JP4663395B2 - ハイブリッド車両の発進制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくともエンジン、モータジェネレータ、クラッチ、駆動輪の順に接続してハイブリッド駆動系を構成したハイブリッド車両の発進制御装置に関する。
従来、エンジン車両の駆動系構成要素であるエンジンとトランスミッションとの間に、エンジン出力軸の締結開放を行うクラッチを配置し、該クラッチとトランスミッションとの間にモータジェネレータを配置したハイブリッド駆動系を持つハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このハイブリッド車両では、前記駆動系のモータジェネレータに、エンジンスタータ機能と、モータ走行時の動力源機能と、協調回生時の発電機能と、オルタネータの発電機能とを持たせることができ、この結果、スタータやオルタネータを廃止できる。
特開平11−82260号公報
しかしながら、上記ハイブリッド車両にあっては、ドライバのアクセル踏み込み操作によりエンジントルクを発生させながらニュートラルレンジ位置(=Nレンジ位置)で待機し、Nレンジ位置から走行レンジ位置(=Dレンジ位置)へと切り替えて発進させるとき、トランスミッション内のクラッチを締結すると、アクセル開度に応じてエンジン回転数が上昇するため、クラッチ締結時に差回転が大きくなるし、クラッチ入力トルクも高いことで、急激な発熱によりクラッチが損傷するおそれがある、という問題がある。
そこで、トランスミッション内のクラッチを保護するために、エンジン側でトルクダウン制御を実行すると、トルクダウン指令から実際にトルクダウンするまでの応答が遅く、N→Dセレクトによるパワーオン発進時において、クラッチ発熱を低減する有効な手段とはなり得ない、という問題がある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、アクセル踏み込み待機からのパワーオン発進時、発進開始からの高いトルクダウン応答による有効なクラッチ発熱の低減によりクラッチ保護を達成することができるハイブリッド車両の発進制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、少なくともエンジン、モータジェネレータ、クラッチ、駆動輪の順に接続してハイブリッド駆動系を構成したハイブリッド車両において、ニュートラルレンジ位置がセレクトされ、前記クラッチが動力を伝えないように解放されている状態でドライバのアクセル踏み込み操作により前記エンジンのトルクを発生させながらの待機時、前記エンジンからのトルクが前記モータジェネレータへ伝達されている状態で前記アクセル踏み込み操作により前記エンジンが出力しているトルクを前記モータジェネレータに対するトルク制御により絞ることによって前記クラッチへの入力トルクを絞り、前記待機時から走行レンジ位置にセレクトした発進時、前記モータジェネレータに対するトルク制御により前記クラッチへの入力トルクを絞り、かつ、前記クラッチを滑り締結させることで駆動力を出すパワーオン発進制御手段を設けたことを特徴とする。

よって、本発明のハイブリッド車両の発進制御装置にあっては、パワーオン発進制御手段において、ドライバのアクセル踏み込み操作による待機状態からの発進時、クラッチへの入力トルクがモータジェネレータに対するトルク制御により絞られ、かつ、クラッチを滑り締結させることで駆動力が出される。すなわち、クラッチへの入力トルクは、エンジントルクとモータジェネレータトルクとの和により決まるが、エンジントルク制御は行わず、モータジェネレータトルクを負のトルク(回生トルク)とする制御を行うことで、クラッチへの入力トルクが絞られる。このため、入力トルクと差回転に応じて発熱する滑り締結状態のクラッチでは、入力トルクの絞りと差回転の低下によりクラッチ温度上昇が抑えられ、クラッチの熱損傷を低減できる。加えて、クラッチへの入力トルクを絞る際、制御応答の速いモータジェネレータに対するトルク制御により行うようにしているため、発進開始直後から、応答良くクラッチへの入力トルクが絞られることになり、エンジンのトルクダウン制御を行う場合に比べ、高いトルクダウン応答性が確保される。この結果、アクセル踏み込み待機からのパワーオン発進時、発進開始からの高いトルクダウン応答による有効なクラッチ発熱の低減によりクラッチ保護を達成することができる。
以下、本発明のハイブリッド車両の発進制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1および実施例2に基づいて説明する。
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。
図1は実施例1の発進制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、モータジェネレータMGと、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2(クラッチ)と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。
前記エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
前記モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。なお、このモータジェネレータMGのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装された油圧式多板クラッチであり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。
前記第2クラッチCL2は、前記モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装された油圧式多板クラッチであり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結とスリップ開放を含み締結・開放が制御される。
前記自動変速機ATは、例えば、前進5速後退1速や前進6速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機であり、前記第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち1つの発進締結要素を流用している。そして、前記自動変速機ATの出力軸は、プロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いに情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続されている。
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報を入力し、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン回転数Neの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13等からの情報を入力し、統合コントローラ10からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14と第1クラッチストロークセンサ15等からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。なお、第1クラッチストロークC1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と車速センサ17と第2クラッチ油圧センサ18とインヒビタースイッチ24等からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令に応じ、変速制御における第2クラッチ制御に優先し、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。なお、アクセル開度APと車速VSPの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19とブレーキストロークセンサ20等からのセンサ情報を入力し、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22と、第2クラッチトルクTCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ23等からの情報およびCAN通信線11を介して得られた情報を入力する。そして、前記エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジンEの動作制御を行い、前記モータコントローラ2への制御指令によりモータジェネレータMGの動作制御を行い、前記第1クラッチコントローラ5への制御指令により第1クラッチCL1の締結・開放制御を行い、前ATコントローラ7への制御指令により第2クラッチCL2の締結・開放制御を行う。
なお、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2の入出力回転数情報は、
第1クラッチ入力回転数=エンジン回転数Ne(エンジン回転数センサ12)
第1クラッチ出力回転数=モータ回転数Nm(モータ回転数センサ21)
第2クラッチ入力回転数=モータ回転数Nm(モータ回転数センサ21)
第2クラッチ出力回転数=第2クラッチ出力回転数N2out(第2クラッチ出力回転数センサ22)
により得られる。
次に、第1実施例のハイブリッド車両の基本動作モードについて説明する。
停止中:停止中において、バッテリSOCの低下時であれば、エンジンEを始動して発電を行い、バッテリ4を充電する。そして、バッテリSOCが通常範囲になれば、第1クラッチCL1は締結で第2クラッチCL2は開放のままでエンジンEを停止する。
発進時:エンジン発進時には、アクセル開度APとバッテリSOC状態によって、モータジェネレータMGを連れ回し、力行/発電に切り替える。モータ発進時で、ロールバックにより自動変速機ATの出力回転が負回転となったら、第2クラッチCL2のスリップ制御を行い、モータジェネレータMGの回転を正回転に維持する。次に、駆動力を車両が前進するまで上昇させ、第2クラッチCL2をスリップ制御から締結に移行させる。
走行時(一定速・加速):モータ走行は、エンジン始動に必要なモータトルクとバッテリ出力を確保し、不足する場合はエンジン走行に移行する。燃費向上のために、モータ走行と発電上乗せ充電はセットで行う(モータトルクとバッテリ出力の制約により、走行可能範囲は、低負荷に限定される)。発電上乗せ充電は、エンジン燃料消費の最小点を狙い、走行に必要なトルクに発電トルクを上乗せして行う(但し、バッテリSOC上昇時は、発電を行わない)。アクセル踏み込み時のレスポンス向上のために、エンジントルク遅れ分をモータジェネレータMGによりアシストする。
減速時:コースト減速であって、エンジン走行(燃料カット)時は、エンジンブレーキにより減速力を出すこととし、モータ回生時は、エンブレ相当の減速力を出す。ブレーキON減速時には、ドライバーのブレーキ操作に応じた減速力を回生協調ブレーキ制御にて得る。回生を行う車速は、コースト減速と同じとする。
変速時:エンジン走行やモータ走行中における変速時には、加減速中の変速に伴う回転数合わせのために、モータジェネレータMGを回生/力行させ、トルクコンバータ無しでのスムーズな変速を行う。
次に、作用を説明する。
[ハイブリッド駆動制御の全体処理]
図2は実施例1の統合コントローラ10にて実行されるハイブリッド駆動制御(エンジン制御・モータ制御・第1クラッチ制御・第2クラッチ制御)の全体処理の流れを示すメインフローチャートであり、以下、各ステップについて説明する。この制御は、設定周期毎に繰り返し実行される。
ステップS1では、バッテリSOCとバッテリ入力可能電力とアクセル開度により目標駆動力を演算し、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、ステップS1での目標駆動力の演算に続き、車速とアクセル開度と変速スケジュールにより目標変速段を演算し、ステップS3へ移行する。
ステップS3では、ステップS2での目標変速段の演算に続き、ステップS1で演算された目標駆動力と車速とモードマップにより目標モードを演算し、ステップS4へ移行する。
ここで、目標モードとしては、第1クラッチCL1を締結しエンジンEを主たる動力源とする「エンジン走行モード」と、第1クラッチCL1を開放しモータジェネレータMGを動力源とする「電気自動車モード(以下、「EVモード」)」とがあり、例えば、目標駆動力が大きい領域では、「エンジン走行モード」を選択する。
ステップS4では、ステップS3での目標モードの演算に続き、ステップS1で演算された目標駆動力に基づき目標エンジントルクを演算し(図3のフローチャート)、ステップS5へ移行する。
ステップS5では、ステップS4での目標エンジントルクの演算に続き、「エンジン走行モード」から「EVモード」へのモード遷移か、あるいは、「EVモード」から「エンジン走行モード」へのモード遷移か、を演算し、ステップS6へ移行する。
ステップS6では、ステップS5でのモード遷移の演算に続き、第1クラッチCL1の目標クラッチ締結容量と第2クラッチCL2の目標クラッチ締結容量を演算し(図4のフローチャート)、ステップS7へ移行する。
ステップS7では、ステップS6での目標クラッチ締結容量の演算に続き、目標駆動力が変化する過渡期に目標駆動力過渡補正を行い、ステップS8へ移行する。
ステップS8では、ステップS7での目標駆動力過渡補正に続き、モータジェネレータMGの目標モータトルクを演算し(図5のフローチャート)、ステップS9へ移行する。
ステップS9では、ステップS8での目標モータトルク演算に続き、エンジンコントローラ1、モータコントローラ2、第1クラッチコントローラ5、ATコントローラ7に対する最終指令値を演算し、終了へ移行する。
[目標エンジントルクの演算処理]
図3は図2のステップS4にて実行される目標エンジントルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS41では、目標モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS42へ移行し、NOの場合はステップS45へ移行する。
ステップS42では、ステップS41での目標モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、現モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS43へ移行し、NOの場合はステップS44へ移行する。
ステップS43では、ステップS42での現モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、エンジン走行モード中の目標エンジントルクの演算を実施し(図6のフローチャート)、終了へ移行する。
ステップS44では、ステップS42での現モードがEV走行モードであるとの判断に続き、エンジン始動時の目標エンジントルクの演算を実施し、終了へ移行する。
ステップS45では、ステップS41での目標モードがEV走行モードであるとの判断に続き、現モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS46へ移行し、NOの場合はステップS47へ移行する。
ステップS46では、ステップS45での現モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、EVモード移行時の目標エンジントルクの演算を実施し、終了へ移行する。
ステップS47では、ステップS45での現モードがEV走行モードであるとの判断に続き、EV走行モード中の目標エンジントルクの演算を実施し、終了へ移行する。
[目標クラッチトルクの演算処理]
図4は図2のステップS6にて実行される目標クラッチトルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS61では、目標モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS62へ移行し、NOの場合はステップS65へ移行する。
ステップS62では、ステップS61での目標モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、現モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS63へ移行し、NOの場合はステップS64へ移行する。
ステップS63では、ステップS62での現モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、エンジン走行モード中の目標クラッチトルクの演算を実施し(図7のフローチャート)、終了へ移行する。
ステップS64では、ステップS62での現モードがEV走行モードであるとの判断に続き、エンジン始動時の目標クラッチトルクの演算を実施し、終了へ移行する。
ステップS65では、ステップS61での目標モードがEV走行モードであるとの判断に続き、現モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS66へ移行し、NOの場合はステップS67へ移行する。
ステップS66では、ステップS65での現モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、EVモード移行時の目標クラッチトルクの演算を実施し、終了へ移行する。
ステップS67では、ステップS65での現モードがEV走行モードであるとの判断に続き、EV走行モード中の目標クラッチトルクの演算を実施し、終了へ移行する。
[目標モータトルクの演算処理]
図5は図2のステップS8にて実行される目標モータトルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS81では、目標モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS82へ移行し、NOの場合はステップS85へ移行する。
ステップS82では、ステップS81での目標モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、現モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS83へ移行し、NOの場合はステップS84へ移行する。
ステップS83では、ステップS82での現モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、エンジン走行モード中の目標モータトルクの演算を実施し(図8のフローチャート)、終了へ移行する。
ステップS84では、ステップS82での現モードがEV走行モードであるとの判断に続き、エンジン始動時の目標モータトルクの演算を実施し、終了へ移行する。
ステップS85では、ステップS81での目標モードがEV走行モードであるとの判断に続き、現モードがエンジン走行モードであるか否かが判断され、YESの場合はステップS86へ移行し、NOの場合はステップS87へ移行する。
ステップS86では、ステップS85での現モードがエンジン走行モードであるとの判断に続き、EVモード移行時の目標モータトルクの演算を実施し、終了へ移行する。
ステップS87では、ステップS85での現モードがEV走行モードであるとの判断に続き、EV走行モード中の目標モータトルクの演算を実施し、終了へ移行する。
[エンジン走行モード中の目標エンジントルクの演算処理]
図6は図3のステップS43にて実行されるエンジン走行モード中の目標エンジントルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS43-1では、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0、かつ、アクセル開度>0か否かが判断され、YESの場合はステップS43-3へ移行し、NOの場合はステップS43-2へ移行する。
つまり、車速条件と要求駆動力条件とアクセル開度条件との3条件の成立判断により、要求駆動力の無い車両停止時(車速≦判定閾値、要求駆動力≦0)、ドライバがアクセル踏み込み操作(アクセル開度>0)によりエンジントルクを発生させながら待機している状況をみている。なお、「要求駆動力」は、アクセル開度から決まる目標回転数エンジントルクで発生できる駆動力とブレーキ踏み込みによる制動力の和により求められる。また、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0という判断に代え、インヒビタースイッチ24によりNレンジ位置の選択判断を行っても良く、この場合、Nレンジ位置選択、かつ、アクセル開度>0の場合はステップS43-3へ移行し、アクセル開度>0のままでのN→Dセレクト時やN→Rセレクト時には、ステップS43-2へ移行する。
ステップS43-2では、ステップS43-1での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の少なくとも1つの条件が成立しないとの判断に続き、通常におけるエンジン走行モード中の目標エンジントルクの演算、例えば、アクセル開度に応じた駆動力要求に対しモータトルクを考慮した目標エンジントルクの演算を実施し、終了へ移行する。
ステップS43-3では、ステップS43-1での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の3条件成立との判断に続き、アクセル開度に応じた設定回転数を目標エンジン回転数として設定し、ステップS43-4へ移行する。
ステップS43-4では、ステップS43-3での目標エンジン回転数の設定に続き、バッテリ入力可能電力(バッテリSOC最大値−バッテリSOC検出値)を回生可能バッテリ電力として設定し、ステップS43-5へ移行する。
ステップS43-5では、ステップS43-4での回生可能バッテリ電力の設定に続き、(回生可能バッテリ電力÷目標エンジン回転数×モータ効率)の式により求められた値を、バッテリ入力可能トルクとして設定し、ステップS43-6へ移行する。
ステップS43-6では、ステップS43-5でのバッテリ入力可能トルクの設定に続き、目標エンジン回転数−アクセル開度テーブルを用いて目標回転数エンジントルクを設定し、ステップS43-7へ移行する。
ステップS43-7では、ステップS43-6での目標回転数エンジントルクの設定に続き、ステップS43-5で求められたバッテリ入力可能トルクが、ステップS43-6で求められた目標回転数エンジントルク未満か否かが判断され、YESの場合はステップS43-8へ移行し、NOの場合はステップS43-9へ移行する。
ステップS43-8では、ステップS43-7でのバッテリ入力可能トルク<目標回転数エンジントルクとの判断に続き、目標エンジントルクにバッテリ入力可能トルクを代入し、終了へ移行する。
ステップS43-9では、ステップS43-7でのバッテリ入力可能トルク≧目標回転数エンジントルクとの判断に続き、目標エンジントルクに目標回転数エンジントルクを代入し、終了へ移行する。
[エンジン走行モード中の目標クラッチトルクの演算処理]
図7は図4のステップS63にて実行される実施例1におけるエンジン走行モード中の目標クラッチトルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS63-1では、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0、かつ、アクセル開度>0か否かが判断され、YESの場合はステップS63-2へ移行し、NOの場合はステップS63-3へ移行する。なお、ステップS43-1と同様に、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0という判断に代え、インヒビタースイッチ24によりNレンジ位置の選択判断を行っても良い。
ステップS63-2では、ステップS63-1での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の3条件成立との判断に続き、目標第2クラッチトルクに0[Nm](第2クラッチCL2の開放)を代入し、終了へ移行する。
ステップS63-3では、ステップS63-1での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の少なくとも1つの条件が成立しないとの判断に続き、第2クラッチCL2にスリップがあるか否かが判断され、YESの場合はステップS63-4へ移行し、NOの場合はステップS63-9へ移行する。
ステップS63-4では、ステップS63-3での第2クラッチCL2にスリップがあるとの判断に続き、アクセル開度に応じた設定回転数を目標エンジン回転数として設定し、ステップS63-5へ移行する。
ここで、目標エンジン回転数は、バッテリ入力状態によってモータトルクを回生できる範囲内において、アクセル開度に応じた回転数であり、かつ、第2クラッチCL2の締結によるエンジン回転数低下でアイドル回転数を下回らない回転数とされる。
ステップS63-5では、ステップS63-4での目標エンジン回転数の設定に続き、目標エンジン回転数によりマップで設定されるクラッチトルクを、最終第2クラッチ締結トルク(制限値)として設定し、ステップS63-6へ移行する。
ここで、最終第2クラッチ締結トルクは、クラッチ滑り量と現在の油温から、完全締結時におけるクラッチフェーシング温度上昇を求め、この温度上昇によりクラッチ保護温度内に収まる最も高い締結トルクとされる。
ステップS63-6では、ステップS63-5での最終第2クラッチ締結トルクの設定に続き、現在の第2クラッチ締結トルクが、最終第2クラッチ締結トルク未満かどうかが判断され、YESの場合はステップS63-7へ移行し、NOの場合はステップS63-8へ移行する。
ステップS63-7では、ステップS63-6での現在第2クラッチ締結トルク<最終第2クラッチ締結トルクとの判断に続き、(現在第2クラッチ締結トルク)+{(最終第2クラッチ締結トルク−現在第2クラッチ締結トルク)÷一定時間}により算出される締結トルクを、目標第2クラッチ締結トルクとして設定し、終了へ移行する。
ステップS63-8では、ステップS63-6での現在第2クラッチ締結トルク≧最終第2クラッチ締結トルクとの判断に続き、最終第2クラッチ締結トルクを、目標第2クラッチ締結トルクとして設定し、終了へ移行する。
ステップS63-9では、ステップS63-3での第2クラッチCL2にスリップが無いとの判断に続き、通常のエンジン走行中における目標第2クラッチ締結トルクの演算を実施し、終了へ移行する。
[エンジン走行モード中の目標モータトルクの演算処理]
図8は図5のステップS83にて実行される実施例1におけるエンジン走行モード中の目標モータトルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS83-1では、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0、かつ、アクセル開度>0か否かが判断され、YESの場合はステップS83-2へ移行し、NOの場合はステップS83-5へ移行する。なお、ステップS43-1と同様に、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0という判断に代え、インヒビタースイッチ24によりNレンジ位置の選択判断を行っても良い。
ステップS83-2では、ステップS83-1での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の3条件成立との判断に続き、バッテリ入力可能トルクが目標エンジントルク以下か否かが判断され、YESの場合はステップS83-3へ移行し、NOの場合はステップS83-4へ移行する。
ステップS83-3では、ステップS83-2でのバッテリ入力可能トルク≦目標エンジントルクとの判断に続き、バッテリ入力可能トルクの範囲内で、PIフィードバック制御により目標エンジン回転数を維持するトルクを、目標モータトルク(回生トルク)として設定し、終了へ移行する。
ステップS83-4では、ステップS83-2でのバッテリ入力可能トルク>目標エンジントルクに続き、目標エンジントルクの範囲内で、PIフィードバック制御により目標エンジン回転数を維持するトルクを、目標モータトルク(回生トルク)として設定し、終了へ移行する。
ステップS83-5では、ステップS83-1での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の少なくとも1つの条件が成立しないとの判断に続き、第2クラッチCL2にスリップがあるか否かを判断し、YESの場合はステップS83-6へ移行し、NOの場合はステップS83-7へ移行する。
ステップS83-6では、ステップS83-5での第2クラッチCL2にスリップがあるとの判断に続き、{目標回転数エンジントルク−(目標第2クラッチトルク+スリップ分トルク)}の式により得られた正のトルクを、符合反転した負の目標モータトルクとして設定し、終了へ移行する。
つまり、第2クラッチCL2が滑り締結状態での目標モータトルクとして、目標回転数エンジントルクとの差であらわされる第2クラッチCL2への入力トルクが、(目標第2クラッチトルク+スリップ分トルク)となるように設定される。
ステップS83-7では、ステップS83-5での第2クラッチCL2にスリップ無しとの判断に続き、(駆動力分−第1クラッチCL1の伝達分)の式により得られたトルクを、目標モータトルクとして設定し、終了へ移行する。
つまり、第1クラッチCL1を介して伝達されるエンジントルクとモータトルクとの和が、駆動力に一致するように目標モータトルクが設定される。
[アクセル踏み込み待機時の制御作用]
ドライバーのアクセル踏み込み操作によりエンジントルクを発生させながらのNレンジ待機時の制御のうち、エンジントルク制御は、図6のフローチャートにおいて、ステップS43-1→ステップS43-3→ステップS43-4→ステップS43-5→ステップS43-6へと進み、ステップS43-3において、アクセル開度に応じた設定回転数を目標エンジン回転数として設定し、ステップS43-4において、回生可能バッテリ電力を設定し、ステップS43-5において、目標エンジン回転数と回生可能バッテリ電力に基づきバッテリ入力可能トルクを設定し、ステップS43-6において、目標エンジン回転数とアクセル開度に基づき目標回転数エンジントルクを設定する。そして、バッテリ入力回転数トルク<目標回転数エンジントルクの場合は、ステップS43-8へ進み、バッテリ入力回転数トルクを目標エンジントルクとし、バッテリ入力回転数トルク≧目標回転数エンジントルクの場合は、ステップS43-9へ進み、目標回転数エンジントルクを目標エンジントルクとする。
アクセル踏み込みNレンジ待機時の制御のうち、第2クラッチ締結トルク制御は、図7のフローチャートにおいて、ステップS63-1→ステップS63-2へと進み、ステップS63-2において、目標第2クラッチ締結トルクが0[Nm]とされる。つまり、第2クラッチCL2は開放される。
アクセル踏み込みNレンジ待機時の制御のうち、モータトルク制御は、バッテリ入力回転数トルク≦目標エンジントルクの場合は、図8のフローチャートにおいて、ステップS83-1→ステップS83-2→ステップS83-3へと進み、ステップS83-3において、バッテリ入力可能トルクの範囲内で、PIフィードバック制御により目標エンジン回転数を維持するトルクを、目標モータトルクとして設定する。一方、バッテリ入力回転数トルク>目標エンジントルクの場合は、図8のフローチャートにおいて、ステップS83-1→ステップS83-2→ステップS83-4へと進み、ステップS83-4において、目標エンジントルクの範囲内で、PIフィードバック制御により目標エンジン回転数を維持するトルクを、目標モータトルクとして設定する。
このように、アクセル踏み込みNレンジ待機時には、目標エンジントルクを、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を得る目標回転数エンジントルクに設定し、目標第2クラッチ締結トルクをゼロとし、目標モータトルクを、前記目標エンジン回転数を維持するトルクに設定する制御が行われる。このため、シフトポジションがNのときのエンジン・モータトルクには、図9の時点t0から時点t1のトルク特性に示すように、正のエンジントルクに対し負のモータトルクとなる。つまり、エンジンEからの駆動エネルギーをモータジェネレータMGの回生作動によりバッテリ電力として回収することができる。
シフトポジションがNのときの回転数は、図9の時点t0から時点t1の回転数特性に示すように、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を維持するモータトルク制御により、エンジン・モータ回転数が一定に保たれる。また、第2クラッチCL2の差回転は、自動変速機AT内の第2クラッチCL2より上流側のギヤトレーンにより減速した回転数と出力回転数(=0)との差であらわれる。
シフトポジションがNのときのクラッチトルク容量は、図9の時点t0から時点t1のクラッチトルク容量特性に示すように、第1クラッチCL1は完全締結状態であり、第2クラッチCL2は開放状態である。なお、シフトポジションがNのときの駆動力は、図9の時点t0から時点t1の駆動力特性に示すように、駆動力がゼロに維持される。
したがって、発進前のシフトポジションがNのときには、エンジントルクとモータトルクの差である第2クラッチCL2への入力トルクをほぼゼロに保ったままでパワーオン発進に待機できる。また、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を維持するモータトルク制御により、エンジン・モータ回転数が一定に保たれるため、第2クラッチCL2の差回転も一定回転数を保ったままでパワーオン発進に待機できる。
さらに、モータジェネレータMGに接続されるバッテリ4への入力可能電力に基づくバッテリ入力可能トルクを制限値とし、目標エンジントルクと目標モータトルクを設定するようにしているため、可能な限りバッテリ4への充電を行いながらも、過充電を確実に防止することができる。
[発進開始から第2クラッチの入出力回転が同期するまでの制御作用]
N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの制御のうち、エンジントルク制御は、図6のフローチャートにおいて、ステップS43-1→ステップS43-2へと進み、ステップS43-2において、アクセル開度に応じた駆動力要求に対しモータトルクを考慮した目標エンジントルクに設定される。
N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの制御のうち、第2クラッチ締結トルク制御は、図7のフローチャートにおいて、ステップS63-1→ステップS63-3→ステップS63-4→ステップS63-5へと進み、ステップS63-4において、アクセル開度に応じた設定回転数を目標エンジン回転数として設定し、ステップS63-5において、目標エンジン回転数によりマップで設定されるクラッチトルクを、最終第2クラッチ締結トルクとして設定する。そして、ステップS63-6において、現在第2クラッチ締結トルク<最終第2クラッチ締結トルクと判断された場合は、ステップS63-7へ進み、目標第2クラッチ締結トルクが徐々に高められる。また、ステップS63-6において、現在第2クラッチ締結トルク≧最終第2クラッチ締結トルクと判断された場合は、ステップS63-8へ進み、目標第2クラッチ締結トルクが制限値である最終第2クラッチ締結トルクとされる。
N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの制御のうち、モータトルク制御は、図8のフローチャートにおいて、ステップS83-1→ステップS83-5→ステップS83-6へと進み、ステップS83-6において、目標回転数エンジントルクとの差であらわされる第2クラッチCL2への入力トルクが、(目標第2クラッチ締結トルク+スリップ分トルク)となるように目標モータトルクが設定される。
このように、N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの間は、目標エンジントルクを、モータトルクを考慮しながら駆動力要求を満たすトルクに設定し、目標第2クラッチ締結トルクを、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を維持する第2クラッチ締結トルクとし、目標モータトルクを、第2クラッチCL2への入力トルクが、目標第2クラッチ締結トルクによる伝達トルク分と第2クラッチCL2の滑り分トルクとを加算したトルクとなるように制御される。
このため、N→Dセレクトによる発進開始直後のエンジン・モータトルクは、図9の時点t1から時点t2のトルク特性に示すように、正のエンジントルクに対し負のモータトルクを徐々に減少させる。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、正のエンジントルクに対し減少した負のモータトルクをほぼ維持したままとされる。
N→Dセレクトによる発進開始直後の回転数は、図9の時点t1から時点t2の回転数特性に示すように、エンジン・モータ回転数は僅かに低下する。また、第2クラッチCL2の差回転は、Nレンジ待機時の差回転から低下を開始し、第2クラッチCL2の出力回転はゼロから上昇を開始する。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、エンジン・モータ回転数は僅かに上下するもののほぼ一定回転数に保たれ、第2クラッチCL2の差回転は、時間の経過と共にゼロに収束するように低下し、第2クラッチCL2の出力回転は上昇する。
N→Dセレクトによる発進開始直後のクラッチトルク容量は、図9の時点t1から時点t2のクラッチトルク容量特性に示すように、第1クラッチCL1は完全締結状態のままであり、第2クラッチCL2は開放状態から最終第2クラッチ締結トルクまで立ち上がる。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量は最終第2クラッチ締結トルクに維持される。
N→Dセレクトによる発進開始直後の駆動力は、図9の時点t1から時点t2の駆動力特性に示すように、第2クラッチCL2の締結トルク立ち上がりに応じて立ち上がる。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、第2クラッチCL2の最終第2クラッチ締結トルクに応じて一定駆動力に維持される。
したがって、パワーオン発進時、第2クラッチCL2への入力トルクがモータジェネレータMGに対するトルク制御により、第2クラッチCL2の締結トルク分にスリップ分トルクを加算したレベルに絞られ、かつ、第2クラッチCL2を滑り締結させることで駆動力が出される。すなわち、第2クラッチCL2への入力トルクは、エンジントルクとモータトルクとの和により決まるが、エンジントルク制御は行わず、モータトルクを負のトルク(回生トルク)とする制御を行うことで、第2クラッチCL2への入力トルクがエンジントルクに比べて絞られる。このため、入力トルクと差回転に応じて発熱する滑り締結状態の第2クラッチCL2では、入力トルクの絞りと差回転の低下によりクラッチ温度上昇が抑えられ、第2クラッチCL2の熱損傷を低減できる。加えて、第2クラッチCL2への入力トルクを絞る際、制御応答の速いモータジェネレータMGに対するモータトルク制御により行うようにしているため、発進開始直後から、応答良く第2クラッチCL2への入力トルクが絞られることになり、エンジンEのトルクダウン制御を行う場合に比べ、高いトルクダウン応答性が確保される。
さらに、目標クラッチ締結トルクに制限値を設け、該制限値を、第2クラッチCL2の滑り量と現在の油温から、完全締結時におけるクラッチフェーシング温度上昇を求め、この温度上昇によりクラッチ保護温度内に収まる最も高い締結トルク(=最終第2クラッチ締結トルク)とするため、制限した分、第2クラッチCL2に入力されるトルクを低減でき、第2クラッチCL2の損傷をより低減できる。
[第2クラッチの入出力回転が同期した後の制御作用]
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した後の制御のうち、エンジントルク制御は、図6のフローチャートにおいて、ステップS43-1→ステップS43-2へと進み、ステップS43-2において、アクセル開度に応じた駆動力要求に対しモータトルクを考慮した目標エンジントルクに設定される。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した後の制御のうち、第2クラッチ締結トルク制御は、図7のフローチャートにおいて、ステップS63-1→ステップS63-3→ステップS63-9へと進み、ステップS63-9において、通常のエンジン走行中の目標第2クラッチ締結トルクが設定される。つまり、第2クラッチCL2の締結トルクが完全締結によるトルクレベルまで所定勾配にて高められる。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した後の制御のうち、モータトルク制御は、図8のフローチャートにおいて、ステップS83-1→ステップS83-5→ステップS83-7へと進み、ステップS83-7において、目標エンジントルクとの和で所望の駆動力を達成するように目標モータトルクが設定される。
このように、第2クラッチCL2の入出力回転が同期すると、同期した時点から直ちに第2クラッチCL2を完全締結するように、目標第2クラッチ締結トルクを完全締結レベルのトルクまで高める制御が実行される。
このため、第2クラッチCL2の入出力回転が同期した直後のエンジン・モータトルクは、図9の時点t3から時点t4のトルク特性に示すように、エンジントルクのトルクレベルを維持したままで、負であったモータトルクがゼロトルクに移行する。そして、時点t4以降は、エンジントルクとモータトルクとが上昇して駆動力を出す「エンジン走行モード」に入る。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した直後の回転数は、図9の時点t3から時点t4の回転数特性に示すように、エンジン・モータ回転数は上昇する。また、第2クラッチCL2の差回転はゼロを維持し、第2クラッチCL2の出力回転は上昇する。そして、時点t4以降は、エンジン・モータ回転数は上昇を続け、第2クラッチCL2の差回転はゼロが維持され、第2クラッチCL2の出力回転は上昇する。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した直後のクラッチトルク容量は、図9の時点t3から時点t4のクラッチトルク容量特性に示すように、目標第2クラッチ締結トルクは完全締結トルクまで立ち上がるが、実第2クラッチ締結トルクは完全締結トルクに対し応答遅れを持って立ち上がる。そして、時点t4以降は、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量は完全締結トルクレベルまで上昇する。
N→Dセレクトによる発進開始直後の駆動力は、図9の時点t3から時点t4の駆動力特性に示すように、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量の立ち上がりに応じて立ち上がる。そして、時点t4以降は、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量の立ち上がりに応じて目標駆動力まで立ち上がる。
したがって、パワーオン発進時、スリップ締結されている第2クラッチCL2の入力回転と出力回転とが同期した時点で、第2クラッチCL2を完全締結するようにしたため、第2クラッチCL2が完全締結してから大トルクを自動変速機ATに入力することになる。このため、第2クラッチCL2の損傷を低減できると共に、入出力の回転同期締結することで、滑らかな実駆動力特性からも明らかなように、パワーオン発進時にN→Dセレクトショックを抑えることができる。
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の発進制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 少なくともエンジンE、モータジェネレータMG、第2クラッチCL2、駆動輪RR,RLの順に接続してハイブリッド駆動系を構成したハイブリッド車両において、ドライバのアクセル踏み込み操作による待機状態からの発進時、前記第2クラッチCL2への入力トルクを前記モータジェネレータMGに対するトルク制御により絞り、かつ、前記第2クラッチCL2を滑り締結させることで駆動力を出すパワーオン発進制御手段を設けたため、アクセル踏み込み待機からのパワーオン発進時、発進開始からの高いトルクダウン応答による有効なクラッチ発熱の低減により第2クラッチCL2の保護を達成することができる。
(2) 前記パワーオン発進制御手段は、前記滑り締結されている第2クラッチCL2の入力回転と出力回転とが同期した時点で、前記第2クラッチCL2を完全締結するため、第2クラッチCL2の損傷を低減できると共に、パワーオン発進時にN→Dセレクトショックを抑えることができる。
(3) 前記パワーオン発進制御手段は、アクセル踏み込み待機時、目標エンジントルクを、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を得る目標回転数エンジントルクに設定し、目標クラッチ締結トルクをゼロとし、目標モータトルクを、前記目標エンジン回転数を維持するトルクに設定するため、第2クラッチCL2への入力トルクをほぼゼロに保ったままで、かつ、第2クラッチCL2の差回転も一定回転数を保ったままでパワーオン発進に待機することができる。
(4) 前記パワーオン発進制御手段は、前記モータジェネレータMGに接続されるバッテリ4への入力可能電力に基づくバッテリ入力可能トルクを制限値とし、前記目標エンジントルクと前記目標モータトルクを設定するため、燃費性能の良い「EV走行モード」の継続時間を確保できるように、可能な限りバッテリ4への充電を行いながらも、過充電を確実に防止することができる。
(5) 前記パワーオン発進制御手段は、発進開始から前記第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまで、目標エンジントルクを、モータトルクを考慮しながら駆動力要求を満たすトルクに設定し、目標クラッチ締結トルクを、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を維持するクラッチ締結トルクとし、目標モータトルクを、前記第2クラッチCL2への入力トルクが、前記目標クラッチ締結トルクによる伝達トルク分と前記第2クラッチCL2の滑り分トルクとを加算したトルクとなるように制御するため、エンジン回転数の維持により第2クラッチCL2への入力トルクを最小に抑えることができ、パワーオン発進時にもかかわらず確実にクラッチ保護を達成できる。
(6) 前記パワーオン発進制御手段は、前記目標クラッチ締結トルクに制限値を設け、該制限値を、クラッチ滑り量と現在の油温から、完全締結時におけるクラッチフェーシング温度上昇を求め、この温度上昇によりクラッチ保護温度内に収まる最も高い締結トルクとするため、制限により第2クラッチCL2に入力されるトルクを低減でき、第2クラッチCL2の耐久信頼性を確保することができる。
(7) 前記ハイブリッド駆動系は、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に第1クラッチCL1を介装すると共に前記モータジェネレータMGと駆動輪RR,RLとの間に第2クラッチCL2を介装して構成し、前記第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGの下流に配置されたクラッチに相当すると共に、前記モータジェネレータMGと前記駆動輪RR,RLとの間に配置された自動変速機AT内の発進締結要素であるため、第2クラッチCL2を新たに追加する構成に比べ、コスト的に有利であるばかりでなく、「エンジン走行モード」以外に第1クラッチCL1の開放によりエンジンEを連れ回すことのない「EV走行モード」を選択することができる自由度を持つことができる。
実施例2は、パワーオン発進時に駆動力の立ち上がりを良好にし、発進性能を高めるようにした例である。なお、構成的には、実施例1の図1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
次に、作用を説明する。
ハイブリッド駆動制御の全体処理、目標エンジントルクの演算処理、目標クラッチ締結トルクの演算処理、目標モータトルクの演算処理、エンジン走行モード中の目標エンジントルクの演算処理については、実施例1の図2〜図6と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
[エンジン走行モード中の目標クラッチトルクの演算処理]
図10は図4のステップS63にて実行される実施例2におけるエンジン走行モード中の目標クラッチトルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS63-21では、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0、かつ、アクセル開度>0か否かが判断され、YESの場合はステップS63-22へ移行し、NOの場合はステップS63-23へ移行する。なお、ステップS43-1と同様に、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0という判断に代え、インヒビタースイッチ24によりNレンジ位置の選択判断を行っても良い。
ステップS63-22では、ステップS63-21での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の3条件成立との判断に続き、目標第2クラッチトルクに0[Nm](第2クラッチCL2の開放)を代入し、終了へ移行する。
ステップS63-23では、ステップS63-21での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の少なくとも1つの条件が成立しないとの判断に続き、第2クラッチCL2にスリップがあるか否かが判断され、YESの場合はステップS63-24へ移行し、NOの場合はステップS63-27へ移行する。
ステップS63-24では、ステップS63-23での第2クラッチCL2にスリップがあるとの判断に続き、現在エンジン回転数が自立エンジン回転数未満かどうかが判断され、YESの場合はステップS63-25へ移行し、NOの場合はステップS63-26へ移行する。
ステップS63-25では、ステップS63-24での現在エンジン回転数<自立可能回転数との判断に続き、前回の目標第2クラッチ締結トルクから設定トルク分だけ低下する値を、今回の目標第2クラッチ締結トルクとして設定し、終了へ移行する。
ステップS63-26では、ステップS63-24での現在エンジン回転数≧自立可能回転数との判断に続き、アクセル開度から加速要求を判断し、トルクの出し方を決め、その値を目標第2クラッチ締結トルクとして設定し、終了へ移行する。
ここで、目標第2クラッチ締結トルクの出し方は、アクセル開度が大であるほど上昇傾き勾配値を大きな値とするランプ制御を実行できるように、制御周期毎にトルク上昇分を積み上げ加算して目標第2クラッチ締結ルクを設定する。
ステップS63-27では、ステップS63-23での第2クラッチCL2にスリップが無いとの判断に続き、通常のエンジン走行中における目標第2クラッチ締結トルクの演算を実施し、終了へ移行する。
[エンジン走行モード中の目標モータトルクの演算処理]
図11は図5のステップS83にて実行される実施例2におけるエンジン走行モード中の目標モータトルクの演算処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。
ステップS83-21では、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0、かつ、アクセル開度>0か否かが判断され、YESの場合はステップS83-22へ移行し、NOの場合はステップS83-23へ移行する。なお、ステップS43-1と同様に、車速≦判定閾値、かつ、要求駆動力≦0という判断に代え、インヒビタースイッチ24によりNレンジ位置の選択判断を行っても良い。
ステップS83-22では、ステップS83-21での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の3条件成立との判断に続き、目標モータトルクを0[Nm]に設定し、終了へ移行する。
ステップS83-23では、ステップS83-21での車速条件、要求駆動力条件、アクセル開度条件の少なくとも1つの条件が成立しないとの判断に続き、第2クラッチCL2にスリップがあるか否かを判断し、YESの場合はステップS83-24へ移行し、NOの場合はステップS83-25へ移行する。
ステップS83-24では、ステップS83-23での第2クラッチCL2にスリップがあるとの判断に続き、{目標回転数エンジントルク−(目標第2クラッチ締結トルク+エンジン回転数を低下させるイナーシャ分トルク)}の式により得られた正のトルクを、符合反転した負の目標モータトルクとして設定し、終了へ移行する。
つまり、第2クラッチCL2が滑り締結状態での目標モータトルクとして、目標回転数エンジントルクとの差であらわされる第2クラッチCL2への入力トルクが、(目標第2クラッチ締結トルク+エンジン回転数を低下させるイナーシャ分トルク)となるように設定される。
ステップS83-25では、ステップS83-23での第2クラッチCL2にスリップ無しとの判断に続き、(駆動力分−第1クラッチCL1の伝達分)の式により得られたトルクを、目標モータトルクとして設定し、終了へ移行する。
つまり、第1クラッチCL1を介して伝達されるエンジントルクとモータトルクとの和が、駆動力に一致するように目標モータトルクが設定される。
[アクセル踏み込み待機時の制御作用]
ドライバーのアクセル踏み込み操作によりエンジントルクを発生させながらのNレンジ待機時の制御のうち、エンジントルク制御は、図6のフローチャートにおいて、ステップS43-1→ステップS43-3→ステップS43-4→ステップS43-5→ステップS43-6へと進み、ステップS43-3において、アクセル開度に応じた設定回転数を目標エンジン回転数として設定し、ステップS43-4において、回生可能バッテリ電力を設定し、ステップS43-5において、目標エンジン回転数と回生可能バッテリ電力に基づきバッテリ入力可能トルクを設定し、ステップS43-6において、目標エンジン回転数とアクセル開度に基づき目標回転数エンジントルクを設定する。そして、バッテリ入力回転数トルク<目標回転数エンジントルクの場合は、ステップS43-8へ進み、バッテリ入力回転数トルクを目標エンジントルクとし、バッテリ入力回転数トルク≧目標回転数エンジントルクの場合は、ステップS43-9へ進み、目標回転数エンジントルクを目標エンジントルクとする。
アクセル踏み込みNレンジ待機時の制御のうち、第2クラッチ締結トルク制御は、図10のフローチャートにおいて、ステップS63-21→ステップS63-22へと進み、ステップS63-22において、目標第2クラッチ締結トルクが0[Nm]とされる。つまり、第2クラッチCL2は開放される。
アクセル踏み込みNレンジ待機時の制御のうち、モータトルク制御は、バッテリ入力回転数トルク≦目標エンジントルクの場合は、図11のフローチャートにおいて、ステップS83-21→ステップS83-22へと進み、ステップS83-22において、目標モータトルクとして0[Nm]を設定する。
このように、アクセル踏み込みNレンジ待機時には、目標エンジントルクを、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を得る目標回転数エンジントルクに設定し、目標第2クラッチ締結トルクをゼロとし、目標モータトルクをゼロに設定する制御が行われる。このため、シフトポジションがNのときのエンジン・モータトルクには、図12の時点t0から時点t1のトルク特性に示すように、エンジントルクの発生に対しモータトルクはゼロとなる。
シフトポジションがNのときの回転数は、図12の時点t0から時点t1の回転数特性に示すように、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を維持するモータトルク制御により、エンジン・モータ回転数が一定に保たれる。また、第2クラッチCL2の差回転は、自動変速機AT内の第2クラッチCL2より上流側のギヤトレーンにより減速した回転数と出力回転数(=0)との差であらわれる。
シフトポジションがNのときのクラッチトルク容量は、図12の時点t0から時点t1のクラッチトルク容量特性に示すように、第1クラッチCL1は完全締結状態であり、第2クラッチCL2は開放状態である。なお、シフトポジションがNのときの駆動力は、図12の時点t0から時点t1の駆動力特性に示すように、駆動力がゼロに維持される。
したがって、発進前のシフトポジションがNのときには、エンジントルクのみを出したままでパワーオン発進に待機できる。また、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を維持するモータトルク制御により、エンジン・モータ回転数が一定に保たれるため、第2クラッチCL2の差回転も一定回転数を保ったままでパワーオン発進に待機できる。
[発進開始から第2クラッチの入出力回転が同期するまでの制御作用]
N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの制御のうち、エンジントルク制御は、図6のフローチャートにおいて、ステップS43-1→ステップS43-2へと進み、ステップS43-2において、アクセル開度に応じた駆動力要求に対しモータトルクを考慮した目標エンジントルクに設定される。
N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの制御のうち、第2クラッチ締結トルク制御は、図10のフローチャートにおいて、ステップS63-21→ステップS63-23→ステップS63-24へと進み、ステップS63-24において、現在エンジン回転数<自立可能回転数と判断された場合は、ステップS63-25へ進み、エンジン回転数が自立可能回転数以上となるまで回復するように、目標第2クラッチ締結トルクが設定トルク分だけ低下させられる。また、ステップS63-24において、現在エンジン回転数≧自立可能回転数と判断された場合は、ステップS63-26へ進み、目標第2クラッチ締結トルクがアクセル開度の大きいほど大きなトルク分が制御周期毎に加算される。
N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの制御のうち、モータトルク制御は、図11のフローチャートにおいて、ステップS83-21→ステップS83-23→ステップS83-24へと進み、ステップS83-24において、目標回転数エンジントルクとの差であらわされる第2クラッチCL2への入力トルクが、(目標第2クラッチ締結トルク+エンジン回転を低下させるイナーシャ分トルク)となるように目標モータトルクが設定される。
このように、N→Dセレクトによる発進開始から第2クラッチCL2の入出力回転が同期するまでの間は、目標エンジントルクを、モータトルクを考慮しながら駆動力要求を満たすトルクに設定し、目標第2クラッチ締結トルクを、エンジン回転数を低下させるように高くする第2クラッチ締結トルクとし、目標モータトルクを、第2クラッチCL2への入力トルクが、目標第2クラッチ締結トルクによる伝達トルク分とエンジン回転数を低下させるイナーシャ分トルクとを加算したトルクとなるように制御される。
このため、N→Dセレクトによる発進開始直後のエンジン・モータトルクは、図12の時点t1から時点t2のトルク特性に示すように、エンジントルクを維持したままでモータトルクを大きく負側(回生トルク側)に出して第2クラッチCL2への入力トルクが絞られる。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、正のエンジントルクに対し減少した負のモータトルクを第2クラッチCL2のクラッチトルク容量の緩やかな増大に比例して回生量を徐々に減少させる特性とされる。
N→Dセレクトによる発進開始直後の回転数は、図12の時点t1から時点t2の回転数特性に示すように、エンジン・モータ回転数は僅かに低下する。また、第2クラッチCL2の差回転は、Nレンジ待機時の差回転から低下を開始し、第2クラッチCL2の出力回転はゼロから上昇を開始する。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、エンジン・モータ回転数はエンジン自立可能回転数を下限として低下する。第2クラッチCL2の差回転は、時間の経過と共にゼロに収束するように低下し、第2クラッチCL2の出力回転は、実施例1より大きな勾配で上昇する。
N→Dセレクトによる発進開始直後のクラッチトルク容量は、図12の時点t1から時点t2のクラッチトルク容量特性に示すように、第1クラッチCL1は完全締結状態のままであり、第2クラッチCL2は開放状態から所定トルクまで立ち上がる。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量は、時間の経過と共に徐々に増大するトルク容量とされる。
N→Dセレクトによる発進開始直後の駆動力は、図12の時点t1から時点t2の駆動力特性に示すように、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量の立ち上がりに応じて立ち上がる。そして、時点t2から第2クラッチCL2の入出力回転が同期する時点t3までは、同様に、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量の緩やかな上り勾配に応じて高められる駆動力特性とされる。
したがって、パワーオン発進時、第2クラッチCL2への入力トルクがモータジェネレータMGに対するトルク制御により、第2クラッチCL2の締結トルク分にエンジン回転数を低下させるイナーシャ分トルクを加算したレベルに絞られ、かつ、第2クラッチCL2を滑り締結させることで駆動力が出される。すなわち、第2クラッチCL2への入力トルクは、エンジントルクとモータトルクとの和により決まるが、エンジントルク制御は行わず、モータトルクを負のトルク(回生トルク)とする制御を行うことで、第2クラッチCL2への入力トルクがエンジントルクに比べて絞られる。このため、入力トルクと差回転に応じて発熱する滑り締結状態の第2クラッチCL2では、入力トルクの絞りと差回転の低下によりクラッチ温度上昇が抑えられ、第2クラッチCL2の熱損傷を低減できる。加えて、第2クラッチCL2への入力トルクを絞る際、制御応答の速いモータジェネレータMGに対するモータトルク制御により行うようにしているため、発進開始直後から、応答良く第2クラッチCL2への入力トルクが絞られることになり、エンジンEのトルクダウン制御を行う場合に比べ、高いトルクダウン応答性が確保される。
さらに、実施例2において、第2クラッチCL2では、エンジンEの回転を下げるためのイナーシャ分のトルクを熱に替える必要が無くなり、第2クラッチCL2の締結トルク分のみが第2クラッチCL2の負荷として伝わるため、第2クラッチCL2自体の発熱が少なくなり、クラッチ損傷を少なくできる。
さらに、実施例2において、N→Dセレクト時の第2クラッチCL2の締結トルクは、アクセル踏み込み量(=アクセル開度)によってドライバの加速要求を判断し、要求駆動力をすぐに実現するシーンでは、ランプ制御により傾きをきつくして締結トルク指令を出すようにし、また、要求駆動力をゆっくりと実現するシーンでは、ランプ制御により傾きを緩やかにして締結トルク指令を出すようにしている。これによって、ドライバの加速要求に応じた加速発進性能を得ることができる。
加えて、上記のように、加速要求を実現するために、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量を高めるようにしているが、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量を高めるとエンジンEにとって負荷が高まることで、回転数が下がってしまう。これに対し、実施例2では、エンジン回転数が自立可能回転数を下回ると第2クラッチCL2のクラッチトルク容量を設定トルク分だけ低くすることで、加速要求を最大限実現しつつも、エンジンEの自立回転を維持することができる。
[第2クラッチの入出力回転が同期した後の制御作用]
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した後の制御のうち、エンジントルク制御は、図6のフローチャートにおいて、ステップS43-1→ステップS43-2へと進み、ステップS43-2において、アクセル開度に応じた駆動力要求に対しモータトルクを考慮した目標エンジントルクに設定される。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した後の制御のうち、第2クラッチ締結トルク制御は、図10のフローチャートにおいて、ステップS63-21→ステップS63-23→ステップS63-27へと進み、ステップS63-27において、通常のエンジン走行中の目標第2クラッチ締結トルクが設定される。つまり、第2クラッチCL2の締結トルクが完全締結によるトルクレベルまで所定勾配にて高められる。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した後の制御のうち、モータトルク制御は、図11のフローチャートにおいて、ステップS83-21→ステップS83-23→ステップS83-25へと進み、ステップS83-25において、目標エンジントルクとの和で所望の駆動力を達成するように目標モータトルクが設定される。
このように、第2クラッチCL2の入出力回転が同期すると、同期した時点から直ちに第2クラッチCL2を完全締結するように、目標第2クラッチ締結トルクを完全締結レベルのトルクまで高める制御が実行される。
このため、第2クラッチCL2の入出力回転が同期した直後のエンジン・モータトルクは、図12の時点t3から時点t4のトルク特性に示すように、エンジントルクのトルクレベルを維持したままで、負であったモータトルクがゼロトルクに移行する。そして、時点t4以降は、エンジントルクとモータトルクとが上昇して駆動力を出す「エンジン走行モード」に入る。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した直後の回転数は、図12の時点t3から時点t4の回転数特性に示すように、エンジン・モータ回転数は上昇する。また、第2クラッチCL2の差回転はゼロを維持し、第2クラッチCL2の出力回転は上昇する。そして、時点t4以降は、エンジン・モータ回転数は上昇を続け、第2クラッチCL2の差回転はゼロが維持され、第2クラッチCL2の出力回転は上昇する。
第2クラッチCL2の入出力回転が同期した直後のクラッチトルク容量は、図12の時点t3から時点t4のクラッチトルク容量特性に示すように、目標第2クラッチ締結トルクは完全締結トルクまで立ち上がるが、実第2クラッチ締結トルクは完全締結トルクに対し応答遅れを持って立ち上がる。そして、時点t4以降は、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量は完全締結トルクレベルまで上昇する。
N→Dセレクトによる発進開始直後の駆動力は、図12の時点t3から時点t4の駆動力特性に示すように、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量の立ち上がりに応じて立ち上がる。そして、時点t4以降は、第2クラッチCL2のクラッチトルク容量の立ち上がりに応じて目標駆動力まで立ち上がる。
したがって、パワーオン発進時、スリップ締結されている第2クラッチCL2の入力回転と出力回転とが同期した時点で、第2クラッチCL2を完全締結するようにしたため、第2クラッチCL2が完全締結してから大トルクを自動変速機ATに入力することになる。このため、第2クラッチCL2の損傷を低減できると共に、入出力の回転同期締結することで、滑らかな実駆動力特性からも明らかなように、パワーオン発進時にN→Dセレクトショックを抑えることができる。
次に、効果を説明する。
実施例2のハイブリッド車両の発進制御装置にあっては、実施例1の(1),(2),(7)の効果に加え、下記に列挙する効果を得ることができる。
(8) 前記パワーオン発進制御手段は、アクセル踏み込み待機時、目標エンジントルクを、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を得る目標回転数エンジントルクに設定し、目標クラッチ締結トルクをゼロとし、目標モータトルクをゼロに設定するため、第2クラッチCL2の差回転を一定回転数を保ったままでパワーオン発進に待機することができる。
(9) 前記パワーオン発進制御手段は、発進開始から前記クラッチの入出力回転が同期するまで、目標エンジントルクを、モータトルクを考慮しながら駆動力要求を満たすトルクに設定し、目標クラッチ締結トルクを、エンジン回転数を低下させるように高くするクラッチ締結トルクとし、目標モータトルクを、第2クラッチCL2への入力トルクが、前記目標クラッチ締結トルクによる伝達トルク分と前記エンジン回転数を低下させるイナーシャ分トルクとを加算したトルクとなるように制御するため、第2クラッチCL2の締結トルク容量分のみが第2クラッチCL2の負荷として伝わることで、第2クラッチCL2自体の発熱が少なくなり、クラッチ損傷を低減することができると共に、第2クラッチCL2が完全締結するまでの間も駆動力が上昇することで、発進加速性能を向上することができる。
(10) 前記パワーオン発進制御手段は、アクセル踏み込み状況によってドライバの加速要求を判断し、前記目標クラッチ締結トルクを、加速要求に応じて高めるため、アクセルワークにあらわれたドライバの加速要求に応じて加速発進性能を得ることができる。
(11) 前記目標クラッチ締結トルクは、アクセル開度が大であるほど上昇傾き勾配値が大きなランプ制御により高めるため、ステップ的な駆動力変動を生じることなく、アクセル開度にあらわれたドライバの加速要求に応じて加速発進性能を得ることができる。
以上、本発明のハイブリッド車両の発進制御装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、パワーオン発進時に、エンジン回転数を一定回転数に維持する第2クラッチの滑り締結制御を行う例を示し、実施例2では、パワーオン発進時に、エンジン回転数を低下させる第2クラッチの滑り締結制御を行う例を示したが、例えば、パワーオン発進時に、エンジン回転数をステップ的に変化させる第2クラッチの滑り締結制御を行っても良く、要するに、パワーオン発進時、クラッチへの入力トルクをモータジェネレータに対するトルク制御により絞り、かつ、クラッチを滑り締結させることで駆動力を出すパワーオン発進制御手段を設けたものであれば本発明に含まれる。
実施例1,2では、パワーオン発進制御手段として、滑り締結されている第2クラッチの入力回転と出力回転とが同期した時点で、第2クラッチを完全締結する例を示したが、例えば、加速要求が大きいパワーオン発進時等においては、多少のセレクトショックの発生もドライバが許容することから、第2クラッチの入出力回転が同期する前に完全締結するようにしても良い。
実施例2では、ドライバの加速要求をアクセル開度のみにより判断する例を示したが、アクセル開度の変化速度により判断したり、アクセル開度とアクセル開度変化速度を併用して判断しても良い。
実施例2では、ドライバの加速要求に対しクラッチ締結容量が上昇する勾配の傾きを変えるランプ制御により対応する例を示したが、例えば、クラッチに滑りが発生する範囲内で、低めのステップ指令や高めのステップ指令により対応するようにしても良い。
実施例1,2では、後輪駆動のハイブリッド車両への適用例を示したが、前輪駆動のハイブリッド車両や四輪駆動のハイブリッド車両へも適用できる。実施例1,2では、第1クラッチと第2クラッチとを備えたハイブリッド駆動系への適用例を示したが、エンジンとモータジェネレータとを直結し、第2クラッチ(=クラッチ)のみを備えたハイブリッド駆動系にも適用できる。さらに、実施例1,2では、第2クラッチとして自動変速機に内蔵されたクラッチを利用する例を示したが、モータジェネレータと変速機との間に第2クラッチを追加して介装したり、または、変速機と駆動輪との間に第2クラッチを追加して介装(例えば、特開2002−144921号公報参照)しても良い。要するに、少なくともエンジン、モータジェネレータ、クラッチ、駆動輪の順に接続してハイブリッド駆動系を構成したハイブリッド車両であれば適用できる。
実施例1の発進制御装置が適用された後輪駆動のハイブリッド車両を示す全体システム図である。 実施例1の統合コントローラにて実行されるハイブリッド駆動制御(エンジン制御・モータ制御・第1クラッチ制御・第2クラッチ制御)の全体処理の流れを示すメインフローチャートである。 図2のステップS4にて実行される目標エンジントルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 図2のステップS6にて実行される目標クラッチトルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 図2のステップS8にて実行される目標モータトルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 図3のステップS43にて実行されるエンジン走行モード中の目標エンジントルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 図4のステップS63にて実行される実施例1におけるエンジン走行モード中の目標クラッチトルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 図5のステップS83にて実行される実施例1におけるエンジン走行モード中の目標モータトルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1でのパワーオン発進時におけるアクセル・シフトポジション・トルク・回転数・クラッチトルク容量・駆動力を示すタイムチャートである。 図4のステップS63にて実行される実施例2におけるエンジン走行モード中の目標クラッチトルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 図5のステップS83にて実行される実施例2におけるエンジン走行モード中の目標モータトルクの演算処理の流れを示すフローチャートである。 実施例2でのパワーオン発進時におけるアクセル・シフトポジション・トルク・回転数・クラッチトルク容量・駆動力を示すタイムチャートである。
符号の説明
E エンジン
MG モータジェネレータ
CL1 第1クラッチ
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
PS プロペラシャフト
DF ディファレンシャル
DSL 左ドライブシャフト
DSR 右ドライブシャフト
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ

Claims (6)

  1. 少なくともエンジン、モータジェネレータ、クラッチ、駆動輪の順に接続してハイブリッド駆動系を構成したハイブリッド車両において、
    ニュートラルレンジ位置がセレクトされ、前記クラッチが動力を伝えないように解放されている状態でドライバのアクセル踏み込み操作により前記エンジンのトルクを発生させながらの待機時、前記エンジンからのトルクが前記モータジェネレータへ伝達されている状態で前記アクセル踏み込み操作により前記エンジンが出力しているトルクを前記モータジェネレータに対するトルク制御により絞ることによって前記クラッチへの入力トルクを絞り、
    前記待機時から走行レンジ位置にセレクトした発進時、前記モータジェネレータに対するトルク制御により前記クラッチへの入力トルクを絞り、かつ、前記クラッチを滑り締結させることで駆動力を出すパワーオン発進制御手段を設けたことを特徴とするハイブリッド車両の発進制御装置。
  2. 請求項1に記載されたハイブリッド車両の発進制御装置において、
    前記パワーオン発進制御手段は、前記滑り締結されているクラッチの入力回転と出力回転とが同期した時点で、前記クラッチを完全締結することを特徴とするハイブリッド車両の発進制御装置。
  3. 請求項1または2に記載されたハイブリッド車両の発進制御装置において、
    前記パワーオン発進制御手段は、ドライバのアクセル踏み込み操作による待機時、目標エンジントルクを、目標エンジン回転数を得る目標回転数エンジントルクに設定し、目標クラッチ締結トルクをゼロとし、目標モータトルクを、前記目標エンジン回転数を維持するトルクに設定することを特徴とするハイブリッド車両の発進制御装置。
  4. 請求項3に記載されたハイブリッド車両の発進制御装置において、
    前記パワーオン発進制御手段は、前記モータジェネレータに接続されるバッテリへの入力可能電力に基づくバッテリ入力可能トルクを制限値とし、前記目標エンジントルクと前記目標モータトルクを設定することを特徴とするハイブリッド車両の発進制御装置。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載されたハイブリッド車両の発進制御装置において、
    前記パワーオン発進制御手段は、発進開始から前記クラッチの入出力回転が同期するまで、目標エンジントルクを、モータトルクを考慮しながら駆動力要求を満たすトルクに設定し、目標クラッチ締結トルクを、アクセル開度に応じた目標エンジン回転数を維持するクラッチ締結トルクとし、目標モータトルクを、前記クラッチへの入力トルクが、前記目標クラッチ締結トルクによる伝達トルク分と前記クラッチの滑り分トルクとを加算したトルクとなるように制御することを特徴とするハイブリッド車両の発進制御装置。
  6. 請求項5に記載されたハイブリッド車両の発進制御装置において、
    前記パワーオン発進制御手段は、前記目標クラッチ締結トルクに制限値を設け、該制限値を、クラッチ滑り量と現在の油温から、完全締結時におけるクラッチフェーシング温度上昇を求め、この温度上昇によりクラッチ保護温度内に収まる最も高い締結トルクとすることを特徴とするハイブリッド車両の発進制御装置。
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