次に添付図面を参照して本発明による固体撮像素子の駆動方法の実施例を詳細に説明する。図1は、本発明による固体撮像装置の実施例の構成を表すブロック図である。図1において、固体撮像装置10は、光学系12、撮像部14、アンプ電源部16、バイアス供給部18、ドライバ20、前処理部22、メモリ部24、信号処理部26、システム制御部28、操作部30、タイミング信号発生器32、メディアI/F回路34、メディア36およびモニタ38を含み、被写界からの入射光を基にしてディジタル画像信号を形成する装置である。
光学系12は、図示しない被写界からの入射光40を撮像部14にて操作部30の操作に応じた画像を結像させるAF(Automatic Focus)機能を有する。光学系12は操作部30のズーム操作や半押し操作に応じて画角や焦点距離を調整する。また光学系12は、入射光40を撮像部14にて操作部30の操作に応じた絞りに調節するAE(Automatic Exposure)機能を有する。光学系12は、入射光40をこのような機能により光線42に調整して、撮像部14に出射する。
撮像部14には、図2に示すように固体撮像素子44が含まれる。図2は、固体撮像素子44において、被写界からの入射光が照射される面、すなわち、撮像面を概念的に示した図である。固体撮像素子44には、図示しないが、入射光42が入射される側に受光素子46の配設位置に対応して色フィルタセグメントが配される。固体撮像素子44は、入射光42を色分解し、この分解された色成分の光を受光素子46で信号電荷に変換し、電気信号を出力する機能を有する。なお本実施例では、正方格子配列の受光素子46を採用しているが、本発明はこれに限定するわけではなく、たとえばハニカム配列を採用することも可能である。
また固体撮像素子44は、露出に応じて蓄積された信号電荷を垂直転送路48に読み出して、垂直方向に順次転送する。固体撮像素子44は、垂直転送路48と直交する方向に水平転送路50が形成される。垂直に転送された信号電荷は、水平転送路50に供給される。また平転送路50には水平駆動信号74が供給され、水平転送路50は、この水平駆動信号74に応動して信号電荷を分岐部54まで転送する。
分岐部54は、水平転送路50の出力端52に接続し、バイアス供給部18からバイアス信号72が供給されて水平転送路50により転送されてきた信号電荷を分けるものである。本実施例では分岐部54に、水平転送路56および58がそれぞれ接続し、分岐部54によって分けられた信号電荷は、水平転送路56または水平転送路58のうちのどちらか一方に転送される。なお本実施例では、分岐部に2つの水平転送路56、58が接続し、分岐部は信号電荷を2つに分けてそれぞれの水平転送路56、58に供給しているが、本発明はこれに限定するわけではなく、分岐部に設ける水平転送路の数は任意に設定することが可能であり、また設けられた水平転送路の数に応じて任意に分岐することが可能である。
水平転送路56および58は、分岐部54によって分岐された信号電荷を転送するものである。本実施例では水平転送路56、58のうち、分岐部54が接続している側と対向する側、すなわち出力側には、出力アンプ60および62がそれぞれ接続しており、水平転送路56、58は、分岐された信号電荷を出力アンプへと60、62へと転送する。また水平転送路56には水平駆動信号76aが、また水平転送路58には水平駆動信号76bがそれぞれ供給され、各水平転送路56、58はこの信号に応動して信号電荷を順次転送する。
出力アンプ60および62は、共にフローティングディフュージョンアンプであって、この出力アンプ60、62で信号電荷をアナログ電圧信号に変換する。本実施例では出力アンプ60、62はそれぞれ独立に駆動し、出力アンプ部60には電源ライン64が接続し、またおよび出力アンプ62には電源ライン66が接続する。なお電源ライン64および66は、アンプ電源部16とは独立に接続する。また出力アンプ60および62には、ドライバ20からリセット信号68および70がそれぞれ供給される。この他、固体撮像素子44には、オーバーフロードレイン(OFD)パルス80および垂直駆動信号82が供給される。
このように固体撮像素子44は、出力アンプ60および62から2系統の出力信号82および84を前処理部22に出力する。このような構成の固体撮像素子44では、水平駆動信号76a、76bの周期を、たとえば水平駆動信号74の半分の周期にすることにより、出力アンプ60および62の周波数帯域が半分の帯域であっても高速読出しが可能になる。なお固体撮像素子44における水平転送については後段でさらに述べる。
図1に戻って、アンプ電源部16は、固体撮像素子44が含む出力アンプ部60および62に電源電力を供給する機能を有する。アンプ電源部16は、固体撮像素子44を1系統または2系統の出力にするかに応じて電源供給する。この電源供給は、信号処理部26からアンプ電源部16に供給される制御信号86により制御される。
バイアス供給部18は、分岐部54にバイアス信号72を供給する機能を有する。バイアス信号72は、ゲインを規定するバイアス電圧として印加される。バイアス供給部18は、信号処理部26から供給される制御信号88により制御される。
ドライバ部20は、固体撮像素子44を駆動させる各種の駆動信号を供給する機能を有する。ドライバ部20には、タイミング信号発生器32から複数のタイミング信号90が供給される。ドライバ部20は、図3に示すように、OFDパルス出力部92、垂直(V)ドライバ94、水平直列(HS)ドライバ96、水平並列(HP)ドライバ98およびリセット(RS)ドライバ100を含む。
図3は、図1に示すドライバの構成例を概念的に示したブロック図である。図3において、OFDパルス出力部92はOFDパルス78を固体撮像素子44に出力するものである。Vドライバ94は垂直駆動信号80を固体撮像素子44に出力するものである。HSドライバ96は水平駆動信号74を固体撮像素子44に出力するものである。HPドライバ98は水平駆動信号76を固体撮像素子44に出力するものである。水平駆動信号76は、水平駆動信号74の周期に比べて倍周期である。またRSドライバ100はリセット信号68および70を固体撮像素子44に出力するものである。
図1に戻って、前処理部22はアナログフロントエンド(AFE)機能を有する。この機能は、供給されるアナログ電気信号82および84に対する相関二重サンプリング(CDS)によるノイズ除去と、このノイズ除去したアナログ電気信号のディジタル化、すなわちA/D変換とを含んでいる。前処理部22には、タイミング信号発生器32から、各系統の入力信号に対してノイズ除去およびA/D変換の前処理をさせるタイミング信号またはサンプリング信号106、108が供給される。前処理22には、2系統のアナログ電気信号82および84が供給される。前処理部22は、このタイミング信号106および108の供給に応じて2系統のディジタル信号110および112をメモリ部24に出力する。
なお本実施例では、撮像部14からの出力が2系統であるため、前処理部20における処理も2系統であるが、本発明はこれに限定するわけではなく、たとえば固体撮像素子44の分岐部54において信号電荷を分岐しないために出力が1系統になった場合は、前処理部20は1系統の処理を行うことも可能である。
メモリ部24は、供給されるディジタル信号110および112を一時格納し、出力する機能を有する。メモリ部24は、バス114を介して供給される制御信号116に応じて入出力が制御される。メモリ部24は、制御信号116に応じて入力したディジタル信号110および108をディジタル信号118として、バス114、信号線120を介して信号処理部26に出力する。
信号処理部26は、供給されるディジタル信号118に信号処理を施し、制御信号を生成する機能を有する。信号処理部26は、電源制御機能部122、ゲイン制御機能部124、制御機能部122、AF制御機能部126、AE制御機能部128、AWB(Automatic White Balance)制御機能部130および配置変換機能部132を含む。電源制御機能部122は、システム制御部28でのたとえば、シーン判別により高速または低速読出しのいずれかに応じた制御信号86を生成する機能を有する。電源制御機能部122は生成した制御信号86をアンプ電源部16に出力する。
ゲイン制御機能部124は、水平転送路50からの信号電荷を分岐部54から水平転送路56および58のいずれに供給するかに応じた制御信号88を生成する機能を有する。ゲイン制御機能部124は、制御信号88をバイアス供給部18に出力する。バイアス供給部18はバイアス信号72を分岐部54に印加させる。また、AF制御機能部126は、生成した画像データを基に焦点調節する機能を有する。
AE制御機能部128は、生成した画像データを基に評価値を求めて、絞りおよびシャッタ速度を調節する機能を有する。AF制御機能部126およびAE制御機能部128は、調節に応じて図示しない制御信号を信号線120、バス114および信号線134を経てシステム制御部28に送る。AWB制御機能部130は、生成した画像データを基にホワイトバランスを調節する機能を有する。
配置変換機能部132は、2系統として高速読出しにより得られた画像データをたとえば画像の色フィルタセグメントの配列に対応した点順次の順に補正し、一枚の画像に合成する機能を有する。なお配置変換機能部132は、前処理部22からの出力が1系統出力の場合は、1系統出力用の配列変換処理を行う。
信号処理部26は、図示しないが、供給される画像データを基に同時化し、同時化した画像データを用いY/C信号を生成する機能、生成したY/C信号をたとえば液晶モニタ用の信号に変換する機能、および記録モードに応じて生成したY/C信号に対する圧縮や圧縮された信号を元に伸長し復元再生する機能も有する。記録モードには、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、MPEG(Moving Picture Experts Group)およびRAWモード等がある。信号処理部26は、記録モードに処理された画像データを信号線120、バス114および信号線136からメディアI/F回路34に供給する。また、信号処理部26は、液晶モニタ用の信号138をモニタ38に出力する。
システム制御部28は、後述する操作部30からの操作信号140に応じた各種の制御信号を生成する機能を有する。システム制御部28は、図示しないが設定・操作対応制御機能部を含む。設定・操作対応制御機能部は、操作部30からの操作信号140を設定条件として取得し、設定条件に応じて制御信号142を生成する。設定・操作対応制御機能部は、水平転送の出力を2出力/1出力のいずれの対応として動作させるかを制御する制御信号142を生成する。このようにシステム制御部28は、後述する動画モード設定、連写速度設定、シーン判定およびレリーズシャッタボタンの押圧操作に応じて水平転送を高速読出しするか否か判定し、生成した制御信号142をタイミング信号発生器32に出力する。システム制御部28は、この他、メモリ部24、信号処理部26およびメディアI/F回路34等も制御する。
操作部30は、図示しないが電源スイッチ、ズームボタン、メニュー表示切換スイッチ、選択キー、動画モード設定部、連写速度設定部およびレリーズシャッタボタンを含む。電源スイッチは、固体撮像装置10の電源投入/退避をもたらすものである。ズームボタンは、被写体を含む被写界の画角を変更し、この変更に応じた被写体の焦点距離を調整するものである。メニュー表示切換スイッチは、液晶モニタに表示されるメニューを切り替えて、選択カーソルを移動させるスイッチで、たとえば十字キー等がある。選択キーは、選択したメニュー項目を選択するキーである。
動画モード設定部は、動画を液晶モニタに表示させるか否かを決定する、たとえばフラグの値で設定する。この設定により固体撮像装置10は、モニタ38に取り込んだ被写界像をスルー画表示させる。動画モード設定部には、解像度および表示フレーム数および連写速度を設定する項目がある。解像度の項目は、たとえばHDTV(High-Definition TeleVision)規格/標準であるVGA(Video Graphics Array)規格の解像度を選択する項目である。また、表示フレーム数は、30/15のいずれかを選択する項目である。
連写速度設定部は、連写速度を複数設けて、連写する際の速度を設定するもので、2出力/1出力に応じて設定する。連写速度は、ある画素数の画像に対して連写速度を設定する項目である。連写速度は、連写枚数閾値より少ない連写枚数とこの閾値以上の連写枚数の設定から、前者を1出力とし、後者を2出力として固体撮像素子を動作させる。
レリーズシャッタボタンは、半押し/全押し操作に応じて固体撮像装置10の動作タイミングや動作モードを選択する機能を有する。レリーズシャッタボタンは、半押し操作に応じてAEおよびAFの動作をさせる。この動作は動画表示で得られる画像を用いて適正とする絞り、シャッタ速度および合焦距離を求める。また、レリーズシャッタボタンは、全押し操作により記録開始/記録終了のタイミングをシステム制御部28に操作信号140として送り、固体撮像装置10の設定モードに応じた動作タイミングを提供する。設定モードには、静止画記録および動画記録等がある。
タイミング信号発生器32は、撮像部14の固体撮像素子44に対して垂直および水平同期信号、フィールドシフトゲート信号、垂直および水平タイミング信号、ならびにOFDパルスやリセット信号等、各種のタイミング信号を生成する機能を有する。この機能は、システム制御部28からの制御信号142に応じて各種のタイミング信号80、106および108を生成する。タイミング信号発生器32は、各種のタイミング信号90をドライバ20に出力する。タイミング信号発生器32は、基準クロック信号を発生する機能を有し、とくに、水平タイミング信号を生成する。タイミング信号発生器32は、この水平タイミング信号を分周して、2つの周波数の水平タイミング信号を生成する。タイミング信号発生器32は、システム制御部28からの制御信号142に応じて少なくとも、サンプリング信号106および108のいずれか一方を1系統出力させるように出力する。このように動作させることで固体撮像装置10の電力消費を抑制することができる。
メディアI/F回路34は、たとえば扱う記録媒体に応じて画像データの記録/再生を制御するインタフェース制御機能を有する。メディアI/F回路34は、画像データ144を半導体記録媒体であるPC(Personal Computer)カードに対する書込み/読出し制御したりUSB(Universal Serial Bus)コントローラの内蔵にともないバス144を介して供給される画像データ136の書込み/読出し制御したりすることができる。メディア36には、各種の半導体カードの規格がある。
モニタ38には、液晶モニタ等が用いられる。モニタ38は、信号処理部26から供給される画像データ138を表示する。このように構成することで、水平転送路50からの信号電荷読出しを高速読出しにて2出力/低速読出しにて1出力にすることにより固体撮像装置10を最適に動作させることができる。
以上のような構成の固体撮像装置10には、撮像部14を含み被写界像を撮像してディジタル画像信号を形成する装置が該当し、たとえば、ディジタルカメラ、電子スチルカメラ、画像入力装置、ムービーカメラ、カメラが設けられた携帯電話、または、被写体を撮像してシールに印刷する装置等が挙げられるが、本発明はこれらに限定するわけではない。また本発明では、各部の構成を本実施例に限定するわけではなく、固体撮像装置10に応じて任意の構成を採用することが可能である。
このような分岐部54を含む固体撮像素子44において、アナログ電気信号の読み出しは、たとえば以下のように行われる。図4は図1の固体撮像素子における水平転送路を上から見た図を概念的に示した図である。また、図5(a)に、図4に示す水平転送路50および水平転送路56を拡大したものを概念的に示し、図5(b)に、図5(a)における一点鎖線IV−IVで断裁した際の断面を概念的に示す。また、図6(a)に図4に示す水平転送路50および水平転送路56を拡大したものを概念的に示し、図6(b)に図6(a)における一点鎖線VII−VIIで水平転送路50および水平転送路58を断裁した際の断面を概念的に示す。
本実施例では、水平転送路50において、信号電荷を、色の属性が、G、R、G、Bの順に転送し、分岐部54で、色の属性がRおよびBの信号電荷を水平転送路56へ、色の属性がGの信号電荷を水平転送路58へ分岐する。水平転送路50、56、58には、複数の転送素子が形成されている。1つの転送素子は、多結晶シリコン(Poly-Silicon)からなる2つの電極と、シリコン基板の表面付近の不純物層とにより形成されている。2つの電極の下にある2つの不純物層は、その構成が互いに異なる。このため、2つの電極に同電位の駆動信号を印加することにより、階段状のポテンシャル電位が形成される。なお分岐部54も同様に2つの電極からなる転送素子である。以下では、1つの転送素子と、当該転送素子に含まれる2つの電極とを同一の参照符号で示す。たとえば、「分岐部54」は転送素子を示し、「電極54」は、分岐部54の2つの電極を示す。
水平転送路50は、図4に示すように、左側に位置する分岐部54の電極HSLに向かって右側から、ポリシリコン電極HS2、HS1、HS4、HS3、HS4、HS1、HS2およびHS3が、この順に、かつこれを繰り返し単位として形成される。また、電極HSLの右隣、すなわち図9における水平転送路50の出力端側の電極HS3の左隣には、電極HLが設けられている。この電極HLについては後段で詳細に説明する。
水平転送路56は、図4、図5に示すように、分岐部54の電極HSLから出力アンプ60に向かって順に、4つのポリシリコン電極HP1、HP2、HP1、HP2およびOG(Output Gate)電極が形成される。OG電極の左隣にはフローティングディヒュージョン(FD)が形成される。さらに、FDの左隣には、リセット電極RSが形成される。最後に、リセット電極の左隣には、リセットドレインRDが形成される。
また水平転送路58は、図4、図6に示すように、分岐部54の電極HSLから出力アンプ60に向かって順に、5つのポリシリコン電極HP2、HP1、HP2、HP1、HP2およびOG(Output Gate)電極が形成される。水平転送路58は、水平転送路56の電極数よりも1個多く形成される点に特徴がある。なおOG電極から左側、すなわちOG電極の左隣に配置されるフローティングディヒュージョン、このフローティングディヒュージョンの左側に配置されるリセット電極、および、このリセット電極の左側に配置されるリセットドレインについては、水平転送路56と同様である。
図5の一点鎖線IV−IVで示すように、左端のリセットドレインRDから水平転送路56の電極HP1まで、さらに分岐部54から水平転送路50の電極HLまでを破断すると、この断面が示すように、図示しないP型のシリコン基板内の各電極の直下に不純物層が形成される。不純物層には、イオン注入法等を用いて不純物をドープさせ、ドープする不純物の種類およびその濃度によりポテンシャル電位の大きさが変わる。また、不純物層の直上に形成される電極に印加される駆動信号の電圧レベルに応じて後述するように、所定のポテンシャル電位が形成される。
なお図6(b)に示す断面においても同様に、P型のシリコン基板と各電極の直下に不純物層が形成される。この不純物層も多結晶シリコンの電極の大きさに応じてそれぞれ区切られ、区切られた不純物層は、供給される駆動信号の電圧レベルに応じて所定のポテンシャルが形成されるように濃度が調整されている。
次に各電極に供給する駆動信号について説明すると、電極HS1、HS2、HS3、HS4には、駆動信号φHS1、φHS2、φHS3、φHS4がそれぞれ供給される。また図示しないが電極HSLには、駆動信号φHSLが供給される。駆動信号φHSLは一定のバイアス電圧である。電極HLには、駆動信号φHLが供給される。電極HP1およびHP2には、駆動信号φHP1およびφHP2が供給される。電極OGには駆動信号φOGが供給される。この駆動信号φOGは一定電圧の信号である。また、電極RSには駆動信号φRSが供給される。さらに、リセットドレインRDには駆動信号φRDが供給される。この駆動信号φRDは電源電圧の信号である。
これらの駆動信号についてのタイミングを図7に示す。駆動信号それぞれの位相について説明すると、駆動信号φHS1およびφHS3は、駆動信号φHS2およびφHS4と180°位相が異なる2相駆動信号である。また、駆動信号φHP1と駆動信号φHP2は、互いに逆位相であり、2相駆動信号である。
また各駆動信号の周期について説明すると、駆動信号φHS1〜φHS4は、駆動信号φHP1、φHP2の半分の周期である。すなわち、駆動信号φHS1〜φHS4の駆動信号は、駆動信号φHP1、φHP2の倍周波数である。駆動信号φRSは、図7に示すように、たとえばt=1、t=5、・・・と、4n+1のタイミングでレベル“H”を供給する。変数nはゼロを含む整数である。出力信号OS1およびOS2は、図7に示すように出力される。
これらの駆動信号により、水平転送される信号電荷の流れを説明する。各駆動信号が水平転送路50、56、58に印加されたときに、水平転送路50、56、58に形成されるポテンシャルを図8、図9に示し、またそのときの信号電荷の転送状況を水平転送路の上から見たものを図10に示す。図8〜図10の各時刻は、図7に示す各時刻と対応し、たとえば図8(a)、図9(a)、図10(a)は、図7における時刻t=1と対応している。他も同様である。
図8は、水平転送路50、および水平転送路56についてのポテンシャルを示したものであり、図5(b)を簡略化したものもポテンシャルの位置を示すために合わせて記載してある。同様に、図9は、水平転送路50、および水平転送路58についてのポテンシャルを示したものであり、図6(b)を簡略化したものもポテンシャルの位置を示すために合わせて記載してある。
図示しないが駆動信号φHSLが供給されることにより、駆動信号φHSLの供給される電極HSLの直下には、図8、図9に示すように、常に固定されている基準レベル146のポテンシャル電位と、水平転送路50から供給される信号電荷の逆流を防ぐポテンシャル障壁(バリア)148が形成される。
図8、9、10を用いて、供給される駆動信号に応じて変化して形成されるポテンシャルと、この一定のポテンシャル146、148による信号電荷の移動を説明する。なお分かり易くするために、分岐部54と一方の水平転送路56における転送と、分岐部54と一方の水平転送路58における転送とに分けて説明する。最初に、図8を用いて、水平転送路56での信号電荷の転送を説明する。なお以下では、色R、GおよびBに対応する信号電荷を信号電荷R、GおよびBという。
図8(a)に示すように、時刻t=1にて、水平転送路58の電極それぞれに、レベル“H”の駆動信号φHL、定バイアス電圧の駆動信号φHSL、およびレベル“L”の駆動信号φHP1が供給される。このときたとえば信号電荷Gが分岐部54で保持されているとすると、電極HSLに隣接する図示しない電極HP1の不純物層は、レベル“L”の供給により、破線150で示すような、信号電荷Gが水平転送路56に混入しない程度のポテンシャル電位またはバリアを生成する
また、分岐部54に隣接するもう一方の電極HP2には、レベル“H”の駆動信号φHP2が供給されるため、信号電荷Gが水平転送路58に流入するように、基準レベルより低いポテンシャル電位152が生成される。このとき信号電荷Gは、基準レベル146およびポテンシャル電位152の両方パケットに存在するようになる。
電極HP2およびHP1の直下には、図5(b)に示すように不純物層154および156が形成されているため、レベル“H”が供給されると、ポテンシャル電位は基準レベル146より一段低いレベルと最深のレベルとが階段状に形成される。また、レベル“L”が供給されると、ポテンシャル電位は、基準レベル146より一段高いレベルと基準レベル146と同レベルの階段状になる。これにより、形成されるパケットは、信号電荷の転送方向に向かって順に、階段状にレベルが低下したものとなり、時刻t=1で水平転送路56には、信号電荷Rと信号電荷Bが転送素子1つおきに保持される。
次に時刻t=2にて図7に示すように、駆動信号φHLがレベル“H”で電極HLに印加される。この印加により電極HLの不純物層は、ポテンシャル電位148と基準レベル146を生成する。このポテンシャル電位の形成により電極HLは、電極HSLとの間にパケットを形成し、このパケットに信号電荷Rが保持される。また電極HSLにおけるパケットに蓄積されていた信号電荷Gは、図示しない紙面の手前側に位置する水平転送路58側の電極HP2に移動する。この状態の信号電荷Gを破線で示す。
次に時刻t=3にて図7に示すように、電極HLには駆動信号φHLがレベル“L”で印加される。この印加により電極HL、および電極HSLポテンシャル電位は、時刻t=1の状態になる。よって時刻t=2で電極HLに形成されたパケットに保持されていた信号電荷Rが、このポテンシャル電位の形成により分岐部54まで移動する。
このとき、電極HSLに隣接する水平転送路56の電極HP1には、レベル“H”の駆動信号φHP1が供給されるため、電極HP1に対応する不純物層に形成されるポテンシャル電位は、破線160で示すように基準レベル146よりも低いポテンシャル電位になる。またこのとき、水平転送路58の電極HP2側では、レベル“L”の駆動信号φHP2が供給されるために破線158に示すように基準レベル146よりも高いポテンシャル電位が生成される。よって信号電荷Rは、基準レベル146およびポテンシャル電位160の両方パケットに存在するようになる。
また時刻t=3において、電極HP1に隣接する電極HP2にはレベル“L”の駆動信号φHP2が印加される。これにより不純物層154および156は、ポテンシャル電位148および基準レベル146のレベルを形成する。また、電極HP2に隣接する電極HP1にはレベル“H”の駆動信号φHP1が印加される。これにより不純物層154および156は、基準レベル146より1段低いレベルと、最深のポテンシャル電位とを形成する。さらに、隣接する電極HP2では、供給されるレベル“L”によって、ポテンシャル電位148と基準レベル146とが形成される。この結果、時刻t=2にて電極HP1に形成されていたパケットに保持された信号電荷Bは電極HP1に形成されるパケットに移動する。また、時刻t=2で電極OGに隣接する電極HP2におけるパケットに存在していた信号電荷Rは、このポテンシャル電位の上昇により、電極OGを介してFDに転送される。
次に時刻t=4にて電極HLにレベル“H”の駆動信号φHLが供給されて、時刻t=2と同じポテンシャルが形成され、電極HLに形成されるパケットに信号電荷Gが保持される。また電極HSLでは、電極HSLに隣接する電極HP2におけるポテンシャル電位が、破線158で示すように、基準レベル146より高いポテンシャルの状態にあり、また、電極HSLに隣接する電極HP1におけるポテンシャル電位が、破線160で示すように、基準レベル146より低いポテンシャルの状態にある。よって、分岐部54の信号電荷Rは、図示しない紙面の奥側の水平転送路56の電極HP1に形成されるパケットに向かって移動する。
次に時刻t=5にて、電極HLにレベル“L”の駆動信号φHLが供給されるため、電極HLと対応する不純物層は時刻t=1と同じポテンシャル電位を形成するようになる。よって、それまで電極HLにおけるパケットに蓄積されていた信号電荷Gが、電極HLから電極HSLへ転送される。また分岐部54に隣接する水平転送路56側の電極HP1は、また時刻t=1と同様にポテンシャル電位158を形成し、電極HSLへ転送されてきた信号電荷Gに対するポテンシャル障壁となって水平転送路56に混入しないようにする。一方、分岐部54に隣接する水平転送路58側の電極HP2には、信号電荷Gが水平転送路58に流入するように、基準レベルより低いポテンシャル電位152が生成される。よって、信号電荷Gは、基準レベル146およびポテンシャル電位152の両方に存在するようになる。以上のようにして分岐部54から水平転送路56へ信号電荷R、および信号電荷Bが供給される。
次に図9、図10を用いて分岐部54から水平転送路58までの信号電荷の転送について説明する。図9において、時刻t=1にて水平転送路の電極それぞれに、レベル“L”の駆動信号φHL、および駆動信号φHP2、定バイアス電圧の駆動信号φHSL、およびレベル“H”の駆動信号φHP1が供給される。これによって電極HSLと隣接する電極HP2におけるポテンシャル電位は、基準レベル146よりも一段階低いレベル152になる。また、電極HSLと隣接する電極HP1におけるポテンシャル電位は、レベル150となってポテンシャル障壁として機能し、信号電荷の混入を防止する。よって、たとえば信号電荷Gが分岐部54で保持されているとすると、信号電荷Gは、基準レベル146およびポテンシャル電位152の両方パケットに存在するようになる。
なお水平転送路58では、電極HSLと隣接する電極HP2に続いて、電極HP1と電極HP2が交互に計、4つ形成される。したがって、水平転送路58は、水平転送路56に比べて1つ電極が1つ多い。これら4つの電極の直下に設けられる不純物層には、図5と同様に右から順に不純物層154、および156が交互に形成される。時刻t=1では、電極HP1には、レベル“L”の駆動信号φHP1が供給されるため、電極HP1の直下には、ポテンシャル電位148および基準レベル146のレベルが形成される。また電極HP2には、レベル“H”の駆動信号φHP2が供給されるため、電極HP2の直下には、基準レベル146より1段低いレベルと最深のポテンシャル電位とが形成される。本実施例では、時刻t=1では、電極HP2におけるパケットに信号電荷Gがそれぞれ蓄積されている。
次に時刻t=2にて、レベル“H”の駆動信号φHLが、電極HLに印加される。この印加により電極HSLに隣接する電極HLの不純物層は、図8の時刻t=2と同じようにパケットを形成し、本実施例ではこのパケットに信号電荷Rが保持される。また図8における時刻t=2と同様、電極HSLにおけるパケットに蓄積されていた信号電荷Gは、図示しない紙面の手前側に位置する水平転送路58側の電極HP2に移動する。この状態の信号電荷Gを破線で示す。
次に時刻t=3では、駆動信号φHLがレベル“L”で電極HLに印加される。この印加により電極HLにおけるポテンシャルは、時刻t=1の状態となり、時刻t=2にて電極HLにおけるパケットに蓄積されていた信号電荷Rが、分岐部54まで移動する。このとき、電極HSLに隣接する水平転送路58の電極HP2には、レベル“L”の駆動信号φHP2が供給され、また、電極HSLに隣接する水平転送路56の電極HP1には、レベル“H”の駆動信号が供給される。
よって、図8に示す時刻t=3の場合と同様に、電極HP2におけるポテンシャル電位が、破線158で示すように、基準レベル146より高いポテンシャルとなる。一方、電極HP1におけるポテンシャル電位は、破線160で示すように基準レベル146よりも低いポテンシャル電位になる。よって分岐部54の信号電荷Rは、図示しない紙面の奥側の水平転送路56の電極HP1に形成されるパケットに向かって移動し始める。また図8に示す時刻t=3と同様に、時刻t=2で電極OGに隣接する電極HP2に形成されたパケットに存在する信号電荷Gは、このポテンシャル電位の上昇により、電極OGを介してFDに転送される。
次に時刻t=4では、図8に示す時刻t=4と同様、電極HLにおいてパケットが形成され、このパケットに信号電荷Gが蓄積する。また電極HSLでは、電極HSLに隣接する電極HP2におけるポテンシャル電位が、破線158で示すように、基準レベル146より高い状態にあり、また、電極HSLに隣接する電極HP1におけるポテンシャル電位が、破線160で示すように、基準レベル146より低い状態にあるため、分岐部54の信号電荷Rが、図示しない紙面の奥側の水平転送路56の電極HP1に形成されるパケットに移動する。
次に時刻t=5では時刻t=1と同じポテンシャル電位が各電極に形成され、電極HLに蓄積されていた信号電荷Gが電極HSLへ転送される。また、水平転送路58において、電極HP1におけるパケットに存在していた信号電荷が、t=5において形成された電極HP2におけるパケットへと移動する。以上のようにして、各駆動信号に応動して信号電荷が転送される。なお本発明は本実施例に限定するわけではなく、どの色の信号電荷をどの水平転送路へ供給するかは任意に設定することが可能である。
なお上述したように、水平転送路50は、水平転送路56および58に比べて2倍周波数で動作されているため、たとえば図10において、時刻t=2では、水平転送路50は、供給される駆動信号に応動して信号電荷Rを分岐部54に向けて転送しているが、水平転送路56では信号電荷R、Bの転送に変化がない。また水平転送路58でも信号電荷Gの転送はされていない。なお分岐部54では、基準レベル146より低いポテンシャル電位が形成されることから、信号電荷Gが電極HP2に形成されるパケットに移動している。
また各出力アンプでは、たとえば図10に示す時刻t=3、およびt=4に示すように、実質的に同時に色Bおよび色Gの信号電荷をアナログ電圧信号に変換し、出力信号OS1およびOS2として出力しており、完全並列処理を行っている。これにより出力信号OS1およびOS2の時系列的な処理の差をなくすことができる。なお、本発明は本実施例に限定するわけではなく、たとえば時系列的な処理の差が許容できれば出力信号OS1およびOS2は交互に出力させてもよい。
以上のようにして固体撮像素子44を動作させることで色属性を有する信号電荷を分類して、混色させることなく、転送し、出力させることができる。一般的に固体撮像素子には、高画素化にともない得られた信号電荷を高速に読み出すことが要求される。この要求は、水平転送路の出力アンプにおける周波数帯域に影響する。従来の固体撮像素子は、周波数帯域の不足により、ある一定以上の周波数での駆動が困難であった。しかしながら、本実施例の固体撮像素子44は、たとえ高画素化に対応して水平転送路50の駆動周波数を上昇させても、出力を分岐させて増やしているため、出力部60および62の駆動周波数を上げなくても、色に応じて所定の周波数帯域内で出力信号電荷を読み出すことができる。すなわち、信号電荷の読出し速度の向上を実現させることができる。
このような固体撮像素子14において、従来では、分局部54において転送効率の劣化が発生してしまうと、取り残した信号電荷によって、他の画素の信号電荷に影響を及ぼし、その結果形成された画像に固定パタンノイズとなって現れてしまうという問題を有していた。
具体的に説明すると、たとえば図8〜図10に示すように色の属性がG、R、G、Bの順で転送されてきた信号電荷を分岐部54で分岐して、信号電荷R、Bを水平転送路56で、また信号電荷Gを水平転送路58でそれぞれ転送する場合を考えると、分岐部54において転送効率の劣化、すなわち転送劣化が発生している状況では、取り残された信号電荷Rの一部が次の信号電荷、すなわち信号電荷Gへ混入してしまっていた。とくに色温度が低い被写体を撮像したことにより得られた信号電荷である場合には、信号電荷Gへ混入する信号電荷Rの量が多いのに対し、信号電荷Gへ混入する信号電荷Bの量が少なくなる。よって、水平転送路58により転送される各信号電荷Gの間に信号差が生じてしまい、固定パタンノイズとなって画像に表れていた。
そこで本実施例では、分岐部の1つ前に電極HLを設け、この電極HLを独立して駆動可能にする。そしてこの電極HLに供給する駆動信号φHLのデューティサイクルや周期を、タイミング信号発生器32で変更し、電極から分岐部への信号電荷の転送時間を長くする。また、本実施例では、タイミング信号発生器32で、水平転送路56、58を駆動する水平駆動信号76a、76bの両方、またはどちらか一方のデューティサイクルや周期を変えて、分岐部からどちらか一方の水平転送路への信号電荷の転送時間を通常よりも長くする。
ここで、通常の転送時間とは、駆動信号のデューティサイクルや、周期を変更する前の転送時間であって、転送効率の劣化が発生していない、すなわち転送効率が維持されている際の転送時間である。たとえばデューティサイクルで説明すると、本実施例では通常の転送時間は、デューティサイクルが50%、すなわちハイレベルとローレベルの時間が実質的に同じ場合の転送時間である。なお通常の転送時間は、転送効率が維持されている際の転送時間であれば、例えば、デューティサイクルが50%のときの転送時間に限定するわけではない。
図4において、電極HLは、分岐部の電極HSLの1つ前段に設けられた転送素子であって、電極HS3から受け取った信号電荷を電極HSLに転送するものである。本実施例では、電極HLは、他の電極と同様に、2つ一組のポリシリコン電極である。また電極HLは独立に駆動可能であり、たとえば本実施例では電極HLには、図7に示すように駆動信号φHLが供給される。
図7に示す駆動信号φHLは、通常の駆動時に電極HLに供給される駆動信号φHLを示している。本実施例では、通常の駆動時における駆動信号φHLは、駆動信号φHS2、φHS4と同じ信号波形の信号である。これは、本実施例では、電極HLの右隣の電極が電極HS3であるため、通常駆動時は、ポテンシャル電位が電極HS2、HS4と同じになるようにする必要があるからであって、本発明はこれに限定するわけではない。電極HLに供給する駆動信号は、水平転送路50に応じて任意に設定することが可能である。たとえば通常の駆動時における駆動信号φHLを、駆動信号φHS1、φHS3と同じ信号波形の信号にすることも可能である。
一方、たとえば被写体の色温度が低い場合等のように転送劣化が考えられる場合には、本実施例では図11に示すようにタイミング信号発生器32が駆動信号φHLのデューティサイクルを変更する。これによって、電極HLから電極HSLへの信号電荷の転送時間を通常の駆動時における転送時間、すなわち、デューティサイクルを変更しない場合の転送時間よりも長くすることが可能になる。
図11は、転送効率が劣化した際に、図4に示す各電極に供給される駆動信号のタイミングを概念的に示したタイミングチャートであって、転送効率が劣化した際に電極HLに供給する駆動信号のデューティサイクルを変更して、電極HLから電極HSLへの信号電荷の転送時間を変更する前よりも長くして、転送効率の劣化を解消する処理を概念的に示した図である。
図11において、駆動信号φHLは、ローレベルの時間がハイレベルの時間よりも長くなっている。図11を用いてより具体的に説明すると、これまでハイレベルの時間、およびローレベルの時間が共に、駆動信号φH1〜H4と同じように時間Ta、すなわち半周期分であったのが、ローレベルの時間が時間Tb、ハイレベルの時間が時間Tcとなる。時間Taは半周期分であるため、結局、時間Tb>時間Ta>時間Tcである。
なお図11に示す例では、周期は変調しない。また、駆動信号φHS1〜4も変調しない。これは、水平転送路50における転送効率を維持するためである。なお本発明はこれに限定するわけではなく、たとえば駆動信号φHS1〜4を変調することも可能である。このような駆動信号の変調は、例えばシステム制御部28がタイミング信号発生器32を制御することにより可能になる。
電極HLから電極HSLへの信号電荷の転送は、駆動信号φHLがローレベルの時であって、かつ駆動信号φHP1がハイレベルの時であるため、このように駆動信号φHLのデューティサイクルを変えて、駆動信号φHLにおけるローレベルの時間Tbをハイレベルの時間Tcよりも長くすると、電極HLから電極HSLへの信号電荷の転送時間を、それまでの時間Taから時間Tbにすること、すなわち長くすることが可能になる。その結果、電極HSから電極HSLへの信号電荷の転送を良好にすることが可能になり、転送されずに残る電荷の量を減らすことが可能になって、転送効率の劣化を解消することが可能になる。
なおこのように駆動信号φHLのデューティサイクルを変更することによって、駆動信号φHLにおけるハイレベルの時間が短くなるため、電極HLの左隣に位置する電極から電極HLへの転送時間が短くなる。たとえば図4に示す例では、電極HS3から電極HLへの信号電荷の転送時間が短くなる。しかし、電極HS3から電極HSへの信号電荷の転送は、周波数特性に余裕があり、転送時間の短縮に対するマージンが大きい。よって、このマージンを電極HSから電極HSLへの転送時間に当てはめることで、問題なく転送することが可能である。
なお本発明は駆動信号φHLのデューティサイクルを変更することに限定するわけではなく、たとえば図12に示すように、タイミング信号発生器32で駆動信号φHL、水平駆動信号φHP1、および水平駆動信号φHP2のデューティサイクル、および周期を変えることによって、分岐部から水平転送路のどちらか一方への信号電荷の転送時間を長くすることが可能になる。
図12は、転送効率が劣化した際に、図4に示す各電極に供給される駆動信号の別のタイミングを概念的に示したタイミングチャートであって、駆動信号φHL、駆動信号φHP1、および駆動信号φHP2のデューティサイクル、および周期を変更して、転送効率が劣化した際に電極HSLから水平転送路56への信号電荷の転送時間を、変更する前よりも長くして、転送効率の劣化を解消する処理を概念的に示した図である。図12において図11と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。
図12に示す例では、駆動信号φHLのデューティサイクルだけではなく、駆動信号φHP1、φHP2のデューティサイクルも変更する。具体的に説明すると、図12では、駆動信号φHP1、φHP2のデューティサイクルを変更して、駆動信号φHP1においてそれまでハイレベルの時間が時間Tdであったのを時間Tpに、またローレベルの時間が時間Teであたったのを時間Tqにする。一方、駆動信号φHP2は、駆動信号φHP1の逆位相であるため、ローレベルの時間を時間Tpに、ハイレベルの時間を時間Tqにする。なお、変更前の時間Tdと時間Teは実質的に同じ長さ、すなわち駆動信号φHP1、φHP2の半周期分の長さであるため、時間Td、Te、Tp、およびTqの関係は、時間Tp>時間Td、時間Tq>時間Teである。
またこのような駆動信号φHP1、φHP2の変更に合わせて駆動信号φHLの周期を変え、1周期が時間Tpの部分と1周期が時間Tqの部分とが交互に現れるようにする。また図12に示す例では、駆動信号φHLのデューティサイクルを、図11と同様に、ローレベルの時間をハイレベルの時間よりも長くする。たとえば本実施例では、1周期が時間Tpの部分では、ローレベルの時間が時間Tl、ハイレベルの時間が時間Tmであって、Tl>Tmである。また1周期が時間Tqの部分では、ローレベルの時間が時間Tn、ハイレベルの時間が時間Toであって、Tn>Toである。
なお本実施例では、このように駆動信号φHLの周期が1周期毎に異なるようになっても、デューティサイクルは、1周期が時間Tpの部分と、1周期が時間Tqの部分とで同じにしている。具体的には、たとえば周期が時間Tpの部分において、ローレベルの時間Tlが、時間Tpの60%の長さであり、ハイベルの時間Tmが、時間Tpの40%の長さである場合は、周期が時間Tqの部分においても、ローレベルの時間Tnを時間Tqの60%にし、またハイレベルの時間Toを時間Tqの40%の長さにする。なお本発明はこれに限定するわけではなく、任意のやり方を採用することが可能である。たとえば1周期が時間Tpの部分と、1周期が時間Tqの部分とでデューティサイクル変えるようにすることも可能であるし、またたとえばどちらの周期の場合もデューティサイクルを50%にし、ローレベルとハイレベルとが半周期ずつになるようにすることも可能である。なお本発明はこれらに限定するわけではない。
また駆動信号φHLの変更により、駆動信号φHS1〜HS4の周期も変更される。具体的には、駆動信号φHLの1周期が時間Tpの部分と対応する部分の1周期を時間T3とする。時間T3は時間Tpと実質的に同じ長さである。同様に駆動信号HLの1周期が時間Tqと同期する部分の1周期を時間T4とする。時間T4は時間Tqと実質的に同じ長さである。なおデューティサイクルは変えずに、それぞれの周期において、ローレベルとハイレベルとを半周期ずつにする。
このように駆動信号φHP1、φHP2のデューティサイクルを変更し、駆動信号φHP1がハイレベルになる時間を長くすると、駆動信号φHP1がハイレベルのときに電極HSLから水平転送路56へ信号電荷が転送されるため、電極HSLから水平転送路56への信号電荷の転送時間を長くすることが可能になる。また、駆動信号φHPの周期を変えて1周期が長くなるようにすることにより、たとえばデューティサイクルが50%である場合であっても、駆動信号φHLがローレベルであって、駆動信号φHP1がハイレベルである時間を長くすることが可能になり、電極HLから電極HSLへの信号電荷の転送時間を長くすることが可能である。
とくに本実施例のように駆動信号φHLのデューティサイクルも変えることによって、駆動信号φHLがローレベルであって、駆動信号φHP1がハイレベルである時間をより長くすることが可能になり、電極HLから電極HSLへの転送時間をより長くすることが可能である。なお、駆動信号φHLの周期を変更した際に、デューティサイクルも変更するか否かは、そのときの転送部における転送状況に応じて任意に決めることが可能である。
なお駆動信号φHP1、HP2のデューティサイクルを変えることによって、電極HSLから水平転送路58への転送時間が、時間Teから時間Tq(時間Te>時間Tq)へと短くなる。しかしたとえば本実施例のように、水平転送路56へは画素Rと画素Bの信号電荷を、水平転送路58へは画素Gの信号電荷を転送している場合では、分岐部から水平転送路58への転送時間が短くなることによって、画素Gの信号電荷が、画素R、画素Bの信号電荷へ混入するようになるが、画素Rと画素Bとは信号量が異なるため、信号電荷Gの混入が多少あっても影響は軽微である。
また図11に示すように駆動信号φHP1、φHP2のデューティサイクルを変更した場合は、出力波形OS1、OS2のリセットレベルTr、フィードスルーレベルTsが短くなり、データレベルTtが長くなるため、後段の前処理部22において相関二重サンプリング方式によりノイズを除去している場合は、駆動信号φHP1、φHP2の変更に合わせてサンプリングパルスの位相を変化させる必要がある。
以上のようにして、本実施例では、図11、図12に示すように、駆動信号φHLや、駆動信号φHP1、φHP2のデューティサイクルや周期を変更することによって、電極HLから電極HSLへの転送時間や、電極HSLから水平転送路56への転送時間を長くして信号電荷を十分に移動させるため、電極HSLにおける転送効率の劣化を解消することが可能である。また例えば図1に示すタイミング信号発生器32で形成するタイミング信号を変えることにより、デューティサイクルや周期を変更することが可能であるため、余計な素子を必要とせずに、転送効率の劣化を解消することが可能である。
このような、駆動信号φHL、φHP1、φHP2のデューティサイクルや周期を変えて駆動することによる転送劣化の解消は、たとえば固体撮像素子44の温度や、被写体の色温度や、ISO感度や、駆動速度等に応じて行うことが可能である。たとえば、固体撮像素子44における温度が低い状況では転送効率が劣化するため、デューティサイクルや周期を変えて駆動することにより、この劣化を解消することが可能になる。
なお固体撮像素子44の温度は、固体撮像装置10の任意の箇所、たとえば、撮像部14やシステム制御部28等に、図示しない温度計やセンサ等の公知の温度検出手段を設けることで測定することが可能である。また、測定した温度が所定の値よりも低い場合等にシステム制御部28等によってタイミング信号発生器32を制御して、各駆動信号のデューティサイクルや周期を変更するようにすれば、温度が低い状況における転送効率の劣化を解消することが可能になる。なお本発明はこれに限定するわけではない。
なお、検出された温度が高い場合、すなわち所定の値以上である場合は、転送効率が上がるため、通常の駆動を行うようにすることが好ましい。具体的には、検出された温度が高い場合は、タイミング信号発生器32が、通常のタイミング信号、すなわちデューティサイクルを50%にしてローレベルとハイレベルの時間をそれぞれ半周期ずつにしたタイミング信号をドライバに供給する。
また色温度が極端に高い場合や、極端に低い場合は、画素Rの信号電荷と画素Bの信号電荷とが画素Gの信号電荷へ混入することによる影響が大きい。よって、デューティサイクルや周期を変えて駆動し、転送劣化を解消することにより、混入による影響を緩和することが可能になる。
色温度が極端に高い場合とは、固体撮像装置10や使用状況等によって異なるが、たとえば6000ケルビンよりも高い場合等が考えられる。また色温度が極端に低い場合等も同様に、たとえば3000ケルビンよりも低い場合等が考えられる。なお本発明はこれに限定するわけではない。また色温度は、公知の手法を採用して検出することが可能である。
また高ISO感度での駆動時、すなわち撮影感度が通常の撮影感度と比較して高い場合での駆動時では、被写体の輝度が低いために得られる信号が少なく、混入による影響が大きくなるため、デューティサイクルや周期を変えて駆動することにより、混入を防止して影響を緩和することが可能になる。
また高速駆動時には、転送時間が通常の駆動と比較して短くなるため、信号電荷の取り残しが発生することが考えられる。よって、デューティサイクルや周期を変えて駆動することにより、混入を防止して良好な画像を得ることが可能になる。なお低速駆動時は、十分な転送時間を確保することが可能であるため、通常の駆動に戻すことが好ましい。なお本発明は、上述した場合に限定するわけではなく、分岐部54における転送効率の劣化が生じてしまう任意の場合に、デューティサイクルや周期を変えて駆動することによる劣化の解消を行うことが可能である。
なお図11、図12に示す処理において、デューティサイクルをどれくらい変更するか、すなわちデューティサイクルの変動値は、任意に設定することが可能であるが、たとえば転送効率が発生しやすい状況において、後段にどれくらいの信号電荷を取り残すのかを測定し、この測定された後段に取り残す信号電荷の量、すなわち取り残し量を用いて転送効率を算出することにより決定することが可能である。
図13は、デューティサイクルの変動値を設定するために、転送残り量を測定して転送効率を算出する処理の一例を示した流れ図である。図13において、システム制御部28は、転送残り量を検出するために、撮像部14に一定光量の光源を撮像し、基準信号を形成させる(ステップS1)。この制御により、撮像部14は、一定の光量の光源を撮像し、図14〜図17に示すように水平転送路50で水平方向に8つの画素を混合することによって、基準信号の画素200、および基準信号の後段に連続するように少なくとも2つの空画素202〜206を形成する。
図14〜図17は、図4に示す水平転送路50において水平方向に8個の画素を混合して基準信号200を形成する処理を概念的に示した図である。図14は、8個の画素を混合するために、ラインメモリ、電極HS1〜HS4に供給される各駆動信号を概念的に示したタイミングチャートである。また図15〜図17は、図14に示す時刻における各電極のポテンシャル電位を概念的に示したポテンシャル図である。なお図15〜図17において、図4と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。また図示しないが、図15〜図17において、分岐部54は左側に位置し、信号電荷は左方向へと順に転送される。
図15〜図17において、水平転送路50は、右側から、分岐部54が位置する左側に向かって、2つ一組のポリシリコン電極が電極HS4a、HS3a、HS4b、HS1a、HS2a、HS3b、HS2b、HS1bの順に形成されている。各電極には、図14に示す駆動信号が供給され、たとえば電極HP1には図14に示す駆動信号φHP1が供給される。なお他の電極も同様である。
図15〜図17を用いて、各駆動信号に応じて形成されるポテンシャル電位と、このポテンシャル電位による信号電荷の移動を説明すると、まず時刻t=1では、ラインメモリ、および各電極にレベル“H”の駆動信号が供給され、各電極に信号電荷が供給される。本実施例では、信号電荷は、色の属性がG、R、G、Bの順で転送されてゆくため、たとえば図14の時刻t=1では、電極HS1bに色の属性がGである信号電荷G1が供給され、この電極HS1bの隣の電極HS2bに色の属性がRである信号電荷R1が供給される。他の電極も同様である。
次に時刻t=2にて、ラインメモリ、および電極HS1、HS3にレベル“H”の駆動信号が供給され、電極HS2、HS4にレベル“L”の駆動信号が供給され、また電極HS1、および電極HS3にレベル“L”の駆動信号が供給される。この駆動信号により、電極HS1、および電極HS3におけるポテンシャル電位が低くなり電極HS1、電極HS3においてパケットが形成される。よって、電極HS2、および電極HS4におけるパケットに存在していた信号電荷が、電極HS1、および電極HS3におけるパケットへと転送され、電極HS1、および電極HS3におけるパケットに、2つの画素の信号電荷が蓄積する。たとえば電極HS1bには、信号電荷G1と信号電荷R1の2つの信号電荷が蓄積する。
次に時刻t=3にて、ラインメモリ、および電極HS1、HS3、HS4にレベル“H”の駆動信号が供給され、また電極HS2にレベル“L”の駆動信号が供給されて、電極HS4におけるポテンシャル電位が低くなる。なお時刻t=3では、各信号電荷は移動しない。
次に時刻t=4にて、ラインメモリ、および電極HS1、HS4にレベル“H”の駆動信号が、また電極HS2、HS3にレベル“L”の駆動信号が供給され、電極HS3におけるポテンシャル電位が高くなる。その結果、電極HS3aにおけるパケットに存在していた信号電荷G4、および信号電荷B2が、左隣の電極、すなわち電極HS4bへ移動する。
次に時刻t=5にて、ラインメモリ、および電極HS1にレベル“H”の駆動信号が、また電極HS2、HS3、HS4にレベル“L”の駆動信号が供給され、電極HS4におけるポテンシャル電位が高くなる。その結果、電極HS4bにおけるパケットに存在していた信号電荷が、左隣の電極、すなわち電極HS1aへ転送され、電極HS1aに、画素4つ分の信号電荷、すなわち本実施例では、信号電荷G3、信号電荷R2、信号電荷G4、および信号電荷B2が蓄積する。
その後時刻t=6までは、ラインメモリ、および電極HS1にレベル“H”の駆動信号が、また電極HS2、HS3、HS4にレベル“L”の駆動信号が供給されるため、信号電荷の転送はない。その後、時刻t=6にて、電極HS1にレベル“H”の駆動信号が、またラインメモリ、電極HS2、HS3、およびHS4にレベル“L”の駆動信号が供給される。なおラインメモリにレベル“H”の駆動信号が供給されても、各電極におけるポテンシャル電位や信号電荷の位置等は図4(b)時刻t=5の状態と変わらないので、図示を省略する。
時刻t=7にて、ラインメモリ、および電極HS2にレベル“H”の駆動信号が、また電極HS1、HS3、およびHS4にレベル“L”の駆動信号が供給される。その結果、電極HS1におけるポテンシャル電位が高くなって、電極HS2におけるポテンシャル電位が低くなる。よって、電極HS1aに存在していた信号電荷G3、信号電荷R2、信号電荷G4、および信号電荷B2が左隣の電極、すなわち電極HS2aに転送される。また電極HS3bに存在していた信号電荷G2と信号電荷B1とが左隣の電極、すなわち電極HS2bに転送される。
時刻t=8にて、ラインメモリ、および電極HS3にレベル“H”の駆動信号が、また電極HS1、HS2、およびHS4にレベル“L”の駆動信号が供給され、電極HS2におけるポテンシャル電位が高くなって、電極HS3におけるポテンシャル電位が低くなる。その結果、電極HS2aに存在していた信号電荷G3、信号電荷R2、信号電荷G4、および信号電荷B2の4つの信号電荷が左隣の電極、すなわち電極HS3bに転送される。
次に時刻t=9にて、ラインメモリ、および電極HS2にレベル“H”の駆動信号が、また電極HS1、HS3、およびHS4にレベル“L”の駆動信号が供給され、電極HS3におけるポテンシャル電位が高くなって、電極HS2におけるポテンシャル電位が低くなる。その結果、電極HS3bに存在していた信号電荷G3、信号電荷R2、信号電荷G4、および信号電荷B2の4個の信号電荷が左隣の電極、すなわち電極HS2bに転送される。電極HS2bにはそれまで信号電荷G2、信号電荷B1の2個の信号電荷が蓄積されていたため、この転送によって6個の画素の信号電荷が電極HS2bに蓄積されるようになる。
最後に時刻t=10にて、ラインメモリ、および電極HS1にレベル“H”の駆動信号が、また電極HS2、HS3、およびHS4にレベル“L”の駆動信号が供給され、電極HS2におけるポテンシャル電位が高くなって、電極HS1におけるポテンシャル電位が低くなる。その結果、電極HS2bに蓄積していた6個の画素の信号電荷が左隣の電極、すなわち電極HS1aに転送される。電極HS1aにはすで2個の画素の信号電荷が蓄積されていたため、この転送によって8個の画素の信号電荷が蓄積されるようになる。
以上のようにして8個の画素を混合し、基準信号の画素200を形成する。また本実施例では、図示しないがこの画素200の後段に、この混合により電荷を失った画素、すなわち空画素が3個形成される。なお空画素は、基準信号の画素200の後段に少なくとも2つあればよく、本実施例に限定するわけではない。
このようにして基準信号の画素200、および基準信号の画素200の後ろに連続する3個の空画素を形成すると、固体撮像素子44は、この基準信号の画素200、及び空画素を分岐部54で分岐させて、一方の水平転送路に基準信号200と3つの空画素のうちの1つを供給し、また他方の水平転送路に残りの2つの空画素を供給する(ステップS2)。
図18は、図15〜図17に示す処理によって形成された基準信号の画素200および基準信号の画素200の後段に形成される空画素202〜206を、分岐部54から水平転送路56、58へ転送する状況を概念的に示した図であって、転送効率を算出する処理例を概念的に示した図である。図18において、図4、図16と同じ参照番号は同様の構成要素を示す。図18において基準信号の画素200、および空画素202〜206は水平転送路50から分岐部54へ供給される。分岐部54での分岐によって、水平転送路56へは基準信号の画素200、空画素204が順に供給される。また水平転送路58へは、水平転送路50において基準信号の画素200のすぐ後ろに位置していた空画素202、および空画素206が順に供給される。
基準信号の画素200、空画素204は順に水平転送路56により出力アンプ60へ転送され、出力アンプ60が基準信号の画素200、および空画素204を含む信号82を出力する。また、空画素202、および空画素206も同様に、順に水平転送路58により出力アンプ62へ転送され、出力アンプ62が空画素202、206を含む信号84を出力する。その後これらの信号82、84は、前処理部22で処理されてディジタル信号110、112に生成されてメモリ部24に格納される。
このとき、分岐部54から水平転送路56へ分岐する際に、信号電荷の取り残しがあると、分岐後の空画素202にこの取り残した信号電荷が入るようになる。よって、信号処理部26が、メモリ24から、基準信号の画素200および空画素202を、ディジタル信号118としてバス114および信号線120を介して読み出し、数1により、分岐部54から水平転送路56へ転送する際の転送効率HTRHSL1を算出する(ステップS3)。なお数1において、Sは基準信号の画素200の信号量、Tは空画素202から検出された、取り残した信号電荷の量、すなわち残留電荷量である。なお本発明はこれに限定するわけではなく、任意の部分で行うことが可能である。
また、分岐後、空画素204には、水平転送路56において後段に取り残した信号電荷が入るようになる。よって、本実施例では同様に、信号処理部26で空画素204に存在している残留電荷量を検出して、転送効率HTRos1を算出する(ステップS4)。転送効率HTRos1も、上述した数1における変数Tを、空画素204から検出された残留電荷量にすることで、算出することが可能である。とくに空画素204には、水平転送路56における最終段、すなわち、図5に示すアウトプットゲートからフローティングディフュージョンアンプの間で取り残す残留電荷量が入るようになるため、この空画素204を用いて算出された転送効率の維持は、画像の劣化等の影響を改善するのに特に役立つ。
このようにして、分岐部54から水平転送路56へ信号電荷を分岐する際の転送効率、および水平転送路56における転送効率を算出する。なお同様にして、図18に示すように、水平転送路58においても転送効率HTRHSL2、および転送効率HTRos1を算出することが可能である。具体的には図18に示すように図15〜図17の処理により作成された基準信号の画素200を水平転送路58に供給し、その後空画素204に存在する信号電荷を検出すれば、水平転送路58における転送効率HTRos2を算出することが可能である。また空画素202に存在する信号電荷を検出すれば、分岐部54から水平転送路58へ信号電荷を分岐する際の転送効率HTRHSL2を算出することが可能である。
なお算出する転送効率は、たとえばある一定の信号量の基準信号200に対する転送効率であってもよいし、また図20、図21に示すように、基準信号の画素200の信号量によって残留電荷量が変わるため、信号量の異なる基準信号の画素200をいくつか形成し、信号量毎に算出してもよい。なお本発明は図13〜図19に示すやり方で転送効率を算出することに限定するわけではなく、公知のやり方を採用して算出することが可能である。
図20は、基準信号の画素200の信号量を変えて残留電荷量を測定した際の測定結果を概念的に示した図であり、図21は図20に示す残留電荷量から算出された転送効率を概念的に示した図である。図20において、横軸は基準信号の画素200の信号量(mV)を示し、縦軸は残留電荷量(mV)を示している。また図20では、分岐部54における残留電荷をそれぞれ検出した結果が示され、折れ線232は分岐部54から水平転送路56へ信号電荷を分岐する際の残留電荷、すなわち、図18における空画素202から検出された信号量を示し、また折れ線234は分岐部54から水平転送路58へ信号電荷を分岐する際の残留電荷、すなわち、図19における空画素202から検出された信号量を示している。また図21には、図20に示す各値から算出されたそれぞれの転送効率HTRHSL1、HTRHSL2が示されている。なお本発明は分岐部54における転送効率に限定するわけではなく、同様にして水平転送路56、58における転送効率を基準信号の画素200の信号量毎に算出することも可能である。
図22は、図1に示す固体撮像装置10において、図13に示す手順で転送効率を算出し、得られた転送効率を用いてデューティサイクルの変動値を設定する処理の一例を示した流れ図である。図22において、変動値を設定するために、図13に示す手順でデューティサイクルや周期の変動値を設定する部分の転送効率を算出する(ステップS1)。たとえば、本実施例では、分岐部54から水平転送路56への転送時間を拡大する際に用いる変動値を決めるため、ある信号量の画素200を形成し、図21に示すように分岐部54から水平転送路56へ信号電荷を分岐する際の転送効率HTRHSL1、および分岐部54から水平転送路58へ信号電荷を分岐する際の転送効率HTRHSL2を算出する。
なおこのときに算出される転送効率は変動値を設定する際に基準とするものであるため、ステップS1で転送効率を算出する際は、通常の駆動、すなわち駆動信号φHL、φHP1、φHP2のデューティサイクルを50%にし、かつ一定の周期にすることが好ましいが、本発明はこれに限定するわけではない。
このようにして分岐部54から水平転送路56、58へ、信号電荷を分岐する際の各転送効率を得ると、一方の転送効率が、基準値を上回っているか否かを判断する(ステップS2)。たとえば本実施例では、水平転送路56の転送効率HTRHSL1が、基準値を上回っているか否かを判断する。
基準値は、任意に設定した値を採用することが可能である。たとえばステップS1で算出された転送効率HTRHSL1、HTRHSL2を基にして設定した値であってもよいし、経験等によって設定された値であってもよい。なお本発明はこれに限定するわけではない。たとえば本実施例では、図21に点線242、244に示すように基準値を設定している。図21において、点線242は分岐部54から水平転送路56へ分岐する際の転送効率の基準値、また点線244は分岐部54から水平転送路58へ分岐する際の転送効率の基準値である。
また本実施例では、分岐部54から水平転送路56へ分岐する際に転送劣化が発生すると画像に与えてしまう影響が大きいため、分岐部54から水平転送路56へ分岐する際の転送効率の基準値を、分岐部54から水平転送路58へ分岐する際の転送効率の基準値よりも厳しく設定している。なお本発明はこれに限定するわけではなく、分岐部54から水平転送路56への分岐と、分岐部54から水平転送路58への分岐とで同じ基準値を設定してもよいし、本実施例のようにそれぞれに基準値を設定してもよく、任意に選択することが可能である。
ステップS2における判断の結果、転送効率HTRHSL1が基準値を上回っている場合は、ステップS3へ進み、他方の転送効率、具体的には、分岐部54から水平転送路58へ分岐する際の転送効率HTRHSL2が基準値を上回っているか否かを判断する(ステップS3)。
ステップS3における判断の結果、転送効率HTRHSL2も基準値を上回っている場合は、変動値を設定する処理を終了する。一方、ステップS3における判断の結果、転送効率HTRHSL2が基準値よりも下回っている場合は、各駆動信号のデューティサイクルや周期を調整する(ステップS4)。具体的には、駆動信号φHL、φHP1、φHP2などのデューティサイクルや周期を調整する。なおどの程度変えるかは任意に設定することが可能であり、たとえば転送効率HTRHSL1が基準値をどの程度上回っているかに応じて設定してもよいし、またたとえば転送効率HTRHSL2が基準値をどの程度下回っているかに応じて設定してもよいし、さらにたとえば1回の調整での変更量、たとえばデューティサイクルを5%上げるといったような値を設定をしておき、この変更量に基づく調整を行なってもよい。なお本発明はこれに限定するわけではない。
ステップS4における調整後は、ステップS1へと戻り、再び転送効率HTRHSL1、HTRHSL2を算出し、得られた転送効率HTRHSL1、HTRHSL2が基準値を上回っているか否かを判断し、転送効率HTRHSL1、および転送効率HTRHSL2が基準値を上回っている場合は処理を終了する。このようにステップS1に戻るのは、分岐部54から水平転送路58へ分岐する際の転送効率HTRHSL2が改善されたか否かを判断するためであり、また、ステップS4においてデューティサイクルや周期を変更したことによって、分岐部54から水平転送路56へ分岐する際の転送効率HTRHSL1が基準値を下回るようになっていないかを確認するためである。
またステップS2における判断の結果、一方の転送効率HTRHSL1が基準値を下回っている場合は、ステップS5へ進み、他方の転送効率HTRHSL2が基準値を上回っているか否かを判断する(ステップS5)。この判断の結果、転送効率HTRHSL2も基準値を下回っている場合は、変動値設定不能と判断し(ステップS6)、処理を終了する。
一方、転送効率HTRHSL2が基準値を上回っている場合は、転送効率HTRHSL1が上がるように各駆動信号のデューティサイクルや周期を調整する(ステップS7)。なおどの程度変えるかは、ステップS4と同様に、任意に設定することが可能である。変更後は、ステップS1へ戻り、ステップS7における変更により転送効率HTRHSL1がどの程度改善されたか、また、他方の転送効率HTRHSL2が基準値を下回るようになっていないかを判断する。
以上のようにして転送効率HTRHSL1、および転送効率HTRHSL2を測定しながら変動値を設定する。よって、たとえばデューティサイクルや周期を変更した結果、一方の水平転送路における転送効率の劣化は改善されるが、他方の水平転送路における転送効率が劣化してしまうといった問題を防ぐことが可能であり、状況に応じた変動値を得ることが可能である。なお本実施例では、分岐部54から水平転送路56、58へ分岐する際の変動値について設定しているが、分岐前の電極HLから分岐部54の電極HSLへの転送時間を変更する際の変動値についても同様のやり方を採用して設定することが可能である。
なおこのような変動値の設定は、たとえば高温時、高感度時、高速読み出し時、または色温度が極端に高い状況や低い状況といったように、転送効率が劣化しやすい状態で設定した方が、転送劣化をより改善する変動値を得ることが可能になるため好ましい。また、固体撮像素子44や固体撮像装置10の工場出荷時に転送効率の算出、および変動値の設定を行った方が、固体撮像装置10の個体差を吸収することが可能になるため好ましい。なお本発明はこれに限定するわけではなく、任意の状況、また任意の段階で変動値を設定することが可能である。