JP4647832B2 - 安全弁及び安全弁システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は安全弁及び安全弁システムに関し、例えばリチウム二次電池の容器に備える安全弁として用いて有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、高エネルギー密度電池として開発され普及している。このリチウム二次電池は、電子機器向けの小型で小容量のものにとどまらず、工場や病院などの非常電源設備や電力貯蔵用として、あるいは電気自動車の動力用として、大型で大容量のものが開発されている。
【0003】
図9は大型の箱型のリチウム二次電池10を示すものである。図9において、1は容器、2は正極、3は負極、4はセパレータ、5は正極端子、6は負極端子、7は安全弁である。このリチウム二次電池10では、容器1内に有機材料の電解液(図示省略)が充填されている。
【0004】
このようなリチウム二次電池10は、図10に示すように、複数(本例では4個)のリチウム二次電池10をフレーム20に収納し、複数のリチウム二次電池10を直・並列接続してモジュール電池として使用されることが多い。
【0005】
また、リチウム二次電池10に対して充放電をする充放電制御回路では、リチウム二次電池10の短絡故障を検出しており、短絡故障が発生した場合には、充放電を停止するようにしている。
【0006】
このようなリチウム二次電池10では、短絡が発生すると短絡部分が発熱し、その熱によって電解液が分解されてガス化し、電池内部の圧力が急激に上昇する。このように内部圧力が高くなると電池が爆発したり、電池の爆発により電解液が周囲に飛散したり周辺機器を損傷させる恐れがある。そこで、電極板等を密閉収容する容器1内の圧力が上昇し、この圧力が所定以上になると、安全弁7が破断して開状態となり、ガスを外部に放出して圧力開放を行うようにしている。これにより電池爆発という最悪の事態に至ることを回避している。なお、電解液を加熱してガスを発生させ電池内部圧力を上昇させる原因となる電池異常としては、内部短絡,外部短絡,過電流入力,過昇温等がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の安全弁7は、電池内部の圧力が所定圧力を越え、内部圧力と外部圧力との差が所定値を越えることにより、機械的に破断して開状態となるものである。このため短絡等が発生して熱暴走に進展し実際に内部圧力が急上昇してからでないと、安全弁7が開状態とはならない。
【0008】
しかし、電池保護の観点からは、電池材料の熱暴走が始まった極力早い時期に安全弁を作動させる事が望ましい。しかし、安全弁は機械的破断により開となるものであるため、内部圧が低い状態でも開となるように、強度設定をすることはできない。なぜならば、安全弁の作動圧力を過度に下げると、通常の充放電による電池内圧の変化だけでも、安全弁が作動(開放)することとなり実用的でないからである。
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、容器の内部圧力を上昇させる原因となる異常が発生したら、内部圧力が実際に異常上昇する前に、直ちに開状態となる安全弁を提供することを目的とする。この安全弁は、リチウム二次電池などの非水電解質二次電池の安全弁のみならず、異常発生時に内部圧力が上昇する各種の容器に備える安全弁として適用することができるものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の安全弁の構成は、容器に備えられており容器内の圧力が予め設定した圧力よりも高くなったら破断して開状態となる、樹脂板の内部に線材を封入して構成した安全弁であって、
前記線材は電流を流すと溶断する溶断性金属であり、前記線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を前記樹脂板の内部に封入してなり、
前記線材に電流を流すと、前記線材が溶断するとともに、前記樹脂板のうち前記線材の近傍の部分が溶断し、前記線材を配置していた部分が破断して開状態となることを特徴とする。
【0011】
また本発明の安全弁の構成は、二次電池の容器に備えられており容器内の圧力が予め設定した圧力よりも高くなったら破断して開状態となる、樹脂板の内部に線材を封入して構成した安全弁であって、
前記線材は電流を流すと溶断する溶断性金属であり、前記線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を前記樹脂板の内部に封入してなり、
前記線材に電流を流すと、前記線材が溶断するとともに、前記樹脂板のうち前記線材の近傍の部分が溶断し、前記線材を配置していた部分が破断して開状態となることを特徴とする。
【0012】
また本発明の安全弁の構成は、前記樹脂板の内部に封入された線材は、環状または螺旋状または蛇行状に配線されていることを特徴とする。
【0013】
また本発明の安全弁の構成は、前記樹脂板には、容器の内部圧力により前記樹脂板を破断しやすくするスリット溝が形成されていることを特徴とする。
【0014】
また本発明の安全弁システムの構成は、二次電池の容器に備えられており、樹脂板の内部に線材を封入して構成しており、前記線材は電流を流すと溶断する溶断性金属であり、前記線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を前記樹脂板の内部に封入してなり、前記線材に電流を流すと、前記線材が溶断するとともに、前記樹脂板のうち前記線材の近傍の部分が溶断し、前記線材を配置していた部分が破断して開状態となる安全弁と、
前記容器の内部圧力を上昇させる原因となる異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により異常検出がされたら、前記線材の両端から線材に電流を流す電流供給手段とを有することを特徴とする。
【0015】
また本発明の安全弁システムの構成は、前記異常検出手段は、前記二次電池の端子間電圧または容器温度または発生磁界または容器歪みを基に、異常を検出することを特徴とする安全弁システム。
【0016】
また本発明の安全弁システムの構成は、前記二次電池は非水電解質二次電池であることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる安全弁30を示す平面図、図2は図1のII−II断面図、図3は図1のIII −III 断面図である。これらの図に示すように、この安全弁30は、樹脂板31の内部に、溶断性金属でなる線材32を封入して構成されている。線材32は、環状に配置されており、その両方の端部32a,32bは、樹脂板31の外部に露出している。
【0019】
なお、樹脂板31の材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン類を採用することができる。また溶断性金属である線材32の材料としては、例えばヒューズ材料や純錫,純鉛等の低融点金属や比較的細い銅線,アルミ線等を採用することができる。このような材料を用いているため、線材32に電流を流すと、線材32が溶断するとともに、樹脂板31のうち線材32の近傍の部分が溶断し、線材32を配置していた部分が破断して、安全弁30が開状態となる。
【0020】
このような安全弁30は、図4に示すように、例えばリチウム二次電池に適用する場合には、容器1の上蓋1aの内側に配置される。この場合、安全弁30の線材32には、電線40が接続されており、内部短絡等が発生した場合には、電線40を介して線材32に電流が供給され、安全弁30が開状態となる。
【0021】
図5は本発明の第2の実施の形態にかかる安全弁30Aを示している。この安全弁30Aでは、樹脂板31の表面側に、環状のスリット溝33を形成している。このため、この安全弁30Aでは、線材32に電流が流れない場合であっても、容器の内部圧力が高くなった場合に、スリット溝33の部分が機械的に破断して、安全弁30Aが開状態となることができる。他の部分の構成は、図1に示す第1の実施の形態と同様である。
【0022】
図6は本発明の第3の実施の形態にかかる安全弁30Bを示している。この安全弁30Bでは、樹脂板31に封入する線材32を、螺旋状に配置している。また、図7は本発明の第4の実施の形態にかかる安全弁30Cを示している。この安全弁30Cでは、樹脂板31に封入する線材32を、蛇行状に配置している。他の部分の構成は、図1に示す第1の実施の形態と同様である。
【0023】
次に、図8を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる安全弁システムについて説明する。同図に示すようにリチウム二次電池10の容器1の上蓋1aには、安全弁30が備えられている。このリチウム二次電池10の正極端子5,負極端子7は、電線51を介して充放電制御回路50に接続されており、リチウム二次電池10に対しては充放電制御回路50により充電や放電がなされるようになっている。電圧検出回路52は正負の端子5,7間の電圧を検出しており、検出電圧信号αを充放電制御回路50に送っている。
【0024】
充放電制御回路50では、検出電圧信号αから、リチウム二次電池10の電圧や電圧変化率を監視している。一方、リチウム二次電池10に内部短絡が発生すると、電池内部電圧が急減する。このため、リチウム二次電池10の電圧や電圧変化率を監視している充放電制御回路50では、内部短絡が発生したことを検出することができる。このように、内部短絡が発生したことを検出したら、充放電制御回路50は、充放電動作を停止する。
【0025】
上述した充放電制御回路50及び電圧検出回路52は従来から存在するものであり、両回路50,52は、リチウム二次電池10の短絡等を監視する異常検出手段としても機能している。
【0026】
更に本実施の形態では、電流供給回路55も備えている。この電流供給回路55は、電線40を介して安全弁30の線材32に接続されている。この電流供給回路55は、充放電制御回路50が内部短絡を検出したら、直ちに安全弁30の線材32に電流を流す。このため、内部短絡が発生すると直ちに線材32が溶断して安全弁30が開状態となる。
【0027】
このため内部短絡が発生しても、リチウム二次電池10の内部圧力が極めて大きくなって爆発直前に至る前に、即ち、従来の機械的な安全弁が開放する圧力になる前に、安全弁30が開状態になり、内部のガスや電解液を外部放出することができる。このため、内部短絡が生じてもリチウム二次電池10の異常な温度上昇を抑制することができる。このことは単電池の安全性を高めるだけでなく、他の健全な電池への熱による影響を緩和することができるため、蓄電システム全体の安全性向上にも寄与する。特に、複数のリチウム二次電池10を用いた蓄電システムにおいて、有効な安全システムである。
【0028】
なお、図8において、安全弁30の代わりに、図5〜図7に示す安全弁30A,30B,30Cを用いることもできる。
【0029】
また図8の実施例では、電圧検出回路52により電圧を検出することにより異常を検出しているが、容器1の内部圧力や、容器1の温度や、短絡電流に起因する磁界や、容器1の歪みや、供給電流を、センサにより検出することにより、異常を検出するようにしてもよい。そして、容器1の内部圧力を上昇させる原因(内部短絡,外部短絡,過大電流,過昇温)となる各種の異常を検出したら、電圧検出回路52は充放電を停止すると共に、電流供給回路55により安全弁30の線材32に電流を流して安全弁30を開状態にすることができる。
【0030】
なお上述した安全弁30,30A,30B,30Cは、、リチウム二次電池などの非水電解質二次電池の容器の他に、電解コンデンサ,鉛電池,ニッケル−水素電池等の水系電解液電池の容器に備える安全弁としても適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上、実施の形態と共に具体的に説明したように、本発明の安全弁では、二次電池などの容器に備えられており容器内の圧力が予め設定した圧力よりも高くなったら破断して開状態となる安全弁であって、電流を流すと溶断する溶断性金属でなる線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を樹脂板の内部に封入してなる構成とした。
この場合、前記樹脂板の内部に封入された線材は、環状または螺旋状または蛇行状に配線したり、
前記樹脂板には、容器の内部圧力により前記樹脂板を破断しやすくするスリット溝が形成されている構成とした。
【0032】
このような構成にしたため、線材に電流を流すことにより、安全弁を開状態とすることができ、容器の内部圧力が危険圧力になる前に圧力開放をすることができ、安全性が高まる。
【0033】
また本発明の安全弁システムでは、二次電池の容器に備えられており、電流を流すと溶断する溶断性金属でなる線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を樹脂板の内部に封入してなる安全弁と、前記容器の内部圧力を上昇させる原因となる異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段により異常検出がされたら、前記線材の両端から線材に電流を流す電流供給手段とを有する構成とした。
この場合、前記異常検出手段は、前記二次電池の端子間電圧または容器内部圧力または容器温度または発生磁界または容器歪みを基に、異常を検出するようにした。また前記二次電池は非水電解質二次電池である構成とした。
【0034】
このような構成にしたため、内部短絡,外部短絡,過電流入力などの異常発生時に、従来の安全弁に比べて速く電池を開放系にすることができ、電解質を速やかに電池外に放出することが可能となり、異常な温度上昇を抑制することができ、二次電池の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる安全弁を示す平面図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】図1のIII −III 断面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかる安全弁を、リチウム二次電池に備えた状態で示す断面図。
【図5】本発明の第2の実施の形態にかかる安全弁を示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施の形態にかかる安全弁を示す平面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態にかかる安全弁を示す平面図。
【図8】本発明の第5の実施の形態にかかる安全弁システムを示す構成図。
【図9】リチウム二次電池を示す破断斜視図。
【図10】モジュール電池を示す斜視図。
【符号の説明】
1 容器
7 安全弁
10 リチウム二次電池
30,30A,30B,30C 安全弁
31 樹脂板
32 線材
32a,32b 端部
33 スリット溝
40 電線
50 充放電制御回路
51 電線
52 電圧検出回路
55 電流供給回路
Claims (7)
- 容器に備えられており容器内の圧力が予め設定した圧力よりも高くなったら破断して開状態となる、樹脂板の内部に線材を封入して構成した安全弁であって、
前記線材は電流を流すと溶断する溶断性金属であり、前記線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を前記樹脂板の内部に封入してなり、
前記線材に電流を流すと、前記線材が溶断するとともに、前記樹脂板のうち前記線材の近傍の部分が溶断し、前記線材を配置していた部分が破断して開状態となることを特徴とする安全弁。 - 二次電池の容器に備えられており容器内の圧力が予め設定した圧力よりも高くなったら破断して開状態となる、樹脂板の内部に線材を封入して構成した安全弁であって、
前記線材は電流を流すと溶断する溶断性金属であり、前記線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を前記樹脂板の内部に封入してなり、
前記線材に電流を流すと、前記線材が溶断するとともに、前記樹脂板のうち前記線材の近傍の部分が溶断し、前記線材を配置していた部分が破断して開状態となることを特徴とする安全弁。 - 請求項1または請求項2において、前記樹脂板の内部に封入された線材は、環状または螺旋状または蛇行状に配線されていることを特徴とする安全弁。
- 請求項1または請求項2または請求項3において、前記樹脂板には、容器の内部圧力により前記樹脂板を破断しやすくするスリット溝が形成されていることを特徴とする安全弁。
- 二次電池の容器に備えられており、樹脂板の内部に線材を封入して構成しており、前記線材は電流を流すと溶断する溶断性金属であり、前記線材の両端を外部に露出しつつ、前記線材の他の部分を前記樹脂板の内部に封入してなり、前記線材に電流を流すと、前記線材が溶断するとともに、前記樹脂板のうち前記線材の近傍の部分が溶断し、前記線材を配置していた部分が破断して開状態となる安全弁と、
前記容器の内部圧力を上昇させる原因となる異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段により異常検出がされたら、前記線材の両端から線材に電流を流す電流供給手段とを有することを特徴とする安全弁システム。 - 請求項5において、前記異常検出手段は、前記二次電池の端子間電圧または容器温度または発生磁界または容器歪みを基に、異常を検出することを特徴とする安全弁システム。
- 請求項5または請求項6において、前記二次電池は非水電解質二次電池であることを特徴とする安全弁システム。
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