JP4629339B2 - 重合可能な還元剤を含有する組成物、キット、および方法 - Google Patents

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Description

本発明は、1つ以上の重合可能な還元剤を含有する硬化性(例えばキュアできる)組成物に関する。このような組成物は、好ましくはセメント、複合材、および接着剤などの歯科用組成物である。本発明は、特に水性の歯科用セメントに関する。
樹脂をベースとする複合材および修復材は、概して非常に高い凝集強さを有することから歯科で広く使用されている。樹脂ベースの複合材セメントは、主にベニヤ、インレー、オンレー、歯冠、およびブリッジなどの美的装具の結合のために使用される。樹脂セメントは、概して高い圧縮および引張強さと低い摩耗抵抗性などの優れた物理的特性を提供し、非平行または短い歯冠プレップなどの困難な間接的結合状況における結合のために使用されることが多い。硬化できる歯科用材料の別の重要な種類は、水性の樹脂変性イオン硬化性セメントである。樹脂セメントおよび樹脂変性イオン硬化性セメントの双方は、種々の色で提供される。セメントを使用する前に、セメントの色は歯色にマッチさせられることが多い。しかし、時間がたつにつれ、樹脂セメントまたは樹脂変性セメントの色は変化し得る。セメントの色が変化するにつれて美的装具の存在はより明らかになり、それは美的に許容できない。このような組成物に対する特定の添加剤は、色安定性を改善できるが、色安定性を改善するいくつかの有用な添加剤は、これらの組成物の潜在的な毒性および/または麻薬特性を増大させる可能性がある。したがってより医学的に許容可能な組成物に対する必要性がある。
米国特許第4,209,434号明細書 米国特許第4,872,936号明細書 米国特許第5,130,347号明細書 米国特許第4,695,251号明細書 米国特許第4,503,169号明細書 米国特許第5,501,727号明細書 米国特許第5,154,762号明細書 米国特許第5,130,347号明細書
本発明は、酸化還元重合反応において還元体(すなわち還元剤)として機能する、重合可能な尿素またはチオ尿素化合物を含む、硬化性(例えば重合、架橋、イオン性、またはその他の化学反応によって硬化できる)組成物を提供する。重合可能な尿素またはチオ尿素化合物は、重合過程においてポリマーマトリックス内に結合することができるので、このような重合可能な還元剤は、尿素またはチオ尿素化合物からの誘導体(例えばバルビツル酸および5−アルキルバルビツル酸)の潜在的な毒性または麻薬特性を低下させることができて有利である。硬化性組成物は、種々多様な用途、典型的に歯科用用途で使用でき、キュアリングライトの使用を必要としない。または、硬化性組成中に光重合開始剤が存在する場合、所望するならば歯科用キュアリングライトが使用できる。
一実施態様で本発明は、酸官能性成分およびエチレン性不飽和成分を含む硬化性樹脂システム、式、
(式中、XはOまたはSである)の官能基を含む重合可能な還元剤、および酸化剤を含む、硬化性組成物である。好ましい実施態様では、組成物は二次還元剤をさらに含むことができる。
酸官能性成分は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの組み合わせの形態であることができる。同様にエチレン性不飽和成分は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの組み合わせの形態であることができる。酸官能性成分とエチレン性不飽和成分は、同一成分であることができる。すなわち酸性官能基とエチレン不飽和の双方を有する1つの化合物が使用できる。または、エチレン性不飽和成分は、酸官能性成分とは異なる。
別の実施態様では本発明は、エチレン性不飽和成分を含む硬化性樹脂システム、式、
(式中、XはOまたはSである)の官能基を含む重合可能な還元剤、二次還元剤、および酸化剤を含む、硬化性組成物である。
別の実施態様では本発明は、エチレン性不飽和成分を含む硬化性樹脂システム、式、
(式中、XはOまたはSである)の官能基を含む重合可能な還元剤、および非ペルオキシド含有酸化剤を含む、硬化性組成物である。
別の実施態様では本発明は、エチレン性不飽和成分を含む硬化性樹脂システム、式、
の重合可能な還元剤、および酸化剤を含む、硬化性組成物である。この還元剤は、新規組成物としても提供される。好ましい実施態様では、組成物は二次還元剤をさらに含むことができる。
別の実施態様では本発明は、酸官能性成分とエチレン性不飽和成分を含む硬化性樹脂システム、酸反応性充填材、式、
(式中、XはOまたはSである)の官能基を含む重合可能な還元剤、任意に二次還元剤、および酸化剤を含む、硬化性組成物である。
別の実施態様では本発明は、酸官能性成分およびエチレン性不飽和成分を含む硬化性樹脂システム、酸反応性充填材、式、
(式中、XはOまたはSである)の官能基を含む重合可能な還元剤、任意に二次還元剤、および酸化剤を含む、硬化性組成物である。
二次還元剤を含む実施態様では、それは好ましくはアミンである。二次還元剤は好ましくは、硬化性組成物総重量を基準にして、約0.01重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
重合可能な還元剤でXが酸素(O)である実施態様では、重合可能な還元剤は1つ以上の尿素基を含む。このような重合可能な還元剤の例としては、5−アクリロキシアルキルバルビツル酸、5−アリル5−イソプロピルバルビツル酸、5−エチル5−クロチルバルビツル酸、およびそれらの混合物が挙げられる。
重合可能な還元剤でXがイオウ(S)である実施態様では、重合可能な還元剤は1つ以上のチオ尿素基を含む。このような重合可能な還元剤の例としては、1−アリルチオ尿素、1,1−ジアリルチオ尿素、1,3−ジアリルチオ尿素、1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素、(メタ)アクリロキシアルキルチオ尿素、1−アリル−3−メチルチオ尿素、およびそれらの混合物が挙げられる。
好ましくは酸化剤は、過硫酸とその塩、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、遷移金属塩、過ホウ酸とその塩、過マンガン酸とその塩、過リン酸とその塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される。非ペルオキシド含有酸化剤を使用する場合、それは好ましくは過硫酸塩、遷移金属塩、過ホウ酸とその塩、過マンガン酸とその塩、過リン酸とその塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
好ましくは酸反応性充填材は微細である。好ましくは酸反応性充填材は、金属酸化物、金属塩、ガラス、またはそれらの混合物を含む。より好ましくは酸反応性充填材は、フルオロアルミノシリケートガラスを含む。特定の実施態様では、組成物は非反応性充填材を含むことができる。
本発明は、内容物がここで述べる硬化性組成物を集合的に含む1つ以上の容器を含むキットも提供する。
本発明は、ここで述べる硬化性組成物を製造し、使用する方法も提供する。例えば、本発明の硬化性組成物は、歯科用物品(例えば歯冠、ブリッジ、歯科矯正装具)を歯または骨に(口腔内または口腔外のどちらかで)接合する方法、並びに歯に充填する方法で使用できる。
好ましくは硬化性組成物は、粉末、液体、またはペーストのあらゆる組み合わせの2つ以上の部分を含んでも良いガラスイオノマー組成物を含む。硬化性組成物は水性であることができるので、典型的に口中に存在するような湿潤条件下で使用できる。
本発明の組成物は、硬化性樹脂システム、尿素またはチオ尿素基のいずれかとそれらの誘導体を含有する重合可能な還元剤、および酸化剤を含む。好ましくは組成物は、重合可能または重合不可能のどちらかであることができる二次還元剤を含む。還元剤および酸化剤は組成物中で混和性であるように、好ましくは水中で混和性でもあるように選択される。
樹脂システムは下で述べるように、典型的に1つ以上のエチレン性不飽和モノマー、オリゴマー、またはポリマーを含む。樹脂システムは下で述べるように、1つ以上の酸官能性モノマー、オリゴマー、またはポリマーも含むことができる。さらに重合可能な還元剤は下で述べるように、重合可能なモノマー、オリゴマー、またはポリマーであることができる。
硬化性組成物は、医用および歯科用用途をはじめとする種々の用途、しかし特に歯科用用途で使用できる。歯科用接着剤、歯科用セメント、および歯科用複合材などの歯科用用途で使用する場合、硬化性(典型的にキュアできる)組成物は、直接エナメル質および/または象牙質に結合しても良い。または、エナメル質および/または象牙質上に下塗層を使用でき、その上で硬化性組成物が使用される。
本発明の組成物は、いくつかの反応の1つ以上を起こして硬化できる。硬化機序の少なくとも1つは、酸化還元反応を伴う。酸化還元機序は、光重合開始剤が存在する場合、光硬化機序で補完できる。代案としては、または追加として、酸化還元機序はイオン性硬化機序で補完できる。これは組成物が、組み合わせるとイオン性反応によって反応して硬化した塊を生じる成分を含有することを意味する。
樹脂システム
樹脂システムの成分は、硬化性組成物のその他の成分と混和性であるように選択される。すなわち好ましくは、樹脂システムの成分は、少なくとも十分に混和性であるので、組成物のその他の成分(例えば還元剤および酸化剤)と組み合わせたときに、実質的な(substantial)量の沈降を起こさない。好ましくは樹脂システムの成分は、水と混和性である。樹脂システムの成分は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、またはそれらの組み合わせであることができる。
本発明の硬化性組成物の樹脂システムは、典型的にエチレン性不飽和成分を含む。好ましくは本発明の硬化性組成物の樹脂システムは酸官能性成分も含む。エチレン性不飽和成分は別個の成分として存在でき、あるいはエチレン不飽和は、所望するならば酸官能性成分などの別の化合物中の部分として存在できる。このようにして1つの化合物が、酸官能性部分とエチレン性不飽和部分を含むことができる。
一実施態様では、エチレン性不飽和成分がα,β−不飽和化合物を含む。好ましいα,β−不飽和化合物は、靭性、接着、硬化時間などの改変特性を提供できる。α,β−不飽和化合物を用いる場合、それらは好ましくは水溶性、水混和性、または水分散性である。水溶性、水混和性、または水分散性(メタ)アクリレート(すなわちアクリレートおよびメタクリレート)、(メタ)アクリルアミド(すなわちアクリルアミドおよびメタクリルアミド)、およびウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリセロールモノ−またはジ−メタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ビスGMA、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、およびジアセトンメタクリルアミドが挙げられるが、これに限定されるものではない。適切なエチレン性不飽和化合物は、ミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich、(St.Louis、MO))、およびドイツ国ダルムシュタットのローム・アンド・テック(Rhom and Tech、Inc.、(Darmstadt、Germany))などの種々多様な販売元からも入手できる。所望するならα,β−不飽和化合物の混合物が使用できる。
本発明の好ましい組成物は、所望の凝固または硬化速度と、硬化に続く所望の全体的特性とを提供するのに十分な量のエチレン性不飽和成分を含む。好ましくは混合されているが凝固していない本発明の硬化性組成物は、硬化性(混合されているが凝固していない)組成物の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%、および最も好ましくは少なくとも約10重量%のエチレン性不飽和成分を含有する。
酸官能性成分は、モノマー、オリゴマー、またはポリマーを含むことができ、炭素、亜リン酸、イオウ、およびホウ素化合物の酸素酸官能性誘導体を含むことができる。適切な酸官能性化合物としては、ウィルソン(Wilson)らの(特許文献1)の2欄62行〜3欄6行で列挙されたものが挙げられる。好ましい酸官能性化合物は、アクリル酸、2−クロロアクリル酸、2−シアノアクリル酸、アコニット酸、シトラコン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、マレイン酸、メサコン酸、メタクリル酸、およびチグリン酸などのアルケン酸のホモポリマーとコポリマー(すなわち2つ以上の異なるモノマーの)をはじめとするポリマーである。所望するなら酸官能性化合物の混合物が使用できる。
当業者には理解されるように、酸官能性成分は、良好な保存、取り扱い、および混合特性を提供するのに十分な分子量を有するべきである。酸官能性成分の好ましい分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーとポリスチレン標準を使用した評価で約60〜約100,000の重量平均分子量であり、約80〜約30,000が最も好ましい。
本発明の好ましい組成物は、十分な量の酸官能性成分を含み、所望の凝固特性と硬化に続く所望の全体的特性を提供する。好ましくは本発明の混合されているが凝固していない硬化性組成物は、硬化性(混合されているが凝固していない)組成物の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約2重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%、そして最も好ましくは少なくとも約10重量%の酸官能性成分を含有する。
上述のように代案の実施態様では、エチレン性不飽和が酸官能性成分中の部分として存在できる。例えばグリセロールホスフェートモノメタクリレート、グリセロールホスフェートジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ−またはトリ−メタクリレート、ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸などのα,β−不飽和酸性化合物を硬化性樹脂システム中で成分として使用しても良い。酸官能性とエチレン性不飽和成分の双方を有するこのタイプの追加的(additional)化合物については、エンゲルブレヒト(Engelbrecht)の(特許文献2)およびミトラ(Mitra)の(特許文献3)で述べられている。エチレン性不飽和および酸部分を含有する種々多様なこのような化合物が使用できる。所望するなら、このような化合物の混合物が使用できる。
充填材
本発明の硬化性組成物は、充填材も含有できる。充填材は、歯科用修復組成物中で現在使用されている充填材など、医用または歯科用用途で使用される組成物への組み込みに適切な、1つ以上の種々多様な材料から選択しても良い。充填材は好ましくは微細である。充填材は、単峰性(unimodial)または多峰性(polymodial)(例えば二峰性の(bimodal))粒度分布を有することができる。好ましくは充填材の最大粒度(粒子の最大寸法、典型的に直径)は、約10μm未満、そしてより好ましくは約2.0μm未満である。好ましくは充填材の平均粒度は約3.0μm未満、そしてより好ましくは約0.6μm未満である。
充填材は無機材料であることができる。それは樹脂システム中に不溶性で、任意に無機充填材で充填された架橋有機材料であることもできる。充填材はいずれにしても非毒性で、口内で使用するのに適切であるべきである。充填材は、放射線不透過性または放射線透過性であることができる。
適切な無機充填材の例は、石英;窒化物(例えばケイ素窒化物);例えばCe、Sb、Sn、Ba、Zn、およびAlから誘導されるガラス;長石;ホウケイ酸ガラス;カオリン;滑石;チタニア;ランドクレブ(Randklev)の(特許文献4)で述べられるものなどの低モース硬度充填材;そしてコロイド状およびサブミクロンシリカ粒子(例えばオハイオ州アルコンのデグサ・コープ(Degussa Corp.(Akron,OH))からの「OX50」、「130」、「150」、および「200」シリカ、およびイリノイ州タスコラのカボット・コープ(Cabot Corp.(Tuscola,IL))からのCAB−O−SIL M5シリカをはじめとする、商品名エアロシル(AEROSIL)の下に入手できるものなどの発熱性シリカ)をはじめとするが、これに限定されるものではない天然または合成材料である。適切な有機充填材粒子の例としては、充填または非充填微粉ポリカーボネート、ポリエポキシドなどが挙げられる。
好ましい非酸反応性充填材粒子は、石英、サブミクロンシリカ、およびランドクレブ(Randklev)の(特許文献5)で述べられるタイプの非ガラス質微小粒子である。これらの非酸反応性充填材の混合物、並びに有機および無機材料からできた組み合わせ充填材もまた考察される。
充填材粒子の表面は、充填材と樹脂の間の結合を増強するために、カップリング剤によっても処理できる。適切なカップリング剤の使用としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
充填材は酸反応性充填材であることもできる。酸反応性充填材は、典型的に酸官能性樹脂成分との組み合わせで使用され、非反応性充填材との組み合わせで使用されても使用されなくても良い。酸反応性充填材は、所望するならフッ化物を放出する特性を有することもできる。適切な酸反応性充填材としては、金属酸化物、金属塩、およびガラスが挙げられる。好ましい金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および酸化亜鉛が挙げられる。好ましい金属塩としては、例えば酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム,塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム、およびフルオロホウ酸カルシウムなどの多価カチオンの塩が挙げられる。
好ましいガラスとしては、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラスおよび、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスが特に好ましい。FASガラスは、好ましくはガラスを硬化性組成物の成分と混合すると硬化した歯科用組成物が形成するように、十分な溶出性カチオンを含有する。ガラスは、好ましくは硬化した組成物が抗齲食性特性(cariostatic properties)有するように十分な溶出性フッ化物イオンも含有する。ガラスは、FASガラス製造業者には良く知られている技術を使用して、フッ化物、アルミナ、およびその他のガラス形成成分を含有する溶融物から製造できる。FASガラスは、好ましくは、その他のセメント成分と都合良く混合でき、得られた混合物を口内で使用した際に良好に機能するように、十分に微細な粒子の形態である。好ましくは、FASガラスの平均粒度(典型的に,直径)は、例えば沈降分析器を使用した測定で、少なくとも約0.2μm、そしてより好ましくは少なくとも約1μmである。好ましくはFASガラスの平均粒度(典型的に直径)は約10μm以下、そしてより好ましくは約5μm以下である。適切なFASガラスは、当業者には知られており、種々多様な販売元から入手でき、多くは、ミネソタ州セントポールの3M ESPEデンタル・プロダクツ(3M ESPE Dental Products(St.Paul,MN))からのヴィトレマー(VITREMER)、ヴィトレボンド(VITREBOND)、リライXルティング・セメント(RELY X LUTING CEMENT)およびケタック−フィル(KETAC−FIL)、日本国東京のG−Cデンタル・インダストリアル(G−C Dental Industrial Corp.(Tokyo,Japan))からのフジII(FUJI II)、GCフジLC(GC FUJI LC)、およびフジIX(FUJI IX)、そしてペンシルベニア州ヨークのデンツプレイ・インターナショナル(Dentsply International(York,PA))からのケムフィル・スーペリア(CHEMFIL Superior)の商品名の下に市販されるものなどの現在入手可能なガラスイオノマーセメント中にある。所望するなら充填材混合物を使用することもできる。
FASガラスには、任意に表面処理を施すことができる。適切な表面処理としては、酸洗浄(例えばリン酸による処理)、ホスフェートによる処理、酒石酸などのキレート剤による処理、そしてシランまたは酸性または塩基性シラノール溶液による処理が挙げられるが、これに限定されるものではない。望ましくは、硬化性組成物の保存安定性を増大できることから、処理溶液または処理されたガラスのpHが中性またはほぼ中性に調節される。
特定の組成物中では、同一部分またはまたは異なる部分のどちらかで、酸反応性と非酸反応性充填材の混合物が使用できる。
充填材の量は、硬化前に望ましい混合と取り扱い特性、そして硬化後に良好な性能を有する硬化性組成物を提供するのに、十分であるべきである。好ましくは充填材は、硬化性組成物成分総重量(水を含む)の約90重量%以下、より好ましくは約85重量%以下、そして最も好ましくは約80重量%以下に相当する。好ましくは充填材は、硬化性組成物成分総重量(水を含む)の少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%、そして最も好ましくは少なくとも約30重量%に相当する。
酸化還元重合開始剤
還元および酸化剤は、都合良く一緒に考察される。それらは相互に反応し、あるいは別のやり方で協力して、樹脂システム(例えばエチレン性不飽和成分)の重合を開始できるフリーラジカルを生じるべきである。このタイプの硬化は暗反応で、すなわちそれは光の存在に依存せず、光不在下で進行できる。還元および酸化剤は、好ましくは十分に保存安定性があって望ましくないカラー化がなく、典型的歯科用条件下での保存と使用を可能にする。それらは樹脂システムと十分に混和性(そして好ましくは水溶性)であって、硬化性組成物のその他の成分中への容易な溶解を可能にする(そしてそれからの分離を阻止する)べきである。好ましくは本発明の還元剤は、室温で少なくとも約2重量%の水への溶解度を有する。
本発明の還元剤は、重合可能な還元剤と、任意に重合可能であってもなくても良い二次還元剤とを含む。これらの還元剤は、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの形態であることができる。重合可能な還元剤は、下記構造、
(式中、Xは酸素(O)またはイオウ(S)である)の化学基を含む。XがOである場合、還元剤は尿素基を含む。またはXがSであれば、還元剤はチオ尿素基を含む。尿素およびチオ尿素基は、酸化還元(すなわちレドックス)において重合反応の還元体として機能することが知られている。さらに尿素およびチオ尿素の誘導体も重合可能な還元剤として有用である。所望するならこのような重合可能な還元剤の種々の組み合わせが使用できる。
尿素化合物としては、例えば5−アクリロキシアルキルバルビツル酸、5−アリル5−イソプロピルバルビツル酸、および5−エチル5−クロチルバルビツル酸などのバルビツル酸誘導体が挙げられる。
好ましくは重合可能な還元剤は、酸安定性でありアミン含有還元剤またはアスコルビン酸で遭遇することが多い着色形成を防ぐことからことから、アリルチオ尿素基を含む。アリルチオ尿素基を含む好ましい重合可能な還元剤としては、(メタ)アクリロキシアルキルチオ尿素、1−アリルチオ尿素、1,1−ジアリルチオ尿素、1,3−ジアリルチオ尿素、1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素、および1−アリル−3−メチルチオ尿素が挙げられる。アリルチオ尿素基を含む最も好ましい重合可能な還元剤は、下記構造、
によって表される。
二次還元剤は、重合可能または重合不能のどちらかであることができる。好ましい二次還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導、およびワング(Wang)らの(特許文献6)で述べられるような金属錯体アスコルビン酸化合物と;アミン、特に4−tert−ブチルジメチルアニリンなどの三級アミンと;p−トルエンスルフィン塩およびベンゼンスルフィン塩などの芳香族スルフィン塩と;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、および1,3−ジブチルチオ尿素などのチオ尿素と;それらの混合物とが挙げられる。その他の二次還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に左右される)、シュウ酸、亜ジオチン酸または亜硫酸アニオンの塩、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、二次還元剤はアミンである。
典型的に重合可能な尿素またはチオ尿素還元剤および二次還元剤の使用によって、顕著な利点が現実化できる。この組み合わせは、硬化性組成物の成分の保存安定性と並んで、硬化性および硬化した組成物双方の色安定性、硬化した組成物の毒性、および硬化性組成物の反応時間(「スナップセット」)に関する特性のバランスを提供する。適切な酸化剤は当業者にも良く知られており、過硫酸とそのナトリウム、カリウム、アンモニウム、セシウムなどとの塩、およびアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、これに限定されるものではない。その他の酸化剤としては、ベンゾイルペルオキシドなどのペルオキシドと、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ナトリウムペルオキシド、過酸化水素、およびアミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシドと、並びに塩化コバルト(III)および塩化第二鉄などの遷移金属の塩、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸とその塩、過マンガン酸とその塩、過リン酸とその塩、およびそれらの混合物が挙げられる。
2つ以上の酸化剤または2つ以上の還元剤を使用することが望ましいかもしれない。少量の遷移金属化合物を添加して、酸化還元硬化速度を加速させても良い。
還元および酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。これは任意の充填材以外の硬化性組成物成分の全てを合わせて、硬化した塊が得られるかどうか観察して評価することができる。
好ましくは重合可能な還元剤は、硬化性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約0.01重量%、そしてより好ましくは少なくとも約0.1重量%の量で存在する。好ましくは重合可能な還元剤は、硬化性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、約10重量%以下、そしてより好ましくは約5重量%以下の量で存在する。
好ましくは任意の二次還元剤は、硬化性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約0.01重量%、そしてより好ましくは少なくとも約0.05重量%の量で存在する。好ましくは任意の二次還元剤は、硬化性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、約10重量%以下、そしてより好ましくは約5重量%以下の量で存在する。
好ましくは酸化剤は、硬化性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約0.01重量%、そしてより好ましくは少なくとも約0.10重量%の量で存在する。好ましくは酸化剤は、硬化性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、約10重量%以下、そしてより好ましくは約5重量%以下の量で存在する。
還元または酸化剤は、ミトラ(Mitra)らの(特許文献7)で述べられるように、マイクロカプセル化できる。これは概して硬化性組成物の保存安定性を増強し、必要ならば還元および酸化剤を一緒にパッケージに入れるのを可能にする。例えばカプセルの材料の適切な選択を通じて、酸化および還元剤を酸官能性成分および任意の充填材と組み合わせて、保存安定状態に保つことができる。同様に水溶性カプセルの材料の適切な選択を通じて、還元および酸化剤をFASガラスおよび水と組み合わせて、保存安定状態に保つことができる。
好ましくはカプセルの材料は、医学的に許容可能なポリマーで、良好な皮膜形成剤である。またカプセルの材料のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは室温を超える。
光重合開始剤
硬化性組成物には光重合開始剤も添加できるが、必要ではない。光重合開始剤は、適切な波長と強度の光への曝露時に、エチレン性不飽和成分のフリーラジカル架橋を促進できるべきである。それはまた好ましくは、十分に保存安定性があって望ましくない着色を含まず、典型的な歯科用条件下での保存と使用を可能にする。可視光光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は好ましくは樹脂システムと混和性であり、より好ましくは水溶性または水混和性である。極性基を持つ光重合開始剤は、通常十分な程度の水溶性または水混和性を有する。光重合開始剤は頻繁に単独で使用できるが、典型的に適切な供与体化合物または適切な促進剤(例えばアミン、ペルオキシド、リン化合物、ケトンおよびα−ジケトン化合物)と組み合わせて使用される。
適切な可視光誘発および紫外線誘発開始剤は、当業者には良く知られている。好ましい可視光誘発開始剤としては、カンホルキノン、ジアリールヨードニウム単塩または金属錯塩、発色団置換ハロメチル−s−トリアジンおよびハロメチルオキサジアゾールが挙げられる。特に好ましい可視光−誘発光重合開始剤は、カンホルキノンなどのα−ジケトンと、塩化−、臭化−、ヨウ化−、またはヘキサフルオロホスフェート−ジフェニルヨードニウムなどのジアリールヨードニウム塩との組み合わせを含む。好ましい紫外線誘発重合開始剤としては、任意に重合可能なアミンが挙げられる。
用いられる場合、光重合開始剤は所望の光重合速度を提供するのに十分な量で存在すべきである。この量は、光源、放射エネルギーに曝露する組成物層の厚さ、および光重合開始剤の吸光係数(extinction coefficient)にある程度左右される。
好ましくは、混合されているが凝固していない光硬化できる本発明の組成物は、硬化性(混合されているが凝固していない)組成物の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.1重量%を含む。好ましくは、混合されているが凝固していない光硬化できる本発明の組成物は、硬化性(混合されているが凝固していない)組成物の総重量(水を含む)を基準にして、約5重量%以下、そしてより好ましくは約2重量%以下を含む。
任意の添加剤
本発明の組成物は、特に酸官能性成分が含まれる場合、好ましくは水を含有する。水は販売形態の製品中に存在でき、または歯科医によって使用直前に添加でき、または口内の水との接触の結果含まれることができる。水は、蒸留、脱イオン、または普通の水道水であることができる。概して脱イオン水が好ましい。
水の量は、適切な取り扱いおよび混合特性を提供し、充填材酸反応中のイオン輸送を可能にするのに十分であるべきである。好ましくは水は、組成物を形成するのに使用される成分総重量の少なくとも約2重量%、そしてより好ましくは少なくとも約5重量%に相当する。好ましくは水は、組成物を形成するのに使用される成分総重量の約90重量%以下、そしてより好ましくは約80重量%以下に相当する。任意に硬化性組成物は、溶剤(例えばアルコール)または希釈剤も含有しても良い。
所望するなら本発明の硬化性組成物は、顔料、阻害剤、促進剤、粘度調節剤、界面活性剤、および当業者には明白なその他の成分などの補助剤を含有できる。
組成物の調製および使用
本発明の組成物は、凝固反応中および組成物硬化後の双方において、硬化性組成物中の特性の適度なバランスを提供するように調節される。これらの特性としては、硬化性組成物の成分の保存安定性に並んで、硬化した組成物の色安定性、毒性、および反応時間(「スナップセット」)が挙げられる。例えば硬化性組成物は歯科用用途のためには、好ましくは約2分間以下のスナップセットを有するべきである。組成物の全工作時間または硬化時間(すなわち口腔内に類似した湿度と温度条件下で、硬化性樹脂が液体またはペースト状態から固形材料に硬化する時間)は、好ましくは約6分未満、そしてより好ましくは約4分未満である。
本発明の硬化性組成物は、二部型粉末/液体、ペースト/液体、およびペースト/ペーストシステムをはじめとする種々の形態で提供できる。それぞれ粉末、液体、ゲル、またはペーストの形態である複数パート組み合わせ(すなわち2つ以上の部分の組み合わせ)を用いるその他の形態も可能である。複数パートシステムでは、1つの部分は典型的に還元剤(群)を含有し、第2の部分は典型的に酸化剤(群)を含有する。したがってシステムの1つの部分に重合可能な還元剤が存在する場合、酸化剤は典型的にシステムの第2の部分に存在する。しかし重合可能な還元剤および酸化剤は、マイクロカプセル封入技術の使用を通じてシステムの同一部分に組み合わせることができる。
硬化性組成物の成分は、下で述べるように、必要になるまで成分が保存できるように組成物の内容物がパッケージされるキット内に含めることができる。
歯科用組成物として使用される場合、硬化性組成物の成分は、従来の技術を使用して混合して臨床的に適用できる。(光重合開始剤が組成物に含まれている場合を除いて)キュアリングライトは必要ない。組成物は硬組織の前処理を必要とせずに、象牙質および/またはエナメルに対する非常に良好な接着を提供できる。または、歯組織上に下塗層が使用でき、その上に硬化性組成物が使用される。組成物は、非常に良好な長期フッ化物放出も提供できる。ゆえに本発明の組成物は、光またはその他の外的硬化エネルギーの適用なしにバルクで硬化でき、前処理を必要とせず、改善された曲げ強さをはじめとする改善された物理的特性を有し、抗齲食性のための高いフッ化物放出を有する、ガラスイオノマーセメントを提供しても良い。
本発明の組成物は、充填されていても充填されていなくても良い、種々多様な歯科用材料として使用するのに特に良好に適応している。それらは歯に隣接して配置させる(すなわち一時的または恒久的結合で、または歯に接触させて、歯科用材料を配置させる)と硬化する、軽度に充填された複合材または非充填組成物であるシーラントまたは接着剤中で使用できる。それらは、典型的に充填組成物である複合材中で使用できる。それらは、歯に隣接させて配置された後に重合する複合材である修復においても使用できる。それらは歯に隣接して配置される前に、(例えば歯冠、ブリッジ、ベニヤ、インレー、オンレーなどとして)最終用途のために整形、重合される複合材である補綴においても使用できる。このような既製品は、歯科医またはその他のユーザーによって、カスタムフィットの形状に研磨または別のやり方で形成できる。
組成物は、従来の光硬化できるセメントの硬化を達成するのが困難かもしれない臨床用途において、特有の効用を有する。このような用途としては、深部修復、大型歯冠ビルドアップ、歯内修復、歯科矯正ブラケットの付着(例えばペースト部分がブラケットに下塗りでき、液体部分が後から歯に刷毛塗りできる、プレコートされたブラケットを含む)、バンド、頬面管、およびその他の装置、金属歯冠の装着、またはその他の歯に対する不透光性補綴装置、および口内の手の届かない領域におけるその他の修復用途が挙げられるが、これに限定されるものではない。
好ましい実施態様では、FASガラスおよび酸性ポリマー間のイオン性硬化反応と、別個の酸化還元硬化暗反応との組み合わせが、完全で均一な硬化および良好な臨床特性の保持を容易にする。このようにして本発明の組成物には、普遍的修復として良好な見込みがある。
以下の実施例によって本発明の目的と利点についてさらに例証するが、これらの実施例で述べられるその特定の材料と量、並びにその他の条件と詳細は、本発明を不当に制限するものではない。特に断りのない限り、あらゆる部および百分率は重量ベースであり、あらゆる水は脱イオン水である。
略語:
AA:ITA :ミトラ(Mitra)の(特許文献8)の実施例3に従って調製された、モル比4:1のアクリル酸:イタコン酸からできたコポリマー。MW(平均)=106,000、多分散性ρ=4.64。
AA:IA:IEM :(特許文献8)実施例11の乾燥ポリマーの調製に従って、AA:ITAコポリマーと、コポリマーの酸性基の16モル%をペンダントのメタクリレート基に転換するのに十分な2−イソシアナトエチルメタクリレートとを反応させてできるポリマー。
AHTU:ミズーリ州セントルイスのシグマ・アルドリッチからの(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO))1−アリル−3−(2−ヒドロキシエチル)−2−チオ尿素。
ATU:シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からのアリルチオ尿素。
BHT:ニュージャージー州フォーズのPCMスペシャリティズ(PMC Specialties(Fords,NJ))からのブチル化ヒドロキシトルエン。
ビスGMA:2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(CAS No.1565−94−2)。
GDMA:ドイツ国ダルムシュタットのローム・アンド・テック(Rhom and Tech,Inc.(Darmstadt,Germany))からのグリセリルジメタクリレート。
HEMA:ローム・アンド・テック(Rhom and Tech,Inc.)からの2−ヒドロキシエチルメタクリレート。150ppmの4−メトキシフェノールを阻害剤として含有する。
IEM:シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの2−イソシアナトエチルメタクリレート。
KPS:シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの過硫酸カリウム。
FG−KPS:シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの細かく粉砕された過硫酸カリウム。
MEC−KPS:(特許文献8)の実施例3に従って調製された、マイクロカプセル化された過硫酸カリウム。
TBDMA:シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)からの4−tert−ブチルジメチルアニリン。
FAS I:ミトラ(Mitraら)の(特許文献7)実施例1の「制御ガラス」のようなフルオロアルミナシリケート(FAS)ガラス粉末(ただし、表面積2.8m2/gを有する)を液体処理溶液でシラン処理した。処理溶液は、コネチカット州グリニッチのCKウィトコ(CK Witco Corp.(Greenwich,CT))からのA174γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン4部と水40部を合わせ、氷酢酸を添加してpH3.01を得て、0.5時間撹拌して調製した。得られた透明処理溶液を100部のガラス粉末と、さらに67部の水に混合し、スラリーを得た。5%水酸化アンモニウムを添加して、スラリーのpHを7.0に調節した。さらに30分間撹拌した後、混合物をデラウェア州ウィルミントンのデュポン(DuPont(Wilmington,DE))からのテフロン(TEFLON)ポリテトラフルオロエチレンで被覆されたトレーに注ぎ95℃で24時間乾燥させた。得られた乾燥ケーキを60−μmのふるいに通過させて粉砕した。
FAS II:乾燥ケーキを74μmふるいに通過させて、FAS I類似のFASガラスを調製した。
FAS III:(特許文献7)実施例1の「制御ガラス」を表面積84m2/gに磨砕して、液体処理溶液でシラン処理した。8部のA174γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用したこと以外は、シラン処理とそれに続く乾燥ガラスを分離する過程は、FAS Iについて述べたように実施した。得られた乾燥ケーキを74μmふるいに通過させて粉砕した。
FAS IV:FAS IVはFAS Iに類似しているがシラン処理がない。
FAS V:FAS IIとFAS IVとの50/50配合物。
FAS VI:ショット(Schott)ガラス(製品番号G 018−117、ドイツ国ランツフートのショット・ガラス・エキスポート(Schott Glas Export GmbH)(Landshut,Germany))をFAS IIIについて述べたようにシラン処理した。
Zr−Si充填材:ランドクレブ(Randklev)の(特許文献5)に述べられるようにして、放射線不透過性ジルコニア−シリカ(Zr−Si)充填材を調製した。
試験方法:
圧縮強さ(CS):最初に混合セメントサンプルを4mmの内径を有するガラス管に注入して、圧縮強さを評価した。ガラス管の両端をシリコーンプラグで塞いだ。充填した管に0.275MPaの圧力を5分間かけて、37℃で90%を超える相対湿度(RH)のチャンバーに入れて1時間静置した。次に硬化したサンプルを37℃の水に1日間入れてから8mmの長さに切断した。クロスヘッド速度1mm/分で作動する、マサチューセッツ州カントンのインストロン(Instron Corp.(Canton,MA))からのインストロン(INSTRON)万能試験機を使用して、ISO基準7489に従って圧縮強さを測定した。
象牙質接着(DA):象牙質接着は、(特許文献7)で述べられる手順に従って測定したが、象牙質のいかなる前処理も使用しなかった。
直径引張強さ(DTS):上述のCS手順を使用して直径引張強さを測定したが、2mmの長さに切断したサンプルを使用した。
エナメル接着(EA):(特許文献7)で述べられる手順に従って、エナメル接着を測定した。
曲げ強さ(FS)および曲げ弾性率(FM):ISO試験手順4049で述べられる手順に従って、曲げ強さおよび曲げ弾性率を測定した。
硬化時間:硬化性樹脂が液体またはペースト状態から固形材料に硬化する硬化時間を次の手順に従って測定した。一定温度と湿度の部屋(22℃および50%のRH)で、各1gのペーストAおよびBを25秒間力強く練った。次に中心に長方形の孔(長さ10mm、幅8mm、深さ5mm)を有する立方アルミニウム金型を混合ペースト材料で完全に充填した。次に充填した金型を、充填した一端(下端部)がアルミニウムパッドを覆うポリエステルフィルムの上になるように置いた。(最初の混合から)45秒後、金型の上充填端に別のポリエステルフィルムを載せて、フィルムに400gの基準分銅を載せた。90秒後に分銅を除去し、サンドイッチされたサンプル構造物をRH95%で37℃の湿度チャンバーに移した。120秒で上のポリエステルフィルムを除去し、一端に平坦点を有して、ハンドル端が400gの材料ブロックにつながった円柱状「ニードル」からなる圧子装置により、硬化しつつあるペースト材料の上表面を手動で窪ませた。ニードル端がフィルムで覆われたアルミニウムパッドにあたらなくなるまで、試験サンプルを10〜15秒間毎に窪ませた。混合開始から、ニードルの底板との最後の接触までの経過時間を硬化時間と定義した。硬化時間を2回または3回の測定の平均で報告した。
工作時間:混合されたペースト−ペーストセメントが固化する工作時間は、次の手順に従って測定した。用具およびペーストを使用前に、一定温度および湿度の部屋(22℃および50%RH)に保管し、手順を同一の部屋で実施した。選択された量のAおよびBペーストをパッド上でヘラによって25秒間混合し、得られた混合した組成物サンプルを8cm×10cmプラスチック・ブロックの半円筒トラフセクション(長さ8cm、幅1cm、および深さ3mm)内に移した。1:00分の時点で、30秒毎にトラフを横切るボールポイント(1mm径)溝制作器を使用して垂直の溝を作り、2:00分の時点で15秒毎に溝を作り、工作時間の終了近くになって10秒毎に溝を作った。工作時間の終了は、セメントサンプルの塊が溝制作器と共に動いた時点で判定した。工作時間を2回または3回の測定の平均で報告した。
水中での膨張:硬化した樹脂サンプルの水中での膨張を次の手順に従って測定した。一定温度および湿度の部屋(22℃および50%RH)内で、選択された量のAおよびBペーストをパッド上でヘラによって25秒間混合し、得られた混合された組成物サンプルをポリエステルフィルムとポリカーボネートプレートのシートの間に挟まれた3個の20mm(内径(ID))×1mm深さのテフロン(TEFLON)円盤金型内に移した。充填したディスク金型をクランプ締めし(400gの力)、直ちに37℃、95%RHのチャンバーに入れて硬化させた。混合開始後10分めに、1つのディスクを金型から除去し、濡れた紙タオル上に載せた。恒久的マーカーによって二等分する線をサンプル上に描き、歯科用スケーラーによってサンプルをライン上でスクライブした。サンプルの端からのあらゆるフラッシングを除去し、サンプルを37℃の脱イオン(DI)水を満たしたペトリ皿に浸した。次に残る2個のディスクサンプルに対してこの手順を反復した。直ちに(混合開始から約15分めに)光学顕微鏡を使用して、サンプルがまだ水に浸された状態で、各サンプルについてスクライブされた線の長さを2回測定した。平均された値は初期値(IV)に相当した。24時間後、全3個のサンプルについてスクライブされた線の長さを2回測定して、平均して膨張値(EV)を提供した。各サンプルに対する%膨張を計算し、水中での%膨張=(EV−IV)×100/IVの式に従って、硬化した樹脂の水中での%膨張を3個のサンプルの%膨張値の平均として報告した。
出発物質:
液体樹脂A:AA:ITA(14.4部)、AA:ITA:IEM(35.6部)、HEMA(17.1部)、水(32.9部)、およびBHT(0.06部)を混合して、液体樹脂Aを作った。得られた硬化性樹脂の溶液を液体樹脂Aと命名した。
実施例1〜2および実施例A、ならびに比較例2−液体樹脂Aのゲル化調査
酸化剤との種々の組み合わせで異なる還元剤を調合し、硬化性樹脂への薬剤の添加に続くゲル化時間を評価して、ゲル化調査を実施し、異なる重合可能な還元剤システムの有効性を判定した。具体的には種々の還元剤をKPS酸化剤と組み合わせ、次に室温で5〜10秒間撹拌しながら液体樹脂Aに添加した。混合薬剤を樹脂に添加した時点から混合物が液体から粘稠なゲルに転換するまでのゲル化時間を測定した。成分使用量、ゲル化時間、およびゲル外観を表1に示す。
表1の結果は、重合可能な還元剤とアミン還元剤(実施例1および2)との組み合わせが、重合可能な還元剤の単独使用(実施例A)またはアミン還元剤の単独使用(比較例2)と比較して、液体樹脂Aのより迅速なゲル化時間をもたらすことを示す。
実施例3〜6−液体樹脂AおよびFAS充填材の硬化時間調査
硬化時間調査を実施して、酸化剤および異なるフルオロアルミナシリケート(FAS)ガラス充填材との種々の組み合わせにおける重合可能な還元剤の有効性を判定した。エチレン性不飽和カルボン酸のポリマーを含有する硬化性樹脂への薬剤および充填材の添加に続いて硬化時間を測定した。エチレン性不飽和カルボン酸のポリマー、FASガラス充填材、および水を含有するこのような硬化性システムは、ガラスイオノマーセメントとして一般に知られている。具体的には、(様々な量の酸化剤FG−KPSを含有する)FASガラス充填材と、(様々な量の重合可能な還元剤ATUを含有する)液体樹脂Aとを室温で15〜30秒間ヘラで混合して組み合わせた。硬化時間をここで述べた試験方法に従って求めた。成分の使用量および硬化時間を表2に示す。
表2の結果は、硬化性樹脂、KPS−ATU酸化還元システム、および種々のFAS充填材を含有する種々多様な組成物が、歯科用材料として使用するのに許容可能な硬化時間を有することを示す。
実施例7〜10
液体樹脂A(2%のATU添加)を37℃および90%のRHでそれぞれ1週間、2週間、4週間、および8週間エージングさせたこと以外は、実施例5Dで述べたようにして硬化性樹脂(実施例7〜10)を調製した。成分の混合および引き続く硬化に続いて、ここで述べた試験方法に従って、得られた固形樹脂をエナメル接着(EA)、圧縮強さ(CS)、および直径引張強さ(DTS)について評価した。結果を表3に示す。
表3のデータからは、液体樹脂A(2%のATU添加)のエージングの結果、物理的特性(EA、CS、またはDTS)に顕著な差が生じないと結論できる。
実施例11
重合可能な還元剤ATUを最初に液体樹脂Aでなく充填材に添加したこと以外は、実施例3〜6に類似したやり方で、充填材(粉末)/液体組成物を配合した。具体的には充填材は、FAS V(4.65部)、MEC−KPS(0.5部)、およびATU(0.2部)から成った。充填材を2.5:1の比率で液体樹脂Aに添加し、得られた硬化時間は2分5秒であった。ここで述べた試験方法に従って、物理的特性を求めたところ次のようであった。CSは115MPa、DTSは22.1MPa、そしてEA(調節なし)は6.08MPa。
実施例12〜13
ペースト75A(1.4g)とペースト75B(1.0g)をヘラを使用して25秒間混合して、ペースト/ペースト組成物(ガラスイオノマーセメントシステム)を配合し、硬化後に硬化した樹脂セメント(実施例12)を得た。同様にペースト77A(1.7g)とペースト77B(1.0g)とを混合して、硬化後に硬化した樹脂セメント(実施例13)を得た。ペースト75A/77Aおよびペースト75B/77Bの成分は、それぞれ表4および表5に示される。硬化した樹脂セメントの硬化時間、工作時間、および種々の物理的特性をここで述べる試験方法に従って求め、表6に結果を示す。
表6の結果は、硬化性樹脂システム、充填材、およびKPS−ATU酸化還元システム(KPSが1つのペースト中にあり、ATUがもう1つのペースト中にある)を含有するペースト/ペースト組成物が、歯科用材料として使用するのに許容可能な硬化時間と物理的特性を有することを示す。実施例12で観察されたより早い作業および硬化時間は、重合可能な還元剤ATUのはるかに高いレベルに起因する。
実施例14−ATUのメタクリロイル誘導体の合成、および還元体としてのその使用
AHTU(8.01g、0.05モル)を丸底フラスコ内の乾燥THF(100ml)に溶解し、ジブチルスズジラウレート(0.20ml、シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を添加した。ドライライト(DRIERITE)乾燥剤を含有する乾燥管で栓をした還流冷却器にフラスコを取り付けた。IEM(7.75g、0.05モル)を室温で10分間にわたり滴下して添加した。次に反応混合物を40℃で15時間撹拌した。フラスコの加熱を止めて、ロータリーエバポレータで溶剤を除去して無色の粘稠な液体を得た。生成物の赤外線特性決定は、メタクリレート化AHTU(M−AHTU)化学構造に一致した。
上述のように調製した3重量%のM−AHTUを使って液体樹脂Aを配合し、得られた液体を実施例5Dで使用した粉末と組み合わせた。粉末/液体混合物の硬化時間は、3分40秒と測定された。
本願明細書に引用した特許の完全な開示、特許文献、および刊行物は、それぞれが個々に援用されたかのように、その内容全体を参照によって本願明細書に援用するものとする。本発明の範囲と精神を逸脱することなく、本発明の種々の修正と変更ができることは当業者には明らかである。本発明はここで述べる例証を意図する実施態様および実施例によって不当に制限されないものと理解され、このような実施例及び実施態様は例証としてのみ提示され、本発明の範囲は請求の範囲によってのみ制限されるものとする。


Claims (3)

  1. エチレン性不飽和成分を含む硬化性樹脂、
    式、
    の重合可能な還元剤、および
    酸化剤を含む、硬化性組成物。

  2. で示される化合物。
  3. 二次還元剤をさらに含む請求項1に記載の硬化性組成物であって、前記二次還元剤が三級アミンである、硬化性組成物。
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