JP4676001B2 - 車両用傾斜角度検出装置およびこの装置を使用したロールオーバ判定装置 - Google Patents

車両用傾斜角度検出装置およびこの装置を使用したロールオーバ判定装置 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
この発明は、角速度センサを用いて車両のロールオーバ(横転)方向の傾斜角度をより正確に検出するようにした車両用傾斜角度検出装置およびこの装置を使用したロールオーバ判定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に角速度センサを搭載し車両の傾斜角度を検出する従来の車両用傾斜角度検出装置に関するものとして例えば以下の従来例がある。
従来例その1として、この従来例は、車両の回転角速度を検出する角速度センサ(ヨーレートセンサ)のオフセット誤差を正確に補正することを目的とし、その補正方法として衛星放送受信の追尾動作におけるジャイロセンサのオフセット補正の方式を利用しており、オフセット誤差が大きい場合にはオフセット誤差の補正機会を増加し、このオフセット誤差の補正が進み、オフセット誤差が小さくなった場合には誤補正となる場合を少なくしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来例その2として、この従来例は、角速度センサのオフセット補正ができ、かつ、角速度センサ自体の感度を診断できることを目的とし、オフセット補正部にて複数の角速度センサが出力した検出信号から得られる角速度値と車両停止中の角速度センサが出力した検出信号よりオフセット補正値を求めるとともに、このオフセット補正値を用いて角速度値のオフセット補正を行う。そして、センサ感度診断部にて、複数の角速度センサの検出信号に基づいて車両が旋回中であることを検知し、車両の旋回中にオフセット補正後における複数の角速度センサの角速度値から複数の角度センサの感度の診断を行うようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3413327号公報
【特許文献2】
特開2005−172662号公報
【0005】
従来の車両用傾斜角度検出装置は以上のように構成され、従来例その1(特許文献1)および従来例その2(特許文献2)それぞれにおいてその目的の達成を図っている。
しかしながら、これら従来例の方式をロール方向の角速度を検出する角速度センサに適用した場合、周辺機器の追加が必要となり、より複雑なシステム構成が必要になるなどの問題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、周辺機器の追加を必要とすることなく、単純な構成で車両のロール方向の傾斜角度を正確に検出することを可能にした車両用傾斜角度検出装置およびこの装置を使用したロールオーバ判定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両用傾斜角度検出装置は、車両のロール方向の角速度を検出する角速度センサと、前記角速度センサより入力した角速度検出信号が予め設定した第1の角速度値以下の信号のときには出力信号のレベルを零または減衰する不感帯領域と前記第1の角速度値を超える信号は出力する通過領域とを有し、不要成分を除去した角速度検出信号を出力する不要成分除去手段と、前記不要成分除去手段より入力した角速度検出信号を積分処理し、角度を表す積分値の信号を出力する演算処理手段と、前記演算処理手段より入力した信号の角度を表す積分値が発散しないように、予め設定した固定値の積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール方向の傾斜角度を表す信号を出力する積分値復帰手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、この発明によれば、角速度センサより入力した角速度検出信号に含まれる不要成分は不要成分除去手段の不感帯領域で除去し、この不要成分除去手段の通過領域を通過し出力された角速度検出信号について積分処理し、この積分処理後に、固定値の積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール方向の傾斜角度を表す信号を出力するように構成したので、不要成分除去手段によるノイズ等の不要成分の除去および積分値零復帰の処理により、角度を表す積分値が発散することなく長時間保持され、車両のロール方向の傾斜角度を正確に検出することができる。
また、周辺機器の追加を必要とすることなく、単純な構成で車両のロール方向の傾斜角度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための最良の形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。
図1において、この車両用傾斜角度検出装置は、角速度センサ1、不要成分除去手段2、演算処理手段3、および積分値復帰手段4とで構成される。
上記構成において、角速度センサ1は車両のロール方向に発生する角速度を検出するものであり、このロール方向の角速度を検出することより、ロールレートセンサとも称されている。この角速度センサ1(ロールレートセンサ)は、例えばジャイロセンサを使用し、このジャイロセンサにより車両のロール方向に発生する物理的角速度を電圧信号に変換する。この変換した電圧信号が角速度センサ1の角速度検出信号となる。この角速度検出信号は検出する角速度の方向により正(+)または負(−)の極性の値となる。
【0010】
不要成分除去手段2は角速度センサ1からの角速度検出信号中含まれるノイズ等の小レベルの不要成分を除去する不感帯領域と、前記不感帯領域で除去するレベルを超えるレベルの角速度検出信号を通過させる通過領域とを有し、不要成分を除去した通過領域の角速度信号ωを出力する。
この不要成分除去手段2はその内部に例えば比較器2aを備え、この比較器2aの入力一端2bには不感帯領域を定める角速度(ωo)が設定され、入力他端2cに角速度センサ1からの角速度検出信号が入力し、出力端2dより不要成分を除去した通過領域の角速度信号ωを出力する。
演算処理手段3は不要成分除去手段2において不要成分が除去された角速度信号ωを演算処理し、角度θsを表す積分値の信号を出力する。この演算処理は積分処理または積分フィルタ処理が代表的である。
積分値復帰手段4は、固定値の積分値復帰値が予め設定され、演算処理手段3より入力した信号の角度θsを表す積分値が発散しないように前記積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール方向の傾斜角度(以下、「ロール角度」とする)θvを表す信号を出力する。なお、積分値零復帰は、演算処理手段3より入力した角度θsを表す積分値の信号を減衰またはリセット処理等により行う。
【0011】
上記構成による図1の動作を説明する前に、この図1の構成に至る背景について以下に説明する。
図2は角速度センサ(ロールレートセンサ)の測定対象および車両の各種走行モードにおける角速度成分の説明図であり、図2(a)は角速度センサの測定対象、図2(b)は旋回走行モードにおいて発生する角速度成分、図2(c)は螺旋走行モードにおいて発生する角速度成分を示す。
図2(a)において、ロールレートセンサとして機能する角速度センサはロールオーバ(横転)時の車両11のロールレート成分ωxを検出するように設置される。
なお、車両11の中央部には図1の構成を含むエアバッグコントロールユニット12が設置され、側面にはエアバッグ13が設置され、上記ロールレート成分ωxが大きな値となり、これにより車両のロール角度が所定角度以上となったときには、エアバッグコントロールユニット12が側面のエアバッグ13に駆動信号を出力し、エアバッグ13を展開制御して車両横転時の乗員を保護する。
【0012】
また、図2(b)において、車両11が水平面上で動く旋回走行モードにおいては、ヨーレート(回転)成分ωzのみが発生し、角速度センサの測定対象である前記ロールレート成分ωxは発生しない。
また、図2(c)において、車両11が前後方向に傾いた状態で旋回する螺旋旋回モードにおいては、車両11がロールしていないにも関わらず、旋回成分ωoに対しロールレート成分ωx(=ωoSinφ)が発生する。このωx(=ωoSinφ)は車両11のロール角度とは関連のない不要な成分(他軸方向成分)である。この螺旋旋回モードの他にも山道のカーブ等において車両11が前後方向に傾いた状態で旋回した場合にも同様に発生する。
このような不要なロールレート成分ωxが角速度センサより出力され、この出力を単純に積分処理しただけの場合には積分値が発散し、実際のロール角度に対して大きな誤差が発生する。以下、この誤差について図3で説明する。
【0013】
図3は積分処理の説明図であり、図3(a)は積分処理の構成図、図3(b)は誤差発生の説明図、図3(c)は積分値復帰の説明図である。
また、図3(b)において、特性図C1は横軸を時間(ms)、縦軸を角速度ω(deg/sec)で表した図であり、螺旋走行モードにおいて角度センサより出力される角速度ωの特性例であり、特性図C2は横軸を時間(ms)、縦軸をロール角度θv(deg)で表した図であり、特性C2aは積分波形図、特性C2bは実際のロール角度である。
また、図3(c)の特性図C3は、積分値復帰値Δθa,Δθb,Δθc(Δθa>Δθb>Δθc)(deg/sec)をパラメータにして、横軸を時間(ms)、縦軸をロール角度θv(deg)で表した特性例であり、積分値復帰の様子を示す。
【0014】
図3(a)の積分処理部21に、螺旋走行モードにおいて例えば角速度センサより図3(b)に示す特性図C1の角速度ωの信号が入力した場合、積分処理部21はこの角速度ωの信号を積分処理し、図3(b)に示す特性C2aの積分波形のロール角度θvを表す信号を出力する。これに対し、実際のロール角度は特性C2bに示すように略0(deg)であり、積分処理部21において積分処理した特性C2aのロール角度θvは特性C2bに示す実際のロール角度から大きく外れ、誤差となっている。このように、螺旋走行モードにおいては不要なロールレート成分ωxが角度センサより出力され、この出力を単純に積分処理しただけの場合には積分値が発散し、実際のロール角度に対して大きな誤差が発生する。このような積分処理したロール角度θvと実際のロール角度との乖離を抑制するためには、図3(c)に示すように、積分値から一定量ずつ0へ復帰させるような積分値復帰値(Δθ)を設定することにより積分値の発散を抑制し、誤差の発生を抑制することが可能となる。ただし、この積分値復帰値(Δθ)は適正値があり、実際のロール角度との乖離の度合いに応じて設定する必要がある。例えばこの積分値復帰値(Δθ)が大きい場合には欲しい角度成分の減衰が大きくなるケースが考えられる。
【0015】
図3(c)の特性図C3において、Δθa>Δθb>Δθcの関係にある3種類の中の積分値復帰値Δθaを積分値復帰値(Δθ)として設定し、このΔθaで積分値復帰処理を行えば実際のロール角度との乖離がなくなり、図3(b)の特性C2bを得ることができる。
一方、積分値復帰値(Δθ)は積分値の保持時間に関係し、積分値復帰値(Δθ)が小さいほど積分値の保持時間が長くなり、ロール角度の検出精度が向上し、ロール角度を検出する装置として好ましい。
従って、積分値復帰値(Δθ)は極力小さい値にする必要があるが、角速度センサの出力信号中からノイズ等の不要な成分を予め除去しておき、この除去処理後の信号について積分処理することにより、積分値復帰値(Δθ)を小さくでき、かつ、この小さな積分値復帰値(Δθ)であっても実際のロール角度との乖離を抑制できる。
【0016】
以上が図1の構成に至る背景であり、この発明による車両用傾斜角度検出装置は下記(1)、(2)の相反する要件を達成することを動作目的としている。
(1)検出したロール角度を保持すること。このためには積分値の保持時間を長くする必要がある。
(2)螺旋走行や山道のカーブ等で車両11が前後方向に傾いた状態で旋回した場合に発生する不要な他軸方向の角速度成分、または角速度センサから出力されるドリフト成分やノイズ等の不要成分による積分値の発散を防止し、実際のロール角度に対し誤差が生じないようにすること。
【0017】
次に、図1の動作について図4を使用して説明する。
図4は図1の動作を説明するための図であり、図4(a)は不要成分除去手段2の入出力特性図、図4(b)は螺旋走行時に角速度センサ1より出力される角速度検出信号の一例の波形図、図4(c)は積分値復帰の説明図である。
また、図4(a)は入力角速度ω(横軸)(以下、「入力ω」とする)に対する出力角速度ω(縦軸)(以下、「出力ω」とする)の関係を示し、図中の−ωo〜+ωo(以下、「+」符号は省略)の範囲は不要成分除去手段2における入力ωの不感帯領域を表し、出力ωを0にしてノイズ等の不要成分を除去する。ここで、「ωo」を第1の角速度値とした。
なお、上記不感帯領域は入力ωを減衰させてノイズ等の不要成分を除去するようにしてもよいが、以下の説明においては出力ωを0にする動作とする。
上記不感帯領域に対し、入力ω>ωoまたは入力ω<(−ωo)の領域は通過領域であり、前記不感帯領域で除去するレベルを超えるレベルの角速度検出信号を通過させ、入力ωと同レベルで出力する。
【0018】
図4(b)は直流(DC)成分の角速度ωaを含み、この角速度ωaを中心に、ωa+fs・(角速度ωb)で変化するとしたセンサ出力の波形図の例であり、不要成分除去手段2の入力ωとなる。なお、ωa>ωbとする。
図4(c)の特性図C11は横軸を時間(ms)、縦軸をロール角度θv(deg)で表した積分値復帰の様子の例を示す図であり、不要成分除去手段2の不感帯ωoの領域が無いものとした場合であって、積分値復帰値Δθ1,Δθ2,Δθ3(Δθ1<Δθ2<Δθ3)(deg/sec)をパラメータにして復帰処理した状態を示す。
また、図4(c)の特性図C12は、特性図C11の不感帯ωoの領域を図4(b)の±ωa(deg/sec)とし、かつ、特性図C11と同じ積分値復帰値Δθ1,Δθ2(deg/sec)をパラメータにして復帰処理した状態を示す。
【0019】
角速度センサ1より出力された角速度検出信号(=入力ω)は図4(a)に示す入出力特性の不要成分除去手段2に入力する。この入出力特性は前記のように−ωo〜ωoの範囲の不感帯領域を有しており、|入力ω|≦ωoの範囲については出力ω=0にし、他軸方向成分やオフセット・ノイズ等の不要成分を除去する。この不要成分の除去により、積分値復帰手段4における積分値の復帰値を低減させることが可能となる。
これに対し、入力ω>ωoまたは入力ω<(−ωo)の成分は通過領域の成分であり、それぞれ出力ω=入力ωとする。この不要成分除去手段2を通過した出力ωの信号は演算処理手段3に入力し、ここで積分処理される。積分処理された信号は角度θs(deg)を表す信号として積分値復帰手段4へ送出される。この積分値復帰手段4へ送出される角度θsの信号は入力ωの極性(±)に応じてθs>0またはθs<0となる。
【0020】
上記演算処理手段3の積分処理により得られた角度θs(deg)を表す信号は、前述のように、出力ωを単純に積分した信号のために大きな誤差を含み、実際のロール角度乖離している。この実際のロール角度との乖離を抑制するため、積分値復帰手段4において積分値を0に復帰させる処理を行う。ただし、この積分値を0に復帰させる処理においては前述のように、実際のロール角度との乖離の度合いに応じて適正な積分値復帰値に設定する必要がある。
上記積分値復帰手段4における積分値0復帰の様子を示す図4(c)の特性図C11および特性図C12の見方として、特性図縦軸の積分値(deg)を0にする積分値復帰値が実際のロール角度との乖離を抑制する適正な積分値復帰値となる。従って、不感帯領域が無いものとした場合の特性図C11においては、積分値復帰値をΔθ3に設定しないと実際のロール角度に対し乖離してしまうが、不感帯領域が±ωaの特性図C12においてはこのΔθ3より小さな積分値復帰値Δθ2にすることで積分値が長時間保持され、実際のロール角度との乖離を無くすことができる。
【0021】
以上説明のように、積分値復帰値の設定は不要成分除去手段2の不感帯領域の設定とも関連する。従って、上述の適正な積分値復帰値は設定した不感帯領域(±ωa)を条件の基に、車両ごとに計測等により予め把握し、把握した積分値復帰値を積分値復帰手段4に予め固定値として設定しておく。この設定した固定値の積分値復帰値を例えば前記Δθ2とする。
上記固定値Δθ2を設定された積分値復帰手段4は、演算処理手段3より送出された信号θsが、「θs>0」の場合には、θv=θs−Δθ2とし、「θs<0」の場合には、θv=θs+Δθ2として出力する。この積分値復帰手段4より出力されるθvが実際のロール角度を表す信号となり、必要なロール角度成分の抽出が可能となる。
【0022】
以上のように、この実施の形態1によれば、角速度センサ1より入力した角速度検出信号(入力ω)に含まれる不要成分は不要成分除去手段2の不感帯領域で除去し、この不要成分除去手段2の通過領域を通過し出力された角速度検出信号(出力ω)について積分処理し、この積分処理後に、前記不感帯領域と適合させて定めた固定値の積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール角度θvを表す信号を出力するように構成したので、不要成分除去手段1による他軸方向の角速度成分またはオフセット・ノイズ等の不要成分の除去および積分値零復帰の処理により、積分処理による積分値が発散することなく長時間保持され、車両のロール角度θvを正確に検出することができる。
また、周辺機器の追加を必要とすることなく、単純な構成で車両のロール角度θvを検出することができる。
【0023】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一のものについては同一符号を付してある。
図5において、この図5の構成が図1と異なる点は、入出力特性が図1の不要成分除去手段2と異なる不要成分除去手段31を設けている点、および積分値復帰値が図1の積分値復帰手段4と異なる積分値復帰手段32を設けている点である。以下、これら相違点について主に説明し、図1と同一符号のものに関する説明は省略する。
不要成分除去手段31において、この不要成分除去手段31の入出力特性が図1の不要成分除去手段2の入出力特性と異なる点は、ブロック内に図示するように、不感帯領域(±ωo)を超える成分「|入力ω|>ωo」に対してはオフセット分であるωoを減算して出力ωとする点である。このオフセット分ωoを減算した出力ωを演算処理手段3において積分処理する。以下に上記入出力関係の相違を具体的に説明する。
【0024】
図1の不要成分除去手段2の場合は前述のように、入力ω>ωoについては、出力ω=入力ωとし、|入力ω|≦ωoについては、出力ω=0とし、入力ω<(−ωo)については、出力ω=入力ωとした。
これに対し、不要成分除去手段31の場合は、入力ω>ωoについては、出力ω=入力ω−ωoとし、|入力ω|≦ωoについては、出力ω=0とし、入力ω<(−ωo)については、出力ω=入力ω+ωoとする。
以上のような入出力特性の動作にすることによる利点について図6で説明する。
図6は図5の動作を説明するための図であり、図6(a)は図1の不要成分除去手段2の入出力説明図、図6(b)は不要成分除去手段31の入出力説明図、図6(c)は積分値復帰の説明図である。
また、図6(a),(b)に示す入力ωの波形図は前記図4(b)に例示した螺旋走行時に角速度センサ1より出力される角速度検出信号の波形図と同一とし、不要成分除去手段31の不感帯ωoの領域は図4(b)の波形の±ωa(deg/sec)に設定するものとする。
【0025】
図6(a)において、不要成分除去手段2に図示の波形の信号(ω)が入力された場合、この入力ωに対する不要成分除去手段2の出力ωには螺旋走行で生じる不要な直流(DC)成分(オフセット分)ωaが含まれる。このため、図1の積分値復帰手段4はこの不要な直流成分ωaまで積分値復帰処理して除去する必要が生じ、積分値復帰値を大きくする必要がある。前述のように、積分値復帰値は小さいほど積分値の保持時間が長くなり、ロール角度θvの検出精度を向上できて望ましい。従って、積分値復帰値は極力小さな値にすることが望まれる。
これに対する図6(b)において、この入力ωに対する不要成分除去手段31の出力ωには不要な直流(DC)成分(オフセット分)ωaが減算され除去されている。従って、積分値復帰手段32はこの直流成分ωaが減算された出力ωに対し積分値復帰処理を行えばよい。これにより、積分値復帰手段32に設定する積分値復帰を小さくでき、積分値の保持時間が長くなってロール角度θvの検出精度が向上する。
【0026】
また、図6(c)において、特性図C21は図4(c)の特性図C12と同類の特性図であり、不要成分除去手段31の不感帯ωoの領域をこの特性図C12と同一の±ωa(deg/sec)とし、かつ、積分値復帰値Δθ1(deg/sec)により復帰処理した状態を示す。この積分値復帰値Δθ1は図4(c)の特性図C11および特性図C12と同一のものであり、前記のようにΔθ1<Δθ2<Δθ3の関係にある。
図6(c)に示すように、積分値復帰値Δθ1により積分値0復帰の処理を行うことにより実際のロール角度との乖離を無くすことができる。
これに対し、例えば不要成分除去手段31の不感帯領域が無いものとした場合には、図4(c)の特性図C11と同様になり、積分値復帰値をΔθ3に設定しないと実際のロール角度に対し乖離してしまう。
【0027】
図6(c)の特性図C21を図4(c)の特性図C11および特性図C12と比較すると、Δθ1〜Δθ3の中の最小値の積分値復帰値Δθ1を設定することで実際のロール角度との乖離を無くすことができる。また、積分値復帰値が小さな値になることにより積分値の保持効果が図1の構成に対しさらに改良される。
このように、積分値復帰値を小さくできた理由は前述のように、不要成分除去手段31において不感帯領域を設定し、さらに、不要な直流(DC)成分(オフセット分)ωaを減算し除去していることによる。
なお、上記積分値復帰値Δθ1は設定した不感帯領域(±ωa)を条件の基に、車両ごとに計測等により予め把握し、固定値として予め設定しておく点については図1の構成と同様である。
上記小さな値の固定値Δθ1を設定された積分値復帰手段32は、演算処理手段3より送出された信号θsが、「θs>0」の場合には、θv=θs−Δθ1とし、「θs<0」の場合には、θv=θs+Δθ1として出力する。この積分値復帰手段4より出力されるθvが実際のロール角度を表す信号となり、図1の構成に比し精度を向上したロール角度成分の抽出が可能となる。
【0028】
以上のように、この実施の形態2によれば、不要成分除去手段31において、不感帯領域を超える入力ωに対しては直流(DC)成分を減算して出力ωとし、この出力ωを演算処理手段3において積分処理し、この積分処理後に、前記不感帯領域と適合させて定めた固定値の積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール角度θvを表す信号を出力するように構成したので、積分値の増加が抑制され、積分値復帰手段32は直流成分が減算された出力ωに対し積分値復帰処理を行えばよく、これにより、積分値復帰手段32に設定する積分値復帰を小さくでき、積分値の保持時間が実施の形態1に比し一層長くなってロール角度θvの検出精度を向上することができる。
【0029】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。なお、図1または図5と同一のものについては同一符号を付してある。
図7において、この図7の構成が図5と異なる点は、入出力特性が図5の不要成分除去手段31と異なる不要成分除去手段41を設けている点である。以下、この相違点について主に説明し、図1または図5と同一符号のものに関する動作説明等は省略する。
不要成分除去手段41において、この不要成分除去手段41の入出力特性が図5の不要成分除去手段31の入出力特性と異なる点は以下の通りである。
図5の不要成分除去手段31は不感帯領域(±ωo)を超える成分「|入力ω|>ωo」に対してはオフセット分であるωoを一律に減算して出力ωとする。これに対し、不要成分除去手段41は不感帯領域を超える成分に対し、入力ωが大きくなるに連れて減算量(オフセット除去量)を最大値から徐々に小さくして出力ωとする。
【0030】
不要成分除去手段41において、例えば、ワーストケースの螺旋走行で生じる不要な直流成分(オフセット成分)のレベルを想定し、このレベルの範囲を不感帯領域として設定する。この不感帯領域の設定レベルをω1とする。また、角速度センサ1の最大出力レベルをω2とする。
上記条件において、|入力ω|≦ω1については減算量を最大値にし、出力ω=0とし、|入力ω|=ω2(最大出力レベル)については減算量を「0」にし、出力ω=入力ω(=ω2)とする。
また、ω2>入力ω>ω1および(−ω2)<入力ω<(−ω1)の各範囲については減算量を徐々に小さくし、
ω2>入力ω>ω1については、下記「数1」式より出力ωを求める。
【0031】
出力ω={ω2/(ω1−ω2)}・(ω1−入力ω) (数1)
【0032】
また、(−ω2)<入力ω<(−ω1)については、下記「数2」式より出力ωを求める。
【0033】
出力ω={ω2/(ω1−ω2)}・(−ω1−入力ω) (数2)
【0034】
以上説明のように、不要成分除去手段41の入出力特性において、不要な成分を多く含む角速度の小さい領域では減算量を大きくし、実際のロールオーバ成分が多く含まれるような角速度の大きい領域では減算量を小さくすることにより、車両のロールオーバ成分がより正確に算出できることとなる。
【0035】
以上のように、この実施の形態3によれば、不要成分除去手段41において、不感帯領域を超える入力ωに対し、入力ωが大きくなるに連れて減算量を最大値から徐々に小さくして出力ωとし、この出力ωを演算処理手段3において積分処理し、この積分処理後に、固定値の積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール角度θvを表す信号を出力するように構成したので、不要な成分を多く含む角速度の小さい領域では減算量が大きくなり、実際のロールオーバ成分が多く含まれるような角速度の大きい領域では減算量は小さくなるので、これにより車両のロールオーバ成分がより正確に算出でき、ロール角度θvの検出精度を一層向上することができる。
【0036】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。なお、図1または図5等と同一のものについては同一符号を付してある。
図8において、この図8の構成が図5等と異なる点は、入出力特性が異なる不要成分除去手段51を設けている点である。この不要成分除去手段51は前述の実施の形態1(図1)、実施の形態2(図5)および実施の形態3(図7)それぞれの不要成分除去手段2,31,41の入出力特性を組み合わせたものでものである。
【0037】
以下、相違点である不要成分除去手段51の入出力特性について主に説明し、図1または図5等と同一符号のものに関する動作説明等は省略する。
以下に、不要成分除去手段51の入出力特性を図9で説明する。
図9は不要成分除去手段51の入出力特性の説明図であり、図9(a)は実施の形態3(図7)における不要成分除去手段41の入出力特性図、図9(b)はこの実施の形態4(図8)における不要成分除去手段51の入出力特性図である。
図9(a)に示す図7の不要成分除去手段41においては前述のように、不感帯領域を超える成分に対し、入力ωが大きくなるに連れて減算量(オフセット除去量)を最大値から徐々に小さくして出力ωとする。即ち、入出力特性図を領域に分けると、オフセット分を減算して出力ωを0にする領域と、減算量を最大値から徐々に小さく(減衰)していく2つの領域とに分けられる。
【0038】
これに対し、図9(b)に示すこの実施の形態4の不要成分除去手段51においては、上記2つの領域の他に、入出力レベルを1対1(出力ω=入力ω)の関係にした領域を加え、3領域に分けている。即ち、図9(b)に示すように、螺旋走行モードはオフセット分を減算して出力ωを0にする領域に該当し、凸凹道等のラフロード走行モードは減算量を最大値から徐々に小さく(減衰)していく領域(減衰領域)に該当し、ロールオーバモードは入出力レベルを1対1(出力ω=入力ω)の関係にした領域に該当する。
これら各領域において、オフセット分を減算して出力ωを0にする螺旋走行モードの領域は実施の形態2(不要成分除去手段31)の形態であり、減算量を最大値から徐々に小さく(減衰)していくラフロード走行モードの領域は実施の形態3(不要成分除去手段41)の形態であり、入出力レベルを1対1(出力ω=入力ω)の関係にしたロールオーバモードの領域は実施の形態1(不要成分除去手段2)の形態である。
【0039】
以上のように、螺旋走行や角速度センサ1のノイズレベルの角速度成分については通常走行状態として不感帯とし、角速度が大きい領域では、ラフロード走行状態のようにロール成分とノイズ成分とが混在した状態として角速度成分を減衰させる。さらに角速度が大きい領域については、ロールオーバモードとして角速度を減衰させことなく出力する。
また、上記ラフロード走行モードに対応する領域では、発生する角速度の大きさに応じて有効成分(ロール成分)の割合が調整される。
上記入出力特性にすることにより、積分値復帰手段32における積分値の復帰処理を小さくし、ロール角度を表す積分値の長時間保持が可能となる。これにより、車両のロールオーバを表すロール角度の検出精度が向上し、より正確なロールオーバ判定に寄与するこができる。
【0040】
以上のように、この実施の形態4によれば、不要成分除去手段51の入出力特性は、直流分を減算して出力ωを0にする領域と、入力ωが大きくなるに連れて減算量を最大値から徐々に小さくしていく領域と、入出力レベルを1対1(出力ω=入力ω)の関係にした領域の3領域に分けられ、螺旋走行モードでは直流分を減算して出力ωを0にし、凸凹道等のラフロード走行モードでは減算量を最大値から徐々に小さくし、ロールオーバモードでは入出力レベルを1対1(出力ω=入力ω)の関係にした構成としたので、ノイズ成分や螺旋走行においては不感帯となり、角速度が大きく、ロール成分とノイズ成分とが混在するラフロード走行においては入力ωに応じて減算量が最大値から徐々に小さくなり、さらに角速度が大きいロールオーバモードにおいては角速度を減衰させことなく出力されるので、積分値復帰手段32における積分値の復帰処理を小さくし、ロール角度θvの長時間保持が可能となる。これにより、車両のロールオーバを表すロール角度θvの検出精度を向上するこができる。
【0041】
また、上記ラフロード走行モードに対応する領域では、発生する角速度の大きさに応じて有効成分(ロール成分)の割合を調整することができる。
また、上記構成により、実施の形態3の構成に比し、ソイルトリップ、エンバンクメント、ランプテストでさらに積分ピーク値を改善できる。
【0042】
実施の形態5.
図10はこの発明の実施の形態5による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。なお、図1または図7等と同一のものについては同一符号を付してある。
図10において、この図10の構成が図1または図7等と異なる点は、積分値復帰値の可変設定を可能にした積分値復帰手段61と、角速度センサ1の検出レベルに応じてこの積分値復帰手段61に積分値復帰値を設定する角速度レベル判定手段62とを設けている点である。以下、この相違点について主に説明し、図1または図7等と同一符号のものに関する動作説明等は省略する。
以下に積分値復帰値の可変について図11で説明する。
図11は積分値復帰手段61に対する角速度レベル判定手段62による積分値復帰値設定の説明図であり、角速度センサ1から送出される角速度検出信号(=入力ω)に対する積分値復帰値(減算量)Δθ(deg/sec)の関係を示す。
【0043】
図11において、入力ωに対し、角速度ω3(第2の角速度値)および角速度ω4(第3の角速度値)を設定する。ここで、ω3は螺旋走行またはラフロード走行では発生しないレベルの角速度とし、ω4は角速度センサ1の最大出力レベルの角速度とする。
上記設定したω3に対し積分値復帰値(減算量)Δθ=Δθpとし、ω4に対し積分値復帰値(減算量)Δθ=Δθqとする。
ここで、Δθpはワーストケースの螺旋走行を想定した最大値にし、Δθqは積分値復帰値(減算量)Δθ=0とする。
また、|入力ω|≦ω3では積分値復帰値(減算量)Δθ=Δθpとする。
また、ω4≧|入力ω|>ω3の範囲では、予め設定した低減特性に従い最大値から零の間の積分値復帰値(減算量)Δθとする。この低減特性を例えば下記「数3」式に従った特性とする。
【0044】
Δθ={Δθp/(−ω4+ω3)}・(|入力ω|−ω4) (数3)
【0045】
上記積分値復帰値(減算量)の設定を纏めると、入力ωがω3まではΔθを一定で、かつ最大値のΔθpとし、ω3を超えω4以下の範囲では前式「数3」に従い徐々にΔθを小さくし、ω4ではΔθを0にする。この関係を走行モードに対応させると、入力ωがω3までは螺旋走行モード、ω3からω4の範囲はラフロード走行モード、また、ω4はロールオーバモードとなる。なお、ω4は前記のように角速度センサ1の最大出力レベルとしたので、この前提のもとではロールオーバモードであっても「ω4以上」のレベルになることはない。
【0046】
角速度レベル判定手段62は角速度センサ1からの入力ωをもとに、前記図11に基づいた積分値復帰値(減算量)Δθを積分値復帰手段61に対し設定し、積分値復帰手段61は設定された積分値復帰値(減算量)Δθを用いて演算処理手段3からの角度θsの信号に対し積分値0復帰の処理を行う。例えば「θs>0」において、積分値復帰値(減算量)Δθ=Δθpが設定されたときには、積分値復帰手段61はその出力θvを、θv=θs−Δθpとし、「θs<0」において、積分値復帰値(減算量)Δθ=Δθpが設定されたときには、積分値復帰手段61はその出力θvを、θv=θs+Δθp(実質的には減算)とする。
また、積分値復帰値(減算量)Δθ=0が設定されたときには、積分値復帰手段61はその出力θvを、θv=θsとする。
また、0<Δθ<Δθpの中で積分値復帰値(減算量)Δθが設定されたときには、積分値復帰手段61はθsが、「θs>0」であればθsからその設定値を減算し、「θs<0」であればθsに設定値を加算して出力θvとする。
【0047】
以上のように、この実施の形態5によれば、積分値復帰値の可変設定を可能にした積分値復帰手段61と、角速度センサ1の検出レベルに応じてこの積分値復帰手段61に積分値復帰値を設定する角速度レベル判定手段62とを設け、角速度(入力ω)が小さく車両の回転状態が発生していない状態では、積分値が発散しないように大きな積分値復帰値により積分値零復帰処理を行い、角速度が大きい状態では車両の回転状態が継続しているものとして積分値復帰値を小さく設定するように構成したので、不要な成分により積分値を発散させることなく長時間保持でき、ロール角度の検出精度が向上して正確なロール角度θvを検出することができる。
【0048】
また、不要な成分を含む螺旋走行モードでは積分値復帰値を最大値(Δθp)に設定し、ロールオーバ領域では積分値復帰値を「0」に設定するので、これら螺旋走行モードまたはロールオーバ領域において積分値を発散させることなく長時間保持でき、正確なロール角度θvを検出することができる。
また、他軸方向の角速度成分が混在するラフロード走行モードの領域では、「数3」式のように予め設定した低減特性に従い最大値から零の間の中間的な積分値復帰値を設定するので、発生する角速度の大きさに応じて有効成分(積分値復帰値)の割合を調整することができ、これにより、積分値が発散することなく長時間保持され、正確なロール角度θvを検出することができる。
また、角速度の大きなロールオーバモードにおいては積分値復帰値が小さくまたは零になり、積分値θsの損失分が低減される。
【0049】
実施の形態6.
前記実施の形態1乃至実施の形態5では車両用傾斜角度検出装置について説明したが、これら車両用傾斜角度検出装置は下記のようにロールオーバ判定装置として使用することができる。
図12はこの発明の実施の形態6によるロールオーバ判定装置の構成を示すブロック図である。
図12において、このロールオーバ判定装置は車両用傾斜角度検出装置71に対しロールオーバ判定手段72を設けている。このうち、車両用傾斜角度検出装置71は実施の形態1乃至実施の形態5で説明したいずれのものであってもよい。図12の車両用傾斜角度検出装置71は実施の形態2または実施の形態3の構成にしている。
【0050】
以下、実施の形態2の車両用傾斜角度検出装置を使用したロールオーバ判定装置の動作について図13を併用して説明する。
図13は実施の形態2の車両用傾斜角度検出装置を使用したロールオーバ判定装置の動作フロー図である。
図13のステップST1において、車両用傾斜角度検出装置71の不要成分除去手段31に角度検出センサ1から「入力ω」が生じた場合、不要成分除去手段31はステップST2において「入力ω>ωo」の場合(ステップST2―Yes)、ステップST3で「出力ω=入力ω−ωo」にする。これに対し、不要成分除去手段31はステップST2において「入力ω>ωo」でなく(ステップST2―No)、かつ、ステップST4において「|入力ω|≦ωo」の場合(ステップST4―Yes)、ステップST5で「出力ω=0」にする。また、不要成分除去手段31はステップST4において「|入力ω|≦ωo」でない場合(ステップST4―No)、ステップST6で「出力ω=入力ω+ωo」にする。この「ステップST4―No」は「入力ω<(−ωo)」を意味する。
【0051】
上記ステップST3、ステップST5またはステップST6の出力ωは演算処理手段3へ送出される。この演算処理手段3はステップST7で出力ωについて積分処理し積分出力θsを積分値復帰手段32へ送出する。積分値復帰手段32はステップST8において「θs>0」の場合(ステップST8―Yes)、ステップST9で「ロール角度θv=θs−Δθ1」にする。これに対し、積分値復帰手段32は「θs>0」でなく(ステップST8―No)、かつ、ステップST10において「θs<0」の場合(ステップST10―Yes)、ステップST11で「ロール角度θv=θs+Δθ1」にする。
また、積分値復帰手段32はステップST10において「θs<0」でない場合(ステップST10―No)、この場合はθs=0であり、「ロール角度θv=0」にする。
上記ステップST9、ステップST10―NoまたはステップST1のロール角度θvはロールオーバ判定手段72へ送出される。
【0052】
このロールオーバ判定手段72には上記ロール角度θvの信号とともに、角速度センサ1より角速度検出信号(ω)も入力し、また、ロールオーバ判定の基準となる閾値θthrが予め設定されている。上記ロール角度θvの信号および角速度検出信号(ω)が入力されたロールオーバ判定手段72はステップST12において「θv>θthr」の場合(ステップST12―Yes)、ステップST13で「エアバッグ展開」の判定をする。
この判定結果に従い、車両側面のエアバッグに対しエアバッグ展開制御(図示せず)が作動し、ロールオーバ時の乗員を保護する。
上記説明を前記図2(a)(実施の形態1)に当て嵌めると、車両用傾斜角度検出装置71とロールオーバ判定手段72とからなる部分が図2(a)のエアバッグコントロールユニット12となり、このエアバッグコントロールユニット12が「θv>θthr」と判定したときには、側面のエアバッグ13に対し駆動信号を出力し、エアバッグ13を展開制御する。
上記判定に対し、ロールオーバ判定手段72はステップST12において「θv>θthr」でない場合(ステップST12―No)、「エアバッグ展開」の判定をすることなく新たなθvの入力あるまで待機する。
【0053】
次に、実施の形態3の車両用傾斜角度検出装置を使用した場合のロールオーバ判定装置の動作について図14で説明する。なお、図12を兼用する。
図14は実施の形態3の車両用傾斜角度検出装置を使用したロールオーバ判定装置の動作フロー図である。
図14のステップST11において、車両用傾斜角度検出装置71の不要成分除去手段41に角度検出センサ1から「入力ω」が生じた場合、不要成分除去手段41はステップST12において「入力ω>ω1」の場合(ステップST12―Yes)、ステップST13で図示の計算式により出力ωを求める。この計算式は前記式「数1」である。
これに対し、不要成分除去手段41はステップST12において「入力ω>ω1」でなく(ステップST12―No)、かつ、ステップST14において「|入力ω|≦ω1」の場合(ステップST14―Yes)、ステップST15で「出力ω=0」にする。
【0054】
また、不要成分除去手段41はステップST14において「|入力ω|≦ω1」でない場合(ステップST14―No)、ステップST16で図示の計算式により出力ωを求める。この計算式は前記式「数2」である。この「ステップST14―No」は「入力ω<(−ω1)」を意味する。
上記ステップST13、ステップST15またはステップST16の出力ωは演算処理手段3へ送出される。
以下のステップST17〜ステップST23については図13のST7〜ステップST13と同一動作のため説明は省略する。
【0055】
以上のように、この実施の形態6によれば、実施の形態1乃至実施の形態5の車両用傾斜角度検出装置を使用してロールオーバ判定装置を構成したので、高精度の車両用傾斜角度検出装置71において検出された正確なロール角度θvをもとにロールオーバ判定が行われ、車両のロールオーバ時にはエアバッグが展開制御されて乗員を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】 この発明の実施の形態1による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による車両用傾斜角度検出装置における角度センサの測定対象および車両の各種走行モードにおける角速度成分の説明図であり、(a)は角度センサの測定対象の説明図、(b)は旋回走行モードにおいて発生する角速度成分の説明図、(c)は螺旋走行モードにおいて発生する角速度成分の説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による車両用傾斜角度検出装置における積分処理の説明図であり、(a)は積分処理の構成図、(b)は誤差発生の説明図、(c)は積分値復帰の説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態1による車両用傾斜角度検出装置の動作を説明するための図であり、(a)は不要成分除去手段の入出力特性図、(b)は螺旋走行時に角速度センサより出力される角速度検出信号の一例を示す波形図、(c)は積分値復帰の説明図である。
【図5】 この発明の実施の形態2による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図6】 この発明の実施の形態2による車両用傾斜角度検出装置の動作を説明するための図であり、(a)は図1の不要成分除去手段の入出力説明図、(b)は図5の不要成分除去手段の入出力説明図、(c)は積分値復帰の説明図である。
【図7】 この発明の実施の形態3による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図8】 この発明の実施の形態4による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図9】 この発明の実施の形態4による車両用傾斜角度検出装置における不要成分除去手段の入出力特性の説明図であり、(a)は実施の形態3(図7)における不要成分除去手段の入出力特性図、(b)はこの実施の形態4(図8)における不要成分除去手段の入出力特性図である。
【図10】 この発明の実施の形態5による車両用傾斜角度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図11】 この発明の実施の形態5による車両用傾斜角度検出装置における積分値復帰手段に対する角速度レベル判定手段による積分値復帰値設定の説明図である。
【図12】 この発明の実施の形態6によるロールオーバ判定装置の構成を示すブロック図である。
【図13】 この発明の実施の形態6によるロールオーバ判定装置の動作フロー図である。
【図14】 この発明の実施の形態6によるロールオーバ判定装置の他の動作フロー図である。

Claims (10)

  1. 車両のロール方向に発生する角速度を検出する角速度センサと、
    ノイズ等の不要成分を除去する不感帯領域設定用の第1の角速度値が予め設定され、前記角速度センサより入力した角速度検出信号が前記第1の角速度値以下の角速度レベルの信号のときには出力信号のレベルを零または減衰する不感帯領域と、前記第1の角速度値を超える角速度レベルの角速度検出信号は通過させて出力する通過領域とを有し、不要成分を除去した角速度検出信号を出力する不要成分除去手段と、
    前記不要成分除去手段より入力した角速度検出信号を積分処理し、角度を表す積分値の信号を出力する演算処理手段と、
    固定値の積分値復帰値が予め設定され、前記演算処理手段より入力した信号の角度を表す積分値が発散しないように前記積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール方向の傾斜角度を表す信号を出力する積分値復帰手段とを備えた車両用傾斜角度検出装置。
  2. 不要成分除去手段は、通過領域を通過する角速度検出信号に対し予め設定した角速度レベル値について減算処理して出力することを特徴とする請求項1記載の車両用傾斜角度検出装置。
  3. 不要成分除去手段の通過領域に減衰領域が設定され、この減衰領域を通過する角速度検出信号に対し予め設定した角速度レベル値について減算処理することを特徴とする請求項1記載の車両用傾斜角度検出装置。
  4. 請求項1記載の車両用傾斜角度検出装置を使用したロールオーバ判定装置。
  5. 車両のロール方向に発生する角速度を検出する角速度センサと、
    ノイズ等の不要成分を除去する不感帯領域設定用の第1の角速度値が予め設定され、前記角速度センサより入力した角速度検出信号が前記第1の角速度値以下の角速度レベルの信号のときには出力信号のレベルを零または減衰する不感帯領域と、前記第1の角速度値を超える角速度レベルの角速度検出信号は通過させて出力する通過領域とを有し、不要成分を除去した角速度検出信号を出力する不要成分除去手段と、
    前記不要成分除去手段より入力した角速度検出信号を積分処理し、角度を表す積分値の信号を出力する演算処理手段と、
    前記演算処理手段より入力した信号の角度を表す積分値が発散しないように積分値復帰値を用いて積分値零復帰の処理を行い、車両のロール方向の傾斜角度を表す信号を出力する積分値復帰手段と、
    前記角速度センサより入力した角速度検出信号の角速度レベルを判定し、判定した角速度レベルが大きいほど小さな積分値復帰値を前記積分値復帰手段に設定する角速度レベル判定手段とを備えた車両用傾斜角度検出装置。
  6. 不要成分除去手段は、通過領域を通過する角速度検出信号に対し予め設定した角速度レベル値について減算処理して出力することを特徴とする請求項5記載の車両用傾斜角度検出装置。
  7. 不要成分除去手段の通過領域に減衰領域が設定され、この減衰領域を通過する角速度検出信号に対し予め設定した角速度レベル値について減算処理することを特徴とする請求項5記載の車両用傾斜角度検出装置。
  8. 不感帯領域の上限を表す第2の角速度値と、車両の横転領域に属し、前記第2の角速度値より大きい値の第3の角速度値とが角速度レベル判定手段に予め設定され、角速度レベル判定手段は、判定した角速度検出信号の角速度レベルが第2の角速度値以下のときには、積分値復帰手段に対し積分値復帰値を予め定めた最大値に設定し、前記判定した角速度検出信号の角速度レベルが第3の角速度値以上のときには、積分値復帰手段に対し積分値復帰値を零に設定することを特徴とする請求項5記載の車両用傾斜角度検出装置。
  9. 角速度レベル判定手段は、判定した角速度検出信号の角速度レベルが第2の角速度値から第3の角速度値の間においては予め設定した低減特性に従い最大値から零の間の積分値復帰値を積分値復帰手段に設定することを特徴とする請求項8記載の車両用傾斜角度検出装置。
  10. 請求項5記載の車両用傾斜角度検出装置を使用したロールオーバ判定装置。
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