以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1(A)は本発明に係る範囲設定用リミットスイッチの主要部の構成を示す平面図、同図(B)は同じく各ギアの噛合状態を説明するためのモデル図、図2(A)は図1(A)におけるII(A)矢視図、同図(B)は図1(A)におけるII(B)矢視図、図3は図1(A)におけるIII-III 線断面図、図4は図1(A)におけるIV-IV 線断面図である。
図5は図1(A)におけるV-V 線断面図、図6は同じく特定値復帰手段を示す平面図、図7(A)ないし図9(A)は同じく特定値復帰動作を説明するための側面図、図7(B)ないし図9(B)は押圧レバー、ピニオン用支持部材およびディスク用支持部材の動作を説明するための図、図10は本発明に係る範囲設定用リミットスイッチをシャッタの開閉のときのシャッタの上限および下限を設定するための回路構成図である。
図1に全体を符号1で示す範囲設定用リミットスイッチは、シャッタ(図示せず)を昇降させるACモータ80(図10参照)の駆動がギア2を介して伝達され回転する入力軸3と、この入力軸3に軸着された駆動用傘歯車4と、この駆動用傘歯車4によって同時にかつ互いに逆方向に歩進される第1のディスク群5Aおよび第2のディスク群5Bと、これら第1および第2のディスク群5A,5Bを特定値に復帰させる特定値復帰手段6(図6参照)と、これら第1および第2のディスク群5A,5Bが特定値に達すると、信号を送出する信号送出手段7とによって概ね構成されている。
第1のディスク群5Aは、駆動用傘歯車4に噛合する被駆動用傘歯車10が側部に一体に形成された下位桁ディスクとしての一位桁ディスク11と、上位桁ディスクとしての十位桁ディスク12と、最高位桁ディスクとしての百位桁ディスク13と、一位桁ディスク11と十位桁ディスク12との間に介在する桁上げピニオン群14と、十位桁ディスク12と百位桁ディスク13との間に介在する桁上げピニオン群15とによって概ね構成されている。
一位桁ディスク11の外周面の一部には一対のセグメントギア11aが設けられており、矢印F方向の側部にはハートカム11bが設けられている。十位桁ディスク12の外周面の矢印F方向側には、全周にわたって20枚のギア12aが設けられており、外周面の矢印E方向側の一部には一対のセグメントギア12bが設けられ、矢印E方向側の側部にはハートカム12cが設けられている。百位桁ディスク13の外周面の矢印E方向側には、全周にわたって20枚のギア13aが設けられており、外周面の矢印F方向側の一部には、図2(B)に示すように凹部13bが設けられ、矢印E方向の側部にはハートカム13cが設けられている。
桁上げピニオン群14は4つのピニオン16ないし19によって構成され、ピニオン16は一位桁ディスク11のセグメントギア11aに噛合し、ピニオン17はピニオン16に噛合し、ピニオン18はピニオン17に噛合している。ピンオン19はピニオン18に噛合し、かつ十位桁ディスク12のギア12aに噛合しており、一桁ディスク11が1回転することにより、これらピニオン16ないし19を介して十位桁ディスク12が一歩進、すなわち36°だけ回動し桁上げされる。
ピニオン群15は3つのピニオン20,21,22によって構成され、中央に位置するピニオン21は倍径に形成されている。ピニオン20はピニオン19と同軸上に軸支され十位桁ディスク12のセグメントギア12bに噛合されており、このピニオン20にはピニオン21が噛合している。ピンオン22はピニオン21に噛合し、かつ百位桁ディスク13のギア13aに噛合しており、十桁ディスク12が1回転することにより、これらピニオン20,21,22を介して百位桁ディスク13が一歩進、すなわち36°だけ回動し桁上げされる。
第2のディスク群5Bは、駆動用傘歯車4に噛合する被駆動用傘歯車30が側部に一体に形成された下位桁ディスクとしての一位桁ディスク31と、上位桁ディスクとしての十位桁ディスク32と、最高位桁ディスクとしての百位桁ディスク33と、一位桁ディスク31と十位桁ディスク32との間に介在する桁上げピニオン群34と、十位桁ディスク32と百位桁ディスク33との間に介在する桁上げピニオン群35とによって概ね構成されている。
一位桁ディスク31の外周面の一部には一対のセグメントギア31aが設けられており、矢印E方向の側部にはハートカム31bが設けられている。十位桁ディスク32の外周面の矢印F方向側には、全周にわたって20枚のギア32aが設けられており、外周面の矢印E方向側の一部には一対のセグメントギア32bが設けられ、矢印E方向側の側部にはハートカム32cが設けられている。百位桁ディスク33の外周面の矢印E方向側には、全周にわたって20枚のギア33aが設けられており、外周面の矢印F方向側の一部には、図2(A)に示すように凹部33bが設けられ、矢印E方向の側部にはハートカム33cが設けられている。
桁上げピニオン群34は4つのピニオン36ないし39によって構成され、ピニオン36は一位桁ディスク31のセグメントギア31aに噛合し、このピニオン36にピニオン37が噛合している。ピニオン37には矢印F方向に一体に突設されたピニオン部37aが設けられており、このピニオン部37aにはピニオン38が噛合している。ピンオン39はピニオン38に噛合し、かつ十位桁ディスク32のギア32aに噛合しており、一桁ディスク31が1回転することにより、これらピニオン36ないし39を介して十位桁ディスク32が一歩進、すなわち36°だけ回動し桁上げされる。
ピニオン群35は3つのピニオン40,41,42によって構成され、中央に位置するピニオン41は倍径に形成されている。ピニオン40はピニオン39と同軸上に軸支され十位桁ディスク32のセグメントギア32bに噛合されており、このピニオン40にはピニオン41が噛合している。ピンオン42はピニオン41に噛合し、かつ百位桁ディスク33のギア33aに噛合しており、十桁ディスク32が1回転することにより、これらピニオン40,41,42を介して百位桁ディスク33が一歩進、すなわち36°だけ回動し桁上げされる。
第1および第2のディスク群5A,5Bの各ディスク11,12,13,31,32,33の周面には、従来から広く知られているカウンタのような数字が表記されていないが、10進法が採用され、上述したように一位桁のディスク11,31が10歩進すると、十位桁ディスク12,32が1歩進、十位桁ディスク12,32が10歩進すると百位桁ディスク13,33が1歩進するように構成されており、以下、説明の便宜上、一般のカウンタと同様の数字が各ディスク11,12,13,31,32,33の周面に付されているものと仮定して説明する。
図3において、50は装置筐体であって、共に半円筒状に形成されたアッパーケース51と、ロアーケース52とによって略円筒状に形成されている。53は断面略コ字状に形成された第1ディスク群用支持部材であって、一位桁ディスク11、十位桁ディスク12および百位桁ディスク13を回転自在に軸支しており、ロアーケース52によって矢印A−B方向に摺動自在に支持されている。
この第1ディスク群用支持部材53は、図7(A)に示すように圧縮コイルばね54の弾発力によって矢印B方向に付勢されており、ロアーケース52に設けたストッパ(図示せず)に係合することによって矢印B方向への移動が規制され、この状態で一桁ディスク11の被駆動用傘歯車10が駆動用傘歯車4に噛合している。また、この第1ディスク群用支持部材53の矢印C方向の端部には、同図(B)に示すように被係合部55aを有する矩形状の溝55,55が設けられている。
図3において、57は断面略コ字状に形成された第2ディスク群用支持部材であって、一位桁ディスク31、十位桁ディスク32および百位桁ディスク33を回転自在に軸支しており、ロアーケース52によって矢印A−B方向に摺動自在に支持されている。この第2ディスク群用支持部材57は、上記した第1ディスク群用支持部材53と同じ構造を有しており、圧縮コイルばねの弾発力によって矢印B方向に付勢されており、ロアーケース52に設けたストッパ(いずれも図示せず)に係合することによって矢印B方向への移動が規制され、この状態で一桁ディスク31の被駆動用傘歯車30が駆動用傘歯車4に噛合している。
また、この第1ディスク群用支持部材53の矢印C方向の端部には、上記した第1ディスク用支持部材53に設けられた係合部55aを有する矩形状の溝55,55と同じ位置で同じ形状の溝(図示せず)が設けられている。これら第1および第2ディスク群用支持部材53,57に支持された第1のディスク群5Aと第2のディスク群5Bとは、図1(A)に示すようにそれぞれの被駆動用傘歯車10,30が互いに逆方向に回転するように駆動用傘歯車4に噛合し、互いに対向して入力軸3の軸線方向(矢印A−B方向)に延在するように設けられている。
すなわち、第1のディスク群5Aを構成する一位桁ディスク11と十位桁ディスク12と百位桁ディスク13とは、図2(B)に示すように互いの外周部が隣接するように矢印A−B方向に並設されているとともに、第2のディスク群5Bを構成する一位桁ディスク31と十位桁ディスク32と百位桁ディスク33とは、同図(A)に示すように互いの外周部が隣接するように矢印A−B方向に並設されている。また、第1のディスク群5Aを構成する一位桁ディスク11、十位桁ディスク12、百位桁ディスク13の各ディスクの側部と、第2のディスク群5Bを構成する一位桁ディスク31、十位桁ディスク32、百位桁ディスク33の各ディスクの側部とが、図1(A)に示すように矢印E−F方向において互い対向するように設けられている。
図3において、60は第1のピニオン用支持部材であって、第1のディスク群5A用の桁上げピニオン群14のピニオン16ないし19および桁上げピニオン群15のピニオン20,21,22を回転自在に軸支している。この第1のピニオン用支持部材60は、アッパーケース51に矢印C−D方向に摺動自在に支持されており、板ばね(図示せず)によって矢印D方向に付勢され、通常ピニオン16,19,20,22が各ディスク11,12,13のギアと噛合している。
また、この第1のピニオン用支持部材60の矢印D方向の端部には、図7(B)に示すようにカム面61,61が設けられている。この第1のピニオン用支持部材60は、後述する特定値復帰手段を作動させることにより、矢印C方向に移動しピニオン16,19,20,22と各ディスク11,12,13のギアとの噛合が解除される。
図3において、63は第2のピニオン用支持部材であって、第2のディスク群5B用の桁上げピニオン群34のピニオン36ないし39および桁上げピニオン群35のピニオン40,41,42を回転自在に軸支している。この第2のピニオン用支持部材63は、アッパーケース51に矢印C−D方向に摺動自在に支持されており、板ばね(図示せず)によって矢印D方向に付勢され、通常ピニオン36,39,40,42が各ディスク31,32,33のギアと噛合している。
また、この第2のピニオン用支持部材63の矢印D方向の端部には、上記した第1のピニオン用支持部材60と同様にカム面(図示せず)が設けられている。この第2のピニオン用支持部材63は、後述する特定値復帰手段を作動させることにより、矢印C方向に移動しピニオン36,39,40,42と各ディスク31,32,33のギアとの噛合が解除される。
図3において、65はアッパーケース51に一体に突設された第1のピニオン整列片であって、上記したように第1のピニオン用支持部材60が矢印C方向に移動し、ピニオン16,19,20,22と各ディスク11,12,13のギアとの噛合が解除されたときに、図8(A)に示すようにピニオン16,19,22のギアが当接し、回転可能な状態となっているピニオン16,19,22の回転を規制するとともに整列状態を保持する。
図3において、66はアッパーケース51に一体に突設された第2のピニオン整列片であって、上記したように第2のピニオン用支持部材63が矢印C方向に移動し、ピニオン36,39,40,42と各ディスク31,32,33のギアとの噛合が解除されたときに、回転可能な状態となっているピニオン36,39,42の回転を規制するとともに整列状態を保持する。
次に、図2および図5ならびに図7を用いて、信号送出手段7について説明する。信号送出手段7は、第1および第2のディスク群5A,5Bのそれぞれに、第1および第2の信号送出手段7A,7Bが設けられているが、共に同じ構造を有しているので、ここでは第1の信号送出手段7Aについてのみ説明し、必要に応じて第2の信号送出手段7Bについても説明する。
第1の信号送出手段7Aは、図7(A)に示すように第1のディスク用支持部材53に設けられた支持部70Aに、中央部が軸部70aを介して揺動自在に支持されたスイッチレバー71Aと、このスイッチレバー71Aの揺動動作によってON,OFFする第1のリミットスイッチ72Aとによって構成されている。リミットスイッチ72Aは、図5に示すようにアッパーケース51に取り付けられた支持板73に支持バー74を介して固定されており、スイッチボタン75とこのスイッチボタン75を押し下げるばね材によって形成された押圧片76とを備えている。
スイッチレバー71Aの一端部71aは押圧片76に対向し、他端部71cの先端部に折曲形成された係合凸部71bは百位桁ディスク13の外周面に対接している。このような構成において、第1のディスク群5Aが特定値に達すると、スイッチレバー71Aの係合凸部71bが百位桁ディスク13の凹部13bに係入し、スイッチレバー71Aが軸部70aを回動中心として図中反時計方向に回動する。この回動により、押圧片76を介してスイッチレバー71Aの一端部71aによって押圧されていたスイッチボタン75が解放され、第1のリミットスイッチ72AはOFFになる。
第2のディスク群5Bに設けられたスイッチレバー71Bの他端部に形成された係合凸部71bは、第2のディスク群5Bが特定値に達すると、図2(A)に示すように百位桁ディスク33の凹部33bに係入する。この係入により、スイッチレバー71Bが第2のディスク用支持部材57に設けられた支持部(図示せず)に、中央部が軸部70aを回動中心として図中時計方向に回動する。この回動により、押圧片76を介してスイッチレバー71Bの一端部71aによって押圧されていたスイッチボタン75が解放され、第2のリミットスイッチ72BはOFFになる。
次に、図10を用いて、本発明に係る範囲設定用リミットスイッチをシャッタの開閉に使用するときのシャッタの上限および下限を設定するための回路構成について説明する。同図において、80は正・逆の回転が切替自在なACモータ、81はACモータ80の正・逆の回転を切り替えてシャッタ(図示せず)を昇降させるモータ切替スイッチ、82はACモータ80とモータ切替スイッチ81とに接続されたAC100Vの電源である。第1のリミットスイッチ72Aは、ACモータ80とモータ切替スイッチ81の「下」端子との間に介在し、第2のリミットスイッチ72Bは、ACモータ80とモータ切替スイッチ81の「上」端子との間に介在している。
次に、図4および図6ないし図9を用いて、特定値復帰手段6について説明する。特定値復帰手段6は、第1のディスク群5Aと第2のディスク群5Bとに対応して、図6に示すように第1の特定値復帰手段90Aと第2の特定値復帰手段90Bとによって構成されている。これら第1の特定値復帰手段90Aと第2の特定値復帰手段90Bとは、共に同じ構造を有しているので、ここでは第1の特定値復帰手段90Aについてのみ説明し、必要に応じて第2の特定値復帰手段90Bについても説明する。
第1の特定値復帰手段90Aは、手動により操作される押しボタン91Aと、この押しボタン91Aの移動により、矢印A−B方向に移動する押圧体92Aと、押しボタン91Aを図7中矢印C方向に付勢する圧縮コイルばね93Aと、押圧体92Aを矢印B方向に付勢する引張りコイルばね94Aとによって概ね構成されている。
押しボタン91Aは筺体50に矢印C−D方向に移動自在に支持されており、図7に示すように矢印C方向に向かって矢印A方向に傾斜したカム溝91aが設けられている。押圧体92Aは、図7中矢印A−B方向に延在し、筺体50に矢印A−B方向に摺動自在に支持されており、矢印B方向の端部にはカム溝91aに係入された軸部92aが一体に突設されている。
また、この押圧体92Aの矢印A方向側の下端には、第1のディスク用支持部材53の矢印B方向の端部56に係合する係合部92bと、第1のディスク用支持部材53の溝55,55の被係合部55a,55aに係合する係合突起92c,92cとが設けられている。さらに、この押圧体92Aの矢印A方向側の上端には、第1のピニオン用支持部材60のカム面61,61に係合しているカム面92d,92dが設けられている。
図4において、95A,95Bはロアーケース52の底部に一体に突設された三対のハートカム押圧片であって、後述するように第1の特定値復帰手段90Aを作動させることにより、第1のディスク群5Aの各ディスク11,12,13のハートカム11b,12c,13cがハートカム押圧片95Aに係合し、これら各ディスク11,12,13が一斉に特定値に復帰する。また、第2の特定値復帰手段90Bを作動させることにより、第2のディスク群5Bの各ディスク31,32,33のハートカム31b,32c,33cがハートカム押圧片95Bに係合し、これら各ディスク31,32,33が一斉に特定値に復帰する。
図4に示すように、第1のピニオン支持部材60には、スイッチレバー71Aの他端部71cに係合し、第1の特定値復帰手段90Aを作動させたときに、このスイッチレバー71Aの係合凸部71bが百位桁ディスク13の凹部13bへ係入するのを規制する規制部60aが設けられている。すなわち、第1の特定値復帰手段90Aを作動させ、第1のピニオン支持部材60を矢印C方向に移動させることにより、他端部71cも矢印C方向に移動する。この移動により、スイッチレバー71Aは、図7(A)において軸部70aを回動中心として強制的に時計方向に回動させられることにより、一端部71aが押圧片76を介してリミットスイッチ72Aのスイッチボタン75を押し下げ、リミットスイッチ72AをON状態に保持する。
本実施例においては、この特定値を「000」に設定している。したがって、第1の特定値復帰手段90Aを作動させ、第1のディスク群5Aの各ディスク11,12,13を「000」としディスク13の凹部13bにスイッチレバー71Aの係合凸部71bが対向しても、第1の特定値復帰手段90Aを作動させている間は、リミットスイッチ72AがOFFになることはない。
図4に示すように、第2のピニオン支持部材63には、スイッチレバー71Bの他端部71cに係合し、第2の特定値復帰手段90Bを作動させたときに、このスイッチレバー71Bの係合凸部71bが百位桁ディスク33の凹部33bへ係入するのを規制する規制部63aが設けられている。すなわち、第2の特定値復帰手段90Bを作動させ、第2のピニオン支持部材63を矢印C方向に移動させることにより、他端部71cも矢印C方向に移動する。この移動により、スイッチレバー71Bは、図2(A)において軸部70aを回動中心として強制的に反時計方向に回動させられることにより、一端部71aが押圧片76を介してリミットスイッチ72Bのスイッチボタン75を押し下げ、リミットスイッチ72BをON状態に保持する。
したがって、第2の特定値復帰手段90Bを作動させ、第2のディスク群5Bの各ディスク31,32,33を「000」としディスク33の凹部33bにスイッチレバー71Bの係合凸部71bが対向しても、第2の特定値復帰手段90Bを作動させている間は、リミットスイッチ72BがOFFになることはない。このように規制部60a,63aを第1および第2のピニオン用支持部材60,63に一体に設けたことにより、部品点数を削減することができ構造も簡素化することができる。
次に、図7ないし図9を用いて、このように構成された特定値復帰手段6のうち、第1の特定値復帰手段90Aの操作について説明する。第1の特定値復帰手段90Aを操作していない状態では、図7(B)に示すように押しボタン91Aが圧縮コイルばね93Aの弾発力によって矢印C方向に付勢されており、押圧体92Aの軸部92aが押しボタン91Aのカム溝91aの矢印D方向の端部に位置している。
したがって、押圧体92Aは、引張りコイルばね94Aの引張力によって矢印B方向に付勢されており、第1のディスク用支持部材53の端部56と係合部92bとの間および第1のディスク用支持部材53の溝55,55の被係合部55a,55aと係合突起92c,92cとの間に隙間Sが設けられている。また、この状態で、押圧体92Aのカム面92d,92dが、第1のピニオン用支持部材60のカム面61,61に係合している。
この状態から、押しボタン91Aを、図8に示すように、圧縮コイルばね93Aの弾発力に抗して矢印D方向に押圧操作すると、押圧体92Aの軸部92aがカム溝91a内を矢印A方向に摺動するため、押圧体92Aが引っ張りコイルばね94Aの引張力に抗して矢印A方向へ移動する。この移動により、押圧体92Aのカム面92d,92dと、これと係合する第1のピニオン用支持部材60のカム面61,61とのカム作用により、第1のピニオン用支持部材60が矢印C方向に移動し、ピニオン16,19,22と第1のディスク群5Aの各ディスク11,12,13との噛合が解除される。
噛合が解除されたピニオン16,19,22は、第1のピニオン整列片65に当接し、回転可能な状態となっているピニオン16,19,22の回転が規制されるとともに整列状態を保持される。同時に、第1のディスク用支持部材53の端部56に係合部92bが係合し、第1のディスク用支持部材53の溝55,55の被係合部55a,55aに係合突起92c,92cのそれぞれが係合している。
さらに、押しボタン91Aを、図9に示すように、圧縮コイルばね93Aの弾発力に抗して矢印D方向に押圧操作すると、押圧体92Aの軸部92aがカム溝91a内を矢印A方向に摺動するため、押圧体92Aが引っ張りコイルばね94Aの引張力に抗してさらに矢印A方向へ移動する。この移動により、押圧体92Aの係合部92b,92c,92cが、第1のディスク用支持部材53の端部56、溝55,55の被係合部55a,55aを介して、押圧体92Aを圧縮コイルばね54の弾発力に抗して矢印A方向に移動させる。既に、ピニオン16,19,22との噛合が解除されている第1のディスク群5Aの各ディスク11,12,13のハートカム11c,12c,13cがハートカム押圧片95Aに係合するので、カム作用によって各ディスク11,12,13が特定値「000」に復帰させられる。
上述したように、本発明に係る範囲設定用リミットスイッチ1は、第1のディスク群5Aと第2のディスク群5Bとが互いに対向し、入力軸3の軸線方向(矢印A−B方向)に延在するように設けられているため、桁上げ用ピニオン群14,15,34,35をこれら第1および第2のディスク群5A,5Bの互いに対向する範囲「W」(図1(A)参照)内に設けることができる。また、特定値復帰手段6を作動させ特定値に復帰させるときに、桁上げピニオン群14,15,34,35を、第1および第2のディスク群5A,5Bの互いに対向する範囲「W」外に揺動させる構造とすることがなく、矢印C−D方向に移動させる構造とすることができるから幅方向(矢印E−F方向)の寸法を小さくすることができる。
また、最上位桁のディスク13,33の凹部13b,33bに係合凸部71b,71bが係入することにより他端部に設けたリミットスイッチ72A,72Bを作動させる一対のスイッチレバー71A,71Bを入力軸3の軸線方向(矢印A−B方向)に延在するように設けたことにより、これらスイッチレバー71A,71Bを第1および第2のディスク群5A,5Bが互いに対向する間隔の範囲「W」内に設けることができるから幅方向(矢印E−F方向)の寸法を小さくすることができる。
次に、このような構成の範囲設定リミットスイッチ1を使用してシャッタの上限および下限を設定する動作を主に図10および表1に基づいて説明する。
まず、シャッタの下限位置を設定するには、モータ切替スイッチ81を操作し、シャッタを下降させるように「下」端子に切り替え、同時に第1の特定値復帰手段90Aを作動させて、第1のディスク群5Aの各ディスク11、12,13を特定値、すなわち「000」に復帰させる。このとき、図4に示すように、第1のピニオン支持部材60の規制部60aによってスイッチレバー71Aの他端部71cが矢印C方向に移動させられているため、第1のリミットスイッチ72Aは強制的にON状態となり、ACモータ80が起動してシャッタは下降する。
この間、第1のディスク群5Aは減算方向に駆動されるが、第1の特定値復帰手段90Aを作動し続けているので、第1のディスク群5Aは「000」のままである。そして、下降するシャッタが下限に位置したら、第1の特定値復帰手段90Aの作動を解除する。このとき、第1のディスク群5Aは「000」のままであり、スイッチレバー72Aの係合凸部71bが、図7(A)に示すように百位桁ディスク13の凹部13bに係入するので、第1のリミットスイッチ72AがOFFになり、ACモータ80が停止する。この間、第2のディスク群5Bは加算されて、任意の数値となっている。
次に、シャッタの上限位置を設定するには、モータ切替スイッチ81を操作し、シャッタを上限させるように「上」端子に切り替え、同時に第2の特定値復帰手段90Bを作動させ、第2のディスク群5Bの各ディスク31,32,33を特定値、すなわち「000」に復帰させる。このとき、上述した下限位置設定時と同様に、第2のリミットスイッチ72Bは強制的にON状態となるので、ACモータ80が起動してシャッタは上昇する。この間、第2のディスク群5Bは減算方向に駆動するが、第2の特定値復帰手段90Bを作動し続けているので、第2のディスク群5Bは「000」のままである。
そして、上昇するシャッタが上限に位置したら、第2の特定値復帰手段90Bの作動を解除する。このとき、第2のディスク群5Bは「000」のままであり、スイッチレバー71Bの係合凸部71b、図2(A)に示すように百位桁ディスク33の凹部33bに係入するので、第2のリミットスイッチ72BがOFFとなり、ACモータ80が停止する。この間、第1のディスク群5Aは加算されて、シャッタの上昇に相当する数値、本実施例では「050」となっている。
次に、このようにシャッタの上限と下限とを両ディスク群5A,5Bに設定した後のシャッタの制御動作を説明する。例えば、上限にシャッタが位置しているときは、第1のディスク群5Aは「050」を表示して第1のリミットスイッチ72AはON状態となっている。モータ切替スイッチ81を「下」端子に切り替えると、ACモータ80が起動してシャッタは下降し始め、下限位置に達すると、第1のリミットスイッチ72Aが「000」となり、第1のリミットスイッチ72AがOFFになり、ACモータ80は停止し、シャッタは設定された下限位置に停止する。
ここで、シャッタは前述した第1のディスク群5Aで下限位置に設定した「000」と同じ表示で「000」で停止するので、停止位置の精度が設定された位置と同じとなり、正確な位置での制御が可能となり、このため、シャッタの停止の反応が正確となるとともに、ACモータ80等に無用な負荷をかけることがない。このとき、第2のディスク群5Bは「050」となり、第2のリミットスイッチ72BはON状態となっている。
次に、シャッタを下限位置から上限位置まで上昇させるには、モータ切替スイッチ81を「上」端子に切り替える。ACモータ80が起動するとシャッタが上昇し、同時に第2のディスク群5Bが「050」から減算する。シャッタが上限位置に達すると、第2のディスク群5Bが「000」となり、第2のリミットスイッチ72BがOFFになり、ACモータ80は停止し、シャッタは設定された上限位置に停止する。ここで、シャッタは上述した下限位置での停止と同様に第2のディスク群5Bで上限位置に設定した「000」と同じ「000」で停止するので、停止位置の精度が設定された位置と同じとなる。
なお、本実施の形態においては、上位桁ディスクとして、十位桁ディスク12,32および百位桁ディスク13,33を設けた例を説明したが、十位桁ディスク12,32のみでもよいし、千位桁以上のディスクを設けてもよい。
1…範囲設定用リミットスイッチ、3…駆動軸、4…駆動用傘歯車、5A…第1のディスク群、5B…第2のディスク群、6…特定値復帰手段、7…信号送出手段、10,30…被駆動用傘歯車、11,31…一位桁ディスク(下位桁ディスク)、12,32…十位桁ディスク(上位桁ディスク)、13,33…百位桁ディスク(上位桁ディスク)、11b,12c,13c,31b,32c,33c…ハートカム、13b,33b…凹部、14,15,34,35…桁上げ用ピニオン群、50…筐体、51…アッパーケース、52…ロアーケース、53…第1のディスク群用支持部材、57…第2のディスク群用支持部材、60…第1のピニオン用支持部材、61…カム面、63…第2のピニオン用支持部材、60a,63a…規制部、65,66…ピニオン整列片、71A,71B…スイッチレバー、72A…第1のリミットスイッチ、72B…第2のリミットスイッチ、71b…係合凸部、80…ACモータ、81…モータ切替スイッチ、82…電源、90A…第1の特定値復帰手段、90B…第2の特定値復帰手段、91A,91B…押しボタン、92A,92B…押圧体、92b,92c…係合部、92d…カム面。