JP4678749B2 - 高張力鋼板のレーザ溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高張力鋼板のレーザ溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の安全対策のため、また低燃費化や二酸化炭素排出量削減を目的とした軽量化のため、自動車の車体に高張力鋼板を使用する必要性が高まっている。高張力鋼板を重ね溶接や突合わせ溶接によって溶接接合すると、溶接部および溶接熱影響部における強度が低下し、母材部に比較して軟化する現象が見られる。このような軟化が発生すると、こうした継手を有する部材に大きな力がかかったときに軟化部で座屈が生ずることがある。また、溶接部を含む鋼板を用いて成形加工を行った際、軟化した溶接部あるいは溶接熱影響部において破断が生じることがある。このように、高張力鋼板を使用したにも関わらずその性能を十分に発揮させることができない。
【0003】
最近、下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板が注目されている。この値は、溶接熱影響部の軟化の程度を示す指標として実験的に決めたものである。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
【0004】
鋼材の高張力を得る方法には、析出物や固溶元素を用いて組織を硬くする方法と、硬質の組織を軟質の組織に分散させて複合組織とする方法がある。しかし高張力鋼板の高い成形性を得るためには、複合組織によって高張力を得る方が有利である。このため、近年のより高張力でより高成形性を有する鋼板の研究開発の中で、フェライトにマルテンサイトを分散させた2相鋼に代表される鋼板が開発されてきた。こうした鋼板では結果的に上記HT値が高くなるとともに、溶接熱影響部の軟化が著しくなるという問題が発生した。
【0005】
特開2000−178654号公報に記載のものは、高張力鋼板において、鋼成分と圧延条件を規定してNbN析出を有効に活用することで、フェライト及びマルテンサイトからなる溶接熱影響軟化部の狭い高張力薄鋼板を提供できるとしている。しかしながら、析出物を多量に析出させると、高張力鋼板の伸びに代表される成形性が著しく低下してしまうことから、冶金的な手段によっては熱影響部軟化の抑制と高い成形性を両立させることは困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記HT値が0.007を超える高張力鋼板を溶接接合した材料は、溶接接合部付近の軟化を抑えることができず、成形加工時に溶接接合部付近から破断が生じたり、部材に大きな力がかかったときに溶接接合部で座屈が生じる問題があった。本発明は、HT値が0.007を超える高張力鋼板において、溶接接合部の軟化を防止することのできる溶接方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を1.0m/min以上とし、冷却手段として、強制冷却した良熱伝導性金属からなる冷却板10を該冷却板10と溶接線4との間の距離xが0.3mm以上5mm以内となるように鋼板の片面又は両面に密着して設け、レーザ照射点3付近を含む鋼板1の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。
(2)下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を2.5m/min以上とし、冷却手段として、鋼板1の片面又は両面から冷却ガス17をレーザ照射点3及びレーザ照射点が通過した後のビード5部に吹き付けることにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に冷却ガス17を吹き付け、レーザ照射点3付近を含む鋼板1の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。
(3)下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を2.5m/min以上とし、冷却手段として、鋼板1の片面又は両面から冷却用の液体18をレーザ照射点3及びレーザ照射点が通過した後のビード5部に供給することにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に冷却用の液体18を供給し、レーザ照射点3付近を含む鋼板1の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。
(4)下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を2.5m/min以上とし、冷却手段として、鋼板1の片面又は両面から霧19をレーザ照射点3及びレーザ照射点が通過した後のビード5部に吹き付けることにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に冷却用の霧19を吹き付け、レーザ照射点3付近を含む鋼板1の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。
(5)下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を1.0m/min以上とし、冷却手段として、鋼板の片面又は両面からレーザ照射点3及びレーザ照射点が通過した後のビード5部に冷却ガス17の吹き付け、冷却用の液体18の供給、および、冷却用の霧19の吹き付けのいずれかを行うことにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に、冷却ガス17の吹き付け、冷却用の液体18の供給、および、冷却用の霧19を吹き付け、の何れかを行うことに加えて、水冷した良熱伝導性金属からなる冷却板10を該冷却板10と溶接線4との間の距離xが0.3mm以上5mm以内となるように鋼板1の片面又は両面に密着して設け、レーザ照射点3付近を含む鋼板1の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。
(6)前記冷却ガス17、冷却用の液体18、および、冷却用の霧19、のいずれかは、前記冷却板10から鋼板1に対して溶接線4に沿って供給することを特徴とする請求項5に記載の高張力鋼板のレーザ溶接方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、下記HT値が0.007を超える高張力鋼板を対象とする。このような指標を有する鋼板は、焼入れ強化によって優れた高張力を発揮することができる一方、従来の溶接方法では溶接部及び溶接熱影響部の軟化が発生するからである。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。また、Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さであり、鋼板を水焼入れなどの手段によってフルマルテンサイト組織とした上で、焼入れままでビッカース硬度を測定することにより評価することができる。また、Hv(M)はC濃度との相関が高く、
Hv(M)=884C(1−0.3C2)+294
としてC濃度(質量%)から計算で求めることもできる。Hv(BM)は鋼板母材のビッカース硬さであり、母材の引張強度T(kgf/mm2)から
Hv(BM)=3T
として求めることも可能である。
【0009】
本発明は、板厚が3mm以下の薄鋼板の溶接において特に優れた効果を有する。板厚が厚い場合であって溶接ビード幅が狭い場合には、溶接部近傍に軟化部が発生しても、軟化部は硬質の溶接金属と母材に力学的に拘束されることによって悪影響が生じない。それに対し、板厚が3mm以下の薄鋼板においては、実際の溶接施工においては軟化部の幅を板厚に対して十分狭くすることができる程度に入熱を低減することができず、その結果軟化部が力学的に悪影響を及ぼすことを抑えることができず、本発明によって軟化部の生成を抑制することが必要になるからである。
【0010】
本発明は、溶接方法としてレーザ溶接を採用する。レーザ溶接であれば、レーザビームスポット径を小さく絞って少ない入熱量で溶接を行うことができ、溶接部近傍の熱影響を極少にすることができるからである。ビームスポット径を1.0mm以下とすると好ましい。0.6mm以下とすればより好ましい。
【0011】
溶接が行われた後の溶接部近傍における熱影響を少なくするためには、溶接速度を1m/min以上とすることが有効である。溶接速度が1m/min未満であると、溶接中に加工点から熱が周囲に広がり、溶接入熱のうちで溶融に費やされる熱量が減少し、溶接部周辺の温度上昇に費やされる熱量が増大し、結果として溶接部周辺の軟化を助長する。それに対し、溶接速度を1m/min以上とすることにより、溶接入熱を最大限に溶融に費やすことが可能になる。その結果、溶接部近傍の熱影響部は、溶接に寄与せず、溶接部周辺の温度を上昇させているだけの加工点からの無効熱流束の影響は少なくなり、主に高温の溶接ビードからの熱流束によって形成されることとなる。溶接速度を2.5m/min以上とすると、加工点からその周囲への無効熱流束の影響は一層少なくなり、好適である。
【0012】
HTが0.007を超える鋼板の溶接において、溶接部近傍の軟化を防止するためには、以上の対策に加え、溶接部近傍の温度上昇範囲を極力低減するとともに、温度上昇部をできるだけ速い冷却速度で冷却することが有効である。
【0013】
本発明は、レーザ照射点3付近を含む鋼板1の昇温部分を冷却するための冷却手段を設けることを特徴とする。鋼板の昇温部分とは、レーザ照射点付近から始まり、移動するレーザ照射点3後方の溶接線4上に形成される高温の溶接ビード5、及び高温の溶接ビード5からの熱流束によって加熱される熱影響部を含む部分である。鋼板の昇温部分のうち、レーザ照射点3付近が最も高温の部分であり、冷却手段はこの部分を有効に冷却することが重要である。
【0014】
ここにおいて、溶接線4とは、レーザビームスポット中心が移動する軌跡であり、溶接完了後において溶接線上にビード5が形成される。
【0015】
鋼板の昇温部分を冷却するための冷却手段としては、図1に示すように、強制冷却した良熱伝導性金属からなる冷却板10を鋼板1の片面又は両面に密着する手段を採用することができる。良熱伝導性金属としては、熱伝導度が鉄の熱伝導度の3倍以上のものを用いると良い。銅は熱伝導度が0.923cal・cm-1s-1deg-1であり、冷却板10を構成する材料として最も好ましい。冷却板10は、内部に冷却媒体を流通させる冷却媒体通路11を形成することによって強制冷却し、低温に保持することができる。冷却板10は鋼板1に密着することにより、鋼板1の温度を低下させる。密着の手段としては、鋼板1を表裏両面から圧力をかけて押さえ、鋼板に接する部分の片面又は両面を上記冷却板とすることによって行うことができる。通常は、溶接を行う鋼板を固定するための固定装置6のクランプ6aまたは溶接定盤6bの一方または両方において、鋼板1と接する部分を上記冷却板10とすることによって行うことができる。
【0016】
冷却板10を強制冷却させる手段としては、冷却板10中に冷却媒体通路11を形成し、該通路に冷却媒体を流通させることによって行うことができる。具体的には、水を流通させる方法、液体窒素の気化ガスや液体窒素そのものを流通させる方法を採用することができる。液体窒素そのものを流す場合には、冷却板10を含む固定装置全体を乾燥空気中に置くなど、結露しないように工夫すると良い。
【0017】
レーザ溶接の溶接中において、レーザ照射点3は溶接線4に沿って所定の溶接速度で移動する一方、鋼板1に密着させた冷却板10は溶接中において鋼板1に固定したままである。従って、当然のことながら冷却板10を溶接線4を覆って密着することはできず、溶接が完了した後の溶接ビード5に冷却板10を直接密着して冷却することができない。従って、溶接中のレーザ照射点3及び溶接が完了して温度が上昇している溶接ビード5部を有効に冷却するためには、冷却板10を極力溶接線4に近接させて配置することが重要である。本発明においては、冷却板10と溶接線4との間の距離xを5mm以内とすることにより、溶接中及び溶接後の昇温部分を有効に冷却し、溶接部近傍の鋼板の軟化を防止することが可能になる。一方、レーザ溶接においてビームスポット径を小さく絞った場合においても、溶接ビードを形成するためには冷却板10と溶接線4との距離xを0.3mm以上確保する必要がある。
【0018】
上記本発明のように、水冷した良熱伝導性金属からなる冷却板10を溶接線4との間の距離xが5mm以内になるように密着配置して冷却を行うことにより、レーザ照射点3における入熱のうち側方に伝搬する熱は冷却板10に吸収され、レーザ照射点3側方の温度上昇を有効に防止することができる。さらに、前述のように溶接速度を1.0m/min以上の速度とすることにより、レーザ照射点3の側方への熱の広がりを抑制することができ、レーザによる入熱を効率よく鋼板1の溶融に使うことができ、周辺への熱の拡散を防止することができる。
【0019】
冷却板10の材質としては、例えばクロム銅を用いることができる。クロム銅は無酸素銅に比べると強度が高く、このため鋼板に押圧して用いる冷却板の寿命を長くすることができる。冷却板10が鋼板1と接触する表面には、無酸素銅など軟らかい金属からなる薄板をロウ付けし、クランプ圧によって鋼板と密着しやすいようにしても良い。鋼板表裏面から鋼板1をクランプする固定装置6の全体を銅合金で製造することとしても良いが、銅合金は比較的高価であることから、溶接線付近の鋼板1と密着する部分のみを銅合金で製造した冷却板10とすると好ましい。
【0020】
冷却板10を鋼板1に密着させて鋼板1から冷却板10への熱伝導を図るに際しては、冷却板10を鋼板1に密着する単位面積あたりの圧力を高くするほど良好な熱伝導を実現することができる。図1に示すように、冷却板10を装着したクランプ6aを、鋼板に接する面積が小さくなるように構成することにより、クランプ圧発生用シリンダー6cによるクランプ力が同じであっても冷却板表面積あたりの圧力を増大させることができ、好ましい。
【0021】
本発明の冷却手段はまた、鋼板1の片面又は両面から昇温部分に冷却ガス17を吹き付ける方法を採用することができる。冷却ガス17の吹き付けに当たっては、図2に示すように、鋼板1の温度が最も上昇するレーザ照射点3付近については冷却ガスノズル12によって直接レーザ照射点に冷却ガス17を吹き付け、レーザ照射点3が通過した後の高温に加熱されたビード5部については冷却ガス発生器13から供給される冷却ガス17によって冷却することができる。冷却ガス17としては、水素、ヘリウム、窒素、二酸化炭素ガスなどが挙げられる。水素やヘリウムガスは抜熱能力に優れる。窒素ガスの場合は液体窒素から蒸発した直後の十分に冷たいガスを用いることができる。二酸化炭素ガスでは断熱膨張によりガスを冷却することができる。空気を用いる場合、十分なガス流量の確保が必要であり、50リットル/min以上の流量を用いるべきである。水素ガスは可燃性ガスであるので、防爆仕様の排気装置が準備できている場合に使用することができる。なお、図2においては、鋼板1は鋼板押さえ用ホイール9によって保持され、溶接に際してはレーザビーム2を固定し、鋼板1を鋼板移動方向22に一定速度(溶接速度)で移動する。
【0022】
前記冷却板10を溶接線4から5mm以内の距離において鋼板1に密着させる本発明においては、レーザ照射点3から側方に流出する熱は冷却板10によって奪われ、レーザ照射点側方の温度上昇を有効に防止することができる。そのため、溶接速度は1.0m/min以上の速度であれば十分であった。それに対し、レーザ照射点付近に冷却ガス17を吹き付ける本発明においては、溶接速度1.0m/min程度の場合においては、レーザ照射点側方の温度上昇を十分に防止しようとすると高速ガスの吹き付けが必要となり、溶接現象が乱れ、良好な溶接ビード5が形成されず、ハンピングなどの形状不良が発生することとなる。そこで、冷却ガス吹き付けによる本発明においては、溶接速度を2.5m/min以上の速度とし、レーザ照射点3における入熱を鋼板の溶融のみに消費し、側方への熱流束をより一層低減することが必要となる。
【0023】
本発明の冷却手段はまた、鋼板1の片面又は両面から昇温部分に冷却用の液体18を供給する方法を採用することができる。液体18の供給に当たっては、鋼板の温度が最も上昇するレーザ照射点3を含め、レーザ照射点3が通過した後の高温に加熱されたビード5部にも液体を供給する。液体18としては、液体窒素の他、水や切削油などの油が用いられる。水や油を用いる場合、発生した蒸気を集める吸引装置を併用することが好ましい。冷却用の液体を供給する本発明の場合、上記冷却ガスを吹き付ける発明と同様、溶接速度を2.5m/min以上の速度とすることが必要である。
【0024】
本発明の冷却手段はまた、鋼板1の片面又は両面から昇温部分に冷却用の霧19を吹き付ける方法を採用することができる。霧19の吹き付けに当たっては、鋼板1の温度が最も上昇するレーザ照射点3を含め、レーザ照射点が通過した後の高温に加熱されたビード5部にも吹き付けを行う。霧19を形成するための液体としては、液体窒素の他、水や切削油などの油が用いられる。水や油を用いる場合、発生した蒸気を集める吸引装置を併用することが好ましい。霧を吹き付ける本発明の場合、上記冷却ガスを吹き付ける発明と同様、溶接速度を2.5m/min以上の速度とすることが必要である。
【0025】
上記冷却ガス17の吹き付け、冷却用液体18の供給、霧19の吹き付けを行う冷却手段として、図2〜図6に示す手段を用いることができる。
【0026】
図2においては、冷却ガスノズル12からレーザ照射点3に向けて冷却ガス17を吹き付けると同時に、冷却ガス発生器13から吹き出した冷却ガス17を高温のビード部およびその周辺に吹き付ける。冷却ガスノズル12および冷却ガス発生器13をそれぞれ液体供給ノズルおよび液体供給器とすれば、液体18を供給する冷却手段として用いることができる。また、冷却ガスノズル13および冷却ガス発生器13をそれぞれ霧噴霧ノズルおよび霧発生器とすれば、霧19を吹き付ける冷却手段として用いることができる。
【0027】
図3に示す冷却手段においては、霧発生器14がレーザ照射点3および高温のビード5部をカバーするように配置され、霧発生器14から鋼板1に霧19を吹き付けることができる。霧発生器14を冷却ガス吹き付け器とすれば、冷却ガス17を吹き付ける冷却手段として用いることができる。また霧発生器14を液体供給器とすれば、液体18を供給する冷却手段として用いることができる。図3に示す例では、シールドガス7をレーザビーム2と同軸に流すセンターシールドトーチ8を用いており、レーザ照射点3に吹き付けられるシールドガス7による冷却を付加している。
【0028】
図4においては、溶接線4の両側に鋼板1を固定するための固定装置6が配置されている。固定装置6は、鋼板下面側から鋼板を保持する溶接定盤6bと、鋼板上面側から鋼板を保持するクランプ6aとからなり、クランプ6aと溶接定盤6bとの間に鋼板1を押しつけることによって鋼板1を固定することができる。図4に示すように、このクランプ6aと溶接定盤6bの一方または両方から冷却ガス17を鋼板1に向かって吹き付けることにより、冷却ガス17を吹き付ける本発明の冷却手段とすることができる。冷却ガス17は、冷却ガス通路15から供給され、ノズルを経由して鋼板1に吹き付けられる。冷却ガス17を吹き付けるかわりに液体18を供給することにより、冷却用の液体18を供給する本発明の冷却手段とすることができる。さらに、冷却ガス17を吹き付けるかわりに霧19を吹き付けることにより、霧19を吹き付ける本発明の冷却手段とすることができる。図4に示すように固定装置6から冷却ガスなどを吹き付けることとすれば、鋼板1を駆動しなくても鋼板表裏面からの冷却が容易である。鋼板裏面側から吹き付ける冷却ガス17は、レーザ照射点3を直接狙わないように吹き付けることが好ましい。レーザ照射点3を直接狙った場合、冷却ガスの流速を上げるとスパッタが増大するという不都合が生じるからである。これは鋼板を貫通して減衰されたビームにより維持される鋼板裏面のビームホール開口部が、強いパワーのビームにより維持される鋼板表面のビームホール開口部に対して不安定であるためである。
【0029】
レーザ溶接における溶融金属を大気から保護する目的でシールドガス7が用いられる。シールドガスをレーザビーム2と同軸に流すセンターシールドトーチ8を用いる場合、シールドガスによる冷却と上記図4に示す固定装置6から吹き付ける冷却ガス17とを組み合わせて鋼板を冷却することができる。この場合、シールドガス7と冷却用ガス17のガス種を別々にすることも可能である。
【0030】
上記冷却ガス17の吹き付け、冷却用液体18の供給、霧19の吹き付けを行う冷却手段に加え、水冷した良熱伝導性金属からなる冷却板10を鋼板1の片面又は両面に密着してなる前記冷却手段を付加することにより、より一層優れた効果を発揮することができる。この場合、前述の冷却板を用いる発明と同様、溶接速度を1.0m/min以上の速度とすることが必要である。冷却ガス17の吹き付け、冷却用液体18の供給、霧19の吹き付けを行う冷却手段については、それぞれの冷却手段についての前述した方法をそのまま採用することができる。また、冷却板10を用いた冷却手段についても、前述した方法をそのまま採用することができる。図5に示す例は、霧発生器14による霧19の吹き付けと冷却板10による冷却を併用した例である。
【0031】
冷却ガス17、冷却用の液体18、冷却用の霧19による冷却と冷却板10による冷却を併用する上記本発明においては、前記冷却ガス17、冷却用の液体18、冷却用の霧19のいずれかは、図6に示すように冷却板10から鋼板1に対して溶接線4に沿って供給することとしても良い。これにより、冷却板10を直接密着することができない溶接線4の真上を、冷却ガス17や冷却用の液体18、冷却用の霧19で冷却することが可能となる。特にYAGレーザや半導体レーザを用いたレーザ溶接の場合、液体窒素の霧19を冷却用の霧として用いることができる。これらレーザは、波長が短いことから加工点にレーザ誘起プラズマを生成することがなく、このため加工点付近の窒素がプラズマ化することはなく、その結果溶鋼に多量に窒素が溶解せず、良好な溶接部が形成されるからである。
【0032】
本発明の冷却手段として、鋼板1に接して流動する液体18を用いることができる。図7に示すように、液体容器16の中に高速で流れる液体18浴を形成し、当該液体18中に溶接する鋼板1を浸漬し、レーザ溶接を行う。液体18の流速は鋼板1との相対速度で定義する。液体18として液体窒素が好ましい。液体窒素流速は10m/min以上の速度とする。液体18として液体窒素を選択し、レーザ光源をYAGレーザ光の波長程度より短い光源(短波長レーザ:YAGレーザの波長である1.06μm以下)とすれば、窒素の溶接ビードへの溶解に伴う欠陥の発生を回避することが可能である。短波長レーザであれば、水や液体窒素で吸収されることがなく、溶接可能である。またレーザ誘起プラズマ中での原子状窒素の生成がないことから、溶鋼への窒素溶解量が少なくて済むからである。溶接速度は1m/min以上の速度とする。これにより、レーザビームによる入力は主に鋼板の溶解に用いられ、レーザ照射点から周囲への熱の拡散を低減することができる。
【0033】
本発明の冷却手段は、レーザ照射点付近を含む鋼板の昇温部分を冷却するにあたり、鋼板の温度が200℃以上の領域を冷却することとすると好ましい。例えばビードの温度が400℃まで低下したところで冷却手段による冷却を止めてしまうと、400℃以下の冷却速度が緩冷却となり、鋼板の軟化を十分に防止することができなくなる。
【0034】
本発明の冷却手段は、レーザ照射点付近を含む鋼板の昇温部分を冷却するにあたり、レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算される距離Lまでの範囲を冷却することとすると好ましい。これにより、急冷却とすべき温度領域をすべて急冷却することが可能になり、鋼板の軟化を十分に防止することができる。レーザ照射点(加工点)から冷却を終了する点までのビード上の長さをいくつかの入熱量(平均ビード幅)と溶接速度について変更した実験を行い、軟化程度を調査した。このとき軟化の抑制が可能であった長さは、液体や霧の良によって変化したが、種々の冷却条件すべてに対して軟化抑制が可能であった長さ(L)を平均溶接ビード幅(W)と溶接速度(v)の関数として回帰した結果、(2)式が得られたものである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。
【0035】
本発明の冷却手段は、レーザビーム照射点近傍においては、できるだけレーザ照射点3に近い位置から冷却を開始することが好ましい。特に、レーザビーム側方であって、溶接線4から側方にわずかにずれた位置の最高到達温度を低下するためには、レーザビームの直近の位置を有効に冷却することが重要である。
【0036】
【実施例】
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示す各種鋼板強度、HT値、板厚を有する鋼板を突合わせ溶接するに際し、本発明のレーザ溶接方法を適用した。レーザ溶接光源としてはYAGレーザまたは炭酸ガスレーザを使用し、シールド方法はセンターシールドトーチを採用した。レーザ溶接光源、シールドガス種、加工点における出力、溶接速度は表1に示すとおりである。
【0039】
冷却手段として、表1に示すように図1〜図8の各種冷却手段を用いた。表1の「配置位置」に記載した内容は、冷却手段が冷却板10である場合は、冷却板10と溶接線4との距離xを記載しており、冷却ガス17、冷却用液体18、冷却用霧19の吹き付けの場合は、溶接線に沿った吹き付け範囲を示している。吹き付け範囲において、プラス数字はレーザ照射点より後側、マイナス数字はレーザ照射点より前側の位置を示す。また、No.10の液体中浸漬においては、液体18と鋼板1との相対速度を記載している。
【0040】
溶接後の成形性評価においては、エリクセン試験をした場合に、溶接金属の部分で破断したものを「OK」(良好)、熱影響部破断で成形高さが母材に比べて大幅に低下したものを「NG」(不良)としている。
【0041】
表1のNo.1〜8が本発明例である。No.1は図1に示す水冷銅合金製の冷却板10を鋼板の表裏面から鋼板1に密着することにより冷却手段とした。冷却板10と溶接線4との距離xは0.6mmである。No.2は図2に示す冷却ガスノズル12と冷却ガス発生器13から冷却ガス17としてヘリウムガスを吹き付けて冷却を行った。鋼板の冷却位置は、レーザ照射点3の手前5mmから後方150mmまでである。No.3は図3に示す霧発生器14を冷却用の液体供給器に替え、水溶性油を液体18として鋼板に供給した。鋼板の冷却位置は、レーザ照射点3の後方3mmから後方100mmまでである。No.4は同じく図3に示す霧発生器14を用い、霧19として水を噴霧した。鋼板の冷却位置は、レーザ照射点3の手前5mmから後方150mmまでである。No.5は図5に示す冷却板10と霧発生装置14とを併用し、霧発生装置14からは水を噴霧した。霧発生装置14による鋼板の冷却位置は、レーザ照射点3の手前5mmから後方100mmまでである。No.6は同じく図5に示す冷却板10と霧発生装置14とを併用し、霧発生装置14からは液体窒素の霧を噴霧した。霧発生装置14による鋼板の冷却位置は、レーザ照射点3の手前5mmから後方150mmまでである。No.7は図6に示す冷却手段を用い、冷却板10による冷却と冷却板10から吹き付ける冷却用ガス17とを併用した。冷却板10の冷却媒体通路11には液体窒素気化ガスを流通させて冷却媒体とし、同じ液体窒素気化ガスを冷却ガス通路15を経由して鋼板1に吹き付ける冷却用ガス17とした。冷却板10と溶接線4との距離xは0.6mmである。No.8は図7に示す液体容器16に冷却用の液体18として水を用い、水中に鋼板1を浸漬してレーザ溶接を行った。冷却用の水に流れを形成し、水と鋼板1との相対速度を10m/minとした。本発明例No.1〜8は、いずれも成形性評価結果が「OK」であり、良好な溶接部を形成することができた。
【0042】
表1のNo.9〜19が比較例である。No.9〜11はHT値が本発明の範囲より低く、本発明の冷却手段を用いなくても良好な成形性評価結果を得ている。No.12〜19はいずれもHT値が本発明範囲内である。No.12〜15は本発明の冷却手段を用いずに図8に示す方法を採用しているので、成形性評価結果がいずれも不良であった。No.16、17は図1に示す冷却板10を用いているものの、No.16は冷却板10と溶接線4との距離が本発明範囲よりも広すぎ、No.17は溶接速度が本発明範囲よりも遅すぎ、いずれも成形性評価結果が不良であった。No.18、19は図3に示す本発明の冷却手段を用いているものの、No.18は冷却開始位置がレーザ照射点3から離れすぎ、No.19は溶接速度が遅すぎ、いずれも効果を発揮することができなかった。
【0043】
本実施例において、冷却手段による冷却範囲が(2)式の距離Lより長い場合と短い場合が存在するが、本発明例においては、効率的な冷却が可能であったため、距離Lより短い冷却範囲であっても冷却終了時点で溶接ビード温度は200℃以下になっていた。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、HT値が0.007を超える高張力鋼板において、本発明の冷却手段を用いて溶接部および溶接熱影響部の冷却を促進することにより、溶接接合部の軟化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷却板を用いたレーザ溶接方法を示す図であり、溶接方向に垂直にみた図である。
【図2】本発明の冷却ガス吹き付けを用いたレーザ溶接方法を示す図であり、溶接方向に平行にみた図である。
【図3】本発明の霧吹き付けを用いたレーザ溶接方法を示す図であり、(a)は溶接方向に垂直にみた図、(b)は溶接方向に平行にみた図である。
【図4】本発明の冷却ガス吹き付けを用いたレーザ溶接方法を示す図であり、溶接方向に垂直にみた図である。
【図5】本発明の冷却板と霧吹き付けを併用したレーザ溶接方法を示す図であり、(a)は溶接方向に垂直にみた図、(b)は溶接方向に平行にみた図である。
【図6】本発明の冷却板と冷却ガス吹き付けを併用したレーザ溶接方法を示す図であり、溶接方向に垂直にみた図である。
【図7】本発明の液体中に浸漬するレーザ溶接方法を示す斜視図である。
【図8】従来のレーザ溶接方法を示す図であり、溶接方向に垂直にみた図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2 レーザビーム
3 レーザ照射点
4 溶接線
5 ビード
6 固定装置
6a クランプ
6b 溶接定盤
6c クランプ圧発生用シリンダー
7 シールドガス
8 センターシールドトーチ
9 鋼板押さえ用ホイール
10 冷却板
11 冷却媒体通路
12 冷却ガスノズル
13 冷却ガス発生器
14 霧発生器
15 冷却ガス通路
16 液体容器
17 冷却ガス
18 液体
19 霧
20 液体流
21 溶接進行方向
22 鋼板移動方向
x 冷却板と溶接線との距離
Claims (6)
- 下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を1.0m/min以上とし、冷却手段として、強制冷却した良熱伝導性金属からなる冷却板を該冷却板と溶接線との間の距離が0.3mm以上5mm以内となるように鋼板の片面又は両面に密着して設け、レーザ照射点付近を含む鋼板の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。 - 下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を2.5m/min以上とし、冷却手段として、鋼板の片面又は両面から冷却ガスをレーザ照射点及びレーザ照射点が通過した後のビード部に吹き付けることにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に冷却ガスを吹き付け、レーザ照射点付近を含む鋼板の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。 - 下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を2.5m/min以上とし、冷却手段として、鋼板の片面又は両面から冷却用の液体をレーザ照射点及びレーザ照射点が通過した後のビード部に供給することにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に冷却用の液体を供給し、レーザ照射点付近を含む鋼板の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。 - 下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を2.5m/min以上とし、冷却手段として、鋼板の片面又は両面から霧をレーザ照射点及びレーザ照射点が通過した後のビード部に吹き付けることにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に冷却用の霧を吹き付け、レーザ照射点付近を含む鋼板の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。 - 下記(1)式のHT値が0.007を超える高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接速度を1.0m/min以上とし、冷却手段として、鋼板の片面又は両面からレーザ照射点及びレーザ照射点が通過した後のビード部に冷却ガスの吹き付け、冷却用の液体の供給、および、冷却用の霧の吹き付けのいずれかを行うことにより、溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分に、冷却ガスの吹き付け、冷却用の液体の供給、および、冷却用の霧を吹き付け、の何れかを行うことに加えて、水冷した良熱伝導性金属からなる冷却板を該冷却板と溶接線との間の距離が0.3mm以上5mm以内となるように鋼板の片面又は両面に密着して設け、レーザ照射点付近を含む鋼板の溶接中及び溶接後の温度が200℃以上の昇温部分であって、前記レーザ照射点の後方の下記(2)式で計算した距離Lまでの範囲を冷却することを特徴とする高張力鋼板のレーザ溶接方法。
HT=(1+4C−0.1Si−0.1Mn−Nb−Mo)/(Hv(M)−Hv(BM)) (1)
ただし、C、Si、Mn、Nb、Moは各元素の含有量(質量%)である。Hv(M)は当該鋼板がフルマルテンサイトになったときのビッカース硬さである。Hv(BM)は鋼板のビッカース硬さである。
L(mm)=20×w2×v (2)
ただし、w(mm)は板厚方向の平均溶接ビード幅、v(m/min)は溶接速度である。 - 前記冷却ガス、冷却用の液体、および、冷却用の霧、のいずれかは、前記冷却板から鋼板に対して溶接線に沿って供給することを特徴とする請求項5に記載の高張力鋼板のレーザ溶接方法。
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