JP4629469B2 - 磁石式同期回転電機 - Google Patents
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Description
このとき、固定子内に発生した磁束は、固定子コイル(電機子巻線)とは鎖交しないので、固定子の起電力は発生しないが、固定子内で軸方向の磁束が発生する。すなわち、積層された固定子鉄心に対して垂直方向に磁束が発生する。また、固定子鉄心に発生する磁束は、回転子の回転とともに変化するので、大きな渦電流損失が固定子に発生し、効率の悪いものとなっている。
さらに、磁石式同期回転電機を発電機として使用する場合には、発生する合成磁束が回転速度によって変化するうえ、負荷に対する磁束の調整手段がないので、当初の回転速度が同一であっても、接続負荷が大きいときには電機子反作用が大きいことから発電電圧が低下し、接続負荷が小さいときには電機子反作用が小さいことから高い電圧が発生してしまう。
さらに、発電機として使用する場合には、合成磁束が回転速度によって変化するので、接続負荷が大きいときは電機子反作用が大きいことから発電電圧が低下し、接続負荷が小さいときには電機子反作用が小さいことから高い電圧が発生してしまうという課題があった。
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係る磁石式同期回転電機を示す断面図である。
図1において、磁石式同期回転電機は、電機子巻線2を有する固定子1と、固定子1に対向して回転する回転軸10と、第1の永久磁石21を有し回転軸10に固定された第1の回転子11と、第2の永久磁石22を有し回転軸10に設けられた第2の回転子12と、第1および第2の回転子11、12の間に設けられたバネ部材13と、第1および第2の回転子11、12の間に形成された空気層20と、回転軸10に設けられ且つ第2の回転子12に固定された円筒部材23と、円筒部材23の一端に対向配置されて第2の回転子12の回転位置を検出する回転位置センサ24(位置検出器)とを備えている。
図2において、(a)、(b)、(c)は、それぞれ、第2の回転子11に対する第2の回転子12の相対角度θを、固定子1の3相の電機子巻線2u、2v、2wに流れる電機子電流iu、iv、iwと関連付けて示している。
第2の回転子12は、第1の回転子11に対して回転軸10の軸方向に対向配置されるとともに、第1の回転子11に対して相対的に回転可能に設けられている。
バネ部材13は、第1の回転子11の第1の磁束φ1と、第2の回転子12の第2の磁束φ2との合成磁束φがほぼゼロになるように、第2の回転子12を回転させるための戻しトルクを発生する。
また、第2の回転子12は、安定点(合成磁束φのゼロ点)から、回転軸10の回転方向に関して、相対回転移動が可能に構成されている。
一方、第2の回転子12は、第1の回転子11と同様の構成を有しているが、第1の回転子11に対して相対的に回転可能な構造とするために、第2の回転子12の内径には、回転軸10に対して回転可能にはめ合わせられた円筒部材23が圧入固定されている。
まず、電機子巻線2に電流が流れていない状態においては、第1の永久磁石21の磁極に対し、第2の永久磁石22の磁極が反対極性となるように対向している。
また、第1および第2の回転子11、12の対向面は、空気層20などの非磁性材が介在されており、第1および第2の回転子11、12は、第1および第2の永久磁石21、22および回転軸10を介して磁気回路が形成されている。
すなわち、第1および第2の永久磁石21、22から発生するほとんどの磁束は、空気層20、第1および第2の回転子11、12を通り、また、磁束の一部は、回転軸10を通って、第1および第2の回転子11、12内を循環している。
この状態において、回転軸10が、外部からの駆動力や惰性回転などの回転力を受けると、第1および第2の永久磁石21、22の磁束φが第1および第2の回転子11、12内を循環しているので、回転軸10の回転力が固定子1の鉄心に伝達することはない。
また、固定子1の鉄心に達する磁束が存在したとしても、その磁束は、固定子1の電機子巻線2とは鎖交することなく、第1および第2の回転子11、12に戻ってくるので、電機子巻線2に起電力を発生することはない。
なお、第1および第2の回転子11、12の各鉄心も積層構造を有しているが、各回転子11、12と一体に回転するので、渦電流損失を生じることはない。
図3においては、第1または第2の回転子11、12の一方の回転子面(この場合、第2の回転子12の対向面)に銅板30が固着されている。
この結果、銅板30は、ダンパとして機能し、第1および第2の回転子11、12の過渡的または振動的な相対移動を抑制して、両回転子の合成磁束を安定させる効果がある。
図4においては、第1の回転子11に永久磁石31が設けられ、第2の回転子12に銅板30が設けられている。
また、図3または図4のような磁気的なダンパに限らず、液体や空気などの流体を介在させた機械式ダンパを用いてもよい。
図5においては、第1および第2の回転子11、12の各磁束が互いにキャンセルされる位置で、一方のN極と他方のS極とが互いに向き合うように、第1および第2の回転子11、12の相互対向面に永久磁石31、32が設けられている。
図6は電動機を駆動するためのインバータを含む制御回路を電動機とともに示す回路構成図である。
図6において、電動機40には、3相の電機子巻線2u、2v、2wに電機子電流を供給するインバータ50と、インバータ50を制御する制御回路60と、インバータ50および制御回路60に電源を供給するバッテリ70とが接続されている。
各トランジスタTr1〜Tr6は、それぞれ、エミッタ・コレクタ間に逆並列接続されたダイオードを有し、ベース端子に制御回路からの制御信号が入力されるようになっている。
また、インバータ50内の電流検出器51、52は、u相及びw相の電機子電流iu、iwを検出して制御回路60に入力する。なお、v相の電機子電流ivは、他の2相の電機子電流iu、iwから、制御回路60内の演算により求められる。
制御回路60は、第2の回転子12の回転位置と、固定子1の電機子電流iu、iwとに基づいて、インバータ50内のブリッジ回路を駆動制御する。
このとき、第2の回転子12には正方向のトルクT2が発生するが、第2の回転子12に対向配置された第1の回転子11の磁極は、第2の回転子12の磁極とは正反対なので、第1の回転子11には負のトルクT1が発生する。
これにより、第1の回転子11に対する第2の回転子12の相対位置がずれるので、バネ部材13により、第1の回転子11に対して正方向のトルクT1が発生する。
ここで、電機子巻線2に供給する電機子電流を増大させると、第2の回転子12に発生するトルクT2は大きくなるが、第1の回転子11との相対回転位置がずれているので、第1の回転子11に発生する負のトルクT1は小さい。したがって、回転軸10には、さらに大きな正方向トルクTが発生する。
このとき、第2の回転子12のトルクT2は、第1の回転子11のトルクT1と同一値であり、バネ部材13の強さ(スプリング付勢力)を、両回転子11、12の合計トルクTの半分、すなわち第2の回転子12のトルクT2と同一値に設定しておけば、最大トルク時に、丁度、第1の回転子11と第2の回転子12との回転位置が一致する。
逆に、バネ部材13の付勢力を第2の回転子12の最大トルクよりも小さい値に設定した場合には、最大トルクを出力しようとして電機子電流を増大させたときに、第2の回転子12は、第1の回転子11と磁束が一致するところを超えてさらに相対回転してしまうことになる。
これにより、第2の回転子12に発生するトルクT2が減少するので、バネ部材13の付勢力によって、第1の回転子11に対する第2の回転子12の相対角度が小さくなり、電機子巻線2に鎖交する磁束が小さくなる。
このとき、第1および第2の回転子11、12の永久磁石21、22(図1参照)の磁束を弱めた場合と同じ状態になるので、小さい逆起電力で電流を流し続けることが可能であり、電動機40の高速運転が可能になる。
すなわち、この場合、第1および第2の回転子11、12に対して埋込磁石構造の永久磁石21、22を用いているので、横軸インダクタンスが直軸インダクタンスよりも大きい逆突極特性を示し、リラクタンストルクによりトルクTを大きくすることができる。
また、Ld2、Lq2は、第2の回転子12の第2の回転子12座標における直軸インダクタンスおよび横軸インダクタンスである。
さらに、φ1、φ2は、第1および第2の回転子11、12の各永久磁石21、22による電機子巻線2の鎖交磁束である。
一方、第2の回転子12から発生するトルクT2は、次式(2)のように表される。
ここで、付勢力Tsの関数Ts(θ)は、次式で表される。
上式から、関数Ts(θ)は、θ=180度においてバネ部材13の戻しトルクがゼロになるような線形特性を有する。
これにより、第2の回転子12のトルクT2が決定すれば、バネ部材13の変位が決定し、第1の回転子11と第2の回転子12との相対角度θが決定する。
よって、上記電圧方程式から、電機子巻線2の端子電圧が求められる。
一方、第1の回転子11のトルクT1は、次式(3)で与えられる。
なお、上記電圧方程式(1)には、第1の回転子11と第2の回転子12との相対角度θが入っているが、突極性を持たない回転子の場合には、Ld=Lqとなる。
したがって、上式(1)内の第1および第2の回転子11、12に関する直軸・横軸インダクタンスを、それぞれL1(Ld1、Lq1)、L2(Ld2、Lq2)とすれば、式(1)、次式(5)のように表され、非常に簡単になる。
このときのマップ作成の際に、損失が最小になるようにマップを設定しておけば、高効率の運転が可能となる。
図7は、電機子電流の位相角と、第1の回転子11に対する第2の回転子12の相対角度θとの関係を示しており、電機子電流の位相角は、相対角度θに対してほぼ正相関的に増減する。
電機子電流の位相角は、第1の回転子11のトルクT1の増減にほぼ逆相関的に増減し、第2の回転子12のトルクT2の増減に正相関的に増減する。
電機子電流の位相角は、線間電圧、線電流および電機子トルクに対してほぼ正相関的に増減する。
図13においては、比較を容易にするため、この発明の実施の形態1によるトルク特性を実線で示し、第1の回転子11に対して第2の回転子12が相対移動しない場合のトルク特性を破線で示している。
図13から明らかなように、この発明の実施の形態1によれば、電動機40の回転速度が大きくなっても、破線特性の場合と比べてトルクTが得られるので、運転可能であることが分かる。
まず、第2の回転子12の電圧方程式(Vd2、Vq2)は、次式(6)のように表される。
一方、Ld1=Lq1=L1とすると、上記式(1)は上記式(5)のように簡略化されるとともに、第1の回転子11のトルクT1を表す上記式(3)は、次式(13)のように簡略化される。
これにより、何もしない状態では、第1および第2の回転子11、12の合成磁束φは、ゼロになる。
また、第1の回転子11の永久磁石21と、第2の回転子12の永久磁石22との磁気吸引力により、合成磁束φがゼロとなる点が安定点であるが、合成磁束φ2が最大の回転位置も不安定な方のトルクゼロ点になる。
したがって、バネ部材13は、通電しないときに不安定なトルクゼロ点から、合成磁束φがゼロとなる安定点に向けて、第2の回転子12の回転位置を戻す働きをするので、高効率化を実現するとともに特性変動を抑制して、確実に最大トルクを得ることができる。
すなわち、第2の回転子12は、電動機40として機能する力行時においては、回転軸10の回転方向に相対回転して磁束を増大させ、発電時においては、回転軸10の反回転方向に相対回転して磁束を増大させることができる。
したがって、第2の回転子12の回転位置に応じて、第2の回転子12にトルクT2を発生させると、第1の回転子11の回転位置は、バネ部材13の付勢力に逆らって、第1の回転子11の磁束φ1と第2の回転子12の磁束φ2との合成磁束φが大きくなるように移動することができる。
また、このとき、電機子電流を増大させると、合成磁束φが増大する電動機40を実現することができる。
なお、上記実施の形態1では、磁石式同期回転電機を、電動機40として適用した場合を例にとって説明したが、発電機として適用してもよい。
以下、磁石式同期回転電機を発電機として適用したこの発明の実施の形態2について説明する。
この場合も、図6に示すインバータ50を用いた回路構成を適用するものとする。
これにより、第2の回転子12には、負のトルクT2が発生するが、第1の回転子11には、第1の回転子11の永久磁石21の磁極位置が第2の回転子12の永久磁石22の磁極位置とは正反対であることから、正のトルクT1が発生する。
しかし、第2の回転子12に負のトルクT2が発生しているので、第2の回転子12は、第1の回転子11に対して相対回転する。
これにより、第1の回転子11と電機子電流との回転位相がずれるので、第1の回転子11の正方向トルクT1が減少し、第2の回転子12との相対移動によって、第1の回転子11は、バネ部材13から負のトルクを受ける。
このとき、第2の回転子12による発電量と、第1の回転子11による回転軸10の駆動エネルギとの差が発電量となって、磁石式同期回転電機は、発電を開始する。
また、電機子電流が増加すると、第2の回転子12の相対移動量はさらに大きくなり、第2の回転子12に負のトルクT2を発生する電機子電流は、第1の回転子11に対しても、負のトルクT1を発生させるようになる。
一方、発電が不要な場合には、電機子電流を減少させることにより、第2の回転子12の相対移動量が減少するので、電機子巻線2の鎖交磁束が減少して、発電量を減少させることができる。
このように、高速回転時においては、電機子電流を減らすことにより、回転子磁束φ1、φ2が小さくなるので、電機子電流を制御しながら発電量を制御することができる。
上記動作を繰り返すことにより、インバータ50の直流出力端電圧を所定電圧(たとえば、14V)に制御することができる。
なお、このときのバネ部材13の強さは、電動機40(図6参照)の駆動時と同一である必要はなく、ねじれ方向によりバネ部材13の特性が異なるものであってもよい。
Claims (9)
- 電機子巻線を有する固定子と、
前記固定子に対向して回転する回転軸と、
第1の永久磁石を有し前記回転軸に固定された第1の回転子と、
第2の永久磁石を有し前記回転軸に設けられた第2の回転子と、
前記第1および第2の回転子の間に設けられたバネ部材とを備え、
前記第2の回転子は、前記第1の回転子に対して前記回転軸の軸方向に対向配置されるとともに、前記第1の回転子に対して相対的に回転可能に設けられ、
前記バネ部材は、前記第1の回転子の第1の磁束と、前記第2の回転子の第2の磁束との合成磁束がほぼゼロになるように、前記第2の回転子を回転させるための戻しトルクを発生する磁石式同期回転電機において、
前記第1および第2の永久磁石は、埋込磁石構造を有し、
前記第1の回転子の前記固定子に対向する面側の回転子鉄心と、前記第2の回転子の前記固定子に対向する面側の回転子鉄心との間には、磁気的な空間からなる磁路が設けられたことを特徴とする磁石式同期回転電機。 - 前記第2の回転子は、前記回転軸の回転方向に対して同一方向または反対方向となるように、前記第1の回転子に対して相対回転可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の磁石式同期回転電機。
- 前記第2の回転子の回転位置を検出する位置検出器と、
前記第2の回転子の回転位置に対して正または負のトルクを発生するように前記電機子巻線の電機子電流を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁石式同期回転電機。 - 前記第2の回転子を前記回転軸の回転方向に移動させて、前記第2の磁束と前記第1の磁束とが同位相になったときの前記バネ部材の戻しトルクは、前記磁石式同期回転電機の最大トルクの約1/2以下に設定されたことを特徴とする請求項3に記載の磁石式同期回転電機。
- 前記第2の回転子を前記回転軸の回転方向に移動させて、前記第1および第2の磁束が同位相になったときに、前記第2の回転子の回転位相がそれ以上進まないように作用するストッパ手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の磁石式同期回転電機。
- 前記第1および第2の回転子の間にダンパを設けたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の磁石式同期回転電機。
- 前記ダンパは、前記第1または第2の回転子の相互対向面に設けられた銅板により構成されたことを特徴とする請求項6に記載の磁石式同期回転電機。
- 前記ダンパは、前記第1または第2の回転子の一方の相互対向面に設けられた銅板と、前記第1または第2の回転子の他方の相互対向面に設けられた永久磁石とにより構成されたことを特徴とする請求項6に記載の磁石式同期回転電機。
- 前記バネ部材は、前記第1および第2の回転子の相互対向面に設けられた永久磁石により構成されたことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の磁石式同期回転電機。
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