JP4665758B2 - チオヌクレオシド−s−ニトロシル誘導体 - Google Patents
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Description
一方、一酸化窒素(NO)は細胞内情報伝達物質として重要な働きをもっている(例えば、L.J.Ignarro,Pharmacology & Toxicology,67(1),1,(1990)など)。また生体内ではS−ニトロソチオールが一酸化窒素(NO)運搬体として作用していると考えられている(例えば、D.L.H.Williams,Acc.Chem.Res.,32,869(1999)など)。一酸化窒素(NO)は、情報伝達の役割以外に生体内で酸化剤として作用し、DNA又はRNA中の塩基と反応し、点変異の原因となることがあると考えられている。そして、化学的な実験では、非特異的に変異が誘起されることが示されている(例えば、J.L.Caulfield,J.S.Wishnok,S.R.Tannenbaum,J.Biol.Chem.273(21),12689(1998);N.Y.Tretyakova,S.Burney,B.Pamir,J.S.Wishnok,P.C.Dedon,G.N.Wogan,S.R.Tannenbaum,Mutation Research 447(2),287(2000)など。)
最近、修飾オリゴヌクレオチドを用いてミスマッチを含む2重挿入部分を作製し、DNA鎖交換によるDNA修復方法が報告された(M.D.Drury,E.B.Kmiec,Nucleic Acids Research 31(3),899(2003))。しかしながら、この方法は、モデル実験系ではあるが修復効率が低く、また細胞系への展開に関しても多くの解決すべき課題を持っている。
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、天然の核酸塩基の基本構造のカルボニル基をチオカルボニル基に変換した構造を組み込んだオリゴヌクレオチドを利用し、ニトロシル化を行うことによって新規なニトロシル化合物を含むオリゴヌクレオチドの合成に成功した。さらに、このオリゴヌクレオチドが配列特異的にかつ塩基特異的に、ニトロシル基を転移させることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)次式(I):
〔式中、R1はリボース、2−デオキシリボース又はこれらの誘導体を表し、R2は水素原子、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、R3−オキシ基又はR3−アミノ基(R3は、置換されてもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換されてもよい炭素数1〜15のアシル基を表す。)を表す。〕
で示されるチオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体又はその塩。
(2)次式(II):
〔式中、R1はリボース、2−デオキシリボース又はこれらの誘導体を表し、R2は水素原子、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、R3−オキシ基又はR3−アミノ基(R3は、置換されてもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換されてもよい炭素数1〜15のアシル基を表す。)を表す。〕
で示されるチオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体又はその塩。
(3)次式(III):
(R1はリボース、2−デオキシリボース又はこれらの誘導体を表し、R2’は酸素原子、硫黄原子又はイミノ基を表す。)
で示されるチオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体又はその塩。
(4)次式(IV):
〔式中、R1はリボース、2−デオキシリボース又はこれらの誘導体を表し、R2は水素原子、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、R3−オキシ基又はR3−アミノ基(R3は、置換されてもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換されてもよい炭素数1〜15のアシル基を表す。)を表す。〕
で示されるチオヌクレオシドとS−ニトロシル化合物とを反応させることを特徴とするチオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体の製造方法。
(5)次式(V):
〔式中、R1はリボース、2−デオキシリボース又はこれらの誘導体を表し、R2は水素原子、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、R3−オキシ基又はR3−アミノ基(R3は、置換されてもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換されてもよい炭素数1〜15のアシル基を表す。)を表す。〕
で示されるチオヌクレオシドとS−ニトロシル化合物とを反応させることを特徴とするチオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体の製造方法。
(6)次式(VI):
〔式中、R1はリボース、2−デオキシリボース又はこれらの誘導体を表し、R2’は酸素原子、硫黄原子又はイミノ基を表す。〕
で示されるチオヌクレオシドとS−ニトロシル化合物とを反応させることを特徴とするチオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体の製造方法。
(7)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の誘導体又はその塩を含むオリゴ核酸。
本発明のオリゴ核酸としては、例えば少なくとも12塩基の長さを有するものが挙げられる。
(8)前記(7)記載のオリゴ核酸と該オリゴ核酸に対する相補鎖とを反応させることにより、前記オリゴ核酸に含まれるニトロシル基をその対応塩基に転移させることを特徴とするニトロシル基の転移方法。
(9)前記(7)記載のオリゴ核酸とその相補鎖とを反応させ、得られる反応産物を酸性条件下で処理することを特徴とする塩基配列の変異誘発方法。
本発明の変異誘発方法によれば、オリゴ核酸とその相補鎖との反応産物において、前記オリゴ核酸に含まれるニトロシル基をその相補鎖側の対応塩基に転移させることにより、当該対応塩基をウラシルに変異させることができる。
(10)前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の誘導体並びに前記(7)記載のオリゴ核酸からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、塩基配列の変異誘発剤又は塩基配列の変異誘発用キット。
図2は、N−ニトロソ体のカルボニル基への加水分解反応を示す図である。
図3は、本発明のヌクレオシド誘導体の合成工程を示す図である。
図4は、本発明のヌクレオシド誘導体のHPLCの結果を示す図である。
図5は、本発明のニトロシル化オリゴ核酸の合成工程を示す図である。
図6は、ニトロシル化オリゴ核酸生成のHPLCの結果を示す図である。
図7は、ニトロシル化オリゴ核酸DAF−2の蛍光強度の増大曲線を示す図である。
図8は、オリゴヌクレオチドとその相補鎖の配列およびそれらの反応を示す図である。
図9は、NO−転移反応を行ったHPLCの結果を示す図である。
図10は、オリゴヌクレオチド7を用いてNO−転移反応を行った経時変化を示す図である。
図11は、オリゴヌクレオチド7とオリゴヌクレオチド9とのDAF−2との反応生成物を分析し、NOの存在を確認したHPLC図である。
図12は、オリゴヌクレオチド8にNO−転移が起こり生成した9の酵素分解物をHPLC分析することによりシチジンがデオキシウリジンおよびにシチジンジアゾエート体に変異したことを示す図である。
図13は、オリゴヌクレオチド8にNO−転移が起こり生成した9の酵素分解物をHPLC分析することにより5メチルシチジンがチミジンおよび5メチルシチジンンジアゾエート体に変異したことを示す図である。
本発明の誘導体は、チオヌクレオシドの硫黄原子上にニトロシル基が結合した構造を有することを特徴とする。また、本発明の誘導体は、特定の塩基を認識しこれに結合することにより、自己が持つニトロシル基を相手の塩基に転移させることを特徴とするものである。
1.チオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体
上記の一般式(I)、(II)又は(III)で示される本発明の化合物(チオヌクレオチド−S−ニトロシル誘導体)において、R1はリボース、2−デオキシリボース又はこれらの誘導体を表す。R2は、水素原子、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、R3−オキシ基、R3−アミノ基を表す。R2’は酸素原子、硫黄原子又はイミノ基を表す。
ここでR3は、置換されてもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換されてもよい炭素数1〜15のアシル基を表す。但し、アルキル基又はアシル基の炭素数は、好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜5である。
アルキル基としては、直鎖、分枝鎖又は環状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
炭素数1〜15のアシル基とは、直鎖状又は分岐して、置換されてもよいアルキルアシル基、置換されてもよいシクロアルキルカルボニル基、又は置換されてもよいベンゾイル基等を表す。
例えば、アルキルアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、n−ブチリル基、イソブチリル基、2−メチルブチリル基、3−メチルブチリル基、ピバロイル基、バレリル基、2−メチルバレリル基、カプロイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基等が挙げられる。
また、シクロアルキルカルボニル基としては、シクロプロパンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、シクロペンタンカルボニル基等が挙げられる。
置換されてもよいベンゾイル基において、フェニル基上の置換基は無置換でもよく、フェニル基上の2位、3位、4位のいずれかの位置が置換されてもよい。また、複数の位置に置換基があってもよく、その場合の置換基は同一であってもそれぞれ異なるものでもよい。
フェニル基上の置換基としては、例えばアルキル基(メチル基、エチル基、イソプロピル基等);アルキルオキシ基(メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基等);置換又は無置換アミノ基(ニトロ基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等);ハロゲン基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等);アシル基(ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等);アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等);アミド基(ホルムアミド基、アセトアミド基、ベンズアミド基等);芳香環(フェニル基等)などが挙げられる。
置換されてもよいベンゾイル基としては、具体的にはベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、3−メトキシベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、3−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、3,5−ジニトロベンゾイル基、2−アミノベンゾイル基、3−アミノベンゾイル基、4−アミノベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、2−ブロモベンゾイル基、3−ブロモベンゾイル基、4−ブロモベンゾイル基、3,5−ジクロロベンゾイル基、2,4−ジクロロベンゾイル基、パークロロベンゾイル基、4−フェニルベンゾイル基等が挙げられる。
リボース又はデオキシリボースは、次式(VII):
で示されるものである。ここで、式(VII)において、R4は、水酸基(リボースの場合)又は水素原子(デオキシリボースの場合)を表す。R5及びR6は、リボース及びデオキシリボース並びにこれらの誘導体のいずれの場合であっても、互いに独立し、同一又は異なって、例えば水素原子、ハロゲン基、置換されてもよい水酸基を表す。
R5及び/又はR6においてハロゲン基とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表す。また、R4及び/又はR5において置換された水酸基としては、一般的な水酸基の保護基となりうる置換基により置換された水酸基(例えばカルボン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、ウレタン、シリル基等)を表す。
水酸基の保護基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシエチル基、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ベンゾイルオキシエチル基等);アリール基(フェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基等);アシル基(ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、3−メトキシベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、3−メチルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、4−フェニルベンゾイル基等);ウレタン基(アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基等);スルホン酸エステル基(メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、2−メチルベンゼンスルホニル基、3−メチルベンゼンスルホニル基、4−メチルベンゼンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、トリクロロメタンスルホニル基等);シリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等)が挙げられる。
本発明の式(I)に示される化合物のうち、好ましい例としてはR1がデオキシリボースであり、かつ、R2がアミノ基のものが挙げられる。さらに好ましくは、R1がリボース又はデオキシリボースの3’,5’−ビス−t−ブチルジメチルシリル誘導体であり、かつ、R2がアミノ基のものが挙げられる。
本発明の式(II)に示される化合物のうち、好ましい例としてはR1がデオキシリボースであり、かつ、R2がアミノ基のものが挙げられる。さらに好ましくは、R1がリボース又はデオキシリボースの3’,5’−ビス−t−ブチルジメチルシリル誘導体であり、かつ、R2がアミノ基のものが挙げられる。
本発明の式(III)に示される化合物のうち、好ましい例としてはR1がデオキシリボースであり、かつ、R2’が酸素原子又はイミノ基のものが挙げられる。さらに好ましくは、R1がリボース又はデオキシリボースの3’,5’−ビス−t−ブチルジメチルシリル誘導体であり、かつ、R2’が酸素原子又はイミノ基のものが挙げられる。
2.本発明の化合物の製造
一般式(I)、(II)又は(III)で示される本発明の化合物は、既知の反応を工夫することにより合成することができる。
(1)式(I)で示される化合物の製造
本発明において、式(I)で示される化合物を製造する場合は、次式(IV):
(R1及びR2は前記と同様である。)で示されるチオヌクレオシド化合物とニトロシル化合物とを反応させる。反応の一例を以下に示す。
すなわち、(IV)に示す化合物が水溶性の場合は、炭酸緩衝液(pH10)に溶解し、約0.5mM濃度の溶液を調製する。この溶液にニトロシル化試薬(約1mM)を加え室温で12時間反応させる。反応液をHPLC(ODSカラム、溶媒:0.1M酢酸トリエチルアミン−アセトニトリル:10%から30%、リニアグラジエント、254nmで検出)で精製し、目的のS−ニトロシル体を得る。(IV)に示す化合物が難水溶性の場合は、有機溶媒(例えばアセトニトリルあるいはメタノールなど)に溶解し、トリエチルアミンを原料の10倍当量加えて反応させる。ニトロシル化試薬としては、例えばS−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン、一酸化窒素などが挙げられる。
亜硝酸ナトリウムを用いて反応を行う場合には、酸性緩衝液(pH3)に溶解し、約1.0倍当量用いて行う。
(2)式(II)で示される化合物の製造
また、式(II)で示される化合物を製造する場合は、次式(V):
(R1及びR2は前記と同様である。)
で示されるチオヌクレオシドとニトロシル化合物とを反応させる。反応の一例を以下に示す。
すなわち、(V)に示す化合物が水溶性の場合は、炭酸緩衝液(pH10)に溶解し、約0.5mM濃度の溶液を調製する。この溶液にニトロシル化試薬(約1mM)を加え室温で12時間反応させる。反応液をHPLC(ODSカラム、溶媒:0.1M酢酸トリエチルアミン−アセトニトリル:10%から30%、リニアグラジエント、254nmで検出)で精製し、目的のS−ニトロシル体を得る。(IV)に示す化合物が難水溶性の場合は、有機溶媒(例えばアセトニトリルあるいはメタノールなど)に溶解し、トリエチルアミンを原料の10倍当量加えて反応させる。ニトロシル化試薬としては、例えばS−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン、一酸化窒素などが挙げられる。
亜硝酸ナトリウムを用いて反応を行う場合には、酸性緩衝液(pH3)に溶解し、約10倍当量用いて行う。
(3)式(III)で示される化合物の製造
式(III)で示される化合物を製造する場合は、次式(VI):
(R1及びR2’は前記と同様である。)
で示されるチオヌクレオシドとニトロシル化合物とを反応させる。反応の一例を以下に示す。
すなわち、(VI)に示す化合物が水溶性の場合は、炭酸緩衝液(pH10)に溶解し、約0.5mM濃度の溶液を調製する。この溶液にニトロシル化試薬(約1mM)を加え室温で12時間反応させる。反応液をHPLC(ODSカラム、溶媒:0.1M酢酸トリエチルアミン−アセトニトリル:10%から30%、リニアグラジエント、254nmで検出)で精製し、目的のS−ニトロシル体を得る。(IV)に示す化合物が難水溶性の場合は、有機溶媒(例えばアセトニトリルあるいはメタノールなど)に溶解し、トリエチルアミンを原料の10倍当量加えて反応させる。ニトロシル化試薬としては、例えばS−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン、一酸化窒素などが挙げられる。
亜硝酸ナトリウムを用いて反応を行う場合には、酸性緩衝液(pH3)に溶解し、約10倍当量用いて行う。
(4)本発明の化合物の塩
上記一般式(I)、(II)又は(III)で示される本発明の化合物は、酸付加塩又は塩基付加塩を形成する場合があるが、このような塩も本発明の範囲に包含される。本発明の化合物を生体に適用可能なオリゴ核酸及びその製造中間体として用いる場合には、塩としては生理的に許容されるものが好ましい。塩基付加塩としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミン、アンモニア、ジエチルアミン等のアミン類の塩、又はナトリウム、カリウム、カルシウム若しくはマグネシウム等の金属類の塩を挙げることができる。酸付加物として例えば、塩酸、硫酸、若しくは過塩素酸等の鉱酸類の塩;又はシュウ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルフォン酸若しくはp−トルエンスルフォン酸等の有機酸等との塩を挙げることができる。
3.オリゴ核酸
一般式(I)、(II)又は(III)で示される本発明の化合物はヌクレオシドであるため、これにリン酸をエステル結合させるとヌクレオチドとなり、核酸の構成成分となる。
このようにして得られたヌクレオチドは、適当なオリゴ核酸に組み入れて、配列特異的にニトロシル基を転移するオリゴ核酸として使用することができる。「ニトロシル基を転移する」とは、本発明のオリゴ核酸中のニトロシル基(本発明の化合物中に存在するニトロシル基)を、当該オリゴ核酸と反応する相手側の核酸中の塩基であって2本鎖(錯体)を形成している当該相手側の塩基(標的塩基ともいう)に転移することを意味する(図1)。
本発明のオリゴ核酸の配列は、特に限定されるものではなく、鋳型となる核酸配列に応じて設計することも、ランダムな塩基配列となるように設計することもできる。ある遺伝子の塩基配列にニトロシル基を転移させようとする場合は、当該遺伝子の標的塩基配列に相補的となるようにオリゴ核酸を設計することができる(この場合、本発明のオリゴ核酸側から見れば、当該遺伝子の塩基配列がオリゴ核酸の相補鎖となる)。本発明のオリゴ核酸をランダムな塩基配列となるように設計した場合は、そのいずれかの塩基にニトロシル基が導入されている。従ってこれらのニトロシル基を転移させるように、上記ランダムな塩基配列に相補的な配列を有する核酸を合成することができる(この場合、本発明のオリゴ核酸側から見れば、その合成された核酸がオリゴ核酸の相補鎖となる)。
本発明のオリゴ核酸配列の長さは、その標的塩基に本発明の化合物中のニトロシル基を転移することができる限り特に限定されるものではない。本発明においては、少なくとも12塩基を有していることが好ましく、15〜22塩基であることがより好ましい。本発明の化合物をオリゴ核酸中に組み入れる位置は、任意の位置でよいが、特に配列特異性を発現させる場合には、本発明の化合物が、好ましくはオリゴ核酸の両末端から3番目より内側に位置するように組み入れるとよい。例えば、図5において、本発明のオリゴ核酸7は16塩基を有しており、そのうち本発明の化合物は5番目に位置している。さらに、本発明のオリゴ核酸中に含まれる本発明の化合物は、1箇所である必要はなく、複数箇所であってもよい。すなわち、本発明のオリゴ核酸において、ニトロシル基を導入する標的塩基の数は特に限定されるものではない。そして、誘導体の存在位置が複数箇所の場合は、2箇所以上連続してもよく、不連続でもよい。
オリゴ核酸の製造は、既知の方法、市販の核酸合成用試薬及び核酸合成装置より合成することができる。以下に式(IV)[R1が2−デオキシリボースのもの]を用いた合成例について記す。式(IV)の5’−O−p−ジメトキシトリチル−3’−O−(β−シアノエチル−ジイソプロピルフォスフォロアミダイト)体(約80mmol)を無水アセトニトリルに溶解し、DNA自動合成装置(Applied Biosystems 394 DNA/RNA Synthesizer)に装着する。合成装置内蔵の標準プログラムによって、1μmolカラムを用いて合成し、合成終了後、28%アンモニア水中にて固相カラムから切り出し、55℃にて5時間加温して塩基の脱保護を行い、ODSカラムを接続したHPLCにて精製する(ODSカラム、アセトニトリル−0.1M TEAA=10%−40%リニアグラジュエント/20分)。さらに、ポーラスカラムでp−ジメトキシトリチル基の脱保護および精製を行う(50mM酢酸アンモニア,pH10→5%アセトニトリル−50mM酢酸アンモニア→2%トリフルオロ酢酸→50mM酢酸アンモニア→65%メタノール)。純度検定および構造確認は、例えばMALDI−TOF MS(Perseptive Biosystems,Voyager Elite,3−hydroxy−2−picolinic acid−diammonium hydrogen citrate matrix)による分子量測定によって行うことができる。
4.ニトロシル基の転移反応
一般式(I)、(II)又は(III)で示される化合物がニトロシル基を転移する機構は、図1に示すように相補的な水素結合で形成される錯体構造中で実現される。なお、このような機能を損なわない限り、一般式(I)、(II)又は(III)において複素環に結合しているR2には、水素原子、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、R3−オキシ基、R3−アミノ基、あるいはその他のヘテロ原子(R3は前記と同様である)を導入することも可能である。
反応条件は、例えば、一般式(I)で示される化合物を組み込んだ核酸(約25μM)と相補的な配列のDNA(約25μM)を0.05M MES,0.1M NaClを含む緩衝液(pH7)に溶解し、室温で反応させる。反応の進行はHPLC(ODSカラム、アセトニトリル−0.1M TEAA=10%−40%リニアグラジュエント/20分)で追跡することができる。
一般式(I)、(II)又は(III)で示される本発明の化合物は、その塩基の種類に応じて遺伝子の特定の塩基を認識し、これに結合することができ、さらに、化合物(I)、(II)又は(III)から製造され該化合物を構成成分として含有するオリゴ核酸は、そのような塩基を含む1本鎖核酸とハイブリダイズさせて2本鎖を形成することができる。
ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる。ストリンジェントな条件とは、例えば、塩(ナトリウム)濃度が50〜900mMであり、温度が10〜50度C、好ましくは塩(ナトリウム)濃度が50〜150mMであり、温度が25度Cでの条件をいう。
本発明において、ニトロシル基転移反応を行う対象となる塩基は、特に限定されるものではなく、プリン塩基(アデニン、グアニン)及びピリミジン塩基(シトシン、チミン)のどちらでもよい。 例えば、下記の実施例に示すように、塩基構造として式(I)に示すプリン塩基(例えばグアニン)を用いた場合には、化合物(I)は対応するシトシン塩基を認識し、この塩基を含む核酸に対して特異的にニトロシル基転移反応を実現するのに有用である。なお、「対応する」とは、それぞれの塩基に対して相補的であることを意味する。従って、例えばグアニンに対応する塩基はシトシンとなる。
水素結合形成のための塩基が他のものでも同様であり、式(II)又は(III)におけるピリミジン塩基(シトシン、チミン)を使用した場合は、対応する塩基(それぞれG、A)に対する反応も可能である。
反応は、図1に示す水素結合錯体内で実現される。さらに、N−ニトロソシトシンはウラシルに加水分解されることが報告されている(例えばR.Glazer,R.Sundeep,M.Lewis,M.−S.Son,S.Meyer,J.Amer.Chem.Soc.,121,6108(1999)など)。そこで、本発明においては、配列特異的にシチジンをデオキシウリジンに変換することができる(図2)。すなわち、オリゴ核酸中のシトシンがウラシルに変異する。このときの変換反応は、酸性条件下で行われる。酸性条件は水溶液あるいは有機緩衝溶液などの反応溶液に、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸などを加えpH2〜6、好ましくは4〜5に調節する。さらに各種の有機酸などを用いてpHを調整することもできる。反応温度は10〜30℃、好ましくは15〜25℃であり、反応時間は10〜40時間、好ましくは20〜30時間である。
本発明の化合物は、配列特異的ニトロシル基転移反応によりNO活性種を特定の場所に運ぶ、いわゆるドラッグデリバリー用化合物として利用することが可能である。
5.塩基配列の変異誘発剤又は変異誘発用キット
本発明の化合物又はオリゴ核酸は、塩基配列の変異誘発剤又は変異誘発用キットとして使用することができる。本発明の変異誘発剤又はキットは、本発明の化合物又はオリゴ核酸のうち少なくとも1つを含むものであり、全部を含めることもできる。「塩基配列」とは、DNA、cDNA、RNA、mRNAなどの核酸の塩基配列を意味し、生物由来のものであると人工的に合成されたものであるとを問わない。鋳型となる核酸は、細菌、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、あるいは哺乳動物などから公知手法により採取することができ、ゲノム、プラスミドなど、核酸を有するあらゆるものを使用することができる。
オリゴ核酸は、上記鋳型核酸の塩基配列のうち、変異を誘発させたい塩基の位置と同じ位置に本発明の化合物が位置するように、すなわち、鋳型となる塩基配列にハイブリダイズするように合成する。合成後は、目的の鋳型核酸とハイブリダイズさせ、前記のニトロシル転移反応を行い、前記の酸性条件下で処理すればよい。
本発明のキットには、本発明の化合物のほか、ハイブリダイゼーション溶液、洗浄用緩衝液、蛍光発色試薬などを含めることができる。
〔実施例1〕 チオヌクレオシド−S−ニトロシル誘導体の合成
既知の方法(M.Kadokura,T.Wada,K.Seio,and M.Sekine J.Org.Chem.,65,5104−5113(2000))により合成した2’−デオキシ−6−チオグアノシン(t−ブチルジメチルシリル誘導体)(0.25μmol)、SNAP(2,S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン)(0.25μmol)、トリエチルアミン(0.28μmol)のメタノール溶液(500μl)を0℃にて攪拌した。反応液を直接HPLC−MSに注入し、ESI−MSを測定した(図4)。HPLC条件は以下の通りである。
カラム:Sym,etry C18 2x50mm
カラム温度:25℃
移動相:A=H2O,B=MeOH,%B=60−100%/5min then 100% 20min
流速:0.2mL/min
UV:254nm
HPLC溶出液をスプリッターで分離し、約1/40(約5μL)を質量分析器に導入した。質量分析はポジティブモードESI−TOFで行った。MS条件(Applied biosystem Mariner System 5299)は、Spray Tip Potential,4006,Nozzle potential 300,Nozzle temperature 140により行った。
質量分析結果を以下に示す。
tR 1.1min,MS m/z(M+H)+ found 541.1705,calcld 541.2443 for 3(C22H40N6S1O4Si2),tR 7.8min,MS m/z(M+H)+ found 701.4343,calcld 701.3001 for 4(CHNSOSi),tR 15.0min,MS m/z(M+H)+ found 1021.4972,calcld 1021.4854 for 5(C44H80N10S2O6Si4).
図4で示した時間経過の観察から、図3のスキーム3又は4に示す化合物が合成されていることが示された。
〔実施例2〕 オリゴ核酸の合成
既知の方法で合成したS−(2−シアノエチル)−2’−デオキシ−6−チオグアノシンの5’−O−ジメトキシトリチル−3’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)体を、DNA合成装置(型名:DNA/RNA Synthesizer、Applied Biosystems社)によりオリゴヌクレオチドに導入した。その後、28%アンモニア水中、55℃で5時間加熱することによりオリゴヌクレオチド6(図5のスキーム6:配列番号1)を得た。オリゴヌクレオチド6(150nmol)及びSNAP(3μmol)を炭酸塩緩衝液(pH10.0)300μlに溶解し、室温で12時間放置した。HPLCで反応の進行を確認した後、同じHPLC条件で新しく生成したピークを単離した。その結果、図5のスキーム7に示すオリゴヌクレオチド7(配列番号2)を得た。260nmでのUV吸光度により、収率は31%であった。また、MALDI−TOF MASSによる分子量測定を行った結果、理論値4797.76に対応する分子量4796.69の測定値を観測した。
〔実施例3〕 ヌクレオチド7の分解による[NO+]の発生試験
蛍光セル中にオリゴヌクレオチド7(図5)のMES緩衝溶液(0.05M MES,0.1M NaCl、pH5およびpH7に調整、1.5mL、オリゴヌクレオチド7:0.5μM)を入れ、この溶液にDAF−2(diaminofluoroscein、最終濃度4μM)を加え25℃にて撹拌した。この反応溶液の蛍光スペクトル(励起波長488nm,蛍光波長500−600nm)を経時的に測定した。また、同時にこの溶液から経時的に1μlをサンプリングし、HPLCに注入してオリゴヌクレオチド7からオリゴヌクレオチド6への変化を観測した。
カラム:Nacalai tesque,COSMOSIL 5C18−MS(4.6x250mm);
移動相:A:0.1M TEAA Buffer,B:CH3CN,
B:10% to 30%/20min,40%/30min,linear gradient;
Flow rate:1.0ml/min;UV−monitor:260nm.
512nmにおける蛍光強度の相対値及びオリゴヌクレオチド6への変化率をグラフに表した(図6)。pH5ではオリゴヌクレオチド7からオリゴヌクレオチド6への変化と、同時に測定したDAF−2の蛍光強度の増大曲線(図7)とがよく一致する傾向を示した。
図7において、各グラフの記号の内容は以下の通りである。
●:pH5における反応でのDAF−2(diaminofluorosceine)の蛍光強度(相対的なNO濃度を示す)。
★:pH7における反応でのDAF−2の蛍光強度
■:pH5における反応での6の相対濃度:チオグアノシン体の再生を示す。
▲:pH7における反応での6の相対濃度
このことから、オリゴヌクレオチド7からオリゴヌクレオチド6への変化に伴い、[NO+]等価化学種がオリゴヌクレオチド7から溶液に放出されたことが示された。一方、pH7の反応溶液ではオリゴヌクレオチド7からオリゴヌクレオチド6への変化は殆ど起こらず、またDAF−2の蛍光強度にも殆ど変化がなかった(図7)。これらの結果から、オリゴヌクレオチド7は安定な[NO+]等価化学種の前駆体となっていることが判明した。
〔実施例4〕オリゴヌクレオチド7とその相補的オリゴヌクレオチド8との反応
図8のオリゴヌクレオチド7(ODN(7),)及びその相補鎖オリゴヌクレオチド8(ODN(8))を用いて、2本鎖DNA内NO−転移反応を行った。
反応は、ODN(7)及びODN(8,10−12)の各10μM、または1mMグルタチオンを用いて、100mM NaClを含む50mM MESバッファー中pH7、25℃で行った。
ODN(6):配列番号1
ODN(7):配列番号2
ODN(8):配列番号3
ODN(9):配列番号4
ODN(10):配列番号5
ODN(11):配列番号6
ODN(12):配列番号7
反応混合物は、HPLCにより分析した。HPLCの条件を以下に示す。
ODS column,1mL/min
移動相:A:0.1M TEAA Buffer,B:CH3CN,B:10% to 30%/20min,40%/30min
linear gradient
モニター:260nm
結果を図9及び10に示す。ODN(7)を、dC(シチジン)又はdmC(5−メチルシチジン)を有するODN(8)と反応させると、ODN(7)から6(配列番号1)への急速な変換反応が起こった。これに対し、dT、dA又はdGを有するODN(8)との反応速度は、バックグラウンドレベルであった。従って、ODN(7)は、dC及びdmCに対して高い選択性を有することが明確に示された。標的部位とは異なる部位にdCを有するODN(10−12)の場合は転移反応はなく、このことはODN(7)の高い部位選択性を有することを示すものである。また、グルタチオンは生理的濃度条件下(1mM)ではODN(7)と反応しなかった。これらの結果は、ODN(7)の高い選択的反応性は、二重鎖DNA中のS−NOチオグアノシンと標的dC又はdmCとの間における十分な近接効果によるものであることを示している。
〔実施例5〕S−NOオリゴヌクレオチド7およびNO転移オリゴヌクレオチド8とDAF−2との反応
オリゴヌクレオチド7とオリゴヌクレオチド8(X=C)との反応溶液にNO検出蛍光色素であるDAF−2を共存させて蛍光スペクトルの変化を追跡したところ、蛍光強度は殆ど変化しなかった。このことから、この反応でオリゴヌクレオチド7から放出された[NO+]等価化学種は溶液中に放出されていないことが確認された。NOが化合物2から3に転移することは、蛍光試薬DAF−2を用いて確認した(図11)。ODN(7)とDAF−2とを混合してpH3、室温で20分インキュベートし、混合物をNaOH溶液によりpH10まで上げてアルカリ化した後、HPLCを行った。NO種の存在はDAF−2のトリアゾール誘導体のピークを検出することにより明確に証明された。また、DAF−2を、転移反応8時間目の反応混合物から単離したODN(9)(X=dC又はdmC)と混合し、上記と同様にしてDAF−2トリアゾール誘導体のピークを検出した。その結果、ODN(7)について得られた結果とほとんど同一の強度のピークが表れた。これらの結果は、NOがODN(7)からODN(8)(X=dC,dmC)に高効率で転移され、NO転移ODN(9)は、単離条件下では安定であることを明確に示している。
〔実施例6〕反応後の相補的オリゴヌクレオチド9(X=C)の酸処理および酵素加水分解
図12に示すように、オリゴヌクレオチド7とオリゴヌクレオチド8をそれぞれ約20μM含むMES緩衝溶液(0.05M MES,0.1M NaCl、pH7)を、25℃で8時間反応させた。その後、溶液をpH5に調整し同じ温度でさらに30時間放置した。この反応混合物からオリゴヌクレオチド9をHPLCにより単離し、凍結乾燥した。
HPLC条件は以下の通りである。
カラム:Nacalai tesque,COSMOSIL 5C18−MS(4.6x250mm)
移動相:A=0.1M TEAAバッファー、B=CH3CN,10% to 30%/20min,40%/30min,linear gradient
流速:1.0ml/min
UVモニター:260nm
単離したオリゴヌクレオチド9を酵素により加水分解し、生成するヌクレオシドをHPLCで分析した。酵素分解およびHPLC条件は以下の通りである。
酵素分解反応
BAP:bacteria alkaline phosphatase
VPDE:venom phosphodiesterase
緩衝液:0.1M Tris,0.1M NaCl,14mM MgCl2,37度C pH7.
HPLC条件
カラム:Nacalai tesque,COSMOSIL 5C18−MS(4.6x250mm)
移動相:A=0.1M TEAAバッファー、B=CH3CN,10% to 30%/20min,40%/30min,linear gradient
流速:1.0ml/min
UVモニター:260nm
酵素分解物の分析結果ではオリゴヌクレオチド9に含まれるC,G,Aに加えて、2’−デオキシウリジンとシチジンジアゾエートがそれぞれ8%および14%で得られた(図12)。従って、オリゴヌクレオチド9の12番目の塩基C(3’末端から5番目)がオリゴヌクレオチド8の対応塩基(X=dU)と変化したこと(シトシンからウラシルへの変異)が示された。
〔実施例7〕反応後の相補的オリゴヌクレオチド9(X=5−メチルC)の酸処理および酵素加水分解
図13に示すように、オリゴヌクレオチド7とオリゴヌクレオチド8をそれぞれ約20μM含むMES緩衝溶液(0.05M MES,0.1M NaCl、pH7)を、25℃で8時間反応させた。その後、溶液をpH5に調整し,CaCl2 ZnCl2,あるいはMgCl2を加え(5mM)、同じ温度でさらに1日放置した。この反応混合物からオリゴヌクレオチド9をHPLCにより単離し、凍結乾燥した。これをBAP及びBPDEで加水分解した後、HPLCにかけた。酵素反応条件およびHPLC条件は以下の通りである。
酵素分解反応
BAP:bacteria alkaline phosphatase
VPDE:venom phosphodiesterase
緩衝液:0.1M Tris,0.1M NaCl,14mM MgCl2,37度C pH7.
ODS column,4.6×200mm,
移動相:A=50mM HCOONH4、B=CH3CN,2 to 20%/50min,linear gradient
流速:1.0ml/min
UVモニター:254nm
対照実験は、ODN(1)及び標的ODN(3)を用い、上記方法と同様にして行った。
結果を図13に示す。図13において、明らかにdTが生成していることが確認された。さらにアステリクス(*)で記したピークは、既報(Suzuki,T.et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.002,10,1063−1067)の通り合成したdmC−ジアゾエートの保持時間と同じ時間を示す。注目すべきことに、dmCからdTへの転換比は42%であり、dmC−ジアゾエート(13%)とともに高い値が得られた(図13)。
dG又はdAの脱アミノ化産物の生成を示す大きなピークが無いことから、このNO−転移反応が高い塩基選択性を有することを示している。これらの結果からNOはdC及びdmCのアミノ基に転移することが示された。また、DAF−2実験の項で記述したように、ODN(9)中のN−NO種は安定であるため、酵素反応によりdC又はdmCが観測される理由は、現段階では、N−NO種が酵素加水分解反応の間にdC又はdmCに戻るものと予想される。
上記のように、NO−転移及びそれに続く脱アミノ化の効率は、NOガス又は他のニトロシル化剤を用いた従来の方法と比較して極めて高い。従って、本発明は、DNA傷害におけるNOの役割を理解するために有用である。また、本発明の新規NO−送達方法を応用して、選択的に翻訳又は重合ステップでの部位特異的変異誘発を行うことが可能となる。
配列番号1:nはa,g,c又はtのチオヌクレオチド誘導体を表す(存在位置:5)
配列番号2:合成ヌクレオチド
配列番号2:nはa,g,c又はtのチオヌクレオチドニトロシル誘導体を表す(存在位置:5)
配列番号3:合成ヌクレオチド
配列番号3:nはa,g,c又はtを表す(存在位置:12)。
配列番号4:合成ヌクレオチド
配列番号4:nはa,g,c又はtのニトロシル誘導体を表す(存在位置:12)。
配列番号5:合成ヌクレオチド
配列番号6:合成ヌクレオチド
配列番号7:合成ヌクレオチド
Claims (14)
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導体又はその塩を含む12〜22塩基の長さを有するオリゴ核酸。
- 少なくとも15塩基の長さを有するものである請求項7記載のオリゴ核酸。
- 請求項7又は8記載のオリゴ核酸とその相補鎖とを反応させることにより、前記オリゴ核酸に含まれるニトロシル基をその相補鎖中の対応塩基に転移させることを特徴とするニトロシル基の転移方法。
- 請求項7又は8記載のオリゴ核酸とその相補鎖とを反応させ、得られる反応産物を酸性条件下で処理することを特徴とする塩基配列の変異誘発方法。
- 塩基配列が、オリゴ核酸中の誘導体に対応する塩基配列である請求項10記載の方法。
- 変異がウラシルへの変異である請求項10又は11記載の方法。
- 請求項7及び8記載のオリゴ核酸からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、塩基配列の変異誘発剤。
- 請求項7及び8記載のオリゴ核酸からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、塩基配列の変異誘発用キット。
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