JP4642703B2 - 農産物の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、収穫後における農産物の生長を抑制し、その商品価値を長期間に亘って維持するための農産物の処理方法に関する。
根茎類野菜(ここでは、タマネギ・ラッキョウ・ニンニク等の鱗茎菜類、及びジャガイモ等の根菜類等の、主にその地下部分を食用とする野菜を指す)の多くは、収穫後は休眠期間に入り生長が一時的に休止するが、その後、時間の経過と共に休眠から覚醒し、萌芽又は発芽(以下、単に萌芽とよぶ)や発根が起こる。このような発根や萌芽が起こると、該農産物には、早期に変色や委凋などの外観上の劣化が生じると共に、糖質や栄養成分が失われて風味が低下し、その食材としての商品価値が著しく低下してしまう。このように、発根・萌芽は、根菜類野菜等の農産物の保存性を低下させる大きな原因となるため、収穫後はこのような発根・萌芽を抑制することが重要となる。
従来、このような発根・萌芽を抑制する方法として、収穫後の根茎類野菜を化学的農薬類(例えばマレイン酸ヒドラジドを主成分とする萌芽抑制剤)で処理することにより、植物ホルモン(例えば、ジベレリン)を不活性化するなどして休眠の覚醒を抑えていた。しかし、近年、このような農薬類の発癌性が懸念されるようになり、使用の禁止や、使用量の制限が行われるようになってきており、近年では、特許文献1に記載のような低温貯蔵や、不凍結状態での氷温貯蔵、加熱、乾燥処理などによって、収穫後の根茎類野菜が休眠から覚醒するのを遅らせる方法が採られている。
一方、ブロッコリーやカリフラワー等の花菜類野菜は、花蕾が開花することによって劣化が助長され、切り花等の花卉は、開花が終了すればその商品価値が著しく低下する。そのため、これら花菜類野菜や花卉においては、収穫後、長期間に亘って開花を抑制したり、開花状態を維持したりすることが重要となる。
そこで、従来より、生産地や消費地において、チオ硫酸塩等の化学物質処理を施したり、予冷等の低温処理や低温貯蔵を行ったりすることによって、このような花菜類野菜や花卉の開花を抑制及び/又は維持すると共に、褪色・萎れ・軟化・腐食細菌の増殖などを抑えて鮮度の保持を図る方法が広く行われている。また、MA包装(Modified Atmosphere Packaging)と呼ばれる、農作物の呼吸と包装材のガス透過性を利用して包装内を低酸素・高二酸化炭素状態とし、該農産物の呼吸を抑制することで鮮度保持を図る手法も知られている。
しかし、以上のような従来の根茎類野菜の発根・萌芽抑制方法や、花菜類野菜及び花卉の開花抑制・維持方法では、十分な効果が得られない場合もあり、その作業性やコストの点からも多くの問題が残されている。そのため、より効果的かつ簡便な農産物の発根・萌芽抑制方法、及び開花抑制・維持方法の開発が望まれている。
特開平06-007081号公報
本発明は上記のような実情を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、農薬等を使用することなく、簡単な処理によって農産物の発根・萌芽を抑制する方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る農産物の処理方法は、収穫後のニンニクに対して、略単一極性の単発パルス状磁場を該磁場の中心軸上におけるピーク値で0.2〜0.24テスラの強度で1回当たりの印加時間を20〜300ミリ秒として1〜5回印加することによって、該ニンニクの発根及び/又は萌芽の抑制を行うことを特徴とする。
上記のような、本発明に係る農産物の処理方法を、ニンニク等の根茎類野菜に対して適用することにより、該根茎類野菜の発根・萌芽を抑制することができ、更に、発根・萌芽に伴う変色や委凋などの外観上の劣化や、糖質や栄養成分の損失、風味の低下などを防止して、食材としての野菜の価値を長期間に亘って維持することが可能となる
また、本発明の農産物の処理方法によれば、農薬等を使用することなく農作物の発根・萌芽の抑制を図ることが可能となり、安全性の高い農産物を供給することができる。更に、大がかりな設備を必要とせず、ごく短時間の処理によって農産物の長期保存を実現することができるため、上記従来の無農薬処理の場合のように、保存期間中に亘って低温状態や乾燥状態を維持する必要がなく、作業性・経済性の点においても優れている。
本発明の農産物処理方法は、農産物を収穫した後、適当な時期に単発パルス状磁場で処理することにより、該農産物の生長を抑制し、その商品価値の低下を防ぐものである。
本発明における「単発パルス状磁場」の「単発」とは、該パルス状磁場が周期性を必要としないことを意味しており、本発明の農作物の処理方法においては、必要に応じて「単発パルス状磁場」を農産物に複数回加えてもよい。
また、上記単発パルス状磁場は、特に方向性を規定せずに農作物に対してランダムな方向に印加してもよく、あるいは、対象となる農産物の生長軸と略平行になるようにしてもよい。後者の場合、該磁場は、磁力線が農産物の生長方向と同じ順方向になるように印加しても、逆方向になるように印加してもよいが、生長方向と逆方向になるように印加した方が、より高い効果を得ることができる。なお、本発明において農産物の「生長方向」とは、該農産物の茎、葉、花蕾等については上方向を、根については下方向を意味しており、例えば、花菜類野菜や花卉において「生長方向」とは、花蕾の生長方向を指す。更に、該単発パルス状磁場の印加方向は、対象となる農作物の品目や品種に応じて切り替えるようにしてもよい。
なお、根茎類野菜に対して本発明の処理方法を適用することで、該根茎類野菜の発根及び/又は萌芽を抑制する場合には、上記単発パルス状磁場の強度を、該磁場の中心軸上におけるピーク値で0.05〜0.28テスラ、より好ましくは0.15〜0.25テスラの範囲とすることが望ましく、花菜類野菜又は花卉に対して本発明の処理方法を適用することで、該花菜類野菜又は花卉の開花の抑制及び/又は維持を行う場合には、上記単発パルス状磁場の強度を、該磁場の中心軸上におけるピーク値で0.03〜0.5テスラ、より好ましくは0.05〜0.25テスラの範囲とすることが望ましい。
また、本発明の農産物の処理方法における単発パルス状磁場の単位印加時間は20〜300ミリ秒の範囲とし、状況(収穫後の経過時間など)に応じて1〜5回程度(より望ましくは3回前後)の複数回の印加を行うことが好ましい。
上記のような単発パルス状磁場の農産物への印加は、収穫後のどの時期に行ってもよく、更に従来からの加熱や乾燥あるいは冷蔵保管による発根・萌芽の抑制方法や、低温保存による開花の抑制・維持方法などと組み合わせることで、より高い効果を得ることもできる。例えば、これら従来の方法による長期保管後に本発明の単発パルス状磁場による処理を行ってもよい。また、上述のMA包装等による包装を施した農作物に対し、包装状態のまま本発明の単発パルス状磁場による処理を施すこともできる。
本発明に係る農産物の処理装置は、上記のような農産物の処理方法を実現するためのものである。上記磁場発生用電磁コイルの形状は、円筒形の他、角柱、角錐、円錐、樽型、あるいはそれらを組み合わせたものであってもよく、2連式のヘルムホルツコイルや、それらの複合型でもよい。また、該電磁コイルは上下又は左右対向等の分割方式としてもよい。更に、電磁コイルの発熱を考慮した風冷手段や水冷手段を設けた構成としてもよい。また、本発明の農産物の処理装置は、磁場発生装置をトンネル形状として該トンネル内にベルトコンベヤを通し、該ベルトコンベヤ上に農産物を載せて磁場発生装置内を通過させることによって単発パルス状磁場を印加するようにしてもよい。
また、本発明の農産物の処理装置に係る電磁発生用電磁コイルにおいては、その発熱抑制のために、コイル線材として銅やアルミニウム等の電気抵抗の低い材質の丸線や角線を用いることが望ましく、更に、ホローコンダクタのように内部に冷却水通路を形成可能な中空導線を用いることもできる。
以下、本発明の一実施例である農産物の処理装置、及びそれを用いた農産物の処理方法について図面を用いて説明する。本実施例の農産物の処理装置は、図1に示すように、単発パルス状磁場発生電源10と、磁場発生コイル20、及び両者の間に設けられたスイッチ30から成り、該磁場発生コイル20は、その内部に磁場処理の対象となる農産物40を収納することができる形状となっている。
図2に上記単発パルス状磁場発生電源10の具体的な回路構成の一例を示す。単発パルス状磁場発生電源10は、サイリスタによる双方向位相制御方式の入力部11a、絶縁トランス11b、及び単相全波整流器11cを備えた電力可変型のAC入力部11、多数の耐電圧の高い整流器GrとコンデンサCを組み合わせて直流の高電圧を得られるようにしたコッククロフト・ウォルトン回路などから成る直流高電圧発生回路12、複数のコンデンサ(衝撃電流発生に適したオイルコンデンサを用いることが望ましい)CとスイッチSW(通常、交流電磁接触器を使用する)から成るコンデンサ充放電回路13、サイリスタSCRを用いたスイッチ回路14、及びダイオードDを用いて正の波形を出力する正クランプ回路から成るクローバー回路15で構成されている。
このようなコンデンサ蓄勢式の単発パルス状磁場発生電源を使用することにより、装置全体を小型軽量化することができると共に、商用電源を使用して、生産出荷地から最終的な販売地までのいずれの時点においても手軽に本発明の発根・萌芽抑制のための単発パルス状磁場処理を行うことが可能となる。
以上のようなコンデンサ蓄勢方式の単発パルス状磁場発生電源10を用いることにより、上記磁場発生コイル20の中心軸20a上には、図3に示すような波形を有する、略単一極性で高い磁場強度を持つ単発パルス状磁場Puが生成される。
なお、本発明に係る単発パルス状磁場発生電源10及び磁場発生コイル20において得られるパルス状磁場Puの波形としては、図3に示すものの他に、例えば、図4に示すようなものが考えられる。図2に示すコンデンサ蓄勢方式の単発パルス状磁場発生電源10において、クローバー回路15を省略した場合は、図4の(a)に示すような波形の単発パルス状磁場Puを発生させることができ、また、放電回路を様々に工夫することにより、図4の(b)〜(d)に示すような波形の単発パルス状磁場Puを発生させることができる。
また、本発明に係る単発パルス状磁場発生電源は、磁場処理の対象となる農産物の種類や収穫後の環境に応じて、処理条件、特に磁場の強さを調節できるようにすることが望ましい。上記図2に示すコンデンサ蓄勢方式の単発パルス状磁場発生電源10のAC入力部11においては、サイリスタの位相制御による主コンデンサ13の充電電圧調整もしくは該コンデンサ13の容量をスイッチSWにより適切に切り変えること等によって磁場発生コイル20に発生する単発パルス状磁場の強度を調節することができる。
続いて、上記のような農産物の処理装置を用いた、農産物の処理方法の一例について説明する。まず、図1に示すように、上記コンデンサ蓄勢方式の単発パルス状磁場発生電源10を備えた農産物の処理装置の磁場発生コイル20の内部空間に、磁場処理を施したい農産物40をその生長軸がコイルの中心軸20a、すなわち該コイルによって発生する磁場の中心軸と略平行になるように収容し、上記単発パルス状磁場発生電源10のAC入力部11に単相AC50/60Hzの位相制御された電圧を印加する。これにより、上述の単発パルス状磁場発生電源10の各回路による直流高電圧の発生や、充放電、クランプ等の動作、及びスイッチ30を経て、磁場発生コイル20に図1の矢印a又はbに示すような磁力線が束になって流れ、該コイルの内部空間に収容された農産物40に対して、その生長軸と略平行な方向に、図3又は図4に示したような単発パルス状磁場が印加される。なお、処理対象となる農産物を特に方向を定めずに磁場発生コイルの内部空間に収容し、該農産物に対してランダムな方向に単発パルス状磁場が印加されるようにしてもよい。
以下、単発パルス状磁場の印加が農産物に及ぼす効果を検証するために行った試験例について説明する。
[試験例1]
単発パルス状磁場による処理の対象として、ニンニクを使用し、該ニンニクに略単一極性の単発パルス状磁場の印加を行い、種々の特性を比較した。なお、磁場の印加方向は、生長軸と略平行かつ生長方向に対して順方向、逆方向、及び生長軸に垂直な方向に磁場を印加したものが各処理条件においてほぼ同数になるようにした(以下、このような磁場処理を「無方向」な処理と呼ぶ)。
発根:単発パルス状磁場の強度をその中心軸におけるピーク値で0.14T(テスラ)、0.20T、0.24T、及び0T(未処理)の4点とし、各磁場の印加回数を1回として磁場処理を行い、各条件で処理したニンニクを室温(約18℃)で保管した。直尺検査により、処理後の各日毎に鱗片又は盤茎部より根が2mm以上露出したものについて、その発根数を計測した結果、図5に示すように、各処理条件における発根時期は、未処理のものと0.14T処理のもので41日、0.20T処理で59日、0.24T処理で54日であった。また、処理後75日目の発根数は、0.20T処理のもので未処理のものの1/4〜1/3以下であった。このように、最も効果の高かった0.20Tでの磁場処理を行ったものにおいては、18℃の常温保管において、磁場処理を施さなかったものに比べて18日もの発根時期の遅れが見られ、更に、その発根数自体も抑えられることが確認された。
球根外皮色:単発パルス状磁場の強度をその中心軸におけるピーク値で0.08T、0.14T、0.20T、及び0T(未処理)の4点とし、各磁場の印加回数を1回として磁場処理を行い、各条件で処理したニンニクを室温(約26℃)で保管した。色彩色差計(CR300、ミノルタ製)を用いて、ニンニクの球根外皮の表面色の経時変化を測定して得られた球根の色相角比率の経時変化を図6に示す。本試験例において磁場処理を施したものでは、未処理のものに比べて色相角(比率)が幾分高く、単発パルス状磁場の印加による褪色防止効果が見受けられた。
重量:単発パルス状磁場の強度をその中心軸におけるピーク値で0.14T、0.20T、0.24T、及び0T(未処理)の4点とし、各磁場の印加回数を1回として磁場処理を行い、各条件で処理したニンニクを室温(約15〜20℃)で保管した。初日の値を1とした磁場処理後の球根重量比率の経時変化を図7に示す。重量はいずれも貯蔵期間中にほぼ直線的に低下しているが、貯蔵50日目以降から、磁場処理したものにおいてわずかながら重量保持が見られた。このことから、本実施例の磁場処理がニンニクの鮮度保持に寄与しているものと推定される。
水分含有率:単発パルス状磁場の強度をその中心軸におけるピーク値で0.14T、0.20T、0.24T、及び0T(未処理)の4点とし、各磁場の印加回数を1回として磁場処理を行い、各条件で処理したニンニクを室温(約15〜20℃)で保管した。その後、赤外線水分計(FD-620、ケット化学製)を用い、同一鱗片から切り出した0.2〜0.4gの切片の水分含有率の経時変化を測定した。図8は、初日の値を1とした水分含有比率の推移を示しており、磁場処理したものは未処理のものに比べて水分低下速度が遅く、特に0.24Tで処理したものにおいて保水率が高いことがわかった。このことから、単発パルス状磁場による処理は、ニンニクの水分蒸散を抑制し、鮮度を保持する効果があると考えられる。
糖度:単発パルス状磁場の強度をその中心軸におけるピーク値で0.14T、0.20T、0.24T、及び0T(未処理)の4点とし、各磁場の印加回数を1回として磁場処理を行い、各条件で処理したニンニクを室温(約18℃)で保管した。デジタル糖度計(PR101、アタゴ製)を使用し、測定毎に鱗片試料を2個潰して果汁を絞出し、そのBrix(糖度)%値の測定を行った。図9に初日の値を1としたBrix比率を示す。測定の結果、0.20Tで処理したものでは、50日が経過しても殆ど糖度の変化が見られなかったのに対し、未処理のものでは5%減少していた。このことから、本実施例の磁場処理はニンニクの持つ食味及び鮮度自身の保持に役立つものと考えられる。
[試験例2]
磁場強度がその中心軸におけるピーク値で0.24Tの単発パルス状磁場をニンニクに対して無方向に1回印加し、処理前と処理後におけるニンニクのアリシン含有量を測定した。その結果、単発パルス状磁場による処理の後では、処理前に比べて、アリシン含有量が33%低下していた。アリシンはニンニクの臭いの原因となる成分であることから、本発明の単発パルス状磁場の印加による処理は、ニンニクの臭みの低減にも利用できると考えられる。
[試験例3]
パルス状磁場による処理の対象として、菜の花を使用し、該菜の花の生長軸に略平行かつ生長方向と逆方向に、単発パルス状磁場を1回印加した。該パルス状磁場の強度はその中心軸におけるピーク値で0.06T、 0.10T、0.14T、及び0T(未処理)の4点とし、各条件で処理した菜の花を1〜12℃で保管して、開花数と開花時期の比較を行った。その結果、図10に示すように、磁場処理を行ったものでは、未処理のものに比べて開花時期が1〜2日遅れ、開花数自体も大幅に低下しており、本実施例の磁場処理が開花の抑制に効果的であることが確かめられた。
[試験例4]
植木鉢から切り出した菊の切り花に対して、その生長軸に略平行かつ生長方向と逆方向に単発パルス状磁場を1回印加した。該パルス状磁場の強度はその中心軸におけるピーク値で0.05T、0.15T、0.20T、0.25T、及び0T(未処理)の5点とし、各条件で処理した菊を水を入れた花瓶に挿して、室温(約20℃)で保存して、該切り花の下から3番目の葉色変化を測定した。その結果、図11に示すように、0.15Tで磁場処理を施したものでは、その黄化指数が処理後10日以上経過しても殆ど増大しておらず、鮮度保持効果が見受けられた。
次に、本発明における最適処理条件の探索のために行った試験例について説明する。
[試験例5]
単発パルス状磁場による処理の対象としてニンニクを使用し、種々の処理条件(磁場強度及び印加回数)でのニンニクの発根観察試験を行うことによって、ニンニクの発根抑制における最適磁場処理条件を探索した。なお、いずれの場合も単発パルス状磁場はニンニクに対して無方向に印加した。各ニンニクは常温貯蔵し、処理後の各日毎に直尺計測により根盤部から根が2mm以上露出したものの数を測定した。
各処理条件における前記観察試験の結果を基に、ワイブル確率紙を利用した統計解析によって平均発根時間(MTTF(Mean Time To Failure)に相当)を求めたところ、磁場強度がその中心軸におけるピーク値で0.2Tの単発パルス状磁場を3回印加した場合に、最も高い発根抑制効果が得られることが確認された。図12に、該条件による磁場処理を行ったもの(最適処理区)と未処理のもの(対照区)に関する試験結果を示す。図12から明らかなように、対照区では平均発根日数(図中の「初発根」)が97.7日であったのに対し、最適処理区では137.0日となっており、前記最適条件による磁場処理(ピーク磁場強度0.2Tの単発パルス状磁場を3回印加)を施すことによってニンニクの発根を約40日間遅らせることが可能であることが確認された。
続いて、本発明の作用機序を解明するために行った試験例について説明する。
[試験例6]
植物の生長促進ホルモンであるジベレリンは、多くの植物において発根や萌芽の促進に寄与することが知られている。本願発明者らは、本発明の磁場処理がこのジベレリンに作用することで上記のような発根・萌芽等の抑制効果を発揮するのではないかと考え、生物検定法によるジベレリン分析により、単発パルス状磁場の印加によるニンニクの内生ジベレリン濃度の変化を調べた。
上記最適条件による磁場処理(ピーク磁場強度0.2Tの単発パルス状磁場を無方向に3回印加)を施したニンニクと未処理のニンニクについて、それぞれ発根の増加が見られなくなるのを待って萌芽部(ニンニク内部で萌芽している部分)と発根している底部を切り取って採取し、これらのサンプル40gFW相当から抽出した成分をHPLCによって分画した。各画分について、矮性稲を検定材料とした改良点滴法による生物検定を行って内生ジベレリン様物質(GAs)の濃度を求めた結果を図13に示す。ここで、図中のフラクション5はジベレリンA1(GA1)及びジベレリンA3(GA3)に相当し、フラクション9はジベレリンA4(GA4)に相当する。図13から明らかなように、磁場処理を施したもの(図13(b))ではGA1及びGA3の含有量が未処理のもの(図13(a))の約半分となっており、単発パルス状磁場の印加によって活性型ジベレリン様物質の濃度が低減されることが確認された。
本実施例の結果及び上記試験例1及び5における発根調査の結果を併せると、本発明の処理方法においては、単発パルス状磁場の印加によってジベレリン濃度が低減され、その結果としてニンニクの発根や萌芽が抑制されているものと考えられる。なお、ジベレリンは種々の植物の発根、萌芽、開花等の促進に関与しており、上記ニンニクに限らず、その他の農産物に対しての本発明による発根、萌芽、開花等の抑制効果についても、このような磁場処理によるジベレリンの不活性化が関与しているものと考えられる。
本実施例の農産物の処理装置は、ケースに詰めた農産物をコンベヤに載せて搬送しながら、該コンベヤの経路上に設けられた磁場発生装置によって単発パルス状磁場の印加を行うものである。このような場合に使用される装置としては、磁場発生コイルを複数に分割し、それら分割コイルを各コイルによる発生磁束が加算されるようにカスケード接続した分割電磁コイル方式のもの、又は角形もしくは円形の単一小型コイルの複数個を並列に配置すると共に、これら複数個の小型コイルをカスケード接続したマルチ電磁コイル方式のものなどが考えられる。
図14に、上記分割電磁コイル方式による農産物の処理装置の一例を示す。これは円筒形のコイル50a、50bをコンベヤ60の上下に対向させて設け、これらをカスケード接続したものである。更に、各コイル50a、50bには、その径方向の磁場勾配を低減し、農産物を収容したケース70の搬送方向に沿った磁場分布を平均化及び安定化するために、高い透磁率を有すると共に、残留磁気が大きく、かつ、電気抵抗が大きく渦電流の発生を低減することが可能な珪素鋼板等を積層してなる継鉄80a、80bが付設されている。このような分割電磁コイル方式による農作物の処理装置においては、コイルを上下に分割したことによって、コイル全体としての表面積を拡大させて放熱特性を改善し、コイルの寿命を延長させることができる。
図15に、上記マルチ電磁コイル方式による農作物の処理装置の一例を示す。これは、コンベヤ60の上側に複数個の小形単位コイル50cを農産物を収容したケース70の搬送方向及びそれに直交する方向に密接させて並列配置すると共に、これら単位コイル50cをカスケード接続した構成のものである。各単位コイル50cのそれぞれには、磁場分布を平均化及び安定化させるため、上述のような継鉄を付設することが望ましい。このようなマルチコイル方式の農作物の処理装置によれば、各単位コイル50cが小形であり、更に、各コイル50cがカスケード接続されることで発生磁束が加算され、高い単発パルス状磁場を得ることができる。また、各コイル50cに対応して独立の電源を使用することで、電源の小型化を図ることもできる。更に、コイル数及び電源数を増やすことにより単発パルス状磁場の印加範囲を拡大し、複数個の農産物ケース70を同時に磁場処理できるようにすることも可能である。また更に、複数個のコイル50cのうち任意のコイルのみを動作させることで、磁場を部分印加することもできる。なお、上記複数個の単位コイルはコンベヤの上側のみに設けるものに限らず、下側のみあるいは上下両側に設けた構成としてもよい。
以上、本発明の農作物の処理方法及び農作物の処理装置について実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その発明の範囲内で種々の変更が許容されるものである。例えば、本発明の農作物の処理方法及び装置の適用対象は、ニンニク等の根茎類野菜や、ブロッコリー等の花菜類野菜、及び切り花等の花卉に限定されるものではなく、その他種々の農産物に対しても本発明を適用することで、該農産物の発根・萌芽の抑制や、開花の抑制・維持を図ることができる。
また、本発明の農作物の処理方法において単発パルス状磁場を印加するための手段は、短時間の磁場印加が可能であればどのようなものであってもよく、上記実施例のようなコンデンサ蓄勢方式の単発パルス状磁場発生装置を用いる以外に、直流電磁石方式、永久磁石方式、超電導磁石方式の磁場発生装置などを用いることもできる。
本発明の第1の実施例に係る農産物の処理装置の概略構成を示すブロック図。 同実施例に係る単発パルス状磁場発生電源の回路構成の一例を示す図。 同実施例に係る農産物の処理装置によって発生される単発パルス状磁場の波形を示す図。 本発明の農産物の処理装置によって発生される単発パルス状磁場の波形の別の例を示す図。 試験例1におけるニンニクの発根数の経時変化を示したグラフ。 試験例1におけるニンニクの球根外皮色の経時変化を示したグラフ。 試験例1におけるニンニクの重量の経時変化を示したグラフ。 試験例1におけるニンニクの水分含有率の経時変化を示したグラフ。 試験例1におけるニンニクの糖度の経時変化を示したグラフ。 試験例3における花菜の開花数の経時変化を示したグラフ。 試験例4における菊の黄化指数の経時変化を示したグラフ。 試験例5におけるニンニクの発根観察試験の結果を示す表。 試験例6におけるニンニクの内生ジベレリン様物質濃度を示すグラフであって、(a)は未処理のものを示し、(b)は磁場処理を施したものを示す。 本発明の第2の実施例に係る分割電磁コイル方式による農産物の処理装置の概略を示す断面図。 本発明の第2の実施例に係るマルチ電磁コイル方式による農産物の処理装置の概略を示す斜視図。
符号の説明
10…単発パルス状磁場発生電源
11…AC入力部
12…直流高電圧発生回路
13…コンデンサ充放電回路
14…スイッチ回路
15…クローバー回路
20、50a、50b、50c…磁場発生コイル
30…スイッチ
40…農産物
60…コンベヤ
70…ケース
80a、80b…継鉄

Claims (3)

  1. 収穫後のニンニクに対して、略単一極性の単発パルス状磁場を該磁場の中心軸上におけるピーク値で0.2〜0.24テスラの強度で1回当たりの印加時間を20〜300ミリ秒として1〜5回印加することによって、該ニンニクの発根及び/又は萌芽の抑制を行うことを特徴とする農産物の処理方法。
  2. 上記単発パルス状磁場を、磁力線がニンニクの生長軸と略平行な方向に向かうように印加することを特徴とする請求項1に記載の農産物の処理方法。
  3. 上記単発パルス状磁場を、磁力線がニンニクの生長方向と逆の方向に向かうように印加することを特徴とする請求項1に記載の農産物の処理方法。
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