JP4664026B2 - コンピュータシステム、データ転送装置、及びデータ転送方法 - Google Patents

コンピュータシステム、データ転送装置、及びデータ転送方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンピュータ間で通信回線を介してデータを回遊させることにより通信回線に記録媒体としての機能を持たせる技術に関する。
通常、コンピュータシステムにおいて使用されるデータは、そのコンピュータシステムにて読み取り可能な記録媒体に記録される。このような記録媒体としては、ハードディスク、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体や、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)等の光記録媒体が一般的である。
ところで、今日の情報化社会においては、情報に高い価値が認められる場合もあるため、記録媒体に記録されたデータが第三者に持ち出される虞もある。かかるデータの持ち出し方法としては、例えば、他人になりすましてコンピュータシステムにアクセスし、コンピュータシステムに用意された機能を用いてデータを持ち出す、といった方法もあるが、記録媒体それ自体を物理的に持ち去り、他のコンピュータシステムを用いてその中からデータを取得する、といった方法もある。
フレキシブルディスク等の可搬型記録媒体であれば、このような物理的な持ち去りは容易である。一方、ハードディスク等の筐体内に組み込まれた組込型記録媒体は、可搬型記録媒体ほど物理的な持ち去りは容易ではないが、近年、リムーバブルな組込型記録媒体も増えており、物理的な持ち去りを防止するための手段を講ずる必要に迫られている。そのような物理的な持ち去りを防止するための手法としては、認証された本人しか取り外せないようにする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2002−229664号公報(第3頁、第1−3図)
しかしながら、これらの一般的な記録媒体にデータを記録する場合、磁気的又は光学的な性質を利用するため人間の目には見えないものの、あくまで記録媒体上にデータが存在している。従って、特許文献1に記載されたような防御策を講じたとしても、その防御が破られれば、データは盗難されてしまう。即ち、記録媒体にデータが存在するような記録方法では、もはやデータの盗難を完全に防止することはできないのである。
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ネットワークそのものに記録媒体としての機能を持たせ、記録媒体を物理的に持ち去ってもデータが盗難されることのない全く新しいデータの記録方法を提供することにある。
かかる目的のもと、本発明は、所定の機能を有するデータ転送装置によりコンピュータシステムを構成し、このコンピュータシステムにてデータを回遊させるようにした。即ち、本発明のコンピュータシステムは、通信回線と、この通信回線に接続された複数のコンピュータとを備え、通信回線に記録媒体としての機能を持たせるものであり、複数のコンピュータのそれぞれは、その複数のコンピュータ間で回遊させるデータを受信すると即座に、そのデータを複数のコンピュータのうちの特定の送信先コンピュータに転送する。
また、本発明は、このコンピュータシステムを構成するデータ転送装置として捉えることもできる。その場合、本発明のデータ転送装置は、通信回線に記録媒体としての機能を持たせるために用いられるものであり、通信回線を回遊するデータとそのデータの取得要求とを非同期に受信する受信手段と、この受信手段によるデータの受信に応じて、そのデータを通信回線を介して他のデータ転送装置に送信する送信手段と、受信手段による取得要求の受信に応じて、通信回線を回遊するデータを取得するための処理を行う処理手段とを備えている。
更に、本発明は、このデータ転送装置におけるデータ転送の方法として捉えることもできる。その場合、本発明のデータ転送方法は、通信回線に記録媒体としての機能を持たせるためのものであり、通信回線を介して複数のコンピュータ間で回遊するデータを受信するステップと、所定の要求元コンピュータからデータの取得要求を受信するステップと、受信した取得要求をメモリに記憶するステップと、データを受信した際に、メモリに取得要求が記憶されていなければ、そのデータを複数のコンピュータのうちの所定のコンピュータに送信するステップと、データを受信した際に、メモリに取得要求が記憶されていれば、そのデータを要求元コンピュータに送信するステップとを含んでいる。
本発明によれば、記録媒体を物理的に持ち去ることによるデータの盗難が発生しないようになる。
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という)について詳細に説明する。
本実施の形態では、特別な機能を有する複数のデータ転送装置をネットワークを介して接続することによりコンピュータシステムを構成し、このコンピュータシステムがネットワークにデータを記憶する。尚、各データ転送装置は、新たに用意してもよいし、既にコンピュータシステムを構成しているコンピュータに特別なデータ転送の機能をインストールすることにより実現してもよい。
ユーザは、自己が使用する端末装置を用いて、本実施の形態のコンピュータシステムにて回遊させたいデータ(以下、「回遊データ」という)を送出する。すると、そのコンピュータシステムを構成するいずれかのデータ転送装置が回遊データを受信し、ネットワークに回遊データを記憶するための処理が開始する。具体的には、回遊データを受信したデータ転送装置は、即座に次のデータ転送装置へ回遊データを転送する。そして、転送を受けたデータ転送装置も、即座に次のデータ転送装置へ回遊データを転送する。このような処理を続けて行うことにより、回遊データは、データ転送装置の間を回遊しながらネットワーク上に存在し続けるのである。
ところで、回遊データの回遊経路の決定方法には、大きく分けて2つある。1つは、どのデータ転送装置からどのデータ転送装置へ回遊データを転送するかの経路を予め定義しておく方法である。そして、もう1つは、次にどのデータ転送装置へ回遊データを転送するかをその時の通信状況に応じて動的に決定する方法である。
以下、前者を第1の実施の形態として、後者を第2の実施の形態として詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態におけるコンピュータシステムの構成を示した図である。本実施の形態では、回遊データは、上述したように、予め定義された経路で回遊する。即ち、データ転送装置10、データ転送装置10、データ転送装置10の順に転送され、データ転送装置10まで達すると、逆に、データ転送装置10n−1、データ転送装置10n−2、データ転送装置10n−3の順に転送され、データ転送装置10に戻されるものとする。
尚、図1では、データ転送装置10〜10を直線状に配置して図示しているが、これはあくまで予め定義された経路に従い、回遊データが2つのデータ転送装置間を往復する様子を説明するための便宜を図ったものであり、データ転送装置10〜10の実際の配置が直線状になっていることを意味するものではない。また、本実施の形態において、データ転送装置10〜10は、インターネットにより接続されているものとする。
具体例としては、データ転送装置10を大韓民国に、データ転送装置10を日本国に、データ転送装置10をアメリカ合衆国に、データ転送装置10〜10n−1を日本国からアメリカ合衆国への通過地点にそれぞれ設置してインターネット接続し、日本国のユーザがインターネット上に送出した回遊データをデータ転送装置10が受け取り、データ転送装置10とデータ転送装置10との間で往復させるような形態が考えられる。
次に、データ転送装置10〜10の構成について説明する。尚、データ転送装置10〜10の基本的な構成及び動作は同じであるので、以下の本実施の形態に関する説明では、データ転送装置10と表記することにする。
まず、データ転送装置10のハードウェア構成は、一般的なコンピュータと同様のものであってよい。即ち、中央処理装置(CPU)、主記憶装置、外部記憶装置(例えば、磁気ディスク装置)、通信制御装置等を有するものである。
また、データ転送装置10は、図2に示すような機能構成を有する。即ち、受信部11と、データ種別判定部12と、回遊経路記憶部13と、送信先決定部14と、要求データ処理部15と、要求データ記憶部16と、送信部17とを備える。
受信部11は、回遊データ、又は、回遊データの取得を要求するデータ(以下、「要求データ」という)を受信する機能部分であり、「受信手段」として把握することができる。データ種別判定部12は、受信したデータがこれらのいずれであるかを判定する機能部分であり、回遊経路記憶部13は、回遊データを回遊させる経路を記憶するメモリ部分である。送信先決定部14は、回遊データの送信先を決定する機能部分である。また、要求データ処理部15は、要求データを受け取って記憶する機能部分であり、「処理手段」として把握することができる。要求データ記憶部16は、要求データを記憶するメモリ部分である。送信部17は、回遊データを送信する機能部分であり、「送信手段」として把握することができる。
尚、これらの機能部分は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、データ転送装置10のCPUが、受信部11、データ種別判定部12、送信先決定部14、要求データ処理部15、送信部17を実現するプログラムを外部記憶装置から主記憶装置に読み込み、回遊経路記憶部13、要求データ記憶部16に記憶された情報を必要に応じて参照しながら処理を行う。
ここで、回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報について、図3を参照して説明しておく。
図3は、回遊経路情報の一例を示したものである。この回遊経路情報は、送信元コンピュータの識別情報に対し、回遊先コンピュータの識別情報を対応付けたものである。尚、図3では、説明の便宜のため、図1において各データ転送装置に付した符号を識別情報として用いているが、実際には、IPアドレスを記憶しておくのが望ましい。
図3(a)〜(c)について具体的に説明する。
図3(a)は、図1に示したデータ転送装置10の回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報の例を示したものである。データ転送装置10は、データ転送装置10から回遊データを受信した場合、データ転送装置10にその回遊データを送信するので、送信元「10」に対して回遊先「10」が記憶されている。また、その他のコンピュータから回遊データを受信した場合も、データ転送装置10にその回遊データを送信するので、送信元「else」に対して回遊先「10」が記憶されている。
図3(b)は、図1に示したデータ転送装置10の回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報の例を示したものである。データ転送装置10は、データ転送装置10から回遊データを受信した場合、データ転送装置10にその回遊データを送信するので、送信元「10」に対して回遊先「10」が記憶されている。逆に、データ転送装置10から回遊データを受信した場合、データ転送装置10にその回遊データを送信するので、送信元「10」に対して回遊先「10」が記憶されている。また、その他のコンピュータから回遊データを受信した場合は、データ転送装置10とデータ転送装置10のいずれにその回遊データを送信しても構わないが、ここでは、データ転送装置10に送信するものとし、送信元「else」に対して回遊先「10」を記憶している。
図3(c)は、図1に示したデータ転送装置10の回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報の例を示したものである。データ転送装置10では、データ転送装置10n−1から回遊データを受信した場合、データ転送装置10n−1にその回遊データを送信するので、送信元「10n−1」に対して回遊先「10n−1」が記憶されている。また、その他のコンピュータから回遊データを受信した場合も、データ転送装置10n−1にその回遊データを送信するので、送信元「else」に対して回遊先「10n−1」が記憶されている。
次に、本実施の形態におけるデータ転送装置10の動作について、図4を参照して詳細に説明する。
まず、ユーザは、端末装置で所定のアプリケーションプログラムを起動し、回遊データ又は要求データを送出する指示を行う。これにより、回遊データ又は要求データは、インターネットに送出される。その際、アプリケーションプログラムは、TCP(Transmission Control Protocol)におけるデータ部分(TCPヘッダに続く部分)に、回遊データであるか要求データであるかのフラグを付加すると共に、回遊データの場合は、その識別情報を、要求データの場合は、要求する回遊データの識別情報を付加しておく。
そして、受信部11が、この送出されたデータを受信する(ステップ101)。尚、データが、上述のようにインターネットに送出された後、初めて本実施の形態のコンピュータシステムに到達した場合であれば、ここでのデータの送信元は、データ転送装置10〜10以外の装置となるが、既に本実施の形態のコンピュータシステムに到達し転送されてきた場合であれば、データの送信元は、データ転送装置10〜10のいずれかとなる。
次いで、データ種別判定部12が、その受信したデータの種別、即ち、回遊データであるか要求データあるかを判定する(ステップ102)。具体的には、インターネット送出時にTCPにおけるデータ部分に付加された回遊データであるか要求データであるかのフラグに基づいて判定する。
ステップ102での判定の結果、受信したデータが要求データであった場合、要求データ処理部15が、その要求データを要求データ記憶部16に記憶する(ステップ103)。具体的には、要求データのIPヘッダから要求元の装置のIPアドレス(要求元IPアドレス)を取得すると共に、要求データのTCPにおけるデータ部分から回遊データの識別情報を取得し、これらの情報を記憶しておく。
一方、ステップ102での判定の結果、受信したデータが回遊データであった場合、送信先決定部14は、まず、要求データ記憶部16にその回遊データについての要求データが記憶されているかどうかを判定する(ステップ104)。即ち、回遊データのTCPにおけるデータ部分からその回遊データの識別情報を取得し、これと一致するものが、要求データ記憶部16に記憶された回遊データの識別情報の中に存在するかどうかを判定する。
この判定の結果、その回遊データについての要求データが記憶されていなかった場合は、回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報を参照し、その回遊データの送信先を決定する(ステップ105)。具体的には、回遊データのIPヘッダから送信元IPアドレスを取得し、回遊経路記憶部13においてこのIPアドレスと対応付けてある回遊先IPアドレスを取得する。そして、回遊データのIPヘッダにおける送信先IPアドレスをこの回遊先IPアドレスに書き換えると共に、IPヘッダにおける送信元IPアドレスを自身のIPアドレスに書き換える。
一方、この判定の結果、その回遊データについての要求データが記憶されていた場合は、要求データ記憶部16に記憶された要求元を、その回遊データの送信先に決定する(ステップ106)。具体的には、要求データ記憶部16から要求元IPアドレスを取得する。そして、回遊データのIPヘッダにおける送信先IPアドレスをこの要求元IPアドレスに書き換えると共に、IPヘッダにおける送信元IPアドレスを自身のIPアドレスに書き換える。
そして、送信部17は、回遊データを、決定された送信先に送信する(ステップ107)。
最後に、以上の動作を、要求データを受信する前に回遊データを受信した場合と、回遊データを取得するための要求データを受信した場合と、要求データを受信した後に回遊データを受信した場合とに分けて説明する。
まず、要求データを受信する前に回遊データを受信した場合について説明する。即ち、ユーザが回遊データをインターネットに送出後、このデータ転送装置10が初めて回遊データを受信した場合や、本実施の形態のコンピュータシステムにおいて回遊データが何往復かしているが、ユーザがその回遊データを取得する要求を出していない場合である。
ステップ101で受信部11が回遊データを受信し、ステップ102でデータ種別判定部12が回遊データであると判定し、ステップ104へ進む。次に、ステップ104で送信先決定部14が要求データなしと判定し、ステップ105へ進む。そして、ステップ105で送信先決定部14は回遊経路記憶部13に記憶された回遊先を送信先に決定し、ステップ107で送信部17が回遊データを次のデータ転送装置10に送信する。
また、回遊データを取得するための要求データを受信した場合について説明する。即ち、ユーザが回遊データをインターネットに送出後、その回遊データを取得するための要求データをインターネットに送出し、このデータ転送装置10がその要求データを受信した場合である。
ステップ101で受信部11が要求データを受信し、ステップ102でデータ種別判定部12が要求データであると判定し、ステップ103へ進む。次に、ステップ103で要求データ処理部15が要求データを要求データ記憶部16に記憶する。
更に、要求データを受信した後に回遊データを受信した場合について説明する。即ち、ユーザによる回遊データを取得するための要求データに応じ、本実施の形態のコンピュータシステムにて回遊しているデータを捕捉してユーザに送り返す場合である。
ステップ101で受信部11が回遊データを受信し、ステップ102でデータ種別判定部12が回遊データであると判定し、ステップ104へ進む。次に、ステップ104で送信先決定部14が要求データありと判定し、ステップ106へ進む。ステップ106で送信先決定部14は要求データ記憶部16に記憶された要求元を送信先に決定し、ステップ107で送信部17が回遊データを要求データの送信元の装置に送信する。
以上述べたように、本実施の形態では、データ転送装置10とデータ転送装置10との間で回遊データを往復させることにより、ネットワークに記録媒体としての機能を持たせることを可能とした。また、回遊データは、各データ転送装置10を必ずいつかは通過するので、回遊データを取得するために、回遊データの取得要求を受けたデータ転送装置10が、回遊データが転送されてくるのを待ち受けるという構成を採用した。かかる構成によれば、通信回線を物理的に持ち去ってもデータが盗難されることはないという効果がもたらされる。
尚、本実施の形態では、図1に示したようなネットワーク構成を前提に、回遊データを2つのデータ転送装置10の間で往復させるようにしたが、ネットワークを円形に構成し、回遊データを周回させるようにしてもよい。具体的には、図1において、データ転送装置10、データ転送装置10、データ転送装置10、…、データ転送装置10と転送された後、データ転送装置10n−1に戻るのではなく、データ転送装置10に転送するようにする。そして、その後は、前回通過時と同様、データ転送装置10、データ転送装置10、…、データ転送装置10と転送するようにする。
この場合も、回遊データは、各データ転送装置10を必ずいつかは通過するので、回遊データの取得要求を受けたデータ転送装置10が、回遊データが転送されてくるのを待ち受けるという構成はそのままこの形態にも適用できる。但し、各データ転送装置10を回遊データが通過する方向は一方向のみとなるので、図3の回遊経路情報で、送信元を記憶しておく必要はない。例えば、データ転送装置10の回遊経路記憶部13には、送信元に関わらず、回遊先「10」のみを記憶しておけばよい。
(第2の実施の形態)
図5は、本実施の形態におけるコンピュータシステムの構成を示した図である。本実施の形態では、回遊データは、上述したように、転送時における通信回線の状況等に応じて動的に決定された経路で回遊する。例えば、データ転送装置1011が回遊データを転送する場合、データ転送装置1012、データ転送装置1021のうち、帯域の空きが大きい通信回線を経由する方に転送する。また、データ転送装置1022が回遊データを転送する場合、データ転送装置1012、データ転送装置1021、データ転送装置1023、データ転送装置1032のうち、帯域の空きが大きい通信回線を経由する方に転送する。
尚、図5では、1つのデータ転送装置10から送信可能なデータ転送装置10が複数存在することを分かり易く示すために、データ転送装置1011〜10mnを格子状に配置して図示しているが、必ず格子状に配置しなければならないというわけではない。また、1つのデータ転送装置10から送信可能なデータ転送装置10の数も、図5に示すような2つ、3つ、4つには限られない。
具体例としては、データ転送装置1011を日本国に、データ転送装置1012〜10mnを世界各地に設置してインターネット接続し、日本国のユーザがインターネット上に送出した回遊データをデータ転送装置1011が受け取り、通信回線の状況に応じて世界各地のデータ転送装置10へ回遊させるような形態が考えられる。通信回線の状況に応じて回遊させるので、例えば、データ転送装置101nとデータ転送装置102nの間の通信回線の帯域の空きが大きい時間帯においては、回遊データがデータ転送装置101nとデータ転送装置102nの間で往復する場合もあるし、別の時間帯においては、回遊データがデータ転送装置10m1とデータ転送装置10m2の間で往復する場合もある。
次に、データ転送装置10〜10の構成について説明する。尚、データ転送装置10〜10の基本的な構成及び動作は同じであるので、以下の本実施の形態に関する説明では、データ転送装置10と表記することにする。
まず、データ転送装置10のハードウェア構成は、一般的なコンピュータと同様のものであってよい。即ち、中央処理装置(CPU)、主記憶装置、外部記憶装置(例えば、磁気ディスク装置)、通信制御装置等を有するものである。
また、データ転送装置10は、図6に示すような機能構成を有する。即ち、受信部11と、データ種別判定部12と、回遊経路記憶部13と、送信先決定部14と、要求データ処理部15と、要求データ記憶部16と、送信部17と、回遊経路更新部18と、要求経路記憶部19とを備える。
受信部11、データ種別判定部12、回遊経路記憶部13、送信先決定部14、要求データ記憶部16、送信部17は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。要求データ処理部15は、第1の実施の形態では、要求データを受け取って記憶するだけであったが、本実施の形態では、その要求データを送信する処理も行う。また、回遊経路更新部18は、回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報を更新する機能部分であり、要求経路記憶部19は、要求データの送信経路の情報を記憶するメモリ部分である。
尚、これらの機能部分は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、データ転送装置10のCPUが、受信部11、データ種別判定部12、送信先決定部14、要求データ処理部15、送信部17、回遊経路更新部18を実現するプログラムを外部記憶装置から主記憶装置に読み込み、回遊経路記憶部13、要求データ記憶部16、要求経路記憶部19に記憶された情報を必要に応じて参照しながら処理を行う。
ここで、回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報について、図7を参照して説明しておく。
図7は、回遊経路情報の一例を示したものである。この回遊経路情報は、回遊先コンピュータの識別情報に優先順位を付加したものである。この優先順位は、その時点での帯域の空きが大きい通信回線を介して接続されたコンピュータほど高く設定するようにする。尚、図7では、説明の便宜のため、図5において各データ転送装置に付した符号を識別情報として用いているが、実際には、IPアドレスを記憶しておくのが望ましい。
図7(a)〜(c)について具体的に説明する。
図7(a)は、図5に示したデータ転送装置1011の回遊経路記憶部13にある時点で記憶されている回遊経路情報の例を示したものである。データ転送装置1011はデータ転送装置1012又はデータ転送装置1021に回遊データを送信可能であるが、ここでは、回遊経路更新部18が、通信回線の状況を見て、回遊先「1012」を優先順位「1」として記憶し、回遊先「1021」を優先順位「2」として記憶している。
図7(b)は、図5に示したデータ転送装置1022の回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報の例を示したものである。データ転送装置1022はデータ転送装置1012、データ転送装置1023、データ転送装置1032、データ転送装置1021のいずれかに回遊データを送信可能であるが、ここでは、回遊経路更新部18が、通信回線の状況を見て、回遊先「1012」を優先順位「1」として記憶し、回遊先「1023」を優先順位「2」として記憶し、回遊先「1032」を優先順位「3」として記憶し、回遊先「1021」を優先順位「4」として記憶している。
図7(c)は、図5に示したデータ転送装置10mnの回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報の例を示したものである。データ転送装置10mnはデータ転送装置10m(n−1)又はデータ転送装置10(m−1)nに回遊データを送信可能であるが、ここでは、回遊経路更新部18が、通信回線の状況を見て、回遊先「10m(n−1)」を優先順位「1」として記憶し、回遊先「10(m−1)n」を優先順位「2」として記憶している。
次に、本実施の形態におけるデータ転送装置10の動作について、図8を参照して詳細に説明する。
まず、ユーザは、端末装置で所定のアプリケーションプログラムを起動し、回遊データ又は要求データを送出する指示を行う。これにより、回遊データ又は要求データは、インターネットに送出される。その際、アプリケーションプログラムは、TCP(Transmission Control Protocol)におけるデータ部分(TCPヘッダに続く部分)に、回遊データであるか要求データであるかのフラグを付加すると共に、回遊データの場合は、その識別情報を、要求データの場合は、要求する回遊データの識別情報を付加しておく。
そして、受信部11が、この送出されたデータを受信する(ステップ111)。尚、データが、上述のようにインターネットに送出された後、初めて本実施の形態のコンピュータシステムに到達した場合であれば、ここでのデータの送信元は、データ転送装置1011〜10mn以外の装置となるが、既に本実施の形態のコンピュータシステムに到達し転送されてきた場合であれば、データの送信元は、データ転送装置1011〜10mnのいずれかとなる。
次いで、データ種別判定部12が、その受信したデータの種別、即ち、回遊データであるか要求データあるかを判定する(ステップ112)。具体的には、インターネット送出時にTCPにおけるデータ部分に付加された回遊データであるか要求データであるかのフラグに基づいて判定する。
ステップ112での判定の結果、受信したデータが要求データであった場合、要求データ処理部15が、その要求データを要求データ記憶部16に記憶する(ステップ113)。具体的には、要求データのIPヘッダから要求元の装置のIPアドレス(要求元IPアドレス)を取得すると共に、要求データのTCPにおけるデータ部分から回遊データの識別情報を取得し、これらの情報を記憶しておく。
また、本実施の形態では、転送時の通信状況に応じて回遊データの回遊経路を決定しているので、このデータ転送装置10に回遊データが必ず戻ってくるという保証がない。そこで、要求データはこのデータ転送装置10に記憶しておくだけでなく、他のデータ転送装置10にも転送するようにする。即ち、要求データ処理部15は、要求経路記憶部19に記憶された要求先を送信先に決定する(ステップ114)。具体的には、要求データのIPヘッダにおける送信先IPアドレスを要求先IPアドレスに書き換えると共に、IPヘッダにおける送信元IPアドレスを自身のIPアドレスに書き換える。
一方、ステップ112での判定の結果、受信したデータが回遊データであった場合、送信先決定部14は、まず、要求データ記憶部16にその回遊データについての要求データが記憶されているかどうかを判定する(ステップ115)。即ち、回遊データのTCPにおけるデータ部分からその回遊データの識別情報を取得し、これと一致するものが、要求データ記憶部16に記憶された回遊データの識別情報の中に存在するかどうかを判定する。
この判定の結果、その回遊データについての要求データが記憶されていなかった場合は、回遊経路記憶部13に記憶された回遊経路情報を参照し、その回遊データの送信先を決定する(ステップ116)。具体的には、回遊経路記憶部13において優先順位が「1」となっている回遊先IPアドレスを取得する。そして、回遊データのIPヘッダにおける送信先IPアドレスをこの回遊先IPアドレスに書き換えると共に、IPヘッダにおける送信元IPアドレスを自身のIPアドレスに書き換える。
一方、この判定の結果、その回遊データについての要求データが記憶されていた場合は、要求データ記憶部16に記憶された要求元を、その回遊データの送信先に決定する(ステップ117)。具体的には、要求データ記憶部16から要求元IPアドレスを取得する。そして、回遊データのIPヘッダにおける送信先IPアドレスをこの要求元IPアドレスに書き換えると共に、IPヘッダにおける送信元IPアドレスを自身のIPアドレスに書き換える。
そして、送信部17は、要求データ又は回遊データを、決定された送信先に送信する(ステップ118)。
最後に、以上の動作を、要求データを受信する前に回遊データを受信した場合と、回遊データを取得するための要求データを受信した場合と、要求データを受信した後に回遊データを受信した場合とに分けて説明する。
まず、要求データを受信する前に回遊データを受信した場合について説明する。即ち、ユーザが回遊データをインターネットに送出後、このデータ転送装置10が初めて回遊データを受信した場合や、本実施の形態のコンピュータシステムにおいて回遊データが一定期間回遊しているが、ユーザがその回遊データを取得する要求を出していない場合である。
ステップ111で受信部11が回遊データを受信し、ステップ112でデータ種別判定部12が回遊データであると判定し、ステップ115へ進む。次に、ステップ115で送信先決定部14が要求データなしと判定し、ステップ116へ進む。そして、ステップ116で送信先決定部14は回遊経路記憶部13に記憶された回遊先を送信先に決定し、ステップ118で送信部17が回遊データを次のデータ転送装置10に送信する。
また、回遊データを取得するための要求データを受信した場合について説明する。即ち、ユーザが回遊データをインターネットに送出後、その回遊データを取得するための要求データをインターネットに送出し、このデータ転送装置10がその要求データを受信した場合や、その要求データが他のデータ転送装置10から転送されてきた場合である。
ステップ111で受信部11が要求データを受信し、ステップ112でデータ種別判定部12が要求データであると判定し、ステップ113へ進む。次に、ステップ113で要求データ処理部15が要求データを要求データ記憶部16に記憶し、ステップ114で要求データ処理部15は要求経路記憶部19に記憶された要求先を送信先に決定し、ステップ118で送信部17が要求データを次のデータ転送装置10に送信する。
更に、要求データを受信した後に回遊データを受信した場合について説明する。即ち、ユーザによる回遊データを取得するための要求データに応じ、本実施の形態のコンピュータシステムにて回遊しているデータを捕捉してユーザに送り返す場合である。
ステップ111で受信部11が回遊データを受信し、ステップ112でデータ種別判定部12が回遊データであると判定し、ステップ115へ進む。次に、ステップ115で送信先決定部14が要求データありと判定し、ステップ117へ進む。ステップ117で送信先決定部14は要求データ記憶部16に記憶された要求元を送信先に決定し、ステップ118で送信部17が回遊データを要求データの送信元の装置に送信する。
以上述べたように、本実施の形態では、データ転送装置1011からデータ転送装置10mnの間で回遊データを回遊させることにより、ネットワークに記録媒体としての機能を持たせることを可能とした。また、回遊データは、通信回線の状況に応じて転送され、各データ転送装置10を通過するかどうかは分からないため、回遊データを取得するために、回遊データの取得要求を受けたデータ転送装置10は、回遊データが転送されてくるのを待ち受けると共に、他のデータ転送装置10に対しても回遊データを待ち受けることができるように要求データを送信するという構成を採用した。かかる構成によれば、ネットワーク資源の有効利用を図りつつ、通信回線を物理的に持ち去ってもデータが盗難されることはないという効果がもたらされる。
本発明の第1の実施の形態におけるコンピュータシステムの構成を示した図である。 本発明の第1の実施の形態におけるデータ転送装置の機能構成を示したブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における回遊経路情報の例を示した図である。 本発明の第1の実施の形態におけるデータ転送装置の動作を示したフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態におけるコンピュータシステムの構成を示した図である。 本発明の第2の実施の形態におけるデータ転送装置の機能構成を示したブロック図である。 本発明の第2の実施の形態における回遊経路情報の例を示した図である。 本発明の第2の実施の形態におけるデータ転送装置の動作を示したフローチャートである。
符号の説明
10…データ転送装置、11…受信部、12…データ種別判定部、13…回遊経路記憶部、14…送信先決定部、15…要求データ処理部、16…要求データ記憶部、17…送信部、18…回遊経路更新部、19…要求経路記憶部

Claims (3)

  1. 通信回線と、
    前記通信回線に接続された複数のコンピュータとを備え、
    記録すべきデータを前記複数のコンピュータの間で回遊させて、当該データが前記通信回線上に存在する状態を継続させることにより、前記通信回線に記録媒体としての機能を持たせるコンピュータシステムであり、
    前記複数のコンピュータのそれぞれは
    前記複数のコンピュータ間で回遊させるデータを受信すると即座に、当該データを当該複数のコンピュータのうちの特定の送信先コンピュータに転送し、
    自装置のメモリに格納され、前記データを転送する時点における通信状況を反映して決定された、当該データを回遊させる経路の情報に従い、前記特定の送信先コンピュータを決定し、
    所定の要求元コンピュータから前記データの取得要求を受信したときに、当該取得要求を前記メモリに記憶するとともに前記複数のコンピュータのうちの予め定められた他のコンピュータに送信し、
    所定の送信元コンピュータから前記データを受信したときに、前記メモリに当該データの前記取得要求が記憶されていれば、当該データを当該取得要求の要求元コンピュータに送信することを特徴とするコンピュータシステム。
  2. 記録すべきデータを複数のコンピュータの間で回遊させて、当該データが通信回線上に存在する状態を継続させることにより、当該通信回線に記録媒体としての機能を持たせるために用いられるデータ転送装置であり、
    前記通信回線を回遊するデータと他の装置からの当該データの取得要求とを非同期に受信する受信手段と、
    前記受信手段による前記データの受信に応じて、当該データを前記通信回線を介して送信する送信手段であって、自装置のメモリに格納され当該データを送信する時点における通信状況を反映して決定された、当該データを回遊させる経路の情報に従い、送信先のデータ転送装置を決定して、当該データを当該送信先のデータ転送装置に送信する送信手段と、
    前記受信手段による前記取得要求の受信に応じて、当該取得要求を前記メモリに記憶するとともに予め定められた他のデータ転送装置に送信する処理を行う処理手段と
    を備え、
    前記送信手段は、前記受信手段による前記データの受信に応じて、前記メモリに当該データの取得要求が記憶されていれば、当該データを当該取得要求の要求元に送信することを特徴とするデータ転送装置。
  3. 記録すべきデータを複数のコンピュータの間で回遊させて、当該データが通信回線上に存在する状態を継続させることにより、当該通信回線に記録媒体としての機能を持たせるためのデータ転送方法であり、
    前記通信回線を介して複数のコンピュータ間で回遊するデータを受信するステップと、
    所定の要求元コンピュータから前記データの取得要求を受信するステップと、
    受信した前記取得要求をメモリに記憶するステップと、
    受信した前記取得要求を前記複数のコンピュータのうちの予め定められた他のコンピュータに送信するステップと、
    前記データを受信した際に、前記メモリに前記取得要求が記憶されていなければ、当該データを前記複数のコンピュータのうちの特定の送信先コンピュータであって、前記メモリに格納され、当該データを送信する時点における通信状況を反映して決定された、当該データを回遊させる経路の情報に従い決定された当該特定の送信先コンピュータに送信するステップと、
    前記データを受信した際に、前記メモリに前記取得要求が記憶されていれば、当該データを前記要求元コンピュータに送信するステップと
    を含むことを特徴とするデータ転送方法。
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