JP4660158B2 - 状態図を利用した相分析を行う表面分析装置 - Google Patents
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Description
図1に従来のEPMAの構成例を示す。電子銃1から発生した電子を集束レンズ2、対物レンズ3で細く絞り試料6に照射し、試料から発生する特性X線を分光素子9で分光、X線検出器10で検出する。電子線は電子線偏向器4によって試料面を二次元的に走査できる。また電子線照射位置を固定しておいて、試料ステージ7を移動制御し、試料を二次元的に走査させることもできる。X線検出器10で検出されたX線信号は制御演算処理装置15に送られ、面分析データが作成される。予め求めておいた質量濃度とX線強度との関係(検量線)に基づいて、各元素の濃度マップを得ることができる。
例えば図2−aのように元素Aと元素Bの濃度マップが得られたとする。元素Aと元素Bの相関を見るために、例えば元素Aの濃度を縦軸、元素Bの濃度を横軸にとり、マップ上の同一座標点の濃度をプロットし、図2−bに示すような散布図を得る。2成分系の試料において、2元散布図を作成した場合、本来であればプロット点の密集領域(クラスタ)は、元素Aの濃度と元素Bの濃度の合計が100%を満たす線上のみに並ぶはずであるが、元の特性X線強度の統計変動によるばらつきがあるため、同一組成でも同一の座標点にプロットされるとは限らない。一画素の計数値が低いほどクラスタの広がりは大きくなる。プロットされた座標のA,Bの合計値が100%を超えてしまうこともあり得るが、特性X線強度の統計変動の範囲内であれば特に問題とはならない。
上記例は2成分を元素A,元素Bとしたが、各成分は必ずしも単元素である必要は無い。例えば、AOx、BOyのように元素Aと元素Bの原子個数が1に対してx個とy個のO元素が結合するような化合物であっても良い。化合物を端成分とする場合は濃度軸を化合物の濃度にとればよい。
2または3種の複数元素を指定する手段と、面分析の測定結果から得られた指定された複数元素の濃度マップに基づいて、2または3成分系の濃度軸を持つグラフに、前記濃度マップの同一場所の濃度値をプロットして得られる散布図を作成し表示する手段と、
前記指定された複数元素の組成と温度などの関係を表す状態図を表示する手段とを有し、
表示された状態図上に、カーソルで指示された元素濃度の個所に対応する前記散布図上の位置にマーカーを表示する手段、
若しくは、マーカーを散布図上で移動させたとき、状態図上のカーソルも連動して元素濃度軸方向に移動して、常に散布図上のマーカーが示す濃度と同じ濃度を表示する手段、
のうちの少なくともひとつの手段を備えたこと特徴とする。
図7は本発明をEPMAで実施する場合の構成例である。図1の従来装置構成例に、状態図を格納したデータベース18と文献やWEBなどから公開された状態図を画像ファイルとしてEPMAに取り込むためにスキャナなどの取込装置19が付加されている。画像ファイルとして取り込まれた状態図は、成分元素、濃度範囲、著者、出典などのデータと共に保存される。
また、表示される濃度や温度の範囲が任意に選択できるようになっている。
面分析により得られた元素AおよびBの濃度マップから散布図が作成されると同時に、制御演算処理装置15は、元素マップで選択された元素に基づいてデータベース18を参照し、図3に示すような状態図を読み出して前記散布図と共に表示装置16に表示する。
上述した機能を用いることにより、散布図上に現れているクラスタが状態図のどの相に対応しているかを容易かつ正確に調べることが可能となる。
図5−aに示されている、「原点を頂点とした三角形」とするマーカーは、状態図と連動して移動する際に、常に原点をひとつの頂点とし、その頂角を2等分する線と元素Aの濃度と元素Bの濃度の合計が100%を満たす線との交点の濃度が、状態図上の濃度と一致するように連動して移動する。
一方、2成分系の散布図において、元素Aと元素Bの濃度マップデータを用いて原点を通る直線上にプロットされる点集合は、「元素Aと元素Bの濃度比が一定である」という性質を持っている。
従って、前記「原点を頂点とした三角形」とするマーカーは、元素Aと元素Bの濃度の合計が100%であることの条件に制限されず、濃度の比が一定である点集合領域を一括して指定することができる。
元素A,Bからなる2成分系の試料において、2元散布図を作成した場合、
元の特性X線強度の統計変動によるばらつきがあるため、プロット点の密集領域(クラスタ)が広がりを持つことは背景技術のなかで述べたが、それ以外にもさまざまな要因により、元素Aの濃度と元素Bの濃度の合計が100%を満たす線からクラスタの位置がずれる可能性がある。主な要因を以下1〜4に挙げる。
1.不純物元素や微量添加元素が主成分である元素A,Bと局所的に化合物を形成している。
2.試料表面の分析部位が汚れていたり、導電性をとるための蒸着膜が形成されているため特性X線強度が低下している。
3.表面形状が良好な状態にないため、正しい特性X線が測定されていない。
4.2成分系からなる分析物が多数の極微小片で構成され、別組成の支持体に分散して埋め込まれているが、個々の微小片は分析に用いる信号の発生領域よりも小さい。
図6−aは元素A,B,Cの濃度マップ(図示せず)から作られた3元散布図で、図6−bは元素A,B,Cに対応する3成分系状態図である。前記3成分系状態図上には底辺A−B,B−C,C−Aに平行な3本のクロスカーソルが表示されている。クロスカーソルの中心部付近をマウス等でドラッグすることにより、クロス点の位置を前記3成分系状態図中の任意の位置に移動できる。前記クロスカーソルの中心位置を前記3成分系状態図上で移動させるのに連動して、前記3元散布図上の円形マーカーも前記3成分系状態図上のクロスカーソルが示している濃度と同じ濃度を示すように移動する。
上述したように、散布図に表れるクラスタがどのような組成に相当しているかという解析を行う際に、対応する組成の状態図を参照しながら行うことにより、分析者が簡単かつ正確にその対応関係を知ることができる。
1:電子銃 11:分光素子制御装置
2:集束レンズ 12:X線信号処理装置
3:対物レンズ 13: 試料ステージ制御装置
4:電子線走査コイル 14:インタフェース
5:光学顕微鏡 15:制御演算処理装置
6:分析試料 16: 表示装置
7:試料ステージ 17: 入力装置
8:電子光学系制御装置 18: データベース
9:分光素子 19:読取装置
10:X線検出器
Claims (6)
- 物質に電子線やX線を照射した時に発生する特性X線やオージェ電子、光電子などを用いて、試料表面の組成や元素分布の測定と解析を行う表面分析装置において、
2または3種の複数元素を指定する手段と、面分析の測定結果から得られた指定された複数元素の濃度マップに基づいて、2または3成分系の濃度軸を持つグラフに、前記濃度マップの同一場所の濃度値をプロットして得られる散布図を作成し表示する手段と、
前記指定された複数元素の組成と温度などの関係を表す状態図を表示する手段とを有し、
表示された状態図上に、カーソルで指示された元素濃度の個所に対応する前記散布図上の位置にマーカーを表示する手段、
若しくは、マーカーを散布図上で移動させたとき、状態図上のカーソルも連動して元素濃度軸方向に移動して、常に散布図上のマーカーが示す濃度と同じ濃度を表示する手段、
のうちの少なくともひとつの手段を備えたこと特徴とする表面分析装置。 - 前記散布図と前記状態図とを同一画面上に同時に表示しながら、前記状態図上のカーソルまたは前記散布図上のマークを移動させる手段を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の表面分析装置。
- 前記散布図が2成分である時、前記散布図上に表示するマーカーの形状を「原点を頂点とした三角形」とすることを特徴とする、請求項1に記載の表面分析装置。
- 前記状態図を表示する手段は、公開されている状態図を画像ファイルとして取り込む手段と、画像ファイルとして取り込まれた状態図の濃度軸/温度軸、液相線/固相線などの線上の点をデジタル的に指定できるようなデータとしてグラフ化されデータベースに格納する手段を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の表面分析装置。
- 前記状態図の濃度軸として、質量濃度または原子濃度または質量濃度と原子濃度の両方のいずれかを選択的に表示し得るようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の表面分析装置。
- 前記状態図において、濃度軸や温度軸の表示される範囲を任意に選択できる手段を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の表面分析装置。
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