JP4668855B2 - アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、例えばプリント基板等に用いられる低熱膨張性のアルミニウム合金板の製造方法に関する。
低熱膨張性アルミニウム合金としては、Al−Si合金やAl−Si−Ni合金が周知であり、特に後者は耐熱性にも良好であることが知られている(特許文献1〜4参照)。
ところで、図1に示すように、プリント配線基板(1)は、基板(2)上に絶縁層(3)を積層し、この絶縁層(3)上に通電層(4)を所要回路形状に積層したものであり、前記通電層(4)に電子部品(5)がハンダ(6)で接合される。一般に、このようなプリント配線基板(1)では、基板(2)の材料として熱伝導性に優れたアルミニウムまたはアルミニウム合金あるいは銅が用いられ、通電層(4)として銅箔が用いられる。軽量性の点では銅よりもアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基板(2)を用いることが好ましい。
前記プリント配線基板(1)において、銅箔(4)と熱膨張係数に差のある基板(2)を用いると、実装品である電子部品(5)から発生する熱や雰囲気温度により冷熱サイクルが繰り返され、逆方向の反りが繰り返し発生してハンダ(6)に疲労クラックが発生することがある。このため、基板(2)として、銅箔(4)の熱膨張係数(約17×10-6/K)に近いアルミニウム合金が望ましく、熱膨張係数が約24×10-6/Kの純アルミニウムよりも、上述した低熱膨張性のAl−Si合金やAl−Si−Ni合金が望まれる。
特開平6−41667号公報 特開平2−61025号公報 特開2001−335872号公報 特開平2−73937号公報
上述した基板(2)には圧延板を用いるのが一般的である。基板(2)の熱膨張係数を銅箔に近づけるには相当量のSiおよびNiを添加する必要があるが、Si濃度を高くすると圧延性が低下し、基板(2)に用いるような薄板の製作が極めて困難である。特許文献4に記載されたAl−Si−Ni合金による管体の製作においては、押出成形した素管に抽伸加工を施し、さらに表面切削により所期する肉厚を得ている。しかし、押出成形ではプリント配線基板に用いるような寸法の大きい薄板を製作することは困難であった。
本発明は、上述した技術背景に鑑み、SiおよびNiの含有によって低熱膨張性を確保し、かつ圧延によって薄板を製作できるアルミニウム合金板の製造方法の提供を目的とする。
即ち、本発明のアルミニウム合金板の製造方法は下記〔1〕〜〔5〕に記載の構成を有する。
〔1〕 Si:11〜20質量%およびNi:1〜6質量%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金素材に対し、1パス以上の熱間圧延により板材を製造するに際し、
各パスにおける圧延開始時の材料温度を、前記アルミニウム合金の固相線温度よりも10〜50℃低い範囲内に設定することを特徴とするアルミニウム合金板の製造方法。
〔2〕 前記材料温度を、前記アルミニウム合金の固相線温度よりも10〜30℃低い範囲内に設定する前項1に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
〔3〕 熱間圧延を、圧延後の板厚が10mmになるまでは10%以下のリダクション率で行い、10mm未満5mm以上になるまでは20%以下のリダクション率で行い、5未満では40%以下のリダクション率で行う前項1または2に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
〔4〕 熱間圧延に供する素材を、ビレット温度:430〜480℃、押出速度0.1〜1m/minの押出成形により製作する前項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
〔5〕 熱間圧延後の板材に450〜500℃で1〜5hの熱処理を施す前項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
また、本発明のアルミニウム合金板は下記〔6〕〔7〕に記載の構成を有する。
〔6〕 前項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により製造したことを特徴とするアルミニウム合金板。
〔7〕 金属断面組織においてAl3Ni金属間化合物の平均粒径が20μm以下である前項6に記載のアルミニウム合金板。
また、本発明のプリント配線基板は下記〔8〕〔9〕に記載の構成を有する。
〔8〕 前項6または7に記載されたアルミニウム合金板をアルミニウム基板とし、このアルミニウム基板上に絶縁層があり、さらにこの絶縁層上に銅があることを特徴とするプリント配線基板。
〔9〕 前記絶縁層は、絶縁性樹脂または前記絶縁性樹脂に熱伝導性フィラーを配合した絶縁性樹脂組成物を含む、前項8に記載のプリント配線基板。
上記〔1〕に記載のアルミニウム合金板の製造方法によれば、圧延時のマトリックスの流動によりAl3Ni金属間化合物が粉砕されるとともに分散され、かつ空隙の発生が防がれる。これらの作用により圧延中の割れの発生が抑制されて良好な圧延性が得られ薄板を製作することができる。材料となるアルミニウム合金はその組成により熱膨張性が低いものであるから、本製造方法により低熱膨張性の薄板を製作することができる。
上記〔2〕に記載のアルミニウム合金板の製造方法によれば、特にマトリックスの流動性が良好であり、圧延性が良い。
上記〔3〕に記載のアルミニウム合金板の製造方法によれば、最終目的の厚さの板材を効率良く製造することができる。
上記〔4〕に記載のアルミニウム合金板の製造方法によれば、押出成形時に合金組織が微細化され、粗大組織による圧延割れを抑制することができる。
上記〔5〕に記載のアルミニウム合金板の製造方法によれば、圧延板の熱膨張係数をさらに低下させることができる。
上記〔6〕〔7〕に記載のアルミニウム合金板は、〔1〕〜〔5〕に記載の方法で製造されたものであるから、低熱膨張性の板材である。
上記〔8〕に記載されたプリント配線基板は、アルミニウム基板として、上記〔6〕または〔7〕に記載されたアルミニウム合金板を用いたものであるから、アルミニウム基板と通電層との熱膨張係数差が少なく加熱と冷却を繰り返しても反りが少ない。ひいては電子部品を取り付けるためのハンダにおけるクラック発生が抑制される。
上記〔9〕に記載されたプリント配線基板は、絶縁層とアルミニウム基板との接合性、絶縁層と通電層との接合性が良好である。
本発明に適用するアルミニウム合金は、Si:11〜20質量%およびNi:1〜6質量%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金である。SiおよびNiの含有意義および濃度の限定理由は以下の通りである。
Siはアルミニウム合金の熱膨張係数を低くするために必要な元素である。Si濃度が高くなるほど熱膨張係数が低くなり、本発明においてはSi濃度が11〜20質量%のアルミニウム合金を用いる。11質量%未満では所期する低い熱膨張係数を得ることができず、20質量%を超えると熱膨張係数はさらに低くなるが、延性が低下して圧延が困難になるとともに、切断や穴あけ等の後加工も困難となる。また、Si濃度が高くなると熱伝導率が低下するため、プリント配線基板等の放熱性が要求される用途には適さない。熱膨張係数と圧延性の両者を勘案すると、さらに好ましいSi濃度は18〜20質量%である。
Niは、Al3Niなる金属間化合物を形成してアルミニウム合金の熱膨張係数を低くする元素である。アルミニウム合金において圧延性に比較的大きい影響を与えるのは初晶Siであるが、Niの添加によりAl3Niなる金属間化合物を形成し、Si濃度を上記範囲に設定しても低い熱膨張係数を確保しつつ、圧延性を確保して圧延による薄板製造を可能にする。また、穴あけ等の加工性も確保することができる。Ni濃度が1質量%未満では熱膨張係数を低くする効果が乏しく、Ni濃度が6質量%を超えると合金の融点が高くなって、鋳造時の溶融温度を高くしなければならない。従って、本発明においてNi濃度は1〜6質量%とする。Ni濃度はAl−Si−Niの3元共晶点付近で融点が比較的低い5質量%付近が好ましく、さらに好ましいNi濃度は、4〜6質量%である。
また、アルミニウム合金の残部組成はAlおよび不純物である。不純物とは、Si、NiおよびAl以外の元素であり、合金の特性向上を目的として添加される元素、合金の特性を損なわない範囲で含有が許容される元素、および製造上不可避的に含有される元素を含むものである。
表1に参照されるように、上記組成のアルミニウム合金の熱膨張係数は約20×10-6/K〜約17×10-6/Kであるが、銅の熱膨張係数の17.0×10-6/Kに近似しており、本発明で製造したアルミニウム合金板をプリント配線基板(1)の基板として用いた場合に銅箔(4)との熱膨張係数の差を可及的に小さくすることができ、クラックの発生を軽減することが可能となる。
上述したアルミニウム合金は、圧延用の素材に対し、1パス以上の熱間圧延を行い、所望の板厚に成形する。圧延開始時の材料温度を所定の高温領域内に保つことで圧延中のマトリックスの流動性を確保し、鋳造時に生成されたAl3Ni金属間化合物を粉砕し分散させるとともに、マトリックス中に空隙が生じるのを防ぐことができる。これらの作用により、圧延中の割れが抑制されて良好な圧延性を得ることができる。
各パスにおける圧延温度は以下のようにして設定する。
材料となるアルミニウム合金の固相線温度よりも10〜50℃低い領域、即ち(固相線温度−50℃)〜(固相線温度−10℃)を圧延温度範囲とし、各パスの圧延開始時の材料温度を圧延温度範囲内の温度に設定する。前記圧延温度範囲は圧延に適した流動性が得られる温度領域であり、上限値が(固相線温度−10℃)を超えて高くなると粒界割れが生じて圧延に適さず、下限値(固相線温度−50℃)よりも低くなると流動性が不足してAl3Ni金属間化合物の粉砕および分散が不十分となるおそれがある。さらに好ましい圧延温度範囲は固相線温度よりも10〜30℃低い範囲、即ち(固相線温度−30℃)〜(固相線温度−10℃)である。
1回目のパスにおいて前記圧延温度範囲内の温度に設定して圧延しても、圧延中あるいはパスを重ねる毎に材料温度は自然低下する。そこで2回目以降のパスでは、パス前の材料温度が前記圧延温度範囲よりも低下した場合は、前記圧延温度範囲内となるように材料を再昇温し、前記圧延温度範囲内の温度で圧延を開始する。材料温度が低下しても圧延温度範囲内であれば再昇温することは任意であり、昇温することなく圧延しても良いし、昇温しても良い。2回目以降のパスにおいて再昇温する場合は必ずしも1回目のパスと同じ温度である必要はなく、圧延温度範囲内の任意温度に昇温すれば良い。前記圧延温度範囲内は圧延に適した流動性が得られる温度域であるから、リダクション率や圧延速度に応じて再昇温温度を適宜設定することができる。また、パス回数は限定されず、1パスのみの場合を含む任意回数である。
また、熱間圧延においては、板厚が薄くなるほど高リダクション率の圧延が可能である。下記式で表されるリダクション率(%)は、圧延後の板厚が10mmになるまでは10%以下、圧延後の板厚が10mm未満5mm以上のときに20%以下、圧延後の板厚が5mm未満のときに40%以下で圧延することが望ましく、各パスのリダクションを上記範囲で設定することにより、最終目的の厚さの板材を効率良く製造することができる。特に好ましいリダクション率は、圧延後の板厚が10mmになるまでは5〜7%、10mm未満5mm以上のときは10〜15%、5mm未満のときは20〜30%である。
リダクション率(%)={(圧延後の板厚−圧延前の板厚)/圧延前の板厚}×100
上述した熱間圧延には、所定組成の合金を鋳造した平板状鋳塊(スラブ)を供することも、ビレットを鋳造して押出成形した押出材を供することも、押出前のビレットを供することもできる。押出成形により材料の合金組織が微細化され、粗大組織による圧延割れを抑制することができる。ビレットの押出方法、押出条件は何ら制限を受けないが、好適にはビレット温度:430〜480℃の熱間で、押出速度0.1〜1m/minで押出成形することにより、良好に押し出すことができる。また、押出に際しては押出温度を一定に保つために、コンテナ温度も430〜480℃に設定しておくことが望ましい。特に好ましい押出条件は、ビレット温度:450〜470℃の熱間で、押出速度0.5〜0.7m/minである。
上述した工程で熱間圧延すれば、Al3Ni金属間化合物が粉砕されかつ分散されながら圧延されるため、良好な圧延性が得られ、薄板の製作が可能である。本発明において製作する板材の厚さは限定されないが、0.5〜4mmの薄板製作も可能である。また、製造されたアルミニウム合金板の金属組織においては、Al3Ni金属間化合物が粉砕されて平均粒径が20μm以下に微細化されている。
最終厚さまで圧延したアルミニウム合金板は、熱処理により熱膨張係数を低下させることができる。熱処理条件は450〜500℃で1〜5h保持することが好ましい。450℃未満または1h未満では上記効果に乏しく、500℃を超えると最終製品の機械的性質や形状に悪影響を及ぼすおそれがある。また5hを超えて長時間処理してもさらなる低熱膨張化は期待できない。さらに好ましい熱処理条件は、480〜500℃で1〜3である。
本発明の方法で製造したアルミニウム合金板の用途は限定されないが、低熱膨張性で薄板加工が可能であることから、プリント配線基板のアルミニウム基板として好適に用いることができる。低熱膨張性であるためにハンダクラックを低減することができ、特に冷熱サイクルが繰り返される環境、例えば車載用プリント配線基板のベース板として最適である。
前記用途において、好ましい板厚は0.5〜5mmであり、特に好ましい板厚さは0.5〜4mmである。その他の用途して、車載用、LED用、PDPドライバー用、液晶ドライバー用、各種パワートランジスター用の基板としても好適である。また、発熱する各種電子部品を搭載する筐体やシャーシ等の構造部材、その他の熱膨張による不具合を緩和する部品や部材等の各種用途に広く使用できる。
本発明のプリント配線基板は、図1に参照されるように、上述した本発明のアルミニウム合金材を基板(2)とし、このアルミニウム基板(2)上に絶縁層(3)を積層し、さらにこの絶縁層(3)上に所要回路形状の通電層(4)として銅箔が積層されたものである。プリント配線基板(1)においては、アルミニウム基板(2)の熱膨張係数が低いため、通電層(4)との熱膨張係数差が小さい。このため、通電層(4)上に取り付けられた電子部品(5)から発生する熱によって加熱と冷却が繰り返されても、反りが少なく、ハンダ(6)におけるクラック発生が抑制される。
絶縁層(3)は、クラッド材(10)に直接または間接的に接合される絶縁材料からなる。絶縁性が有れば絶縁材料は特に限定しないが、絶縁性樹脂または前記絶縁性樹脂に熱伝導性フィラーを配合した絶縁性樹脂組成物を推奨できる。これらの樹脂ベースの絶縁層は、アルミニウム基板および通電層との接合性が良く、かつセラミックに比べて割れにくく、大面積の基板の製作が可能である。なお、本発明において絶縁層(3)は前記絶縁性樹脂または絶縁性樹脂組成物に限定されるものではなく、セラミックも用いることができる。セラミックの場合は、例えば接着剤によりアルミニウム基板(2)に接合する。
前記絶縁性樹脂は、限定されないが、耐熱性が優れて熱膨張率が小さく、クラッド材(10)に密着して接着性の優れているものが好ましい。これらの条件を満たす樹脂として、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂を推奨できる。さらに、エポキシ樹脂は、特に銅箔との接着性が良く、吸湿性が少なく、かつ安価である点でも推奨できる。ポリイミド樹脂は、耐薬品性が優れるとともに厚さ方向の熱膨張率が小さく、変形が抑制される点でも推奨できる。
また、前記絶縁性樹脂に熱伝導性フィラーを配合した絶縁性樹脂組成物を用いることによって、絶縁層の熱伝導性を高め、ひいては放熱性能を高めることができる。熱伝導性フィラーは絶縁体であって高熱伝導率を有するものが好ましく、その例としては、金属酸化物または金属窒化物が挙げられ、具体的にはSiO2、Al23、BeO、MgO、Si34、BN、AlNを例示できる。これらの熱伝導性フィラーは単独で使用しても任意の複数種を併用しても良い。熱伝導性フィラーは、樹脂組成物中の濃度が多くなるほど絶縁層(3)の熱伝導率が高くなり、40〜90容量%が好ましい。40容量%未満では熱伝導率向上効果が乏しく、90容量%を越えるとアルミニウム基板(2)との密着性が低下して放熱性能が低下する。特に好ましい濃度は60〜80容量%である。また、熱伝導性フィラーの粒径は絶縁層の厚さよりも小さければよく、10〜40μmが好ましい。
絶縁層(3)の厚さは、上記の2種類のいずれの場合も0.01〜0.5mmが好ましい。
上述したクラッド材(10)、絶縁層(3)、通電層(4)の接合は、例えばホットプレス等の周知の方法により適宜行う。
例えば、絶縁層(3)の絶縁性樹脂として熱硬化性樹脂を用いたホットプレスの一例を説明すると、通電層(4)、絶縁層(3)、アルミニウム基板(2)を重ね合わせ、上下をステンレス鋼板で挟み、さらにクッション材を介して押圧し、加熱する。このホットプレスにより、絶縁層(3)が硬化するとともにアルミニウム基板(2)と通電層(4)に接合され、これらが一体化される。また、絶縁層(3)の一部に通電層(4)を接合する場合は、位置合わせシートおよび当て板を用いて接合を行っても良い。即ち、位置合わせシートに通電層(4)を張り付け、通電層(4)に対応する位置に孔をあけた当て板を介して絶縁層(3)上に配置し、アルミニウム基板(2)に重ねる。これらをステンレス鋼板で挟み、さらにクッション材を介して押圧して加熱しても良い。これにより、絶縁層(3)の所定位置に通電層(4)が接合される。通電層に用いられる銅は、純銅でも銅合金でも良く、銅板、銅箔、銅メッキ層等など製法、形状による制限は受けない。
材料合金として、表1の合金記号a〜hに示す組成のAl−Si−Ni合金を用いた。表1に、各合金の固相線温度および熱膨張係数を示す。前記熱膨張係数は後述する圧延試験1で製作した厚さ2mmの圧延板で測定したものである。これらのAl−Si−Ni合金を合金記号i〜kのAl−Si合金と比較すると、Niの添加によりSi濃度を下げても同等の低い熱膨張性を得られることがわかる。なお、Al−Si合金の熱膨張係数は、材料合金をブックモールド法により製作した鋳塊により測定したものである。
また、各Al−Si−Ni合金は固相線温度が560℃であるから、本発明で規定する圧延開始時の温度範囲は510〜550℃であり、特に好ましい温度範囲は530〜550℃である。
Figure 0004668855
[圧延試験1:No.1a〜1h]
表1の合金記号a〜hのAl−Si−Ni合金について、ブックモールド法により鋳塊を製作し、面削により厚さ15mmの圧延用素材とした。この素材に対し、13パスの熱間圧延を行い、最終厚さが2mmのアルミニウム合金板を製作した。1パス毎に圧延開始時の材料温度を540℃に昇温するものとし、各パス毎に厚さを1mm減じるように熱間圧延した。各パスにおけるリダクションは表2に示すとおりである。
各パスにおいて圧延材の割れの状況を観察し、割れがないものまたは微細な割れで実用上支障のないものを○、割れが生じたものを×で評価し、評価結果を表2に示す。さらに、最終厚さの板についてAl3Ni金属間化合物の粒径を測定したところ、いずれの合金においても平均粒径が20μm以下であった。
[圧延試験2:No.2a〜2h]
表1の合金記号a〜hのAl−Si−Ni合金について、ブックモールド法によりビレットを鋳造し、コンテナ温度:450℃、ビレット温度:450℃、押出速度:1.0m/minで厚さ15mmの平板を押出し、圧延用素材とした。この素材に対し、No.1a〜1hと同じ条件で13パスの熱間圧延を行い、最終厚さが2mmのアルミニウム合金板を製作した。表2に各パスにおける材料の割れの状況および最終厚さの板におけるAl3Ni金属間化合物の粒径を示す。
Figure 0004668855
表2より、全てのパスにおいて圧延開始時の材料温度を圧延温度範囲内の一定温度に昇温することにより薄板に圧延できることを確認した。
[圧延試験3:No.3a〜3h]
上記圧延試験1と同じ方法で鋳造・面削した圧延用素材に対し、10パス目まで上記圧延試験1と同じ条件で圧延し、11パス目をリダクション40%で圧延し、12パス目をリダクション33.3%で圧延し、最終厚さが2mmのアルミニウム合金板を製作した。表3に各パスにおける材料の割れの状況および最終厚さの板におけるAl3Ni金属間化合物の粒径を示す。
[圧延試験4:No.4a〜4h]
上記圧延試験2と同じ方法で押し出した圧延用素材に対し、10パス目まで上記圧延試験2と同じ条件で圧延し、11パス目をリダクション40%で圧延し、12パス目をリダクション33.3%で圧延し、最終厚さが2mmのアルミニウム合金板を製作した。表3に各パスにおける材料の割れの状況および最終厚さの板におけるAl3Ni金属間化合物の粒径を示す。
Figure 0004668855
表3より、圧延後の板厚が5mm未満となるパスではリダクションを高くしても材料が割れることなく圧延できることを確認した。
[圧延試験5:No.5a〜5h]
上記圧延試験1と同じ方法で鋳造・面削した圧延用素材に対し、1回目のパスは材料温度を540℃に昇温して圧延し、2回目以降のパスは、パス前の材料温度が前記圧延温度範囲よりも低下したとき、即ち510℃未満に低下したときのみ540℃に再昇温して圧延した。表4において圧延温度が「540℃」と示したパスは再昇温したパスであり、その他の温度を記載したパスは前パス中に自然低下した材料温度のままで圧延したものである。また、各パスのリダクションおよび圧延後の板厚は圧延試験1と同じである。
表4に各パスにおける材料の割れの状況および最終厚さの板におけるAl3Ni金属間化合物の粒径を示す。
Figure 0004668855
[圧延試験6:No.6a〜6h]
上記圧延試験2と同じ方法で押し出した圧延用素材に対し、1回目のパスは材料温度を540℃に昇温して圧延し、2回目以降のパスは、パス前の材料温度が前記圧延温度範囲よりも低下したとき、即ち510℃未満に低下したときのみ540℃に再昇温して圧延した。表5において圧延温度が「540℃」と示したパスは再昇温したパスであり、その他の温度を記載したパスは前パス中に自然低下した材料温度のままで圧延したものである。また、各パスのリダクションおよび圧延後の板厚は圧延試験1と同じである。
表5に各パスにおける材料の割れの状況および最終厚さの板におけるAl3Ni金属間化合物の粒径を示す。
Figure 0004668855
表4および表5より、材料温度が圧延温度範囲外に低下したときのみ昇温した場合でも薄板に圧延できることを確認した。
[圧延試験7:No7a〜7h]
比較例として、表1の合金記号a〜hのAl−Si−Ni合金について510〜550℃の圧延温度範囲よりも低い温度で圧延した。圧延は圧延試験1と同じく鋳造および面削により製作した圧延用素材に対し、1パス毎に圧延開始時の材料温度を480℃に昇温し、各パス毎に厚さを1mm減じるように熱間圧延した。この圧延において、表6に示すように、1パス目で割れが発生し、2パス目でその割れが拡大した。
[圧延試験8:No.8a〜8h]
比較例として、表1の合金記号a〜hのAl−Si−Ni合金について510〜550℃の圧延温度範囲よりも低い温度で圧延した。圧延は圧延試験2と同じ方法で押し出した圧延用素材に対し、1パス毎に圧延開始時の材料温度を480℃に昇温し、各パス毎に厚さを1mm減じるように熱間圧延した。この圧延において、表6に示すように、1パス目で割れが発生し、2パス目でその割れが拡大した。
Figure 0004668855
表6より、合金の固相線温度に基づいて設定した圧延温度範囲よりも低い温度では薄板製作ができなかった。
[最終圧延材に対する熱処理]
圧延試験1および圧延試験2で製作した厚さ2mmの圧延板に対し、500℃で3時間の熱処理を行った。熱処理の前後における熱膨張係数を表7に示す。
Figure 0004668855
表7より、圧延後に熱処理を施すことで熱膨張係数を低下させ得ることを確認した。
本発明のアルミニウム合金材の製造方法によれば低熱膨張性の薄板製作が可能であり、プリント配線基板のアルミニウム基板等の熱膨張によって不具合を生じる部材材料として広く利用することができる。
プリント配線基板の断面図である。
符号の説明
1…プリント配線基板
2…アルミニウム基板
3…絶縁層
4…通電層(銅箔)

Claims (9)

  1. Si:11〜20質量%およびNi:1〜6質量%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金素材に対し、1パス以上の熱間圧延により板材を製造するに際し、
    各パスにおける圧延開始時の材料温度を、前記アルミニウム合金の固相線温度よりも10〜50℃低い範囲内に設定することを特徴とするアルミニウム合金板の製造方法。
  2. 前記材料温度を、前記アルミニウム合金の固相線温度よりも10〜30℃低い範囲内に設定する請求項1に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
  3. 熱間圧延を、圧延後の板厚が10mmになるまでは10%以下のリダクション率で行い、10mm未満5mm以上になるまでは20%以下のリダクション率で行い、5mm未満では40%以下のリダクション率で行う請求項1または2に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
  4. 熱間圧延に供する素材を、ビレット温度:430〜480℃、押出速度0.1〜1m/minの押出成形により製作する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
  5. 熱間圧延後の板材に450〜500℃で1〜5hの熱処理を施す請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により製造したことを特徴とするアルミニウム合金板。
  7. 金属断面組織においてAl3Ni金属間化合物の平均粒径が20μm以下である請求項6に記載のアルミニウム合金板。
  8. 請求項6または7に記載されたアルミニウム合金板をアルミニウム基板とし、このアルミニウム基板上に絶縁層があり、さらにこの絶縁層上に銅があることを特徴とするプリント配線基板。
  9. 前記絶縁層は、絶縁性樹脂または前記絶縁性樹脂に熱伝導性フィラーを配合した絶縁性樹脂組成物を含む、請求項8に記載のプリント配線基板。
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