、心拍数の値が、被験者の当該時点における正確な状況を反映していないという推測が成り立つ。そうすると、前述のような本発明に係る使い分けは極めて合理的な根拠に基づいているということができる。
このようにして、本発明によれば、一定の不正確性を伴う心拍数の標準偏差の利用が回避された上で、REM睡眠期の特定がなされる。
また、本発明によれば、まず、被験者の入眠時点が判定される。そして、前記窓の開始点としての意義を持つ第1時点が、この入眠時点を基準として定められる。
一般に、REM睡眠期というのは、入眠時点から一定程度の時間を経た後(例えば、90分後等)に訪れることが知られているから、REM睡眠期の判定を行うにあたっては、その入眠時点から経過時間を勘案した上で、前述の窓の設定、及びそれに基づくREM睡眠期の判定を行うのが合理的である。というのも、仮に、被験者の睡眠期間のすべてについて、REM睡眠期にあるかどうかの全探索を行う場合を想定すると明らかなように、処理時間の長期化等が懸念されるからである。
本発明によれば、このような意味において、被験者のREM睡眠期の特定が好適に行われ得る。
なお、本発明において、「睡眠の質を判定する」という概念には、上述したところからも明らかなように、被験者がREM睡眠期にあるかどうかという判定が含まれるほか、後述するように、被験者が深睡眠期・浅睡眠期にあるかどうかという判定や、被験者の全体的な睡眠傾向は良いか悪いかという判定、あるいは、より広く、被験者は睡眠状態にあるか覚醒状態にあるか、といった各種の判定が含まれる。要するに、「睡眠の質」というのは、このような各種の具体的な場合を総称する意義をもつ用語として使用されている。
この発明の睡眠評価装置では、前記判定手段は、前記最大値対応第3時点を含む第2時間幅内において、前記被験者はREM睡眠期にある、と判定するように構成してもよい。
この態様によれば、被験者のREM睡眠期の特定が、より好適に行われ得る。
すなわち、本発明においては、前記の最大値対応第3時点(例えば、図10中の「a=start+I」によって指し示される時点が、その一具体例である。)だけをREM睡眠期と判定する場合を積極的に除外するわけではないが、一般に、REM睡眠期というのは一定時間継続するのが通常であるから、REM睡眠期にあると強く推定される最大値対応第3時点が特定されるのであれば、その周囲においてもやはり、被験者はREM睡眠期にあったと判断することが可能である。
本態様においては、最大値対応第3時点を含む第2時間幅(例えば、図10中の「−const4」及び「+const4」によって画される領域が、その一具体例である。)内において、被験者がREM睡眠期にあると判定するのであるから、前述の事情によりよく適合し、したがって、被験者のREM睡眠期の特定がより好適に行われ得るのである。
なお、本態様にいう「第2時間幅」の大きさは、前記の「第1時間幅」の大きさに等しくとも、あるいは、異なっていてもよい。
また、本発明の睡眠評価装置では、前記判定手段は、前記時系列上で前記窓を複数設定するとともに当該窓ごとに前記被験者のREM睡眠期を判定し、そのような複数の窓のうち、前記時系列上のある窓における前記第1時点には、その直前に位置する窓において特定されたREM睡眠期の端から所定の時間だけ隔たった時点が含まれる、ように構成してもよい。
この態様によれば、例えば、ある窓についてのREM睡眠期が特定された後、次なる窓の設定が好適に行われ得ることになり、また、そのようにして次々に設定される窓について、REM睡眠期の特定が好適に行われ得ることになる。
なお、本態様にいう「REM睡眠期の端から所定の時間だけ隔たった時点」とは、例えば、図10中の「a=start+I」に、「+const4」が加えられ、更に、「+window_start1」が加えられた時点が、その一具体例として含まれる。
また、本発明の睡眠評価装置では、前記判定手段は、前記窓内における前記被験者の中途覚醒の有無を判定し、前記中途覚醒がある場合、前記時系列上、その中途覚醒があった窓の直後の窓における前記第1時点には、前記中途覚醒の時点から覚醒が継続した時間だけ隔たった時点が含まれる、ように構成してもよい。
この態様によれば、ある窓において中途覚醒がある場合において、次なる窓の設定が好適に行われ得ることになる。なお、この態様における「中途覚醒の時点から覚醒が継続した時間だけ隔たった時点」というのを、被験者が再び入眠するに至った時点というのにほぼ同義であると考えるならば、本態様の技術的思想は、前述した、入眠時点を基準として第1時点を定める態様のそれと、本質的な相違はなく、その好適な発展形と捉えることも可能である。
なお、以上においては、図9、あるいは図10中に示される符号等を適宜摘示したが、その詳細な説明については、後の実施形態において、図8乃至図10等が参照されながら展開される。
また、本発明の睡眠評価装置では、前記被験者の身体の動きを、第2検出時間間隔で、数値化されたN個の体動データ(ただし、Nは、N≧2を満たす整数)として検出する体動検出手段を更に備え、前記心拍・呼吸検出部は、前記体動検出手段の検出結果に基づいて、前記心拍数及び呼吸数を検出する、ように構成してもよい。
この態様によれば、心拍数データ・呼吸数データが、体動データに基づいて検出されるようになっているから、例えば、これら心拍数・呼吸数を検出するために被験者に特別仕様の電極等を設置する、などといった必要がない。したがって、本態様によれば、心拍数・呼吸数を検出するために、被験者に余計な負担をかけることがないという利点が得られる。
なお、このような効果をより実効的に享受するためには、前記体動検出手段は、所定の流体を内封するマットレスを含み、前記流体の圧力変化に応じて、前記被験者の身体の動きを検出する、ように構成されてなお好適である。
なお、本態様にいう「第2検出時間間隔」は、前述の「第1検出時間間隔」と等しくとも、あるいは、異なっていてもよい。
この態様では、前記判定手段は、前記N個の体動データを区分けするG個のグループ(ただし、Gは、2≦G<Nを満たす整数)の各々及び当該各々に含まれる体動データについての、G個の第4標準偏差を求め、前記G個の第4標準偏差の中から選択された、連続するgs個の第4標準偏差(ただし、gs<G)に基づいて、L個の標準偏差平均値(ただし、Lは、2≦L≦Gを満たす整数)を求め、当該L個の標準偏差平均値のうち、第p番目の標準偏差平均値(ただし、pはp≦L−1を満たす整数)と第(p+1)番目の標準偏差平均値との差の絶対値が第2所定値以下である場合に、前記第p番目の標準偏差平均値に対応する第4時点において、前記被験者は深睡眠期にある、と判定するように構成してもよい。
この態様によれば、「第4標準偏差」が、前述した時系列データとしての体動データのばらつきの程度を、G個のグループごとに表現する。さらに、「標準偏差平均値」は、この「第4標準偏差」の平均値であるから、結局、その「第4標準偏差」が対象とする期間よりも長期に亘る体動データのばらつきの程度を表現(しかも、一定程度平準化した上で表現)することになる。
これら第4標準偏差と標準偏差平均値との間には、「第4標準偏差」が、被験者の比較的短時間における体動の変化の様子をよく表し、「標準偏差平均値」が、比較的長時間における体動の変化の様子をよく表す(特に、周期的な変化はキャンセルされ得る)、という特性の相違がある。
そして、本態様では特に、後者の「標準偏差平均値」を利用して、被験者の深睡眠期が好適に特定される。すなわち、この標準偏差平均値の変動がより小さければ、被験者は、身体動作の少ない深睡眠と判定されるのである。
なお、この態様の一具体例については、後の実施形態において、図7等が参照されながら説明される。そこにおいては、例えば、本態様にいう「第2所定値」は“a0”、「第4時点」は“IとI+a1とに挟まれた時間の中における、ある時点”、などというように、より具体化されたかたちで呈示される。
また、この態様においては、前記L個の標準偏差平均値の各々が、前記gs個の標準偏差に関する移動平均値として求められる、ように構成してもよい。
このような構成によれば、L個の標準偏差平均値の設定が好適になされる。すなわち、1個1個の標準偏差平均値が、gs個の標準偏差の移動平均値であるということは、そのgsの適当な設定等によって、前述した平準化、あるいは周期的な変化のキャンセル(ここでは、「移動平均」という概念が導入されている以上、これらのことを特に「平滑化」と呼び得る。)等が、より好適になされ得ることになるからである。つまり、本態様によれば、比較的長期に亘る体動の変化の様子を表す指標として、「標準偏差平均値」を使用することの意義がより高まる。
以上によれば、前述した本態様に係る作用効果がより実効的に奏される。
ちなみに、ここでいう「移動平均値」とは、例えば、第p番目の標準偏差平均値が、第p,第(p−1),及び第(p−2)のグループに対応する標準偏差の平均値であって、第(p+1)番目の標準偏差平均値が、第(p+1),第p,及び第(p−1)のグループに対応する標準偏差の平均値であるという場合、を含む。なお、後述する実施形態の説明においては、本態様にいう「移動平均値」に含まれる他の例についても説明される。
この態様では、前記判定手段は、前記G個の第4標準偏差に基づいて、前記被験者の睡眠傾向を、良い、悪い及び両者の中間のいずれか1つに該当するものと判定する、ように構成してもよい。
この態様によれば、前述の「第4標準偏差」に基づいて、被験者の睡眠傾向が判定される。例えば、被験者の全睡眠期間におけるG個の第4標準偏差の変遷を確認し、その値の変動が大きい部分と小さい部分とを区分けするとともに、後者の部分の、前者及び後者の全部分に対する割合が一定値以上であれば、睡眠傾向は良い、などと判定することが可能である。この場合、体動データのばらつきが小さい部分が、全睡眠期間の大勢を占めていると考えることができるからである。
より具体的には、前記判定手段は、前記G個の第4標準偏差のうち、第q番目の第4標準偏差(ただs、qはq≦G−1を満たす整数)と第(q+1)番目の第4標準偏差との差の絶対値が第3所定値を下回るという条件を満たす場合は、当該条件を満たす各qについての前記絶対値の和を、当該条件を満たすqの個数で除した平均値を求め、この平均値の大小関係、及び、(G−前記条件を満たすqの個数)の大小関係に応じて、前記被験者の睡眠傾向を判定する、ように構成してもよい。
この態様によれば、前記でいうところの、「小さい部分」たる、幾つかの第4標準偏差の特定が、より好適に行われるとともに、そのような第4標準偏差のうちの隣り合うもの同士の差の絶対値が利用されて、被験者の睡眠傾向の判定がなされるようになっているので、より現実の状況に適合した睡眠傾向判定が行われ得る可能性が高まる。
いずれにせよ、これらの態様によれば、本発明に言う「睡眠の質」の判定が、より実効的に行われることになる。
なお、これらの態様の一具体例については、後の実施形態において、図11及び図12等が参照されながら説明される。そこにおいては、例えば、本態様にいう「第3所定値」が“const5”などというように、より具体化されたかたちで呈示される。
また、「G個の標準偏差」が求められる本発明の睡眠評価装置では、前記判定手段は、前記時系列上における前記被験者の覚醒状態の有無を判定し、当該覚醒状態が一定時間以上、継続すると判定される場合において、その継続時間内に存在する前記心拍数及び前記呼吸数の標準偏差を求め、前記心拍数の標準偏差が第4所定値を下回り、又は、前記呼吸数の標準偏差が第5所定値を下回る場合に限り、前記継続時間中の任意の時点に対応する前記G個の標準偏差のうちの1つが、第6所定値を下回るとき、当該時点における前記被験者は浅睡眠期にある、と判定するように構成してもよい。
この態様によれば、心拍数の標準偏差が第4所定値を下回り、又は、前記呼吸数の標準偏差が第5所定値を下回る場合に限り、被験者の浅睡眠期の特定が行われる。その反面として、本態様においては、心拍数の標準偏差が第4所定値以上であり、かつ、前記呼吸数の標準偏差が第5所定値以上である場合は、その浅睡眠期の判定が行われないのである。これは、そのような場合は、既に述べたように、心拍数及び呼吸数に一定程度の不正確さが伴っていると考えられるからである。
このようなことから、本態様によれば、一定の不正確性を伴う心拍数、あるいは呼吸数の標準偏差の利用が回避された上で、浅睡眠期の特定がなされる。
なお、この態様では、前記第4及び第5所定値の少なくとも一方は、前記被験者の睡眠傾向が良いか、そうではないかに応じて、その大きさが異なる、ように構成してもよく、あるいは、前記第6所定値は、前記第4及び第5所定値に基づいて定められる、ように構成してもよい。
これらの態様によれば、第4、第5、及び第6所定値が好適に設定されることを通じて、被験者の浅睡眠判定が好適に行われ得ることになる。なお、前者の態様では、当然ながら、前述した「睡眠傾向」の判定が行われることを前提としている。
なお、以上の浅睡眠期を判定する態様の一具体例については、後の実施形態において、図13及び図14等が参照されながら説明される。そこにおいては、例えば、本態様にいう「第4所定値」が“const13”又は“const14”と、「第5所定値」は“consto15”又は“const16”と、「第6所定値」は“std・const17”と、などというように、より具体化されたかたちで呈示される。
また、前記の「睡眠傾向」の判定を含む、本発明の睡眠評価装置では、前記判定手段は、前記被験者の睡眠傾向が良いと判定される場合であり、かつ、前記深睡眠期と判定された時間が、第7所定値を下回る場合には、前記gs個の第4標準偏差についての標準偏差のうち最小値をもつものに対応する第5時点を求め、少なくとも当該第5時点において、前記被験者は深睡眠期にある、と改めて判定する、ように構成してもよい。
この態様によれば、深睡眠期特定の修正が行われる。すなわち、前述の睡眠傾向判定の結果が“良い”であるのに、特定された深睡眠期が比較的少ない場合は、本来、深睡眠期であると判定されるべき時間が、そうではないと判定されているおそれが高いので、本態様では、そのような場合において、その見落とし部分をきちんと深睡眠期と判定するべく、一種の再処理が行われるようになっているのである。
この際、本態様では、前述した深睡眠期の判定においては「標準偏差平均値」が用いられていたところ、「前記gs個の第4標準偏差についての標準偏差」が用いられる。つまり、両者間で使われる指標が異なっているので、深睡眠期特定の修正はよりよく行われることになる。
なお、「gs個の標準偏差」は、前述のように、「G個の第4標準偏差の中から選択された、連続する」標準偏差群である。また、本態様では、「gs個の第4標準偏差についての標準偏差のうち最小値をもつもの」が前提とされているので、その「gs個の第4標準偏差」(ないしは、それについての標準偏差)は、複数存在することが予定されている(もっとも、前述した「標準偏差平均値」も「L個」あることから、「gs個の第4標準偏差」はもともと複数存在することが予定されてはいる。)。
また、この態様の一具体例については、後の実施形態において、図15等が参照されながら説明される。そこにおいては、例えば、本態様にいう「第7所定値」は“const18”、「第5時点」は“epoch−const20とepoch+const20とに挟まれた時間の中のある時点”、などというように、より具体化されたかたちで呈示される。
また、前記の「睡眠傾向」の判定を含む、本発明の睡眠評価装置では、前記判定手段は、前記被験者の睡眠傾向が悪くないと判定される場合であり、かつ、前記REM睡眠期と判定された時間が、第8所定値を下回る場合には、前記REM睡眠期と判定された期間の少なくとも一部を含んで、前記時系列上の第6時点から第7時点までの第2の窓を設定し、当該第2の窓内に存在する前記心拍数についての第5標準偏差が第9所定値よりも大きい場合は、当該第2の窓内のB個の第8時点(ただし、Bは、B≧2を満たす整数)の各々を中心とした第3時間幅内に存在する前記呼吸数についてのB個の第6標準偏差を求め、そうではない場合は、当該第2の窓内のB個の第8時点の各々を中心とした第3時間幅内に存在する前記心拍数についてのB個の第7標準偏差を求め、前記B個の第6又は第7標準偏差のうち最大値をもつものに対応する前記第8時点である最大値対応第8時点を求め、少なくとも当該最大値対応第8時点において、前記被験者はREM睡眠期にある、と改めて判定する、ように構成してもよい。
この態様によれば、REM睡眠期特定の修正が行われる。すなわち、前述の睡眠傾向判定の結果が“悪い”とされているわけではないのに、特定されたREM睡眠期が比較的少ない場合は、本来、REM睡眠期であると判定されるべき時間が、そうではないと判定されているおそれが高いので、本態様では、そのような場合において、その見落とし部分をきちんとREM睡眠期と判定するべく、一種の再処理が行われるようになっているのである。
この際、本態様においても、前述したREM睡眠の判定において用いられていた、第2及び第3標準偏差の使い分けと同様の、第6及び第7標準偏差の使い分けが行われるので、やはり、一定の不正確性を伴う心拍数の標準偏差の利用が回避された上での、REM睡眠期特定の修正がなされることになる。
なお、本態様にいう「第3時間幅」の大きさは、前記の「第1時間幅」、あるいは「第3時間幅」の大きさに等しくとも、あるいは、異なっていてもよい。
また、本態様にいう「第7時点」と「第6時点」との間の時間幅の大きさは、前記の「第2時点」と「第1時点」との時間幅の大きさと同じであってよいが、好ましくは、前者が後者よりも小さい方がよい(この場合は従って、「第3時間幅」は、「第1時間幅」又は「第2時間幅」よりも小さい方が通常は好ましい。)。というのも、前述の「第1時点」等が関わる処理は、REM睡眠期が全く特定されていない状況で、それを新たに特定するという意義をもつものであるから、窓はできる限り大きい方が好ましいのに対して、本態様に係る処理は、いわば判定し損ねたREM睡眠期を見つけてその特定をやり直すという意義をもつものであるから、窓(この場合は「第2の窓」)はそれほど大きくなくともよいからである。
さらに、この態様の一具体例については、後の実施形態において、図16、図17、図18及び図19等が参照されながら説明される。そこにおいては、例えば、本態様にいう「第8所定値」が“const21”、「第9所定値」が“const23”、 「第5標準偏差」が図17又は図19中の“std_range_hr”、「最大値対応第8時点」が図19中の“maxEp=Repc+I”によって指し示される時点、等々というように、より具体化されたかたちで呈示される。
以下では、本発明に係る実施の形態について図1以下の各図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態において参照する各図面においては、各部の寸法の比率が実際のものとは適宜に異ならせてある場合がある。
まず、図1及び図2を用いて、睡眠評価装置の構成を説明する。図1は、睡眠評価装置1の使用時の外観図であり、図2は、そのブロック図を示す。
図1において、睡眠評価装置1は、寝具に横臥した人体の生体信号を検出するためのセンサ部2と、センサ部2に接続され睡眠段階の判定及び睡眠の質の評価を行なう制御ボックス3とを備える。制御ボックス3は、睡眠段階の判定結果及び睡眠の評価指標などのガイダンス表示などを行なう表示部4及び電源オン/オフ又は測定開始/終了などの操作を行なう操作部5を備える。
ここで、センサ部2は、例えば、水、空気等の非圧縮性の流体を内封したマットレスの圧力変動を、マイクロホン(例えば、コンデンサマイクロホン)を用いて検出するものである。センサ部2は、図示したようにマットレスを、寝具の下に敷かれることにより、仰臥位の被験者の姿勢の変化等の体動や、場合により各種の生体信号を検出する。
ちなみに、本実施形態に係る睡眠評価装置1は、図1に示すように、被験者の身体を特に拘束することはない。これは、上述のように、センサ部2が寝具の下に配置されるだけで被験者の体動を検出することが可能となっていることによる。
制御ボックス3は、図2に示すように、前述の表示部4及び操作部5に加えて、心拍・呼吸検出部201、電源10、計時部11、制御部CP、記憶部20及び解析部30を備える。
心拍・呼吸検出部201は、センサ部2が検出した圧力変化に基づいて、被験者の心拍・呼吸を検出する。
センサ部2が検出した圧力変化には、被験者の心拍、あるいは呼吸に伴う身体位置変動によって引き起こされる圧力変化が含まれる。その圧力変化は、心拍、あるいは呼吸が通常一定の周期をもって行われることから、周期的な変化を含んでいる。
心拍・呼吸検出部201は、このことを利用して心拍・呼吸を検出するが、そのためには、当該心拍・呼吸検出部201は、圧力変化信号中の適当な帯域を通過させるフィルタ等を含んで好適である。
電源10は、本実施形態に係る睡眠評価装置1に電力を供給する。また、計時部11は、現在時刻を認識し、これを制御部CPに伝達する。
解析部30は、センサ部2が検出した被験者の姿勢変化等の様子や、計時部11で計測された現在時刻等の情報に基づいて、被験者のその時時における睡眠状態やその質等を、演算、解析及び評価等を通じて判定ないし判断する。
記憶部20は、前述の解析部30における判定結果等を記憶する。あるいは、記憶部20は、必要に応じて、解析部30における演算途中で得られた中間結果、中間成果情報、等々を記憶するほか、睡眠評価装置1の動作に必要となるその他の各種情報やプログラム等を記憶する。
制御部CPは、センサ部2から直接受けた入力信号、あるいは心拍・呼吸検出部201を介して受けた入力信号をデジタル信号に変換するADコンバータ、あるいはCPU(Central Process Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、等その他必要な要素を備える(いずれも不図示)。
この制御部CPは、その他、本実施形態に係る睡眠評価装置1全体を調和的に動作させるため、当該睡眠評価装置1に係る全般的な制御を行う。
なお、本発明にいう「判定手段」は、本実施形態でいう制御部CP、解析部30及び記憶部20を少なくとも含む。
以下では、上述のような構成を備える睡眠評価装置1の動作について、図3乃至図24を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各種の動作、演算、処理等については、特に断りがない限り、前述した制御部CPが、主体的・主導的役割を担う。
まず、睡眠評価装置1の操作部5における電源ボタンがユーザにより押下されて、電源10がONとされると、制御部CPは、現在時刻を取得するとともに(図3のステップS1)、これを表示部4において表示する(図3のステップS2)。
次に、制御部CPは、測定開始の指令の有無を判断する(図3のステップS3)。この指令は、例えば、操作部5に対するユーザの測定開始ボタンの押下に基づいて発せられたり、あるいは、一定の時刻の到来に基づいていわば自動的に発せられたりする。また、ここでいう測定とは、センサ部2によって検出される被験者の体動の時間的変化を計測することを指す。
ここで、前記測定開始指令がない場合には、本実施形態に係る睡眠評価装置1は、基本的に、前述の現在時刻取得処理とその表示処理を繰り返し実行する(図3のステップS4;NO参照)。ただ、その繰り返し処理の実行中、ユーザによって、操作部5を用いた新たな現在時刻の設定が行われる場合には(図3のステップS4;YES)、その設定された時刻を表示する処理(図3のステップS5)が、間挿される。
一方、測定開始指令がある場合には、制御部CPは前記繰り返し処理を脱し、別の処理へ移行する。すなわち、まず、測定が終了したかどうかが判断される(図3のステップS6)。終了していないと判断される場合には(図3のステップS6;NO)、制御部CPは、センサ部2から、あるいは心拍・呼吸検出部201から取り込まれた信号についてAD変換を実行し(図3のステップS7)、それにより得られたデジタルデータとしての体動データ、あるいは心拍データ・呼吸データを記憶部20に記憶する(図3のステップS8)。
この一連の処理により、記憶部20内には、例えば観念的には図4に示されるようなデータテーブルT11が構築される。このデータテーブルT11は、記憶部20のアドレス番号1から100までに対応する体動データの書込みを順次受ける。図では、これら各アドレスに対応して、体動データが、512,356,…,457,615,…,824と書き込まれていることがわかる。ちなみに、これらの変数名は、D[0],D[1],…,D[99]が対応している(なお、体動データの個数が100個とされているのは単なる一例である。)。
また、このようなデータテーブルT11の構築に基づいて、呼吸数データ及び心拍数データそれぞれのデータテーブルT12及びT13が構築される。これらのデータテーブルT12及びT13は、それぞれ、記憶部20のアドレス番号501から600まで、及び、601から700までに対応する呼吸数データ及び心拍数データの書込みを順次受ける。なお、このようなデータテーブルT12及びT13に埋められるべき数値は、本実施形態においては、後述する図5のステップS32において求められる。
制御部CPは、このようなデータテーブルT11乃至T13の構築と並行して、現在時刻を取得し(図3のステップS9)、表示する(図3のステップS10)。
前記の図3のステップS6において、測定が終了したと判断される場合、即ち前記データテーブルT11乃至T13の構築が完了した場合には(図3のステップS6;YES)、このデータテーブルT11乃至T13内の体動データ、呼吸数データ及び心拍数データに対する解析が実行される(図3のステップS11)。このデータ解析の点については、後に改めて詳細に説明する。
このデータ解析が終了すれば、制御部CPは、その結果を表示し(図3のステップS12)、現在時刻表示に戻るかどうかを判断した後、これが肯定され得れば前述した繰り返し処理に戻る(図3のステップS13;YESからステップS1へ)。なお、このステップS13における判断は、言い換えると、例えば当該解析結果の表示がユーザの視認に十分な時間だけ行われたかどうか、と読み替えることができる。これは、制御部CPによる一定時間経過判断によってもよいし、ユーザによる指令によってもよい。
次に、前述した、図3のステップS11におけるデータ解析処理の内実について説明する。
まず、解析部30は、本実施形態に係るデータ解析に必要な各種の配列変数を用意する(図5のステップS21)。ここで各種の配列変数とは、図4に示すような、Stage[x]、Hensa[x]及びHenAV[x]である。
ここで第1に、Hensa[x]は、前述したD[0],D[1],…,D[99]の中から、xを基準に所定個数選ばれたD[s],D[s+1],…,D[s+z](sは0,1,2,…,98のいずれかであり、zは(前記所定個数−1)に一致する。)に関する標準偏差を意味する。つまり、Ave・D=(D[s]+D[s+1]+…+D[s+z])/(z+1)として、Hensa[x]は、一般に、
Hensa[x]=sqr〔(1/(z+1))・Σ(D[i]−Ave・D)〕 … (1)
である。ただし、i=s,s+1,…,s+zである。また、“sqr”は平方根を表す(以下同様である。)。
なお、本実施形態では特に、s=10x、かつ、z=9とされる。したがって、図4のデータテーブルT3に示すように、例えばHensa[0]は、D[0],D[1],…,D[9]に関する標準偏差をもち、Hensa[5]は、D[50],D[51],…,D[59]に関する標準偏差をもつ。本実施形態では、全体動データ数が100個であるから、Hensa[x]も、Hensa[0],Hensa[1],…,Hensa[9]の10個が定義される。
ちなみに、上述したような演算処理は、図5のステップS22において行われる処理に同じである。かかる処理により、前記データテーブルT3には、Hensa[0],Hensa[1],…,Hensa[9]の各具体値が書き込まれていく。なお、データテーブルT3は、記憶部20内のアドレス番号211から220に対応する。
このようなHensa[x]は、上記算出根拠、あるいは式(1)からもわかるように、一定の期間(以下、これを「単位期間」ということがある。)における被験者の体動のばらつきの程度を表現する。なお、本実施形態における前記単位期間とは、上述したところからも明らかなように、センサ部2によって、生データたる体動データが10個取得される期間にほぼ一致する。
第2に、HenAv[x]は、前述したHensa[0],Hensa[1],…,Hensa[9]の中から、xを基準に所定個数選ばれた、Hensa[t],Hensa[t+1],…,Hensa[t+y](tは0,1,2,…,8のいずれかであり、yは(前記所定個数−1)に一致する。)に関する一種の移動平均値を意味する。つまり、一般に、
HenAv[x]=(Hensa[t],Hensa[t+1],…,Hensa[t+y])/(y+1) … (2)
である。
なお、本実施形態では特に、t=x−1、かつ、y=2とされる。したがって、図4のデータテーブルT4に示すように、例えばHenAv[1]は、Hensa[0],Hensa[1],及びHensa[2]に関する平均値をもつ。本実施形態では、Hensa[x]の全個数が10個であるから、HenAv[x]は、Hensa[1],Hensa[2],…,Hensa[8]の8個が定義される。ただ、本実施形態ではこれに加えて、HenAV[0]と、HenAV[9]が特別に“0”に設定され、全部で10個のHenAV[x]が定義される。
ちなみに、上述したような演算処理は、図5のステップS23において行われる処理に同じである。かかる処理により、前記データテーブルT4には、HenAv[0],HenAv[1],…,HenAv[9]の各具体値が書き込まれていく。なお、データテーブルT4は、記憶部20内のアドレス番号221から230に対応する。
このようなHenAv[x]は、上記算出根拠、あるいは式(2)からもわかるように、Hensa[x−1],Hensa[x]及びHensa[x+1]の3つについて観念される期間(換言すると、xを中心とした、3つの単位期間)における被験者の体動のばらつきの程度の平均値を表現する。
最後に第3に、Stage[x]は、被験者が睡眠状態にあるか覚醒状態にあるか等の被験者の状態を表現する。この場合におけるxは、本実施形態において、“エポック”を意味する。これは、上述のHensa[x]におけるxも同様であり、そこでは、1個のxが10個の体動データをいわば代表するようなものとなっていたように、前記xは特に、体動データが10個取得される期間を一まとまりとして数えることに基づき、その一単位(つまり、“1エポック”)が定められる。したがって、Stage[x]は、より正確に言えば、そのエポック毎(つまり、x=1,2,3,…毎)に、被験者が睡眠状態にあるか覚醒状態にあるか等を表現する変数としての意味をもつ。
図4では、データテーブルT2において、Stage[0]及びStage[9]が“1”をとっており、被験者は、これらエポック0及び9において覚醒状態にあることが表されている。一方、Stage[1]は“0”をとっており、被験者は、このエポック1において睡眠状態にあることが表されている。
なお、以下においては、Stage[x]がとるべき値として、上記“1”のほか、これと同義の記号として、“Wake”を用いることがある。その意義は上述したところ明らかであるが、要するに、Stage[x]が、値1あるいは値Wakeをとるとき、被験者は覚醒状態にあるということである。
なお、このような各Stage[x]の値の設定は、後述する図7(深睡眠判定処理)、図8及び図9(REM睡眠判定処理)、図13及び図14(覚醒修正処理)、図15(深睡眠修正処理)、図16、図17及び図18(REM睡眠修正処理)に係る処理において行われる。Stage[x]については、その際に改めて触れる。
以下では、上述のHensa[x]、HenAv[x]、あるいは呼吸数データ・心拍数データを用いた、被験者の睡眠評価処理の実質的部分について説明するが、本実施形態の睡眠評価装置1は、その処理を行う前提として、Stage[x](x=0,1,2,…)の各々に、覚醒及び睡眠(非覚醒)の2つの状態のいずれかが代入されていることを前提とする。例えばHensa[I+1]−Hensa[I](あるいは、Hensa[I+1]それ自体)がある所定値よりも大きい場合は、Stage[I+1]=1(即ち、覚醒)、そうでなければStage[I+1]=0(即ち、睡眠)、などというように、予めStage[x](x=0,1,2,…)の設定がなされているのである。
あるStage[x]に、1及び0のいずれをとらせるべきかを決めるにあたっては、上記以外の基準も利用可能であるが、その判定基準例等については、例えば特願2007−338993号公報を参照されたい。本発明は、この公報に記載されている覚醒状態及び睡眠状態の別を区分けする各種の判定手法を、その範囲内に収める。
いずれにせよ、このような前提処理が実行される結果、Stage[x](x=1,2,3,…)は、図6に示すように、1又は0をもつ状態が作り出されることになる(図6では、たまたま、Stage[0],Stage[2],Stage[9]に、1が代入されている例が示されている)。
以上を前提に、解析部30は、まず、センサ部2及び心拍・呼吸検出部201の検出結果に基づいて、被験者の心拍数・呼吸数を求める(図5のステップS32)。既に述べたように、人の心拍運動・呼吸運動は、通常一定の周期をもつ周期的な変化を含んでいるので、センサ部2の出力する体動データから、そのような周的変化成分を抽出すれば、心拍数・呼吸数の検出は可能となる。
なお、ここでいう心拍数・呼吸数は、例えば前記体動データの取得間隔を基準として求められる。最も単純には、体動データの取得間隔と、心拍数及び呼吸数が求められるべき時間間隔とは一致していてよい。例えば、体動データが時間tkごとに取得されるのであれば、その時間tk内の心拍数及び呼吸数が逐次求められる、などというようである。もっとも、本発明は、このような形態に限定されるわけではない。
このようにして構築されるデータテーブルT12及びT13については、すでに図4を参照して説明した。
次に、解析部30は、被験者が深睡眠状態にあった期間を求める(図5のステップS33)。この処理の詳細は、図7(深睡眠判定処理)に示される。
まず、図7において、適宜使用される変数(ここではI)の初期設定が行われた後(図7のステップS161)、解析部30は、次の条件式の真偽を判断する(図7のステップS162)。
ABS〔HenAv[I]−HenAV[I+1]〕≦a0 … (4)
ただし、“ABS”は〔〕内の値の絶対値をとることを意味する(以下同様である。)。
この条件式はつまり、HenAV[x]のうち、隣り合う値同士の差の絶対値が所定の値“a0”以下であるかどうか、の判断が行われることを表現している。
また、解析部30は、この式(4)が真であれば、続いて、
Stage[I]≠Wake … (5)
の真偽を判断する(図7のステップS163)。
以上の式(4)及び式(5)のいずれもが、真である場合、変数a1に0が代入され(図7のステップS164)、解析部30は続いて、次の条件式の真偽を判断する(図7のステップS165)。
ABS〔HenAv[I+a1]−HenAV[I+1+a1]〕≦a0 … (4)’
また、解析部30は、この式(4)’が真であれば、続いて、
Stage[I+a1]≠Wake … (5)’
の真偽を判断する(図7のステップS166)。
これらの式(4)’及び式(5)’のいずれもが真である限りは、a1の値の1ずつの増加を伴いながら(図7のステップS167)、これら(4)’及び(5)’の判断が繰り返し行われる。
一方、上記式(4)’及び式(5)’のいずれかが偽である場合、解析部30は、その場合のa1が、所定値a2よりも大であるか否かが判断される(図7のステップS168)。これが肯定されれば、Stage[x]の設定が行われる(図7のステップS169)。
ここでStage[x]の設定処理の詳細は、図20(SetStage処理)に示される。この処理は、以下に述べる各種の処理においても適宜用いられる汎用処理であるが(即ち、サブルーチンであるが)、便宜上、ここで説明しておく。
まず、図20では、メインルーチンから引数(stg,start,end,base)が与えられる。
以上を前提に、図20においては、適宜使用される変数(ここではI)に、定数“start”が代入される(図20のステップS321)。次に、定数“base”に、I(即ち、最初の時点では“start”)を加えた値が、(Stage[x]の配列数)−1よりも小さいか否かが判断される(図20のステップS322)。これが肯定されれば、Stage[I]には、定数“stg”が代入される(図7のステップS323)。このような処理は、Iの1ずつの増加に伴い(図20のステップS324)、そのようなIが、定数“end”に一致するか(図20のステップS325)、あるいは、前記のStage配列数に係る判断が否定されるまで繰り返し行われる(図20のステップS322;NO参照)。
以上によると結局、図20では、Stage[start]から数えて所定数のStage[x](つまり、Stage[start],Stage[start+1],Stage[start+2],…)に、状態値stgが代入される処理が実行されることになる。ここでいう「所定数」の上限を画するのは、endの値、あるいは、base+Iの値とStage配列数との大小関係如何による。
図7のステップS169における図20の処理の利用においては、前記引数(stg,start,end,base)として、それぞれ、(Deep,0,a1,I)が与えられる。ここで値“Deep”は、深睡眠を意味する。このことから結局、図7のステップS169の処理では、Stage[tq],Stage[tq+1],…,Stage[tq+a1]が値Deepをとる、という状態が作り出されることになる(なお、tqは、当該ステップS169の処理が行われる時点における図7上のIの値である。)。
以上に述べたような処理は、図7上のIの1ずつの増加を伴いながら(図7のステップS170)、HenAvの配列数の上限に至るまで繰り返し行われる(図7のステップS171参照)。
なお、図7のステップS162及びステップS163のいずれかにおいて否定判断が下される場合には、前述した、所定値a1が関連する処理、あるいはStage[x]の設定処理等は行われず、単に、図7上のIの増加が行われて、再び、前記式(4)に係る判断処理以降の処理が繰り返し行われる(図7のステップS162;NO又はステップS163;NOから、ステップS170への流れ参照)。
このような図7に係る処理には次のような意義がある。
すなわち、HenAv[x]は、前述のように、xを中心とした3つの単位期間における被験者の体動のばらつきの程度の平均値を表現しているので、式(4)中にみられる、“HenAv[I]−HenAV[I+1]”とは、これを書き下せば、期間(I−1),I,(I+1)についてのばらつきの程度の平均値と、期間I,(I+1),(I+2)についてのそれとの差を意味することになる(HenAvが移動平均値であるから、両単位期間は一部重なり合っている。)。そして、その絶対値が“a0”以下であるというのは、被験者は、そのIから(I+1)への遷移において、一定程度安定した状態を維持したことを意味する。
このことは、前記式(4)’についても同様にいえる。違うのは、所定値a1が加算されているか否かだけである。
そして、この所定値a1は、図7のステップS165乃至S167の流れからも明らかなように、被験者が一定程度安定した状態を維持した“期間”を表現する。なぜなら、式(4)’(及び式(5)’)が満たされる限り、a1は増加し続けるからである。
このことにより、期間a1においては、被験者は深睡眠状態にあったことが強く推定されることになる。したがって、基本的には、図7のステップS169において、Stage[tq],Stage[tq+1],…,Stage[tq+a1]に値Deepが代入される処理が行われる、即ち、被験者の深睡眠期が特定されることになるのである。
なお、この場合において、図7のステップS168では、a1>a2なる判断が行われているが、これは、a1が大きすぎる、換言するとa1が通常考えられるような深睡眠期間を超える非常識な値をもつような場合に、そのようなa1を基に深睡眠期判定を下すのを回避することを目的としている。このようなことから、所定値a2は、例えば、“人間一般を基準とした通常の深睡眠継続期間”を表現するものとして定めることができる。もっとも、このa2の具体的な値は、その他の目的をもって、あるいは、何らかの別の基準からみて、長すぎるa1を排除するために定められてもよい。
また、前記a1の増加が続行するためには前記式(4)’に加えて前記式(5)’が肯定される必要があるが、これは、仮に前記式(4)’が満たされるにしても、Stage[I+a1]≠Wakeが満たされない、つまり被験者は覚醒状態にある場合に、それを深睡眠状態と判断することを回避する目的をもつ。図7のステップS163における前記式(5)に係る処理の意義についても、いま述べたところと基本的に同じである。
以上のように、図7の処理では、HenAv[x]の値に基づいて、被験者の深睡眠期が特定されることになる。
次に、解析部30は、被験者がREM睡眠状態にあった期間を求める(図5のステップS34)。この処理の詳細は、図8及び図9(REM睡眠判定処理)に示される。なお、図8及び図9は両者で一体の処理を表現する(図中の接続記号C1,C2,C3,C4参照)。
まず、図8において、各種の変数についての初期化が行われる(図8のステップS181)。ここで、各種の変数の中には、I,a,flg_rangeが含まれ、特に、aについてはa=0、flg_rangeについてはflg_range=0と初期化される。なお、Iについては、このREM睡眠判定処理において適宜使用される変数という意味をもつだけで、特別な意味はない。
次に、解析部30は、入眠エポックを求める(図8のステップS182)。
その処理の詳細は、図22に示される。この入眠エポック演算処理ではまず、適宜使用される変数(ここではI)の初期設定が行われた後(図22のステップS141)、解析部30は、Stage[I]が“Wake”に一致するかどうかを判断する(図22のステップS142)。これが否定されれば、本処理に戻る(図22のステップS142;NOから図8のステップS183へ)。一方、肯定されれば、Iを1つだけ増加して、先の処理を繰り返す(図22のステップS142;YESからステップS143、及び、ステップS144、参照。)。
要するに、この入眠エポック演算処理では、Stage[x]の中から、“Wake”をもたないものが探索される。したがって、図18の処理を経る結果、本処理(ここでは、図8の処理)の側から見ると、Stage[I]が値“Wake”をもたない場合、あるいはIの増加につれてもたなくなった場合における、“I”(以下、「入眠時のI」ということがある。)の値が返されてくることになる。
図8のステップS182では、このように返されてきた入眠時のIを、変数startに代入する。
次に解析部30は、次の条件式の真偽を判断する(図8のステップS183)。
start+const1>(Stage[x]の配列数)−1 … (6)
ここで、const1は適当な定数である。
この式(6)が肯定される、言い換えると、入眠時のIたるstartにconst1を加えた値が、既にStage[x]の配列数を超えていれば、REM睡眠判定処理は終わる(図8のステップS183;YES参照)。なお、この式(6)中のstartは、後に説明するように、適宜その内容が変わるので(図9のステップS203及び205等参照)、startが、いつもその値として入眠時のIをもっているわけではない。
他方、式(6)が否定されれば、各種の変数についての初期化が行われる(図8のステップS183;NOから図8のステップS184へ)。ここで各種の変数の中には、flg_range,tempがあり、flg_range=0,temp=0と初期化される。
次いで、図8上のIに、“window_start1”なる値が代入されて(図8のステップS185)、次の条件式の真偽が判断される(図8のステップS186)。
start+I<(Stage[x]の配列数)−1 … (7)
この判断が真である場合は、変数flg_rangeに1が代入された後(図8のステップS187)、変数flg_rangeが1であるか否かが判断される(図9のステップS201)。図8のステップS187を通過する限りは、これは当然に肯定されるから、REM睡眠判定処理はここで終わる。ここで、Iは、後に説明するように1ずつ増加していくことになるが(図9のステップS199参照)、入眠開始時startに、そのようなI、即ち、順次window_start1,window_start1+1,window_start1+2,…をとっていくIを加えた値が、Stage[x]の配列数を下回る場合には、本処理はいわば自動的に終了する。
他方、図8のステップS186の判断(式(7))が偽であれば、続いて、
Stage[start+I]=Wake … (8)
の真偽が判断される(図8のステップS188)。
そして、これが偽である場合(つまり、被験者が睡眠状態にある場合)は、「窓内の心拍数の標準偏差」の算出処理が行われる(図8のステップS188;NOから図9のステップS193)。ここでいう「窓」とは、前記window_start1(窓の始点)と、後述するwindow_end1(窓の終点。図9のステップS206参照)とによって区切られた領域をいう(図10参照。なお、この図については後にも触れる。)。そして、その中の「心拍数の標準偏差」とは、図4に示す記憶部20に格納された心拍数データ中、前記窓に含まれる心拍数データに基づいて算出された標準偏差を意味する(図4中の符号srh1参照)。この標準偏差の求められ方は、前述した、体動データに基づくHensa[x]の求められ方と基本的に全く同じである。即ち、算出に利用されるデータの範囲(即ち、前記窓)の定められ方に違いはあるが、“標準偏差”それ自体は、前記(1)式中の変数が適宜適当なものに変更された式に従って求められてよい。
このようにして窓内の心拍数の標準偏差std_range_hrが求められたら、次に解析部30は、このstd_range_hrが所定値const3よりも大であるか否かを判断する(図9のステップS194)。そして、これが肯定されれば、start+Iを中心とした適当な範囲、好適には数分間内における呼吸数の標準偏差を求め(図9のステップS195)、否定されれば、start+Iを中心とした数分間内における心拍数の標準偏差を求める(図9のステップS200)。これらの値は、変数stdに代入される。
次に解析部30は、このstdとtempの大小関係について判断する(図9のステップS196)。ここでstd>tempが成立する場合は、変数aに、start+Iが代入され(図9のステップS197)、変数tempにstdが代入されて(図9のステップS198)、図8及び図9上のIが1だけ増加させられる(図9のステップS199)。他方、図9のステップS196において、std≦tempが成立する場合は、単に、図8及び図9上のIが1だけ増加させられる(図9のステップS196;NOからステップS199)。Iは、当初、window_start1に等しいから(図8のステップS185参照)、以後、これを振り出しに、I=window_start1,window_start1+1,window_start1+2,…と順次増大していく。
以上に述べたような処理は、Iが、別に設定されたwindow_end1に等しい値をとるに至るまで繰り返し行われる(図9のステップS206;NOから接続記号C3、図8のステップS186の流れ)。なお、このことからもわかるように、window_start1<window_end1が成立している必要がある。
一方、このような処理の最中、当該処理からの離脱点が1つある。それは即ち、前述の図8のステップS188における判断である。
ここで、もし、前記式(8)が真である場合(つまり、被験者が覚醒状態にある場合)は、解析部30は、覚醒継続エポックを求める(図8のステップS189)。
なお、図8の処理においては、図23におけるIとの関係から、覚醒継続エポック演算処理に入る前に、I=start+Iが実施され(図8のステップS1881)、同処理を抜けた後I=I−startが実施される(図8のステップS1891)。
覚醒継続エポック演算処理の詳細は、図23に示される。この覚醒継続エポック数演算処理では、まず適宜使用される変数(ここではX)の初期設定が行われた後(図23のステップS151)、解析部30は、Stage[I+X]が“Wake”に一致するかどうかを判断する(図23のステップS152)。なお、この時点におけるIは、一義的には定まらず、図9のステップS199におけるIの増加処理を何度受けているかに応じて異なる。
前記ステップS152において、Stage[I+X]=Wakeが否定されれば、本処理に戻る(図23のステップS152;NOから図8のステップS190へ)。一方、肯定されれば、Xを1つだけ増加して、先の処理を繰り返す(図23のステップS152;YESからステップS153、及び、ステップS154、参照)。
要するに、この覚醒継続エポック演算処理では、Stage[x](ただし、ここでいうxは、覚醒開始時点であるstart+(図8上のI)以上である。)の中から、どこまで“Wake”が維持されたのかが探索される。したがって、図23の処理を経る結果、本処理(ここでは、図8の処理)の側から見ると、Stage[I+X]が値“Wake”をもたない場合における、あるいは、Xの増加につれてもたなくなった場合における、“X”(以下、このようなXを、「覚醒継続のX」ということがある。)の値が返されてくることになる。
図8のステップS189では、このように返されてきた覚醒継続のXを、変数bに代入する(以下、このbも、「覚醒継続のb」ということがある。)。
次に解析部30は、この覚醒継続のbが、所定の定数const2よりも大であるか否かを判断する(図8のステップS190)。ここで、もし、b≦const2である場合、つまり、覚醒継続の期間はさほど長くはないと判断されるときには、前記図8のステップS188において否定判断がされる場合と同じ流れになる(図8のステップS190;NOから接続記号C2を経て、図9のステップS193の流れ、参照)。
他方、b>const2である場合、つまり、覚醒継続の期間が一定程度長い場合は、変数aに、start+I+bが代入され(図8のステップS191)、変数flg_wakeに1が代入される(図8のステップS192)。さらに、これに引き続き、既に述べた図9のステップS201の判断処理が行われる。ここで、flg_range=1が成立する場合(図9のステップS201;YES)は、既に述べたようにREM睡眠判定処理は終わる。一方、flg_range=1が成立しない場合は、flg_wake=0が成立するかどうかが判断される(図9のステップS202)。
ここでflg_wake=0が成立しない場合は、変数startに、aが代入される(図9のステップS203)。他方、flg_wake=0が成立する場合は、Stage[x]変数の設定処理が行われる(図9のステップS204)。この処理については、既に図20を参照して説明した。すなわち、この処理は、引数(stg,start,end,base)が与えられて始動するが、このREM睡眠判定処理の場面では、図9に示すように、(REM,−const4,const4,a)が引数として与えられる。ここで値“REM”は、REM睡眠を意味する。このことから結局、図9のステップS204の処理では、aを中心として、Stage[−const4],Stage[−const4+1],Stage[−const4+2],…,Stage[a],…,Stage[const4−1],Stage[const4]が値REMをとる、という状態が作り出されることになる。以上の処理が終わると、変数startに、a+const4が代入される(図9のステップS205)。
このような図9のステップS203及びステップS205の処理終了後、あるいは、前述した図9のステップS206において、Iが、window_end1に一致した場合はすべて、図中の接続記号C4を介して、図8のステップS183へと戻る。
このような図8及び図9に係る処理には次のような意義がある。
すなわち、本処理の大きな目的は、被験者がREM睡眠期にあった時期を特定し、これをStage[x]に反映することにある。
そして、図8及び図9の処理では特に、この目的を達成するために、心拍数の標準偏差std_range_hrの値の利用が図られており、しかも、その値の正確性が勘案されている。つまり、このstd_range_hrが一定の理由により正確でないおそれがあるときには、REM睡眠期の特定作業が変更されるようになっているのである。
以下、この事情を、前述した図8及び図9に加えて、図10を参照して説明する。
まず、この図10では、図中左方において被験者の入眠時点が表現され、そこから右方に向かって実時間が進行していく様子が描かれている。入眠時点は、前述のように図8のステップS182によって求められる。
このような図10を用いると、図8のステップS185からステップS206までの処理は、以下のように説明される。すなわち、まず、入眠開始時startから所定の時間、window_start1の分だけ隔たった時点から、window_end1の時点までの窓が設定されるとともに(図10の上段参照。図8のステップS185・図9のステップS206も参照)、この窓内における心拍数の標準偏差std_range_hrが求められる(図10の最上段参照。図9のステップS193も参照)。
この窓内では、I=1,2,3,…と増加していくに連れて、そのそれぞれに対応するstdが求められていくが(図10の中段参照。図9のステップS195及びS200も参照)、このstdは、当該窓内における心拍数の標準偏差std_range_hrの、所定値const3に対する大小関係に応じて、呼吸数又は心拍数の標準偏差を表現する(図9のステップS194、ステップS195、ステップS200参照)。
つまり、ここでは、std_range_hr>const3が成立する場合、そのような心拍数の標準偏差が捨てられて、呼吸数の標準偏差の値が利用されることになる。これは、原理的に考えて、心拍運動、あるいはそれに基づいて発生した体動の観測上のばらつきがさほど大きくなるはずがなく、したがって、心拍数の標準偏差が一定程度大きな値をとる場合は、その心拍数の値が、被験者の当該時点における正確な状況を反映していない、言い換えると、心拍数以外の何らかの体動が心拍数データの値として拾われてしまっている可能性が高いという推測に基づいている。したがって、かかる場合は、心拍数データの中に一定の不正確さが伴っていると考えられるので、その代わりに、呼吸数データの利用が図られるのである。
以上の配慮が払われた上で、前記stdの中で最も大きな値をとるstd(図10中段の「max std」参照)、即ちtempが求められ、さらに、その窓内の最大標準偏差tempが現れる時点である、start+Iが、aに格納される処理が実行される(図9のステップS197・ステップS198参照)。なお、上の説明から明らかなように、std_range_hrの大きさ、あるいは現実の計算対象となる窓の相違等に応じて、stdは、心拍数に係るものである場合も、呼吸数に係るものである場合もある。
そして、このようにして求められた時点aは、呼吸数又は心拍数の標準偏差が最大値をとる時点なのであるから、少なくともREM睡眠期の一部に含まれている可能性が大きい。このような考え方に基づき、図9のステップS204では、図20上の引数baseにaが当てられることで、既に述べたように、Stage[−const4],…,Stage[a],…,Stage[const4]が、値REMをとる、という状態が作り出されることになる。
図8及び図9の処理では、基本的に、被験者が睡眠状態にある期間に関して、上述したような処理が繰り返し行われる。すなわち、被験者が睡眠状態にある限りは、前述したような窓が新たに設定され、その窓内におけるREM睡眠期が特定されていく。典型的には、図9のステップS204において最初のREM睡眠期が特定されたならば、その後、変数startは、入眠時のIを離れて、そこで特定されたREM睡眠期の最終時点、即ちa+const4=start+I+const4という新たな値をもつことになり(図9のステップS205参照)、そこから再び、window_start1の分だけ隔たった時点から、window_end1の時点までの窓が設定されて、上述と同様の処理が実行されることになる(図10参照。図9及び図8の接続記号C4も参照)。
この際、本実施形態では、被験者が途中で覚醒してしまっていた場合の手当てもなされている。それが、図8のステップS188;YES以後の処理の意義である。すなわち、ここでは覚醒継続のbが求められるが、それが一定程度長い場合には、被験者は、ほぼ完全な覚醒状態にあるという判断が可能であるので、もはやREM睡眠期も何もあったものではない。したがって、その場合には、かかる覚醒継続のbの長さを考慮に入れた上で、窓の始点が決定されるのである。図9のステップS191におけるa=start+I+bはまさに、そのような配慮に出ている(図10の下段等参照)。そして、この場合、覚醒継続のbの最終時点が再入眠時と考えられるので、そこを起点に改めて窓が設定されるのである(図10の最右方に示すwindow_start1参照)。
以上のようにして、図8及び図9の処理では、一定の不正確性を伴う心拍数の標準偏差の利用が回避された上で、REM睡眠期の特定がなされる。逆に言えば、この処理では、一定の正確性を伴う心拍数及び呼吸数データに基づいてのみ、REM睡眠期が特定されることになるのである。したがって、その特定は、一定程度の確からしさを具有するのである。
なお、以上の処理において、stdの算出根拠となる時間的範囲(本発明にいう「第1時間幅」に該当)と、REM睡眠認定をする時間的範囲(即ち、a±const4。本発明にいう「第2時間幅」に該当)とはともに、図10に示すようにstart+Iを中心とする時間的範囲であるが、両者の長さは一致していても、一致していなくてもよい。また、これら2つの時間的範囲のそれぞれと、前述した単位期間(即ち、図4において体動データDが10個取得されるための時間)との間の関係、あるいは、window_start1との間の関係、あるいは、window_end1との間の関係、は、基本的には、適宜自由に定められてよい。
もっとも、window_start1及びwindow_end1それ自体は、一般的に人間が睡眠状態におちたときから概ね90分後程度にREM睡眠期が訪れることが知られているから、この「入眠後90分」を有力な基準として定められることが好ましい。例えば、window_start1及びwindow_end1が、この「入眠後90分」を挟むように設定されていることが好ましく、より具体的にいえば、そのそれぞれが、実時間でみて、入眠後60分後及び、入眠後120分後などと定められるのが最適な例の1つである。このようにしておけば、REM睡眠期の特定がより正確・的確に行われ得ることになる。
次に、解析部30は、被験者の睡眠傾向を判定する(図5のステップS35)。この処理の詳細は、図11及び図12(睡眠傾向判定処理)に示される。なお、図11及び図12は両者で一体の処理を表現する(図中の接続記号D1参照)。
まず、図11において、各種の変数についての初期化が行われる(図11のステップS211)。ここで、各種の変数の中には、tl,nw,ave,Iがある。その意義ないし役割については後に説明される。ただし、Iについては、この睡眠傾向判定処理において適宜使用される変数という意味をもつだけで、特別な意味はない。
次に、解析部30は、Stage[I]=Wakeが成立するかどうかを判断する(図11のステップS212)。この判断が偽である場合(つまり、被験者が睡眠状態にある場合)には、続いて、次の条件式の真偽の判断を行う(図11のステップS215)。
ABS〔Hensa[I]−Hensa[I+1]〕≧const5 … (9)
この条件式はつまり、Hensa[x]のうち、隣り合う値(あるいは、隣り合う単位期間)同士の差の絶対値が所定値const5以上であるかどうか、の判断が行われることを表現している。上述した式(4)及び式(4)’が、HenAv[x]が関係する判断であったのとは異なる。
この式(9)が真である場合は、変数nwが1だけ増加される一方(図11のステップS216)、偽である場合は、
ave=ABS〔Hensa[I]−Hensa[I+1]〕+ave … (10)
が実行される(図11のステップS217)。つまり、変数aveに、それまでのaveと式(9)の左辺との加算値が代入される。
この後、式(9)の真偽に関わらず、変数tlが1だけ増加され(図11のステップS218)、さらにIも1だけ増加される(図11のステップS218)。
以上の処理は、Iが、Stage[x]の配列数以上となるまで繰り返し行われる(図11のステップS214参照)。そして、上述のように、Hensa[x]が単位期間における被験者の体動のばらつきの程度を表現することからすると、この処理は、隣接する単位期間の間における体動のばらつきが一定程度以上大きい場合には、nwがより大きくなり、逆に、当該体動のばらつきが一定程度以下である場合には、aveがより大きくなることになる。
Iが、Stage[x]の配列数以上となると、次に解析部30は、ave=ave/tlを実行する(図12のステップS219)。以後、それぞれ適宜に定められた所定値const6〜const11と、ave等との大小関係に応じて、睡眠傾向変数trendに、“bad”(即ち、睡眠の質が悪い),“good”(即ち、睡眠の質が良い)及び“border”(即ち、睡眠の質が良とも悪ともいえない境界にある)のそれぞれの値が代入される。
なお、const6>const7>const9>const11が成立し、const8>const10が成立する。
第1に、ave>const6が成立する場合は、trendに値“bad”が代入される(図12のステップS220;YESからステップS221)。
また、ave>const6が成立しない場合(図12のステップS220;NO)であっても、ave>const7が成立する場合(図12のステップS222;YES)であり、かつ、前述したnwをtlで除した値がconst8を下回る場合(図12のステップS223;YES)も、trendに値“bad”が代入される。
さらに、前記のステップS222において、ave>const7が成立しない場合(図12のステップS222;NO)でも、ave>const9が成立する場合(図12のステップS225;YES)であり、かつ、nw/tl<const10が成立する場合(図12のステップS226;YES)もやはり、trendに値“bad”が代入される。
第2に、前記のステップS223において、nw/tl<const8が成立しない場合(図12のステップS223;NO)は、trendに値“good”が代入される(図12のステップS224)。
また、前記のステップS226において、nw/tl<const10が成立しない場合(図12のステップS226;NO)であっても、nw/tl<const8が成立しない場合(図12のステップS227;NO)も、trendに値“good”が代入される。
さらに、前記のステップS225において、ave>const9が成立しない場合(図12のステップS225;NO)であっても、ave>const11が成立しない場合(図12のステップS229;NO)は、trendに値“good”が代入される。また、ave>const11が成立する場合(図12のステップS229;YES)であっても、nw/tl<const8が成立しない場合(図12のステップS230;NO)はやはり、trendに値“good”が代入される。
第3に、前記のステップS227において、nw/tl<const8が成立する場合(図12のステップS227;YES)は、trendに値“border”が代入される(図12のステップS228)。
また、前記のステップS230において、nw/tl<const8が成立する場合(図12のステップS230;YES)も、rendに値“border”が代入される。
このような図11及び図12に係る処理には次のような意義がある。
まず、前記のtlは、前記式(9)の真偽に関わらず増加していくから、これは単純に単位期間の数を意味している。ただし、ここでいう単位期間は、被験者が非覚醒状態にある場合の単位期間だけを意味する(図11のステップS212参照)。また、nwは、前記式(9)が真である場合に増加していくから、前記tlのうち、被験者の体動が比較的激しい場合の数である。したがって、nw/tlは、tlのうち被験者の体動が比較的激しかった場合の数の割合ということになる。他方、aveは、前記式(9)が偽である場合の、その左辺の値を、Iの増加に連れて足し込んでいったものを、前記単位期間の数(即ち、tl)で割った値なのであるから(図12のステップS219参照)、被験者の体動が比較的小さな場合におけるHensa[x]に関する一種の平均値を意味する(Hensa[x]それ自体の平均値ではない。)。
以上のことから、以下では、これらtl, nw, nw/tl, 及びaveのそれぞれを、非覚醒時期数tl、体動期数nw、体動期割合nw/tl、及び微体動平均値aveと呼ぶことがある。
図11及び図12は、このような意義をもつ各変数の大小に応じて、被験者の睡眠傾向を判定する。
例えば、微体動平均値aveが、相当程度大きいconst6よりも大であれば、それだけで睡眠傾向は悪いと判定される(図12のステップS220;YESからステップS221の流れ参照)。これは、微体動平均値aveが、寝苦しさ、緊張、興奮、睡眠時無呼吸症候群等による一定程度の連続性ある細かな体動を表現していると考えられ、したがって、眠りの浅さの指標として用いられうるからである。
また、微体動平均値aveがそれほど大きな値ではないが、それでも一定の大きさをもち(=const7又はconst9よりも大きく)、それにも関らず体動期割合nw/tlが一定の閾値(const8又はconst10)よりも小さいならば、やはり睡眠傾向は悪いと判定される(図12のステップS222;YESからステップS221に至る流れ参照。あるいは、図12のステップS225;YESから、ステップS226;YESを経て、ステップS221に至る流れの場合も同様である。)。体動期割合nw/tlが小さい場合に睡眠傾向が悪いとするのは、大きな体動がないにもかかわらず一定程度連続性のある細かな体動が続くことを重視するからである。
これに対して、睡眠傾向が良いと判定される場合は、上記とは反対、即ち微体動平均値aveがそこそこの値をとるが、体動期割合nw/tlが一定の閾値よりも大きいときである(図12のステップS222;YESからステップS224に至る流れ、図12のステップS225;YESからステップS227;NOを経てステップS224に至る流れ、あるいは、図12のステップS229;YESからステップS230;NOを経てステップS224に至る流れ、参照)。
もっとも、微体動平均値aveが、相当程度小さなconst11よりも小であれば、それだけで睡眠傾向は良いと判定される(図12のステップS229;NOからステップS224の流れ参照)。
そして、睡眠傾向が良いとも悪いともいえない境界にある場合は、上記2つの場合のいずれの条件にも適合的でない場合、あるいは、当該条件からすり抜けた場合と考えてよい。
このようにして、図11及び図12の処理においては、主に、体動期割合nw/tl及び微体動平均値aveと、const6>const7>const9>const11が成立し、const8>const10が成立するという定数const6〜const11との大小関係を適切に取り扱うことによって、被験者の睡眠傾向が適切に判定されることになる。
次に、解析部30は、覚醒修正処理を行う(図5のステップS36)。この処理の詳細は、図13及び図14(覚醒修正処理)に示される。なお、図13及び図14は両者で一体の処理を表現する(図中の接続記号E1,E2,E3参照)。
まず、図13において、解析部30は、入眠エポックを求める(図13のステップS241)。この処理については、既に図22を参照して説明した。すなわち、この処理を経ることによって、入眠時のIが返されてくることになる。
次に、この入眠時のIを使い、かつ、そのIを基準としてこれを1ずつ増加させながら(図13のステップS244)、Stage[I]=Wakeの真偽が判断される(図13のステップS242)。ここに述べたステップS242及びS244の処理は、Stage[I]=Wakeの判断が偽である以上(即ち、被験者の睡眠状態が続く以上)は、Iが、Stage[x]の配列数に一致するまで繰り返される(図13のステップS245参照)。
他方、前記の図13のステップS242の判断が真である場合は、解析部30は続いて、覚醒継続エポックを求める(図13のステップS243)。この処理についても、既に図23を参照して説明した。すなわち、この処理を経ることによって、覚醒継続のXが返されてくる。図13のステップS243では、このように返されてきた覚醒継続のXを、変数bに代入する(「覚醒継続のb」)。
次に、この覚醒継続のbが、所定値const12よりも大であるか否かが判断される(図13のステップS246)。これが否定されるときは、前記の図13のステップS244の処理(Iの1だけ増加処理)に戻る。
他方、肯定されるときは、図13及び図14上のIから覚醒継続のbだけ離れた領域間(つまり、I及び(I+b)間)にある心拍数データを用いて、その標準偏差が算出されるとともに(図13のステップS247)、同じく図13及び図14上のI及び(I+b)間にある呼吸数データを用いて、その標準偏差が算出される(図13のステップS248)。両者はそれぞれ、変数std_hr及びstd_resに代入される。
次に、睡眠傾向変数trendの値が、goodであるか否かに応じ(図13のステップS249)、goodである場合は変数stdに所定値const13が代入され(図13のステップS250)、そうではない場合は変数stdに所定値const14が代入される(図13のステップS251)。なお、const13<const14が成立する。
そして、このstdを用いて、次に、心拍数の標準偏差std_hr<stdが判断される(図13のステップS252)。これが否定される場合は、再び、睡眠傾向変数trendの値がgoodであるか否かに応じ(図14のステップS253)、goodである場合は変数stdに所定値const15が代入され(図14のステップS254)、そうではない場合は変数stdに所定値const16が代入される(図14のステップS255)。なお、const15<const16が成立する。
そして、この新たに設定されたstdを用いて、今度は、呼吸数の標準偏差std_res<stdが判断される(図14のステップS256)。これが再び否定される場合は、前記の図13のステップS244の処理(Iの1だけ増加処理)に戻る(図14のステップS256;NOから接続記号E3の流れ参照)。
他方、前記のステップS252においてstd_hr<stdが肯定され、又は、前記のステップS256においてstd_res<stdが肯定される場合は、適宜使用の変数IIに0が設定され(図14のステップS257)、次の条件式の真偽の判断が行われる(図14のステップS258)。
Hensa[I+II]<std・const17 … (11)
これが真である場合は、Stage[I+II]に値“Shallow”が代入された後(図14のステップS259)、IIが1だけ増加させられる(図14のステップS260)。そうでない場合は、単にIIが1だけ増加させられる(図14のステップS258;NOからステップS260)。ここで値“Shallow”は、浅い眠りを意味する。
以上の処理は、IIが、覚醒継続のbに至るまで繰り返し行われる(図14のステップS261参照)。
このような図13及び図14に係る処理には次のような意義がある。
すなわち、この処理の目的は、いったんは覚醒状態と確定されたStage[x](x=1,2,3,…)の中から、“浅い眠り”と判定されるべきStage[x]を改めて抽出しようとすることにある。
そして、図13及び図14の処理では特に、この目的を達成するために、心拍数の標準偏差std_hr、呼吸数の標準偏差std_res、及び、図11及び図12の処理によって求められた睡眠傾向変数trendの値の利用が図られていることに特徴がある。しかも、本処理の目的を達成する上において、前記2つの標準偏差std_hr及びstd_resの利用に際しては、これらの標準偏差std_hr又はstd_resの値の正確性が勘案されている。つまり、これらstd_hr又はstd_resが一定の理由により正確でないおそれがあるときには、“浅い眠り”の抽出作業が変更又は中止されるようになっているのである。
このことは、具体的には、前記の図13のステップS249から図14のステップS256に至るまでの処理の中に現われている。
すなわち、図13のステップS249からステップS252までは、実際に求められた心拍数の標準偏差std_hrが所定の基準値const13又はconst14以上となるとき、このstd_hrの不正確性が推認される(図13のステップS252;NO及び接続記号E2以後、参照)。この際、基準値const13及びconst14(>const13)の使い分けが行われているのは、睡眠傾向が良い場合とそうではない場合とで、標準的な心拍数の標準偏差に差が生じることが推測されるからである。すなわち、睡眠傾向変数trendが値goodをとるときは、より安定的な睡眠状態が推定されるから心拍数の標準偏差も小さいことが推定され、そうでないときは、そういうことが推定されないのである。
同じことは、呼吸数の標準偏差std_resについても行われる。すなわち、図14のステップS253からステップS256までは、実際に求められた呼吸数の標準偏差std_resが所定の基準値const15又はconst16以上となるとき、このstd_resの不正確性が推認される(図14のステップS256;NO及び接続記号E3以降、参照)。この場合も、基準値const15及びconst16(>const15)の使い分けが行われるが、その背景は、上述と同様である。
図13及び図14の中心的な処理、即ちStage[x]に、“Shallow”を代入する処理(図14のステップS259参照)は、呼吸数の標準偏差std_hr、心拍数の標準偏差std_resについての、以上に述べたような正確性が確保された上で実行される。
すなわち、上で、図8及び図9の処理の意義を説明する際に触れた通り、心拍運動、呼吸運動、あるいはそれらに基づき発生する体動は、性質上、その観測値のばらつきがさほど大きくなるはずはないので、その標準偏差が一定程度大きな値をとる場合は、それは被験者の当該時点における正確な状況を反映していないといえる。したがって、図13のステップS252においてstd_hrが基準値const13及びconst14たりうるstdを下回るのであれば、一定の正確性が推認されるし、図14のステップS256においてstd_resが基準値const15及びconst16たりうるstdを下回るのであれば、やはり一定の正確性が推認されるのである。そして、いずれの条件も満たされない場合は、何らかの意味において心拍数データ及び呼吸数データの取得に失敗しているおそれが考えられるから、そのような場合は、前述した“浅い眠り”の認定処理それ自体が行われないようになっているのである(図13のステップS252;NO→ステップS256;NO→図14及び図13の接続記号E3参照)。
なお、図13及び図14の処理では、“浅い眠り”の認定の場面において、その判断基準に“std”が用いられているが(図14のステップS258)、これにより、当該認定にあたっては、睡眠傾向の相違が加味されることになる。この点も、図13及び図14の処理の特徴といえる。
以上のように、図13及び図14の処理においては、心拍数又は呼吸数の標準偏差の値の大きさに基づいて、それら各データの正確性が確保されているのかが確認された後に、覚醒修正処理が行われるようになっているので、当該の処理の正確性が高められることになる。
次に、解析部30は、深睡眠修正処理を行う(図5のステップS37)。この処理の詳細は、図15(深睡眠修正処理)に示される。
まず、図15において、解析部30は、所定の条件を満たすStage[x]の配列数を数える(図15のステップS271)。この処理の詳細は、図21(HowManeStage処理)に示される。
まず、図21では、メインルーチンから引数(stg,start,end)が与えられる。
以上を前提に、図21においては、各種の変数の初期化が行われる(図21のステップS331)。ここで各種の変数の中には、I,Xが含まれ、I=0、X=0なる初期化が行われる。なお、Iについては、このREM睡眠判定処理において適宜使用される変数という意味をもつだけで、特別な意味はない。
続いて、Iが定数“end”以下であるかどうかが判断され(図21のステップS332)。これが肯定される場合は、Stage[I]が、値 “stg”をもつかどうかが判断され(図21のステップS333)、これが肯定される場合は、Xが1だけ増加させられた後(図21のステップS334)、Iが1だけ増加させられる(図21のステップS335)。他方、ステップS333の判断が否定される場合は、単にIが1だけ増加させられる(図21のステップS335)。
この処理は、Iがendと一致する値を持つに至るまで繰り返し行われる(図21のステップS332参照)。
以上によると結局、図21では、Stage[x]のうち値stgをもつものの数が、変数Xの持つ値として返されてくることになる。
図15のステップS271における図21の処理の利用においては、前記引数(stg,start,end)として、それぞれ、(Deep,0,Stage[x]の配列数−1)が与えられる。このことから結局、図15のステップS271の処理では、値DeepをもつStage[x]の数はXである、という結果が得られることになる(以下では、このようなXを、「DeepをもつStage[x]の数を表すX」と呼ぶことがある。)。
続いて、解析部30は、入眠エポックを求める(図15のステップS272)。この処理については、既に図22を参照して説明した。すなわち、この処理を経ることによって、入眠時のIが返されてくることになる。
図15のステップS272では、このように返されてきた入眠時のIを、変数startに代入する。
次に、睡眠傾向変数trendが、値“good”をもつかどうかが判断され(図15のステップS273)、これが否定される場合は、深睡眠修正処理は終了する。他方、trendがgoodをもつ場合は続いて、DeepをもつStage[x]の数を表すXがconst18を下回るかどうかが判断され(図15のステップS274)、これが否定される場合にも、深睡眠修正処理は終了するが、肯定される場合には続いて、Htempに定数const19が代入される(図15のステップS275)。
次に解析部30は、一種の窓、I−const20とI+const20との区切られた領域内におけるHensa[x]の標準偏差が求められ、これが変数Hstdに代入される(図15のステップS276)。この処理の考え方は、図9のステップS193に関して説明した、“窓内の心拍数の標準偏差”を求める処理の考え方とその基本は同じである。即ち、この場合でも、算出に利用されるデータの範囲(即ち、前記窓)の定められ方に違いはあるが、“標準偏差”それ自体は、前記(1)式中の変数が適宜適当なものに変更された式に従って求められてよい。
次に、このHstdに関し、Htemp>Hstdが成立するかどうかが判断され(図15のステップS277)、成立する場合は、Htempに、このHstdが代入され(図15のステップS278)、変数epochにIが代入されて(図15のステップS279)、Iが1だけ増加させられる(図15のステップS280)。他方、Htemp>Hstdが成立しない場合(図15のステップS275;NO)は、単にIが1だけ増加させられる。
以上の処理は、Iが、Stage[x]の配列数から、所定値const20を差し引いた値に一致するまで繰り返し行われる(図15のステップS281参照)。
そして、そのような処理が終了すると、Stage[x]の設定処理が行われる(図15のステップS282)。この処理については、既に図20を参照して説明した。すなわち、この処理は、引数(stg,start,end,base)が与えられて始動するが、この深睡眠修正処理の場面では、図15に示すように、(Deep,epoch−const20,epoch+const20,0)が引数として与えられる。このことから結局、図15のステップS282の処理では、Stage[epoch−const20],Stage[epoch−const20+1],Stage[epoch−const20+2],…,Stage[epoch+const20−1],Stage[epoch+const20]が値Deepをとる、という状態が作り出される。
このような図15に係る処理には次のような意義がある。
この図15の処理の目的は、本来であれば深睡眠判定がなされるべきStage[x]がないかどうかを確認し、それがあれば、当該のStage[x]に、正しく、値Deepをもたせることにある。その際、この図15の処理においては、睡眠傾向変数trendの利用等が図られている。
すなわち、睡眠傾向が良いと判定されている場合であるのに、現時点における、DeepをもつStage[x]の数を表すXの値がそれほど大きくない場合(図15のステップS273及びS274参照)は、Stage[x]中、本来は深睡眠と判定されるべきものについての見落としが存在する可能性が高い。
そこで、図15の処理では、そのような場合、Hensa[x]に関する、上述したような標準偏差Hstdを求め、このHstdが、const19(あるいは、あるHstdがHtempを下回る場合は、そのconst19よりも更に小さいHstd=Htemp(図15のステップS278参照))以下の場合におけるエポックI(=epoch)を基準に、深睡眠期認定をやり直すようになっている(図15のステップS279及びステップS282間では、epochを通じて相互に関連性がもたされている。)。このHstdが小さければ小さいほど、体動は鎮静的であり、したがって被験者が深睡眠状態にあったことが強く推定されるからである。
このように、図15の処理では、睡眠傾向判定処理が行われること等を前提に、Hensa[x]の標準偏差Hstdに基づいて、より正確な深睡眠認定が行われることになる。
次に、解析部30は、REM睡眠修正処理を行う(図5のステップS38)。この処理の詳細は、図16、図17及び図18(REM睡眠修正処理)に示される。なお、図16、図17及び図18はこれら全部で一体の処理を表現する(図中の接続記号F0,F1,F2,F5参照)。
まず、図16において、解析部30は、所定の条件を満たすStage[x]の配列数を数える(図16のステップS291)。この処理については、既に図21を参照して説明した。すなわち、この処理は、引数(stg,start,end)が与えられて始動するが、このREM睡眠修正処理の場面では、図16に示すように、(REM,0,Stage[x]の配列数−1)が引数として与えられる。このことから結局、図16のステップS291の処理では、値REMをもつStage[x]の数はXである、という結果が得られることになる(以下では、このようなXを、「REMをもつStage[x]の数を表すX」と呼ぶことがある。)。
次に、解析部30は、最初のREM睡眠開始エポックを算出する(図16のステップS292)。つまり、Stage[x](x=0,1,2,…)のうち、最初に値REMをもつx、ないしStage[x]が特定される。このxは、変数Repcに代入される。
次いで、睡眠傾向変数trendが、値“bad”をもつかどうかが判断され(図16のステップS293)、これが肯定される場合は、REM睡眠修正処理は終了する。他方、trendがbadをもつ場合は続いて、REMをもつStage[x]の数を表すXが定数const21を下回るかどうかが判断され(図15のステップS294)、これが否定される場合にも、深睡眠修正処理は終了するが、肯定される場合には続いて、J=0とされ(図16のステップS295)、各種の変数についての初期化が行われる(図16のステップS296)。ここで、各種の変数の中には、I,max,maxEpが含まれ、このうち特に、Iを除いては、max=0、maxEp=0なる初期化が行われる。なお、Iについては、このREM睡眠修正処理において適宜使用される変数という意味をもつだけで、特別な意味はない。
次に、解析部30は、J>const22が成立するかどうかを判断する(図16のステップS298)。これが肯定される場合は、REM睡眠修正処理は終了するが、否定される場合は、Iに、window_start2が代入される(図16のステップS299)。そして、以後、Iの1ずつの増加を伴いながら(図16のステップS300)、そのIが、window_end2以上となるまで、以下に述べる処理が繰り返し行われる(図16のステップS301;NOから接続記号F0参照)。
すなわち、まず、「窓内の心拍数の標準偏差std_range_hr」の算出処理が行われる(図17のステップS302)。ここでいう「窓」とは、前記window_start2とwindow_end2とによって区切られた領域をいう。そして、その中の「心拍数の標準偏差」とは、図4に示す記憶部20に格納された心拍数データ中、前記窓に含まれる心拍数データに基づいて算出された標準偏差を意味する。
要するに、ここで行われる処理は、前記の図8及び図9で行われた、window_start1及びwindow_end1間の窓内の心拍数データに基づく標準偏差を求める処理と、基本的に同じ考え方にもとづいている。したがって、算出に利用されるデータの範囲(即ち、前記窓)の定められ方に違いはあるが、図17のステップS302における標準偏差それ自体は、前記(1)式中の変数が適宜適当なものに変更された式に従って求められてよい。
このようにして窓内の心拍数の標準偏差std_range_hrが求められたら、次に解析部30は、このstd_range_hrが所定値const23よりも大であるか否かを判断する(図17のステップS303)。そして、これが肯定されれば、Repc+Iを中心とし、その前後に±const24の幅をもった間における呼吸数の標準偏差を求め(図17のステップS304)、否定されれば、Repc+Iを中心とし、その前後に±const24の幅をもった間における心拍数の標準偏差を求める(図17のステップS305)。これらの値は、変数stdに代入される。
次に解析部30は、このstdと変数maxとの大小関係について判断する(図17のステップS306)。ここでstd>maxが成立する場合は、変数maxEpに、Repc+Iが代入され(図17のステップS307)、変数maxにstdが代入されて(図17のステップS308)、図16の処理へと戻る(図17及び図16の接続記号F5参照)。他方、図17のステップS306において、std≦maxが成立する場合は、単に、図16の処理へと戻る(図17及び図16の接続記号F5参照)。
既に述べたが、以後は、Iが、window_end2以上となるまで、以上の処理が繰り返し行われる(図16のステップS301;NOから接続記号F0参照)。
一方、前記の図16のステップS301において、Iが、window_end2以上となる場合は、maxEpが、0である場合を除いて、Stage[x]の設定処理が行われる(図18のステップS310)。この処理については、既に図20を参照して説明した。すなわち、この処理は、引数(stg,start,end,base)が与えられて始動するが、このREM睡眠修正処理の場面では、図18に示すように、(REM,maxEp−const24,maxEp+const24,0)が引数として与えられる。このことから結局、図18のステップS310の処理では、Stage[maxEp−const24],Stage[maxEp−const24+1],Stage[maxEp−const24+2],…,Stage[maxEp+const24−1],Stage[maxEp+const24]が、値REMをとるという状態が作り出されることになる。以上の処理が終わると、変数Repcに、maxEpが代入される(図18のステップS311)。
このような図16乃至図18に係る処理には次のような意義がある。
この図16乃至図18の処理の目的は、本来であればREM睡眠判定がなされるべきStage[x]がないかどうかを確認し、それがあれば、当該のStage[x]に、正しく、値REMをもたせることにある。その際、この図15の処理においては、睡眠傾向変数trendの利用等が図られている。
すなわち、睡眠傾向が悪いと判定されているわけではないのに、現時点における、REMをもつStage[x]の数を表すXの値がそれほど大きくない場合(図16のステップS291及びS294参照)は、Stage[x]中、本来はREM睡眠と判定されるべきものについての見落としが存在する可能性が高い。
そこで、図16乃至図18の処理では、そのような場合、まず、window_start2及びwindow_end2間の窓内における心拍数の標準偏差std_range_hrを求め、このstd_range_hrとconst23との間の大小関係に応じて、心拍数又は呼吸数の標準偏差stdが求められる。この際、この標準偏差stdは、図16乃至図18上のIの増加に連れて逐次変わっていくが、図17のステップS306〜ステップ308では、そのような各stdのうち最大の値をもつものが選別され、さらに、その最大値max(=最大のstd)が現れる時点であるRepc+Iが、maxEpに格納される処理が実行される。そしてREM睡眠修正処理は、そのようにして求められた時期maxEpとの関連の上で行われるのである(図18のステップS310参照)。
以上の処理は図19において視覚的に表現されているが、この図19は、前述のREM睡眠判定処理に係る図10との対比から明らかなように、同図と本質的に相違がない。特に、この図19でも、Repc+Iを中心としたstdが求められる際、前述の図9のステップS194、ステップS195及びステップS200と同様、心拍数データの正確性に配慮が払われている(図17のステップS303、ステップS304及びステップS305参照)。
ただ、この図19では、最初のREM睡眠開始エポックRepcが、図10における入眠時のIと同等の役割を果たしている点が異なっている。window_start2及びwindow_end2間の窓は、このRepcが一種の基準となって定められるのである(なお、図中window_start2が、Repcに一致させられているのは、window_start2=0がありうることを示唆する。)。そして、このことから、例えば図中に示されるような位置Repc+I(=maxEp)でStage[x]=REMの設定処理が改めて行われるならば、図中符号Hsに示される部分が、それ以前のREM睡眠期に加えて、新たにREM睡眠期として付け加えられることになる。
また、これに関連して、次の窓を設定するにあたっても、図19では、更新後のRepc(図18のステップS311参照)が、図10におけるa+const4(図9のステップS205参照)と同等の役割を果たす(図19下段に示す「新たなRepc」参照)。
また、図19では、図10とは異なって、全エポックを対象としているわけではないので、REM睡眠期の設定が所定回数だけ完了したら、REM睡眠修正処理を抜けるようになっている(図16のステップS298参照。同図に示す所定値const22はここでいう「所定回数」を意味し、Jは、REM睡眠期設定の回数をカウントする役割を果たす。)。
さらに、図19において、window_start2<window_end2が成立することは、図10において、window_start1<window_end1が成立することと同様であるが、図19では、その処理以前にすでに認定済みのREM睡眠期が存在することを前提としているので(図16のステップS292参照)、一般に、window_end2−window_start2の値は、window_end1−window_start1の値よりも小さくてよく、むしろそのようにするのが好ましい(図19参照)。このような設定方法をとっておけば、最初のREM睡眠判定処理では、比較的広い範囲の中からREM睡眠期の有無を探索し、後のREM睡眠修正処理では、前段で認定されたREM睡眠期を基礎としながら、その見落としを埋めていくという合理的・効率的な処理を行うことができる。
以上のようにして、図16乃至図18の処理においても、一定の正確性を伴う心拍数及び呼吸数データに基づいてのみ、REM睡眠期の修正が行われることになる。
以上図23までを参照して行った説明が、図3のステップS11におけるデータ解析処理の詳細である。このような各種の処理を経た後は、だいぶ前に述べたように、制御部CPは、その結果を表示するが(図3のステップS12)、それは例えば、図24に示すようなものとなる。ここでは、たまたま、表示部4が、「睡眠時間08:01(即ち、8時間1分)」という結果を表示する例が示されている。この図24において、午前1時、3時、5時ごろにみられるピークの部分が、REM睡眠期に該当する。
以下述べた、本実施形態に係る睡眠評価装置1によれば、次のような効果が奏される。
(1) 本実施形態の睡眠評価装置1は、例えば、図9のステップS194、図13のステップS252、図14のステップS253、及び図17のステップS303などの判断処理を通じて、一定の不正確さを伴っていると考えられる、心拍数・呼吸数、あるいはそれら各々の標準偏差の利用が好適に排除されるようになっている。したがって、本実施形態によれば、現実の状況をより正確に反映した睡眠評価が行われ得ることになる。
(2) また、本実施形態の睡眠評価装置1によれば、心拍数・呼吸数のみならず、例えば図7におけるHenAv[x]に基づく深睡眠期の特定、図11及び図12におけるHensa[x]に基づく睡眠傾向の判定、図15におけるHensa[x]の標準偏差に基づく深睡眠期の修正特定、等、体動データから、より直接的に求められる各種のデータを用いて、被験者の睡眠の質が評価されるようになっている。これにより、本実施形態によれば、被験者の睡眠の質の多角的評価、あるいは複眼的評価が可能となっている。
また、これに関連して、本実施形態においては、例えば図16乃至図18のREM睡眠修正処理が、上述の睡眠傾向処理の結果を利用する等というように、各処理が有機的に関連し合っているので、前述のような多角的評価等の効果はより実効的に奏されるようになっている。
(3) さらに、本実施形態の睡眠評価装置1によれば、前記(1)・(2)のような効果が奏されるにもかかわらず、基本的には、各種の標準偏差等、加減乗除加工のみを行ったデータを利用して、被験者の睡眠の質を把握することから、特別複雑な構成及び処理を必要としない。したがって、本実施形態によれば、低コスト、簡易な手法により、人の睡眠の質の可能な限りの正確な把握が可能になる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明に係る睡眠評価装置は、上述した形態に限定されることはなく、以下に述べる各種の変形が可能である。
(1) 上記実施形態では、図9のステップS195、ステップS200、図13のステップS247、ステップS248、図17のステップS304、ステップS305において、心拍数、あるいは呼吸数の標準偏差が求められているが、場合によっては、これらの各処理においては、当該標準偏差に代えて、心拍数の最大値、あるいは呼吸数の最大値が用いられてもよい。これによると、例えば図17のステップS307では、maxEpが、その最大値たる心拍数、あるいは呼吸数に対応するエポックの値をもつことになり、図18のステップS310において、そのようなmaxEpに基づく、REM睡眠期の修正特定が行われることになる。つまり、このような置換を行っても、図16乃至図18の全体の処理の趣旨は本質的な変更を受けないのである。
本発明においては、呼吸数についての「第2標準偏差」あるいは「第6標準偏差」なる概念が用いられ、心拍数についての「第3標準偏差」あるいは「第7標準偏差」なる概念が用いられているが、これらの概念は、上に述べたような意味において、それぞれ、「呼吸数の最大値」、又は「心拍数の最大値」と置換されることが可能である。
本発明は、そのような場合も、その範囲内に収める。
(2) 上記実施形態では、体動データが100個取得される例について説明しているが、上でも既に言及しているように、本発明がこの形態に限定されるわけでは勿論ない。むしろ、体動データの個数は通常、100個よりも多い(あるいは、遥かに多い)と考えるのが自然である(上記で“100個”が選択されたのは、まさに説明の便宜を図る目的以外の何らの目的もない。)。また、これに関連して、Hensa[x]が、何個の体動データの標準偏差として求められるか、あるいは、HenAv[x]が、何個のHensa[x]の平均値として求められるか、についても、基本的に自由に設定される事柄である。
さらに、これに関連して、上記実施形態における体動データは、センサ部2から取り込まれたアナログ信号に対してAD変換を実行することで、デジタルデータとして取得されると好適であるが、この場合、そのAD変換におけるサンプリング間隔の長さは、基本的に自由に定められ得る。ただ、当該サンプリング間隔が比較的長期に設定されるのであれば、体動データの全個数は減少する可能性が強く、短期に設定されるのであれば、増加する可能性が強い、ということはいえる(“可能性”というのは、寝床上の在留時間の長短が、被験者ごとに、あるいは同じ被験者でも日々の相違により、等々、一般に異なるからである。)。
(3) 上記実施形態では、体動データD、心拍数データ、呼吸数データ、Stage[x]、Hensa[x]、及びHenAv[x]のいずれもが、睡眠評価装置1の記憶部20に記録されるようになっているが、本発明は、かかる形態にも限定されない。この記録は、例えば適当なインターフェイスを通じて外部記憶装置中の記録媒体になされるようになっていてもよい。
(4) 本発明に係る睡眠評価装置は、被験者の体動をいわば受動的に受け取り、かつ、これに適当な解釈を施すことによって、その睡眠の質を評価することを主機能として持つが、その実施形態としては、かかる機能以外にも例えば、被験者を強制的に覚醒させる機能、要するに、目覚まし時計としての機能をもたせる等してよい。上記実施形態における睡眠評価装置1を前提としても、それが経時機能をもつ以上(図2中の計時部11参照)、当該目覚まし時計としての機能を実現することは極めて容易である。そして、当然ながら、かかる実施形態も本発明の範囲内にある。
本発明の一実施形態に係る睡眠評価装置の使用時外観斜視図である。 図1の睡眠評価装置の電気ブロック図である。 図1の睡眠評価装置を運用するためのメインフローチャートである。 図2の記憶部内に構築される、体動データ、呼吸数データ、心拍数データ、Stage[x]、Hensa[x]及びHenAv[x]の各具体値の構成例を示す説明図である。 図3のステップS11におけるデータ解析処理に係るメインフローチャートである。 Stage[x]に睡眠及び覚醒の各状態が設定された例を示す説明図である。 深睡眠判定処理の流れを示すフローチャートである。 REM睡眠判定処理の流れを示すフローチャート(その1)である。 REM睡眠判定処理の流れを示すフローチャート(その2)である。 図8及び図9の処理を視覚的に把握するための説明図である。 睡眠傾向判定処理の流れを示すフローチャート(その1)である。 睡眠傾向判定処理の流れを示すフローチャート(その2)である。 覚醒修正処理の流れを示すフローチャート(その1)である。 覚醒修正処理の流れを示すフローチャート(その2)である。 深睡眠修正処理の流れを示すフローチャートである。 REM睡眠修正処理の流れを示すフローチャート(その1)である。 REM睡眠修正処理の流れを示すフローチャート(その2)である。 REM睡眠修正処理の流れを示すフローチャート(その3)である。 図16乃至図18の処理を視覚的に把握するための説明図である。 Stage[x]の値の設定処理(SetStage処理)の流れを示すフローチャートである。 特定の条件を満たすStage[x]の個数を算出する処理(HowManyStage処理)の流れを示すフローチャートである。 入眠エポック演算処理の流れを示すフローチャートである。 覚醒エポック演算処理の流れを示すフローチャートである。 図3のステップS11におけるデータ解析結果の一表示例を示す図である。
符号の説明
1……睡眠評価装置、2……センサ部、3……制御ボックス、4……表示部、5……操作部、10……電源、11……計時部、20……記憶部、30……解析部、CP……制御部、T1〜T4,T12,T13……データテーブル、D……体動データ、Hensa[x]……(体動データに関する)標準偏差、HenAv[x]……Hensa[x]に関する平均値、window_start1……窓の始点、window_end1……窓の終点、std_range_hr……窓内の心拍数の標準偏差、std……心拍数又は呼吸数の標準偏差

Claims (13)

  1. 被験者の心拍数及び呼吸数の各々を、第1検出時間間隔ごとの時系列として検出する心拍・呼吸検出部と、
    前記心拍・呼吸検出部の検出結果に基づいて、前記被験者の睡眠の質を判定する判定手段と、
    を備える睡眠評価装置であって、
    前記判定手段は、
    前記被験者の入眠時点を判定し、
    前記時系列上にある、前記入眠時点から第1の所定時間だけ隔たった第1時点から、前記第1時点から第2の所定時間だけ隔たった第2時点までの窓を設定し、
    当該窓内に存在する前記心拍数についての第1標準偏差が第1所定値よりも大きい場合は、
    当該窓内のA個の第3時点(ただし、Aは、A≧2を満たす整数)の各々を中心とした第1時間幅内において、前記第1検出時間間隔ごとに検出された複数の前記呼吸数についてのA個の第2標準偏差を求め、
    そうではない場合は、
    当該窓内のA個の第3時点の各々を中心とした第1時間幅内において、前記第1検出時間間隔ごとに検出された複数の前記心拍数についてのA個の第3標準偏差を求め、
    前記A個の第2又は第3標準偏差のうち最大値をもつものに対応する前記第3時点である最大値対応第3時点を求め、
    少なくとも当該最大値対応第3時点において、前記被験者はREM睡眠期にある、
    と判定する、
    ことを特徴とする睡眠評価装置。
  2. 前記判定手段は、
    前記最大値対応第3時点を含む第2時間幅内において、前記被験者はREM睡眠期にある、
    と判定することを特徴とする請求項1に記載の睡眠評価装置。
  3. 前記判定手段は、
    前記時系列上で前記窓を複数設定するとともに当該窓ごとに前記被験者のREM睡眠期を判定し、
    そのような複数の窓のうち、
    前記時系列上のある窓における前記第1時点には、
    その直前に位置する窓において特定されたREM睡眠期の端から所定の時間だけ隔たった時点が含まれる、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の睡眠評価装置。
  4. 前記判定手段は、
    前記窓内における前記被験者の中途覚醒の有無を判定し、
    前記中途覚醒がある場合、
    前記時系列上、その中途覚醒があった窓の直後の窓における前記第1時点には、
    前記中途覚醒の時点から覚醒が継続した時間だけ隔たった時点が含まれる、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の睡眠評価装置。
  5. 前記被験者の身体の動きを、第2検出時間間隔で、数値化されたN個の体動データ(ただし、Nは、N≧2を満たす整数)として検出する体動検出手段を更に備え、
    前記心拍・呼吸検出部は、
    前記体動検出手段の検出結果に基づいて、前記心拍数及び呼吸数を検出する、
    ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の睡眠評価装置。
  6. 前記判定手段は、
    前記N個の体動データを区分けするG個のグループ(ただし、Gは、2≦G<Nを満たす整数)の各々及び当該各々に含まれる体動データについての、G個の第4標準偏差を求め、
    前記G個の第4標準偏差の中から選択された、連続するgs個の第4標準偏差(ただし、gs<G)に基づいて、L個の標準偏差平均値(ただし、Lは、2≦L≦Gを満たす整数)を求め、
    当該L個の標準偏差平均値のうち、第p番目の標準偏差平均値(ただし、pはp≦L−1を満たす整数)と第(p+1)番目の標準偏差平均値との差の絶対値が第2所定値以下である場合に、
    前記第p番目の標準偏差平均値に対応する第4時点において、前記被験者は深睡眠期にある、
    と判定する
    ことを特徴とする請求項に記載の睡眠評価装置。
  7. 前記判定手段は、
    前記G個の第4標準偏差に基づいて、前記被験者の睡眠傾向を、良い、悪い及び両者の中間のいずれか1つに該当するものと判定する、
    ことを特徴とする請求項に記載の睡眠評価装置。
  8. 前記判定手段は、
    前記G個の第4標準偏差のうち、第q番目の第4標準偏差(ただs、qはq≦G−1を満たす整数)と第(q+1)番目の第4標準偏差との差の絶対値が第3所定値を下回るという条件を満たす場合は、
    当該条件を満たす各qについての前記絶対値の和を、当該条件を満たすqの個数で除した平均値を求め、
    この平均値の大小関係、及び、(G−前記条件を満たすqの個数)の大小関係に応じて、前記被験者の睡眠傾向を判定する、
    ことを特徴とする請求項に記載の睡眠評価装置。
  9. 前記判定手段は、
    前記時系列上における前記被験者の覚醒状態の有無を判定し、
    当該覚醒状態が一定時間以上、継続すると判定される場合において、
    その継続時間内に存在する前記心拍数及び前記呼吸数の標準偏差を求め、
    前記心拍数の標準偏差が第4所定値を下回り、又は、
    前記呼吸数の標準偏差が第5所定値を下回る場合に限り、
    前記継続時間中の任意の時点に対応する前記G個の標準偏差のうちの1つが、第6所定値を下回るとき、当該時点における前記被験者は浅睡眠期にある、
    と判定する
    ことを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の睡眠評価装置。
  10. 前記第4及び第5所定値の少なくとも一方は、
    前記被験者の睡眠傾向が良いか、そうではないかに応じて、その大きさが異なる、
    ことを特徴とする請求項に記載の睡眠評価装置。
  11. 前記第6所定値は、前記第4及び第5所定値に基づいて定められる、
    ことを特徴とする請求項又は10に記載の睡眠評価装置。
  12. 前記判定手段は、
    前記被験者の睡眠傾向が良いと判定される場合であり、かつ、
    前記深睡眠期と判定された時間が、第7所定値を下回る場合には、
    前記gs個の第4標準偏差についての標準偏差のうち最小値をもつものに対応する第5時点を求め、
    少なくとも当該第5時点において、前記被験者は深睡眠期にある、
    と改めて判定する、
    ことを特徴とする請求項乃至11のいずれか一項に記載の睡眠評価装置。
  13. 前記判定手段は、
    前記被験者の睡眠傾向が悪くないと判定される場合であり、かつ、
    前記REM睡眠期と判定された時間が、第8所定値を下回る場合には、
    前記REM睡眠期と判定された期間の少なくとも一部を含んで、前記時系列上の第6時点から第7時点までの第2の窓を設定し、
    当該第2の窓内に存在する前記心拍数についての第5標準偏差が第9所定値よりも大きい場合は、
    当該第2の窓内のB個の第8時点(ただし、Bは、B≧2を満たす整数)の各々を中心とした第3時間幅内に存在する前記呼吸数についてのB個の第6標準偏差を求め、
    そうではない場合は、
    当該第2の窓内のB個の第8時点の各々を中心とした第3時間幅内に存在する前記心拍数についてのB個の第7標準偏差を求め、
    前記B個の第6又は第7標準偏差のうち最大値をもつものに対応する前記第8時点である最大値対応第8時点を求め、
    少なくとも当該最大値対応第8時点において、前記被験者はREM睡眠期にある、
    と改めて判定する、
    ことを特徴とする請求項乃至12のいずれか一項に記載の睡眠評価装置。
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