JP4630429B2 - 燃料電池付建物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化による化学エネルギーを熱に変えることなく、直接電気エネルギーに変換できる燃料電池を備えた燃料電池付建物に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、環境や生態系に悪影響を与えないエネルギーとして太陽エネルギーが知られており、この太陽エネルギーを利用して電力や温水が得られるようにする太陽電池や太陽熱コレクタ等の太陽エネルギー利用手段がある(特開平7−180312号公報等参照)。
このような太陽エネルギー利用手段は、建物の屋根に設けられるのが一般的である。
【0003】
また、近年、エネルギー変換手段として、水素および酸素の結合により発生する化学エネルギーを熱に変えることなく、直接電気エネルギーに変換する燃料電池が注目されている。この燃料電池は、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できることから、エネルギー効率が高いうえ、可動部分がないため、騒音が少ないという特長を有するものである。
さらに、燃料電池を運転しても、水素および酸素を利用する場合には、二酸化酸素等の排出がなく、エタン等を利用する場合には、二酸化炭素等の排出量が少ないため、地球の温暖化防止に寄与できる。
このような燃料電池および太陽エネルギー利用手段を設け、建物の内部で消費される電力および熱を自給することを可能とするために、当該建物内にエネルギーを供給するにあたり、太陽光が得られる昼間は、太陽エネルギー利用手段から建物内へエネルギーを供給し、太陽光が得られない夜間は、燃料電池から建物内へエネルギーを供給するようにしている。
また、日出、日没および曇りの太陽光の日射量が少ない場合は、太陽エネルギー利用手段および燃料電池の両方から建物内へエネルギーを供給するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような太陽エネルギー利用手段と燃料電池とを設け、これらを同時に運転すると、太陽エネルギー利用手段が出力するエネルギーによっては、燃料電池が出力するエネルギーを著しく小さくしなければならず、建物でのエネルギー需要の変動に応じて燃料電池を運転しようとすると、当該燃料電池の運転効率が低下し、燃料電池の燃料が無駄となるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、燃料電池の燃料を無駄にすることなく、燃料電池を効率よく運転することが可能となる燃料電池付建物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、図面をも参照して説明すると、酸化による化学エネルギーを熱に変えることなく、直接電気エネルギーに変換できる燃料電池10を備えた燃料電池付建物1であって、太陽エネルギーを利用してエネルギーを発生させる太陽エネルギー利用手段20が設けられ、当該燃料電池付建物1内でのエネルギー需要に応じて、前記燃料電池10のエネルギー出力および前記太陽エネルギー利用手段20のエネルギー出力の出力比を調整するためのエネルギー出力調整手段30を備え、前記エネルギー出力調整手段には、予め、時刻に応じて変化する前記燃料電池付建物内でのエネルギー需要量と、時刻に応じて変化する前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量とを変数とし、これらの変数に対して変化する前記燃料電池の時刻ごとの所定出力量以上かつ最大出力量以下の最適運転時エネルギー出力量の二次元的な軌跡を二次元マップ化し、この二次元マップが蓄積されるマップ蓄積手段38と、前記建物内でのエネルギー需要量、および、前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量に対応する燃料電池のエネルギー出力量を、前記マップ蓄積手段から二次元マップに基づいて算出し、当該燃料電池のエネルギー出力量を制御する制御手段39と、前記建物内でのエネルギー需要量と、前記太陽エネルギー利用手段のエネルギー出力量とを比較し、前記エネルギー出力量が前記エネルギー需要量を上回った場合には前記燃料電池を停止させ、前記エネルギー出力量が前記エネルギー需要量を下回った場合には前記燃料電池を起動させる優先順位変更手段37と、が設けられ、前記制御手段は、前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量が前記エネルギー需要量未満であり、かつ、前記エネルギー需要量が前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量と前記所定出力量との加算値未満である場合には、前記燃料電池のエネルギー出力量を前記所定出力量に制御し、前記エネルギー需要量が前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量と前記所定出力量との加算値以上である場合には、前記燃料電池のエネルギー出力量を前記所定出力量以上かつ前記最大出力量以下に制御することを特徴とする。
このような本発明では、太陽エネルギー利用手段20および燃料電池10の両方を運転する必要があっても、太陽エネルギー利用手段20のエネルギー出力の大小に関わらず、燃料電池10が所定出力量以上に運転するようにエネルギー出力調整手段30が調整するようにできるので、燃料電池10の燃料が無駄とならず、燃料電池10を効率よく運転することが可能となる。
なお、太陽エネルギー利用手段20の余剰電力は、商用電源への逆潮、バッテリー等の蓄電手段への蓄電、貯湯槽等の蓄熱手段への電力供給に利用される。
【0009】
さらに、太陽エネルギー利用手段20として、太陽光エネルギーを電力に変換する複数の太陽電池パネル21が設けられていることが望ましい。
このようにすれば、太陽電池パネル21で得られた電力が建物1の負荷に供給可能となり、太陽電池パネル21からの余剰電力を、例えば、商用電源に逆潮する、あるいは、バッテリー等の蓄電手段に蓄電するようにすれば、太陽電池パネル21から供給される電力が無駄にならず、当該電力が最大限に利用することが可能となる。
【0010】
また、太陽エネルギー利用手段20として、太陽光の放射熱を吸収して内部に流通される熱媒体を加熱する太陽熱収集器40が設けられていることが望ましい。
このようにすれば、太陽熱収集器40で得られる熱により、建物1の床暖房および給湯設備への温水の供給が行えるようになり、給湯設備の温水を強制的に循環させるポンプ43の運転を太陽電池パネル21からの余剰電力で行えば、太陽電池パネル21からの電力が無駄とならず、当該電力が最大限に利用することが可能となる。
【0011】
さらに、前記燃料電池10は、固体高分子電解質を使用する固体高分子型燃料電池であることが望ましい。
このようにすれば、燃料電池10の内部に電解溶液等の液体を必要としない簡単な構造であるので、燃料電池10自体の小型化および軽量化が図れるようになるうえ、燃料電池の燃料となる水素と酸素の供給量を調節することにより、燃料電池10のエネルギー出力を自由に調節可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る建物としての住宅1が示されている。この住宅1は、高断熱および高気密の住宅とされ、空調エネルギーの損失が少ないものとなっている。
住宅1には、電力会社から供給される電力とは別に電力を発生する発電設備が設けられている。この発電設備には、水素と酸素の結合による化学エネルギーを熱に変えることなく、直接電気エネルギーに変換できる燃料電池10と、太陽エネルギーを利用してエネルギーを発生させる太陽エネルギー利用手段20とが設けられている。
また、住宅1には、商用電源から交流電力が供給される受電盤3と、この受電盤3に接続される分電盤4と、この分電盤4から交流電力が供給される負荷5と、住宅1内でのエネルギー需要に応じて、燃料電池10のエネルギー出力および太陽エネルギー利用手段20のエネルギー出力の出力比を調整するためのエネルギー出力調整手段30とが設けられている。
受電盤3は、商用電源から供給された電力を計測する買電積算電力計3A、および、商用電源側へ逆潮した逆潮電力を計測する売電積算電力計3Bと、これらの積算電力計の二次側に接続されたブレーカ3Cとを備えたものである。
分電盤4には、商用電源からの過電流を防止するブレーカ4Aと、燃料電池10等からの過電流を防止するブレーカ4Bとが設けられている。ブレーカ4Aは、受電盤3のブレーカ3Cと接続されている。
また、分電盤4には、燃料電池10等から複数の負荷5へ流れる電流を計測する変流器6と、電圧を計測する変圧器7とが接続されている。これらの変流器6および変圧器7で計測した電流値および電圧値は、エネルギー出力調整手段30へ送出されるようになっている。
【0013】
燃料電池10は、固体高分子電解質を使用する固体高分子型燃料電池である。
この燃料電池10は、固体材料のみで形成され、電解溶液等の液体を内部に充填する必要のないものとなっている。
燃料電池10には、直流電力を交流電力に変換するインバータ11が接続されている。燃料電池10で発電された電力は、インバータ11を介して複数の負荷5に供給されるようになっている。
インバータ11とブレーカ4Bとを接続する電送路12には、燃料電池10から複数の負荷5へ流れる電流を計測する変流器13と、当該電送路12の電圧を計測する変圧器14とが接続されている。これらの変流器13および変圧器14で計測した電流値および電圧値は、エネルギー出力調整手段30へ送出されるようになっている。
【0014】
住宅1の屋根2には、太陽エネルギー利用手段20として、太陽光エネルギーを電力に変換する複数の太陽電池パネル21と、太陽光の放射熱を吸収して内部に流通される熱媒体を加熱する太陽熱収集器40とが設けられている。
太陽電池パネル21には、当該太陽電池パネル21で発電された電力を集めるとともに、雷等により発生するサージを吸収する保護装置をも備えたターミナルボックス22が接続されている。このターミナルボックス22には、直流電力を交流電力に変換するインバータ23が接続されている。
インバータ23とブレーカ4Bとを接続する電送路24には、太陽電池パネル21から複数の負荷5へ流れる電流を計測する変流器25と、当該電送路24の電圧を計測する変圧器26とが接続されている。これらの変流器25および変圧器26で計測した電流値および電圧値は、エネルギー出力調整手段30へ送出されるようになっている。
【0015】
太陽熱収集器40は、太陽光の放射熱を吸収して内部に流通される熱媒体である水を加熱して住宅1内へ温水を供給する給湯設備である。この太陽熱収集器40には、貯湯槽41と、内部に熱媒体である水が通される配管42と、この配管42の内部を流れる水を強制的に循環させるポンプ43と、当該太陽熱収集器40の温度を検出するサーモスタット44と、貯湯槽41から住宅1内の給湯口へ温水を導く配管45とが設けられている。この給湯設備は、前述の燃料電池10を含んで構成されている。
【0016】
貯湯槽41は、太陽熱収集器40で熱せられた熱湯を貯める円筒状の容器であり、その受けた温水を保温する保温機能を備えている。
ポンプ43は、太陽熱収集器40および貯湯槽41を接続する配管42の中間部分に接続されている。このポンプ43は、サーモスタット44で、太陽熱収集器40の温度が貯湯槽41の温水よりも高い判断されると、サーモスタット44から信号が送られ、駆動するようになっている。
また、貯湯槽41には、ボールが水位の変動に応じて弁を開閉するボールタップ41A と、当該貯湯槽41の温水が所定温度以下にならないように温水を加熱する補助加熱手段41B と、この補助加熱手段41B をON−OFF制御するサーモスタット41C とが設けられている。
補助加熱手段41B は、分電盤4内に設けられたマグネットスイッチ41D を介して電力が供給されている。
補助加熱手段41B は、サーモスタット41C で、貯湯槽41の温水の温度が最低温度(例えば、60℃)よりも低いと判断されると、サーモスタット41C から信号がマグネットスイッチ41D に送られ、駆動するようになっている。これにより、貯湯槽41の温水の温度が所定温度以上に維持されるようになっている。
ボールタップ41A は、貯湯槽41の温水の水位が低くなると、弁が開き、水道本管から貯湯槽41に水を供給するためのものである。
【0017】
また、貯湯槽41には、燃料電池10に接続され、かつ、内部に熱媒体である水が通される配管46と、この配管46の内部を流れる水を強制的に循環させるポンプ47とが設けられている。
ポンプ47は、燃料電池10および貯湯槽41を接続する配管46の中間部分に接続されている。このポンプ47は、燃料電池10の作動に連動して駆動するようになっている。
ここで、貯湯槽41に貯めている温水は、ポンプ43,47により太陽熱収集器40および燃料電池10へ送られる。太陽熱収集器40および燃料電池10へ送られた温水は、太陽熱収集器40および燃料電池10で熱せられ、再び貯湯槽41へ貯められる。これらの行程が順次繰り返されるようになっており、貯湯槽41には、常に所定温度に熱せられた温水が貯められている。
【0018】
エネルギー出力調整手段30は、図2に示されるように、複数の入力から一つの入力を選択して出力するマルチプレクサ31と、このマルチプレクサ31から出力された電流値および電圧値の位相差を算出する位相差算出手段32と、電流値、電圧値および位相差から電力を算出する電力算出手段33と、この電力算出手段33で算出した電力量信号を保持するサンプルホールド34〜36と、住宅1内での電力需要量および自然条件に応じて、太陽電池パネル21の電力出力および燃料電池10の電力出力の優先順位を変更する優先順位変更手段37と、二次元マップが蓄積されたマップ蓄積手段38と、燃料電池10の出力量を二次元マップに基づいて算出し、当該燃料電池10のエネルギー出力量を制御する制御手段39とを備えている。
【0019】
マルチプレクサ31は、一つの可動接点と三つの固定接点とを有する三回路切換部31A〜31Cを備えている。
三回路切換部31A は、負荷5、太陽電池パネル21および燃料電池10のいずれか一つの電流値を出力するためのものである。三回路切換部31B は、負荷5、太陽電池パネル21および燃料電池10のいずれか一つの電圧値を出力するためのものである。三回路切換部31C は、電力算出手段33で算出した負荷5、太陽電池パネル21および燃料電池10のいずれか一つの電力量を出力するためのものである。これらの三回路切換部31A〜31Cは、連動して作動するようになっている。
サンプルホールドは、負荷5の電力量を記録する負荷サンプルホールド34と、太陽電池パネル21の電力量を記録する太陽電池サンプルホールド35と、燃料電池10の電力量を記録する燃料電池サンプルホールド36とから構成されている。
【0020】
優先順位変更手段37は、負荷サンプルホールド34および太陽電池サンプルホールド35に記録された各電力量を比較する比較手段37A と、この比較手段37A での比較に基づいて燃料電池10を発動および停止させる燃料電池発停手段37B とを備えている。
マップ蓄積手段38は、住宅1の小型の模型等を利用して実験を行い、この実験データを元に、住宅1内での電力需要量と太陽電池パネル21からの電力出力量とを変数とし、これらの変数に対して燃料電池10の定電力出力量の80〜100%の間を変化する燃料電池10の電力出力量の二次元的な軌跡を二次元マップ化し、この二次元マップが蓄積されたものである。
制御手段39は、住宅1内での電力需要量、および、太陽電池パネル21からの電力出力量に対応する定格電力出力量の80〜100%となる範囲で運転する燃料電池10の電力出力量の設定値を、マップ蓄積手段38から二次元マップに基づいて算出し、燃料電池サンプルホールド36から出力されるプロセス値を設定値と一致させるように、当該燃料電池10の電力出力量を制御するものである。
【0021】
次に、エネルギー出力調整手段30の動作について説明する。
まず、この説明に先立って、住宅1の電力需要量について説明する。
住宅1の電力需要量は、主に、冷暖房機器等の空調負荷に応じて変動するものとなっている。
冷房シーズンである夏季では、図3に示されるように、太陽電池パネル21の電力出力量は、太陽の日射量に応じて変動する。住宅1の電力需要量は、冷房負荷に応じて変動し、太陽の日射量の変化に対して遅れるので、太陽電池パネル21の電力出力量のピークが正午であるのに対し、住宅1の電力需要量のピークが午後2時前後となっている。
このため、正午前後は、太陽電池パネル21の電力出力量が住宅1の電力需要量よりも大きくなる。発電設備は、燃料電池10を利用しなくとも、住宅1への電力供給が行え、太陽電池パネル21のみを利用するPVモードで運転される。
この際、太陽電池パネル21の電力が余剰となる場合には、当該余剰電力が商用電源へ逆潮され、電力会社に電力を売る売電状態となる。
【0022】
太陽の日射が弱い朝方および夕方は、住宅1の電力需要量が太陽電池パネル21の電力出力量よりも大きくなり、太陽電池パネル21の電力出力だけでは住宅1への電力供給が賄えない。このため、発電設備は、燃料電池10を併せて利用するPV−FCモードで運転される。
この際、燃料電池10は、住宅1の電力需要量が著しく少なくなっても、電力出力量が最低でも定格電力出力量の80%以下とならないようにされ、かつ、当該定格電力出力量の80〜100%間は、電力需要量に応じて調節される。
そして、太陽電池パネル21の電力出力量および燃料電池10の電力出力量を足し合わせた発電設備全体の電力出力量が住宅1の電力需要量よりも大きい場合には、太陽電池パネル21の余剰電力が商用電源へ逆潮され、電力会社に電力を売る売電状態となる。
【0023】
太陽の日射が得られない夜間は、太陽電池パネル21の電力出力量が得られない。このため、発電設備は、燃料電池10のみを利用するFCモードで運転される。
この際、燃料電池10は、住宅1の電力需要量が著しく少なくなっても、電力出力量が最低でも定格電力出力量の80%以下とならないようにされ、かつ、当該定格電力出力量の80〜100%間は、電力需要量に応じて調節される。
そして、燃料電池10の電力出力量が住宅1内の電力需要量よりも大きい場合は、燃料電池10の余剰電力が商用電源に逆調され、電力会社に電力を売る売電状態となる。
【0024】
暖房シーズンである冬季では、図4に示されるように、住宅1の電力需要量は、暖房負荷に応じて変動する。この暖房負荷は、夏季の冷房負荷とは異なり、朝方および夕方に二つピークがある。一方、太陽電池パネル21の電力出力量は、夏季と同様に、太陽の日射量に応じて変動する。
このため、太陽の日射が強い昼間は、太陽電池パネル21の電力出力量が住宅1の電力需要量よりも大きくなる。発電設備は、夏季と同様に、太陽電池パネル21のみを利用するPVモードで運転される。
この際、太陽電池パネル21の電力が余剰となる場合には、当該余剰電力が商用電源へ逆潮され、電力会社に電力を売る売電状態となる。
【0025】
太陽の日射が弱い朝方および夕方は、住宅1の電力需要量が太陽電池パネル21の電力出力量よりも大きいので、太陽電池パネル21の電力出力だけでは住宅1への電力供給が賄えない。このため、発電設備は、燃料電池10を併せて利用するPV−FCモードで運転される。
この際、燃料電池10は、住宅1の電力需要量が著しく少なくなっても、電力出力量が最低でも定格電力出力量の80%以下とならないようにされ、かつ、当該定格電力出力量の80〜100%間は、電力需要量に応じて調節される。
太陽電池パネル21の電力出力量および燃料電池10の電力出力量を足し合わせた発電設備全体の電力出力量が住宅1の電力需要量よりも大きい場合は、太陽電池パネル21の余剰電力が商用電源へ逆潮され、電力会社に電力を売る売電状態となる。
逆に、住宅1の電力需要量が発電設備全体の電力出力量よりも大きい場合は、商用電源から電力が出力され、電力会社から電力を買う買電状態となる。
【0026】
太陽の日射が得られない夜間は、太陽電池パネル21の電力出力が得られない。
このため、発電設備は、燃料電池10のみを利用するFCモードで運転される。
この際、燃料電池10は、住宅1の電力需要量が著しく少なくなっても、電力出力量が最低でも定格電力出力量の80%以下とならないようにされ、かつ、当該定格電力出力量の80〜100%間は、電力需要量に応じて調節される。
住宅1内の電力需要量が燃料電池10の定格電力出力量の80%よりも小さい場合は、燃料電池10の余剰電力が商用電源に逆調され、電力会社に電力を売る売電状態となる。
一方、住宅1の電力需要量が燃料電池10の定格電力出力量の100%よりも大きい場合は、商用電源から電力が出力され、電力会社から電力を買う買電状態となる。
以上のことから、年間を通して、電力会社に売る電力量の方が電力会社から買う電力量よりも多くなり、各火力発電所の発電量を少しでも少なくできれば、二酸化炭素の排出量が少なくなり、地球の温暖化防止に寄与できる。
【0027】
エネルギー出力調整手段30は、前述した三つのモードで運転している。各変流器6,13,25および各変圧器7,14,26で計測した電流値および電圧値を一つずつ三回路切換部31A,31Bで出力し、電流値および電圧値の位相差を位相差算出手段32で算出する。そして、当該電流値、電圧値および位相差を基づいて電力算出手段33で電力量を算出し、その電力量信号を各サンプルホールド34〜36に保持する。
そして、負荷サンプルホールド34に保持された電力量信号と、太陽電池サンプルホールド35に保持された電力量信号とを比較手段37A で比較する。
PVモードでは、燃料電池発停手段37B が燃料電池10を停止させ、太陽電池パネル21のみを利用する。
PV−FCモードでは、燃料電池発停手段37B が燃料電池10を起動させ、太陽電池パネル21を利用する。
この際、燃料電池10は、電力出力量が最低でも定格電力出力量の80%となるように調節されながら運転される。
FCモードでは、燃料電池発停手段37B が燃料電池10を起動させ、太陽電池パネル21を利用しない。
この際、燃料電池10は、PV−FCモードと同様に、電力出力量が最低でも定格電力出力量の80%となるように調節されながら運転される。
【0028】
また、住宅1内への電力供給を行うとともに、太陽熱収集器40および燃料電池10から住宅1内に温水を供給する際のポンプ43,47の起動および停止を行う。
夏季および冬季の昼間は、太陽電池パネル21の余剰電力を利用してポンプ43を起動させ、貯湯槽41の温水が所定温度を保持できるようにしている。この際、ポンプ43を起動しても、太陽電池パネル21の電力が余っている場合は、商用電源へ逆潮されるようになっている。
夏季および冬季の朝方および夕方は、ポンプ47を起動させ、貯湯槽41の温水が所定温度を保持できるようにしている。なお、ポンプ43は、太陽熱収集器40に設けられたサーモスタット44により、太陽熱収集器40の温度が貯湯槽41の温水の温度よりも高いと判断された場合のみ起動するようになっている。
夏季および冬季の夜間は、ポンプ47のみを起動させ、貯湯槽41の温水が所定温度を保持できるようにしている。
【0029】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、太陽電池パネル21の電力出力量の大小に関わらず、燃料電池10が所定電力出力量以上に運転するように、エネルギー出力調整手段30で調整するようにしたので、燃料電池10の燃料が無駄とならず、燃料電池10を効率よく運転できる。
【0030】
また、住宅1内における電力需要量の変動に応じて、マップ蓄積手段38から住宅1内での電力需要量および太陽電池パネル21の電力出力量に対応する燃料電池10の最適運転時電力出力量が得られるようになり、燃料電池10を常に最適な状態で運転でき、燃料電池10の運転を効率よく行うことができる。
【0031】
さらに、太陽電池パネル21の電力出力量が住宅1内での電力需要量よりも多い場合、燃料電池10を利用せず、太陽電池パネル21のみを利用し、太陽電池パネル21の電力出力量が住宅1内での電力需要量より少ない場合、定格出力量以上に運転するように燃料電池10を優先して利用するとともに、太陽電池パネル21を利用している。これにより、燃料電池10を常に最適な状態で運転でき、燃料電池10の運転を効率よく行うことができる。
【0032】
また、太陽エネルギー利用手段20として、複数の太陽電池パネル21を設けたので、太陽電池パネル21で得られた電力が住宅1内の負荷5に供給できるようになり、太陽電池パネル21の余剰電力が商用電源へ逆潮されるようになり、太陽電池パネル21から供給される電力が無駄とならず、当該電力を最大限に利用できる。
【0033】
さらに、太陽エネルギー利用手段20として、太陽熱収集器40を設けたので、太陽熱収集器40で得られる熱により、住宅1内への温水の供給が行えるようになり、太陽熱収集器40のポンプ43の運転を太陽電池パネル21からの余剰電力で行うようにしたので、太陽電池パネル21からの電力が無駄とならず、当該電力を最大限に利用できる。
【0034】
また、燃料電池10の内部に液体を必要としない簡単な構造であるので、燃料電池10自体を小型化および軽量化でき、燃料電池10の燃料となる水素および酸素の供給量を調節することにより、燃料電池10のエネルギー出力を自由に調節できる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形などを含むものである。
すなわち、前記実施形態では、太陽電池パネル21の余剰電力を商用電源へ逆潮していたが、これに限らず、図5に示されるように、商用電源の代わりに、バッテリー28を設け、太陽電池パネル21の余剰電力をバッテリー28に蓄電してもよく、また、太陽電池パネル21の余剰電力を貯湯槽41の温水を熱するための加熱手段に供給してもよい。
また、前記実施形態では、太陽エネルギー利用手段20として、太陽電池パネル21および太陽熱収集器40の両方を設けたが、これに限らず、太陽電池パネル21および太陽熱収集器40のいずれか一方を設けてもよく、太陽電池パネル21のみを設けてもよい。
さらに、燃料電池としては、水素をそのまま燃料とするものに限らず、天然ガスから水素を改質する改質器を備え、エタン等の天然ガスを燃料とするものでもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明の燃料電池付建物によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、請求項1に記載の燃料電池付建物によれば、太陽エネルギー利用手段および燃料電池の両方を運転する必要があっても、太陽エネルギー利用手段のエネルギー出力の大小に関わらず、燃料電池が所定出力量以上に運転するようにエネルギー出力調整手段が調整するようにできるので、燃料電池の燃料が無駄とならず、燃料電池を効率よく運転することができる。
なお、太陽エネルギー利用手段の余剰電力は、商用電源への逆潮、バッテリー等の蓄電手段への蓄電、貯湯槽等の蓄熱手段への電力供給に利用される。
【0039】
また、請求項2に記載の燃料電池付建物によれば、太陽電池パネルで得られた電力が建物の負荷に供給可能となり、太陽電池パネルからの余剰電力を、例えば、商用電源に逆潮する、あるいは、バッテリー等の蓄電手段に蓄電するようにすれば、太陽電池パネルから供給される電力が無駄にならず、当該電力を最大限に利用することができる。
【0040】
さらに、請求項3に記載の燃料電池付建物によれば、太陽熱収集器で得られる熱により、建物の床暖房および給湯設備への温水の供給が行えるようになり、給湯設備に温水を供給するためのポンプの運転を太陽電池パネルからの余剰電力で行えば、太陽電池パネルからの電力が無駄とならず、当該電力を最大限に利用することができる。
【0041】
また、請求項4に記載の燃料電池付建物によれば、燃料電池の内部に電解溶液等の液体を必要としない簡単な構造であるので、燃料電池自体の小型化および軽量化が図れるようになるうえ、燃料電池の燃料となる水素と酸素の供給量を調節することにより、燃料電池のエネルギー出力を自由に調節できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る建物を示す概略図である。
【図2】前記実施形態に係るエネルギー出力調整手段を示すブロック図である。
【図3】前記実施形態に係る夏における電力需要量および電力出力量を示すグラフである。
【図4】前記実施形態に係る冬における電力需要量および電力出力量を示すグラフである。
【図5】本発明の変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 燃料電池付建物
10 燃料電池
20 太陽エネルギー利用手段
21 太陽電池パネル
30 エネルギー出力調整手段
37 優先順位変更手段
38 マップ蓄積手段
39 制御手段
40 太陽熱収集器

Claims (4)

  1. 酸化による化学エネルギーを熱に変えることなく、直接電気エネルギーに変換できる燃料電池を備えた燃料電池付建物であって、
    太陽エネルギーを利用してエネルギーを発生させる太陽エネルギー利用手段が設けられ、当該燃料電池付建物内でのエネルギー需要に応じて、前記燃料電池のエネルギー出力および前記太陽エネルギー利用手段のエネルギー出力の出力比を調整するためのエネルギー出力調整手段を備え、
    前記エネルギー出力調整手段には、
    予め、時刻に応じて変化する前記燃料電池付建物内でのエネルギー需要量と、時刻に応じて変化する前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量とを変数とし、これらの変数に対して変化する前記燃料電池の時刻ごとの所定出力量以上かつ最大出力量以下の最適運転時エネルギー出力量の二次元的な軌跡を二次元マップ化し、この二次元マップが蓄積されるマップ蓄積手段と、
    前記建物内でのエネルギー需要量、および、前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量に対応する燃料電池のエネルギー出力量を、前記マップ蓄積手段から二次元マップに基づいて算出し、当該燃料電池のエネルギー出力量を制御する制御手段と、
    前記建物内でのエネルギー需要量と、前記太陽エネルギー利用手段のエネルギー出力量とを比較し、前記エネルギー出力量が前記エネルギー需要量を上回った場合には前記燃料電池を停止させ、前記エネルギー出力量が前記エネルギー需要量を下回った場合には前記燃料電池を起動させる優先順位変更手段と、が設けられ
    前記制御手段は、
    前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量が前記エネルギー需要量未満であり、かつ、前記エネルギー需要量が前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量と前記所定出力量との加算値未満である場合には、前記燃料電池のエネルギー出力量を前記所定出力量に制御し、
    前記エネルギー需要量が前記太陽エネルギー利用手段からのエネルギー出力量と前記所定出力量との加算値以上である場合には、前記燃料電池のエネルギー出力量を前記所定出力量以上かつ前記最大出力量以下に制御する
    ことを特徴とする燃料電池付建物。
  2. 請求項1に記載の燃料電池付建物において、太陽エネルギー利用手段として、太陽光エネルギーを電力に変換する複数の太陽電池パネルが設けられていることを特徴とする燃料電池付建物。
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料電池付建物において、太陽エネルギー利用手段として、太陽光の放射熱を吸収して内部に流通される熱媒体を加熱する太陽熱収集器が設けられていることを特徴とする燃料電池付建物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料電池付建物において、前記燃料電池は、固体高分子電解質を使用する固体高分子型燃料電池であることを特徴とする燃料電池付建物。
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