JP4679771B2 - 無線伝送装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定長のデータ伝送用スロット(データ通信チャネル)を用いた無線通信において効率的なデータ伝送を実現する技術に関し、例えば、無線通信局同士がTDMA/TDD方式(時分割多元接続/時分割複信方式)で無線通信を行う加入者系無線アクセスシステムに用いて好適な技術であり、無線区間に送信する伝送データを送信待ち列である無線送信用キューの要素列として保持し、当該無線送信用キュー内の滞留及びそれに起因する遅延時間を低減する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、WLL(wireless local loop)あるいはFWA(Fixed wireless access)などと称せられる無線通信を用いた加入者系無線アクセスシステムが知られている。加入者系無線アクセスシステムは、例えば図1に示すように、電気通信事業者が固定設置する基地局(BS)1と複数の利用者宅側にそれぞれ固定設置される加入者局(CS)2とをTDMA/TDD方式の無線区間で通信接続するものであり、基地局1と加入者局2とが無線通信することで、異なる加入者局2に接続されたLAN3の間でデータ通信することができ、また、基地局1に接続された公衆通信網やLANなどのバックボーンネットワーク4を介して更に他の加入者LANとデータ通信することができる。
なお、基地局1は多数の加入者局2を収容しており、このような一対多方向方式の無線設備はP−MP(Point−Multi Point)システムとも呼ばれている。
【0003】
このような基地局1と加入者局2との無線通信にはデータ伝送用にチャネル(データ伝送用タイムスロット)が割り当てられ、基地局1による割り当て制御の下に、このデータ伝送用チャネルを基地局1配下の複数の加入者局2で共用する。
例えば、基地局1とバックボーンネットワーク4、或いは、加入者局2とLAN3とをEthernet(登録商標)及びIEEE802.3の有線LANインタフェースで接続した場合、加入者LAN3に収容された各加入者端末宛の個別アドレスを有するユニキャストデータと、複数の加入者端末に割り当てられたアドレスを有するブロードキャストデータとが、基地局1と加入者局2との無線通信で送受信され、頻繁に大量のデータが無線通信される。
【0004】
ここで、例えばTDMA/TDD方式の無線接続方式を採用する無線通信システムでは、各加入者局2は基地局1によって割り当て制御された特定のデータ伝送用チャネルのみで伝送データ(フレーム)の送受信を行うことができ、この加入者局2に割り当てられるデータ伝送用チャネル(データ通信用スロット)はTDMA/TDD方式の性質上から固定長となっている。なお、通常、このデータ伝送用チャネルの長さは、Ethernet(登録商標)及びIEEE802.3で規定された最大のフレームが格納できるサイズに設定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際にデータ伝送用スロットを用いて送受信されるEthernet(登録商標)及びIEEE802.3のデータフレームは可変長であり、様々なサイズのデータフレームを送受信するため、固定長に割り当てられたデータ伝送用スロットの多くの容量が未使用となって効率的なデータ伝送が行えず、延いては、無線伝送媒体の有効な活用が行えていなかった。
【0006】
より具体的に説明すると、固定サイズのデータ伝送用スロットを用いて、無線区間でデータ伝送を行う無線伝送装置、例えば、無線回線制御方式としてTDMA/TDD方式を用いた無線伝送装置においては、データ伝送用の固定サイズのタイムスロット(以下Dch(Datachame1の略)とも記す)が一定の周期をもって無線区聞に割り当てられ、これに伝送データが載せられて無線区間を伝送されることになる。
前記無線伝送装置の内で、例えば無線区間を伝送するデータがLANフレームであり、かつLANフレームを分解しないで伝送する(ブリッジする)無線伝送装置においては、Dchのサイズは、最大サイズのLANフレーム(1518バイト)を伝送できるようにするため、最低でも1518×8ビットタイムの大きさにとられることになる。
【0007】
しかしながら、実際のLANフレームのサイズは、64バイト〜1518バイトの範囲で任意の大きさをとり得るため、図11に示すように、1つのDchに対して1つのLANフレームだけを格納して伝送する場合、多くの場合においてDchに空き領域が生じることになり、平均してDch使用率(Dch内における伝送データの割合)はそれほど高くならない。
ここで、もし1つのDchに対して複数のLANフレームを連結して格納し、空き領域を極力小さくしてやることができれば、Dch使用率、延いては無線区間におけるLANフレームの伝送速度(伝送スループット)を上げることが可能となる。
【0008】
例えば、Dchサイズが1518×8ビットタイム、無線区間におけるDch伝送速度が毎秒500スロットであるような無線伝送装置を想定して、この装置に対して、LAN側から64バイトのサイズのLANフレームが連続して入力された場合における非連結伝送と連結伝送の比較を行うと下記の通りである。
なお、下記の説明では、CPUによる連結処理が充分早く、各Dch送信周期内に22フレーム分の連結処理が間に合っていると仮定している。
【0009】
(1)無線区間をLANフレームを連結しないで伝送する場合:
この場合、Dch使用率は、(64/1518)×100=4.2%、となる。
また、1つのDchに1つのLANフレームが格納されて無線伝送されるため、無線区間のLANフレーム伝送速度は、Dchの伝送速度(無線帯域)に等しくなり、最大で500pps程度の伝送能力をもつことになる。
【0010】
(2)無線区間を複数のLANフレームを連結して伝送する場合:
連結時に各LANフレームを識別するための識別データ領域(LANフレームの境界を示す先頭識別子やLANフレームサイズ等が入る)が必要となるので、これを仮に4バイトにとって、連結する各LANフレームの先頭に付加することを考えると、連結可能なLANフレーム数は、1518/(64+4)=22フレームとなる。
この場合、Dch使用率は、(64×22)/1518×100=93%となる。そして、無線区間における最大のLANフレーム伝送速度は、Dch伝送速度(=500)×連結数(=22)=11000ppsとなり、連結した数分だけ伝送能力が上がることになる。すなわち、(1)の非連結伝送に較べて22倍の伝送能力をもつことになる。
【0011】
次に、LAN上を流れる実トラフィックの見地から、無線区間を連結伝送することの必要性について説明する。
なお、以下の説明においては、連結のできない最大サイズのLANフレームを長フレーム、また、同一Dch内に複数連結可能なサイズのLANフレームを総称して短フレームと表現する。
【0012】
LAN上で、FTP(Fi1e Transfer Protoco1)に代表されるファイル転送プロトコルにより、データ転送が行われる場合には、最大サイズ(1518バイト)の長フレームが連続して発生する。長フレームを無線区間で伝送する際には、各LANフレームの連結ができないため、その伝送速度はDch伝送速度(無線帯域)に固定されることになる。
しかしながら、前記FTPを含めたほとんど全てのプロトコルにおいては、その実行の際に一定間隔で確認応答パケットを発生させている。
【0013】
通常、LAN上においては、複数のプロトコルによる多数の通信が同時に実行されているため、全体としては、多数の短フレームが存在することになる。
このため、これらの多数の通信を円滑に実行させるためには、無線区聞において短フレームを連結して伝送することが不可欠であると考えられる。
更に、インターネットのインフラストラクチャを電話網として使用するインターネット電話(VoIP:Voice Over IP)においては、64バイト程度の短フレームを用いて通信が実行される。
【0014】
VoIPの場合、1チャネル当たりの使用帯域は、5Kbps〜64Kbps程度(使用帯域は音声符号化方式によって異なる)であるが、マルチチャネルでの使用を考えた場合、短フレームのトラフィックはチャネル数分増大することになる。今後、インターネット電話(VoIP)は大きく普及していくことが予測されており、LANにおける短フレームのトラフィックの増大化が見込まれるため、無線区間においても、短フレームに対する高い伝送スループット性能が要求されてくる。
このため、無線区間において短フレームを連結して伝送し、短フレームに対する高い伝送スループット性能を実現することは不可欠であると言える。
【0015】
ここで、無線区間におけるフレームの連結伝送を実施する場合、通信品質を確保するために伝送にかかる遅延時間を小さくすることが求められる。例えば、VoIpにおいては、電話品質を確保するために、許容されるデータ伝送の総遅延時間は200ミリ秒程度と考えられている。このため、無線伝送装置内で生じる遅延時間も極力小さく抑えることが要求される。
また、ファイル転送などのリアルタイム性の要求されない通信においても、例えばTCP(Transmission Control Protoco1)による通信では、一定量のデータ送信毎に、確認応答待ちのデータ送信待機時間が発生する。そして、この確認応答待ち時間が遅延時間によって決まるため、同じ帯域幅をもつ異なる伝送系においては、遅延時間が大きい系程、通信時の実効スループットが低下することが知られている。この理由からも、無線伝送装置内で生じる遅延時間は極力小さく抑えことが要求される。
【0016】
ここで、一般に、単一のキュー(待ち列)へのエンキュー(待ち列要素の入力)およびデキュー(待ち列要素の出力)がランダムに発生する場合、統計数学によれば、これらの発生はポアソン分布に従う。待ち行列理論によれば、この前提のもとで「キューの滞留数」は、
ρ2/(1−ρ)
となることが分かっている。
したがって、このときの「滞留により発生する遅延時間」は、
ρ2/(1−ρ)×(1/デキュー速度) … (A)
で与えられる。
ここで、ρ=(エンキュー速度)/(デキュー速度)で定義されるトラヒック密度であり、単位を「アーラン」と呼ぶことがある。
【0017】
そして、上記の(A)式から、待ち列におけるキュー要素の滞留により発生する遅延時間は、エンキュー量(LAN入力負荷)に対して図12に示すようなプロファイルをもつことが分かり、(エンキュー速度)=(デキュー速度)に近づくと遅延時間は無限大となる。
なお、待ち行列理論は、「ρ<1」すなわち「エンキュー速度<デキュー速度」の範囲を対象に考えている。
【0018】
実際には、キューは有限の深さ(待ち列に収容できる要素数の上限)をもつため、図13に示すようなプロファイルとなる。
図13から滞留による遅延時間は、ρ<1、すなわちデキュー速度がエンキュー速度よりも大きな範囲では十分小さく、また、ρが1に近づき、あるポイントを超過してからは急激に大きくなって、最大の遅延時間(13.1)に達する。この最大の遅延時間に達したポイントが、その装置の最大伝送スループット点(パケット損失0で転送できる上限)を決定し、そこから先の領域では装置の処理上限を超えた、いわゆる輻輳状態(13.2)に入る。
【0019】
ここで、2つまたはそれ以上のLANセグメント間を無線で接続する無線伝送装置、例えば無線LANシステムやFWAシステムに関し、装置内部におけるキューの構成を考える。
これは一般に図14のようになり、Dchに載せて無線区間へ送信する側のキューを無線送信キュー(14.1)、無線区間のDchから受信した側のキューを無線受信キュー(14.2)として示してある。
【0020】
ここで、LANの帯域と無線区間の帯域を比較すると、LANの帯域は現在、最大100Mbpsのデータ伝送速度を提供するファーストイーサネット(登録商標)(IEEE802.3uで標準化)が主流になりつつある。一方で、無線区間の帯域は、例えばIEEE802.11bHighRate規格による無線LAN方式では、データ伝送速度は最大11Mbpsである。
一般的には、無線区間の帯域よりもLANの帯域の方が大きいと考えて良く、無線受信キュー(14.2)において、WRXQout(14.5)速度(すなわち、無線受信キューからのデキュー速度)は、WRXQin(14.6)速度(すなわち、無線受信キューへのエンキュー速度)よりも大きく、無線受信キュー(14.2)内での滞留はほとんど起らず、これにより発生する遅延時間もほとんどないものと考えて良い。
【0021】
一方、無線送信キュー(14.1)においては、LANからの入力トラフィックが無線区間の伝送処理能力を超過する場合があり、このとき、無線送信キューに最大数の滞留が生じて、大きな遅延時間を発生させる。
このように装置の伝送性能の上限を超えたLANからの入力トラフィックがある状態は、装置が輻輳状態に入っていることを意味し、この状態において発生する遅延に関しては、原理的に避けることはできない。
【0022】
しかしながら、現実的には、ソフトウェア処理によりLANフレームの連結と無線送信キューへのエンキュー処理を行う場合、その方式を工夫しない場合には、装置の最大スループット点よりもかなり低い「ある一定の範囲」の入力負荷においても、無線送信キュー内部に最大数の滞留が生じて、大きな遅延時間を発生させてしまうことが有り得る。
すなわち、図17に示すように、かなり低いある一定のLAN入力負荷範囲II(17.2)でも遅延が大きくなり、この範囲の遅延に関しては、装置がデータ伝送を保証する範囲内で発生する遅延であるため、極力小さく抑えられなければならない。
【0023】
ここで、キュー内部の滞留に起因して発生する遅延は、前述のように無線送信キュー(14.1)側で起るため、ここで改めて図15に示すように、無線送信キューを(15.1)のように表わして、一般的なソフトウェアによる処理構成について述べる。
すなわち、無線送信キュー(15.1)には、無線区間においてDchに載るデータ部分(Dchデータ(15.2))がキュー要素として格納され、Dchデータ(15.2)には、通常複数のLANフレーム(15.3)が連結されている。
【0024】
ここに、
Lin(15.4)は、LANフレームの入力を表わす。
Win(15.5)は、無線送信キューへのエンキューを表わす。
Wout(15.6)は、無線送信キューからのデキューを表わす。
【0025】
連結・エンキュータスク(15.7)は、装置に入力された複数のLANフレームを1つのDchデータに連結格納して、無線送信キュー(15.1)にWin(15.5)するタスクである(以下、単にタスクとも記載する)。
タスクは、図16に示すように周期的に起動されて、その周期内にLin(15.4)されたLANフレームを1つのDchデータ(15.2)に連結して、エンキュー条件が成立したときにWin(15.5)していく。
【0026】
エンキューWin(15.5)条件は、以下の2つである。
▲1▼Dchデータの空き領域(すなわち、伝送用スロットの空き領域)サイズが小さくて、新しくLin(15.4)されたLANフレームを同じDch内に連結格納できない。
▲2▼新しくLin(15.4)されたLANフレームがない。
また、タスクは、上記▲2▼の条件が成立するか、または入力LANフレーム数が(予め設定された)上限数に達した時点で、現在のDchデータを無線送信キューにWin(15.5)して、その処理を終了する。
【0027】
図16は無線伝送装置の処理の周期を表している。ここに、
T_Lin(16.1)は、LANフレームの平均入力周期を表わす。
T_Win(16.2)は、無線送信キューへの平均エンキュー周期を表わす。
T_Wout(16.3)は、無線送信キューからの平均デキュー周期を表わす。
T_Task(16.4)は、連結・エンキュータスクの平均起動周期を表わす。
【0028】
したがって、一般に、タスク周期(T_Task(16.4))は、LANフレーム入力負荷の増大に従って大きくなる傾向がある。
LANフレーム入力負荷が十分小さい状態では、タスク周期(T_Task(16.4))は、Wout周期(T_Wout(16.3))よりも小さいが、LANフレーム入力負荷があるレベルを超えてからは、タスク周期(T_Task(16.4))は逆に、Wout周期(T_Wout(16.3))よりも大きくなると考えて良い。
【0029】
無線送信ドライバ(15.8)は、無線送信キュー(15.1)内に格納されているDchデータ(キュー要素)を取り出し、これをDchに載せる(Wout(15.6)する)役割をもっている。
無線送信ドライバ(15.8)は、周期的に発生するWout(15.6)に合わせてDchを作成するため、Wout周期(T_Wout(16.3))で起動される割り込み処理となる。すなわち、Wout周期(T_Wout)は、無線送信ドライバの起動周期でもある。
【0030】
なお、図17に示したI〜IVの各領域の発生条件は以下の通りである。
(1)T_Wout<T_Link(すなわち、Wout速度>Lin速度);Iの領域(17.1)。
この領域では、図18に示すように、LAN入力負荷が無線帯域(Wout速度)よりも小さいため、無線送信キューの滞留は十分小さく遅延はほとんど発生しない。
【0031】
(2)T_Wout>T_Lin(すなわち、Wout速度<Lin速度);
(2)―1; 1タスク処理での連結数(T_Task/T_Lin)<最大連結数(joint_max);
(2)−1.1; T_Wout<T_Task;IIの領域(17.2)。
このとき、図19に示すように、「Wout速度<Win速度」となり、無線送信キューに最大数の滞留が起こり、最大遅延時間が発生する。
(2)−1.2; T_Wout<T_Task;IIIの領域(17.3)。
このとき、図20に示すように、「Wout速度<Win速度」となり、無線送信キューの滞留は十分小さく遅延はほとんど発生しない。
(2)−2.1; タスク処理での連結数(T_Task/T_Lin)>最大連結数;IVの領域(17.4)。
ここから先は、図21に示すように、常に「Wout速度<Win速度」となり、無線送信キューに最大数の滞留が起こり、最大遅延時間が発生する(装置の伝送処理上限超過の輻輳状態に入る)。
【0032】
ここで問題となるのは、IIの領域(17.2)において最大遅延時間が発生することである。このIIの領域(17.2)では、タスク周期T_Taskがデキュー周期T_Woutよりも短い状態であるため、タスク処理終了毎にWinすると、Win速度がWout速度を上回り、結果として無線送信キューに最大数の滞留が生じて、大きな遅延時間を発生させてしまう。
【0033】
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたもので、固定長のデータ伝送用チャネル(スロット)に複数の伝送データフレームを格納して無線送信することを可能ならしめるとともに、無線送信用キュー内の滞留及びそれに起因する発生する遅延を低減して、効率的なデータ伝送による無線伝送媒体の有効活用を実現することを目的とする。
なお、本発明の更なる目的は以下の説明において明らかなところである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上記IIの領域(17.2)で遅延の発生を抑えるためには、連結タスクは処理終了時に無条件でWinしてはならないと言える。
図22を参照して具体的に説明すれば、タスクが前回エンキューWinしてからの経過時間を△T(22.1)とすると、タスクは、処理終了時に、LANフレームの連結数が最大連結数に達していない場合、△T<T_Wout、の条件が成立している間は、Winしてはならない。なぜなら、この条件が未成立時にWinした場合、T_Win<T_Wout、が成立し、(Win速度がWout速度を上回って、無線送信キューに最大の滞留が発生して、大きな遅延時間を発生させてしまうからである。
したがって、本発明の基本概念の1つは、無線送信キューへのエンキュー処理(Win)に適切な制御を与え、エンキュー(Win)するタイミングを滞留を生じないように調整して、IIの領域(17.2)更にはその他の領域における遅延の発生を抑えることである。
【0035】
本発明は、無線区間に周期的に固定サイズのデータ伝送用スロットを割り当てて無線区間のデータ伝送を行う無線伝送装置であって、伝送データの送信待ち列である無線送信用キューの要素列を保持するメモリと、無線送信用キューの要素となる複数の伝送データを連結する連結手段と、メモリから出力された無線送信用キュー要素をデータ伝送スロットに載せる無線送信手段と、メモリから無線送信用キュー要素が出力されたことに応答して、メモリに次の無線送信用キュー要素を保持させる制御を行う制御手段と、を備えている。
したがって、無線送信用キュー要素がデキュー(Wout)されたことに応答して、無線送信用キュー要素をエンキュー(Win)するタイミングを制御するため、データ伝送用スロットに複数の伝送データを連結格納して無線送信することによるスロット(チャネル)容量の有効利用を実現しつつ、連結格納に際しての遅延発生を抑制することができる。
【0036】
より具体的には、本発明の無線伝送装置では、制御手段は、メモリに保持された無線送信用キュー要素の数を監視して、無線送信用キュー要素が無い又は保持された無線送信用キュー要素の数が前回のメモリ出力時より減少した場合に、メモリに次の無線送信用キュー要素を保持させる制御を行う。
また、より具体的には、本発明の無線伝送装置では、制御手段は、メモリから無線送信用キュー要素が出力されたことに同期して、メモリに次の無線送信用キュー要素を保持させる制御を行う。
【0037】
また、本発明は、無線区間に周期的に固定サイズのデータ伝送用スロットを割り当てて無線区間のデータ伝送を行う無線伝送装置であって、伝送データの送信待ち列である無線送信用キューの要素列を保持するメモリと、メモリに保持された無線送信用キューの要素に対して複数の伝送データを順次連結して格納する連結手段と、メモリから出力された無線送信用キュー要素をデータ伝送スロットに載せる無線送信手段と、連結格納対象の無線送信用キュー要素がメモリから出力された場合又は連結格納対象の無線送信用キュー要素に次の伝送データを格納するとデータ伝送用スロットのサイズを上回ってしまう場合に、メモリに保持される次の無線送信用キュー要素に対する伝送データの連結格納へ連結手段の処理対象を移行させる制御手段と、を備えている。
したがって、メモリに保持された無線送信用キューの要素に対して直接、伝送データの連結処理を施すことによりキュー内の滞留を低減し、また、当該連結処理対象のキュー要素を適切なタイミングで移行させることができる。
【0038】
より具体的には、本発明の無線伝送装置では、上記のメモリと制御手段とを内部バスで接続してモジュールに構成してソフトウエア処理にかかる負担を軽減しており、当該モジュールには、メモリから出力された無線送信用キュー要素を無線送信手段へ出力するバスインタフェースを設け、制御手段は、連結格納対象の無線送信用キュー要素の空きサイズと次に連結格納すべき伝送データのサイズとを比較して、次の無線送信用キュー要素に連結格納処理対象を移行させる。
【0039】
【発明の実施の形態】
図1に示すように、1台のBS(基地局)1に複数台のCS(加入者局)2が無線接続されるP-MP(Point to Mu1ti Point)形式のシステムを例にとって、本発明を具体的に説明する。
なお、BS1とCS2とがそれぞれ本発明に係る無線伝送装置に該当するが、以下の説明では、主にBS1について説明する。
【0040】
各CS2は、自装置のLAN3側から入力されたLANフレーム(伝送データ)を無線区間を通してBS1に伝送する機能をもっており、また、無線区間を通してBS1より受信したDch(データ伝送用スロット)からLANフレームを取り出して、これを自装置のLAN3側に転送する機能をもっている。
BS1は、自装置のLAN4側から入力されたLANフレームを無線区間を通して特定のCS2に伝送する機能をもっており、また、無線区間を通してCS2より受信したDchからLANフレームを取り出して、これを自装置のLAN4側に転送する機能をもっている。
【0041】
BSからCSに向けての無線伝送を下り伝送と呼び、逆にCSからBSに向けての無線伝送を上り伝送と呼ぶが、本例では、上り伝送時の連結処理は後述する遅延抑制のための制御処理を有しないだけで下り伝送時の連結処理と同様であるので、下り伝送時の処理について以下に説明する。すなわち、BS1が無線区間へのデータ伝送に際して行う処理について説明する。
【0042】
BS1は、LAN4側から入力されたLANフレームがマルチキャストフレームの場合、全てのCS2に対してこれを伝送し、LAN4側から入カされたLANフレームがユニキャストフレームの場合、どのCS2に伝送するかを決めた後に当該CS2へこれを伝送する。
図2に示すように、BS1は、装置内部にCAM(Content Address Memory)(2.1)を有しており、CAM(2.1)を参照することにより宛先となるCS1を決定する。
CAM(2.1)は、複数の「MACアドレスとCS番号」の組を内部に記録することが可能なデバイスであり、入力値としてMACアドレスを入力することにより、出力値として対応するCS番号を出力することが可能な連想記憶メモリデバイスである。
【0043】
下り伝送時に、LANフレームの宛先MACアドレスをCAM(2.1)に入力すると、そのMACアドレスに対応するCS番号が存在する場合、CAM(2.1)は、そのCS番号を出力する。なお、対応するMACアドレスが存在しない場合、CAM(2.1)は対応するMACアドレスがないことを示す値を出力する。
そのため、CAM(2.1)に有効なCS番号を出カさせるためには、まずCAMへの記録を行わなければならない。
【0044】
ここで、上り伝送時にBS1においては、図2には示していないが、無線受信ドライバと無線受信タスクが機能する。
無線受信ドライバは、各CS2からの上り伝送要求を受けて、各CS2に上り伝送用の帯域(Dch)を割り当て、実際にDchを受信する機能をもっており、無線受信タスクは、無線受信ドライバからDchに載せられてCSから伝送されてきたDchデータと、送信元のCS番号を受け取り、Dchデータ内部に格納されているLANフレームを取り出して、LAN4側に転送する機能をもっている。
【0045】
無線受信タスクでは、DchデータからLANフレームを取り出したときに、その送信元のMACアドレスと、送信元のCS番号の組をCAM(2.1)に記録する。なお、無線受信タスクでは、取り出したLANフレームの宛先MACアドレスによりCAM(2.1)を検索することにより、異なる2台のCS間の折り返し伝送を実現することが可能である。
よって、一度上り伝送が行われたLANフレームに関しては、その逆方向のLANフレームがBS1に入力された場合に、宛先となるCS2をCAM(2.1)から判別することが可能となる。
【0046】
なお、BS1は、一度も上り伝送が行われないLANフレームに関しては、その逆方向のLANフレームをどのCS2に送るかを判別できないので、この場合は、(1)全てのCSに送信する、(2)受信したLAnフレームを破棄する、の2つの方法のどちらかを取ることになる。
通常のブリッジは宛先が分からないLANフレームに関しては(1)の動作(フラッディング)を行うが、無線伝送装置の場合、全装置間で共有する無線帯域を有効に使用するために、(2)の方法を取るという選択肢も考えられる。
LANを通して行われる実際の通信においては、通信の一番最初の段階で必ずマルチキャストが発生し、それに対する応答としてユニキャストが発生するため(下り方向に最初からユニキャストフレームが発生することはなく)、(2)の方法をとっても実質的に支障をきたすことはないと考えられる。
【0047】
以上の処理を基本として、下り伝送時に、各宛先CS2毎の連結処理が、BS1の連結・エンキュータスク(2.2)において実施される。
BS1に複数台のCS2が無線接続されているときの、BS1における連結処理の流れは以下の通りである。
【0048】
(1)BS1が自己のLAN4側からユニキャストLANフレームを受信した場合、連結・エンキュータスク(2.2)がCAMの検索機能(2.3)によりCAM(2.1)の検索を行い、その宛先を決定する。
(2)BS1のメモリには、CS2毎に連結作業領域(2.4)が複数割り当てられており、宛先となるCS2が決定された後は、当該CS用の連結作業領域(2.4)に受信したLANフレームが転送される。
(3)続けて同じCS宛てのLANフレームを受信した場合は、同じ連結作業領域(2.4)に転送されて連結が行われる。
【0049】
この各CSの連結作業領域(2.4)毎の転送連結処理は、次のようにして行われる。
まず、1番目の伝送データ(LANフレーム)を連結作業領域(2.4)に格納し、次いで、2番目のLANフレームのサイズと、1番目のLANフレームを格納した場合にデータ伝送用スロット(Dch)に残される空きサイズとを比較し、この2番目のフレームを格納できる空きサイズがある場合には、1番目のフレームと2番目のフレームとの間にデリミタビットを挿入して、2番目のフレームを1番目のフレームと同じ連結作業領域(2.4)に格納する。
【0050】
更に、3番目のフレームのサイズと、1番目及び2番目のフレームとを格納した場合にデータ伝送用スロットに残される空きサイズとを比較し、3番目のフレームを格納できる空きサイズがある場合には、2番目のフレームと3番目のフレームとの間にデリミタビットを挿入して、3番目のフレームを1番目及び2番目のフレームと同じ連結作業領域(2.4)に格納する。
このように固定長のデータ伝送用スロットに次のフレームを格納する空きサイズがあれば、これを同一のデータ伝送用スロットに格納するという処理を行い、同一の連結作業領域(2.4)に同一のCS宛ての複数のフレームを格納する。
なお、マルチキャストLANフレームを受信した場合、または宛先の判別不能なユニキャストLANフレームをフラッディングする場合は、これらのLANフレームは、全てのCS用の連結作業領域(2.4)に転送・連結されることになる。
【0051】
(4)あるCS用の連結作業領域(2.4)に必要な空き領域がなくなり、引き続き受信した同じCS宛てのLANフレームをこれ以上連結ができない場合は、その領域の連結データを当該CS用の無線送信用キュー(2.5)にエンキューする。なお、受信したLANフレームは、同じCS用の別の連結作業領域(2.4)に転送される。
(5)無線送信用キュー(2.5)にエンキューされたデータ(キュー要素)は、無線送信ドライバ(2.6)によって、各CS毎に無線区間に割り当てられたDch(データ伝送用スロット)に載せられ、当該CSに伝送される。
(6)受信LANフレームがなくなったとき、または処理するLANフレーム数の上限に達したときは、連結・エンキュータスク(2.2)の処理は終了する。
【0052】
そして上記の無線送信用キュー(2.5)へのエンキュー及びデキュー処理において、本例のBS1では、下記の方式1〜方式4に示すような滞留抑制のためのいずれかの制御処理が行われる。
【0053】
まず、方式1について説明すると、この方式1では図3に示すようにキュー監視による方法を実施する。
無線送信キューは、デキュー(Wout)される毎にキュー要素数が1つ減るため、キュー要素数が―1される間隔がT_Woutになる。
そこで、タスク(2.2)は、処理終了時点で最大連結数に達していないWin待ちのデータがある場合(ステップS1)、現在のキュー要素数Q(N)を参照して、現在のキュー要素数が0である(ステップS2)、または、現在のキュー要素数Q(N)と前回のタスク処理終了時に保存しておいたキュー要素数Q(N―1)を比較して、(現在のキュー要素数)<(前回のキュー要素数)の条件が成立しているときには(ステップS3)、無線送信キューに次のキュー要素をエンキュー(Win)し(ステップS4)、現在のキュー要素数を保存してタスク処理を終了する。
【0054】
一方、上記条件(ステップS1、S3)が成立していない場合は、タスクは、Winせずに現在のキュー要素数を保存してタスク処理を終了し(ステップS5)、実行待ち状態に遷移する。
なお、上記のように、次回のタスク処理時点で、入力LANフレームが有る場合は、連結処理を現在の連結データに追加する形で行う。
このように、タスク(2.2)が自己制御により、無線送信キューのキュー要素数又はキュー要素数の変化を監視し、結果的にはキュー要素がデキューされたことに応じて無線送信キューに次のキュー要素をエンキューするようにしており、これによって、特にIIの領域(17.2)において、無線送信キュー内にキュー要素が滞留してしまう事態を防止して、遅延発生を回避している。
【0055】
次に、上記方式とは異なる方式2について説明すると、この方式2では図4に示すようにエンキュー処理(Win)を割り込み処理で実行する。
この方式2を実施する構成は、連結処理を行う連結タスク(4.1)と、無線送信キュー(4.3)へのエンキュー(Win)を行うエンキュードライバ(4.2)に分離されている。
【0056】
連結タスク(4.1)は周期起動タスクであり、各タスク処理において、LANフレームの連結処理を行う。そして、連結タスク(4.1)は、現在の連結処理が最大連結数に達した時にのみWinを実行し、それ以外はWinすることはない。
エンキュードライバ(4.2)はT_Wout周期で起動される割り込み処理であり、デキューに同期して割込み起動される各処理において、連結タスク(4.1)が連結を行っている連結データをWinして処理を終了する。
なお、エンキュードライバ(4.2)は、連結タスク(4.1)と共通して参照可能なフラグを用いて、連結タスク(4.1)に対して、当該連結データのWoutを実行したことを通知し、連結タスク(4.1)はこの通知をもって当該連結処理の終了を認知する。
【0057】
このように、エンキュードライバ(4.2)が自己制御により、デキューに同期して無線送信キューに次のキュー要素をエンキューするようにしており、これによって、特にIIの領域(17.2)において、T_Woutよりも短い周期でWinされることを防ぐことができ、無線送信キュー内にキュー要素が滞留してしまう事態を防止して、遅延発生を回避している。
【0058】
次に、上記方式とは異なる方式3について説明すると、この方式3では図5に示すように、連結タスク(5.2)は、連結処理を無線送信キュー(5.3)の各キュー要素の領域(5.1)に対して直接行う。
連結タスク(5.2)は、現在(先頭)のキュー要素がデキュー(Wout)された場合、または現在のキュー要素の領域にこれ以上連結不可能である場合は、次のキュー要素の領域に移って連結を実施する。
【0059】
各キュー要素の領域(5.1)には、それぞれ専用の連結タスクと共通して参照可能なフラグをもたせてあり、無線送信ドライバ(図示せず)は、Wout実行時にこのフラグを使用して、当該キュー要素をWoutしたことを連結タスク(5.2)に対して通知し、連結タスクは、この通知をもって当該キュー要素に対する連結処理の終了を認知する。
このように連結タスク(5.2)が自己制御により処理を行うことにより、連結タスクは、T_Wout時間内は、1つのキュー要素領域(5.1)に対して連結処理を続けることになり、実質的に、T_Woutよりも短い周期でWinされるのを防ぐのと同等の効果を得ることができ、無線送信キュー内にキュー要素が滞留してしまう事態を防止して、遅延発生を回避することができる。
【0060】
次に、方式4について説明すると、この方式4は図6に示すように、上記方式3における無線送信キューの各要素に対して直接連結格納していく処理を1つのハードウェアモジュール(連結FIFOモジュール)で実現したものである。
この連結FIFOモジュール6は、無線伝送装置の制御部(CPU)よりアクセス可能な外部バス(6.1)と連結FIFOモジュール内部の内部バス(6.2)とのインタフェースを行うバスインタフェース(6.3)と、外部バス(6.1)を通してLANフレームを書き込むためのライトバッファ(write buffer)メモリ(6.4)と、複数のFIFO要素メモリ(6.5)とを備えた連結FIFO部(6.6)を有している。
【0061】
連結FIFOモジュール6は、更に、連結処理を実行継続中になっているFIFO要素メモリ(6.5)における空き領域サイズを格納する空き領域サイズレジスタ(6.7)と、ライトバッファメモリ(6.4)に現在格納されているLANフレームサイズを格納するライトバッファデータサイズレジスタ(6.8)と、外部バス(6.1)を通して連結FIFO(6.6)内に格納されている連結データを読み出す際の読み出しサイズを格納するFIFOリードサイズ(read size)レジスタ(6.9)を内部に有し、空き領域サイズレジスタ(6.7)とライトバッファデータサイズレジスタ(6.8)との比較を行って、ライトバッファメモリ(6.4)内の受信LANフレームをFIFO要素メモリ(6.5)の適切な位置に転送する連結FIFO制御部(6.10)が備えられている。
【0062】
この連結FIFOモジュール6では、外部バス(6.1)を通してLANフレームが書き込まれると、これはまずライトバッファメモリ(6.4)に書き込まれ、このとき連結FIFO制御部(6.10)が、ライトバッファメモリ(6.4)内のLANフレームサイズをライトバッファデータサイズレジスタ(6.8)にセットする。
次に、連結FIFO制御部(6.10)は、ライトバッファデータサイズレジスタ(6.8)と、空き領域サイズレジスタ(6.7)の値を比較して、次の(1)又は(2)のいずれかの処理を実行する。
【0063】
(1)受信LANフレームサイズ≦空き領域サイズである場合には、ライトバッファメモリ(6.4)に格納されているLANフレームを、必要なヘッダ情報等を付加した後、現在連結処理を継続中のFIFO要素メモリ(6.5)に転送して追加で連結し、空き領域サイズレジスタ(6.7)を更新する。
(2)受信LANフレームサイズ>空き領域サイズである場合には、現在未使用中の次のFIFO要素メモリ(6.5)を新規に見つけて、これに対して、ライトバッツファメモリ(6.4)に格納されているLANフレームを、必要なヘッダ情報付加した後に転送して、空き領域サイズレジスタ(6.7)を更新する。なお、これ以降書き込まれたLANフレームは、上記の次のFIFO要素メモリに追加して連結される。
【0064】
連結FIFO制御部(6.10)は、次に読み出されるべきFIFO要素メモリ(6.5)を外部バス(6.1)を通して読み出されるよう設定し、同時に、このFIFO要素メモリ(6.5)内の連結データサイズをFIFOリードサイズレジスタ(6.9)に設定して外部バス(6.1)経由で読み出し可能にする。
そして、外部バス(6.1)から連結データが読み出された時は、連結FIFO制御部(6.10)によって、読み出されたFIFO要素メモリ(6.5)が未使用の状態に戻されると同時に、次に読み出されるべきFIFO要素メモリ(6.5)を外部バスを通して読み出されるように設定し、そのFIFO要素メモリ内の連結データサイズをFIFOリードサイズレジスタ(6.9)に設定する。
【0065】
上記のように連結処理は連結FIFOモジュール6が行うため、ソフトウェアによる処理(連結タスク)は必要なく、上記方式3による作用効果を得ることができる。
なお、例えば図7に示すように、連結FIFOモジュール6はソフトウエアモジュールからなるLAN受信ドライバ(7.1)や無線送信ドライバ(7.2)と協働して、受信したLANフレームを連結して無線区間へ送信する一連の処理を実行し、LAN受信ドライバ(7.1)はLANフレーム受信毎に連結FIFOモジュール6に対してLANフレームを転送し、無線送信ドライバ(7.2)は連結FIFOモジュール6から連結データを取り出してDchに載せて無線区間への送信を実行する。
【0066】
ここで、上記の例は、TDMA/TDD方式による無線伝送装置を対象としたが、本発明は特にこれに限定されず、上位レイヤが複数のPDU(Protocol Data Unit)を連結して、下位レイヤに対して1つのSDU(Service Data Unit)として送信用キューにエンキューする方式をもつ一般的な無線伝送装置においても、上記例と同様の制御を行うことによって、キュー内部で発生する遅延時間を減少させる効果を得ることができる。
【0067】
【実施例】
本発明の効果を、実際に無線伝送装置を用いて測定した結果をもって示す。
本例で使用した無線伝送装置はTDMA/TDD方式により無線区間のデータ伝送を行っている。なお、無線送信用キューの深さは128(128個の連結データを格納可能)である。
この無線伝送装置において、(1)エンキュー処理をデキューに非同期で実施、(2)上記の方式1で示した「キュー監視方式」によるエンキュー制御を実施、の2つのそれぞれの場合について遅延時間を測定して。
【0068】
遅延測定を行った機器の構成は図8に示す通りであり、有線(LAN)伝送区間Aに接続された無線伝送装置Aと有線(LAN)伝送区間Bに接続された無線伝送装置Bとを用い、有線(LAN)伝送区間Bで発生したLANフレーム(伝送データ)を遅延測定装置8を通して有線(LAN)伝送区間Aへ送信し、当該LANフレームを無線伝送装置Aから無線伝送装置Bへ無線送信するものである。
なお、RFC1242/RFC25442準ずる方式で、64バイトのLANフレームのみ発生させて測定した。
【0069】
この結果、エンキューの制御を行わない(1)の場合には図9に示すような遅延時間特性が得られ、エンキューの制御を行った(2)の場合には図10に示すような遅延時間特性が得られた。
これらより、図9においては、LANからの入力負荷が0.9〜1.7%間で100ミリ秒を超過する遅延時間が発生しているが、図21では、図9の同区間で発生していた遅延を完全に抑えている(遅延時間は5ミリ秒以下、Win制御無し時の1/20程度である)ことが分かる。すなわち、本発明により遅延抑制の顕著な効果が得られることが確認された。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、伝送データを連結させて無線区間のデータ伝送用スロットに載せて無線送信するに際し、当該連結データを送信待ちの無線送信用キューへエンキューする処理を当該無線送信用キューからのデキューに応答して制御するようにしたため、無線送信用キュー内の滞留及びそれに起因する発生する遅延を低減して、効率的なデータ伝送による無線伝送媒体の有効活用を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用する無線伝送システムの一例を示す図である。
【図2】 本発明に係る構成の一例を示す図である。
【図3】 本発明に係る方式1を説明するフローチャートである。
【図4】 本発明に係る方式2を説明する図である。
【図5】 本発明に係る方式3を説明する図である。
【図6】 本発明に係る方式4を説明する図である。
【図7】 本発明に係る方式5を説明する図である。
【図8】 本発明の実施例における遅延測定の機器構成を説明する図である。
【図9】 本発明の実施例におけるエンキュー制御を行わない場合の測定結果を示す図である。
【図10】 本発明の実施例におけるエンキュー制御を行った場合の測定結果を示す図である。
【図11】 Dch内で発生する空き領域を説明する図である。
【図12】 待ち行列理論におけるキュー内で発生する遅延時間のプロファイルを示す図である。
【図13】 実際のキュー内で発生する遅延時間のプロファイルを示す図である。
【図14】 無線伝送装置におけるキューを説明する図である。
【図15】 LANフレームの連結処理と無線送信用キューへのエンキュー処理を説明する図である。
【図16】 無線伝送装置内の各処理周期を説明する図である。
【図17】 無線伝送装置内のキューで発生する遅延時聞のプロファイルを示す図である。
【図18】 図17の(17.1)の状態における処理状態を説明する図である。
【図19】 図17の(17.2)の状態における処理状態を説明する図である。
【図20】 図17の(17.3)の状態における処理状態を説明する図である。
【図21】 図17の(17.4)の状態における処理状態を説明する図である。
【図22】 図17の(17.2)の状態の状態で発生する遅延を抑制するための条件を説明する図である。
【符号の説明】
1:基地局(BS)、 2:加入者局(CS)、
3:LAN、 4:バックボーンネットワーク(LAN)、
(2.2):連結エンキュータスク、 (2.4):連結作業領域、
(2.5):無線送信キュー、 (2.6):無線送信ドライバ、

Claims (3)

  1. 無線区間に周期的に固定サイズのデータ伝送用スロットを割り当てて無線区間のデータ伝送を行う無線伝送装置において、
    伝送データの送信待ち列である無線送信用キューの要素列を保持するメモリと、
    無線送信用キューの要素となる複数の伝送データを連結する連結手段と、
    メモリから出力された無線送信用キュー要素をデータ伝送スロットに載せる無線送信手段と、
    メモリから無線送信用キュー要素が出力されたことに応答して、メモリに次の無線送信用キュー要素を保持させる制御を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする無線伝送装置。
  2. 請求項1に記載の無線伝送装置において、
    制御手段は、メモリに保持された無線送信用キュー要素の数を監視して、無線送信用キュー要素が無い又は保持された無線送信用キュー要素の数が前回のメモリ出力時より減少した場合に、メモリに次の無線送信用キュー要素を保持させる制御を行うことを特徴とする無線伝送装置。
  3. 請求項1に記載の無線伝送装置において、
    制御手段は、メモリから無線送信用キュー要素が出力されたことに同期して、メモリに次の無線送信用キュー要素を保持させる制御を行うことを特徴とする無線伝送装置。
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