JP4646463B2 - 電極材料−錯体複合体、電極、酸化用電極、およびアルカノールの合成方法 - Google Patents

電極材料−錯体複合体、電極、酸化用電極、およびアルカノールの合成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極材料−錯体複合体、該複合体を含む電極、アルカンの酸化によるアルカノールの合成などに用いる酸化用電極、およびこの電極を用いたアルカノールの合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタンは化学的に非常に安定な化合物であるため、メタンをメタノールに直接変換することは比較的難しい。
【0003】
代表的なメタノール合成プロセスとして、改質工程、メタノール合成工程および精製工程の3つの工程から構成されるプロセスを挙げることができる。このプロセスにおいては、原料として天然ガスが用いられ、原料ガスは、脱硫後、改質工程で合成ガス(一酸化炭素と水素との混合ガス)に改質される。次いで、一酸化炭素と水素との混合ガスを約100気圧にまで昇圧することによりメタノールが合成される。また、このプロセスには、大きな発熱が伴う。反応を適切にコントロールするためには反応熱の除去が必要である。このため、反応の途中で低温の原料ガスを用いて反応熱を除去する。
【0004】
このように前記のメタノール合成プロセスは、高温・高圧の多段階プロセスであるため、大規模な設備が必要となり、製造コストが高くなる。
【0005】
メタンからメタノールへの直接変換反応として、無触媒高圧酸化法、固体触媒酸化法、液相均一触媒法、金属錯体系触媒法などが提案されている。
【0006】
無触媒高圧酸化法は、反応温度400〜500℃、反応ガス圧25〜70atmという高温・高圧でメタンを酸化するプロセスである。メタノール収率が10%を越えれば実用化できると考えられるところ、無触媒高圧酸化法によりメタノールを合成した例において、メタン転化率11%、メタノール選択率73%であったことが報告されており、無触媒高圧酸化法はメタノール収率の点からは実用化の可能性はある。しかし、無触媒高圧酸化法は高温・高圧プロセスであるため、設備が大規模になり、小規模のオンサイトメタノール製造には余り適さない。
【0007】
また、固体触媒酸化法によると、メタンと酸素とを原料として用いる場合にはホルムアルデヒドが生成しやすく、メタノール生成の選択率が比較的低い。
【0008】
また、液相均一触媒法の1例として、液相均一触媒として水銀錯体と硫酸とを用いることにより、メタンを一旦硫酸メチルに転換し、硫酸メチルを加水分解することによってメタノールを製造する方法がある。Periana R. A.らは、重硫酸メチルを経るメタンのメタノールへの選択的均一触媒系を開発し、水銀イオンHg(II)を触媒とする系で、メタンの転化率が50%のとき重硫酸メチルの選択率は85%であることを報告している(Science vol.259,No.5093,340-343(1993)"A Mercury-Catalyzed, High-Yield System for the Oxidation of Methane to Methanol." Periana R. A.,Taube D.J.,Evitt E.R.,Loeff Ler D.G.,Wentrcek P.R.,Voss G.,Masuda T.(Catalytica,Inc.,CA))。しかしこの方法では、触媒として水銀錯体を用いているので、環境への負荷が懸念される。
【0009】
また、Science 280, 24 April (1998) 560-563には、比較的熱安定性の良い金属錯体系触媒によるメタンからメタノールの直接合成法が報告されている。この合成法においても、メタンの酸化によるメタノールへの転化反応は、現在のところ百数十℃の温度を必要とする。
【0010】
以上のような工業的なメタノール合成プロセスの有する問題点を解消し得る方法として、微生物学的方法および酵素学的方法が提案されている。J. Biol. Chem., 264(17) 10023-10033, (1989)には、メタン資化菌内に存在するメタンモノオキシゲナーゼ(以下、「MMO」という。)を用いたメタンからメタノールの直接合成法が開示されている。メタン資化菌を用いたメタン/メタノール変換反応は、常温、常圧で進行する。
【0011】
メタン資化菌体内に存在するMMOには、可溶型と膜結合型のコンポーネント型酵素が存在することが知られている。可溶型MMOは、二核の鉄原子を活性サイトとして持つ金属酵素である。可溶型MMOは、酵素の耐熱温度が比較的低い、安定性が比較的低いなどの改善すべき点を有する。膜結合型MMOは、銅原子が酵素活性に大きく関与していると考えられている。
【0012】
近年、MMOの触媒サイクルに関して、活発な議論がなされている。MMOの反応中間体の構造およびその電子状態については、S.J.Lippard(MIT)、J.D.Lipscomb(ミネソタ大学)、L.Que,Jr.(ミネソタ大学)らを中心とする多くの研究者による報告がある。現在推定されているMMOの触媒サイクルを図1に示す。
【0013】
図1に示すように、酸化状態のMMOoxが2電子還元されると還元型のMMOredになる。MMOredが酸素と反応してペルオキソ中間体MMOperoxoとなり、続いて高原子価中間体Qを形成し、高原子価中間体Qが基質を酸化して再び酸化型MMOoxに戻る。この反応サイクルの中では、連続的に電子が供給されること(または連続的に還元剤が供給されること)およびMMOの活性点近傍に酸素が存在することが要件として求められる。
【0014】
MMOの触媒サイクルについては、Lipscombらによりもう一つの還元サイクルの存在が報告されている。このサイクルは、過酸化水素による還元サイクルであり、シャント機構と呼ばれている。図2にシャント機構を含む還元サイクルを示す。
【0015】
シャント機構においては、過酸化水素が電子源および酸素源の役割を果たす。
すなわち、酸化状態のMMOoxが過酸化水素により2電子還元および酸素反応をしてペルオキソ中間体MMOperoxoとなる。
【0016】
米国特許第5,190,870号は、微生物学的方法(発酵法)および酵素学的方法を利用したアルカノールの製造方法を開示している。微生物学的方法は、メタン資化菌を直接用いるとともに、菌体内部の酵素を利用する方法である。微生物学的方法においては、担体に固定化できる菌体の密度、メタン資化菌の菌体内部での酵素密度およびメタン資化菌での酵素誘導条件等が制限されることから、担体に固定化できる酵素密度が制限される。
【0017】
また、酵素を直接利用する酵素学的方法においては、メタン資化菌の大量培養とMMOの大量精製とが必要である。さらに、酵素リアクターを構築するためには、酵素の安定化条件を設定しなければらないなど解決すべき点は多い。これらのことから、微生物学的方法、酵素学的方法ともに実用化はされていない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、大規模な設備を必要とせず、環境に悪影響を与えず、さらに効率的にアルカノールを大量合成できるアルカノールの合成方法などを提供することを主目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者は研究を重ね、以下の▲1▼および▲2▼の知見を見出した。
▲1▼ メタン資化菌の可溶型メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)の活性中心とそれを含む周辺構造を模倣したバイオミメティック触媒を用いることにより、アルカンの酸化によりアルカノールを合成することができる。この方法は、常温、常圧下で、すなわち大規模な設備を用いなくても行うことができる。また、有害な重金属を含まないバイオミメティック触媒を用いるため、環境に負荷を与えない。さらに、この触媒は、生体機能を模倣したものではあるが、酵素ではないため制御が容易であり、その結果、効率的にアルカノールを大量合成することができる。
▲2▼ 前記のバイオミメティック触媒を用いてアルカンのアルカノールへの酸化を連続的に行うためには、この触媒の活性中心である金属を還元し続けなければならない。このため、電極材料にバイオミメティック触媒を担持させた電極材料−触媒複合体を作製し、この電極材料−触媒複合体を成型して電極とし、該電極をアルカンを含む反応溶液に浸漬した状態で、この電極と対向電極との間に電圧を印加し、対向電極に対する電極材料−触媒複合体電極の電位を触媒の活性中心である金属の還元電位とすることによって、触媒を連続的に還元状態にすることができる。
【0020】
前記知見に基づき、本発明は、以下の各項の電極材料−錯体複合体、電極、酸化用電極、およびアルカノールの合成方法を提供する。
項1. 電極材料と錯体とを含み、錯体を構成する配位子の少なくとも1が電極材料に結合されており、錯体が疎水場に位置する電極材料−錯体複合体。
項2. 錯体が、鉄オキソ錯体である項1に記載の電極材料−錯体複合体。
項3. 錯体が、(μ−オキソ)鉄二核錯体、(μ−ヒドロキソ)鉄二核錯体、およびFe=O部位を有する鉄二核錯体からなる群より選ばれた少なくとも1種の錯体であり、鉄中心が6配位構造または5配位構造である項2に記載の電極材料−錯体複合体。
項4. 配位子の少なくとも1つが水分子である項1に記載の電極材料−錯体複合体。
項5. 電極材料が活性炭を含有する項1に記載の電極材料−錯体複合体。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の電極材料−錯体複合体を含む電極。
項7. 項6に記載の有機化合物の酸化用電極。
項8. アルカンの酸化によりアルカノールを合成するための、項7に記載の酸化用電極。
項9. 項1〜5のいずれかに記載の電極材料−錯体複合体の存在下に、アルカンを酸化してアルカノールとするアルカノールの合成方法。
項10. アルカンを含む反応溶液中に項7または8に記載の酸化用電極を浸漬した状態で、対向電極に対する酸化用電極の電位が酸化用電極中の触媒の中心金属の還元電位となるように、酸化用電極と対向電極との間に電圧を印加することにより、アルカンを酸化してアルカノールとするアルカノールの合成方法。
項11. 対向電極に対する酸化用電極の電位が−0.74〜−0.78Vになるように、酸化用電極と対向電極との間に電圧を印加する項10に記載のアルカノールの合成方法。
項12. 対向電極に対する酸化用電極の電位が−0.75Vとなるように、酸化用電極と対向電極との間に電圧を印加する項11に記載のアルカノールの合成方法。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
電極材料−錯体複合体
本発明の電極材料−錯体複合体は、電極材料と錯体とを含み、錯体を構成する配位子の少なくとも1が電極材料に結合しているものである。錯体は、配位子と中心金属とから構成される。
【0023】
錯体は、特に制限されないが、例えば(μ−オキソ)鉄二核錯体、(μ−ヒドロキソ)鉄二核錯体、Fe=O部位などを有する二核錯体などの鉄錯体を例示することができる。金属中心である鉄の配位数も、特に制限されないが、通常5配位または6配位である。
【0024】
錯体を構成する配位子は、少なくとも1の配位子が電極材料に結合されている限り、特に制限されない。例えば、錯体は、電極材料と結合した配位子以外に、水分子、ハロゲンイオン(例えばCl-、F-、Br-、I-)などの電極材料とは結合していない配位子を有していてもよい。
【0025】
配位子として、イミノジ酢酸部位、モノヒドロイミド酢酸部位、アミノメチルピリジン部位などの多座配位部位を有している多座配位子を例示できる。このような多座配位子が、電極材料に結合されていることが好ましい。多座配位部位は、1つの配位子に単独で存在してもよく、1つの配位子に2以上存在してもよい。
【0026】
多座配位部分が2つ集まることにより、二核錯体を形成しやすくなる。例えば、イミノジ酢酸部位を1つ有する配位子が2つ集まったイミノジ酢酸−イミノジ酢酸型配位子、イミノジ酢酸部位を2つ有するイミノジ酢酸−イミノジ酢酸型配位子などを例示することができる。同様に、二核錯体を形成しやすい配位子として、イミノジ酢酸−モノヒドロイミド酢酸型配位子、モノヒドロイミド酢酸−モノヒドロイミド酢酸型配位子、アミノメチルピリジン−アミノメチルピリジン型配位子などの配位子を例示することができる。これらの配位子も、多座配位部位を1つ有する配位子が二つ集まることにより形成されていてもよく、多座配位部位を2つ有する配位子であってもよい。
【0027】
イミノジ酢酸部位を1つ有し、電極材料に結合した配位子として、例えば、以下の式Aで示す配位子を例示することができる。
(式A)
(YaO)a(RaO)bRb cSi(CH2)naN(CH2COOH)2
[式中、Yaは、電極材料の一部を示し、Raは、低級アルキル基を示し、Rbは、水素または低級アルキル基を示し、aは、1, 2または3を示し、bは、0, 1または2を示し、cは、0, 1または2を示し、a+b+c=3であり、naは、1〜10のいずれかの整数を示す。]
モノヒドロイミド酢酸部位を1つ有し、電極材料に結合した配位子として、例えば、以下の式Bで示す配位子を例示することができる。
(式B)
(YaO)a(RaO)bRb c Si(CH2)naN(CH2COOH)RcOH
[式中、Yaは、電極材料の一部を示し、Raは、低級アルキル基を示し、Rbは、水素または低級アルキル基を示し、Rcは、低級アルキレン基を示し、aは、1, 2または3を示し、bは、0, 1または2を示し、cは、0, 1または2を示し、a+b+c=3であり、naは、1〜10のいずれかの整数を示す。]
式Aまたは式BにおいてRaで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。
【0028】
式Aまたは式BにおいてRbで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。これらの中では、メチル基、エチル基が好ましい。
【0029】
式BにおいてRcで示される低級アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などを例示でき、これらの中では、エチレン基が好ましい。
【0030】
式AまたはBにおいて、naは、通常1〜10のいずれかの整数であり、好ましくは1〜6のいずれかの整数であり、より好ましくは2〜4のいずれかの整数である。
【0031】
1分子当たり二つのアミノメチルピリジン部位を有し、電極材料に結合した配位子として、例えば、以下の式Cで示される配位子を例示することができる。
【0032】
【化1】
Figure 0004646463
【0033】
[式中、Yaは、電極材料の一部を示し、Raは、低級アルキル基を示し、Rbは、水素または低級アルキル基を示し、aは、1, 2または3を示し、bは、0, 1または2を示し、cは、0, 1または2を示し、naは、1〜10のいずれかの整数を示し、nbは、1〜6のいずれかの整数を示す。]
式CにおいてRaで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。これらの中では、メチル基、エチル基が好ましい。
【0034】
式CにおいてRbで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。これらの中では、メチル基、エチル基が好ましい。
【0035】
式Cにおいてnaは、通常1〜10のいずれかの整数であり、好ましくは1〜6のいずれかの整数であり、より好ましくは2〜4のいずれかの整数である。
【0036】
nbは、通常1〜6のいずれかの整数であり、好ましくは2〜4のいずれかの整数であり、より好ましくは3である。
【0037】
電極材料と配位子との結合の態様は、特に制限されず、例えば、電極材料と配位子とが共有結合により結合している態様、配位子が電極材料に単に吸着している態様などを例示することができる。
【0038】
電極材料への配位子の導入量は、特に制限されないが、電極材料の単位表面積(m2)当たり、通常1×10-4〜1×10-6mol程度、好ましくは1×10-4〜1×10-5mol程度、より好ましくは5×10-5〜9×10-5mol程度である。例えば、多座配位部位を1つ有する配位子が2つ集まって二核錯体を形成する場合には、配位子の導入量が少なすぎると、二核錯体を形成し難い場合がある。
【0039】
電極材料は、錯体を担持できるものであればよいが、例えば活性炭、黒鉛、カーボンブラック、石炭系または石油系コークスなどの炭素材料からなるものを使用できる。特に、活性炭が好ましい。
【0040】
活性炭は、石炭やヤシ穀などの炭素物質を原料として高温でガスや薬品と反応させることにより得られるものであり、微細孔(直径10〜200Å)を有する炭素である。この微細孔は、炭素内部に網目状に構成されており、その表面に種々の物質を吸着もしくは固定化させることができる。活性炭としては、粉末活性炭、粒状活性炭、繊維状活性炭および成形活性炭などの形状のものを例示できるが、特に粉末活性炭などが好ましい。
【0041】
炭素材料のように電極材料が比較的疎水性の場合には、電極材料自身が錯体周辺の疎水場を形成することができる。なお、電極材料が親水性の場合には、電極材料または配位子に疎水基を結合させることによって、錯体周辺に疎水場を形成することができる。
【0042】
本発明の電極材料−錯体複合体は、例えば、電極材料、配位子および金属源を一度に混合する方法、これらの各成分を任意の順序で混合する方法などにより製造することができる。各成分を混合する順序としては、例えば、▲1▼配位子と電極材料とを先ず結合させ、これに金属中心を導入することによって複合体を製造する方法、▲2▼先ず、配位子と金属源を用いて錯体を生成し、得られた錯体の配位子を電極材料と結合させる方法などを例示できる。
【0043】
配位子中の金属に配位する部位などは、エステル基、エーテル基などの保護基により保護されていてもよい。保護基は、任意の段階において除去することができる。例えば、金属中心を導入する直前に保護基を除去すればよい。
【0044】
電極材料と配位子とを結合させる方法は、用いる電極材料の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、電極材料と配位子または配位子前駆体とを溶媒中などにおいて放置すればよい。また、必要に応じて、撹拌してもよい。反応温度は、特に制限されず、通常50〜200℃程度、好ましくは100〜150℃程度である。反応時間は、特に制限されないが、通常1〜50時間程度、好ましくは10〜30時間程度である。
【0045】
配位子前駆体としては、例えばアルコキシシラン部位を有する化合物を例示できる。このような配位子前駆体を用いる場合には、配位子は、電極材料表面に物理的に吸着するのみならず、電極材料表面に存在するOH基とアルコキシシラン部位とが反応することにより電極材料と配位子前駆体とが共有結合により結合すると考えられる。
【0046】
配位子前駆体アルコキシシラン部位を有する配位子前駆体として、例えば、以下の(式A')〜(式C')で示される化合物を例示することができる。
(式A')
(RaO)maRb (3-ma)Si(CH2)naN(CH2COOA)2
(式B')
(RaO)maRb (3-ma)Si(CH2)naN(CH2COOA)RcOH
[式中、Raは、低級アルキル基を示し、Rbは、水素または低級アルキル基を示し、Rcは、低級アルキレン基を示し、Aは、水素または低級アルキル基を示し、maは、1, 2または3を示し、naは、1〜10のいずれかの整数を示す。]
aで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。
【0047】
bで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。
【0048】
Rcで示される低級アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などを例示することができる。これらの中では、エチレン基が好ましい。
【0049】
Aで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。
【0050】
maは、通常1,2または3であり、好ましくは2または3である。
【0051】
naは、通常1〜10のいずれかの整数を示し、好ましくは1〜6のいずれかの整数であり、より好ましくは2〜4のいずれかの整数である。
【0052】
【化2】
Figure 0004646463
【0053】
[式中、Raは、低級アルキル基を示し、Rbは、水素または低級アルキル基を示し、maは、1, 2または3を示し、naは、1〜10のいずれかの整数を示し、nbは、1〜6のいずれかの整数を示す。]
式C'においてRaで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。これらの中では、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0054】
式C'においてRbで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。これらの中では、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0055】
maは、通常1、2または3であり、好ましくは2または3である。
【0056】
naは、通常1〜10のいずれかの整数であり、好ましくは1〜6のいずれかの整数であり、より好ましくは2〜4のいずれかの整数である。
【0057】
nbは、通常1〜6のいずれかの整数であり、好ましくは2〜4のいずれかの整数であり、より好ましくは3である。
【0058】
或いは、以下の式で示されるような化合物を電極材料に導入し、加水分解することによって、イミノジ酢酸部位を有する配位子とモノヒドロイミド酢酸部位を有する配位子とを同時に電極材料に導入してもよい。
【0059】
【化3】
Figure 0004646463
【0060】
[式中、Raは、低級アルキル基を示し、Rbは、水素または低級アルキル基を示し、Aは、水素または低級アルキル基を示し、maは、1, 2または3を示し、naは、1〜10のいずれかの整数を示す。]
式DにおいてRaで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。
【0061】
式DにおいてRbで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。
【0062】
式DにおいてAで示される低級アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などを例示することができる。
【0063】
式Dにおいてmaは、通常1,2または3であり、好ましくは2または3である。
【0064】
式Dにおいてnaは、通常1〜10のいずれかの整数を示し、好ましくは1〜6のいずれかの整数であり、より好ましくは2〜4のいずれかの整数である。
【0065】
(式A')、(式B')または(式D)において、Aが低級アルキル基の場合には、金属中心を導入する前に、加水分解などにより保護基である低級アルキル基を脱離する必要がある。
【0066】
金属中心を導入するには、溶媒中において、配位子または電極材料と結合した配位子と金属源とを放置すればよい。また、必要に応じて、撹拌してもよい。反応温度は、特に制限されず、通常0〜100℃程度、好ましくは10〜50℃程度である。反応時間は、特に制限されないが、通常1〜50時間程度、好ましくは10〜30時間程度である。溶媒は、特に制限されず、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;メタノール、エタノールなどの低級アルコールなどを例示することができる。
【0067】
金属源として、例えば、Fe(III)Cl3、Fe(II)Cl2などの鉄ハロゲン化物;tetraethylammonium(μ-oxo)bis[trichloroferrate(III)]などの(μ-オキソ)鉄二核錯体;硝酸鉄、亜硝酸鉄、過塩素酸鉄、硫酸鉄などを例示できる。
【0068】
本発明の電極材料−錯体複合体は、有機化合物を酸化するための触媒として好適に用いることができる。このような酸化の例として、アルカンの酸化によるアルカノールの生成などを挙げることができる。
【0069】
本発明の電極材料−錯体複合体は、特に、アルカンを酸化することによりアルカノールを合成する触媒として好適に用いることができる。原料となるアルカンとして、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサンなどを例示することができる。原料となるアルカンは、直鎖状、分枝状のいずれであってもよい。これらの中では、メタン、エタンなどが好ましく、特にメタンが好ましい。
【0070】
電極
本発明の電極材料−錯体複合体は、必要に応じて適当なバインダーを用いることにより成型し、電極として用いることができる。また、このようにして成型したものを別途用意した電極に導通状態で固定し、電極の一部とすることもできる。
【0071】
バインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性樹脂などを使用できる。
【0072】
バインダーを添加する場合には、その添加量は、電極材料−錯体複合体に対して、通常1〜15重量%程度、好ましくは5〜10重量%程度とする。
【0073】
この電極は、有機化合物の酸化用の電極、特にアルカンを酸化することによりアルカノールを合成するための酸化用電極として好適に用いることができる。
【0074】
アルカノールの合成方法
本発明のアルカノールの合成方法は、本発明の電極材料−錯体複合体の存在下に、アルカンを酸化してアルカノールとする方法である。
【0075】
詳述すれば、アルカンを含む反応溶液中に本発明の電極(酸化用電極)を浸漬した状態で、対向電極に対する酸化用電極の電位が酸化用電極中の触媒の中心金属の還元電位となるように、酸化用電極と対向電極との間に電圧を印加することにより、アルカンを酸化してアルカノールとする方法である。
【0076】
反応溶液としては、目的のアルカノールの原料となるアルカンと電解質とを適当な溶媒に溶解した溶液を用いる。アルカンの濃度はできるだけ高くすればよく、飽和濃度であることが望ましい。
【0077】
電解質としては、特に制限されないが、例えばテトラフルオロホウ酸−n−ブチルアンモニウムなどを使用できる。
【0078】
電解質の濃度は、溶媒に対して、通常0.01〜0.3M程度より好ましくは0.05〜0.2M程度とする。また、溶媒は、特に制限されないが、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロルエタン、ベンゼン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、水などを使用できる。
【0079】
また、対向電極も、本発明の酸化用電極と同じ反応溶液中に浸漬する。
【0080】
対向電極は、電解装置における陽極材料として公知の白金、黒鉛、ニッケルなどの材料からなるものを使用できる。
【0081】
具体的には、反応容器内に前記説明した反応溶液を満たし、この反応溶液内に本発明の酸化用電極および対向電極を配設する。また、該両電極間に直流電源を接続した装置を使用する。
【0082】
酸化用電極と対向電極間には、対向電極に対する酸化用電極の電位が、−0.74〜−0.78V程度、より好ましくは−0.75〜−0.77V程度となるように、電圧を印加する。電極材料−錯体複合体中の錯体の中心金属が鉄である場合には、対向電極に対する酸化用電極の電位がFe(III)の還元電位である−0.75V程度となるよ
うにするのが最も好ましい。
【0083】
また、反応中は、反応溶液を撹拌すること又は反応溶液内に直接酸素を吹き込むことにより、反応溶液中に酸素を導入することが望ましい。
【0084】
酸化用電極中の錯体の中心金属がFeである場合には、Fe(II)がFe(III)に酸化されるとともに、アルカン分子が酸素と反応してアルカノールが生成する。ここで、対向電極に対する酸化用電極の電位がFe(III)の還元電位となるように両電極間に電圧を印加することにより、Fe(III)は還元されてFe(II)となる。このように、対向電極に対する酸化用電極の電位を錯体の中心金属の還元電位に保つことにより、錯体の酸化−還元サイクルを確立することができ、その結果、連続的にアルカンの酸化によりアルカノールを合成することができる。
【0085】
本発明方法は、バッチ式および連続式のいずれの方法で反応を行ってもよい。
【0086】
【発明の効果】
本発明によると、大規模な設備を必要とせず、環境に悪影響を与えず、さらに効率的に有機化合物を大量に酸化できる。特に、アルカンの酸化によりアルカノールを大量合成できる。
【0087】
詳述すれば、本発明によると、生体機能を模倣したバイオミメティック触媒を使用するため、常温、常圧の下で有機化合物を酸化することができる。特に、アルカンを酸化してアルカノールを合成することができる。これにより大規模な設備を必要としない。
【0088】
本発明によると、有害な重金属を含まないバイオミメティック触媒を使用するため、環境に負荷を与えない。
【0089】
本発明によると、電圧印加により連続的に触媒を還元するため、安価に、かつ効率的に触媒を再生できる。また、触媒は酵素と異なり制御が容易である。これらのことから、連続的に効率よく有機化合物を酸化することができる。特に、連続的にアルカンを酸化することにより、効率的にアルカノールを合成することができる。
【0090】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
[I]電極材料−錯体複合体の調製
本発明の電極材料−錯体複合体を、▲1▼電極材料である活性炭への配位子の導入、▲2▼金属中心の導入の手順で調製した。
1.電極材料の準備
電極材料としては、粉末活性炭であるケッチェン・ブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製)および通電賦活炭(三協産業社製)をそれぞれ用いた。ケッチェンブラックは、従来の活性炭と比べて、極少量で優れた導電性を示すとともに、有機物との混合および練りによる導電性の低下が少ないという特徴を有している。通電賦活炭は水蒸気噴霧雰囲気下で通電し賦活させた活性炭である。
【0091】
表1に各活性炭の特徴をまとめて示す。表1において、比表面積、細孔径および細孔容積はBET法(株式会社島津製作所製、ASAP2000)により測定した値である。
【0092】
【表1】
Figure 0004646463
【0093】
2.配位子前駆体の合成
以下のようにして、保護基としてエステル基を有するモノヒドロイミド酢酸−イミノジ酢酸型配位子前駆体を合成した。アセトニトリル(70ml)中にアミノプロピルトリエトキシシラン(30g)を溶かした。この溶液に、2当量のトリエチルアミンを加え、さらに1当量のクロロ酢酸エチルエステルを加えて、室温(約25℃)において攪拌した。生成物を減圧蒸留することにより高純度の(EtO)3SiCH2CH2CH2NH(CH2COOEt)を得た。
【0094】
得られた(EtO)3SiCH2CH2CH2NH(CH2COOEt)2当量と1当量のBrCH2CH2OCOCH2Clとを反応させた。アセトニトリル溶媒中、トリエチルアミン存在下、70℃において50時間攪拌した。反応生成物を精製することにより、(EtO)3SiCH2CH2CH2(CH2COOEt)N‐CH2CH2OCOCH2‐N(CH2COOEt)CH2CH2CH2Si(OEt)3を得た。
3.原料錯体の合成
文献(William H. Armstrong and J. Lippard ; Inorganic Chemistry, 24, 6, 1983)に従い、Tetraethylammonium(μ-Oxo)bis{trichloroferrate(III)}を調製した。すなわち、以下のように調製した。
【0095】
金属ナトリウムをメタノールに溶解することで調製した1当量のNaOCH3/CH3OH溶液を1当量のFeCl3・6H2O/CH3OH溶液中にゆっくりと滴下し混合した。これに1当量のテトラエチルアンモニウムクロライドを添加した後、メタノールを留去した。得られたスラリー状のオイルに適量のアセトニトリルを添加し、生じた塩化ナトリウムを除去した後、アセトニトリルを再び留去した。
【0096】
さらに、未反応のテトラエチルアンモニウムクロライドを除去するために適量のクロロホルムに溶解し、分液によりオイル状の粗精製物を得た。このオイルに適量のテトラヒドロフランを加えることで生じる沈殿物を回収し、再沈殿させることによりTetraethylammonium(μ-Oxo)bis{trichloroferrate(III)}を調製した。
4.電極材料 - 錯体複合体の調製
上記の活性炭、配位子前駆体及び原料錯体を用いて電極材料−錯体複合体を製造した。
【0097】
<配位子の導入>
上記1で得られた(EtO)3SiCH2CH2CH2(CH2COOEt)N‐CH2CH2OCOCH2‐N(CH2COOEt)CH2CH2CH2Si(OEt)3を活性炭の表面のOH数の6mol%程度になるように活性炭表面に導入した。活性炭5gと配位子前駆体0.55gとをトルエン50ml中において120℃で一晩放置した。
【0098】
<配位子の加水分解>
活性炭上に導入した配位子中の、保護基であるエステルを塩酸を用いて加水分解した。4mol/lの塩酸(3.8ml)とTHF(15ml)との混合溶媒中で、2.2gの活性炭を70℃において一晩放置した。加水分解により、イミノジ酢酸部位を有する配位子とモノヒドロイミド酢酸部位を有する配位子とを導入した活性炭を得た。
【0099】
<鉄中心の導入>
合成した原料錯体:Tetraethylammonium(μ-Oxo)bis{trichloroferrate(III)}を活性炭に結合した配位子へ導入した。予め配位子を導入した活性炭1gと上記原料錯体0.11gとを50mlのアセトニトリル中で、室温(約25℃)で一晩放置した。
【0100】
以上の操作により、活性炭−(μ−オキソ)鉄二核錯体複合体が得られた。
[II]サイクリック・ボルタモメトリー
MMOミメティック触媒である錯体を電気化学的に還元し、触媒反応を進行させるためには、活性点の酸化還元挙動を知ることが必要である。前記のようにして調製した電極材料−錯体複合体の酸化還元挙動を調べるために、サイクリック・ボルタモメトリー(CV)を測定した。
【0101】
先ず、[I]で調製した電極材料−錯体複合体を、ポリテトラフルオロエチレンをバインダーとして用いて成型した。すなわち、該複合体に対して5〜10重量%のポリテトラフルオロエチレンを添加し、混練したものを圧力成形器を用いて半円板状(0.25g、直径1cm、厚み約1mm)に成形した。この半円板状の成形物を2枚の白金メッシュ状電極(0.1mmΦ×2.0cm×5.0cm)に挟むことにより該電極に導通状態で固定した。該成形物を白金メッシュ状電極に挟んだものを作用電極とした。電極材料としては、活性炭のケッチェンブラックを用いた。
【0102】
対向電極には、作用電極に用いたと同様の白金メッシュ状電極(0.1mmΦ×2.0cm×5.0cm)を用いた。参照電極にはキャロメル電極を用いた。
【0103】
また、反応溶液は、モレキュラーシーブス4Aにより脱水したアセトニトリルに、0.1M−テトラフルオロホウ酸−n−ブチルアンモニウム(TBTF、ナカライテスク社製、ポーラエオグラフ用特製試薬)を溶解したものを用いた。
【0104】
前記電極材料−錯体複合体のサイクリックボルタモグラムを図3に示す。サイクリックボルタモメトリーの測定には、POTENTIOSTAT/GALVANOSTAT HA-501(北斗電工社製)およびFUNCTION GENERATOR HB-104(北斗電工社製)を用いた。また記録にはX−Yレコーダ Model 3023(横河電機社製)を用いた。スキャン速度は50mM/秒とした。図3から、−0.75Vにおいて錯体中の鉄の還元が生じたことが分かる。
[III]ヘキサンの水酸化反応
<試験例1>
アセトニトリルに0.1Mテトラフルオロホウ酸−n−ブチルアンモニウム(TBTF)および3Mのヘキサンを溶解した溶液を反応溶液として用いた。また、錯体の活性中心のFeを酸素配位子で満たすために(N配位子をO配位子と置換するために)、反応溶液に酢酸を添加した。
【0105】
作用電極、対向電極および参照電極は、サイクリック・ボルタモメトリー測定時と同様のものを用いた。ただし、作用電極は、電極材料としてケッチェンブラックを含むものの他、通電賦活炭を含むものも用いた。
【0106】
反応は、1時間、作用電極に−0.75Vの定電圧を印加することにより行った。
経時的に反応溶液中に含まれる成分を分析した。反応溶液の分析は、ガスクロマトグラフィー(GLサイエンス社製、GC353B)およびJEOL JMS-AMII150型GCG質量分析計(日本電子社製)を用いて行った。GCおよびGC/MSの分析条件は以下の通りである。
Figure 0004646463
反応溶液中に含まれる1−ヘキサノールの濃度の推移を図4の(a)に示す。図4の(a)によると、反応液中の1−ヘキサノールの濃度は経時的に増加しており、1−ヘキサノールが連続的に生成していることが分かる。なお、2−ヘキサノールおよび3−ヘキサノールは検出されなかった。
【0107】
また、GC分析の結果、1−ヘキサノール以外の化合物が、反応時間とともに蓄積することが分かった。この化合物を定性するために、GC/MS分析を行ったところ、この化合物は1−ヘキセンであることがわかった。図4の(b)に、反応溶液中に含まれる1−ヘキセンの濃度の推移を示す。
【0108】
また、図4の(a)および(b)から、活性炭としてケッチェン・ブラックを用いた場合より、通電賦活炭を用いた場合の方が触媒の活性が高いことが分かる。
【0109】
<試験例2>
[I]の電極材料−錯体複合体の調製において、電極材料の活性炭(通電賦活炭)に配位子を導入せず、活性炭に直接、原料錯体であるTetraethylammonium(μ-Oxo)bis{trichloroferrate(III)}を物理的に吸着させた電極材料−金属複合体を調製した。電極材料−金属複合体の調製は、配位子を導入しない以外は、[I]の電極材料−錯体複合体の調製時と同じ条件で行った。また、この電極材料−金属複合体を用いて作用電極を作製した。作用電極の作製は、[II]のサイクリックボルタモメトリー測定時と同条件で行った。
【0110】
電極材料−錯体複合体を含む作用電極および電極材料−金属複合体を含む作用電極のそれぞれを用いて、[III]ヘキサンの水酸化と同様の操作を行った。
【0111】
反応溶液の成分の分析結果を図5に示す。図5の(a)は1−ヘキサノールの濃度の推移を示し、図5の(b)は1−ヘキセンの濃度の推移を示す。
【0112】
図5から、電極材料−金属複合体を用いた場合には、1−ヘキサノールおよび1−ヘキセンを生成しているが、配位子を用いない電極材料−金属複合体を用いた場合には、1−ヘキサノールおよび1−ヘキセンの双方を生成していないことが分かる。このことから、MMOミメティック触媒において、中心金属を配位子を用いて電極材料に結合させることが必要であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】メタンモノオキシゲナーゼの触媒サイクルの1例を示す図である。
【図2】メタンモノオキシゲナーゼの触媒サイクルの他の例を示す図である。
【図3】本発明の電極材料−錯体複合体のサイクリックボルタモメトリーを示す図である。
【図4】本発明の電極を用いてヘキサンを含む反応溶液に通電した場合の反応溶液中の1−ヘキサノール(a)および1−ヘキセン(b)の濃度の推移を示すグラフである。
【図5】本発明の電極材料−錯体複合体を含む電極および電極材料−金属複合体を含む電極のそれぞれを用いて、ヘキサンを含む反応溶液に通電した場合の反応溶液中の1−ヘキサノール(a)および1−ヘキセン(b)の濃度の推移を示すグラフである。

Claims (11)

  1. アルカンの酸化によりアルカノールを合成するための酸化用電極であって、
    前記酸化用電極が、電極材料−錯体複合体を含み、
    前記電極材料−錯体複合体が、電極材料と錯体とを含み、錯体を構成する配位子の少なくとも1が電極材料に結合されており、錯体が疎水場に位置するものである、
    酸化用電極
  2. 錯体が、鉄オキソ錯体である請求項1に記載の酸化用電極
  3. 錯体が、(μ−オキソ)鉄二核錯体、(μ−ヒドロキソ)鉄二核錯体、およびFe=O部位を有する鉄二核錯体からなる群より選ばれた少なくとも1種の錯体であり、鉄中心が6配位構造または5配位構造である請求項2に記載の酸化用電極
  4. 配位子の少なくとも1つが水分子である請求項1に記載の酸化用電極
  5. 電極材料が活性炭を含有する請求項1に記載の酸化用電極
  6. 前記配位子が、イミノジ酢酸部位、モノヒドロイミド酢酸部位及びアミノメチルピリジン部位から選択される少なくとも1種の多座配位部位を有している多座配位子である請求項1に記載の酸化用電極。
  7. 前記錯体が、テトラエチルアンモニウム(μ−オキソ)ビス[トリクロロフェラート(III)] (Tetraethylammonium (μ-oxo) bis [trichloroferrate (III)]) である請求項1に記載の酸化用電極。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の酸化用電極を用いて、アルカンを酸化してアルカノールとするアルカノールの合成方法。
  9. アルカンを含む反応溶液中に請求項1〜7のいずれかに記載の酸化用電極を浸漬した状態で、対向電極に対する酸化用電極の電位が酸化用電極中の触媒の中心金属の還元電位となるように、酸化用電極と対向電極との間に電圧を印加することにより、アルカンを酸化してアルカノールとするアルカノールの合成方法。
  10. 対向電極に対する酸化用電極の電位が−0.74〜−0.78Vになるように、酸化用電極と対向電極との間に電圧を印加する請求項に記載のアルカノールの合成方法。
  11. 対向電極に対する酸化用電極の電位が−0.75Vとなるように、酸化用電極と対向電極との間に電圧を印加する請求項10に記載のアルカノールの合成方法。
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