JP4631633B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
前記駆動輪が駆動スリップ状態であるとき前記駆動輪へ伝達される駆動力を制御する駆動力制御手段を備えた車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、前記駆動輪へ伝達される駆動力を低く抑える駆動力低減制御モード中、アクセル開度が設定値以上であるのに対し車輪速が設定車輪速以上に上がらない場合、前記駆動力低減制御モードを停止して、アクセル開度が大きいほど前記駆動輪の目標回転数である目標駆動輪回転数を高く設定し、駆動輪回転数が該設定した目標駆動輪回転数となるように駆動力を制御する駆動輪回転数制御モードに切り替えることを特徴とする。
すなわち、駆動輪回転数制御モードでは、駆動輪回転数により決まる最大駆動力以下の駆動力調整範囲内で路面の転がり抵抗と釣り合う駆動力が出され、この駆動力により深雪や砂地では駆動輪のタイヤが雪や砂を掻き出すことができ、大抵抗スリップ路を走破することが可能となる。
この結果、駆動力制御中、駆動力制御モードの切り替えにより、高度なアクセル操作テクニックを要することなく、大抵抗スリップ路での走破性を確保することができる。
図1は実施例1の駆動力制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両の駆動系を示す全体システム図である。
実施例1におけるハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2と、動力分割機構TM(遊星ギア機構)と、プロペラシャフトPSと、リアディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を備えている。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
前記両モータジェネレータMG1,MG2は、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この状態を「回生」と呼ぶ)。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギア比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギアSとリングギアRの歯数比λに基づき、(S〜PC):(PC〜R)の長さの比を1:λになるように配置したものである。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、パワーコントロールユニット3(強電ユニット)と、バッテリ4(二次電池)と、ブレーキコントローラ5と、統合コントローラ6と、を有して構成されている。
実施例1のハイブリッド車両の駆動力は、図2(b)に示すように、エンジン直接駆動力(エンジン総駆動力から発電機駆動分を差し引いた駆動力)とモータ駆動力(両モータジェネレータMG1,MG2の総和による駆動力)との合計で示される。その最大駆動力の構成は、図2(a)に示すように、低い車速ほどモータ駆動力が多くを占める。このように、変速機を持たず、エンジンEの直接駆動力と電気変換したモータ駆動力を加えて走行させることから、低速から高速まで、定常運転のパワーの少ない状態からアクセルペダル全開のフルパワーまで、ドライバの要求駆動力に対しシームレスに応答良く駆動力をコントロールすることができる(トルク・オン・デマンド)。
実施例1のハイブリッド車両では、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時には、モータとして作動している第2モータジェネレータMG2を、ジェネレータ(発電機)として作動させることにより、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ4に回収し、再利用する回生ブレーキシステムを採用している。
この回生ブレーキシステムでの一般的な回生ブレーキ協調制御は、図3(a)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、要求制動力に大きさにかかわらず、算出された要求制動力を回生分と油圧分とで分担することで行われる。
これに対し、実施例1のハイブリッド車両で採用している回生ブレーキ協調制御は、図3(b)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、算出された要求制動力に対し回生ブレーキを優先し、回生分で賄える限りは油圧分を用いることなく、最大限まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。
実施例1のハイブリッド車両での車両モードとしては、図4の共線図に示すように、「停車モード」、「発進モード」、「エンジン始動モード」、「定常走行モード」、「加速モード」を有する。
「停車モード」では、図4(a)に示すように、エンジンEと発電機MG1とモータMG2は止まっている。「発進モード」では、図4(b)に示すように、モータMG2のみの駆動で発進する。「エンジン始動モード」では、図4(c)に示すように、エンジンスタータとしての機能を持つ発電機MG1によって、サンギアSが回ってエンジンEを始動する。「定常走行モード」では、図4(d)に示すように、主にエンジンEにて走行し、効率を高めるために発電を最小にする。「加速モード」では、図4(e)に示すように、エンジンEの回転数を上げると共に、発電機MG1による発電を開始し、その電力とバッテリ4の電力を使ってモータMG2の駆動力を加え、加速する。
なお、後退走行は、図4(d)に示す「定常走行モード」において、エンジンEの回転数上昇を抑えたままで、発電機MG1の回転数を上げると、モータMG2の回転数が負側に移行し、後退走行を達成することができる。
なお、「駆動力低減制御」を「トラクションコントロール制御」といい、「駆動輪回転数制御」を「ドライブシャフト回転数制御」という。
このアクセル−ドライブシャフト回転数テーブルは、図7(a)に示すように、アクセル開度の全開位置(100%)でのドライブシャフト回転数(もしくは車輪速)をドライブシャフト回転数最大値(ユニット保護制限回転数以下の回転数もしくは車速に設定する。例えば、30km/h相当)とし、アクセル開度が全閉位置から全開位置までアクセル開度の大きさに比例してドライブシャフト回転数(目標値)を決めるために表や一次式等により与えられた特性である。
[背景技術]
トラクションコントロールは、車輪の空転を検知し、空転を抑制するために駆動力を小さく抑える。深雪・砂地等の空転し易く、かつ、転がり抵抗や走行抵抗が大きな大抵抗スリップ路での走行時、トラクションコントロールが動作していると、空転抑制のために駆動力が絞られるため、タイヤを空転させて雪や砂を掻き出して走行することはできない。このことから、トラクションコントロールを動作させて、深雪・砂地等を走破することが困難なことが知られている。
1)リングギアRとサンギアSとの回転数差大によるピニオンPの過回転による軸受破損。
2)第2モータジェネレータMG2が高回転に至ると、第2モータジェネレータ出力が大となり、高電圧回路に過電流が発生することによる回路破損。
これに対し、実施例1の駆動力制御装置では、駆動力制御中に大抵抗スリップ路が検出されると、駆動輪へ伝達される駆動力を低く抑えるトラクションコントロール制御モードから、所定のドライブシャフト回転数とするドライブシャフト回転数制御モードに切り替えることで、高度なアクセル操作テクニックを要することなく、大抵抗スリップ路での走破性を確保することができるようにした。
aの区間:駆動力特性に示すように、トラクションコントロール制御が作動している領域である。この領域では、駆動輪車輪速がほとんど出ていない状態であり、駆動力が駆動輪に伝達できない状態である。
すなわち、ドライブシャフト回転数制御モードでは、図7(b)に示すように、ドライブシャフト回転数により決まる最大駆動力以下の駆動力調整範囲内で路面の転がり抵抗と釣り合う駆動力が出され、この駆動力により深雪や砂地では駆動輪のタイヤが雪や砂を掻き出すことができ、大抵抗スリップ路を走破することが可能となる。
この結果、駆動力制御中、駆動力制御モードの切り替えにより、高度なアクセル操作テクニックを要することなく、大抵抗スリップ路での走破性を確保することができる。
例えば、氷雪路等の極低μ路は、駆動スリップし易く、かつ、転がり抵抗(走行抵抗)が小の路面であるため、ドライバーは転がり抵抗に釣り合う小さな駆動力を出すようにアクセル開度を小さく抑えてしまう。これに対し、深雪・砂地・低μ路段差路等の大抵抗スリップ路は、駆動スリップし易く、かつ、転がり抵抗(走行抵抗)が大の路面であるため、ドライバーは転がり抵抗に対抗するように大きな駆動力を出そうとするが、駆動力の出し過ぎにより空転を加速してしまい、車輪速が出ず車両は停止したままとなる。
したがって、上記のように、極低μ路等とはアクセル操作量が大きく異なると認識した上で、アクセル開度条件と車輪速条件を設定し、これに時間継続条件を付加することで、駆動輪が駆動スリップし易く、かつ、転がり抵抗が大きい深雪・砂地・低μ路段差路等の大抵抗スリップ路を精度良く検出することができる。
例えば、アクセル踏み込み操作状態での駆動スリップの発生に基づき、駆動力を低減するトラクションコントロール制御を行っている状態から、ドライブシャフト回転数制御に切り替える際、トラクションコントロール制御中のドライブシャフト回転数が、ドライブシャフト回転数制御での目標ドライブシャフト回転数より小さい場合、ドライバーの意図しない加速が発生してしまう。
これに対し、アクセル開度がほぼ閉じている状態で(実ドライブシャフト回転数より、ドライブシャフト回転数制御モードでの目標ドライブシャフト回転数が小さくなる状態)、トラクションコントロール制御モードからドライブシャフト回転数制御モードへのモード遷移を実行することで、ドライバーの意図しない加速を防止することができる。
例えば、大抵抗スリップ路の場合、トラクションコントロール制御を解除し、ドライバーのアクセル操作により、ドライブシャフト回転数が一定回転数になるようにコントロールすることは、きわめて困難である。また、アクセル開度にかかわらず、一定の目標ドライブシャフト回転数を与えた場合、転がり抵抗や走行抵抗の大きさによっては、雪や砂を掻き出すための駆動力が不足したり、また、過剰となる場合がある。
これに対し、深雪、砂地等の転がり抵抗や走行抵抗の大きな大抵抗スリップ路において、ドライバーが一定のホイール空転量を得るのにアクセルペダルをコントロールすることで行える。このため、転がり抵抗や走行抵抗が異なる大抵抗スリップ路にて、一定量で空転させて走行するシーンにおいて、ドライバーによる容易なアクセルコントロールにより、抵抗の大小にかかわらず、最適な走破性を得るドライブシャフト回転数制御を行うことができる。
したがって、ドライブシャフト回転数制御時、ドライブシャフト回転数最大値の制限により駆動輪の過大空転を防止しつつ、アクセル−ドライブシャフト回転数テーブルを用いて簡単に適正な目標ドライブシャフト回転数を得ることができる。
すなわち、図5のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10→ステップS11→ステップS13→ステップS14という流れを繰り返し、ステップS14の時間条件が成立してステップS15へと進み、ドライブシャフト回転数制御モードを停止する。
したがって、大抵抗スリップ路から通常路面(低μ路含む)走行に切り替えるとき、切替スイッチ等を設けずに、自動的に大抵抗スリップ路から走破したことを判定し、ドライブシャフト回転数制御を停止することができる。
すなわち、図5のフローチャートにおいて、ステップS9→ステップS10へと進み、ステップS10での過大スリップ条件が成立すると、ステップS10からステップS15へと進み、ドライブシャフト回転数制御モードを停止する。
したがって、大抵抗スリップ路において、誤って一気に回転数を上げ過ぎ、急な回転数上昇によりタイヤが深雪、砂地等に埋もれて走破不能となった状態のとき、この走破不能となる状態を判別し、ドライブシャフト回転数制御より脱出に有効なトラクションコントロール制御に切り替えることができる。
すなわち、図5のフローチャートにおいて、ステップS15からステップS16へと進み、ステップS16でのモード遷移条件が成立すると、ステップS16からステップS17へと進み、ドライブシャフト回転数制御モードからトラクションコントロール制御モードへとモード遷移する。
例えば、大抵抗スリップ路から低μ路等へ脱出し、アクセルを踏み込みにより駆動スリップが発生している発進状態でドライブシャフト回転数制御モードからトラクションコントロール制御モードへとモード遷移を行うと、急にドライブシャフト回転数が上昇しながら駆動力が低下し、車両挙動の急変を伴うことでドライバーに違和感を与える。
これに対し、発進前の車両停止状態になったことを確認してドライブシャフト回転数制御モードからトラクションコントロール制御モードへのモード遷移を実行することで、ドライバーに与える違和感を防止し、スムーズにトラクションコントロール制御モードへ移行することができる。
したがって、システム構成ユニットを過回転や過電流から保護するシステム保護制限回転数の範囲内で左右後輪RL,RRの回転数を制御するドライブシャフト回転数制御により、大抵抗スリップ路での走破性を確保しながら、単純遊星歯車組や高電圧回路の破損を確実に防止することができる。
実施例1の車両の駆動力制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
MG1 第1モータジェネレータ(動力源)
MG2 第2モータジェネレータ(動力源)
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
TM 動力分割機構(遊星ギア機構)
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 パワーコントロールユニット
4 バッテリ
5 ブレーキコントローラ
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 前左車輪速センサ
13 前右車輪速センサ
14 後左車輪速センサ
15 後右車輪速センサ
16 操舵角センサ
17 マスタシリンダ圧センサ
18 ブレーキストロークセンサ
19 ブレーキ液圧ユニット
20 前左車輪ホイールシリンダ
21 前右車輪ホイールシリンダ
22 後左車輪ホイールシリンダ
23 後右車輪ホイールシリンダ
Claims (7)
- 動力源からの駆動力を駆動輪に伝達する駆動系を有し、
前記駆動輪が駆動スリップ状態であるとき前記駆動輪へ伝達される駆動力を制御する駆動力制御手段を備えた車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、前記駆動輪へ伝達される駆動力を低く抑える駆動力低減制御モード中、アクセル開度が設定値以上であるのに対し車輪速が設定車輪速以上に上がらない場合、前記駆動力低減制御モードを停止して、アクセル開度が大きいほど前記駆動輪の目標回転数である目標駆動輪回転数を高く設定し、駆動輪回転数が該設定した目標駆動輪回転数となるように駆動力を制御する駆動輪回転数制御モードに切り替えることを特徴とする車両の駆動力制御装置。
御装置。 - 請求項1に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、駆動力低減制御モードを停止した場合、要求駆動力がほぼゼロで、かつ、アクセル開度がほぼ閉じている状態を判断し、駆動力低減制御モードから駆動輪回転数制御モードへのモード遷移を実行することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1または2に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、アクセル開度の全開位置での目標駆動輪回転数を駆動輪回転数最大値とし、アクセル開度が全閉位置から全開位置までアクセル開度の大きさに比例して目標駆動輪回転数を決める目標駆動輪回転数テーブルを予め設定しておき、駆動輪回転数制御時、前記目標駆動輪回転数テーブルとアクセル開度検出値とに基づき設定された目標駆動輪回転数を得る制御を行うことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、駆動輪回転数制御モード中、駆動輪のスリップ量が第1設定スリップ量まで収束した状態が設定時間以上継続した場合、駆動輪回転数制御モードを停止することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項4に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、駆動輪回転数制御モード中、駆動輪のスリップ量が前記第1設定スリップ量より大きい第2設定スリップ量を超えた場合、駆動輪回転数制御モードを停止することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項4または5に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記駆動力制御手段は、駆動輪回転数制御モードを停止した場合、アクセル開度がほぼゼロで、かつ、車速が設定車速以下である状態を判断し、駆動輪回転数制御モードから駆動力低減制御モードへのモード遷移を実行することを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 請求項1乃至6の何れか1項に記載された車両の駆動力制御装置において、
前記車両は、動力源としてエンジン及び2つのモータジェネレータを有し、これらの出力を遊星ギア機構により合成したり分配し、2輪または4輪の駆動輪に駆動力を伝達するハイブリッド車両であり、
前記ハイブリッド車両は、遊星ギア機構を単純遊星歯車組とし、単純遊星歯車組のピニオンを支持するキャリアにエンジンを連結し、サンギアに第1モータジェネレータを連結し、リングギアに第2モータジェネレータと駆動輪を共に連結した駆動ユニットを備え、
前記駆動力制御手段は、駆動輪回転数制御モードでの駆動輪回転数最大値を、前記遊星ギア機構の過回転あるいはモータ用高電圧回路の過電流を防止するシステム保護制限回転数以下となるように設定することを特徴とする車両の駆動力制御装置。
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