JP4673647B2 - 金属の表面温度測定装置 - Google Patents
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Description
例えば、焼入れ加工などの熱処理に用いられる冷却剤については、JIS K2242において規格が定められている。
前記被測定体は、本体を銀又は銅で形成するとともに、前記本体の全周を熱伝導度の低い金属からなる薄膜で覆い、かつ、前記薄膜を貫通して前記本体内に位置する絶縁管を設け、この絶縁管を介して、熱電対を形成する素線を前記本体内に挿設し、銀又は銅と熱電対を形成した構成としてある。
ここで、被測定体の薄膜としては、純鉄又は鉄合金の薄膜を挙げることができる。
このように構成すれば、熱伝導度の低い金属(以下、単に「鋼」と称することがある。)の表面の温度変化を、銀又は銅の熱伝導度の速度で測定することが可能となり、また、冷却剤の種類や、熱処理温度などの熱処理条件に応じて迅速に測定することができる。
このようにすると、被測定体に、酸化しやすい純鉄又は鉄合金を用いても、測定雰囲気が不活性ガス雰囲気となっているので、被測定体の表面薄膜の酸化を防止することができる。不活性ガスとしては、窒素ガスが好適である。
このように構成すれば、鋼などの金属における低熱伝導度の悪影響を受けることなく、金属表面における温度変化を、JIS K2242の規格に準拠して測定することができる。
図1は、本発明の一実施形態にかかる表面温度測定装置の概略構成図である。
加熱電気炉1は、被測定体10を所定温度(約800℃)まで加熱するためのものであり、強い磁場または交番磁場を炉内に形成しない無誘電式のものなどを用いる。試料容器2は、検査対象となる冷却剤(試料)を入れる容器であり、被測定体10の下方に配置されている。温度計3は、熱電対の部分を有しており、その測定部は被測定体10の内部に組み込まれており、被測定体表面の温度を測定する。記録計4は、温度計3が測定した温度を記録する。
被測定体10は、移動手段11aにより上下動可能な支持体11と、この支持体11に螺合支持された本体12からなっており、この本体12の内部には熱電対の測定部が組み込まれている。本体12は銀製としてあり、その外周面には、鋼などの低熱伝導度の金属からなる薄膜12aがコーティングしてある。本実施形態においては、薄膜12aを形成した本体12のサイズを、直径10mm、長さ30mmとしてある。
薄膜12aは、メッキ、蒸着あるいはスパッタリング等の方法でコーティングするが、その厚さは、1〜100μmとすることが好ましい。厚さが1μmより薄いと、均一な薄膜を得ることが難しくなくなり、100μmより厚いと、鋼などの低熱伝導度の悪影響を受け、正確な温度測定が難しくなるからである。
また、鉄系以外の低熱伝導度の金属としては、クロム、チタン及びそれらの窒化物を挙げることができる。
なお、図2に示す実施形態では、鋼製の薄膜12aが銀製の本体12の全周にコーティングしてある。
加熱用電気炉1内において、被測定体10の本体12を所定温度(約800℃)まで加熱した後、支持体を下降させて試料容器2内へ入れる。試料容器2には試験対象となる冷却剤が入っているので、被測定体10の薄膜12a及び本体12は急激に冷却され、その表面の温度が変化する。温度計3は、この温度変化を、熱電対を介して測定し、記録計4は、これを記録する。なお、温度変化を時間の関数として冷却曲線を求めることもできる。
(実施例1)銀製の本体に鋼製の薄膜をメッキした被測定体を用いた場合。
鋼としては、純鉄を用いた。メッキ層の厚さは100μmとした。
試料容器に、冷却剤としてコールドクエンチ油「ダフニーマスタークエンチA」(出光興産(株)製)を250ml入れ、80℃まで加熱した。電気炉で810℃に加熱した上記被測定体を、この冷却剤に入れ表面温度を測定した。測定は窒素ガス雰囲気で行った。
その他はJIS K2242に準拠して,表面温度の測定を行った。その結果、図3のBで示す冷却曲線が得られた。
(比較例1)銀製の被測定体を用いた場合。
被測定体として、銀製の本体からなるものを用いた。測定は空気雰囲気で行った。その他は実施例1同様にして測定を行った。その結果、図3のAで示す冷却曲線が得られた。
(比較例2)鋼製の被測定体を用いた場合。
被測定体として、鋼製の本体からなるものを用いた。鋼は、クロムモリブデン鋼鋼材(JIS G 4105 SCM420)を用いた。測定は、シース材質が耐食耐熱超合金、シース外径1.0mm、Kタイプ接地型でSKクラス(JIS C 1605)のシース熱電対を用い、図2の熱電対挿入位置と同じ位置に挿入して設置した。その他は実施例1と同様にして測定を行った。その結果、図3のCで示す冷却曲線が得られた。
冷却剤としてホットクエンチ油「ダフニーハイテンプオイルA」(出光興産(株)製)を用い,120℃まで加熱した。その他は実施例1と同様にして測定を行った。その結果、図5のBで示す冷却曲線が得られた。
(比較例3)銀製の被測定体を用いた場合。
冷却剤としてホットクエンチ油「ダフニーハイテンプオイルA」(出光興産(株)製)を用い,120℃まで加熱した。その他は比較例1と同様にして測定を行った。その結果、図5のAで示す冷却曲線が得られた。
実施例と比較例の測定結果を、熱処理シミュレーションソフトと実測値を用いて比較した。
熱処理シミュレーションソフトは「DEFORMTM−HT」((株)ヤマナカゴーキン)を用いた。鋼材の熱伝導度などのデータは、(社)日本材料学会のデータベースMATEQを用いた。鋼材表面における熱伝達率は,さきの表面温度の測定結果を用い、特開平07−146264号公報に記載されているベッセル関数による熱伝導方程式の解法によって算出した。算出した結果を、図7に示す。
また、半径8mmの被測定体(円柱モデル)の、表面、表面から4mm及び中心位置における温度特性についてシミュレーションを行った。シミュレーションの結果を、図8及び図9に示す。図8は、本体に鉄をコーティングした被測定体によって測定した表面温度に基づいて算出した熱伝達率を用いたシミュレーション結果と、実測値を示す。図9は、本体を銀とした被測定体によって測定した表面温度に基づいて算出した熱伝達率を用いたシミュレーション結果と、実測値を示す。
これらのことから、実施例1の表面温度の測定結果を用いた場合の方が、実測値に近いことが判った。
まず、熱処理過程における評価対象物の物理形状に同一あるいは類似する基準体を設定し、この基準体および評価対象液体間の熱伝達を表す熱伝導方程式を作成する(ステップ41)。
すなわち、評価対象物の物理形状に同一あるいは類似する基準体により、熱処理シミュレーションを行う冷却過程を代表する冷却モデルMを設定し、この冷却モデルMにおける熱伝導方程式を作成する。この熱伝導方程式は、熱伝導を表す一般式から冷却モデルMの形状等に応じて導かれる。
次に、前記基準体および液体間の熱処理過程における温度変化を測定する(ステップ42)。すなわち、冷却モデルMにおける冷却曲線を、熱処理等の液体の種類、熱処理前の材料の温度及び液体の温度を設定した上で測定して求める。
続いて、熱伝導方程式を、固有関数を用いて解析し(ステップ43)、熱伝達率を同定する(ステップ44)。
すなわち、鉄のみからなる被測定体は、表面と表面から1mm離れたところで80℃程度の温度差がある。このことは、被測定体の表面近くに熱電対の測温接点を配置しても、その設置位置が0.1mmずれただけでも8℃程度の大きな差が生じることを意味している。この点からも、鋼のような、熱伝導度の低い材料からなる被測定体に熱電対を設けてなる表面温度測定装置では、正確な温度測定を期待することができない。また、各装置間において測定精度に大きな差を生じ、信頼性のある測定装置となりえないことが判る。
2 試料容器
3 温度計
4 記録計
10 被測定体
11 支持体
12 本体
12a 薄膜
13 アルメル線
13a 球
16 銀線
Claims (3)
- 被測定体と、この被測定体を加熱する加熱器と、この加熱器で加熱した前記被測定体を冷却する冷却剤を入れた容器と、前記加熱器と前記容器との間で前記被測定体を移動させ、前記加熱手段で加熱された前記被測定体を前記冷却剤の中に入れる移動手段とを備えた金属の表面温度測定装置であって、
前記被測定体は、本体を銀又は銅で形成するとともに、前記本体の全周を熱伝導度の低い金属からなる薄膜で覆い、かつ、前記薄膜を貫通して前記本体内に位置する絶縁管を設け、この絶縁管を介して、熱電対を形成する素線を前記本体内に挿設し、銀又は銅と熱電対を形成したことを特徴とする金属の表面温度測定装置。 - 前記被測定体の薄膜を、純鉄又は鉄合金の薄膜とするとともに、
少なくとも、前記容器、前記加熱器、前記被測定体を不活性ガス雰囲気のチャンバー内に配置したことを特徴とする請求項1記載の金属の表面温度測定装置。 - 前記薄膜を、1〜100μmの厚さとしたことを特徴とする請求項1又は2記載の金属の表面温度測定装置。
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