JP4672632B2 - バイオ人工糸球体 - Google Patents
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Description
た(非特許文献1参照)。1日10Lの持続血液濾過は、約7 ml/minの濾過液を持続的に血液中から除去することであり、一般に使われる膜面積1.8 m2程度の中空糸モジュールは必
要なく、膜面積0.2〜0.3 m2の胸ポケットに収納可能な濾過モジュールでよいために装着
にともなう煩わしさも最小限にできる(非特許文献2)。飲食した水分や生じた代謝産物を、日を越えて体内に蓄積させるのではなく、腎臓同様に直ちに濾過し除去できるので身体への負担も少なく、合併症も生じにくい。ただし、そのような装着持続的濾過が可能となるためには、全身的抗凝固療法を最小限にしても1本の濾過器が少なくとも1週間以上
機能することが必要になる。人工素材を用いた現行の持続血液濾過器は、全身性抗凝固療法を行なった上で1本の濾過器が最大24時間機能することが求められているに過ぎない。
Saito A, Takagi T, Sugiura S, Ono M, Minakuchi K, Teraoka S, Ota K.: Maintaining low concentration of plasma β2-microglobulin through continuous slow haemodialysis. Nephrol Dial Transplant 10(Suppl. 3): 52-56, 1995 Saito A: Research in the development of a wearable bioartificial kidney with a continuous hemofilter and a bioartificial tubule device using tubular epithelial cells. Artif Organs 2004; 28:58-63
前記内皮細胞は、アクチンフィラメント妨害薬剤の適用によりそのフェネストラの数が増えるか、あるいはその孔径が拡大される。
前記中空糸が、好ましくはポリスルホン、セルロース酢酸、またはポリイミドなどからの高透過性の血液濾過器用膜で形成されている。
本発明によるバイオ人工糸球体の製造方法は、血液濾過膜である中空糸の内面を患者自身の内皮細胞によって被覆し、次いでこれを濾過容器に収容し、血液濾過に使用する際に、アクチンフィラメント妨害薬剤を適用して該細胞の細胞膜フェネストラの数を増やすか、その孔径を糸球体内皮細胞のフェネストラ孔径の0.5〜2倍まで拡大させるか、あるいはそれら両方の効果により血液濾過を促進させることを特徴としている。
[発明の詳細な説明]
「人工糸球体」は、腎臓の濾過装置として血液から老廃物や水分などをこし取る糸球体の濾過機能を模するものであり、糸球体による濾過を人工的に実施する血液濾過器である。「バイオ人工糸球体」は、そうした人工糸球体に細胞、組織、生体物質などを組み込んだものである。また「バイオ人工腎臓」とは、バイオ人工糸球体(bioartificial glomer
ulus)とバイオ人工尿細管(bioartificial tubules)とから構成される系であり、腎臓
機能の再現を可能とする細胞を付けることで効率よくかつ24時間連続的に透析ができ、また尿細管の有用物質の再吸収機能をも付加することができる。図1に本発明者が目指すバイオ人工腎臓の概念図を示す。現在の透析治療に使われる人工腎臓は、限られた時間内で急速な透析のみを行なうものであり、その効果は限られている。
バイオ人工糸球体
本発明のバイオ人工糸球体は、
血液濾過器として、患者自身の内皮細胞を用いて内面を被覆した中空糸の血液濾過膜とこれを収容する濾過容器とからなるバイオ人工糸球体であり、少なくとも7日間持続して、該細胞の細胞膜フェネストラの数を増やすか、その孔径を糸球体内皮細胞のフェネストラ孔径の0.5〜2倍まで拡大させるか、あるいはそれら両方の効果により血液濾過を促進させることを特徴としている。
、毛細血管壁より血漿成分(水、電解質、老廃物など)が容易に濾過される。本発明のバイオ人工糸球体は、薬剤の適用により中空糸膜内面を被覆している内皮細胞の細胞膜フェネストラの数を増やすか、その孔径を糸球体内皮細胞のフェネストラ孔径の0.5〜2倍まで拡大させるか、あるいはそれら両方の効果により血液濾過を促進させる血液濾過器である。
・濾過膜
血液濾過膜は、血液を限外濾過する濾過物質およびこれを収容する容器からなる。その濾過物質は、多孔性物質であることが求められるが、血液透析にはこれまで中空糸膜を基本とする濾過膜が使用されてきており、本発明のバイオ人工糸球体の濾過膜でもその数々の利点から中空糸が採用される。
本発明の人工糸球体では、微細孔径の分布が比較的均一であり、しかも物質の担持容量が極めて大きい中空糸繊維膜が好ましく使用される。その中空糸膜は、通常ろ過、物質の分離に広く使用されている構造のもので、内表面から外表面の間の膜側面には多数の微細孔が空いている。その微細孔は、0.001μm〜数μm、好ましくは0.03〜1μmの径である。中空糸を使用する膜体では、その構造特性から、他の多孔性物質と比べて単位表面積当たりの物質の担持量または収容容量は極めて大きい。したがって微小な医療デバイスとする場合にも極めて大きい担持能力を有する担体として利用できる。
、エチレン・ビニールアルコール共重合体からの膜で形成されていることが望ましい。
本発明のバイオ人工糸球体では、患者の内皮細胞、好ましくは血管内皮細胞、より好ましくは患者の末梢血から採取された内皮前駆細胞由来の内皮細胞(例えば血管内皮細胞)を使用する。中空糸の濾過膜内面の表面に内皮細胞を貼り付けるのは、糸球体の場合と同様に持続的かつ充分量の濾過を確保し、血液適合性と抗血栓性を獲得するためである。このことにより持続血液濾過器に人工素材を用いる場合に必要となる抗血液凝固措置が基本的には不要となる。また患者自身の内皮細胞を用いることによって、血液濾過において無用の拒絶反応を回避することができる。
endothelial cells)、ヒト臍帯血静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cells;HUVEC)のフェネストラ径の変化と静水圧下の濾過量の測定が行なわれた。また、Cytochalasin B処理数日後のその径と濾過量の推移が検索された。過去に濾過液量の変化
を考慮に入れた検討はなされていない。このような本発明者の検討からラット糸球体内皮
細胞、HUVECにおいてはCytochalasin B処理7日後にも、細胞障害がなくフェネストラ径
は拡大した状態であること、静水圧下濾過液量増加も維持されることが明らかとなった。このことから、血管内皮細胞のフェネストラ径を持続的に拡大させること、それによる濾過液量を増大させることが可能となり、本発明のバイオ人工糸球体の完成となった。
・薬剤
前記内皮細胞は、アクチンフィラメント妨害薬剤を適用することによりそのフェネストラ孔径を拡大される。抗actin filament薬が内皮細胞のフェネストラに与える影響は、従来肝臓のsinusoidの内皮細胞のみで認められる現象と考えられ、sinusoid内皮細胞で検討されてきた。しかし本発明者の研究によって、糸球体内皮細胞やHUVECにおいてフェネス
トラ径の拡大が認められ、また、肝臓のsinusoid内皮細胞では一過性と考えられたフェネストラに対する効果が長期に現れることも明らかになった。
示されたCytochalasin B以外にも、限定するものではないが、例えば、latrunculin A, swinholide A, jasplakinolide/misakinolide, halichon- dramide/dihydrohalichondramideなどが挙げられる。さらに、VEGF(Roberts WG, Palade GE. Increased microvascular permeability and endothelial fenestra- tion induced by vascular endothelial growth factor. J Cell Sci 2995;108 :2369-2379:Chen J, Braet F, Brodsky S, Weinstein T, Romanov V, Noiri E, Gollgorsky MS. VEGF-induced mobilization of caveolae
and increase in permeability of endothelial cells. Am J Physiol Cell Physiol 2002; 282 :C1053-C1063))や、Angiotensin II(Otani a, Takagi H, Suzuma K, Honda Y. Angitensin II potentiates vascular endothelial growth facto
r-induced angiogenic activity in renal microcapillary endothelial cells. Circ Res 1998;82:619-628), Atrial Natriuretic Peptide(ANP)なども内皮細胞の透過性を促進する働きがあるが、これらは投与後の一過性の効果であり、持続投与は患者の他の機能への影響からその治療への応用は困難である。
・血液濾過器(濾過容器)
現行の血液濾過装置も、中空糸濾過膜を濾過器内部に収めたカートリッジタイプとして使用されているが、本発明のバイオ人工糸球体も、好ましくはそうしたカートリッジタイプのデバイスである。したがって上記中空糸膜を収める濾過容器は、従来のカートリッジと同じ材質、材料で作製されてよい。持続血液濾過のために装着型または埋め込み型とする場合には、その目的に好適な形態をとり、より小型化させて生体適応性の材料で製造されるのが望ましい。
本発明のバイオ人工糸球体の製造方法は、
血液濾過膜である中空糸の内面を患者自身の内皮細胞によって被覆し、次いで
これを濾過容器に収容し、血液濾過に使用する際に、アクチンフィラメント妨害薬剤を適用して該細胞の細胞膜フェネストラの数を増やすか、その孔径を糸球体内皮細胞のフェネ
ストラ孔径の0.5〜2倍まで拡大させるか、あるいはそれら両方の効果により血液濾過を促進させることを特徴としている。
分画を採取する。採取された単核細胞を、Lymphoprep mediumを用いた濃度勾配法にて分
離するか、または、細胞濾過デバイスを用いて分離する2)。CD133陽性単核細胞は、magnetic cell sortingにて採取し、EBM-2培地を用いて培養する。内皮細胞化の証明として、
(1)ecNOS, Flk-1/KDR (VEGFR-2), CD31のmRNA発現をRT-PCRにより、(2)VEGFあるいはAcetylcholineの刺激によるNO分泌反応などで評価する。採取した内皮細胞は中空糸モ
ジュール内に107〜108個/mlの密度で90℃ごとに回転させて4回播種する。播種後の中空糸モジュールをCO2インキュベーターにて培養し、コンフルエントな単層を形成したところ
でCytochalasin Bをメディウム中に10μg/mlの濃度で添加して2時間培養する。CytochalasinB添加メディウムは、Cytochalasin B無添加メディウムで充分に洗浄し、患者の持続濾過治療に用いる。
1)Hernandez DA, et al. Human endothelial cell cultures from progenitor cells obtained by leukapheresis. Am Surgeon2000;66:355―359
2)Aoki M, et al. Derivation of functional endothelial progenitor cells from human umbilical cord blood mononuclear cells isolated by a novel cell filtration device. Stem Cells 2004;22:994-1002 www.StemCells.co m
患者から得た内皮細胞を中空糸内に生着させるには、例えば膜面積0.4m2ポリスルホン膜中空糸デバイス(中空糸1600本、内径300nm)の場合、血管内皮細胞を106/mLの密度で
中空糸内に1時間ごとに4回播種させると、24時間以内にコンフルエントな単層が形成されることを本発明者は確認している。小型持続濾過器のためには、膜面積0.2m2ポリスルホン膜中空糸を使用するのがよい。内皮細胞が中空糸内面に定着することを促進するために、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンに代表される細胞接着性タンパク質、接着性のポリマーなどにより細胞播種前に中空糸表面を被覆してもよい。
管へ移行し、尿細管で必要なものは再吸収され、老廃物などは分泌されて、尿を形成し体外に排泄される。生体の腎臓は、代謝、血圧・電解質調節、内分泌機能をも発揮しているが、それらの機能に関与する細胞種が多く複雑であることから、最も再生し難い臓器の一つと考えられる。
持続時間の延長を、薬剤を添加することで可能としたバイオ人工糸球体であり、その製造方法である。このような薬剤の適用と得られる効果は、バイオ人工糸球体の透析効率を長期間維持する上で重要である。なお薬剤を添加することでフェネストラの数が増加することは、肝臓の細胞について報告されているが、フェネストラ径の拡大についての言及は全くなく、その持続時間も短いとされていた。
ラ径の持続的拡大が見られた。これより、血管内皮細胞でも同様の効果が得られることがわかった。
Organs 28、 2004)と併せて、完成な人工腎臓(図1)開発の先駆けにもなり得るもの
と考える。
[実施例]
地に2時間加えるとラット糸球体内皮細胞のフェネストラ径が著明に大きくなり、細胞障害もなくフェネストラの拡大は少なくとも5日間以上保たれた(図2-A、B)。
を加えた群では、アクチンフィラメントの妨害(interruption)が確認され、斑点状のアクチンフィラメントが散在していた(図3-A、B)。
を測定した。Transwellを用いた実験で、Cytochalasin B(CB)を培地に2時間加え、4日後にHorse radish Peroxidase濾過実験を行ったところ、Cytochalasin Bで処理した群
では非処理群に比し有意の水移行が見られた。このことからCytochalasin Bを加えない群に比べ、約6倍の濾過性を保たれたことがわかった(図4)。
あるいは添加せずに培養して、7日後に走査型電子顕微鏡(Scanning electron microscopy;SEM)で観察した。図5-BのSEM像(15000倍)から、細胞障害もなくフェネス
トラの明らかな拡大が認められた。
おいてもLAの添加により明らかなフェネストラ径の拡大が認められた(図5-C)。
Claims (9)
- 血液濾過器として、患者自身の内皮細胞を用いて内面を被覆した中空糸の血液濾過膜とこれを収容する濾過容器とからなるバイオ人工糸球体であり、アクチンフィラメント妨害薬剤の適用により、少なくとも7日間持続して、該細胞の細胞膜に無数に存在する円形小穴の数が増えたこと、および/または、その孔径が糸球体内皮細胞の細胞膜に無数に存在する円形小穴の孔径の0.5〜2倍まで拡大したことを特徴とするバイオ人工糸球体。
- 前記内皮細胞が血管内皮細胞である、請求項1に記載のバイオ人工糸球体。
- 前記内皮細胞が患者から採取された内皮前駆細胞由来である、請求項1または2に記載のバイオ人工糸球体。
- 前記アクチンフィラメント妨害薬剤が、Cytochalasin B、 Latruncyulin A、 Swinholide A、 Halichondramide/Dihydorohalichondramide、 Jasplakinolide /Misakinolideからなる群より少なくとも1種選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のバイオ人工糸球体。
- 前記中空糸に抗血液凝固薬剤を適用し、全身的抗凝固療法を最小限とする血液濾過器であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のバイオ人工糸球体。
- 前記中空糸が、ポリスルホン、セルロース酢酸、またはポリイミドからの膜で形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載のバイオ人工糸球体。
- 前記の薬剤の適用が、予め中空糸に該薬剤を担持させてあるか、あるいは使用に先立って、該薬剤を含む流体を流すことによる、請求項1〜6のいずれかに記載のバイオ人工糸球体。
- 血液濾過膜である中空糸の内面を患者自身の内皮細胞によって被覆し、次いで
これを濾過容器に収容し、血液濾過に使用する際に、アクチンフィラメント妨害薬剤を適用して該細胞の細胞膜に無数に存在する円形小穴の数を増やすこと、および/または、その孔径を糸球体内皮細胞の細胞膜に無数に存在する円形小穴の孔径の0.5〜2倍まで拡大させることを特徴とする、バイオ人工糸球体の製造方法。 - アクチンフィラメント妨害薬剤の適用量として、その薬剤が前記内皮細胞の細胞膜に無数に存在する円形小穴の孔径を糸球体内皮細胞の細胞膜に無数に存在する円形小穴の孔径の0.5〜2倍、拡大させるとともに、かつ、その孔径の拡大が少なくとも持続して7日間、継続させるのに充分な量である、請求項8に記載のバイオ人工糸球体の製造方法。
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