JP4675695B2 - メチルチオ化トリアジンの分解能を有する新規な微生物 - Google Patents
メチルチオ化トリアジンの分解能を有する新規な微生物 Download PDFInfo
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Description
以上の様に、微生物を用いたメチルチオ化トリアジンの分解についてはいくつかの報告がなされてはいるものの、単離株の菌学的検討が十分でない、メチルチオ化トリアジンの分解そのものの証明が提示されていない、生菌体での分解が示されていない等、現時点でのバイオレメディエーションに利用できる菌株が存在するとは言えないのが現状である。
即ち、本発明は、メチルチオ化トリアジン系化合物、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン系化合物又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン系化合物、より好ましくはシメトリン分解能を有するロドコッカス属の細菌、より詳細には、16S rRNA遺伝子が、配列表の配列番号1に記載する塩基配列、又はメチルチオ化トリアジン分解能力を損なわないことを限度として1個若しくは複数個の塩基が、欠失、置換、若しくは付加することにより配列表の配列番号1に記載された塩基配列と95%以上の相同性を有する塩基配列を有することを特徴とするメチルチオ化トリアジン系化合物、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン系化合物又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン系化合物、より好ましくはシメトリン分解能を有するロドコッカス属の細菌に関する。さらに詳細には、後述する菌学的性質を有することを特徴とするメチルチオ化トリアジン、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン系化合物又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン系化合物、より好ましくはシメトリン分解能を有するロドコッカス属の細菌に関する。当該ロドコッカス属に属するメチルチオ化トリアジン分解菌の具体例としては、ロドコッカス sp. FJ1117YT株(FERM P−20535)が挙げられる。
また、本発明は、メチルチオ化トリアジン分解能を有するロドコッカス属に属する細菌又はバシラス属好ましくはバシラス属セレウス、バシラス属チューリンゲーンシス、及びバシラス属マイコイデスのいずれかに属する細菌、及び当該細菌の生育が許容される担体を含有してなるメチルチオ化トリアジン系化合物、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン系化合物又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン系化合物を分解するための組成物に関する。より詳細には、前記した本発明のメチルチオ化トリアジン分解菌、及び当該細菌の生育が許容される担体を含有してなるメチルチオ化トリアジン系化合物、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン系化合物又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン系化合物を分解するための組成物に関する。
また、本発明は、メチルチオ化トリアジン分解能を有するロドコッカス属に属する細菌又はバシラス属好ましくはバシラス属セレウス、バシラス属チューリンゲーンシス、及びバシラス属マイコイデスのいずれかに属する細菌、及び当該細菌の生育が許容される担体を含有してなるメチルチオ化トリアジン系化合物、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン系化合物又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン系化合物を含有する環境を浄化するための組成物に関する。より詳細には、前記した本発明のメチルチオ化トリアジン分解菌、及び当該細菌の生育が許容される担体を含有してなるメチルチオ化トリアジン系化合物、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン系化合物又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン系化合物を含有する環境を浄化するための組成物に関する。
本発明におけるメチルチオ化トリアジン分解菌、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン分解菌又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン分解菌のひとつはロドコッカス属に属する細菌であって、しかもその16S rRNA遺伝子の塩基配列中に後述する配列表の配列番号1に記載する塩基配列を含有していることを特徴とするものである。当該塩基配列は、ロドコッカス属の特徴、及び本発明の分解菌のメチルチオ化トリアジン分解能力を損なわないことを限度として、1個又は複数個の塩基が、欠失、置換又は付加されることにより配列表の配列番号1に記載される塩基配列に比べて、少なくとも95%以上、好ましくは98%以上の相同性を有するものが含まれる。
また、本発明におけるメチルチオ化トリアジン分解菌、好ましくはメチルチオ化s−トリアジン分解菌又はメチルチオ化−1,2,4−トリアジン分解菌の他の例としては、バシラス属好ましくはバシラス属セレウス、バシラス属チューリンゲーンシス、及びバシラス属マイコイデスのいずれかに属する細菌であって、しかもその16S rRNA遺伝子の塩基配列中に後述する配列表の配列番号2に記載する塩基配列を含有していることを特徴とするものである。当該塩基配列は、バシラス属好ましくはバシラス属セレウス、バシラス属チューリンゲーンシス、及びバシラス属マイコイデスのいずれかの特徴、及び本発明の分解菌のメチルチオ化トリアジン分解能力を損なわないことを限度として1個又は複数個の塩基が、欠失、置換又は付加されることにより配列表の配列番号2に記載される塩基配列に比べて、少なくとも95%以上、好ましくは98%以上の相同性を有するものが含まれる。
A.形態的性質(使用培地:Oxoid製nutrient agar、
培養温度:30℃)
(1) 細胞形態:不規則桿菌(細胞の分岐有り)
(2) 大きさ :0.8〜1.0μm×2.0〜4.0μm(培養24時間後)
(3) 胞子 :なし
(4) 運動性 :なし
培養温度:30℃、培養時間:48時間)
(1) コロニー直径:1.0〜2.0mm
(2) 色調 :ピンク色
(3) 形 :円形
(4) 隆起状態 :レンズ状
(5) 周縁 :菌糸状
(6) 表面の形状 :スムーズ
(7) 透明度 :不透明
(8) 粘稠度 :バター様
(1) グラム染色 : +
(2) 37℃における生育 : +
(3) 45℃における生育 : −
(4) カタラーゼ : +
(5) オキシダーゼ : −
(6) グルコースからの酸/ガス産生 : −/−
(7) O/Fテスト : −/−
(1) 硝酸塩還元 : −
(2) ピラジナミダーゼ : −
(3) ピロリドニルアリルアミダーゼ : −
(4) アルカリフォスファターゼ : −
(5) β−グルクロニダーゼ : −
(6) β−ガラクトシダーゼ : −
(7) α−グルコシダーゼ : +
(8) N−アセチル−β−グルコサミニダーゼ : −
(9) エスクリン : −
(10) ウレアーゼ : −
(11) ゼラチン加水分解 : −
(12) グルコース資化性 : −
(13) リボース資化性 : −
(14) キシロース資化性 : −
(15) マンニトール資化性 : −
(16) マルトース資化性 : −
(17) 乳糖資化性 : −
(18) 白糖資化性 : −
(19) グリコーゲン資化性 : −
A.形態的性質(使用培地:Oxoid製nutrient agar、
培養温度:30℃)
(1) 細胞形態 :桿菌
(2) 大きさ :1.0μm×2.0〜3.0μm(培養24時間後)
(3) 胞子 :有り
(4) 運動性 :有り
培養温度:30℃、培養時間:24時間)
(1) コロニー直径:2.0〜3.0mm
(2) 色調 :クリーム色
(3) 形 :円形
(4) 隆起状態 :扁平
(5) 周縁 :波状
(6) 表面の形状 :ラフ
(7) 透明度 :不透明
(8) 粘稠度 :バター様
(1) グラム染色 : +
(2) 37℃における生育 : +
(3) 45℃における生育 : −
(4) カタラーゼ : +
(5) オキシダーゼ : −
(6) グルコースからの酸/ガス産生 : −/−
(7) O/Fテスト : −/−
(1) グリセロール資化性 : +
(2) エリスリトール資化性 : −
(3) D−アラビノース資化性 : −
(4) L−アラビノース資化性 : −
(5) リボース資化性 : +
(6) D−キシロース資化性 : −
(7) L−キシロース資化性 : −
(8) アドニトール資化性 : −
(9) β−メチル−D−キシロース資化性 : −
(10) ガラクト−ス資化性 : −
(11) グルコース資化性 : +
(12) フラクトース資化性 : +
(13) マンノース資化性 : −
(14) ソルボース資化性 : −
(15) ラムノース資化性 : −
(16) ズルシトール資化性 : −
(17) イノシトール資化性 : −
(18) マンニトール資化性 : −
(19) ソルビトール資化性 : −
(20) α−メチル−D−マンノース資化性 : −
(21) α−メチル−D−グルコース資化性 : −
(22) N−アセチルグルコサミン資化性 : +
(23) アミグダリン資化性 : −
(24) アルブチン資化性 : +
(25) エスクリン資化性 : +
(26) サリシン資化性 : +
(27) セロビオース資化性 : −
(28) マルトース資化性 : +
(29) 乳糖資化性 : −
(30) メリビオース資化性 : −
(32) トレハロース資化性 : +
(33) イヌリン資化性 : −
(34) メレチトース資化性 : −
(35) ラフィノース資化性 : −
(36) 澱粉資化性 : +
(37) グリコーゲン資化性 : +
(38) キシリトール資化性 : −
(39) ゲンチオビオース資化性 : −
(40) D−ツラノース資化性 : −
(41) D−リキソース資化性 : −
(42) D−タガトース資化性 : −
(43) D−フコース資化性 : −
(44) L−フコース資化性 : −
(45) D−アラビトール資化性 : −
(46) L−アラビトール資化性 : −
(47) グルコネート資化性 : −
(48) 2−ケトグルコン酸資化性 : −
(49) 5−ケトグルコン酸資化性 : −
(50) β−ガラクトシダーゼ : −
(51) アルギニンジヒドロラーゼ : −
(52) リシンデカルボキシラーゼ : −
(53) オルニチンデカルボキシラーゼ : −
(54) クエン酸の利用性 : −
(55) 硫化水素産生 : −
(56) ウレアーゼ : −
(57) トリプトファンデアミナーゼ : −
(58) インドール産生 : −
(59) アセトイン産生 : −
(60) ゼラチナーゼ : +
(61) 硝酸塩還元 : +
また、後記する実施例3に記載の方法により、培養液中のシメトリン濃度を顕著に低下させた3株(図6のC)を得た。この3株の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列を決定したところ、各株につき485塩基の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列が3株間でその全てが一致したことから、これらは同一の菌種と判断された。このようにして、本発明の新規メチルチオ化トリアジン分解菌株JUN7株が見出された。
図7のグラフの左縦軸は培養液中のシメトリン濃度(mg/L)を示し、右縦軸は培養液の660nmでの濁度を示し、横軸は培養時間(日)を示す。図7の黒丸印(●)は対照のL字管における培養液中のシメトリン濃度を示し、白丸印(○)はJUN7株を植菌したL字管における培養液中のシメトリン濃度を示す。また図7の黒四角印(■)は対照のL字管における培養液の660nmでの濁度を示し、白四角印(□)はJUN7株を植菌したL字管の培養液の660nmでの濁度を示す。
図7のA及びBで明らかな様に、培地の初期pHを4とした場合、JUN7株の生育は極めて僅かで、シメトリンをほとんど分解することができなかった。培地の初期pHを5とした場合、JUN7株は培養後期に僅かに生育し、シメトリンを若干分解した。培地の初期pHを6、7、7.6、9あるいは10とした場合、JUN7株は旺盛に生育し、シメトリンをよく分解した。一方、JUN7株を植菌していない対照ではいずれのpHでも培地中シメトリン濃度の低下は認められなかった。以上の結果から、JUN7株のシメトリン分解能は培地の初期pHが5以上、望ましくは6以上で機能し、pH10でも十分な機能を保つことが判明した。
図8のグラフの縦軸は培養液中のジメタメトリン濃度(mg/L)を示し、横軸は培養時間(日)を示す。図8の黒丸印(●)は対照のL字管における培養液中のジメタメトリン濃度を示し、白丸印(○)はJUN7株を植菌したL字管における培養液中のジメタメトリン濃度を示す。
図9のグラフの縦軸は培養液中のプロメトリン濃度(mg/L)を示し、横軸は培養時間(日)を示す。図9の黒丸印(●)は対照のL字管における培養液中のプロメトリン濃度を示し、白丸印(○)はJUN7株を植菌したL字管における培養液中のプロメトリン濃度を示す。
図8及び図9で示される様に、JUN7株はジメタメトリンとプロメトリンも分解できることが明らかとなった。
以上のことから、シメトリン分解能を有する細菌は、ジメタメトリン、プロメトリンを含む全てのメチルチオ化トリアジン、好ましくはメチルチオ化s−トリアジンの分解が可能であると考えられることがわかった。
さらに、WO2000/078923号に記載されているような装置を用いて、本発明の微生物をその分解菌保持担体に担持させて使用することもできる。
また、本発明は、このような環境汚染物質の無害化及び浄化のために適した組成物を提供するものであり、当該組成物は、メチルチオ化トリアジン分解能を有するロドコッカス属に属する細菌又はバシラス属好ましくはバシラス属セレウスに属する細菌、及び当該細菌の生育が許容される担体を含有してなるものである。当該担体としては、前記したメチルチオ化トリアジン系化合物を分解するための組成物における担体と同様なものを使用することができる。
発明者らは、以下の様にして、本発明に係わる新規メチルチオ化トリアジン分解菌ロドコッカス sp. FJ1117YT株を単離した。図1に示すように、土壌層タンク1に土壌を30〜50g入れて集積用土壌層2を形成した。そして、適量のシメトリンを炭素源及び窒素源として加えた滅菌済の無機塩培地200mlを還流液3として貯液タンク4から集積用土壌層2に還流させた。用いた無機塩培地の組成は次の表3の通りである。
そこでこの装置Cの還流液1mlを、あらかじめシメトリンを5mg/L含む無機塩培地7mlを分注しておいたL字管に接種し、20℃にて振とう培養を行った。この培養液のサンプリングを経日的に行い、孔径0.45μmのフィルターでろ過後、HPLCにてシメトリン濃度の測定を行った。また装置Cの還流液を加えていないL字管も用意し、対照とした。それぞれ3本ずつ試験した平均を図3に示す。対照のL字管では培養液中のシメトリン濃度の低下は認められなかった一方で、還流液を接種したL字管では、培養を開始して2日を過ぎてから徐々に培養液中のシメトリン濃度が低下し始め、15日後には培養開始時に含まれていたシメトリンの73%が消失した。この結果から、装置C内にシメトリン分解菌が集積していることが明らかとなった。
しかし、装置Cの還流液を高次に希釈してシメトリンを5mg/L含む無機塩培地に添加すると、シメトリン分解が見られなくなった。そこで、シメトリン分解菌の生育に有利な培地を実験的に検索したところ、前記した表1に示したGGV培地が最適であることが判明した。そこで装置Cの還流液から、シメトリンを20mg/L含むGGV寒天培地(表1のGGV培地に寒天を1.5%添加したもの)を用いて単コロニー分離を行った。生じたコロニーを新たなGGV寒天培地及びR2A寒天培地を用いて純化し、シメトリンを5mg/L含むGGV培地9mlを分注したL字管に植種し、30℃で振とう培養を行った。各コロニーの培養液を経日的にサンプリングし、HPLCを用いて培養液中のシメトリン濃度を測定したところ、図4に示すように培養液中のシメトリン濃度を明らかに減少させるコロニーの単離に成功した。この新規メチルチオ化トリアジン分解菌株をFJ1117YT株と命名した。
実施例1にて単離したFJ1117YT株の菌学的位置付けを行うために、FJ1117YT株の形態的性質、培地における生育の様相、生理学的性質、生化学的性状についてエヌシーアイエムビー・ジャパンにて分析を行った。その結果、次の菌学的性質が認められた。
A.形態的性質(使用培地:Oxoid製nutrient agar、
培養温度:30℃)
(1) 細胞形態 :不規則桿菌(細胞の分岐有り)
(2) 大きさ :0.8〜1.0μm×2.0〜4.0μm
(培養24時間後)
(3) 胞子 :なし
(4) 運動性 :なし
培養温度:30℃、培養時間:48時間)
(5) コロニー直径 :1.0〜2.0mm
(6) 色調 :ピンク色
(7) 形 :円形
(8) 隆起状態 :レンズ状
(9) 周縁 :菌糸状
(10) 表面の形状 :スムーズ
(11) 透明度 :不透明
(12) 粘稠度 :バター様
(13) グラム染色 : +
(14) 37℃における生育 : +
(15) 45℃における生育 : −
(16) カタラーゼ : +
(17) オキシダーゼ : −
(18) グルコースからの酸/ガス産生 : −/−
(19) O/Fテスト : −/−
(20) 硝酸塩還元 : −
(21) ピラジナミダーゼ : −
(22) ピロリドニルアリルアミダーゼ : −
(23) アルカリフォスファターゼ : −
(24) β−グルクロニダーゼ : −
(25) β−ガラクトシダーゼ : −
(26) α−グルコシダーゼ : +
(27) N−アセチル−β−グルコサミニダーゼ : −
(28) エスクリン : −
(29) ウレアーゼ : −
(30) ゼラチン加水分解 : −
(31) グルコース資化性 : −
(32) リボース資化性 : −
(33) キシロース資化性 : −
(34) マンニトール資化性 : −
(35) マルトース資化性 : −
(36) 乳糖資化性 : −
(37) 白糖資化性 : −
(38) グリコーゲン資化性 : −
(2)上記DNAを鋳型DNAとして、公知のユーバクテリア16S rRNA遺伝子増幅用プライマーを用いてPCR法によりFJ1117YT株の16S rRNA遺伝子断片を増幅し、QIAquick PCR Purification Kit (キアゲン製)を用いてDNAを精製した。
(3)上記精製DNAを鋳型DNAとして蛍光ラベルした公知のユーバクテリア16S rRNA遺伝子の塩基配列解析用プライマーを用いてサイクルシーケンス反応を行い、DNAシーケンサSQ5500E(日立製)により塩基配列を決定した。
以上の操作により決定されたFJ1117YT株の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列、1,450塩基を配列番号1に示す。ジェネティクスPDB(ジェネティクス製)を用いて、配列番号1に示したFJ1117YT株の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列と、DNA塩基配列データベース(GenBank)に登録された他の微生物の16S rRNA遺伝子の配列をFASTA法により相同性比較を行った。その結果、FJ1117YT株はロドコッカス sp. DSM43943株と99.9%の相同性(1,449/1,450、INTスコア:5,797)を示した。また、FJ1117YT株はロドコッカス sp.871−AN040株と99.8%の相同性(1,447/1,450、INTスコア:5,790)を示した。種レベルまで記載のある微生物の16S rRNA遺伝子の配列の相同性比較では、ロドコッカス コレーンシスと99.2%の相同性(1,438/1,450、INTスコア:5,728)を、ロドコッカス マリノナッセンスと98.8%の相同性(1,433/1,450、INTスコア:5,701)を示した。
以上の結果から、発明者らは本菌株を新規なロドコッカス sp.FJ1117YT株と同定し、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−20535として寄託した。
発明者らは、以下の様にして、本発明に係わる新規メチルチオ化トリアジン分解菌バシラス セレウス JUN7株を単離した。日本各地の14地点で採取した土壌を0.1gずつ、滅菌済生理食塩水10mlに分散させ、懸濁液とした。あらかじめシメトリンを5mg/L含む1/10LB培地を6mlずつ分注しておいたL字管に、この懸濁液0.5mlを接種した。同様にして、1種の土壌に付き2本のL字管を用意し、これらのL字管を26℃にて振とう培養を行った。1/10LB培地の組成は次の表4の通りである。
次に図6で培養液中シメトリン濃度を顕著に低下させた3株(図6のC)の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列を実施例2に記した手順に従って決定した。その結果、各株につき485塩基の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列が決定され、3株間でその全てが一致したことから、これらは同一の菌種と判断された。この新規メチルチオ化トリアジン分解菌株をJUN7株と命名した。
実施例3にて単離したJUN7株の菌学的位置付けを行うために、JUN7株の形態的性質、培地における生育の様相、生理学的性質、生化学的性状についてエヌシーアイエムビー・ジャパンにて分析を行った。その結果、次の菌学的性質が認められた。
A.形態的性質(使用培地:Oxoid製nutrient agar、
培養温度:30℃)
(1) 細胞形態 :桿菌
(2) 大きさ :1.0μm×2.0〜3.0μm(培養24時間後)
(3) 胞子 :有り
(4) 運動性 :有り
培養温度:30℃、培養時間:24時間)
(1) コロニー直径 :2.0〜3.0mm
(2) 色調 :クリーム色
(3) 形 :円形
(4) 隆起状態 :扁平
(5) 周縁 :波状
(6) 表面の形状 :ラフ
(7) 透明度 :不透明
(8) 粘稠度 :バター様
(1) グラム染色 : +
(2) 37℃における生育 : +
(3) 45℃における生育 : −
(4) カタラーゼ : +
(5) オキシダーゼ : −
(6) グルコースからの酸/ガス産生 : −/−
(7) O/Fテスト : −/−
(1) グリセロール資化性 : +
(2) エリスリトール資化性 : −
(3) D−アラビノース資化性 : −
(4) L−アラビノース資化性 : −
(5) リボース資化性 : +
(6) D−キシロース資化性 : −
(7) L−キシロース資化性 : −
(8) アドニトール資化性 : −
(9) β−メチル−D−キシロース資化性 : −
(10) ガラクト−ス資化性 : −
(11) グルコース資化性 : +
(12) フラクトース資化性 : +
(13) マンノース資化性 : −
(14) ソルボース資化性 : −
(15) ラムノース資化性 : −
(16) ズルシトール資化性 : −
(17) イノシトール資化性 : −
(18) マンニトール資化性 : −
(19) ソルビトール資化性 : −
(20) α−メチル−D−マンノース資化性 : −
(21) α−メチル−D−グルコース資化性 : −
(22) N−アセチルグルコサミン資化性 : +
(23) アミグダリン資化性 : −
(24) アルブチン資化性 : +
(25) エスクリン資化性 : +
(26) サリシン資化性 : +
(27) セロビオース資化性 : −
(28) マルトース資化性 : +
(29) 乳糖資化性 : −
(30) メリビオース資化性 : −
(32) トレハロース資化性 : +
(33) イヌリン資化性 : −
(34) メレチトース資化性 : −
(35) ラフィノース資化性 : −
(36) 澱粉資化性 : +
(37) グリコーゲン資化性 : +
(38) キシリトール資化性 : −
(39) ゲンチオビオース資化性 : −
(40) D−ツラノース資化性 : −
(41) D−リキソース資化性 : −
(42) D−タガトース資化性 : −
(43) D−フコース資化性 : −
(44) L−フコース資化性 : −
(45) D−アラビトール資化性 : −
(46) L−アラビトール資化性 : −
(47) グルコネート資化性 : −
(48) 2−ケトグルコン酸資化性 : −
(49) 5−ケトグルコン酸資化性 : −
(50) β−ガラクトシダーゼ : −
(51) アルギニンジヒドロラーゼ : −
(52) リシンデカルボキシラーゼ : −
(53) オルニチンデカルボキシラーゼ : −
(54) クエン酸の利用性 : −
(55) 硫化水素産生 : −
(56) ウレアーゼ : −
(57) トリプトファンデアミナーゼ : −
(58) インドール産生 : −
(59) アセトイン産生 : −
(60) ゼラチナーゼ : +
(61) 硝酸塩還元 : +
E.溶血性試験
JUN7株をOxoid製nutrient agarにヒツジ血液を5%の割合で混合した5%羊血液寒天平板培地に植菌し、30℃にて培養した。24時間後、生育したコロニー周辺には透明帯が形成されたことから、溶血性陽性と判定された。
F.結晶封入体確認
JUN7株をOxoid製nutrient agarに植菌し、30℃にて培養した。24時間後、光学顕微鏡BX50F4(オリンパス製)で菌体を観察したところ、細胞内に結晶封入体は確認されなかった。
G.レシチナーゼ活性
JUN7株を無菌卵黄液(アテクト製)を10%の割合で混合したBecton Dickinson製Heart Infusion Agarに植菌し、30℃にて培養した。24時間後、生育したコロニー周辺には混濁帯が形成されたことから、レシチナーゼ活性陽性と判定された。
以上の追加試験の結果を医学細菌同定の手引き第3版(1993)及びバージーのマニュアル(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology Vol.2(1984))に従って同定を行ったところ、本発明のJUN7株はバシラス セレウスグループに属する細菌と考えられた。
以上の結果から、発明者らは本菌株を新規なバシラス セレウスJUN7株と同定した。本菌株は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−20534として寄託した。
JUN7株のシメトリン分解に及ぼす培地pHの影響を検討した。シメトリンを5mg/L含む1/10LB培地を用意し、塩酸溶液及び水酸化ナトリウム溶液でpHを調整後滅菌した。この方法で滅菌後pHが4、5、6、7、7.6、9、又は10の培地を作製した。これらのpH調整済培地をL字管に6mlずつ分注し、1/10LB培地にて前培養したJUN7株を0.1ml植菌した。L字管は26℃にて振とう培養し、培養液中のシメトリン濃度を経日的にHPLCを用いて測定した。培養液を接種しないL字管も同様に操作し、対照とした。その結果を図7に示す。
図7のグラフの左縦軸は培養液中のシメトリン濃度(mg/L)を示し、右縦軸は培養液の660nmでの濁度を示し、横軸は培養時間(日)を示す。図7の黒丸印(●)は対照のL字管における培養液中のシメトリン濃度を示し、白丸印(○)はJUN7株を植菌したL字管における培養液中のシメトリン濃度を示す。また図7の黒四角印(■)は対照のL字管における培養液の660nmでの濁度を示し、白四角印(□)はJUN7株を植菌したL字管の培養液の660nmでの濁度を示す。
図7のA及びBで明らかな様に、培地の初期pHを4とした場合、JUN7株の生育は極めて僅かで、シメトリンをほとんど分解することができなかった。培地の初期pHを5とした場合、JUN7株は培養後期に僅かに生育し、シメトリンを若干分解した。培地の初期pHを6、7、7.6、9、又は10とした場合、JUN7株は旺盛に生育し、シメトリンをよく分解した。一方、JUN7を植菌していない対照ではいずれのpHでも培地中シメトリン濃度の低下は認められなかった。以上の結果から、JUN7株のシメトリン分解能は培地の初期pHが5以上、望ましくは6以上で機能し、pH10でも十分な機能を保つことが判明した。
JUN7株を用いて、シメトリン以外のメチルチオ化トリアジン系化合物について分解能を検討した。ここでは対象化合物として、ジメタメトリン及びプロメトリンを供試した。ジメタメトリンあるいはプロメトリンを5mg/Lの割合で含む滅菌済1/10LB培地を用意した。これらをL字管に6mlずつ分注し、1/10LB寒天培地にて前培養したJUN7株を植菌した。L字管は26℃にて振とう培養し、培養液中のジメタメトリン及びプロメトリン濃度を経日的にHPLCを用いて測定した。培養液を接種しないL字管も同様に操作し、対照とした。その結果を図8及び図9に示す。
図8のグラフの縦軸は培養液中のジメタメトリン濃度(mg/L)を示し、横軸は培養時間(日)を示す。図8の黒丸印(●)は対照のL字管における培養液中のジメタメトリン濃度を示し、白丸印(○)はJUN7株を植菌したL字管における培養液中のジメタメトリン濃度を示す。
図9のグラフの縦軸は培養液中のプロメトリン濃度(mg/L)を示し、横軸は培養時間(日)を示す。図9の黒丸印(●)は対照のL字管における培養液中のプロメトリン濃度を示し、白丸印(○)はJUN7株を植菌したL字管における培養液中のプロメトリン濃度を示す。
図8及び図9で示される様に、JUN7株はジメタメトリンとプロメトリンも分解できることが明らかとなった。以上のことから、JUN7株はシメトリン及びジメタメトリン、プロメトリンを含む全てのメチルチオ化トリアジン、好ましくはメチルチオ化s−トリアジンの分解が可能であると考えられた。
FJ1117YT株を用いて、シメトリン以外のメチルチオ化トリアジンの分解が可能であるか検討した。ここでは対象化合物として、アメトリン、デスメトリン、ジメタメトリン、メトリブジン及びプロメトリンを供試した。いずれかの農薬を3〜7mg/Lの割合で含む滅菌済1/10LB培地をそれぞれ用意し、これらをL字管に9mlずつ分注後、R2A寒天培地にて前培養したFJ1117YT株を植菌した。L字管は20℃にて振とう培養し、25日後に培養液中のアメトリン、デスメトリン、ジメタメトリン、メトリブジン及びプロメトリン濃度をHPLCにて測定した。培養液を接種しないL字管も同様に操作し、対照とした。培養液中の農薬濃度を、対照を1とした場合の相対濃度として、この結果を次の表5に示す。
配列番号2:本発明の分解菌JUN7株の16S rRNA遺伝子の1460塩基。
Claims (8)
- ロドコッカス sp. FJ1117YT株(受託番号FERM P−20535)の細菌。
- バシラス セレウス JUN7株(受託番号FERM P−20534)の細菌。
- 請求項1又は2に記載の細菌によってメチルチオ化トリアジンを分解することを特徴とするメチルチオ化トリアジンの分解法。
- メチルチオ化トリアジンがシメトリンである請求項3に記載の分解法。
- メチルチオ化トリアジンがジメタメトリンである請求項3に記載の分解法。
- メチルチオ化トリアジンがプロメトリンである請求項3に記載の分解法。
- 請求項1又は2に記載の細菌の少なくとも1種、及び当該細菌の生育が許容される担体を含有してなるメチルチオ化トリアジン系化合物を分解するための組成物。
- メチルチオ化トリアジン系化合物が、シメトリン、ジメタメトリン、プロメトリン、アメトリン、デスメトリン、及びメトリブジンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の組成物。
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