しかしながら、特許文献1の方法では、ベルトコンベアラインでパレットの移動制御がされていることが前提であり、また、特許文献2の方法では、生産設備へ/からのロットの投入/排出が機械的に正確に行われることが前提となっている。すなわち、手組みラインにおいて、上述の特許文献1および2のような作業時間計測方法を適用することはできない。
具体的には、セル生産に代表される手組みラインの場合、製品の移動は、ベルトコンベアのような位置決め精度の高い自動運搬方法を採用せずに、作業者が手で行う。また、作業時間計測対象となるのは、作業者が手作業にて行う組み立て作業の開始/終了時刻である。設備の稼動開始/終了時刻が計測対象の場合のように、作業の開始/終了を検知するのが容易ではない。
つまり、特許文献1および2の方法においては、自動機からの「開始」「終了」という正しい信号を取得することが期待できるということが大前提である。したがって、一人一人動きの異なる作業者の動作から開始/終了時刻を検知する必要がある手組みラインにおいては、工程と工程の区切りを検知することが極めて困難なために、特許文献1および2の方法では、作業時間を計測することができないという問題が生じる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産ラインにおける工程ごとの作業時間を計測するシステムにおいて、手組みラインの作業時間を簡便に計測することを可能にするフィルタパラメータ設定装置、フィルタリング処理装置、フィルタパラメータ設定方法、作業時間計測システム、制御プログラム、および、記録媒体を実現することにある。
本発明に係るフィルタパラメータ設定装置は、上記課題を解決するために、工程の作業場所において生じる物体の動き、または、作業場所に配置される電動設備の電源を監視して、工程における活動の有無を検知するセンサからのセンサ信号を取得するフィルタパラメータ設定装置において、取得したセンサ信号に含まれる、活動状態または非活動状態を形成する活動状態形成信号の特徴を数値化した特徴量を取得する特徴量取得手段と、上記取得した活動状態形成信号ごとの特徴量の類似度に基づき、上記活動状態形成信号を、クラスに分類するクラスタリング処理手段と、上記分類された各クラスを、除去対象の活動状態形成信号からなる除去対象クラス、または、除去対象でない活動状態形成信号からなる非除去対象クラスのいずれかに設定するクラス選択手段と、上記クラス選択手段の設定に応じて、上記分類された各クラスを、上記除去対象クラスと、上記非除去対象クラスとに判別するための判別条件を生成する判別条件生成手段とを備えていることを特徴としている。
上記構成によれば、フィルタパラメータ設定装置は、センサから取得したセンサ信号に適用するフィルタのパラメータを設定するために、まず、センサ信号に対してクラスタリング処理を行う。より詳細には、特徴量取得手段が、クラスタリング処理に用いる各活動状態形成信号の特徴量を取得する。特徴量とは、各活動状態形成信号が有する特徴を数値化したものである。
次に、クラスタリング処理手段は、取得した特徴量の類似度に基づいて、当該センサ信号に含まれる各活動状態形成信号を、クラスに分類する。より具体的なクラスタリング処理方法としては、例えば、各活動状態形成信号を特徴量に基づいて散布図にプロットする。そして、各活動状態形成信号のプロット位置の類似度、つまり、信号間の距離に基づいて、各活動状態形成信号をクラスに分類することなどが挙げられる。
続いて、クラス選択手段は、上記分類されたクラスを、上記クラスごとに、フィルタリング処理、すなわち、除去対象となる信号の集まりとしての除去対象クラスか、非除去対象クラスかに設定する。どのクラスをいずれのクラスに設定するかについては、例えば、ユーザの指示に基づいて行ってもよいし、クラス選択手段が有限個の候補の中からランダムに設定してもよい。
最後に、判別条件生成手段は、上述したクラスの設定に基づいて、上記除去対象クラスに属する活動状態形成信号と、上記非除去対象クラスに属する活動状態形成信号とを判別するための判別条件を生成する。上記判別条件としては、より具体的には、例えば、上述した散布図上であれば、プロットされた活動状態形成信号を、それぞれのクラスに分割することができるような、判別関数などが考えられる。
つまり、センサ信号に含まれる各活動状態形成信号を、クラス選択手段が除去対象クラス、非除去対象クラスに分割したときに、その分割方法を、再現するときに利用する判別条件を生成することができる。
ユーザは、上記判別条件を用いて特定された除去対象クラスの信号を除去した結果(フィルタリング結果)に満足すれば(すなわち、適正にノイズ信号が除去され、工程の作業開始と終了を示す作業信号が得られたと判断すれば)、その生成された判別条件を、当該センサ信号用のフィルタのパラメータとして設定すればよい。
センサ信号に含まれる多数の活動状態形成信号を1つ1つ吟味し、それらの中から工程の開始(終了)を示す信号とそうでない信号を判別することは、センサや作業工程を熟知した、熟練者でなくては困難な作業であり、また時間のかかる作業である。しかし、上記構成により、各活動状態形成信号を特徴によりまとめたクラスごとに、除去(ノイズ)信号を特定していくことができる。したがって、正しいフィルタパラメータを取得できるまでのプロセス(フィルタパラメータの調整、再調整の作業など)を簡素化できる。以上のことから、フィルタのパラメータ設定作業を、誰でも簡単に効率よく行えるようにすることができる。また、これ以後、上記センサ信号をフィルタリングするときに、上記で求めた判別条件を利用して、簡単にフィルタリング処理を行うことが可能となる。
以上のように、上記判別条件を利用すれば、ユーザは、誰でも簡単に、ノイズ信号を含むセンサ信号から、工程の開始(終了)信号のみで形成された作業信号を出力することができる。したがって、そのような作業信号を用いれば、作業時間を計測するのに必要な情報、すなわち、工程の開始時刻と終了時刻とを取得することが容易になる。結果として、手組みラインにおいて、手作業を検出することに起因するノイズ信号を含んだセンサ信号からでも、簡便に、工程に係る作業時間を算出することが可能となる。
なお、フィルタパラメータ設定装置にセンサ信号を供給するセンサとしては、光電センサなどの比較的安価で、設置の自由度が高いものを用いれば、生産設備を改装する必要もなく、導入コストを安価に抑えることができる。また、工程ごとの手作業の開始と終了を、センサからの信号のみで特定することが可能となり、作業者が個々に、作業の開始と終了のための入力作業を別途行う必要はなくなる。以上のことから、計測システム導入コストを安価におさえ、導入前の生産ラインの生産性を維持しつつ、手組みラインにおける作業時間を高い精度で算出し、自動で計測することが可能となる。
上記フィルタパラメータ設定装置は、さらに、上記クラス選択手段が除去対象クラスとして設定したクラスに属する活動状態形成信号を除去したセンサ信号を、結果信号としてユーザに提示するフィルタリング結果出力手段を備え、上記判別条件生成手段は、上記結果信号が、工程の開始信号および/または終了信号として妥当な非ノイズ信号のみからなる作業信号であると、ユーザによって判断された場合に、(1)上記除去対象クラスを、工程の開始信号および/または終了信号として妥当でない信号からなるノイズ信号クラスとして、(2)上記非除去対象クラスを、工程の開始信号および/または終了信号として妥当な信号からなる非ノイズ信号クラスとして、判別するための判別条件を生成することが好ましい。
上記構成によれば、クラス選択手段が、ランダムに、あるいは、ユーザが試しに選択した内容に応じて、各活動状態形成信号を除去対象クラスと非除去対象クラスとに分割した場合に、その分割方法が正しいかどうかをユーザが判断することができる。つまり、フィルタリング結果出力手段は、その分割方法に基づいてフィルタリングした仮のフィルタリング結果をユーザに提示する(プレビュー機能)。そして、その分割方法によって、ノイズ信号が適正にフィルタリングされているとユーザが判断したときに、上記判別条件生成手段は、上記で設定した除去対象クラスを、ノイズ信号クラスとして、また、非除去対象クラスを非ノイズ信号クラスとして判別するための判別条件を生成する。したがって、ユーザが正しいと判断した分割方法に基づく正しい判別条件のみを生成することができる。
以上のことから、ユーザは、上記フィルタリング結果を確認し、ノイズ信号が適切にフィルタリングされた作業信号を得られたか否かをフィルタパラメータ設定装置に指示するだけで、簡単に、フィルタパラメータを設定することが可能となる。
結果として、フィルタのパラメータ設定作業を、簡単に効率よく行えるようにすることができる。
上記フィルタパラメータ設定装置は、さらに、上記結果信号が、工程の開始信号および/または終了信号として妥当な非ノイズ信号のみからなる作業信号でないと、ユーザによって判断された場合に、上記クラス選択手段は、上記分類された各クラスにおける、除去対象クラスまたは非除去対象クラスの設定を変更し、上記フィルタリング結果出力手段は、上記変更によって、新たに除去対象クラスとして設定されたクラスに属する活動状態形成信号を除去したセンサ信号を、新たな結果信号としてユーザに提示することが好ましい。
上記構成によれば、フィルタリング結果出力手段が、上述したとおりに、上記クラス選択手段のクラス設定に応じて、除去対象クラスであると選択されたクラスに属する活動状態形成信号を、上記センサ信号から除去し、それを結果信号として出力する。
このとき、上記結果信号が、ユーザの満足の行く結果でなかった場合、上記クラス選択手段は、上記で行ったクラス設定とは異なるクラス設定を実行し、上記フィルタリング結果出力手段は、上記新たなクラス設定に基づくフィルタリング結果をユーザに再び提示する。
これにより、ユーザは、満足のいく結果を得られるまで、結果信号を確認することができる。
上記分割されたクラスを、除去対象クラス、または、非除去対象クラスのいずれかに設定するクラス設定の処理を、ユーザが手動で行う代わりに、装置が自動で行うことにより、フィルタパラメータ設定の処理をさらに自動化することができる。つまり、ユーザが満足するフィルタリング結果を得られるまで、上記クラス選択手段は、すべての組み合わせによるクラス設定を出力し続ける。
つまり、分類されるクラス数は有限個であり、それらのクラスは、除去対象クラス、または、非除去対象クラスのいずれかに設定される。よって、どのクラスを(非)除去クラスに設定するかの組み合わせも有限とおりとなる。したがって、フィルタリング結果出力手段は、これら有限個のすべてのクラス設定の組み合わせに基づいて、その組み合わせの数だけの、フィルタリング結果を出力することができる。
以上のことから、ユーザは、上記フィルタリング結果の中から、満足するフィルタリング結果、つまり、ノイズ信号が適切にフィルタリングされた作業信号を得られたフィルタリング結果をフィルタパラメータ設定装置に指示するだけで、簡単に、それを再現するための判別条件を取得することが可能となる。
結果として、フィルタのパラメータ設定作業を、自動化して誰でも簡単に効率よく行えるようにすることができる。
あるいは、上記フィルタパラメータ設定装置は、上記クラスタリング処理手段によって、クラスに分類された各活動状態形成信号を示すクラスタリング結果を、ユーザに提示するクラスタリング結果出力手段と、上記クラスタリング結果に含まれる上記各クラスが、ユーザによって、除去対象クラスまたは非除去対象クラスのいずれに設定されたかを示すクラス設定情報を受け付ける設定情報受付手段とをさらに備え、上記クラス選択手段は、上記クラス設定情報に基づいて、クラスの設定を実行してもよい。
上記構成によれば、上記クラスタリング結果出力手段は、上記クラスタリング処理手段が実行したクラスタリング処理の結果、つまり、各活動状態形成信号をクラスに分類したものを示す情報をユーザに提示する。次に、設定情報受付手段は、上記クラスタリング結果に含まれる上記各クラスが、ユーザによって、除去対象クラスまたは非除去対象クラスのいずれに設定されたかを示すクラス設定情報を受け付ける。
上記クラス選択手段は、上記クラス設定情報に基づいて、ユーザの設定どおりに、所定のクラスを除去対象クラスまたは非除去対象クラスに設定する。
これにより、除去対象クラス/非除去対象クラスのクラスの分割は、ユーザの指示にしたがい実行される。よって、ユーザが指定した分割方法を再現するための判別条件を生成することが可能となる。また、分類されたクラスごとにまとめられて各活動状態形成信号がユーザに提示されるので、ユーザは、除去対象(ノイズ)信号の特定作業を、活動状態形成信号1つ1つではなくクラスごとにまとめて行うことできる。結果として、正しいフィルタパラメータを取得できるまでのプロセス(フィルタパラメータの調整、再調整の作業など)を簡素化できる。以上のことから、フィルタのパラメータ設定作業を、誰でも簡単に効率よく行えるようにすることができる。
上記フィルタパラメータ設定装置は、さらに、取得したセンサ信号に含まれる活動状態形成信号の入力時刻が、ユーザが指定する工程の区切りの時刻と一致する活動状態形成信号を特定し、ティーチング信号として特定する同期制御手段を備え、上記クラスタリング処理手段は、上記ティーチング信号に対しては、ティーチング信号であることを示す情報を付加して、上記各活動状態形成信号をクラスに分類し、上記クラス選択手段は、各クラスにおける、上記ティーチング信号の含有数に基づいて、各クラスを、除去対象クラスまたは非除去対象クラスに設定してもよい。
ティーチングとは、ユーザが、あらかじめ工程の区切り、すなわち、工程の開始および/または終了時点について確認がとれている場合に、その時点を指定する情報を、当該フィルタパラメータ設定装置に入力することである。
上記構成によれば、ユーザからのティーチングによって、工程の区切りを特定できた、同期制御手段は、その工程の区切り時刻に、入力された活動状態形成信号をティーチング信号として特定する。ティーチング信号の入力時刻は、工程の区切り時刻に一致している。したがって、ティーチング信号とは、工程の開始信号および/または終了信号として妥当である信号、つまり、非ノイズ信号クラスに属する活動状態形成信号である信号を示す。
上記クラスタリング処理手段は、上記同期制御手段が特定したティーチング信号に対しては、ティーチング信号であることを示す情報を付加して、上記各活動状態形成信号をクラスに分類する。
よって、クラス選択手段は、どのクラスが(非)除去対象クラスであるかを選択する際に、上記情報を利用して、正確なクラス設定の処理をより正確に効率よく実行することが可能となる。
より具体的には、例えば、ティーチング信号をあらかじめ定めた数以上含有するクラスを非除去対象クラスとして選択することなどが考えられる。
あるいは、上記フィルタパラメータ設定装置は、取得したセンサ信号に含まれる活動状態形成信号の入力時刻が、ユーザが指定する工程の区切りの時刻と一致する活動状態形成信号を特定し、ティーチング信号として特定する同期制御手段を備え、上記クラスタリング結果出力手段は、上記ティーチング信号に対しては、ティーチング信号であることを示す情報を付加して、クラスタリング結果をユーザに提示してもよい。
上記構成によれば、上記クラスタリング処理手段は、上記同期制御手段が特定したティーチング信号を含むセンサ信号に対してクラスタリング処理を実行する。そして、クラスタリング結果、つまり、クラスに分類された各活動状態形成信号をユーザに提示する。このとき、クラスタリング処理手段は、ユーザが、どの活動状態形成信号がティーチング信号であるのかが視認できるよう、上記ティーチング信号に対して、ティーチング信号であることを示す情報を付加して、該クラスタリング結果を出力する。
ユーザは、これにより、どのクラスにティーチング信号が多く含まれているかということを確認することができ、正確なクラス設定をより効率よく行うことが可能となる。
なお、上記フィルタパラメータ設定装置の上記フィルタリング結果出力手段は、上記同期制御手段によってティーチング信号として特定された活動状態形成信号が、上記結果信号に含まれる場合に、該活動状態形成信号にティーチング信号であることを示す情報を付加して、上記結果信号をユーザに提示してもよい。
上記構成によれば、上記フィルタリング結果出力手段が出力するフィルタリング結果(除去対象クラスに含まれる活動状態形成信号が除去された後の結果信号)と、ユーザがあらかじめ工程の区切りとして指定した時点を示す情報とが同時にユーザに提示される。
これにより、ユーザは、ティーチング信号を手がかりにして、上記結果信号が、正しくノイズ信号だけが適切に除去された作業信号であるか否かを、容易に判断することができる。
上記フィルタパラメータ設定装置は、さらに、撮像部が工程の作業の様子を撮像して出力した作業動画を、撮像時刻と関連付けて記録する作業動画記録部と、上記作業動画記録部に記録された作業動画を再生してユーザに提示する動画再生手段と、上記作業動画再生中に、ユーザにより指定された工程の区切りのタイミングを示す指定信号を自装置に入力するための入力部とをさらに備え、上記同期制御手段は、上記作業動画と上記指定信号とを同期させて、指定信号が示すタイミングの撮像時刻を工程区切り時刻として取得し、センサ信号に含まれる活動状態形成信号の入力時刻が上記工程区切り時刻と一致する活動状態形成信号をティーチング信号として特定してもよい。
上記構成によれば、上記動画再生手段が再生する作業動画を見ながら、ユーザは、上記入力部を介して、どの時点が工程の区切りであるのかを、フィルタパラメータ設定装置に対して指定することができる。
上記同期制御手段は、ユーザからの入力と、作業動画とを同期させて、作業動画の撮像時刻から、ユーザが指定する工程の区切り時点の時刻を取得する。そして、この時刻と一致する時刻に入力された活動状態形成信号をティーチング信号として特定する。
これにより、ユーザは、作業動画を用いて、容易に、あらかじめ工程の区切り時点の確認をとることができ、その時点を簡単にティーチングすることができる。
さらに、
上記同期制御手段は、上記判別条件に基づいて除去対象と判定された活動状態形成信号をセンサ信号から除去した結果信号を参照して、該結果信号に含まれる活動状態形成信号の入力時刻を取得し、上記動画再生手段は、上記作業動画を再生するとともに、上記同期制御手段が取得した上記入力時刻に基づいて、上記結果信号に含まれる上記活動状態形成信号が示す活動状態または非活動状態を示す情報を、作業動画の撮像時刻に合わせてユーザに提示してもよい。
上記構成によれば、上記同期制御手段は、ノイズ信号として特定された信号が除去された後の結果信号と、上記作業動画とを同期させ、上記動画再生手段は、上記動画とともに、上記結果信号に含まれる上記活動状態形成信号が示す活動状態または非活動状態を示す情報を、作業動画の撮像時刻に合わせて同時にユーザに提示する。
これにより、ユーザは、作業動画と結果信号とを比較して、上記結果信号が、正しくノイズ信号だけが適切に除去された作業信号であるか否かを、容易に判断することができる。
また、上記動画再生手段は、上記活動状態形成信号の入力時刻と一致する撮像時刻の時点で作業動画の再生を停止できることが好ましい。
このようにすれば、ユーザは、作業動画と結果信号とを比較中に、一瞬で過ぎてしまう工程の区切りを見落とすことがなくなり、ユーザの結果確認作業の効率が向上する。
あるいは、作業動画再生しながらユーザがティーチングを行う場合にも適用できる。センサ信号の活動状態形成信号の入力時刻において、実際の工程の区切りが存在する可能性が高い。よって、活動状態形成信号の入力間隔ごとに作業動画静止させることにより、ティーチング作業時に、ユーザが工程の区切りを見落とす可能性を低減でき、正確に、工程の区切りのタイミングを装置に対して指定することができる。結果として、ユーザのティーチング作業の精度と効率とを向上させることが可能となる。
なお、上記特徴量取得手段は、活動状態形成信号の特徴量として、(1)当該活動状態形成信号がON信号、OFF信号のいずれであるかを示す数値、(2)当該活動状態形成信号を含む同一センサ信号上において、当該活動状態形成信号の任意回前および/または任意回後に入力された活動状態形成信号との入力時間差を示す数値、および、(3)当該活動状態形成信号のセンサ信号とは異なるセンサ信号上において、当該活動状態形成信号の任意回前および/または任意回後に入力された活動状態形成信号との入力時間差を示す数値、の少なくとも1つを算出することが好ましい。
上記(1)の特徴量を用いれば、上記クラスタリング処理手段は、各活動状態形成信号を、ON信号か、OFF信号かによって、クラスに分類することが容易になる。
上記(2)または(3)の特徴量を用いれば、各活動状態形成信号を、各活動状態形成信号の入力間隔によって、クラスに分類するこが容易になる。
これにより、信号の入力時間間隔によって、ノイズ信号を特定し除去する「間隔フィルタ」のフィルタ関数を導出することが可能となる。したがって、「間隔フィルタ」のフィルタパラメータを、誰でも、容易に設定することができる。
さらに、上記フィルタパラメータ設定装置は、取得するべき特徴量の種類と、取得した特徴量により分類された各クラスが、ノイズ信号または非ノイズ信号クラスのいずれであるのかを示すクラス情報とを、センサ信号の波形パターンに対応付けて記録する適用フィルタ記録部を備え、上記クラスタリング処理手段は、取得したセンサ信号の波形パターンに対応付けられている特徴量の類似度に基づいて、クラスの分類を実行し、上記クラス選択手段は、上記波形パターンに対応付けられているクラス情報に基づいて、上記分類されたクラスごとに、ノイズ信号かまたは非ノイズ信号クラスかを選択することが好ましい。
上記構成によれば、取得するべき特徴量の種類とクラス情報とを、センサ信号のノイズパターンに対応付けて適用フィルタ記録部に記録することで、過去のクラスタリング処理の過程を、フィルタパラメータ設定装置に学習させることができる。過去のクラスタリング処理の過程とは、分類されたクラスが、それぞれ、ノイズ信号クラス、非ノイズ信号クラスのいずれとして選択されたかを示す情報である。
つまり、すでにフィルタ関数を導出したことのあるセンサ信号と、同様のノイズパターンを有するセンサ信号についてフィルタパラメータを設定したい場合に、上記クラス選択手段は、上記適用フィルタ記録部を参照する。
これにより、上記クラス選択手段は、どのようなクラス設定の組み合わせから、正しいフィルタリング結果を得ることができるかを検出することが可能となり、結果として、上記判別条件生成手段が、所望のフィルタリング結果を効率よく得て、その時の判別条件を容易に生成することが可能となる。
あるいは、上記フィルタパラメータ設定装置は、取得するべき特徴量の種類と、取得した特徴量により分類された各クラスが、ノイズ信号または非ノイズ信号クラスのいずれであるのかを示すクラス情報とを、センサ信号の波形パターンに対応付けて記録する適用フィルタ記録部を備え、上記クラスタリング処理手段は、取得したセンサ信号の波形パターンに対応付けられている特徴量の類似度に基づいて、クラスの分類を実行し、上記クラスタリング結果出力手段は、上記クラスタリング結果を、上記波形パターンに対応付けられているクラス情報とともに出力してもよい。
上記構成によれば、すでにフィルタ関数を導出したことのあるセンサ信号と、同様のノイズパターンを有するセンサ信号についてフィルタパラメータを設定したい場合に、どのようなクラス選択の組み合わせから、正しいフィルタリング結果を得ることができるかを、ユーザに提示することができる。
以上のことから、ユーザは、所望のフィルタリング結果を効率よく得て、その時の判別条件からフィルタのパラメータを容易に設定することが可能となる。
本発明に係るフィルタリング処理装置は、上記課題を解決するために、工程の作業場所において生じる物体の動き、または、作業場所に配置される電動設備の電源を監視して、工程における活動の有無を検知するセンサからのセンサ信号を取得するフィルタリング処理装置において、取得したセンサ信号に含まれる、活動状態または非活動状態を形成する活動状態形成信号の中から、工程の開始信号および/または終了信号として妥当でない活動状態形成信号を、ノイズ信号として、判別条件に基づき特定し、上記特定したノイズ信号を、上記センサ信号から除去して、工程の開始信号および/または終了信号として妥当な活動状態形成信号のみからなる作業信号を生成するフィルタリング処理手段を備え、上記判別条件は、(1)上記活動状態形成信号の特徴を数値化した特徴量に基づき各活動状態形成信号をクラスに分類し、(2)上記分類されたクラスから、除去対象の活動状態形成信号からなる除去対象クラスを特定することによって、該特定された除去対象クラスを分離する関数として、導出されることを特徴としている。
上記構成によれば、上記フィルタリング処理手段は、各活動状態形成信号を、クラスター分析することによって得た判別条件を用いて、ノイズ信号を特定・除去して、工程の開始信号および/または終了信号として妥当な活動状態形成信号のみからなる作業信号を生成する。
以上のように、上記判別条件を利用すれば、ユーザは、誰でも簡単に、ノイズ信号を含むセンサ信号から、工程の開始(終了)信号のみで形成された作業信号を出力することができる。つまり、上記判別条件を利用して、センサ信号のフィルタリング処理を実行することが可能となる。
したがって、そのような作業信号を用いれば、作業時間を計測するのに必要な情報、すなわち、工程の開始時刻と終了時刻とを取得することが容易になる。結果として、手組みラインにおいて、手作業を検出することに起因するノイズ信号を含んだセンサ信号からでも、簡便に、工程に係る作業時間を算出することが可能となる。
本発明に係る作業時間計測システムは、上記課題を解決するために、工程の作業場所において生じる物体の動き、または、作業場所に配置される電動設備の電源を監視して、工程における活動の有無を検知してセンサ信号を生成するセンサと、上記センサ信号のノイズ信号を区分するための判別条件を生成する、上述のフィルタパラメータ設定装置と、上記フィルタパラメータ設定装置が生成した判別条件に基づき、上記センサ信号からノイズ信号である活動状態形成信号を除去して、工程の開始信号および/または終了信号として妥当な活動状態形成信号のみからなる作業信号を出力する、上述のフィルタリング処理装置と、上記フィルタリング処理装置が出力する作業信号に含まれる、工程の開始信号および/または終了信号の入力時刻から工程の開始および/または終了時刻を取得して、作業時間を算出する作業時間計測手段を備えている作業時間計測装置とを含むことを特徴としている。
上記構成によれば、フィルタパラメータ設定装置がパラメータを設定したフィルタを用いて、フィルタリング処理装置が、センサ信号のフィルタリングを行い、作業時間計測装置が、フィルタリングされた作業信号が示す、工程の開始時点と終了時点に基づいて、工程の作業時間を計測する。
これにより、手組みラインにおいて、手作業を検出することに起因するノイズ信号を含んだセンサ信号からでも、簡便に、工程に係る作業時間を算出することが可能な、作業時間計測システムを構築することが可能となる。
本発明に係るフィルタパラメータ設定方法は、上記課題を解決するために、工程の作業場所において生じる物体の動き、または、作業場所に配置される電動設備の電源を監視して、工程における活動の有無を検知するセンサからのセンサ信号を取得する第1ステップと、上記第1ステップにて取得したセンサ信号に含まれる、活動状態または非活動状態を形成する活動状態形成信号の特徴を数値化した特徴量を取得する第2ステップと、上記第2ステップにて取得した活動状態形成信号ごとの特徴量の類似度に基づき、上記活動状態形成信号を、クラスに分類する第3ステップと、上記第3ステップにて分類した各クラスを、除去対象の活動状態形成信号からなる除去対象クラス、または、除去対象でない活動状態形成信号からなる非除去対象クラスのいずれかに設定する第4ステップと、上記第4ステップでのクラスの設定に応じて、上記分類された各クラスを、上記除去対象クラスと、上記非除去対象クラスとに判別するための判別条件を生成する第5ステップとを含むことを特徴としている。
上記方法によれば、センサ信号に含まれるノイズ信号を特定するための判別条件を生成することができる。上記第4ステップにて行われたクラスの設定(除去対象/非除去対象クラスの分割)に基づいてノイズ信号を除去した結果(フィルタリング結果)が、ユーザによって適正と判断されれば、そのとき生成された判別条件を、当該センサ信号用のフィルタを定義するパラメータとして設定できる。
以上のことから、フィルタのパラメータ設定作業を、誰でも簡単に効率よく行えるようにすることができる。また、これ以後、上記センサ信号をフィルタリングするときに、上記判別条件を利用することが可能となる。
したがって、上記判別条件を利用すれば、ユーザは、誰でも簡単に、ノイズ信号を含むセンサ信号から、工程の開始(終了)信号のみで形成された作業信号を出力することができる。そして、そのような作業信号を用いれば、作業時間を計測するのに必要な情報、すなわち、工程の開始時刻と終了時刻とを取得することが容易になる。
結果として、手組みラインにおいて、手作業を検出することに起因するノイズ信号を含んだセンサ信号からでも、簡便に、工程に係る作業時間を算出することが可能となる。
なお、上記フィルタパラメータ設定装置または上記フィルタリング処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記フィルタパラメータ設定装置または上記フィルタリング処理装置をコンピュータにて実現させるフィルタパラメータ設定装置またはフィルタリング処理装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明に係るフィルタパラメータ設定装置は、取得したセンサ信号に含まれる、活動状態または非活動状態を形成する活動状態形成信号の特徴を数値化した特徴量を取得する特徴量取得手段と、上記取得した活動状態形成信号ごとの特徴量の類似度に基づき、上記活動状態形成信号を、クラスに分類するクラスタリング処理手段と、上記分類された各クラスを、除去対象の活動状態形成信号からなる除去対象クラス、または、除去対象でない活動状態形成信号からなる非除去対象クラスのいずれかに設定するクラス選択手段と、上記クラス選択手段の設定に応じて、上記分類された各クラスを、上記除去対象クラスと、上記非除去対象クラスとに判別するための判別条件を生成する判別条件生成手段とを備えている。これにより、フィルタのパラメータ設定作業を、誰でも簡単に効率よく行えるようにすることができる。また、これ以後、上記センサ信号をフィルタリングするときに、上記フィルタ関数を利用することが可能となる。
したがって、そのような作業信号を用いれば、作業時間を計測するのに必要な情報、すなわち、工程の開始時刻と終了時刻とを取得することが容易になる。
結果として、生産ラインにおける工程ごとの作業時間を計測するシステムにおいて、手組みラインの作業時間を簡便に計測することを可能にするという効果を奏する。
本発明の各実施形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、一例として、4つの工程からなる手組み生産ラインを有する生産システムに適用される、作業時間自動計測システムについて説明する。
なお、以下では、説明の簡略化のため、一本の生産ラインを1つの作業監視装置で監視し、生産ラインの各工程に、作業者が一人ずつ配置される構成について説明する。
〔実施形態1〕
〔作業時間自動計測システムの概要〕
まず、本実施形態に係る作業時間自動計測システム(作業時間計測システム)100が適用されるある製品の生産システム1について、図2に基づいて説明する。図2に示す例では、生産システム1は、作業者の手作業により製品を製造する4つの工程(A〜D工程)を含む生産ラインと、上記各工程の作業を監視する作業監視装置2とを含む構成となっている。
A工程、B工程、C工程、および、D工程は、生産システム1の製造対象物(ワーク)の流れの上流から下流に向けてこの順序で配置されており、ワークが先頭工程(A工程)から最終工程(D工程)までを経て、すべての工程の作業が順に実行されると製品が完成する。この生産システム1では、ロット生産は行っていないこととする。したがって、1つのオーダに対して、1つのワークが工程を流れ、その1つのワークに対して1つの作業が工程ごとに実行され、全工程を経ると1つの製品が製造される。
さらに、生産システム1は、工程ごとに、作業者の作業を検知するための、センサ3a〜3dを備えている。また、A〜D工程の各作業場所にそれぞれ撮像部4a〜4dを配置し、作業状況を撮像して、動画として記録する。または、作業監視装置2に撮像部4nを配置して、A〜D工程の各作業場所を1つの撮像部で撮像してもよい。
なお、以下では、センサ3a〜3d、および、撮像部4n、撮像部4a〜4dを区別する必要のない場合には、それぞれ単に、センサ3、撮像部4と称する。
センサ3は、各工程における、作業者の実作業時間や、生産設備の実稼働時間を監視するものである。本実施形態では、各工程に1つ設置される。例えば、センサ3は、ワークの有無、治具の動き、指図書の有無、扉の開閉、電動設備の電源のON/OFFなどを検知し、ONとOFFの状態を表したセンサ信号を、作業監視装置2に出力する。
センサ3は、検知対象物の有無や、動きを検知し、ONとOFFの状態を表すセンサ信号を出力するものである。このセンサ信号に含まれるON信号とOFF信号とによって、各工程の活動状態が表される。センサ3が出力するセンサ信号は、作業監視装置2が、ONとOFFの状態を認識できるものであれば何でもよい。具体的なセンサ3の例としては、光電センサ、近接センサ、変位センサ、フォトマイクロセンサ、超音波センサ、圧力センサなど、ON/OFF信号(活動状態形成信号)を出力するものがある。
本実施形態では、センサ3は、作業が行われているか否かを、図5(a)に示すようなON信号とOFF信号の出力を繰り返すことにより表す。本実施形態では、作業監視装置2は、ON信号が入力されると、次にOFF信号入力されるまでの間を、「作業実行状態」として認識し、逆にOFF信号が入力されて、次にON信号が入力されるまでの間を、「非作業実行状態」として認識するものとする。
上述の図5(a)に示すようなセンサ信号を受信した作業監視装置2では、該センサ信号を、ON信号(またはOFF信号)を検知した時刻とともに、例えば、図4(a)に示すタイムスタンプ、あるいは、図4(b)に示すタイミングチャートなどとして記録する。これらの情報から、各工程の作業時間を算出するための、各工程の開始時間や終了時間を取得することができる。
なお、センサ3としては、上記例に限定されず、直接ON/OFF信号を出力しないで、アナログ値を出力するセンサであっても、本発明の作業時間自動計測システム100に用いることができる。この場合、センサ3は、閾値を設定し、例えば、閾値以上ならON信号、閾値以下であればOFF信号として出力するための機能を備えていればよい。あるいは、アナログ値によるセンサ信号を受信する作業監視装置2が、閾値にしたがってON/OFF信号に変換する機能を備えていてもよい。
本実施形態では、センサ3に光電センサを用いる。光電センサは、比較的安価であり、既存の生産ライン上に、治工具の改造や変更を行うことなく設置することが可能であることから、低コストで導入できるというメリットがある。
撮像部4は、それぞれ、A〜D工程の各作業場所における、作業状況を撮像して、動画として記録し、その記録した動画データを作業監視装置2に供給する。なお、全工程の作業場所が比較的狭く、1台の撮像部によって、全工程の作業状況を撮像することが可能な場合は、全工程を撮像可能な場所に撮像部を設置してもよい。また、全工程を撮像可能な場所に作業監視装置2が設置されている場合は、作業監視装置2自体に、上記生産ラインの全工程(A〜D工程)の作業状況を撮像して動画として記録するための撮像部4nを設けてもよい。ここで記録された作業状況の動画は、上記センサ3より取得した各工程の開始時間や終了時間に関する情報が正しいか否かを確認するのに用いられる。このような動画を用いれば、センサ3の仕様や、当該生産工程に対して特別深い知識を有する熟練者でなくても、誰でも簡単に各工程の開始時間や終了時間を特定することが可能となり、作業時間計測の精度を向上させることができる。
作業監視装置2、センサ3、および、撮像部4は、通信回線によって互いに接続されることによって、無線あるいは、有線による通信ネットワークを形成している。これにより、センサ3は、検知したON/OFF信号を、作業監視装置2に送信することができる。
なお、通信ネットワークとしては、送信元となる装置が自装置の情報を送信相手に送信可能な形態であればどのようなものでもよい。例えば、センサ3−作業監視装置2間は、赤外線やBluetooth(登録商標)などにより実現される無線LAN(Local Area Network)、作業監視装置2−撮像部4間は、例えば、LAN(Local Area Network)が形成される形態が想定される。
以上のように、作業監視装置2、センサ3、および、撮像部4とで、本発明に係る作業時間自動計測システム100が構成されている。
なお、本実施形態では、各工程に作業者が一人配置され、それぞれの工程(A〜D工程)ごとの作業場所と作業手順が定められている。また、それぞれの作業場所に作業台が設置されており、作業者が用いる製品の組み立て・製造に必要な治工具が配置されている。あるいは、作業者が操作する生産設備が設置されていてもよい。
また、本実施形態では、生産システム1の全工程は、作業者の手作業による手組みラインとしたが、生産設備によって、自動で組み立て・製造が行われる工程を含む生産システムにおいても、本発明の作業時間自動計測システム100を適用することは可能である。
以上のように、センサ3により検知された、各工程の活動状況を監視した結果であるセンサ信号は、作業監視装置2に送られる。作業監視装置2は、受信したセンサ信号に含まれるノイズ信号を除去(フィルタリング処理)を行って、工程ごとに、手組みラインにおける作業を示す作業信号を出力する。ノイズ信号が含まれていない上記作業信号を用いることにより、生産システム1に係る実作業時間を正確に計測することが可能となる。
〔ノイズの発生要因〕
上記フィルタリング処理とは、光電センサなどによって、手組みラインの活動状態を監視する際に、実際の作業以外の活動が検知され、それがセンサ信号に表れてしまった場合に、そのON/OFF信号のみをノイズ信号として除去する処理のことである。このようにノイズ信号を除去すれば、工程の開始と終了のみが反映されたセンサ信号(すなわち、作業信号)を取得することが可能となる。手組みラインをセンサ3で監視する場合に、ノイズ信号が発生する要因は、以下のとおりである。
(1)ワーク(作業対象物)の位置ずれ
ワークや指図書といった対象物の有無をセンサで検知する場合、作業者が対象物を置き直したり、対象物を動かしたりすることで、センサが、ワークが無いと検知してしまう。実際には作業していたにもかかわらず、ワークが無いと検知された部分が発生することになり、これがノイズ発生の要因となる。
(2)動作回数の変動(繰り返し回数が不明な作業)
例えば、圧着作業などの組み立て作業をセンサで検知する場合、作業者それぞれに動きやすいリズムがあったり、作業者の個性、あるいは、熟練度により圧着動作の回数が異なったりすることで、同じ組み立て作業でも、一様に作業時間帯を特定することができない。この、動作回数の変動がノイズ発生の要因となる。
(3)非対象物検知
光電センサの光軸上を、作業者の体の一部や、工具が通過することにより、それが、検知対象である「作業」による動きでなくとも、それを「作業」として検知してしまう。実際には作業をしていないのに、作業したと検知される部分が発生することになり、これがノイズ発生の要因となる。
〔間隔フィルタ〕
上述した要因により発生するノイズ信号によって、工程の開始(または、終了)信号を正確に特定することができず、作業時間を正確に計測できないという問題を生じる。そこで、本実施形態に係る作業監視装置2は、センサ信号に含まれるON/OFF信号の入力間隔に着目して、ノイズ信号を特定するフィルタリング方法を採用する。以下、上記フィルタリング方法でノイズ信号を除去するために用いるフィルタを「間隔フィルタ」と称する。
間隔フィルタで、ノイズ信号を特定するために用いる判定条件(フィルタリング条件)は以下のとおりである。
1.センサXによってOFF信号が入力された時点(あるいは、別のセンサYから入力があった時点)を起点とし、該時点から次のON信号が入力された時点までの間隔が、x秒以内である場合の、OFF状態(非活動状態)の部分をノイズとみなす。
2.センサXによってON信号が入力された時点(あるいは、別のセンサYから入力があった時点)を起点とし、該時点から次のOFF信号が入力された時点までの間隔が、x秒以内である場合の、ON状態(活動状態)の部分をノイズとみなす。
より具体的に、センサXがある検査工程の検査機の扉の開閉を検知するように設置した場合を考える。センサXは、扉が開いていることを検知してOFFになり、扉が閉じていることを検知してONになる。扉は検査をするたびに必ず閉められるが、扉が閉められるからといって検査が開始されるとは限らないため、単純に扉の開閉のみで、検査機の動作時刻とすることはできない。このような場合に、検査工程の直前に必ず行われる作業をセンサYで検知し、センサXに間隔フィルタを適用して、センサYからの入力があった直後(x秒以内)のセンサXのON(OFF)信号の入力のみを通すことで、検査のための作業以外で扉の開閉が行われることによって発生するノイズを除去できる。
間隔フィルタの効果を、図3を用いて説明すれば、以下のとおりである。
図3に示すセンサ信号(Sig1)と作業信号(Sig2)とを比較すると、ON信号が入力されてから次のOFF信号が入力されるまでの間隔が短い(例えばx秒以内の)ON/OFF信号対が、ノイズ信号として除去されていることが分かる。このように信号入力時間間隔をパラメータとして設定し、特定の信号のみを除去するフィルタ(具体的には、例えば、「ON(OFF)信号とOFF(ON)信号との間隔x秒以内のものを除去する」というフィルタリング条件の情報)が、間隔フィルタである。
以上のことから、間隔フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことにより、作業監視装置2は、センサ信号からノイズ信号を除去し、工程の開始/終了時刻を正確に取得することが可能な作業信号を出力できる。
さらに、本発明に係る作業監視装置2は、クラスター分析の手法を採用して、センサ信号に含まれるON/OFF信号をノイズ/非ノイズ信号クラスに分類する(クラスタリング処理)。このクラスタリング処理により、フィルタを定義するための上述のパラメータ(例えば、「x秒以内」というときの「x」の値など)を、簡単に決定することができる。
上述したフィルタのパラメータは、作業環境の変化に応じて、変更する必要がある。なぜなら、センサ信号が検知するノイズ信号を含んだパルス波形は、作業環境の変化(作業者が変わることによって動作の仕方に変化が生じた、作業手順に変更が生じた、など)に応じて変化するので、同じパラメータで定義されたフィルタによって、うまくノイズ信号を除去できるとは限らないからである。
そこで、作業環境の変化に応じて、時間をかけることなく簡単にフィルタを定義できることが望まれる。本発明に係る作業監視装置2によれば、上述のクラスタリング処理を行うことにより、フィルタのパラメータ設定作業を、時間をかけずに行い、簡単にフィルタリング処理を実行することが可能となる。
以下、クラスタリング処理を用いてフィルタリング処理を行う作業監視装置2についてさらに詳しく説明する。
〔作業監視装置の構成1〕
図1は、本実施形態に係る作業監視装置2の要部構成を示すブロック図である。作業監視装置2は、図1に示すとおり、操作部5、受信部6、表示部7、制御部10、記録部40を備えた構成となっている。制御部10は、さらに、入出力制御部11、作業監視部12を有しており、記録部40は、さらに、センサ信号記録部41、特徴量記録部42、クラスタリング結果記録部43、および、フィルタリング結果記録部44を含んでいる。
なお、記録部40は、適用フィルタ記録部45を含んでいてもよい。適用フィルタ記録部45については後述する。
操作部5は、ユーザからの指示入力、および情報入力などを受け付けるものであり、例えばキーボードやボタンなどのキー入力手段や、マウスなどのポインティングデバイスなどによって構成される。
受信部6は、作業時間自動計測システム100(図2)において、他の装置からの送信データを受信するものである。受信部6は、例えば、センサ3からのセンサ信号、撮像部4から動画データなどを受信する。
表示部7は、作業監視装置2における各種処理結果を表示するものであり、例えば液晶表示装置、CRT(Cathode Ray Tube)などの表示装置によって構成される。
上述の各部(操作部5、受信部6、表示部7)は、制御部10が有する入出力制御部11を介して、作業監視装置2の作業監視部12または記録部40と情報をやりとりする。入出力制御部11は、操作部5あるいは受信部6からの入力情報を受け付けるとともに、表示部7に対して表示制御を行う。
制御部10の入出力制御部11は、作業監視装置2における情報の入出力を制御するものであり、操作受付部21、クラスタリング結果表示制御部22、および、フィルタリング結果表示制御部23を備えている。
入出力制御部11の操作受付部21は、操作部5を介して作業監視装置2に入力されるユーザからの指示信号を受け付け、該指示信号を作業監視部12の各部に供給するものである。クラスタリング結果表示制御部22は、クラスタリング処理部33の処理結果を表示部7に表示するための制御を行う。フィルタリング結果表示制御部23は、フィルタリング処理部36の処理結果を表示部7に表示するための制御を行う。
次に、図3を参照しながら、作業監視部12の各部について詳細に説明する。
作業監視部12は、作業監視装置2における、フィルタパラメータ設定処理およびフィルタリング処理を含む、工程の作業を監視するための各種処理を制御するものであり、特徴量選択部31、特徴量計算部32、クラスタリング処理部33、クラス選択部34、フィルタ関数導出部35、フィルタリング処理部36、および、フィルタリング結果出力部37を備えている。
作業監視部12の特徴量選択部31は、例えば、図3に示すセンサ信号(Sig1)に含まれるON/OFF信号が持つ複数種類の特徴の中から、どの特徴に基づいて特徴量を算出するのか、その算出方法(特徴量パターン)を選択するものである。ここでは、特徴量Xと特徴量Yとが選択されたものとする。
特徴量とは、ON/OFF信号の特徴、つまり、信号の状態(「ON」信号か「OFF」信号か)、ON/OFF信号の入力時刻、他のON/OFF信号との入力時間差などから、当該ON/OFF信号の特徴を数値化したものである。この特徴量を用いて、各信号をグループ化することができる。
特徴量計算部32は、選択された特徴量パターンに基づいて、各ON/OFF信号の特徴量を算出するものである(図3のS2)。
クラスタリング処理部33は、クラスター分析の手法を採用して、上記取得したON/OFF信号ごとの特徴量の類似度に基づき、各ON/OFF信号を、複数のクラスに分類するものである(S3)。特徴量Xと特徴量Yとに基づき、クラスタリング処理を行った場合のクラスタリング処理結果の一例を、図3のグラフ(Grph1)に示す。図3のグラフ(Grph1)の例によれば、センサ信号(Sig1)に含まれるON/OFF信号(1〜8)は、第1のクラス(3、4、7、8)と、第2のクラス(1、2、5、6)とに分類される。
クラス選択部34は、上記複数に分類したクラスの中から、(1)工程の開始信号および/または終了信号として妥当であるON/OFF信号で構成される非ノイズ信号クラスと、(2)上記開始信号および/または終了信号として妥当でないON/OFF信号で構成されるノイズ信号クラスとを選択するものである(S4)。
センサ信号において、工程の作業時間を算出する上で必要な情報は、工程が開始されたときに入力された上記開始信号と終了信号(ON/OFF信号)との入力時刻のみである。したがって、それ以外の時点で入力されるON/OFF信号は、ノイズ信号として除去しなければ、正確な作業時間を算出することができない。そこで、クラスター分析によって、ノイズ信号クラスを特定し、ノイズ信号クラスに属するON/OFF信号(すなわち、特徴量から判断して、工程の開始(終了)信号としては妥当でない信号)をノイズ信号として判定することができる。
本実施形態では、クラスの選択は、ユーザによって行われるものとする。より具体的には、例えば、図3のグラフ(Grph1)などで表現されるクラスタリング結果が、クラスタリング結果表示制御部22の制御によって、表示部7に表示される。ユーザは、それを視認し、各クラスの分布から、どれがノイズ信号クラス(あるいは、非ノイズ信号クラス)かを特定して、操作部5を用いて選択する。ユーザがどのクラスをノイズ信号クラス(または非ノイズ信号クラス)として選択したかを示す情報は、操作受付部21(図1)を介して、クラス選択部34に供給される。クラス選択部34は、受け取った情報に基づいて、クラスタリング結果をフィルタ関数導出部35およびフィルタリング処理部36に供給する。
図3に示す例では、クラス選択部34は、第1のクラス(3、4、7、8)をノイズ信号クラスとして、第2のクラス(1、2、5、6)を非ノイズ信号クラスとして特定し、このクラスタリング結果をフィルタ関数導出部35およびフィルタリング処理部36に供給する。
フィルタ関数導出部35は、クラスタリング結果に基づき、ノイズ信号クラスと非ノイズ信号クラスとを分割するためのフィルタ関数(例えば、Grph1に示す関数F(n))を導出するものである。
フィルタリング処理部36は、クラスタリング結果に基づき、センサ信号のノイズ信号(ここでは、3、4、7、8)を特定して、それを除去するものである(S5)。
フィルタリング結果出力部37は、上記フィルタ関数、および、ノイズ除去されたセンサ信号、すなわち、工程の開始/終了信号のみで構成される作業信号(Sig2)を、フィルタリング処理結果として出力するものである(S6)。
上述のとおり、フィルタリング処理を行うことにより、センサ信号(Sig1)からノイズ信号(3,4,7,8)が除去され、工程の開始(終了)信号(1,2,5,6)のみで構成される作業信号(Sig2)が出力される。このとき、上記センサ信号のノイズ信号を除去するために最適なフィルタのパラメータ、すなわち、上記フィルタ関数(F(n))も得ることができる。
図3に示すセンサ信号(Sig1)と作業信号(Sig2)とを比較すると、ON信号が入力されてから次のOFF信号が入力されるまでの間隔が短いものが、ノイズ信号として除去される(間隔フィルタによるフィルタリング処理)。
以降は、上述で求めたフィルタ関数F(n)をSig1のようなセンサ信号に適用することにより、誰でも簡単に、Sig2のような作業信号を得ることができる。
次に、作業監視部12が各種処理の実行時に、読み出し・書き込みなどを行うための記録部40(図1)の詳細について説明する。
記録部40のセンサ信号記録部41は、センサ3(図2)から取得した、工程の活動状況を示すON/OFF信号からなるセンサ信号(図3(Sig1))を記録するものである。センサ信号記録部41に記録されるセンサ信号のデータは、例えば、図4(a)に示すタイムスタンプや、図4(b)に示すタイミングチャートとして記録されている。なお、これらのタイムスタンプや、タイミングチャートは、作業監視結果としてユーザに提示されてもよい。この場合、ユーザの指示に応じて、作業監視部12が、センサ信号記録部41のデータを読み出し、読み出したデータを入出力制御部11の制御下で表示部7に表示する。
特徴量記録部42は、クラスター分析に利用するための、ON/OFF信号の特徴を数値化した特徴量を算出するための、特徴量パターンを記録するものである。ON/OFF信号は、さまざまな種類の特徴を有しているため、さまざまな種類の特徴量パターンが記録される。特徴量の例としては、当該ON/OFF信号の前後に入力されたON/OFF信号との入力時間差などが挙げられる。このような特徴量を用いれば、クラスタリング処理の段階において、前後の信号との入力時間差に、類似した特徴を持つON/OFF信号同士が、同じクラスに分類される。
クラスタリング結果記録部43は、クラスタリング処理部33が、センサ信号に対して、ある特徴量に基づき実行したクラスター分析のクラスタリング結果を記録するものである。クラスタリング結果としては、例えば、図3のグラフ(Grph1)に示すように、選択された2つの特徴量をそれぞれ横軸と、縦軸とにとったグラフに、点で表されたON/OFF信号を、それぞれの特徴量に基づいて、当該グラフにプロットして、類似度に基づきクラスに分類したものなどが挙げられる。同じセンサ信号に対して実行するクラスター分析でも、そのとき採用する特徴量が異なれば、クラスタリング結果は異なるので、1つのセンサ信号につき、選択された特徴量パターンの数だけ、クラスタリング結果が格納される。格納されたクラスタリング結果は、ユーザの指示に応じて、クラスタリング結果表示制御部22によって読み出され、表示部7に表示させることができる。
フィルタリング結果記録部44は、フィルタ関数導出部35およびフィルタリング処理部36が、上記クラスタリング結果に基づき、実行したフィルタリング処理の結果を記録するものである。フィルタリング結果としては、より具体的には、フィルタ関数導出部35が生成するフィルタ関数と、フィルタリング処理部36が生成する作業信号とが挙げられる。上記フィルタ関数は、フィルタ関数導出部35が、上記クラスタリング結果に基づいて、当該センサ信号のON/OFF信号を、ノイズ信号クラスと非ノイズ信号クラスに分割するために導出する。上記作業信号は、フィルタリング処理部36が、センサ信号から、ノイズ信号を除去したものである。
そして、このフィルタ関数を、上記センサ信号と対応付けて記録しておけば、以後フィルタリング処理部36は、そのフィルタ関数を用いて、当該センサ信号に関しては、即座にフィルタリング処理を行うことが可能となる。なお、フィルタリング結果記録部44に記録されたフィルタリング結果は、ユーザの指示に応じて、フィルタリング結果表示制御部23によって読み出され、表示部7に表示させることができる。
上記のセンサ信号記録部41、特徴量記録部42、クラスタリング結果記録部43、および、フィルタリング結果記録部44は、例えばハードディスク装置などの不揮発性の記録媒体によって実現される。
以下、センサ信号記録部41に記録されるセンサ信号のデータ(タイムスタンプ/タイミングチャート)についてより詳細に説明する。
図4(a)は、センサ信号記録部41に記録されるタイムスタンプの一例を示す図である。図4(a)に示すとおり、タイムスタンプ18は、例えば、1つのセンサ3から入力された1つのON/OFF信号につき1レコードが追加される、テーブル形式で記録される。タイムスタンプ18の第1カラムC1には、そのON/OFF信号をセンサ3が検出した日時の情報が格納されている。第2カラムC2には、そのON/OFF信号が、どのセンサからのセンサ信号に含まれているのかを示す情報が格納されている。第3カラムC3には、ON/OFF信号の区別(ON信号かOFF信号か)を示す情報が格納されている。
図4(b)は、センサ信号記録部41に記録されるタイミングチャートの一例を示す図である。タイミングチャート19は、図2に示す生産システム1の作業を監視するセンサ3a〜3dから取得される、4つのセンサ信号を、時間の経過に沿って1つのプロットエリア9に表したものである。
センサ信号記録部41に記録された、上記タイムスタンプ18、または、タイミングチャート19を参照することにより、作業監視装置2は、いつ、どのセンサの、どんな(ON/OFF)信号が検知されたのかを認識することが可能となる。また、それらを表示部7に表示すれば、ユーザも同様にON/OFF信号の入力タイミングを知ることができる。
なお、タイミングチャート19は、複数のセンサからのセンサ信号をユーザが確認する場合に、複数の信号の流れを同時に時系列で確認することができるので、ユーザが、複数のセンサ信号について、直接分析を行う場合は、タイミングチャート19を表示部7に出力できることが好ましい。これにより、ユーザは、各センサの仕様、センサの設置方針、注意事項などの知識を有している熟練者であれば、タイミングチャート19にプロットされたセンサ信号のパルス波形を確認することによって、ノイズ信号と非ノイズ信号とを特定することができる。
〔特徴量の種類〕
以下、特徴量記録部42に記録される、本実施形態に係る特徴量パターンについて説明する。
図5(a)は、作業監視装置2が、受信部6を介して、センサ3(図2)から取得するセンサ信号の例を示す図である。図5(b)〜(d)は、図5(a)に示すセンサ信号から、抽出可能な特徴量パターンの例を示す図である。
特徴量とは、上述したとおり、センサ信号に含まれるON/OFF信号が有する特徴を数値化したものである。本実施形態では、特徴量パターンの例として、以下の3つのパターンを特徴量記録部42に記録しているものとする。
(パターン1)当該信号の状態(「ON」信号か「OFF」信号か)(図5(b))
(パターン2)同一センサ信号において、当該ON/OFF信号の、i個前(および/または後)に入力された、信号との入力時間の差(図5(c))
(パターン3)他のセンサ信号において、当該ON/OFF信号の、i個前(および/または後)に入力された、信号との入力時間の差(図5(d))
なお、上述のiは、任意の数字を表し、あらかじめ、特徴量記録部42に格納されている。よって、パターン2、パターン3、と1つのパターンにまとめたが、iに入る数字の種類分だけ異なる特徴量パターンが存在してもよい。
(パターン1)
図5(b)は、図5(a)のセンサ信号において、ON/OFF信号の状態、すなわち、信号の「ON」か「OFF」かの区別に着目した場合の特徴量の例を示す図である。特徴量選択部31が、この特徴量パターンを選択すれば、信号が「ON」であるか「OFF」であるかによって、信号クラスが分類される。
(パターン2)
図5(c)は、図5(a)のセンサ信号において、当該ON/OFF信号のi個前(後)に入力された同一センサ信号上のON/OFF信号との入力時間差に着目した場合の特徴量の例を示す図である。特徴量選択部31が選択した特徴量パターン2に基づき、特徴量計算部32が、ON信号Pの特徴量を算出する。図5(c)に示す例では、特徴量計算部32が、信号Pの1つ前、1つ後、2つ前、2つ後に入力された信号との時間差を算出し、合計で4つの特徴量を取得することができる。
(パターン3)
図5(d)は、図5(a)のセンサ信号において、当該ON/OFF信号のi個前(後)に入力された他のセンサ信号上のON/OFF信号との入力時間差に着目した場合の特徴量の例を示す図である。特徴量選択部31が選択した特徴量パターン3に基づき、特徴量計算部32が、ON信号Pの特徴量を算出する。図5(d)に示す例では、特徴量計算部32が、信号Pの1つ前、1つ後、2つ前、2つ後に入力された、他のセンサ信号のON/OFF信号との時間差を算出し、合計で4つの特徴量を取得することができる。
なお、上述のパターンを組み合わせて特徴量を取得することも可能である。例えば、パターン1とパターン2とを組み合わせれば、『i個前(後)に入力された、「ON(OFF)」信号との時間差』などを特徴量として取得することが可能となる。
本実施形態では、パターン2に基づいて特徴量を取得し、クラスタリング処理によって間隔フィルタを実現する方法、および、当該間隔フィルタのパラメータ設定方法について説明する。より具体的には、図6に示すとおり、センサ信号60に含まれるノイズ信号を除去して、作業信号60aを出力することを考える。センサ信号60に含まれるON/OFF信号は、1つ前および後に入力されたON/OFF信号との入力時間差によって、以下の3つに分けられる。
(クラスA)
1つ前の信号との間隔は短いが、1つ後の信号との間隔は長い(図6のON/OFF信号61)。これは、工程の終了信号の特徴である。
(クラスB)
1つ前の信号との間隔が短く、1つ後の信号との間隔も短い(ON/OFF信号62)。これは、ノイズ信号の特徴である。
(クラスC)
1つ前の信号との間隔は長いが、1つ後の信号との間隔は短い(ON/OFF信号63)。これは、工程の開始信号の特徴である。
したがって、クラスター分析によってクラスBのON/OFF信号だけを分離させればよい。これにより、クラスBに属するON/OFF信号をノイズ信号として特定することができる。
図7は、図1の特徴量計算部32が取得する特徴量の例を示す図である。特徴量計算部32は、センサ信号に含まれるON/OFF信号のそれぞれについて、当該ON/OFF信号の1つ前の信号との入力時間差から特徴量Xを、1つ後の信号との入力時間差から特徴量Yを、それぞれ取得する。
〔クラスター分析〕
図7に示す特徴量をON/OFF信号ごとに取得したクラスタリング処理部33は、この2つの特徴量(X、Y)を用いてクラスタリング処理を行う。
図8は、クラスタリング処理部33が行うクラスタリング処理の結果(クラスタリング結果)を示す図である。図8に示すとおり、クラスタリング処理部33は、まず、供給された上述の特徴量Xを横軸、特徴量Yを縦軸にとった2次元の散布図を作成し、図7に示すON/OFF信号を、それぞれの特徴量に基づき、該散布図にプロットする。図8に示す1つの点が、1つのON/OFF信号を示している。
次に、クラスタリング処理部33は、プロットした点を、クラスター分析によって、いくつかのクラスに分類する。例えば、2点間の距離などから類似度を算出して、その類似度に基づき、各点が同じクラスに属するか、それぞれ違うクラスに属するかを判断していき、すべての点について分類を行う。本実施形態では、図8に示すとおり、各点(ON/OFF信号)を、3つのクラスに分類し、このクラスタリング結果をユーザに提示する。
ユーザは、図8に示すクラスタリング結果を、表示部7で確認し、クラスタリング結果に表示された各クラスが、ノイズ信号/非ノイズ信号のいずれのクラスであるのかを判断して、操作部5を用いて選択する。
具体的には、第1クラス(実線枠内の点が属するクラス)は、1つ前の信号との時間差が短く、1つ後の信号との時間差が長いことから、上述のクラスAに属する。したがって、第1クラスは、非ノイズ信号クラスであると、ユーザは判断できる。第2クラス(破線枠内の点が属するクラス)は、1つ前、後いずれの信号との時間差も短いことから、上述のクラスBに属する。したがって、第2クラスは、ノイズ信号クラスであると、ユーザは判断できる。第3クラス(一点鎖線枠内の点が属するクラス)は、1つ前の信号との時間差が長く、1つ後の信号との時間差が短いことから、上述のクラスCに属する。したがって、第3クラスは、非ノイズ信号クラスであると、ユーザは判断できる。
どのクラスがノイズ信号クラスか(あるいは、非ノイズ信号クラスか)を特定する情報は、操作部5を用いてユーザにより作業監視装置2に入力され、操作受付部21を介して、クラス選択部34に供給される。
クラス選択部34は、供給された情報に基づき、第2クラスをノイズ信号クラスとして選択し、フィルタ関数導出部35およびフィルタリング処理部36に指示を送る。なお、第1クラス・第3クラスを非ノイズ信号クラスとして選択し、その情報をフィルタ関数導出部35およびフィルタリング処理部36に供給してもよい。この場合は、フィルタ関数導出部35およびフィルタリング処理部36が、非ノイズ信号クラスとして選択されなかった第2クラスをノイズ信号クラスとして特定する。
また、ユーザが操作部5を用いて、ノイズ信号クラス(非ノイズ信号クラス)を選択する方法としては、例えば、マウスなどで、所望のクラスを示す領域をクリックしたり、マウスなどを用いて、ドラッグすることで所望の領域を指定したり、また、対話形式によって所望のクラスを、作業監視装置2に入力するなどが考えられる。また、上述の例に限定されず、さまざまGUIツールを利用して実現すればよい。
次に、フィルタ関数導出部35は、クラス選択部34の選択(どれが、ノイズ信号クラスか)に基づいてフィルタ関数を導出する。図9は、図8に示す3つのクラスのうち、第2クラスがノイズ信号クラスとして選択された場合に、フィルタ関数導出部35が求めたフィルタ関数を同じ2次元の散布図にプロットした例を示す図である。フィルタ関数導出部35は、第2クラス(クラスB)に属するON/OFF信号と、他の非ノイズ信号をと分割する境界線となるように、フィルタ関数64を導出する(例えば、y=−1.11302x+120013)。
なお、本実施形態では、ノイズ・非ノイズ信号クラスの境界が直線になっているが、フィルタ関数導出部35が導出できる関数は、このように直線の関数には限定されない。フィルタ関数導出部35は、クラスの境界が複雑な場合でも、非線形の関数を導出することが可能である。
最後に、フィルタリング処理部36は、クラス選択部34の選択(あるいは、すでに導出されたフィルタ関数64)に基づいて、フィルタリング処理を行い、そのフィルタリング結果を、フィルタリング結果記録部44に記録する。フィルタリング結果は、ノイズ信号クラスの点(ON/OFF信号)を除去した散布図として記録してもよいし、それらのON/OFF信号を、センサ信号から除去した、作業信号の波形として記録してもよいし、ノイズ信号として特定されたON/OFF信号のレコードを削除したタイミングチャートとして記録してもよい。
図10(a)は、フィルタリング処理前のクラスタリング結果の散布図(上段)およびセンサ信号(下段)を示す図であり、図10(b)は、フィルタリング処理により、図10(a)のセンサ信号から、ノイズ信号として特定されたON/OFF信号が除去された後の散布図(上段)および作業信号(下段)を示す図である。
図10(b)に示す散布図および作業信号は、フィルタリング結果としてフィルタリング結果記録部44に記録される。フィルタリング結果出力部37は、フィルタリング結果記録部44に記録されるフィルタリング結果を、ユーザの指示に応じて読み出し、フィルタリング結果表示制御部23は、このフィルタリング結果を、表示部7に表示させる。
これにより、フィルタリング処理を行った場合に、どのような結果になるか(つまり、どのような作業信号が出力されるか)を、ユーザがシミュレーションすることができる。
なお、このように導出されたフィルタ関数は、クラスBのON/OFF信号を除去するための間隔フィルタを定義するパラメータとして、フィルタリング結果記録部44に記録されたり、表示部7に表示されたりしてもよい。これにより、以後、同じセンサの同じ設置環境(作業環境)下のセンサ信号に対しては、このフィルタ関数を利用することによって誰でも簡単にノイズ信号を特定して除去することが可能となる。
上記構成によれば、センサ信号記録部41に記録されているセンサ信号に対して、最適なフィルタを適用するために、作業監視部12が、センサ信号に対してクラスタリング処理を行う。より詳細には、特徴量計算部32が、クラスタリング処理に用いる各ON/OFF信号の特徴量を算出する。次に、クラスタリング処理部33は、算出された特徴量に基づいて、散布図を作成し、当該センサ信号に含まれるON/OFF信号をプロットする。そして、各ON/OFF信号を、そのプロット位置の類似度に基づいて複数のクラスに分類する。
続いて、上述の複数のクラスから、ユーザの指示に応じて、ノイズ信号クラスが選択され、フィルタ関数導出部35は、選択されたノイズ信号クラスに基づいて、当該ノイズ信号クラスに属するON/OFF信号を除去するのに用いるフィルタ関数を導出する。フィルタリング結果出力部37は、上記フィルタ関数に基づいて、ノイズが除去された作業信号をフィルタリング結果として出力する。
ユーザは、出力されたフィルタリング結果に満足すれば(すなわち、適正にノイズ信号が除去されていると判断すれば)、その導出されたフィルタ関数を、当該センサ信号用のフィルタを定義するパラメータとして設定し、利用することが可能となる。
以上のように求めたパラメータにより定義されたフィルタを、センサ信号に適用すれば、簡単に、工程の開始(終了)信号のみで形成された作業信号を出力することができ、そのような作業信号を用いることにより、手組みラインにおいても工程に係る作業時間を算出することが可能となる。
また、作業監視装置2にセンサ信号を供給するセンサ3としては、光電センサなどの比較的安価で、設置の自由度が高いものを用いれば、生産設備を改装する必要もなく、導入コストを安価に抑えることができる。また、工程ごとの手作業の開始と終了を、センサからの信号のみで特定することが可能となり、作業者が個々に、作業の開始と終了のための入力作業を別途行う必要はなくなる。以上のことから、計測システム導入コストを安価におさえ、導入前の生産ラインの生産性を維持しつつ、手組みラインにおける作業時間を高い精度で算出し、自動で計測することが可能となる。
さらに、本発明の作業監視装置2は、特徴量を用いてON/OFF信号をクラスター分析にかけることによって、フィルタを定義するための最適なパラメータを容易に求めることが可能となる。具体的には、従来、例えば、間隔フィルタを作成するには、ノイズ信号を含むセンサ信号と、実際の工程の開始/終了時刻とを照らし合わせて、ノイズ信号だけを除去できる間隔の閾値(パラメータ)を特定する作業が必要である。このパラメータ設定の作業は、生産システム1における各工程での作業動作、センサの仕様、どのようなノイズが発生し得るかなどの知識を有する熟練者が、例えば、膨大な量のタイムスタンプ18やタイミングチャート19(図4)を見て、試行錯誤しながら、最適と思われるパラメータを特定することにより行われてきた。
しかし、本発明の作業監視装置2によれば、特徴量を用いてクラスタリング処理することにより、多数のON/OFF信号からノイズ信号のみを短時間で誰でも簡単に特定することができる。また、作業監視装置2は、ノイズ信号が特定されることによって、フィルタ関数を導出するので、フィルタのパラメータが自動的に決定される。
以上のことから、時間をかけることなく誰でも簡単にフィルタを定義することが可能となり、作業環境の変化に応じて、パラメータの再設定を行う必要がある場合にも、熟練者に限らず誰でも即座に対応することが可能となる。
なお、本実施形態において、クラスター分析に利用するために選択される特徴量の数は、特徴量Xと特徴量Yの2つとしたが、これに限定されない。特徴量を選択する段階において、ユーザが操作部5を用いて、任意に(例えば、1つ、3つなど)選択することができる。例えば、特徴量が3つ選択された場合は、クラスタリング処理結果は、2次元ではなく、3次元のグラフによって表せばよい。また、クラスター分析の実行回数は、1回に限定されず、例えば、2つの特徴量を選択して、クラスター分析を行い、さらに、もう1つ別の特徴量について再度クラスター分析を行うことも可能である。この場合、上述の、3つの特徴量に基づく、3次元グラフによるクラスター分析の結果と略同様の結果を得ることができる。
図18、19に基づいて、クラスター分析を連続で2回実行する場合について説明する。
図18(a)は、あるセンサが出力した(ノイズ信号を含む)センサ信号を示す図である。ここでは、1つの作業を示すパルスが、断続的な複数の短い動作で検出されてしまうことと、検知対象外の物体の単発の動きが検出されてしまうことによりノイズ信号Nが発生している。
図18(b)は、2つの特徴量を用いて、クラスタリング処理を行うことにより導出されたフィルタ関数で、フィルタリング処理を行った場合の結果信号を示す図である。2つの特徴量とは、上述の例(特徴量パターン2)に基づいて、ON/OFF信号の1つ前の信号との入力時間差を特徴量X、1つ後の信号との入力時間差を特徴量Yとしたものである。
なお、結果信号とは、フィルタ関数導出部35が導出したフィルタ関数に基づき、ノイズ信号クラスとして特定されたON/OFF信号を、フィルタリング処理部36がセンサ信号から除去した後の信号のことである。作業信号は、すべてのON/OFF信号が非ノイズ信号であることが確定しているものであり、工程の開始/終了時点が正確に反映されている信号のことであるので、結果信号と作業信号とは区別する。結果信号を検証し、正しくフィルタリングが行われていると確認されたときに、結果信号は、作業信号として認められる。
図18(b)の結果信号において、上記検知対象外の物体の動きに起因するノイズ信号が、適正にフィルタリングされていない。これは、ON信号68が、上述のクラスCに属していると判定され、OFF信号69が、クラスAに属すると判定されたため、ノイズ信号クラスに分類されなかったためである。
そこで、新たな特徴量パターンを選択して、別の特徴量を取得し、再度クラスタリング処理部33がクラスタリング処理を行うことで、非ノイズ信号クラスに含まれるノイズ信号をふるい落とすことが可能となる。
図18(c)は、図18(b)の結果信号において、当該ON信号(ON信号68)の2個後に入力された同一センサ信号上のON/OFF信号との入力時間差に着目した場合(パターン2’)の特徴量Qと、当該OFF信号(OFF信号69)の2個前に入力された同一センサ信号上のON/OFF信号との入力時間差に着目した場合(パターン2”)の特徴量Zとを示す図である。
特徴量選択部31は、上述の2つの特徴量パターン(パターン2’、パターン2”)を選択する。特徴量計算部32は、除去できなかった単発のON信号およびOFF信号すべてについて、特徴量Qおよび特徴量Zをそれぞれ取得する。
図19(a)は、図8の第3クラスに属するON/OFF信号について、クラスタリング処理部33が、特徴量Q(2つ後との時間差)を用いて2回目のクラスタリング処理を行った場合のクラスタリング結果の散布図である。横軸は、2つ後のON/OFF信号との入力時間差を示している。したがって、ユーザは、特徴量Qが一定値以上のON/OFF信号は、ON信号68と同じタイプのノイズ信号であるとして、クラス71をノイズ信号クラスとして選択することができる。
図19(b)は、図8の第1クラスに属するON/OFF信号について、クラスタリング処理部33が、特徴量Z(2つ前との時間差)を用いて2回目のクラスタリング処理を行った場合のクラスタリング結果の散布図である。横軸は、2つ前のON/OFF信号との入力時間差を示している。したがって、ユーザは、特徴量Zが一定値以上のON/OFF信号は、OFF信号69と同じタイプのノイズ信号であるとして、クラス72をノイズ信号クラスとして選択することができる。
2回目のクラスタリング処理によって、ノイズ信号クラスとして選択された、クラス71およびクラス72のON/OFF信号は、フィルタリング処理部36によって除去される。単発で発生するノイズ信号が含まれていても、上記特徴量パターン2’、2”を用いてクラスタリング処理を実行することにより、正しくフィルタリングの処理を行うことが可能となる。
なお、作業監視装置2は、図1に示すとおり、さらに作業時間計測部29を備えていてもよい。作業時間計測部29は、作業信号から工程の開始信号の入力時刻と、終了信号の入力時刻とを取得し、取得した時刻の差から当該工程の作業時間を計測するためのものである。これにより、ノイズ信号の含まれない、正確な工程の作業開始と終了とを表す作業信号から、正確な作業時間を計測することが可能となる。
あるいは、作業時間自動計測システム100において、作業監視装置2とは別の情報処理装置が作業時間計測部29を備え、該情報処理装置と作業監視装置2とを通信可能に接続してもよい。作業監視装置2が出力する作業信号を用いて、上記情報処理装置が作業時間を計測するので、手組みラインにおいて正確な作業時間を計測できる作業時間自動計測システム100を構築することが可能となる。
〔実施形態2〕
上記実施形態1では、特徴量選択部31による特徴量パターンの選択、およびクラス選択部34によるノイズ信号/非ノイズ信号クラスの選択は、ユーザの指示に基づいて行われる例について説明した。しかし、各々の選択肢が有限個である場合は、実施形態1における処理(フィルタリング結果の適否を判断するステップを除く)を、自動化することができる。本実施形態では、具体的には、特徴量選択部31およびクラス選択部34が、すべての選択肢の組み合わせを試して、ユーザが満足する結果が得られるまで、フィルタリング結果を順に提示する。
図11は、本実施形態における作業監視装置2(図1)の処理の流れを示すフローチャートである。なお、図11に示すS101〜S111までの各ステップは、S102とS106とが、ユーザではなく作業監視装置2によって自動で実行されることを除いては、実施形態1と同様である。
まず、図1の作業監視部12は、フィルタリング処理の対象となるセンサ信号をセンサ信号記録部41より取得する(S101)。特徴量選択部31は、特徴量記録部42を参照し、クラスタリング処理がまだ行われていない特徴量パターンを選択する(S102)。なお、このとき、選択した特徴量パターンに対応付けて、処理済みのフラグを立て、該フラグ情報を、例えば揮発性の記録媒体によって実現される一時記憶手段(図示せず)に記憶させる。特徴量計算部32は、選択された特徴量パターンに基づいて、上記センサ信号から、ON/OFF信号ごとに特徴量を算出(あるいは、取得)する(S103)。
続いて、クラスタリング処理部33は、取得された特徴量に基づいて、上述のクラスタリング処理を実行し、散布図にプロットしたそれぞれのON/OFF信号を、複数のクラスに分類する(S104)。このクラスタリング結果は、表示部7に出力されることによって、ユーザに提示されてもよい(S105)。
次に、クラス選択部34は、S104におけるクラスタリング結果で出力された複数のクラスのうち、ノイズ信号クラスを選択する(S106)。このとき、クラス選択部34は、出力された複数のクラスすべてが、ノイズ信号クラスか非ノイズ信号クラスかのいずれかとして特定されるすべての組み合わせを上記一時記憶手段に記憶させ、順にフィルタ関数導出部35およびフィルタリング処理部36に供給する。
フィルタ関数導出部35は、クラス選択部34が選択した組み合わせに基づいて、ノイズ信号クラスに属するON/OFF信号を除去するためのフィルタ関数を導出する(S107)。続いて、フィルタリング処理部36は、クラス選択部34が選択した組み合わせ、あるいは、上記フィルタ関数に基づいて、ノイズ信号として特定されたON/OFF信号をセンサ信号から除去する(フィルタリング処理)(S108)。なお、上記S107のフィルタ関数導出ステップと、S108のフィルタリング処理ステップとは、順序を入れ替えて実行してもよいし、あるいは、同時に実行してもよい。
最後に、フィルタリング結果出力部37は、S108にて上記センサ信号から生成された、ノイズ信号を含まない作業信号を、フィルタリング結果として出力する(S109)。
ここで、ユーザは、上記出力されたフィルタリング結果(タイムスタンプ、タイミングチャート、あるいは、散布図いずれでもよい)を確認し、フィルタリング処理が適正に行われたか否かを判断する(S110)。ユーザは、上記フィルタリング結果で、正しくノイズ信号が除去されたと判断した場合は(S110においてYES)、操作部5を介して、上記フィルタリング結果が適正である旨を、作業監視装置2に入力する。フィルタ関数導出部35は、S107にて導出したフィルタ関数を、上記センサ信号に好適なフィルタのパラメータであるとして、上記センサ信号に対応付けてフィルタリング結果記録部44に記録する(S111)。あるいは、ユーザがフィルタ関数を確認できるよう表示部7に出力してもよい。
一方、S110において、ユーザが、上記フィルタリング結果では、正しくノイズ信号が除去されていないと判断した場合は(S110においてNO)、操作部5を介して、再処理の指示が作業監視装置2に入力される。再処理の指示が作業監視装置2に入力されると、まず、クラス選択部34は、上記一時記憶手段に記憶させたクラス選択の組み合わせについて、フィルタリング処理が未処理のものがないかどうかを確認する(S112)。ここで、未処理の組み合わせが残っていると判定された場合は(S112においてNO)、クラス選択部34は、S106に戻り、以降の処理を繰り返す。また、すべての組み合わせが処理済みであると判定された場合は(S112においてYES)、特徴量選択部31は、上記一時記憶手段に記憶させた処理済みフラグを確認し、未処理の特徴量パターンがないかどうか確認する(S113)。ここで、未処理の特徴量パターンが残っていると判定された場合は(S113においてNO)、特徴量選択部31は、S102に戻り、未処理の特徴量パターンを選択して以降の処理を繰り返す。一方、すべての特徴量パターンにおいてクラスタリング処理、および、フィルタリング処理が終了した場合は(S113においてYES)、このまま処理を終了する。この結果を受けて、ユーザは、作業監視装置2において、当該センサ信号に対して適正なフィルタリングを行うためのフィルタを設定することは不可能であるという結論に至ることができる。
このような結論が得られた場合、ユーザは、センサの設置位置、センサの仕様などを変更することを検討することができる。
上記方法によれば、ユーザが満足するフィルタリング結果を得られるまで、有限個の選択肢についてすべてのパターンに対して、クラスタリング処理およびフィルタリング処理が実行されるので、フィルタリング処理、および、フィルタのパラメータ設定作業を、自動化して誰でも簡単に効率よく行えるようにすることができる。
さらに、作業監視装置2は、図1に示すとおり、適用フィルタ記録部45を備えていてもよい。適用フィルタ記録部45は、センサ信号において取得するべき特徴量パターンの情報と、そのクラスタリング結果に対して、どのクラスがノイズ信号(非ノイズ信号)クラスであるのかを示した情報とを記録するものである。
上記の各情報は、ユーザが必要に応じて参照できるよう、表示部7に出力されてもよい。また、特徴量選択部31(またはクラス選択部34)が、特徴量パターンの選択(または、ノイズ信号クラスの選択)を行うときに、必要に応じて、適用フィルタ記録部45を参照するようにしてもよい。
これにより、フィルタを適用したい上記センサ信号のノイズパターンが既知の場合に、これらの情報を利用して効率よくクラスタリング処理とフィルタリング処理とを実行し、フィルタに設定するパラメータを求めることが可能となる。
なお、S110において、満足した結果が得られない場合に、S103、S106のステップではなく、S107に戻り、ユーザが既出のフィルタ関数を微調整できるよう、操作部5を介して指示を入力できる構成としてもよい。この構成は、満足した結果が得られない原因が、特徴量パターンの選択違いや、クラスの選択違いに起因するものではなく、フィルタ関数の微妙な差によるものである(とユーザが判断した)場合に有効である。フィルタ関数導出部35は、ユーザの指示に応じてS107に戻った場合は、操作受付部21を介して入力される調整されたフィルタ関数を受け付ける。フィルタリング処理部36は、新たに受け付けたフィルタ関数に基づいて、フィルタリング処理を行う。新たなフィルタリング結果は、表示部7に出力され、その結果にユーザが満足するまで繰り返される。これにより、より精度の高いフィルタ関数を簡単に設定することが可能となる。
〔実施形態3〕
上述の各実施形態では、センサ信号のノイズパターンが既知の場合に、効率よく正しいクラス選択を行うための構成および方法について述べた。本実施形態では、センサ信号が未知の場合でも、効率よく正しいクラス選択を行うための構成および方法について述べる。本実施形態では、センサ信号記録部41に記録されるセンサ信号に含まれるON/OFF信号のいくつかを、実際の工程での作業動作と照らしあわせ、工程の開始(終了)信号であると認められるON/OFF信号をあらかじめ特定(ティーチング)しておく方法を採用する。
〔作業監視装置の構成3〕
図12は、本実施形態に係る作業監視装置2の要部構成を示すブロック図である。なお、図12の各構成要素に付された符号は、図1の各構成要素に付された符号に対応しており、同じ符号は、同じ構成要素を示している。したがって、上述の各実施形態ですでに説明した構成要素についての説明は繰り返さない。
図12に示す作業監視装置2において、図1の作業監視装置2と異なる点は、指定タイミング入力部8をさらに備えている点、入出力制御部11が、タイミング入力制御部24を、作業監視部12が、同期制御部38を、それぞれ有している点、および、記録部40にティーチング結果記録部46が含まれている点である。
指定タイミング入力部8は、ユーザが、工程の作業の開始あるいは終了のタイミングを作業監視装置2に伝える(ティーチングする)ために使用される。具体的には、ユーザが生産システム1において、実際に作業している様子を観察しながら(あるいは作業者本人でもよい)、指定タイミング入力部8のスイッチやボタンなどを押下して、その押下時刻を作業監視装置2に入力することが考えられる。例えば、スイッチをONにしたときが作業実行状態、OFFにしたときが非作業実行状態であると、あらかじめ定めておけば、OFFからONに切り替わった時点を作業開始のタイミング、ONからOFFに切り替わった時点を作業終了のタイミングとして、作業監視装置2に伝達することが可能となる。あるいは、作業者本人が、バーコードリーダとしての指定タイミング入力部8を用いて作業開始/終了時にパーコードを読み取り、読み取ったデータを作業監視装置2に送信することによっても、作業開始(終了)時刻をティーチングすることが可能である。
なお、この指定タイミング入力部8の構成を、操作部5で実現してもよい。
例えば、ユーザが実際の作業を観察しなくとも、センサ信号記録部41(図12)に記録されているタイムスタンプ18や、タイミングチャート19(センサ信号の波形)など、センサ信号の情報を閲覧することにより、作業開始(終了)時点を指定できる場合は、操作部5を用いて、直接作業監視装置2に作業開始(終了)時刻を指定することが可能である。
タイミング入力制御部24は、指定タイミング入力部8(操作部5)を介して入力される信号を受信し、信号が入力されたタイミング、あるいは、信号が指定する時刻を後段の同期制御部38に伝達する。
同期制御部38は、ユーザが指定する工程の区切りのタイミングと、作業の動作を検知したセンサ信号とを同期させるものである。具体的には、タイミング入力制御部24から供給された、ユーザが工程の区切りとして指定する時刻と、センサ信号記録部41に記録されたセンサ信号に含まれるON/OFF信号の入力時刻とを比較し、ユーザの指定時刻と一致するON/OFF信号を、工程の開始(終了)信号として特定する。
ティーチング結果記録部46は、同期制御部38によって、工程の開始(終了)信号として特定されたON/OFF信号の情報を、ティーチング結果として記録するものである。図13は、ティーチング結果記録部46に記録されるティーチング結果の例を示す図である。ユーザによって、作業開始のタイミングとして「2005年1月5日の8時48分25秒」が指定された場合、同期制御部38は、センサ信号記録部41のタイムスタンプ18(図4(a))から、上記の時刻に入力されたON/OFF信号を抽出する。そして、該ON/OFF信号に関連付けて、ティーチング結果情報(すなわち、「開始(終了)信号」であることを示す情報)をタイムスタンプ18aに記録する。なお、同期制御部38は、センサ信号記録部41のタイムスタンプ18にあらかじめ「ティーチング結果」を格納するための項目を設けている場合、このティーチング結果を、センサ信号記録部41に書き込んでもよい。
あるいは、表示部7に表示されたタイミングチャート19(図4(b))を見たユーザが、プロットエリア9に表示されるON/OFF信号を、操作部5を用いて選択することにより、ティーチングを行ってもよい。この場合、ティーチング結果のタイミングチャート19aを、ティーチング結果記録部46に記録することができる。
次に、本実施形態における、作業監視部12のクラスタリング処理について説明する。
本実施形態では、特徴量パターンの例として、上述の3つのパターンに加え、さらに、以下の特徴量パターンを特徴量記録部42に記録している。すなわち、ON/OFF信号が、工程の開始(終了)信号として指定されたか否か(パターン4)、である。特徴量選択部31が、この特徴量パターンを選択すれば、ON/OFF信号に関連付けられた上述の「ティーチング結果」の情報に応じて、ON/OFF信号が分類される。
図14は、上述の実施形態にて選択された特徴量パターンに加えて、上記パターン4が選択された場合に、クラスタリング処理部33が出力するクラスタリング結果の散布図である。図14に示すとおり、ティーチングによって、工程の開始(終了)信号としてあらかじめ指定されたON/OFF信号(ティーチング信号)を、例えば、異なる色の点で散布図にプロットすることができる(ティーチング信号65)。
このようにすれば、ユーザが、ノイズ信号(非ノイズ信号)クラスを選択するとき(実施形態1)に、ティーチング信号65が多く含まれているクラスを、非ノイズ信号クラスとして、一目で見分けて選択できる。また、クラス選択部34がクラス選択のすべての組み合わせを試す場合(実施形態2)においても、クラス選択部34が、より正解の確率が高い組み合わせを判定して、確率の高い順にフィルタリング結果を提示することで、ユーザはより効率よく所望のフィルタリング結果を取得することが可能となる。
正解の確率の高い組み合わせを求めるには、以下に記載するとおり、いくつかの方法がある。
各ON/OFF信号が散布図にプロットされ、複数のクラスに分類されたあと、クラス選択部34は、ティーチング信号65に着目する。分類された各クラスの特徴としては、(1)ノイズ信号が多くかたまっている、(2)非ノイズ信号が多くかたまっている、あるいは、(3)ノイズ・非ノイズ信号が満遍なく含まれているなどが挙げられる。
クラスタリング結果の最も理想的な形は、全体が2つのクラスに分類されて、片方のクラスにノイズ信号が全て包含され、もう片方のクラスに非ノイズ信号が包含されている状態のものであると考えられる。この観点から、クラス選択部34は、クラス内が非ノイズ信号に比べて、ノイズ信号の比率が高いクラス、あるいはノイズ信号に比べて、非ノイズ信号の比率が高いクラスを持つクラスタリング結果は、正解の確率が高いと判定する。そして、そのようなクラスタリング結果の優先度(表示される順)を高く設定する。一方、ノイズ信号も非ノイズ信号も同程度の比率で混在しているクラスを持つクラスタリング結果は、正解の確率が低いとして、優先度を低く設定する。
あるいは、より詳細に、クラス内のティーチング信号の有無、1クラスあたりのティーチング信号数、1クラスの全信号数に対するティーチング信号65の割合、全ティーチング信号数に対する、クラス別ティーチング信号含有率などに基づいて、分類されたクラスが、クラス選択部34が、ノイズ信号クラスか、非ノイズ信号クラスかを予測してもよい。これにより、クラス選択部34は、予測結果と合致するクラスタリング結果を正解である確率が最も高いと判定することができる。
図14の例では、全ティーチング信号数6個、第1クラスのティーチング信号数3個、第2クラス0個、第3クラス3個であることから、ティーチング信号含有率は、第1クラスから順に、50%:0%:50%となる。ここで、あらかじめ閾値を例えば40%と定めておく。これにより、クラス選択部34は、上記閾値を上回るティーチング信号を有する、第1および第3クラスが非ノイズ信号クラスで、第2クラスがノイズ信号クラスであるという組み合わせが、正解である確率が最も高いと判定することができる。
なお、ティーチングにより作業の区切りとして指定したON/OFF信号の数が多ければ多いほど、散布図に表示されるティーチング信号65の数も多くなるので、ティーチング信号65の分布に基づいたノイズ信号/非ノイズ信号の判定の信頼度は高くなる。
また、クラス選択部34が、クラスタリング処理部33によって導出されたティーチング信号65の数が、クラス選択の指標として不十分だと判定した場合は、ティーチングを追加で行うよう、ユーザに入力を促す構成としてもよい。
クラス選択部34またはユーザが行う、ノイズ信号/非ノイズ信号クラス選択の正解率を高める(正解である確率が最も高いクラスタリング結果から検証していく)ことにより、作業監視装置2における、フィルタリング処理およびフィルタのパラメータ設定作業の効率を上げることが可能となる。
〔実施形態4〕
本実施形態では、生産システム1における作業状況を撮像した動画データ(以下、作業動画と称する)を用いて、上述の、ユーザによる、ティーチングおよびフィルタリング結果確認作業を支援する構成について説明する。
〔作業監視装置の構成4〕
図15は、本実施形態に係る作業監視装置2の要部構成を示すブロック図である。なお、図15の各構成要素に付された符号は、図12の各構成要素に付された符号に対応しており、同じ符号は、同じ構成要素を示している。したがって、上述の各実施形態ですでに説明した構成要素についての説明は繰り返さない。
図15に示す作業監視装置2において、図12の作業監視装置2と異なる点は、撮像部4をさらに備えている点、入出力制御部11が、映像入出力制御部25を、作業監視部12が、動画再生部39を、それぞれ有している点、および、記録部40に作業動画記録部47が含まれている点である。
撮像部4は、図2に示す生産システム1のA〜D工程の各作業場所における、作業状況を撮像するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラなどによって実現される。
作業動画記録部47は、撮像部4が撮像した作業動画を記録するものである。図2に示す撮像部4a〜4dのように、撮像部4が工程ごとに設置されている場合には、作業動画は、工程識別情報と関連付けて、撮像時刻情報とともに記録される。これにより、工程と時間とを指定して作業動画を読み出し、再生することができる。
映像入出力制御部25は、上記撮像部4によって撮像して得られた撮像信号を受け付け、作業動画記録部47に格納するものであり、また、作業動画記録部47から読み出された作業動画を表示部7へ出力するものである。
動画再生部39は、ユーザの操作部5からの指示に応じて、作業動画記録部47から所望の作業動画を読み出し、映像入出力制御部25および表示部7を介して、読み出した作業画像を再生し、ユーザに提示するものである。
上記構成により、撮像部4によって撮像した作業動画を、ユーザは、作業監視装置2の表示部7から確認することが可能となる。
〔適用例1−ティーチング〕
図16は、作業動画を用いて、ユーザのティーチング作業を支援する場合の、同期制御部38(図15)の入出力データを説明する図である。
図16に示す作業動画再生画面13は、作業監視装置2の表示部7に表示される作業動画表示例を示している。本実施形態では、作業動画再生画面13は、動画再生部39によって再生された作業動画を表示するための作業動画表示領域13aと、動画再生部39に対する操作を行ったり、作業動画の再生状況(再生されている時点の時刻、どの工程の作業動画であるか、などの情報)を確認したりするためのGUI表示領域13bとを含んでいる。
GUI表示領域13bには、さらに、ユーザのティーチング作業を支援するためのコントロールツールが表示されている。
工程選択リスト14は、ティーチングを行う対象となるセンサ信号を指定するためのものである。本実施形態では、図2に示す生産システム1において、C工程のセンサ3cのセンサ信号についてティーチングを行いたい場合は、工程選択リスト14から「C工程」を選択すればよい。選択はユーザが操作部5を用いて行う。
開始終了指定リスト15は、工程の開始信号/終了信号のいずれをティーチングするのかを選択するためのものである。工程の開始信号をティーチングしたい場合は、開始終了指定リスト15から「開始」を選択する。
タイミング指定ボタン16は、工程の区切りのタイミングを、作業監視装置2に伝達するためのものである。開始終了指定リスト15から開始が選択されている場合を例として説明すると、ユーザは、作業動画表示領域13aに表示されるC工程の作業動画を確認しながら、作業が開始されたと判断した時点でこのタイミング指定ボタン16を、操作部5を用いて選択する。
タイミング指定ボタン16が選択されると、操作受付部21を介して同期制御部38に指示信号が入力される。同期制御部38は、入力された指示信号に応じて、ユーザが指定するティーチング情報を取得する。ティーチング情報とは、1.ティーチング対象となるのはどのセンサか、2.開始/終了信号いずれのティーチングか、3.そのタイミングはいつか、の3つである。3つ目の情報は、上記タイミング指定ボタン16が選択された時点での、上記作業動画の撮像時刻のことであり、動画再生部39から取得できる。ここでは、具体例として、同期制御部38が、「センサ3c」、「開始信号」、「2005/1/5 8:48:25」の3つの情報からなるティーチング情報を取得したものとする。
次に、同期制御部38は、センサ信号記録部41に記録されるタイムスタンプ18を参照し、「2005/1/5 8:48:25」に入力された、「センサ3c」のON/OFF信号を検索する。次に、該当するON/OFF信号66を抽出し、このON/OFF信号66が工程の開始信号であることを示す情報(ティーチング結果情報17)を出力する。ティーチング結果情報17は、実施形態3と同様、ON/OFF信号66に対応付けられ記録される。
ノイズ信号を含むセンサ信号のパルス波形やタイムスタンプを見るだけで、そこに含まれるどの信号が工程の開始/終了を示しているかを選び出すことは、時間がかかる上に、熟練者以外のユーザにとって困難な作業である。熟練者とは、例えば、生産システム1における各工程での作業動作、センサの仕様、どのようなノイズが発生し得るかなどの知識を有する者のことを指す。上記構成によれば、作業動画を確認することにより、誰でも簡単にティーチングの作業を行うことが可能となる。
〔適用例2−フィルタリング結果確認〕
図17は、作業動画を用いて、ユーザのフィルタリング結果確認作業を支援する場合の、動画再生部39(図15)の入出力データを示す図である。
センサ3cのセンサ信号(以下、センサ信号cと称する)に対して、作業監視部12の各部によって、フィルタのパラメータ(フィルタ関数c)が導出されると、次に、そのフィルタ関数cをセンサ信号cに適用したときに正しくノイズ信号の除去が行えるのかどうかの確認作業が必要となる。
図17に示す、フィルタリング結果28は、フィルタリング処理部36によって、上記フィルタ関数cに基づき、ノイズ信号クラスとして特定されたON/OFF信号をセンサ信号から除去した後の結果信号を示す。フィルタリング結果28は、フィルタリング結果記録部44に記録されている。なお、図17では、フィルタリング結果28は、タイムスタンプとして表されているが、タイミングチャートとして記録されていてもよい。
まず、操作受付部21が、センサ信号cのフィルタリング結果確認作業を開始する指示をユーザより受け付けると、同期制御部38は、フィルタリング結果記録部44からセンサ信号cの(すなわち、センサ3cに対応付けられた)の結果信号を抽出する。
次に、結果信号に含まれるON/OFF信号の入力時刻と、センサ3cが撮像していたC工程の作業動画の撮像時刻とを同期させ、上記結果信号と上記作業動画が同時に出力されるよう、動画再生部39を制御する。
動画再生部39は、同期制御部38の同期制御に基づいて、作業動画記録部47から取得したC工程の作業画像と、センサ信号cの結果信号の情報とを映像入出力制御部25に出力する。これにより、作業動画再生画面13には、作業動画と結果信号の情報とが、時刻を一致させた状態で同時に表示される。
結果信号を示す情報の表示例としては、例えば、結果信号が「作業実行状態」を示している間だけ、作業実行状態を示すロゴマーク26を表示させたり、結果信号のON/OFF信号が入力された時刻の作業動画に、工程の開始(終了)時点であることを示すフィルタリング結果画像27を重畳させたりすることが考えられる。また、一瞬の開始(終了)時点をユーザが見逃さないよう、例えば、その開始(終了)時点の前後10秒間、ガイドとして、開始ポイントまで(から)の残り(経過)秒数を、フィルタリング結果画像27として表示させてもよい。
これにより、作業動画とフィルタリング結果とを同時に表示部7に表示させることができるので、ユーザは、実際の作業の様子と、フィルタリング結果とを照らし合わせて、フィルタリング結果の適否を簡単に確認することができる。結果として、熟練者以外のユーザにとって困難な作業である結果確認作業を、誰でも簡単に行うことが可能となる。
なお、結果信号の情報の出力として、音声を出力することも考えられる。この場合、スピーカなどの音声出力手段(図示せず)を、ON/OFF信号入力時点の作業動画が出力された時にのみ音を発するよう、制御すればよい。
さらに、このフィルタリング結果確認作業の効率化を図るために、動画再生部39は、ユーザが所望する箇所の作業動画を即座に再生する機能を有していてもよい。ユーザが所望する箇所とはすなわち、ON/OFF信号の入力時刻付近である。フィルタリング結果の適否を確認するために必要なことは、結果信号に含まれるON/OFF信号の入力された時刻が、実際の工程の開始(終了)時刻と一致しているか否かを確認することである。よって、ユーザが確認作業を効率よく行うために、ON/OFF信号の入力時刻付近の作業動画のみをユーザに提示すればよい。
例えば、ユーザが、図17に示すフィルタリング結果28から、ON/OFF信号67を指定すると、動画再生部39は、ON/OFF信号67の入力時刻付近(例えば、前後10秒)の作業動画を繰り返し再生する。これにより、ユーザは、所望のON/OFF信号67の入力時刻付近の作業動画を即座に確認することができ、効率よく結果確認作業を行うことが可能となる。
あるいは、再生中の作業動画が、ON/OFF信号入力時点の度に自動で一時停止するように、動画再生部39を制御してもよい。これにより、工程の区切りを見落とすことを防ぎ、効率よく結果確認作業を行うことができる。
以上のように、本発明の作業時間自動計測システム100は、工程の作業場所において生じる物体の動き、または、作業場所に配置される電動設備の電源を監視して、工程における活動の有無を検知するセンサ3と、センサ3からのセンサ信号により、手組みラインにおける各工程の作業開始(終了)時間を高い精度で特定することが可能な作業監視装置2とを含んでいるので、作業の開始と終了を機械的に特定することが難しい手組みラインにおいて、作業時間をより高い精度で計測することが可能となる。
作業監視装置2は、センサ3から取得したON/OFF信号の入力をそのまま用いるのではなく、クラスタリング処理を行うことによって、ノイズ信号を除去(フィルタリング処理)することで、手組みライン特有の作業のやり直しや作業者ごとの微妙な手順の違いによるセンサの入力波形のばらつきを吸収することができ、これまで不可能であった手組みラインにおける作業時間の常時自動計測が実現できる。
さらに、上記クラスタリング処理によって、ノイズ信号の特定、および、該ノイズ信号を除去するためのフィルタのパラメータを自動で求めることが可能となり、フィルタリング処理および、フィルタのパラメータ設定作業を、誰でも簡単に、かつ、迅速に行うことが可能となる。
なお、上述した各実施形態では、作業監視装置2が、フィルタリング処理部36を備えて、フィルタ関数導出部35が導出したフィルタ関数を用いてフィルタリング処理を行い、また、作業時間計測部29を備えて、上記フィルタリング処理の結果出力された作業信号を用いて作業時間の算出を行う構成、すなわち、作業監視装置2が、フィルタリング処理装置および作業時間計測装置としても機能する構成とした。
しかし、本発明に係る作業時間自動計測システム100は、上記構成に限定されない。
例えば、上記作業監視装置2が、フィルタリング処理部36および作業時間計測部29を備えていない構成の場合には、作業時間自動計測システムが、該作業監視装置2と、上記作業監視装置2が導出したフィルタ関数を用いてフィルタリング処理を行うための、フィルタリング処理部36を備えたフィルタリング処理装置と、上記フィルタリング処理装置が出力した作業信号から工程開始・終了時刻を取得して作業時間を算出するための、作業時間計測部29を備えた作業時間計測装置とを含むことにより、上記各実施形態に係る作業時間自動計測システム100と略同様の効果が得られる。この場合は、上記作業監視装置2、上記フィルタリング処理装置、および、上記作業時間計測装置とは互いに通信可能なように接続されていればよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
最後に、作業監視装置2の各ブロック、特に作業監視部12のクラスタリング処理部33およびフィルタ関数導出部35は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、作業監視装置2は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである作業監視装置2の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記作業監視装置2に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、作業監視装置2を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。