JP4651754B2 - フェロ流体を用いる移動による粒子または分子の分離法および装置 - Google Patents
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Description
分離媒質内の原動力を、分離される粒子または分子に加えることによって分離を行う多くの方法が、既に知られている。
原動力が電気型のものであるときには、電気泳動と呼ばれ、また水力源のものであるときには、クロマトグラフィーまたは濾過と呼ばれる。
先行技術
クロマトグラフィー、濾過および電気泳動は、合成または天然の粒子、細胞、細胞小器官またはウイルスなどの分子または巨大分子を精製または分析する目的で極めて広汎に用いられている。これらの方法を実施する多数の方法があり、それらの報告は、例えば「液相および超臨界相のクロマトグラフィー(Chromatographie en phase liquide et supercritique)」, R. Rosset, M. Caude, A. Jardy, Masson出版,パリ,1991年;「実用高性能液体クロマトグラフィー(Practical High Performance Liquid Chromatography)」, V.R. Meyer, John Wiley出版,チチェスター,ニューヨーク,米国;「ポリマーのクロマトグラフィー(Chromatography of polymers)」, T. Provder監修,ACS出版,ワシントンDC,1993年;または「電気泳動:理論、技術、および生化学的および臨床的応用(Electrophoresis: theory, techniques and biochemical and clinical applications), A.T. Andrews, Oxford University Press, ニューヨーク,1986年」のような様々な刊行物に見出だすことができる。
しかしながら、これらの手法には限界がある。例えば、DNAについては、クロマトグラフィーは大きさが比較的小さな分子だけしか分離することができず、アガロースまたはアクリルアミドゲル電気泳動法がこれに適していることが最も多い。
定常電場電気泳動(constant-field electrophoresis)は、それ自体では、数万の塩基対(キロ塩基、Kb)より大きな分子を分離することはできないが、ほとんどの細胞性生物、原核性または真核性および多くのウイルス性DNAの完全な染色体は数百キロ塩基または数百万塩基(数百万の塩基対、Mb)の長さである。例えば、ヒトのDNAは、50〜200Mbの大きさがある。遺伝子(ゲノム)マッピング、変動分析(variability analysis)、人工酵母染色体を用いるクローニング、診断などの医学や遺伝学における多数の応用については、定常電場電気泳動の分離限界を超過するDNAをその大きさの関数として分離する必要がある。
この問題点を解決するため、パルスフィールドゲル電気泳動(pulsed field gel electrophoresis)として知られる新技術が提案されている(PCT WO84/02001、発明者C. CantorおよびD.C. Schwartz、1984年5月24日)。この技術の数多くの変法も開発されている(例えば、欧州特許第0 356 187号明細書、欧州特許第0 256 737号明細書、米国特許第4,971,671号明細書、欧州特許第0 395 315号明細書、「パルスト・フィールド電気泳動(Pulsed filed electrophoresis)」B. Birren, E. Lai, Academic Press, ロンドン,1993年、「パルスト・フィールドゲル電気泳動(Pulsed filed[sic]Gel electrophoresis)」, Meth. in Mol. Biol., M. Burmeister and L. Ulanovsky監修,Humana Press, トトワ,ニュージャージー,米国,1992年、およびこれらの特許明細書および報文に引用された文献を参照されたい)。
この技術はかなり成功を収めたが、これもやはり問題がある。主要な問題は、その速度が遅いことであり、数百万塩基を含む染色体を分離するのに数日間を要するのである。また、分離はゲル中で行われるので、分離後にDNAを回収することが困難であり、この方法は調製用途には余り向いていないのである。最後に、この方法は、10Mb未満の大きさに限定されている。
電気泳動は、ある種の痴患の診断や治療のための試料分析、精製において必要なことがあるミクロンまたはミクロン以下の大きさの粒子(コロイド粒子、細胞、ウイルス、赤血球または白血球など)の分離に用いることもできる。
分離を行う粒子同士が異なる表面電位を有する場合には、それらはこの表面電位の関数として液体媒質中で分離することができる。逆に、多数の用途に対しては、同一表面電位を有する粒子または分子の大きさの関数としてそれらを分離するのが望ましい。これは液体媒質中で行うことはできず、この型の分離を極めて稀薄なアガロースゲル中での電気泳動によって行うことが提案されてきたが、粒子はゲルに取り込まれ易く、これらのゲルは取扱いが極めて難しい。更に、この方法は、比較的小さな粒子、典型的には1μm未満のものにしかうまく行かないのである(G.A. Griess, P. Serwer, Biopolymers, 29, 1863-1866(1990))。この場合にも、パルスフィールド電気泳動により、この方法を使用し得る範囲を若干広げることができるが、限定された方法である。最後に、これは、同様な大きさの粒子を十分に分離することはできない点に注目すべきである。
要するに、粒子、大きな分子、および特にDNAを分離する方法は既に知られているが、これらの方法は、特にそれらが遅いこと、および大きな大きさの分子や粒子を分離するためのこれらの方法で見られる問題点と関連した多くの欠点を有する。
本発明の一つの目的は、このような様々な欠点を持たない分離法を提供することである。
粒子、特にDNAを分離するために電場と磁場を組合せて用いる分離法は既に知られている。
電磁気泳動(electromagnetophoresis)と呼ばれるこれらの方法は、例えば米国特許第4,726,904号明細書および下記の公表物にも記載されている。
Mukherjee, H.G., majumdar, D.,「Fresenius′Z」, Anal. Chem., 277, 205(1975),
O. Lumpkin, J. Chem. Phys. 92, 3848-3852(1990),
Kowalczuk, J.S., Acta Chromatogr. 1, 34-55(1992).
これらの方法において、磁場が電場を補足し、分離を行う電荷の移動を引き起こすのである。
米国特許第4,526,681号明細書では、磁気粒子を分離する手法であって、分離を行う粒子をフェロ流体媒質に導入し、これに磁場を掛けて、これらの粒子を磁化率勾配に沿って分布させることができる方法が既に提案されている。
しかしながら、この手法は、異なる磁化率を有する磁気粒子の分離にしか応用することができない。
発明の目的
本発明としては、粒子または分子を、フェロ流体、すなわち磁性粒子のコロイド状懸濁液である分離媒質に導入し、少なくとも1種類の原動力をフェロ流体内のこれらの粒子または分子に加える粒子または分子の分離法であって、磁場をこのフェロ流体に掛けて、分離される粒子または分子がその移動中に通過する分離媒質を画定するフェロ流体の磁性粒子の多いゾーンと少ないゾーンを磁場の中に交互に生成させることを特徴とする方法を提供する。
この種の方法は、フェロ流体内を移動する速度の関数として粒子または分子を分離することができ、分離速度に関しおよび/または分離を行うことができる大きさの範囲に関してこれまでに知られている方法よりも良好である。
本発明によって提案された方法は、本質的に非磁性粒子(磁化率が最小限または零)を分離することができる点が注目されるであろう。
用いられる原動力または移動力は、通常は非磁性である。
電荷を有する粒子の分離に特に有利な本発明の好ましい態様では、移動力は分離媒質内に電場を加えることによって得られる。次いで、この方法は、電気泳動法を構成する。
分離媒質としては、磁性粒子が本質的に中性であり、従って電場の作用下では移動しないフェロ流体を選択するのが、一般的に有利であろう。しかしながら、ある種の応用では、例えば分離を行う粒子と粒子との相互作用を減少または増加させることが望ましい場合には、所定の電荷の磁性粒子を必要とすることがある。
上記の好ましい態様と組合せることができるまたはできない好ましい態様では、磁場は、粒子の移動方向に対して本質的に垂直である。
更に好ましく且つ上記の態様のいずれか1つと組み合わせることができるが、相互に排他的である2個の変更態様は、
a)磁場を掛けるゾーンで本質的に一定である、
b)磁場を掛けるゾーンで強度勾配を有する
磁場を使用することにある。
同様に、上記の態様のいずれか1つと組み合わせることができるが、相互に排他的である2個の変更態様は、
c)磁場の方向において本質的に一定の厚みを有し、この厚みが、分離を行う粒子または分子の大きさの関数として、分離流体中の磁性粒子の濃度および磁場の大きさによって選択され、特に、大きめの厚みを大きめのサイズの粒子および分子に用いるのが好ましい分離ゾーン、
d)分離ゾーンが分離を行う粒子または分子の優先的移動方向に沿って可変厚みを有し、このゾーンの厚みが、分離を行う粒子または分子の大きさの関数として、分離流体中の磁性粒子の濃度および磁場の大きさによって選択され、特に、大きめの厚みを大きめのサイズの粒子および分子に用いるのが好ましいもの、を使用することにある。
第a)およびc)項による方法は、比較的小範囲の大きさについて高度の分離を行うのに好ましく用いられ、第b)およびd)項による方法は、広範囲の大きさにおける分離に一層適している。
第d)項の特に単純な態様の変法では、磁場に本質的に垂直な分離ゾーンの壁は互いに若干傾斜しており、このゾーンが「楔」形になっている。
上記の好ましい態様では、磁場の方向に平衡な方向での分離ゾーンの平均的寸法は1μm〜1mmであり、好ましくは10μm〜100μmである。
この方法は、下記の
分離ゾーンに分離媒質を満たし、
磁場を活性化し、
分離を行う粒子または分子を含む所定量の試料を分離ゾーンの一方の側に導入し、
分離を行う粒子または分子に原動力を加える手段を活性化する、
様々な段階により有利に実施される。
これらの段階が示されている順序は本発明の好ましい態様に相当するが、本発明の範囲においては、それらを例えば分離を行う試料を導入した後に磁場を活性化し、および/または原動力を活性化することによるなどの異なる順序で実施することもできる。
本発明の範囲において、分離された生成物の通過の検出または観察、および/または分離された生成物の収集を分離ゾーンの出口で行うことができる。
また、有利なことには、フェロ流体は、2回の分離操作の間に自動的に取り替えられる。
本発明は、核酸、特にDNA、更に具体的には大きさが50Kb〜数百MbのDNA分子のような大きなサイズの粒子や巨大分子の分離に特に有利である。これは、細胞、ウイルス、非磁性コロイド懸濁液およびリポソームのような液体に懸濁したものの分離にも特に有利である。しかしながら、これらの例は本発明の分野を制限するものと解釈すべきではなく、場合によっては、これもまた非制限的例として示せば、タンパク質、および合成または天然の巨大分子のような他の種類のものの分離にも有利であることを明らかにすることもできる。
本発明のもう一つの目的は、フェロ流体、すなわち磁性粒子のコロイド懸濁液である分離媒質を収容するセル、これらの粒子または分子を上記分離媒質に導入する手段、およびこの流体に磁場を掛けるための手段を含んでなる粒子または分子の分離装置であって、上記媒質内で少なくとも1個の移動力を加えるための手段を包含し、磁場を掛けるために、分離される粒子や分子がその移動中に通過するフェロ流体磁性粒子の多いゾーンと少ないゾーンを少なくとも1回交互になるようにする手段があり、これにより分離が行われることを特徴とする装置を提供することである。
本発明による方法および装置は、粒子および分子、具体的には以下のものに限定されないが、DNA、細胞、血液細胞、またはウイルスを分離する目的で、診断法の範囲において有利に用いられる。
それらは、例えば、リポソーム、タンパク質、DNA、細胞、血液細胞、ウイルスまたはコロイド懸濁液を組成として含む医薬、獣医または植物消毒製品、および化粧品を得るのに用いることもできる。
本発明の他の特徴および利点は、下記の説明から更に明らかになるであろう。この説明は純粋に例示のためのものであり、制限を意味するものではない。
図の説明
この説明は、添付の図面を参照して読まれたい。
第1図は、本発明を実施するための装置の一例の平面図を模式的に表したものであり、
第2図は、第1図の装置の模式的断面図であり、
第3図は、第1図および第2図のものと同様の本発明による装置の変更体の好ましい態様を表し、
第4a〜4d図は、移動の例を示すマイクロ写真であり、
第5a図〜第5b図は、第3図に準じた分離装置の出口における蛍光の時間の関数としての変動の2つの例をプロットしたグラフである。
詳細な説明
第1図および第2図に、本発明を実施するための可能な装置を例示する。
この装置は、2個のリザーバー2および3を結合し、フェロ流体、すなわち磁性粒子のコロイド懸濁液を含む液体を分離相の前に導入する本質的に平行六面体状(parallelpipedal)のチャンネル1を含んでなる。
このチャンネル1は、分離ゾーンを構成している。
この装置は、上記チャンネル1の少なくとも一部に、上記チャンネルの厚みeに本質的に平行な磁場を生成させる手段を含んでいる。
この磁場の効果は、フェロ流体を構成し、磁性粒子が多いカラム26と磁性粒子が少ない1個以上のゾーンを生成させることである。このような磁場を生成させることができる様々な手段は当業者に知られており、例えばヘルムホルツコイル、電磁石または永久磁石がある。
ほとんどの用途に対して、分離ゾーンに本質的に均一な磁場を掛けるのが有利である。第2図に模式的に示されているこのような磁場を生成させる一つの簡単な方法は、永久磁石または電磁石の極7および8(それぞれ、北および南)を分離チャンネル1のいずれか一方の側に置くことである。第3図に模式的に表されているもう一つの方法は、本質的に円形で且つ電流発生器(図示せず)によって動力供給されるヘルムホルツコイル37と同心的な軸を有するチャンネルを構築することにある。(この装置の他の総ての要素は、第1図に関して記載したものと同様の機能を有する。)
しかしながら、ある種の用途には、不均一磁場が必要なことがあることに留意すべきである。この理由は、知られているように(E.M. Lawrence et al., Int. J. of Modern Phys. B, 8, 2765-2777, 1994)、磁性粒子の多いカラムの大きさおよび間隔は、磁場およびセルの厚みによって変化するからである。従って、所望な分離に応じて直ちに磁性として作用することが可能である。
多くの場合に、特に、分離を行う粒子が帯電しているとき、例えばそれらがDNAのような高分子電解質であるか、またはタンパク質、細胞またはウイルスであるときには、分離媒質の構築に用いた磁場に本質的に垂直な電場によって駆動するのが有利である。
この目的に対して、装置は電圧または電流発生器6の端子に接続し且つそれぞれリザーバー2および3に浸漬した2個の電極4および5を含んでいる。上記の発生器6は、定電流モード、定電圧モード、定放散電力モード(constant dissipated power mode)で操作することができ、または一層複雑なプロフィールを有する電流または電圧を送達することができる。
特に、場合によっては、特に極めて大きなDNA分子を分離する場合には、当業者には周知であり且つ例えば「パルスト・フィールド電気泳動(Pulsed field Electrophoresis)」B. Birren, E. Lai, Academic Press, ロンドン,1993年、「パルスト・フィールドゲル電気泳動(Pulsed filed[sic]gel electrophoresis)」, Meth. in Mol. Biol., M. Burmeister and L. Ulanovsky, Humana Press, トトワ,ニュージャージー,米国,1992年に記載されているパルスト・フィールド電気泳動の原理により、向きまたは方向が経時的に繰返し変化する電圧を用いるのが有利であることがある。
また、一般に、分離を行う粒子と同じ極性を有する電極は、試料を導入する分離ゾーン1の側に置かれるが、この配置は時によっては、強力な電気浸透が細胞内に生じ、例えばフェロ流体の磁性粒子が帯電し、分離を行う粒子と同じ符号である場合には逆になることがある。
電極4および5で形成されることがある気体を除去するため、リザーバー2および3を、直接またはガス抜き16および17を介して自由大気または共通リザーバーに接続するのが有利である。
本発明の実施に用いられる装置は、更に場合によっては試料導入ゾーン9を含んでいてもよい。分離ゾーンと試料導入ゾーンを同時に生成させるのに有利な一つの形態は、絶縁基材(例えば、ガラスまたはプラスチック)上でエッチングまたは成形の過程によって分離が起こる容積を得ること、および十分に画定された量の試料を導入するために、同じ基材上にエッチングされ、且つ1個以上のリザーバーまたは導管24,25であって、例えばA.T. Woolley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. US, 91, 11348-11352(1994)に記載されているように、発電機29によって電力供給される2個の任意電極27および28を用いてその間に圧力差または電位差を加えることができるものに接続されている補助チャンネル23を用いることにある。
試料を導入するための手段は、例えば
ゲル電気泳動におけるように、試料が付着している1個以上の窪みまたは「ウェル」(「電気泳動:理論、技術および生化学的および臨床的応用(Electrophoresis: theory, techniques and biochemical and clinical applications), A.T. Andrews, Oxford University Press, ニューヨーク,1986年」)、あるいは
キャピラリー電気泳動におけるように、加圧または除圧系、(例えば「キャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis)」, P.D. Grossman, J.C. Colburn監修,Academic Press, サン・ディエゴ,カリフォルニア,米国,1992年を参照されたい)、あるいは
液体流電気泳動におけるように、チャンネルであって、これを通して試料の細流を連続投入するもの、あるいは
クロマトグラフィーに用いられる試料導入法の一つ(「液相および超臨界相のクロマトグラフィー(Chromatographie en phase liquide et supercritique)」, R. Rosset, M. Caude, A. Jardy, Masson出版,パリ,1991年;「実用高性能液体クロマトグラフィー(Practical High Performance Liquid Chromatography)」, V.R. Meyer, John Wiley出版,チチェスター,ニューヨーク,米国;「ポリマーのクロマトグラフィー(Chromatography of polymers)」, T. Provder監修,ACS出版,ワシントンDC,1993年)
からなる。
このリストは、全部を網羅していない。
同様に、分離した生成物を検出することができる多数の手段を、場合によっては入口と反対のチャンネル1の側(出口窓10)で本発明と組み合わせることができる。クロマトグラフィー、電気泳動などに用いられる多数の検出器が、当業者に知られており(「キャピラリー電気泳動(Capillary Electrophoresis)」, P.D. Grossman, J.C. Colurn監修,Academic Press, サン・ディエゴ,カリフォルニア,米国,1992年)、本発明の範囲、すなわち可視または紫外光線の吸収による、放射性物質によって放出される蛍光または発光放出または放射による、伝導度測定法による、あるいは光散乱などによる検出において使用することができる。
第2図に示される態様は、蛍光による検出に相当し、装置は、検出を行う粒子によって吸収されることができ、レンズ11によって検出窓10に集光される光を放出する光源13を含んでいる。上記粒子は、入射光線12より長波長の蛍光14を再放出し、二色フィルター15によってそれから分裂した後、場合によっては分析装置22に接続された感光検出器21によって検出される。
セルはまた、必ずしも必要ではないが、好ましくは出口面近くに、様々な分離生成物の収集を目的とした1個以上の装置を備えるのが有利なことがある。このような分画収集装置は当業者に知られており、クロマトグラフィーおよび電気泳動で既に用いられている。それらは、平明にするため、図に再掲しなかった。それらは、例えばセルの各種の点で生成物を収集し、それらを各種の容器に分布するための一連の管(K. Hannig, Electrophoresis, 3, 235-243(1982))、または異なる時点でセルから出て来る生成物を2個の異なる容器に投入する単一の管(例えば、R. Grimm, J. Cap. Elec. 2, 111-115(1995)を参照されたい)、あるいはセルの出口近くを通り過ぎ、1個以上の分離した生成物を吸着することができる膜であることができる(K.O. Eriksson, A. Palm, S. Hjerten, Anal. Biochem., 201, 211-215(1992))。
第3図に示された好ましい態様による本発明の操作の様式を説明する。
最初に、分離ゾーン1に、例えばリザーバー2または3の一つにおける毛管作用または抑制を用いてフェロ流体を満たす。次の段階は、ヘルムホルツコイル37を用いて上記のLawrence et al.(1994年)の公表物に記載の機構に従ってフェロ流体を整理するのに十分な磁場を漸次掛けることを含み、磁場の作用下で、フェロ流体のそれぞれの磁性粒子が微小磁石に転換され、これらの磁石が纏まって、磁性粒子の多い且つ磁場に平行な規則的に間隔を置いたカラムを形成する。
分離を行う粒子、例えばDNA分子を含む試料を、次に導入する。試料が、例えば当業者に周知のアガロースインサートのような固形状であるときには、これは、ミクロスパーテルを用いてリザーバー25に入れることができる。試料が液状であるときには、これをミクロピペットを用いて、または管を用いて上記のリザーバーに導入することができる。次の段階は、任意電極27および28を用いる、リザーバー25および24の間を若干加圧すること、または上記リザーバー間に電位差を加えることである。上記の加圧または上記の電位差は、試料に含まれている粒子の分子のリザーバー25からリザーバー24へのチャンネル23を介する移動を誘発させ、特に分離ゾーン1の入り口に十分に画定された試料ゾーン9を形成する効果を有する。
次いで、導入を停止し、分離を行う粒子に移動力を生成させる装置(発電機6、電極7および8)を活性化する。この力の作用下で、分離を行う粒子(20)は分離ゾーン1を透過する。このゾーンにおける移動中に、粒子が分離され、試料中に最初に含まれる様々な生成物を検出器21を用いてその移動時間によって同定することができ、または収集することができる。
本発明が提供する分離技術の説明モデルを下記に示す。このモデルは、本発明の理解を補助する目的で示され、包括的且つ制限的としようとするものではない。
移動中に、試料に含まれている分離を行う粒子は、磁場の存在によって凝集力が確保されている磁性粒子のカラムに遭遇する。粒子は、輸送を行うにはこれらの障害を回避する必要があり、従って速度が低下する。この速度低下は粒子の粒度によって変化し、最も大きな粒子は制動が最も大きい。
このような速度低下に対する様々な可能な機構は、ゲル電気泳動(例えば、G.W. Slater et al., Biopolymers, 27, 509-524(1988)を参照されたい)に関して、または微小平板印刷ネットワークにおける電気泳動に関して既に提案されている(例えば、E.M. Sevick and D.R.M. Williams, Phys. Rev. Lett., 76, 2595-2598(1996)を参照されたい)。しかしながら、本発明は、これらの先行技術の方法と比較して幾つかの利点を示す。
a.分離することができる粒子の最大粒度は、細孔の大きさと関連している。ゲル内では、この細孔径は制御が困難であり、特に数10-1μmより大きな細孔径を有するゲルを調製することは困難であり、または不可能でさえある。微小平板印刷の場合には、約10μmを上回る厚いセルを構築することは困難であり、これにより感度、流速、および用い易さが限定される。しかしながら、本発明の範囲では、セルの厚み、フェロ流体の磁性粒子濃度、および磁場の大きさを変化させることによって、細孔径を画定するカラム間の距離を自在に変化させ、特にゲルの場合より大きな粒度の粒子を分離することが可能である。従って、より大きな粒度の粒子を分離するには、より大きな細孔、従ってより厚いセルが選択される。
従って、中程度の粒度範囲において最適分割を行うには、一定厚みの分離ゾーンと均一強度の磁場を有することが有利であることを理解されるであろう。しかしながら、ある種の用途には、特に大きな粒度範囲の粒子の分離に関するときには、例えば分離を行うゾーンを「楔」形にすることによって得られる可変厚みのセルを用いるのが有利であることもある。
b.分離を行う粒子の前進に対する障害の間の距離は、本発明の範囲ではゲル電気泳動におけるよりも自在に大きくすることができるので、摩擦が減少し、分離速度を大きく高めることができる。
c.本発明の場合には、微小平板印刷の場合と同様に、障害物は極めて均一な反復単位で十分に整理されたネットワークを形成することにより、より低速度の分散を生じ、従って余り規則的でなく、制御できない構造を有するゲルよりも一層良好に分割される。微小平板印刷法とは対照的に、本発明の範囲では、分離セル自身を変化させることなく障害の粒度および/または間隔を変化させることも可能である。
d.本発明の範囲では、分離に関与する障害のネットワークを破壊して、自在に再形成して、例えば加圧を用いて、分離セルから混入した分離媒質を除去し、または粒子を上記媒質内への取り込みを回避することができる。しかしながら、電気泳動では、障害ネットワークは、一旦形成されてしまえば、装置から手動によって除去することしかできない。最後に、平板印刷ネットワークでは、障害物のネットワークは永久的であり、障害物のネットワークは永久的であり、セルを置換することによってしか置換することができず、このことは、これらのセルの製造コストが極めて高いので、運転費用をかなり増加させる。
e.所望ならば、障害物の堅さまたは寸法のような分離媒質のある種の特性は、磁場を加減することによって分離中に自在に変化させることができるが、一方これらの特性は、ゲルまたは微小平板印刷ネットワーク電気泳動の場合には、不変であり、制御できない。
f.最後に、磁性粒子は、例えば磁石を用いて、分離後に溶液から極めて容易に除去し、精製した生成物回収することができるが、ゲルの場合には、アガロースの除去には、アガロースによる微妙且つ更に費用の掛かる消化が必要であることを指摘することができる。
態様例
フェロ流体エマルションの調製
このエマルションは、J. BibetteがJ. Magn and Magn. Mat. v. 122, p 37(1993)およびJ. Coll. and Int. Sci v. 147, p 474(1991)に公表した手続きを用いて調製する。簡単にいえば、エマルションは、50%(重量/重量)水−SDS溶液からグラインダー中で剪断下で得られるのであり、この溶液に、油/Fe2O3比が50%(重量/重量)の20nmFe2O3粒子を含む
製のフェロ流体の溶液を漸次配合し、最終的油/水比を80%(重量/重量)とする。この溶液を水で10倍に希釈する。次いで、フェロ流体液滴を磁場において沈降させ、上清を除き、フェロ流体エマルションをTergitol型のNP10(Sigma)/水の0.05%(重量/重量)溶液に再懸濁させる。この濯ぎ作業を4回繰返す。表面電荷が無視し得る油/水界面を有するフェロ流体エマルションが得られる。電気泳動の前に、このエマルションにTBE緩衝溶液(45mMトリス、45mMホウ酸、1.25mM EDTA,pH8.3)を補足して、20倍に濃縮する。従って、最終的フェロ流体エマルション溶液は、油/水比が8%(重量/重量)であり、0.05%(重量/重量)のNP10、TBE(45mMトリス、45mMホウ酸、1.25mM EDTA),pH8.3を含む。
電気泳動セルの製造
チャンネル1は、厚みが0.01〜0.05mmの間で選択され、幅4mm、長さ24mmの環状キャピラリーである。これは、第3図に示される一般工程図に従って、直径が32mmであり、且つそれぞれがリザーバー2,3,24および25の役割を果たす完全に貫通する4個の貫通孔を有する円形ガラス板上に「パラフィルム」(American National Cup)のフィルムを手で引き伸ばして付着させることによって生成される。分離チャンネル1および試料導入チャンネル23を、「パラフィルム」上でエッチングすることによって形成し、このフィルム上に直径が30mmの円形顕微鏡スライドを付けることによって閉じる。セルを、その周辺に予め加熱したパラフィンを適用することによってシールする。このようにして形成したセルを次に磁性装置37に入れて、検出系11を、出口3近くの主チャンネル1のゾーン10に、充填オリフィス2,3,24および25が上になるように向き合わせ、電極4,5(および場合によっては27および28)を上記オリフィスに入れる。
セルに、毛管作用によって、リザーバー3に入っている上記の磁性エマルションを満たす。5mTの磁場を、電磁石の内側に置いた電気泳動セルに漸次加える(200mT/分)。電磁石の軸は、電気泳動セルの30mmの円形スライドの軸と一致する。この手続きにより、セルの厚みによって変化する平均間隔が0.002〜0.01mmであるフェロ流体カラムの規則的な配列が形成される(Lawrence et al. International Journal of Modern Physics B, v. 8, p 2765(1994)を参照されたい)。カラムの直径は、フェロ流体溶液の油分濃度によって調製することができる。2個のリザーバー24および25を結合している横断チャンネル23を用いて、試料を制御しながら導入する。フェロ流体のカラムのネットワークが磁場を設定することによって形成されたならば、分離を行う染色体を含むゲル片または液体の一部(蛍光による検出を行うことが所望ならば、YOYO蛍光挿入剤(Molecular Probes)の0.005mM溶液中で予め少なくとも4時間インキュベーションしたもの)をリザーバー25に入れ、圧力をセル中で平衡にする。次に、横断チャンネル23に、電極26および27の間の電位差、または場合によってはリザーバー25と24との間の静水圧差を設定することによって、分離を行うDNAを含む溶液を満たし、チャンネル23が満たされたならば、リザーバー24および25の間の電位差を停止し、電位差(典型的には数十ボルト)を電極4および5(DNAのような負の種を分離する場合、および本質的に中性のフェロ流体の存在下では、電極4は負の電位を有する)によってリザーバー2および3の間に掛ける。この方法により、十字の中心(容積9)にほぼ相当する十分に画定された試料容積を導入することが可能になる。
電気泳動中のDNA分子の観察
この観察は分離には必要でないが、この分離に関与する機構を理解する上で有用である。分離は、倍率が100倍であり、CCDカメラおよびディスプレー装置(Hamamatsu)に接続した画像増強装置(Hamamatsu)を備えた液浸対物鏡を有するNikon Diaphot-TMD-EFエピ蛍光倒立顕微鏡で行う。
上記の電気泳動セルを、5mTの磁場を得ることができる円柱状電磁石の内側に置かれた適当な円形支持体を用いて顕微鏡に配置する。DNA分子を、DNA分子に挿入したYOYO(Molecular Probes)からの520nmより長波長の蛍光放射線によって観察し、450〜490nmの波長の光線によって励起する。フェロ流体構造内部のDNA分子の移動を、ビデオカセットに記録する。
第4a〜4d図は、S. Cerevisaeの染色体の移動の例を示す。ビデオを連続して観察すると、下記の本質的な点が明らかに示される。
フェロ流体カラムは、所定の電場および磁場限界間では移動しない(ここでは、5mTの磁場に対して、10Vを上回る電圧をキャピラリーの末端に掛けることができる)。
DNA分子は、フェロ流体構造間を浸透し、移動する。
DNA分子は、強力な相互作用(吸着)の徴候なしに且つフェロ流体構造に対する有意な摂動の徴候なしにフェロ流体カラムの回りで散乱する。
最短の染色体(約250,000塩基対(bp))は、観察時間スケール(40ms)では本質的に球状形態を保持している(4a)。これは、「オグストン・シービング(Ogston sieving)」という名称によって知られている分子篩機構による分子質量によって分離することができることを示唆している。
中間的大きさの染色体は障害物によって速度低下し、一時的に電場の方向に伸びる(4b)。
観察された最長の染色体は、電場の方向に連続的に伸長する。それらは、通常のゲルで周知のU−、J−およびI型構造を形成する。これらの分子の移動動態は、通常のアガロースゲルでの小型のDNA分子(20,000〜50,000bp)の移動動態と類似している。通常のゲルでは、この型の構造を観察する時にも分離が見られるが、これは、連続的な電場で、少なくとも1,000,000bpまでの大きさの染色体を分離することが可能であることを示唆している。しかしながら、パルスフィールド法を用いることができることも明らかである。通常のゲルでの移動度と比較してフェロ流体構造での分子の移動度が高いため、フェロ流体構造でのこれらのパルスフィールド法は、アガロースゲルにおけるよりもずっと速くすべきである。
フェロ流体構造は、DNA分子の存在下で、自在に作成することも破壊することもできる。これにより、フェロ流体構造の形成動態とDNAの変形動態とを結びつけて考えることにより、新規な分離法を考えることができる。
例えば、磁場の強さを減少させることによって、またはTergitolでの洗浄の段階を省略することによって、すなわちフェロ流体液滴の表面電荷を加減することによって、フェロ流体構造を可動性にすることができる。これにより、フェロ流体構造とDNAの相対移動度を結びつけることによる分離法を考えることができる。
溶出プロフィールの取得
顕微鏡機構を本発明において用いて、経時的な画像を積分することによって、エレクトロフェログラム(electropherograms)(時間の関数としてのDNA濃度のプロフィール)を作成した。しかしながら、当業者に知られている他の検出装置を、これを行う目的で用いることができた。
第5a図は、移動距離20mmに亙って20V/cmでλ相DNAのみを含む試料を注入して得たプロフィールを示す。第一のピークは、(ゲル電気泳動では定量が困難な)分解生成物に相当し、第二のピークは元の儘の染色体に相当する。
第5b図は、λ相DNA(48.5Kb)とT2相DNA(140Kb)を含む試料を混合することによって得たプロフィールを表す。第一の2つのピークは、5aで観察したものと同じ時間の後に現れ、第三のピークT2のピークである。この分離は0.5時間で得られるが、ゲル上のパルスフィールドでは、数時間が必要である。
Claims (21)
- 粒子または分子を、フェロ流体、すなわち磁性粒子のコロイド状懸濁液である分離媒質、に導入し、移動力を上記のフェロ流体内のこれらの粒子または分子に加える、粒子または分子の分離法であって、磁場をこのフェロ流体に掛けて、磁場によって少なくとも1種類の分離ゾーンを、分離される粒子または分子がその移動中に通過するフェロ流体の磁性粒子の密なゾーンと疎なゾーンとを少なくとも1回交互にフェロ流体の中に生成させ、これにより分離を生じさせ、磁性粒子の密なゾーンが磁場に平行であり、移動力が電気的または水力的のいずれかのものであり、分離される粒子または分子の移動方向が移動力の方向に対して平行であることを特徴とする方法。
- 分離媒質内に電場を掛けることによって移動力が得られ、電気泳動法を構成する、請求項1に記載の方法。
- 磁性粒子が、電場の作用下では移動しない電荷を有する、請求項2に記載の方法。
- 磁場が、分離される粒子または分子の移動方向に対して垂直である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 磁場が、それが掛けられるゾーンにおいて本質的に一定である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 磁場が、それが掛けられるゾーンにおいて強度勾配を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 分離ゾーンが、磁場の方向において本質的に一定の厚みを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 分離ゾーンが、分離される粒子または分子の優先的移動方向に沿って可変厚みを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 磁場に対して垂直な分離ゾーンの壁が平坦であり、且つ互いに実質的に傾斜している、請求項8に記載の方法。
- 分離ゾーンの厚みが1μm〜1mmである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 分離ゾーンの厚みが10μm〜100μmである、請求項10に記載の方法。
- 任意の順序で行われる、様々な下記の段階
分離ゾーンに分離媒質を満たし、
磁場を活性化し、
分離される粒子または分子を含む試料の一定量を分離ゾーンの一方の側に導入し、
分離される粒子または分子に原動力を働かせる手段を活性化する、
を特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。 - 磁場の活性化の前に、分離ゾーンへ分離媒質を充填する、請求項12に記載の方法。
- 試料の導入の前に、磁場を掛ける、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 分離される粒子または分子に原動力を働かせる手段を活性化する前に、試料を導入する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
- 分離ゾーンの出口で、分離生成物の通過を検出し、および/または分離生成物を収集する、請求項12に記載の方法。
- 磁性粒子のコロイド流体が、2つの分離操作の間に自動的に交換される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 分離された分子が核酸、特にDNAである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 分離された分子が、大きさが50Kb〜数百MbのDNA分子である、請求項18に記載の方法。
- 分離された粒子または分子が、細胞、ウイルス、非磁性コロイド懸濁液およびリポソームのような液体に懸濁した要素である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
- フェロ流体、すなわち磁性粒子のコロイド懸濁液である分離媒質を収容するセル、これらの粒子または分子を上記分離媒質に導入する手段、およびこの流体に磁場を掛けるための手段を含んでなる粒子または分子の分離装置であって、上記媒質内で少なくとも1種類の移動力を加えるための手段を包含し、磁場を掛けるために、分離される粒子や分子がその移動中に通過するフェロ流体磁性粒子の密なゾーンと疎なゾーンとを少なくとも1回交互に生じさせることができる手段があり、これにより分離が行われ、磁性粒子の密なゾーンが磁場に平行であり、移動力が電気的または水力的のいずれかのものであり、分離される粒子または分子の移動方向が移動力の方向に対して平行であることを特徴とする装置。
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